dic‘s ヘルスコミュニケーション vol.6
美容と脂質の摂りかた
はじめに
脂質はエネルギー源になるだけでなく、脳や心臓、骨や女性ホルモンなど健康な体をつくる 大切な栄養素です。 うるおいのある健康的なお肌や髪にも、もちろん脂質は欠かせません。 脂質不足や間違った脂質の摂り方をすると、肌荒れや脱毛などの美容に関わるさまざまな トラブルの原因になります。さらに悪化すればアレルギー症状や炎症、病気につながって しまいます。 逆に、上手に脂質を摂ることができれば、「女性を美しくする」パワーを持っています。 今号では美容のための『上手に脂質を摂り方法』をテーマに、お役に立ちそうな情報を まとめてみました。
脂質とは
あぶらには、常温で液体の(油)と固体の(脂)があります。 これをまとめて油脂と呼んでいます。 この油脂は、脂肪酸とグリセリンという分子からできています。 グリセリンに脂肪酸が3つくっついたものが中性脂肪(トリアシルグリセロール)です。 一般的に、この中性脂肪を「脂肪」と呼んでいて、摂りすぎると肥満や生活習慣病の 原因になるため、「脂肪」 = 「美容・ダイエットの敵」という悪いイメージに捉えがち。 しかし、脂質は本来、美容と健康に欠かせない重要な役割を果たしているのです。大切なのは、その種類と摂り方なのです
脂質の役割
1.エネルギー源 体を動かすエネルギー源として使われます。いつでも燃やしてもらえるように、 脂肪酸が血液中をながれています。中性脂肪は備蓄の燃料として体内に蓄積され ていて、必要な時に分解して燃やされます。 2.細胞膜の材料 人間は体は60兆個の細胞からできています。その1つ1つの細胞のまわりの 細胞膜は脂質を材料につくられていて、細胞を守ったり、情報伝達をしています。 3.ホルモン、胆汁酸の材料 ステロイドホルモン(男性・女性・副腎質ホルモン)や胆汁(脂質の消化 吸収を助ける)の材料になります。 4.プロスタグランジン(生理活性物質)の材料 体のさまざまな生理機能を調節するホルモンに似た物質の材料になります。 5.脂溶性ビタミン(A,D,E,K)の吸収を助ける
美容のために正しい脂質を摂るには
現在、健康志向の高まりもあって、いろいろなあぶらが販売されるようになりました。 しかし、脂質はその種類によって性質や体内での役割が異なるため、間違った摂り方や 摂取バランスの偏りが、かえって美容に悪影響を及ぼすこともあります。 さらに、脂質は美容はもちろん、生命維持に不可欠な栄養素です。無理なダイエット などで、脂質を悪者扱いすることはたいへん危険です。 脂質と上手くつきあうことが大切なのです。脂質の種類を知ることが、第一歩!
脂肪酸の種類
脂質の構成成分「脂肪酸」は、その性質や構造の違いから分類されています。 まず、脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2つに分類されます。 *二重結合とは・・・脂肪酸は炭素(C)水素(H)酸素(O)で構成され、炭素(C) のつながり方を指します。炭素の数、二重結合の有無、 二重結合の数や配置によって様々な脂肪酸に分類されます。
飽和脂肪酸
主な脂肪酸名 : ステアリン酸、パルミチン酸 常温での状態 : 固体 代表的な食品 : 肉や乳製品などの動物性の脂肪 植物性脂肪のパーム油やココナッツ油 特徴 : 飽和脂肪酸は炭水化物や他の脂質から体内で合成できるため、 必ずしも食事から摂る必要はありません。 摂りすぎると、悪玉コレステロールや中性脂肪が増えてしまうので、 注意が必要。
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸は二重結合の数により、オメガ3、オメガ6、オメガ9に分類されます。 主に植物性の脂質に多く含まれています。 不飽和脂肪酸 常温では液体 分類 多価不飽和脂肪酸 一価不飽和脂肪酸系列 オメガ3 オメガ6 オメガ9 オメガ3とオメガ6は、生命維持に不可欠ですが、体内で合成することができない ので必須脂肪酸と呼ばれていて、細胞膜やプロスタグランジンの材料になります。 また、不飽和脂肪酸は二重結合の数が多いほど酸化しやすい。
オメガ3系(必須脂肪酸)
主な脂肪酸名 : αリノレン酸、DHA,EPA 代表的な食品 : えごま油、しそ油、亜麻仁油、青魚の油 くるみ、いちごなどの種も食べられる果物 特徴 : 熱に弱く、酸化しやすい。 体内で合成できない必須脂肪酸。 海中の植物性プランクトンにはαリノレン酸が多く含まれ、 植物性プランクトンを食べている魚の脂肪中に、DHAとして 蓄積されている。 αリノレン酸は、体内で同じオメガ3系の脂肪酸(EPA⇒DHA) に変換される。 悪玉コレステロールを減少させる。 現代の日本人の食事で不足している脂肪酸。
オメガ6系(必須脂肪酸)
主な脂肪酸名 : リノール酸 代表的な食品 : サラダ油、コーン油、 ごま油、紅花油、 グレープシード油 特徴 : 熱に弱く、酸化しやすい。 体内で合成できない必須脂肪酸。 リノール酸は、体内で同じオメガ6系脂肪酸(γリノレン酸⇒ ⇒アラキドン酸)に変換される。 現代の日本人の食事で最も摂取の機会が多い脂肪酸。 悪玉コレステロールを減少させるが、摂りすぎると善玉コレステ ロールも減らしてしまう。
オメガ9系
主な脂肪酸名 : オレイン酸 代表的な食品 : オリーブオイル、 ピーナッツオイル、 アボガドオイル 特徴 : 熱に強く、酸化しにくい。 体内で飽和脂肪酸のステアリン酸から合成できる。 悪玉コレステロールを減少させる。『参考』 食用油の脂肪酸含有率
0 20 40 60 80 100 120 亜麻仁油 しそ(えごま)油 グレープシード油 コーン油 ゴマ油 サラダ油 米油 キャノーラ(菜種)油 オリーブ油 ラード バター 飽和脂肪酸 オレイン酸 リノール酸 αリノレン酸現代の食事の問題点1
肉中心の食事
食事摂取基準では 飽和脂肪酸 : 不飽和脂肪酸 3 : 7 で摂ることをすすめています。また、1日に必要なエネルギーの 18~29歳 : 20%~30% 30~69歳 : 20%~25% を脂質からとるのがよいといわれています。 肉中心の食事は飽和脂肪酸の摂り過ぎにつながります。摂り過ぎると
肥満やメタボリックシンドローム、動脈硬化、心臓病などのリスクが高まる。 アトピーや花粉症を含むアレルギー症状や皮膚炎を促進する。現代の食事の問題点2
オメガ6系の摂り過ぎ
食事摂取基準では、必須脂肪酸を オメガ3系 : オメガ6系 1 : 4 で摂ることをすすめています。現代の日本人の食事では、摂り過ぎている傾向が強まって いて、1:10~40に及ぶとも言われています。加工食品の多様化や、健康志向に伴って、 サラダ油などのオメガ6系を多く含む食品や食用油が広く使われるようになり、 最も摂取の機会の多い脂質になっています。 あえて食用油という形で摂ることは控えたほうがいいといわれるほどです。
オメガ6系を摂りすぎると
摂りすぎると
善玉コレステロールを減らしてしまい、動脈硬化などの原因に。 花粉症やアトピーなどのアレルギー発症や皮膚炎などの炎症悪化の原因に。 もともと、悪玉コレステロールを減らす効果があるということから、「健康にいい」と 広く使われるようになりました。しかし、摂りすぎてしまうと善玉コレステロールを 減らしたり、体の生理機能を乱す原因になることが報告されています。 ・オメガ6系は身近な食品に多く含まれている。 ・さらに、加工食品やスナック菓子、食用油・調理油にも広く使われている。現代の食事の問題点3
トランス脂肪酸の摂取
トランス脂肪酸は海外では「狂った脂肪」「プラスチック食品」などとも呼ばれ、 健康を害する危険な油という認識が広まっています。 ・植物性油脂を加工・精製する際に不飽和脂肪酸の一部が⇒トランス脂肪酸に変化する。摂りすぎると
善玉コレステロールを減らし、悪玉コレステロールを増やしてしまい動脈硬化を招く。 細胞の働きを狂わせ、アレルギーの発症や皮膚炎などの炎症悪化の原因に。 免疫機能が低下する。 *先進国のなかには、使用制限や表示義務などの規制をしている国が増えています。トランス脂肪酸が多く含まれている食品
① 加工の際、水素を添加している食品(液体を固体に加工) マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド ② 精製する過程で高熱を加えた植物性油(臭いを取り除く工程) サラダ油、コーン油、ナタネ油、大豆油... ③ 高温の植物性油脂を使って調理した食品 揚げ物、てんぷら、フライ... ④ 植物性油脂を含み高温で調理された食品 スナック菓子、チョコレート... ⑤ 原材料に①を使用している食品 クッキー、洋菓子、パン... *食品メーカーの中には自主的に削減に向け努力しているところもあり、 含有率0.5%以下というマーガリンも、数社販売されています。現代の食事の問題点4
オメガ3系の不足
オメガ3系の脂肪酸は、細胞膜の材料や、体の生理機能を調整するプロスタグランジン の原料になるたいへん重要な脂肪酸です。にもかかわらず、現代人の食事からは、 最も摂ることが難しくなってしまいました。 ・オメガ3系を豊富に含む食材がもともと少ない。 ・オメガ3系を含む最も身近な食品は青魚ですが、特に生の青魚を食べる機会は昔に 比べ減っている。(昔は魚中心の日本食で、しっかり摂れていた) ・穀物の飼料を食べて育てられた養殖魚には、オメガ3系が少ない。 ・オメガ3系は熱に弱く、酸化しやすいので加熱調理には向きません。 加工食品はもちろん、加熱調理した食品からオメガ3系を摂ることは難しい。オメガ3系は健康な肌細胞・肌のバリヤ機能を維持するために欠かせない
オメガ3系が不足すると
オメガ3系が不足すると
、 ① 正常な細胞膜が作られない(皮膚や髪はもちろん、脳や神経細胞も) ② アレルギーや炎症などの抑制する生理活性物質が作られない などの問題がおこり 結果的に アレルギー、皮膚炎、リュウマチ、脱毛、生活習慣病、免疫の異常、生理不順 などの原因になってしまいます。 さらに最近では 『肥満者は血液中のオメガ3を不足させている』 (東京家政大学) 『痴呆老人ではオメガ3が健康な老人に比べ不足している』 (東北大学) といった研究が発表されています。
プロスタグランジンとは
私たちの体内ではプロスタグランジン(生理活性物質)というホルモンのような働きを する物質が作られています。プロスタグランジンの役割は
炎症の調整、血圧や心機能の調整、胃腸機能と消化酵素の分泌調整、 血液凝固と血小板凝集、アレルギー反応、神経伝達、各種ホルモンの産生 と、さまざまな機能調節を行っていて、わたしたちの健康に深くかかわる物質です。 さらにプロスタグランジンにはE1,E2,E3の3種類のグループがあり、それぞれ 異なる機能調整の働きをしているのです。 プロスタグランジン E1 良い働き(アレルギーや炎症の抑制、血栓の抑制など) プロスタグランジン E2 悪い働き(アレルギーや炎症の促進、血栓の促進など) プロスタグランジン E3 良い働き(アレルギーや炎症の抑制、血栓の抑制など) 美容と健康のためには E1 と E3を増やし、E2を減らす
プロスタグランジンと脂肪酸の関係
それぞれのプロスタグランジンは プロスタグランジン E1 ← オメガ6系 プロスタグランジン E2 ← オメガ6系、飽和脂肪酸(アラキドン酸) プロスタグランジン E3 ← オメガ3系 から作られます。したがって、脂肪酸の摂取バランス = 体内のプロスタグランジン のバランスとなります。 先の「現代の食事の問題点」は、そのままプロスタグランジンのバランスを崩す原因となり 結果的に美容と健康に悪影響を及ぼしてしまうのです。 1.肉中心の食事、オメガ6系の摂りすぎ ⇒ E2を増やす 2.オメガ6系の摂りすぎ、トランス脂肪酸の摂取 ⇒ E1を減らす 3.オメガ3系の不足 ⇒ E3を減らす
プロスタグランジンが作られる過程
プロスタグランジンE1は、 オメガ6系(リノール酸)から γリノレン酸⇒ジホモγリノレン酸 という代謝を経て作られます。 しかし、代謝の「阻害因子」 ・トランス脂肪酸 ・ビタミン不足 などでγリノレン酸へ代謝ができず プロスタグランジンE1が不足して しまうのです。脂質を美容の味方にする方法1
プロスタグランジンE1を増やす
材料となる脂肪酸はオメガ6系です。過剰摂取が心配される脂肪酸なので無理なダイエット をしているなどの特殊なケースを除けば、材料が不足することはないでしょう。最近の研究 結果によると、γリノレン酸への代謝が正常に機能しない人の割合が25%もいるそうです。 ①γリノレン酸への代謝の阻害因子を取り除くこと ・トランス脂肪酸を含む食品をできるだけ減らす。 ・ビタミンをしっかり摂る。とくにビタミンB郡をしっかり摂る。 ②γリノレン酸を摂る 加工食品やスナック菓子を食べる機会が多い方、油で調理した料理やお酒が好きな方など 阻害因子が気になる方は、γリノレン酸の形で摂ることをおすすめします。 γリノレン酸は、ボラージ草や月見草などの一部の植物にしか含まれないため、食事 から補うのは難しくサプリメントで補うのが効果的です。脂質を美容の味方にする方法2
プロスタグランジンE2を減らす
材料となる脂肪酸は、飽和脂肪酸とオメガ6系です。それぞれアラキドン酸への代謝を経て プロスタグランジンE2が作られます。 ① 肉や動物性脂質が多い食品、加工食品を減らす 肉中心の食事やラーメン、乳製品など動物性脂質を多い食品の摂りすぎは アラキドン酸の過剰摂取につながります。 ② 加工食品やオメガ6系(特にリノール酸)食用・調理用油を減らす アラキドン酸はオメガ6系のリノール酸からも作られます。 リノール酸を多く含む食品は加工食品をはじめたいへん多いので、注意しないと 摂りすぎてしまいます。脂質を美容の味方にする方法3
プロスタグランジンE3を増やす
材料となる脂肪酸は、オメガ3系です。現代の食事では意識して積極的に摂らないと不足 しがちな脂肪酸です。 ① αリノレン酸を含む食用油を積極的に毎日摂るようにする αリノレン酸はEPAへの代謝を経てプロスタグランジンE3の材料になります。 えごま油などのαリノレン酸を多く含む食用油を、ドレッシングやソースとして食べる 直前に使うと効果的です。αリノレン酸は熱や酸化に弱いので加熱調理したり、調理後 に長時間保存しないようにしましょう。 ② 青魚を週2回は摂るようにする 週2回は魚中心の食事を摂るようにしましょう。できればEPAを豊富に含む天然の 新鮮な青魚を、生で食べるのがもっとも効果的です。脂質を美容の味方にする方法4
脂質の特性に合った摂り方をする
① 加熱調理用の油は、熱や酸化に強いオメガ9系のオリーブオイルなどを使う。 ② 食用・調理用油は加工・精製されていない天然の原料100%の自然に絞られたもの を使う。 ③ 熱や酸化に弱い脂質を多く含む食品や、揚げたり炒めたりした料理を、長時間保存したり 何度も加熱しない。 ④ スルメ、干物、ビーフジャーキーなどの空気や紫外線にさらされながら保存されたもの も摂りすぎに注意する。