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動的設備投資計算法における欠陥の除去について-香川大学学術情報リポジトリ

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動的設備投資計算法における欠陥の

除去について

井 上 康 男 Ⅰ・問題の提起。ⅠⅠ諸学説の検討。 エⅠⅠり 筆者の見解。 Ⅰ 西ドイツの設備投資の経済性計静紅関する諸文献においては内部利益率 法,資本価値法,年金法の8っを総称して一・般に動的設備投資計静法(Die

DynamischeInvestitionsrechnung)と言っている。 この8っは今日論ぜら

れている設備投資の計算法の申最も有名なものに属している。ところがこれら の方法紅おいてほ次にあげるような種々なる欠陥があるのである。すなわちそ の中数個の例をあげるならば次のようなものをあげることが出来るであろう。 (1)資本価値法(および年金法)と内部利益率法とはその結論が必ずしも同一・ でほなぐて,お互に矛盾することがある。 (2)2つの競合する投資案の選択において,その各々の投下資本の金額または 耐用年数に差異があるときは,動的設備投資計算法の答えそのものが端的紅 正しい解答を示してくれるとは限らない。 (3)動的設備投資計算法において採用される計算利子率(Kalkulationszinsfu・ sz)をどのように決めたらよいかについてほ今日においてもなお定説がない。 (4)内部利益率法をこおいて内部利益率の計算は非常に手数がかゝって擁難であ り,また唯仙・つの設備投資案に対して2つ以上の解が生じたり,虚数の解が 生じたりすることがある。 このような動的設備投資計算法の欠陥を除去するために従来種々なる学者が その解決策を研究して来た。本論又においては.筆者ほこの問題に関する従来の

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香川大学経済学部 研究年報 3 J96β ーー∂4 ←− 諸学説を検討し,動的設備投資討算法の種々なる欠陥の解決策を根本的紅究明 してみたいと考えるのである。 ⅠⅠ 従来の諸学説の検討を筆者ほ先ず西ドイツのホルスト・プラントから始め皮 いと思う。 (i)ホルスト・プラント(Horst Brandt)の理論 動的投資計算の3つの方法の中資本価値法と年金法との結果は常に一激する が,これらの方法と内部利益率法の結果とほ必ずしも−・致しない場合がある。 ホルスト・プラントは著書「工業経営の設備投資政策」(1959年)の中で2つの 競合する投資案の耐用年数と投下資本およびその資本投下の時期とが完全に等 しいならば,内部利益率法とその他の方法とは常に同・一・の結果をもたらすと述 べて次のような計算例をあげている去) すなわちいまある会社において次のような各投資案の中いずれを選ぶべきか について研究中であるとする。 第 1 表 この資料を基にして各種の計算法を適用してみるとその結果ほ次の如くな る。ただし引算利子率は6%とする。

1)Horst Brandt,h2L・eStiiionsPolitih desIndustrie・betY■よebeS,Wiesbaden1959,

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動的設備投資言†算法における欠陥め除去について −・鋭㌢一一 第 2 表 このように.内部利益率法とその他の方法との解答は異なっている。そこで最 初の投下資本と耐用年数とを同一・のものにおいて比較するために.,設備Ⅰ−と設 備(ⅠⅠ+ⅠⅠⅠ)とに対して各種の投資計算法を適用してみよう。そうするとその 結果ほ次の通りとなる。 第 3 表 このように比較される各投資案の投下資本と耐用年数とが相等しいならば, 動的投資引算の各方法の間の解答は常に−・致するというのである。しかしなが らこの結論は正しくない。何故ならたとえば次のような2っの設備投資案A, Bを考えてみよう。 第 4 表 この資料に基いて経済性計算を行ってみると,その結果は次の如くなる。

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香川大学経済学部 研究年報3 J夕6∂ 一一−56 一 第 5 衷 内 部 利 益 率 質 本 価 仲■ 計算利子率6%の場合 5526万円 4620方円 計静利子率30%の場合 −634方円 十831万円 つまりA,B両案は耐用年数と投下資本の金額およびその投下時期とが全く 同一であるにもか一」わらず,計算利子率の高さ如何紅よって資本価値法の結果 と内部利益率法の結果とが異ってくるのである。このようにホルスト・プラン トの主張は正しくないので次紅矢張りこの間題の解決策を求めたアメリカのユ ズヲ・ソロモソの所説の検討紅移りたいと思う。 (ii)エズラ・ソロモン(E五指Solomom)の理論 ユズラ・ソロモンほその編著「会社資本の管理」1961年申の論文「資本予算 決定の数学的方法」2)において動的投資計算法の諸欠陥の申2つの問題の解決 策について論述を行っている。 第1の問題は資本価値法と内部利益率法との結論の食い速いを解決する問題 であり,他の第2の問題は内部利益率法が同一・投資案紅関して2っ以上の解を 生ぜしめるとき,これを如何に解決すべきかという問題である。.以下紅おいて は先ず第一・の問題から検討を行って行こう。 1.資本価値法と内部利益率法との結論上の食い違いの解決策について 彼はこの場合に2つの競合的投資案の中いずれを選択すべきかの問題を例に とって,その解決策を研究している。 いまある会社で競合的投資案ⅩおよびYの中いずれを選ぶべきかについて検 討中であるとする。Ⅹ案ほ第0年末紅100万円を支出し,第1年末に120万円の

2)EzIa Solomon,The Arithmetic of Capital−Budgeting Decisions,in:The Management ofCorboratc Ca♪ital,1961,pp174q79l

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動的設備扱鹿計簸旗艦おける欠陥の除去についで 岬一言グー叫 収入を生じる。その耐用年数ほ.1年であって残存価額は0である。これに対し Y案は第0年末に100万円を支出し,第4年末に174.90万円の収入を生ぜしめ る。その耐用年数ほ4年であって残存価額は0である。 第 6 表 会社の資本コスト10%を計算利子率として採用し動的投資計算を行ってみる とその結果は次の如くなる。 第 7 表 そうすると資本価値法と内部利益率法との計算の結果がくい違うことに・な る。 ・一・般紅2っの代案の問の選択を行うにほ投下資本と耐用年数とをともに同一・ のべ」−スにおいて考察しなけれぼ正しい比較は不可能である。彼はこのことに ついて次のように述べている。「問題を正しく解決するためには,2っの競合 する投資案を同一・のべ・−スで考えることが必要である。そのため最もよい方法 は耐用年数のより長い設備投資案の耐用年数の終り,つまりこの例では第4年 度末までにおいて,2っの投資案を比較することである。」3)それ故Yの長い 耐用年数である4年間を計界期間として,上述の両計界法の間の矛盾の原因を 光明してみようと思う。Ⅹの耐用年数ほ1年である。したがってⅩの罪1年一木 の収入120万円が欝1年末から第4年末までの間にどのように再投資されるか を検討しなければならない。内部利益率法によれほ内部利益率はⅩが20%,Yが 3)Ezra Solomon,Ibidり,pp75−76.

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香川大学経済学部 研究年報 3 J96∂ ーー5ぶ− 15%であるから,表面的にはⅩがYより優っている。しかしながら,この結論 を正しいものにするため紅は,Ⅹの第1年末の収入120万円が第1年末から算

4年末までの間に再投資されて,第4年末にほYの第4年末の収入174・90万円

よりも大きい金額の収入となることを仮定しなければならない。すなわちⅩの 第1年末の収入120方円が第1年未から第4年末までの間に少くとも15%以上 の利益率で再投資されると仮定しなければならないのである。すなわち投下資 本は同一・であるが耐用年数の異なる2つの代案の選択の問題において,内部利 益率法の結果そのものを正しいものにするために一・般に必要な仮定は,短い耐 用年数の投資案の純収入の再投資の利益率が長い耐用年数の投資案の内部利益 率軋丁度等しいと仮定することである。 次に資本価値法によれば資本価値はⅩが9.09カ月,Yが19・46万円であるから, 表面上ほYの方がⅩより有利である。この結論そのものを正しいものにするた めには,Ⅹの第1年未の収入120万円が第1年末から第4年末までの間紅おいて 高々計算利子率10%以下の利益率でしか再投資できないと仮定することが必要 である。すなわち−・般にこの種の問題において資本価値法の鶴果そのものを正 しいもの紅するために必要な仮定は,短い耐用年数の投資実の純収入の再投資 の利益率が丁度計算利子率そのものに等しいと仮定することである。以上のよ うにこの種の問題における両計算法の解答上の食い違いは設備投資から生ずる 営業上の純収入の再投資の利益率に関する仮定の差異に原因して−いる。それ放 この種の問題において内部利益率法と資本価値法とのいずれが正しいかという 問題は短い耐用年数の投資案の純収入の再投資の利益率が一・体長い耐用年数の 投資実の内部利益率と計算利子率のどちらに等しいと考えることが現実の具体 的事実を一層よく表現しているかという問題に還元出来るのである。それ故両 討算法において純収入の再投資の利益率に閲し共通の同一・の利益率を採用すれ ば両方の結果は同一・となるのである。そこで今仮りに上例において第1年末か ら第4年末までの間における純収入の再投資の利益率として両方の計算法に共 通の同一例益率を採用し,次のような計欝を行ってみょう。すなわちこの間−・ の再投資の利益率を今仮りに12%と仮定する。

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動的設備投資計静法紅おける欠陥の.除去について −519− (1)紳収入の終佃の計算 投資案Ⅹの収入の終価: 120(トト0112)8=168・47万円 投資案Yの収入の終価: 17490万円 (2)内部利益率の計静 投資案ズの内部利益率: 100=120(1+012)8×(1+グ1) ̄生 ㌢1≒139% 投資案yの内部利益率: γ2=15% (3)資本価値の計算 投資賽牙の資本価値: 120(1+0・10) ̄1−100=909万円 投資男yの資本価侭: 会社が第1年末から第4年末までの間において,すべての資金を12%の 利益率で運用すると仮定する。したがって17490万円は第4年末から第 1年末まで12%で割引かれ,第1年末から第0年末までは計算利子率10 %で割引かれる。 17490(1+0・12)−8×(1+010) ̄1−100=13・17万円 以上の計算の結果によれば,3つの計算法の中どの計算法においても,Yの 方がⅩよりも優れているという同一・の結果が得られた。 ソロモンは上述の計算例においてほ純収入の再投資の利益率を12%とした が,それが伐りに12%ではなぐて他の数値であっても,とにかく同一・の共通の 再投資の利益率を両計算法において使用し,上に述べたような計算を行うなら ば,両計算法の緒果は常紅−・致すると主張する。そしてソロモンはこの問題の 要約として次のような見解を述べている3) (乳)この種の問題においては長い方の耐用年数を計算期間として考察しなけ ればならない。 4)EzIa Solomon,J∂掃・,p・77,

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香川大学経済学部 研究年報 3 エ96β ー・60− そして一過鷹■.な解に到達するためには.,純収入の再投資の利益率として具体的 に会社の実際の轟実の再投資の利益率を採用し,この同一・の再投資の利益率を 両計算法匿おいて典通して使用し仁上に述べたような計算を行わなければなら ない。すなわち, (2)内部利益率法紅おいてほこの会社の純収入の再投資に閲し真実の再投資 利益率を計算に入れて,長い方の耐用年数の終りに垂るまでの2つの投資案の 内部利益率を比較しなければならない。 (3)資本価値怯においてはこの純収入の真実の再投資の利益率そのものまた は−・組の真実の再投資の利益率を計算利子率として採用すべきである。しかし ながらこの再投資の利益率は必ずしも会社の資本コストと常に.一・致するとは限 らないのである。 以上を要するにユズラ・ソロモンはこの種の問題における資本価値法と内部 利益率法との解答上の食い違いは純収入の再投資の利益率に関する両計算法の 仮定の差異に原因している。したがって純収入の再投資の利益率としては会社 の真実の再投資の利益率を採用し,この間−・の再投資の利益率を両計算法にお いて計算利子率として共通して使用し,上に述べたような計算を行うならば, 両計算法は常紅同一・の結論紅導いてくれると主張しているのである。 筆者は以上の米国のソロモンの主張は結局一・定の支出によって最大の収入を 獲得する,または−・定の収入を最小の支出を以て獲得するという経済学の根本 原理である経済原則紅還元出来ると思うのである。ソロモン自身はこの経済原 則についてほ何等明りょうな論述を行っていないが,彼の主張は結局経済原則 に帰納し得るものである。こ.のことに.ついてはまた後の箇所で詳しく論じたい と思う。 2.内部利益率法が2つ以上の解を生ぜしめる時の解決策について 次紅内部利益率法が2つ以上の解を生ぜしめるときの解決策について,ソロ モンの主張を検討しよう。 彼ほ先ず設備投資において2っの型すなわちA型とB型を区別する。 A型の設備投資とは次のように設備へ最初に支出した後これに続いて生ずる 各年末の現金の流れがすべて+(プラス),つまり純収入のみである場合である。

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動的設備投資計算法における欠陥の除去紅ついて “6J一− 算 8 表 各年の腎炎上の純収入 投 資 額

第 1年l第 2 年!第 3 年l第 4 年

+500 +600 したがってこの場合にあっては将来の各年末の正味の現金の流れの申に、一 (マイナ・ス)のものが現われないのである。 B型の設備投資とほ次のように設備へ最初庭支出した後これに続いて生ずる 各年末の正味の現金の流れの中に(特に.最後の年において)1−(マイナ・ス)の ものを含む場合である。 第 9 表 各年の営米上の純収入 投 資 額

第1年l第 2 年l第 3 年 f 第 4 年

彼ほ.A型の設備投資においては内部利益率法ほ常紅唯iつの解のみを生ぜし めるから問題ほ起らない。ところがB型の設備投資に.おいては2つ以上の内部利 益率が生ずることがある。したが。てこの後者の場合紅いずれの解を採用サーるの が適当であるかという問題が生ずるというのである。そして彼はこのB型の設 備投資に関して次のような具体例をあげてその解決法を述べている。すなわち, 或る石油会社において原油を油井から挟み上げる採油ポンプの取替が検討中 であるとする。新型ポンプは・一・定愚の原油を現有の旧式ポンプよりも一層迅速 に汲み上げる性能を有している。旧式ポンプを使用することによって経営者は 第1年目に10,000ドル,第2年目に10,000ドルの収入を獲得することが出来る と予恋している。大型の新式ポンプの正味調達価額は現在1,600ドルであり,こ れを使用することによって経営者は第1年日に餌,000ドルの収入を期待出来 る。発2年目は原油を採取しつくしているから収入は0である。そうすると大 型の新式ポンプへの投資は次のような現金の流れを有するプロジ.霹クトである

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香川大学経済学部 研究年報 3 J96、ヲ −−62− と考えることが出来よう。 時 ,■ゴ 新旧両設備の現金の流れの差額 ー1,600ドル +10,000ドル ー10,000ドル これに内部利益率法を適用してみると25%と40%という2っの内部利益率の 解が生じる。これは所謂相対的利益率である。そうするとこの2つの解の中ど ちらが正しいのであろうか。ソロモンはどちらの解も正しくないと主張する。 それほ内部利益率法を適用する適用の仕方が患いからである。換言すれば彼は この解法ほ不適当なデータ・一に対して内部利益率法を適用したから悪いのであ ると言うのである。つまり使用したデ・−・タ−が適当ではなかったのである。彼 はその理由を次のように述べている。 「この誤りを発見するために,我々は大型の新式ポンプの正味調達価額を変 化させて(他のすべての現金の流れほコンスタントとする),通常の方法にし たがって内部利益率を求めてみよ・う。そうすると我々は次のようなおかしい結 果を得るのである。 (1)大型の新式ポンプの調達価額が0ならば,内部利益率は0である。この 利率によって純収入の現在価値は最初の支出額に等しくなる。 (2)大型の新式ポンプの調達価額が827ドルならば,このプロゼクトは突然 有利となって,その内部利益率は10%となる。この10%の利率によって−,純収 入の現在価値は827ドルに等しくなる。 (3)大型の新式ポンプの調達価額が高くなればなる程,内部利益率は大きく なる。すなわち調達価額が1,600ドルのとき,内部利益率は25%となり,調達 価額が2,500ドルのとき,内部利益率は.100%に達する。そうするとこの方法に よれば新式ポンプの据え付け費用を非常に高く吹きかけるポンプのメ・−・カ−を 見付けさえすれば経営者ほ.大金持紅なれるということになる。勿論このような 不合理な結果を生ぜしめる利益率ほ.間違っているのである。」5) 彼はこのように内部利益率法を適用する基礎となるデーターのとり上げ方が 5)Ezra Solomon,Zbid.,pp。78−79

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動的設備投資言†静法紅おける欠陥の除去について −6β叫 聞追っていたから2つの不合避Ⅰ!な解を生ぜしめたのであるとするのである。そ うするとこの場合に正.しいデ一夕」−とは何であろうか。それほもしも1年早く 10,000ドルを独得出来るならば,それほ経営者にとってどれだけの値うちがあ るものかを考えてみることである。もしも経営老がこの10,000ドルを年Ⅹ%で 運用することが出来ると考えるならば1年早くこの収入を獲得する利益は100Ⅹ ドルである。Ⅹが仮り紅23%ならば10,000ドルを1年早く獲得する利益は2,300 ドルとなる。換言すれほ彼は時点toに.おいて大型の新式ポンプを1,600ドルで 購入して,時点t2紅おいて旧式ポンプを続けて使用した場合紅比べて2,300ド ルの相対的収益を獲得したのである。それ放これを内部利益率を求める等式の 形において表現すれば次の如くなる。 第 10 表 営業上の純収入の流れ 投 資 額

第 1 年 皮 】 第 2 年 度

−1600万円 +2300万円 2300 (1+.方)2 1600 .方 三三 20% 彼ほ.このように内部利益率法を適用する基礎となるデータ−を常にA型の設 備投資の形に引き直して考えることによって唯一・の且つ有意義な内部利益率を 獲得することが出来ると主張するのである。そしてソロモンほ.結論として以上 のような諸点紅注意を払った上で内部利益率法を設備投資計算の判定尺度とし て採用するのが最も好ましいとしている。何故ならばそれほ他の投資案の利益 率や会社の資本コストとも比較することが出来るからである。 .以上が内部利益率法が2つ以上の解を生ぜしめる場合に対してソロモンが主 張した解決策である。しかしながらソロモンの説くように果して全ゆるB型の 設備投資を,A塾の設備投資に解釈し直して考えることが可能であろうか。筆者 ほそうは思わない。したがってソロモンの解決策ほ限られた範囲の問題にしか 適用出来ないと考えるのである。そうするともっと我々に満足な解決策を与え

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香川大学経済学部 研究年報 3 J963 ー・6イ ー てくれる学説ほないものであろうか。そのため筆者ほ次に西ドイツのマッチア ス・ノ\イヌタ・−・の主張を検討することとしたい。 (iii)マッチアス・ハイスター(Mattias Heister)の理論 筆者ほ従来の動的設備投資計算法の諸欠陥の除去に閲し我々紅満足な解決策 を与えてくれた最初の人は西ドイツのマッチアス・ノ、イスタ・−・であると思う。 彼は.論文「経験的問題としての投資計算」(経営経済雉誌1961年6月号)6)に おいて動的設備投資計算法とくに.資本価値法と内部利益率法軋ほ次のよう諸欠 点があるとしているg)すなわち, (1)資本価値法と内部利益率法とはその答え.が必ずしも同一・ではなくてお 互に矛盾することがある。たとえば次のような2つの競合する設備投資案があ るとする。 投資案1:tニ=0時点で100,000万円の支出,t=1時点で80,000万円の支出 に対して−t=3時点で200,000万円の収入,t=4時点150,000万円の収入が生 ずる。

投資案2:t=0時点で180,000万円の支出,t=0時点からt=4時点までの

間紅おいて21%の内部利益率で収入を生ぜしめる。 この2つの投資案に対して計算利子率を10%として資本価値法を適用してみ ると投資案1に対して次の資本価値が計算される。 Cl=−100,000−80,000・・(11) ̄1+200,000u(11) ̄3+150,000・(11) ̄4=80,000万円 投資案2においては同様な方法で次の資本価値が計算される。 C2=−180,000+ユ80,000・(1′ノ21)4小(1・10)−4こ=83,540万円 ClはC2より小さいから資本価値法によれば投資案2が投資案1より優って いる。ところが内部利益率法によると投資案1の内部利益率は25%,投資案2 の内部利益率は21%となる。したがって内部利益率法によれぼ投資案1が投資

6)Matthias Heister,(nvestitionsrechnung als embiY’isches L>oblem,ZfB1961, NI‖ 6

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動的設備投資計静法における欠陥の除去について −65一 案2より有利である。ここに両方法の討算の結果の矛盾がある。 (2)計算利子率の.選択に関して何を判断の基準としたらよいか今日におい てもなお定説がない。すでに述べた如く計算利子率の選択如何は投資の有利性 に.影響を与える。たとえば上述の計算例において計算利子率を10%から15%に 上げれば資本価値はCl=43,780万円,C2ニ・33,670万円となり資本価値法にお いて投資案1が投資案2より有利となる。このように資本価値法に・よる計算の 結果は通常計算利子率の高さ如何紅よって左右される。ところで計算利子率を 選択する上において判断の基準となるもの紅は資本市場の金利,その業種の通 常の総資本利益率,危険回収率,まったく主観的な利子率などがあり,投資家 がそのいずれを選んだらよいかを決めるための−・般に認められた適正な判定基 準がないのである。そうして今日においてもなおこの問題は未解決である。そ れ政多くの文献においては内部利益率法は割引率を使用しないから,この方法 を採用する方がよいと述べられていることが多い。しかしながらこの内部利益 率法にも次のような欠点がある。 (8)内部利益率はその計算が困難であり,また2つ以上の解を生ぜしめた り,虚数の解を生ぜしめたりすることがある。たとえば次のような設備投資案 が存在するとする。 0=−1000+600′・■1十550㌢−2 これを解けほⅠ=10%またはⅠ=一150%という2つの答えが得られるが, 後者は負であるから捨て−ることにする。この場合はまあよいのであるが今度は 次のような設備投資案を考えてみよ・う。 −1000+2090タ・ ̄1欄1092㌢・ ̄2=0 たとえば石炭の地上採掘作業においては先ず開発費用が要る。そしてその後 石炭の売上収入が生じる。しかし投資の終りにおいてほ再び採掘地点の地なら しのための整地費用が生じる。このような事例が上の方程式の具体的な1例で ある。これを解けばⅠ■=4%またはf:=5%という2っの正数の内部利益率が 算出される。この例では収入,支出の金額の絶対額では支出額が収入額をオ・− バ・−しているのに内部利益率は正である。このような投資案を採用してよいの かどうか判断に迷わざるを得ないことになる。その採否を決定することは困 難である0 享た−上の弊値例において次の方程式の如くt=2時点の1092万円

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香川大学経済学部 研究年報 3 ブタ(i.フ ∬−66 −・− を109㌻万円とすれほ谷として2っの内部利益率が山るが,この2つとも虚数で ある。 0=−1000+2090Ⅰ ̄1−1093工 ̄2 以上の考察から分かるように資本価値法も内部利益率法も完全な方法でほな いのである。そのため上述のような諸欠陥を除去しようとして近代投資計静理 論の代表者逮はそ・の後種々なる解決策を研究した。 上に述べた第1の欠陥の問題に関してはハインツ・シ「ンドラ−とホルスト・ プラントの研究は注目に催するものがある。ノ\インツ0ふ/ンドラ・−8)ほ唯1つ の投資案の場合だけに.観察を限って研究した。そして内部利益率は実務上の議 論においてほ役に立たないから内部利益率法は投資決定上無用の方法である。 したがって設備投資の経済性計算の方法としては資本価値法のみを採乳すべき であるから両方の解答上の矛盾は消滅するとしている。またホルスト・プラン ト9)は実例を示して2つの競合する投資案の中いずれを選ぶべきかの選択にお いて,この2っの投資案の耐用年数と投下資本およびその資本投下の時期が全 く同一・である場合両方法は同一・の結論を生ぜしめるものであるとした。ところ が通常は2っの競合する投資実において耐用年数と投下資本とが等しくない場 合が多いから,このような場合両方法の矛盾を解決する方法はいまだ発見され ていないのである。 つぎに第2の欠点である計算利子率の決定の問題に関しては諸学者の努力に もかかわらず未だに定説ほない。また第8の問題である内部利益率の計算にお ける欠陥もまだ除去されていないのが現状である。 そうするとこのような両計算方法の欠陥の根源はいかなるところに存在する のであろうか。ノ、イスタ・−はその原因を従来の設備投資の計算理論の財務数学 的性格に求めている。すなわち資本価値放とか内部利益率法とかいったような 従来の設備投資の計算理論は財務数学(Finanzmatbematik),国民経済学

8)HeinzSchindler,Investirtionsrechnungenin Theorie und PraxilS,Meisenheim /Glan1958,Sl57ff

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動的恕備投海尉簸法における欠陥の除去について −∂7−

(Nationa16konomie),工学的経済学(Engineering Economy,主としてル

ンメル等の)という3っの分野紅その起源を有している。そしてこの8っの分 野はともに設備投資を現実の経験上の問題としでではなく,きわめて抽象的, 理論的に財務数学的見地紅おいて観察したのであった。ここに従来の設備投資 の計算理論が財務数学的性格を有するという根源があるのである。その後おく れて経営経済学が設備投資を研究し始めたが,最初はその研究はもっばら時間 要素(利子要素)を考慮しない静態的な損益引算の形をとったのであった。す なわち設備投資理論の歴史的発展を振返ってみると,最初設備投資を研究した 財務数学,国民経済学,エ学的経済学が発展段階の途中で−・つに合体した。こ の合体を成し遂げた唯一・の功績者がエーリッヒ・レユ.ナイダ−10)である。そし てこの合流体が今日動的設備投資計算法と呼ばれているものである。しかしそ のもたらした成果は実務上適用できるものとしては価値が少いのである。そし ておくれて発生した経営経済学の設備投資に関する静態的な損益計算の手法に よる分析はこの合流体とは別個に発展した。このようにして動的投資計算と静 的投資計算北開する賛否両論が花々しく展開されることとなったのである。 経営経済学者は動態論を批評して,その計算は不十分で実務上使用し得な い。たとえば資本価値法と内部利益率法との解答⊥の食い違いはその叫・側面を 物語るものであると主張した。これ紅対して動態論者ば静的投資計算は設備投 資計算龍儲して時間要素(利子要尭)を無視している。それは不合理であると 攻撃した。この国民経済学における投資理論的動的観点と実務的静的観点の間 の間げきはその後も埋めることが出来ないままで今日に至っている。年金法が 両者の橋渡しをしていると主張する人もあるが,その結合は単に外面的形式的 でしかないのである。しかし実際問題としては設備投資計算において時間要素 (利子安東)を考えることが適当なことは言うまでもないことである。さていよ いよ本論に入らなければならない。すなわちノ、イスタ・−は動的投資計算の欠陥 を除去する方法として如何なる解決策を主張するのであろうか。その主張する ところは次の如くである。ハイスタ」−は設備投資は実物投資(Realinvestition) であって財務投資(Finanz・investition)ではない。したがって設備投贅に対 10)Erich Schneider,mrtSChaftlickkeitsrechnung,2Aufl・,1957

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香川大学経済学恕 研究年報 3 j963 −−β∂… して財務投資に適した方法である財務数学を適用することは適当ではないと主 張するのである。 ここで実物投資と財務投資との区別紅ついて述べておこう。 投資とは彼によれば,その−・部分は正,他の部分は負であるところの一\連の 現金支払の流れをいう。すなわちそれは設備の講入,労働力の投下,株式およ び社債の購入,銀行預金への預入れ等を意味する。この意味の投資を彼ほさら に実物投資と財務投資に分つ。ここで実物投資とほ設備などの実物への投資で あって,投資家と投資対象との間に直接的に価値の流れが生ずる投資である。 すなわち中間に銀行等ほ介在しない。また財務投資とは.−・定の利息を生ずる銀 行預金や社債などへの投資であって,投資家と投資対象との間に間接的にのみ 価値の流れが生ずる投資である。たとえば銀行預金を例紅とって考えてみよう。 ある投資家(預金者)が銀行に1,000万円を年5分の利息で預け子銀行ほこれをあ る投資対象に投資して収益をあげ,1年後に預金者に対して元利合計1,050万円 を支払ったとしよう。この場合投資家(預金者)と投資対象との間の価値の流 れは,中間に銀行が介在していて間接的でしかないから銀行預金ほ財務投資で ある。次に今度ほ投資家が1,000万円で土地を買って,それを1年後に1,050万円 で売却したと仮定しよう。 この場合投資家と投資対象(実物)との間にほ何者も 介在せず虐接的な価値の流れが生ずるから,これは実物投資である。ところで この具体例を次の表で表わしてみよう。

第 11 表

f = 0 g = 1 .…..、 財 務 投 資(第1例)芦 −1,000 (+1,050) −−1,000 +1,050 実 物 投 資(第2例) l 注:カツコは般初規定されていず,後で決まることを意醸する。 これを見て分かるように第1例では1年後の収入額が,また第2例でほ利廻 りが最初与えられていない(カツコでこの意味を示した)。雄2例の実物投資 においてほ第0年末の支出額と第1年末の収入勧とが決定した後になって始め て事後的にのみ利廻りを計算し得るのである。すなわち財務投資が実物投資と 本質的に異なる婚長は,肘蘭吸鰯では抑利廻りが抽以て既知で一滋しており, 向この利廻りを前以て自由紅約定することが可能であり,H投資の全期間にわ

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動的設備捜索計簸法における欠陥の除去紅つい< ・一∂9− たっての価値の流れを前以て事前的軋予想し決定出来ることの8つである。実 物投資では事後的にしか利廻りを計算出来ないのである。 さてすでに述べた如く資本価値法や内部利益率法などの近代的設備投資理論 は本来財務投資の考え方から生じたものであるから,資本価値や内部利益率 は元来実物投資にほ適しないものである。実物投資と財務投資とがお互に関連 しあって同一・祝し得る場合は実物投資を財務投資と見撤して取扱ってもよいで あろう。しかしこのような場合ほ非常に稀れである。また次の投資において内 部利益率ほ.4%または5%であった。 0===−−1000+2090γ ̄1−1092㌢ ̄2 このことはこの設備投資が4%の財務投資としてもまた5%の財務投資とし ても描写することが出来ることを意味している。この関係を図示すると次の第 1図の如くなる。 第1図 実物投資を4%ないし5%の財務投資と見徹した場合エリ ⊥ =−−−−−−− この2っの内部利益率の中どちらを採月]したらよいか分らないから,2っの 則務投資の中どちらか一・方のみの有利性からこの実物投資の有利性を−・義的に 結論することは不可能である。また虚数の内部利益率を有する財務投資のモデ ルを実物扱資にあてほめることも不適当である。さらにまたある人が植樹に投 資した実物投資の場合を考えると,投下資本ほその後の数年間に直ら紅植樹の 売却によって剛又されるものでほない。また柿樹ほ肘務投贅のよう紅用に−・定 11)Matthias Heister,a・a0い,S340

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香川大学経済学部 研究年報 3 ー7()【 j963 の利率で連続的な収入を生ぜしめるものでもない。ところがこの人が銀行に預 金を預ければ,この預金ほ毎日毎時利子収入を連続的に生ぜしめる。この最初 の支出から連続的な収入が成長して生ずるということが実物投資に財務数学的 方法(資本価値法や内部利益率法)を適用する前提をなしているのである。と ころが実物投資においては財務投資紅.おけるようにこのような連続的な収入の 前提を承認することほ出来ないから,財務投資ほ実物投資の不完全なモデルで ある。このよう妃実物投資と財務投資とは本質的に異なるから,実物投資に対 して−財務投資の方法である資本価値法や内部利益率法を適用することほ不適当 である。したがって我々ほ財務投資の財務数学的方法に欠別を告げることによ って,実物投資である設備投資に対して新しい別個の経済計算法を創造し適用 しなけれほならないことは明白なのである。 そうすると−■体ノ、イスタ斗は如何なる方法を採用しようというのであろう か。たとえば2つの機械の選択においてほ技師の判断,オ・−トメ・−ションの程 度,機械を運転する従業員の能力などが考慮されるのに対して,車輌運搬具の 選択においては乗心地,速度,安全性などが考慮されるというように選択の基 準にほ種々の尺度が存在するが,こゝでほ経済的見地のみを考察することとす る。 彼ほ実物投資匿おける設備投資の経済性計算の方法として採鳳すべきものは 経済原Iiり(Das8konomische PIIinzip)紅基く経済性計算であると主張する。 彼ほ資本佃値法や内部利益率法などの従来の動的投資計算法艦内在する欠陥を 除去するために経済原則による経済性計算を主張したのであった。そしてこの 自己の主張を経済的投資理論(Die6konomischeInvestitionstheorie)と呼び, それほ従来の近代的投資理論と相反するものでほなく,むしろこれを包含する ものであるとした。 さてこの経済原則に粛く拝済性計算ほ実物投資および財務投登の両方に共通 しで適用されるべき一人原則てある。それは一・定の支山でより大なる収入を!】て. ぜしめるか(最大原則),または州\定の収入を得るためにより小なる支出しか生 ぜしめない(最小原則)設備敗資案な採用するということを意味している。 たとえば現在1,000刀川を投下して2年後に1,210万【▲t]の収入む生む抜餞と,現 在1,000万円を股下して2年後に1,420万円を生む投資とを比較すると後者 ¢プが

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動的設備投資引算法における欠陥の除去に/ついて −7J山一 優っている(最大原則)。また現在l,000万円を投 ̄Fして2年後に1,210万円を生む 投資と現在1,100方円を投下して2年後に1,210万円を生む投資とでは前者の方が 優っている(最小原則、。このような比較の場合その他の条件ほ同一・であると仮 定され,た.ゞ一つ等しくない大きさのみを判断の尺度として評価するのである。 投資は支出と収入という2つの現金の流れから成り立っている。この支出と 収入は各々異なる時点紅生じたものである。したがってノ、イスタ−ほ実物投資 に適用すべき経済原則による経済計算法に通いては収入支出の金額とその発生 時点が判定の基準になるという。そしてこの判定の基準は次の第12表のように 収入の大なること,支出の小なること,収入時点が早いこと,支出時点が遅い ことの4っから成るとする。 第 12 衷 経済原則による有 利性の判定基準 −・致する大きさ (その他の条件) 投 資

芸仁∵∵.;

場 場 場 場 の の の の A B C D ん【.(7.‘) 入V α ′▼ムー 注:α=支出,∂=収入 fα=支出の時点,fゎ=収入の時点。 この関係を図示すると次の如くなる誓) 1 2 1 2 A の 場 合 収入の大なること −】.000十】.2】0曾 ̄2=0 −1000十1420ヴ ̄望=0 12)Derselbe,a a O‖,S342−3t3 β の 場 合 支出の小なること −1000」一1210ヴ ̄2=0 −−1100一卜1210ヴ ̄2=0

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香川大学経済学軸 研究年報 台 第 4 図 j9ββ _ 72 − 第 5 図 a;b 1210 ノ1 1210 二 ′て=プ11210 l ′_一一−−一一一1芯㌃: 1000 1 2 C の 場 合 収入時点の早いこと −1000十1210曾 ̄2=0 −1000+1210す ̄$=0 1 か の 場 合 支出時点の遅いこと −1000+1210曾 ̄2=0 −1000ヴ ̄1+1210ダ ̄2=0 A,Bの場合とC,Dの場合とは前者が現金の流れにおける金額上の差異を表 わし,後者が現金の流れにおける入出の時点上の差異を表わすから,表面上は 異なるように見えるが実は本質的にほ同じなのである。たとえば, Aの場合一収入の比較 定理 2っの投資案Ⅰ,Ⅱの中,その他の条件は同一・としてⅡの方が王より大 なる収入をもたらすならば経済的にほⅡが有利である。 条件 その他の条件ほ同一・としてニⅡが一層大なる収入をもたらす。 結論 それ故ⅡはⅠより経済的に有利である。 Cの場合一収入時点の比較 1定理 2つの投資案Ⅰ,Ⅱの申その他の条件は同一・としてⅠの収入時点がⅡの 収入時点より早いならばⅠほⅡよりも時間上の利点を持つ。 1条件 その他の条件は同一・としてⅠの収入時点はⅡよりも早期である。 1結論 それ故ⅠほⅡに対して時間上の利点を持つ。 2定理 2つの投資案Ⅰ,Ⅱの申1がⅡよりも時間上の利点を持つならば,収 入頗の再投資によってⅡの収入l隠古までに一個人なる収入が獲得され る。それ故工のⅡに対する一層大なる有利性が獲得される。 2条件 Ⅰの収入額の丙投鄭こよって力二の収入時ノ、tiまでにⅠの方が−・屑火なる 収入を獲得する。 2結論 それ故ⅠがⅡより福利である。

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動的故備換鹿討算法における欠鰍の除去砿ついセ ータぶ〟 これを見るとCの場合は結局Aの場合に還元し得ることが分かる。したがっ て時間比較においてほ実ほ価値比較が行われているのである。それ故CとDの 両方の場合は結局A,Bの2っの場合に還元されるので,経済原則による経済 性計算においてはA,Bの2っの場合だけを考えればよいということになる。 次に.このことに関する具体的計算例を示して−みよう。 いま以下のような2っの設備投資案があるとする。 (Ⅰ)支出tご0時点において1000万円

収入t=2時点において1800万円

(Ⅱ)支出いt=0時点に・おいて1500万円 収入t=8時点に.おいて2000万円 この2っの投資案の中どちらを選んだらよいかという問題に経済原則を適用 するためにはその他の条件を同一・としなければならない。またその具体的問題 に対して経済原則の申最大原則を採るのがよいか最小原則を採るのがよいかを も決定しなければならない。そこでこの場合においてほtニニ0からt=3までの期 間において利益を最大紅する最大原則を採用することとする。またその他の条 件を同一・にするために投資案Ⅰにおいてt=0時点における投資案Ⅱとの投下資 本の差額500万円を如何に使用するかについても決定しなければならない。この

500万円の差額に関する投資を以下においてほ補充投資(Supplement−investit

ion)と呼ぶ。そしてこの会社の実情を考え.てこの差額は実際に14%の利益率で 財務投資に投下されると仮定する。そうすると2つの投資案に関しては次の数 値が生じる。

げ) 支出t=0時点において1500万円

収入t=2時点払おいて1950万円

(ⅠⅠ) 支出t=0時点紅おいて1500万円

収入t=3時点において2000万円

これによって経済原111jによる俊劣の比較におけるCの場合が獲得された。こ れを最大原則のAの場合に還元するために,投資Ⅰ′の収入1950万円を・t==別摩㍍ からt二二3時ノ、ミまでの問において再投資した場合における.神仙tiを寺jわ′とければな らない。そこでこの会社の経営者が実際にこの1950万円の収入を6%の財務投 資に投下しようと考えたとするならば次のような比較資料が生じる。

(22)

香川大学纏済学鹿 融尭年奴 3 j9∂β 叫「J一 (Ⅰ′′) 支出・‥t=0時点で1500万円 収入‥t=3時点で 2067万円 (Ⅱ)支出・・t=0時点で1500万円 収入…・t=3時点で 2000万円 この比較から投資案Ⅰの方が有利であることが分った。 ハイスターは以上のように従来の動的投資計算の欠陥ほ実物投資に財務投資 の不適当なモデルをあてほ.めた点に存在する。そこで財務数学的モデルの適用 が患いのであるから,従来の動的投資計算の欠陥を除去するためにほ.実物投資 紅対して上に示したよな経済原則による新しい経済計算法を適用すべきである とするのである(このことは財務投資に対しても同様に言い得ることである が)。 以上述べたように実物投資をすべて財務投資で描写することは必ずしも適当 ではない。しかし勿論その描写が可能である場合も存在することは認めなけれ はならない。 ハイスターーほ資本価値法や内部利益率法は経済原則紅よる経済計算の特殊の 場合であるという。彼はこのことを具体的計算例を用いて−以 ̄Fの如く実証して いる。 いま次の第13表のような投資案があるとする。 13 表

% j O l l j 2 1 3 【 4

ー100,000 −80,000 +200,000 ート150,000 −100000 −80000曾 ̄1十200000曾、3」一150000曾 ̄4=0 これを解くと内部利益率ほ.25%となる。またこの関係を図示するとつぎの第 6図の如くなる。

(23)

動的設備投資計算法における欠陥の除去について −75一 招6i望一 枚贅案1の現金の流れ13) 1 2 3 4 第13表紅おいて欝1年度末に文通のため必要とされる調達資金80,000ブヨ円が 第1年庚申に利益率80%の財務投資から獲得されたものであり,また第8年度 未に獲得された収入200,000万円が第4年度中に実物投資に再投資されて第4年 度兼に230,000万円となると仮定すると第13表から次の第14表が得られる。

第 14 表

番号!%」 011

3 】 4 我々がこの投資案(1)紅10%の利子率で第4年度未払880,000万円をもたらす (したがって最初の支出ほ260,000万円となる)資本市場に対する投資案を比較 対照させるならば,最小原則によって最初の支出の小さい投資案1が有利であ ることが分かるのである。この関係を図示すると次の第7図の如くなる。 13)DeIノSel叫α・α0・!S346,

(24)

香川大学経済学部 研究年報 3 第71宝l最小原則匿よる経験的有利性の比校14) − 7(;∴− J−96β 1 2 3 4 次紅また滞18表において第1年末の80,000万円の第1年度申に.おける調達状 況および第3年末の収入200,000万円の第4年皮申の再投資の利廻り状況を経営 名がほっきり何%の利廻りだと予測し得ないため,統一・的に・−・律に.10%の利廻 りだと概算した場合は次の第15表が得られる。 第 15 表 この投資に再び10%の利子率でt=4時点において370,000万円を生ぜしめる (すなわちt=0時点での支出は2諦,000万円となる)競合的投資案を対抗させる と,こゝでもまた完全な最小原則紅よる比較が可能となり,投資案1の方が有 利となる。 さて今度ほいよいよ経済原則による経済性計算と資本価値法との関係を調べ てみよう。 14)DeISelbe,αα 0‖,S.347,

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動的設備投資計簸法把おける欠陥の除去について −77一冊 資本価値法払おいては時の経過に塞く価値の変化を考えて将来の収入支山を 最初の出発時点に割引くということがその特良である。たとえば次のような投 資案を考察してみよう。すなわちt=0時点で1,000万円の支出,t=別寺点で1,2

00万円の収入をもたらす投資案を考え,計算利子率5%としてその資本価値を

計算してみよう。そうすると −1000」−1,200・105−2=資本価傾 こ」で現在価値紅割引くということは2つの投資案の比較を意味している。 すなわち資本価値を求めることほ次の第16表紅おいて計算利子率5%と同じ利 率で第2年末に1,200万円の収入をもたらす財務投資と第0年末における1,000 万円の支出が第2年末紅1,200万円の収入をもたらす実物投資とを比較するこ となのである。そしてそれは.最小原則紅限定される。 第 16 衷 番 号 − % 【 O l l l 2 第 S 図15) それ放資本価値法によって2っの競合的設備投資案の比較を行うということ は経済原則による経済性計算匿おいてほ次の事柄を意味している。すなわち結 局4つの投資案が存在して,その中の2つずつが1対(1組)をなしている。 そしてその各組毎紅・一・対の2っの投資案を仮り紅最小原則のような形を借りて 15)Matthねs壬‡eister,RentabilitdtsanGlyse vonI7mSii’tio7W7l,ユ962ァS‖63・

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香川大学経済学部 研究年報 3 J963 ー 7β − 比較して叔初の投【下資本の差を求める。段後にこのようにして求められた各軸 の最初の投資額の差額をお互に比較するということになるのである。 このように資本価値法は形式的にほ仮りに最小原則の形をとるのであるが, 実質的には本当ほ最小のものが良いという最小原則でほ・ないのである。 この場合補充投資の利廻り,純収入の再投資(これも補充投資の一層である) の利廻り等はすべて計算利子率と同一・であると仮定されているのである。以下 払おいてはこのことについてさらに具体的な計算例をあげて説明してみよう。 いまこゝに2つの競合する投資案1および2があるとする。投資案1はt===0 時点で設備に500方円投下支出をすることによってt=1からt=8時点までの期 間において毎期100万円の収入を生ぜしめる。投資案2はt=0時点で1,100万円 の支出を設備へ投下することによってt=1,2,1,20までの期間に・おいて毎期

100万円の収入を生ぜしめる。計算利子率を6%としてこの2っの投資案に資本

価値法を適用すれば投資案1が投資案2よりも有利である。 この資本価値法による経済性比較を経済原則による経済性計算によって説明 するならばその結果は次の第17表および第18表の如くなる。18) 第 17 表 16)DeI・Selbe,αり 〃0・,S68−69」

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動的設備投資計算法における欠陥の除去紅ついて 一79−− この表においですべての補充投資は6%で評価され,また比較の基準となる 6%での財務投資ほ両者匿おいて共通で同一・のものである。資本価値法は経済 原則による経済性計算においては以上のような意味を有しているのである。以 上のノ\イスタ−・の述べた資本価値法の説明ほこじつけであって不適当である が,こゝではくわしくほふれないことにする。最後に内部利益率法を経済原則

によ▲る経済性計算龍よって説明しなけれほならない。資本価相法紅おいては現

在価値に割引くということから最小原則のみが適用された。ところが内部利益 率法ほこれと事情を異にしている。例えば次のような設備投資を考えよう。 −−1000+1690¢ ̄2=0 内部利益率ほqニ80%である。切拾率となる計算利子率を15%とすれば−Lの 投資案と比較される基準となる次のような15%の内部利益率を持つ投資案を考 えることが出来る。 −139ア+1690す ̄g=0(ただしす=ユ5%) または −1000+1210曾 ̄2=0(たゞし曾=15%) これによって内部利益率法ほ最小原則またほ最大原則のいずれによっても説 明することが出来るのである。これが資本価値法と異なる点である。 今次のような2つの競合的設備投資案があるとする。

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香川大学経済学部 研究年報.3 l一ざ〃 一 ∫ジ6、? け)】【1000 十1690ダ ̄2=0 ヴ=30% (2)−一1000 +600ダ ̄1ト600釘づ=0 曾=13% 内部利益率法によると投資案(1)が投資案12)より有利である。今度ほこれを経 済原則による経済性計算紅よって説明してみよう。 内部利益率による利益率比較を経済原則による比較に−・致させるため紅補充 投資の利廻りを内部利益率そのものと考える。そうすると次の第19表および第 9図が得られる㌘) 第 19 表 番 号 (2) † (13) 】 一仙1,000 以上の説明から明らかなように内部利益率法ほ経済原則による経済性計算に おいて,比較を可能にするために必要な,すべての補充投資の利益率が当該設 備の内部利益率と同一・の利率であると仮定した場合であって,きわめて特殊の 場合であることが分かる。 次紅内部利益率法では多くの解,負の解などが計算されるという点を経済原 17)Derselbe,alalOl,S189†

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動的設備投資計算法における欠陥の除去について −βJ−・ 別の立場から批判してみよう。このような欠l堀ほ実物投資を財務数学的見地か ら眺めることに原因があるのである。例をあげて説明しよう。そのため次のよ うな投資案Ⅰを考えてみようと思う。 一1000十2200¢ ̄1−1170曾 ̄2=0 これを解くと q=80%またほq=−10%という2っの内部利益率が得られ る。ところがこれに対してサでに述べた経済原則による経済性計算の手法を適 用し,すべての補充投資の利廻りを6%と仮定すれば次の第20表が得られる。 第 20 表

番 号】 %

1 1 2 −1,000 」−2,200 (−1,104 −1,096 −1,170 十1,170 (+1ッ162) tl) 】 (78) 一−1,000 +1,162 このように内部利益率法によれば2つの内部利益率を生ずる場合でも,経済 原則による計算を適用すればtニ=0時点における1,000万円の支出,t=2時点に おける1,162万円の収入というふうにこの投資実の経済性を一・意的に表わすこ とが出来る。以」二説明して来たように経済原則に基く経験的投資計算ほ設備投 資計算の方法として適正なすぐれた方法であると言うことが出来る。この計算 においてほすべての補充投資の利廻りほ.具体的に実際に生ずると予想される利 率が採用されるのである。 そして資本価値法や内部利益率法は経済原則に基く経済性計静の特殊の場合 であるということが出来るのである。 資本価値法と内部利益率法との解が食い適うのほ補充投資の利廻りに関する 両法の仮定が興っているからである。 これらの方法において仮定されている補充投資の利廻りが企業の実際の補充 投資の利廻りに一激するならば,これらの方法と経済原則紅よる計算の結果と は−・致するのである。 以上を要するにノ\イスタ・−ほ近代的投資理轟は財務綬資から腋発しており,

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香川大学経済学部 研究年報 3 ー β2− ∫96.? 尖物投資の経験的事実を認めることから出発していない。財務摂儲と尖物投資 と軋本質的紅異なるものである。それなの紅両者を同一班したことに欠陥があ る。それ敵視実の経験的現象である実物投資に朗務投資の財務数学的方法を適 用するのほ不適当である。現実の実物的な投備投資紅対してほ経済原則に基く 経済性計算を通称すべきであるとするのである。 ⅠⅠⅠ 以上紅應いて筆者ほ動的設備投資計算億の欠陥の除去に.関する色々な諸学説 を検討して釆た。そしてマッチアス・ノ、イスタ・−・の理論が最も明快で勝れてこい ると思うのである。ハイスタ−ほ従来の動的投資計算法に内在する種々なる欠 陥,すなわち解答上の食い違い,計算利子率の決定の困難性,2っ以上の解ま たほ虚数解を生ずる内部利益率法の欠点を経済原則に基く経済計算によって抹 殺してしまったのである。すなわち財務数学的数式から生ずる諸矛眉せ最初の 設備投資時点と計算期間の終りの時点というたゞ2つの時点における支出と収 入の単純な比較によって消滅せしめたのである。ノ\イスタ・−の主張は現在まで に色々の学者によってなされた種々なる解決策の中最も優れた学説であり,こ れによって一応の解決がなされたと言っても過言ではないであろう。しかしノ、 イスクーーの理論紅ほ.次のような欠点が存在している。 (1)資本価値法を経済原則に基く経済計算の特殊の場合であって最小原則を 適用したものだとしている。しかしこれはこぢつけである。本当に最小原則を 適用したものなら,計算期間の終りにおける収入ほ所与一・定として,言†算期間 の始めにおける支出投資額の小さいものを選ぶのが最小原則の本意である。ハ イスタ・−はある投資案の資本価値を求めることは,仮想的な・2つの投資案の計 算期間の始め紅おける資本投下額を最小原則によって計算し,その差額を求め ることに等しいとしているが,これは真の意味の最小原則ではない。それ放資 本価値法を経済原則に基く経済計算の特殊の場合として説明する彼の主張は単 なるこぢつけに.過ぎないと言わなければならないのである。 (2)ノ\イスクーは内部利益率法や資本価値法を経済原則に基く経済計算の特 殊の場合だとして,ある特別の場合に黙認している。しかし筆者は内部利益率 法および翳本価値法には次のような欠陥があると思う。すなわち先ず内部利益

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動的穀備投資封静故における欠陥の除去について −−ββ− 率法の公式を考え/てみよう。 いま最初の投資額をC,−・連の将来の投資額を01,02,,0クa,これらの投資 額の現価をⅠ,割引率Ⅹをとすれば,次の式が成立する。 十

′=C+−i告+量」一

て またこの設備から生ずる各年の営業上の純収入をRl,R2,・・,R雅,n年後に おける当該設備の残存価値をS,これらの現価をⅤとすれは

Ⅴ=十」−

てF

+ + て秤 このⅤとⅠとが等しくなるような割引率Ⅹが内部利益率であった。 次に資本価値法紅おいては計算利子率Ⅰ■を前以て所与−・走として次のような 資本価値を求めるのであった。

+揚〕

資本価値C=〔蓋+諸学+∴+濃平

−〔c+蓋−トて丁毀

卜十行‰〕

いまこれに関する具体例として次のような数値を有する設備投資案を考えて みよう。 −100,000 −80,000曾、1+200,000ヴ ̄8 十150,000曾 ̄4=0 そうすると内部利益率q=二25%であり,また計算利子率を10%とすれば資本 価値はC=79,710万円となる。この数値例で注意をしなければならないことは 資本価値法にしても内部利益率法にして−も将来の数値を現在に割引いていると いうことである。たとえば上の数値例に.おいて資本価値法化よれほ第1年末の 投資支出80,000万円を10%の割引率で第0年末に割引いている。その現価は 73,000万円である。これは何を意味しているかというと,この会社は第0年末 に最初の投下資本100,000万円の他に73,000万円の設備資金をも調達出来たこ とを意味している。そし■てこの73,000プニ川ヨを10%の利廻率で節1年人までに 80,ODO万円に増植出来ることを意味しているのである。もしそうでなければ実 際に資金を調達出来ないものを調達出来るかのように.第0年末に割引いて考え ることは経営の現実,すなわち経験的事実に反し,そういう解釈は無意味であ り,有害である。しかし,おそらくこの会社が弗0年未にこの投資案に使用し

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香川大学経済学部 研究年報 3 Jジ(;、今 −ぶイ− 得る資金は100,000万円だけであって,その他に78,OqO万円の余裕資金を調達 出来ることほ不可能な場合が多いであろうと考えられる。また各年の営業上の 純収入も各年末でなければ経営は獲得出来ないものであるの紅,10%の割引率 で割引いて第0年末にすべて獲得出来るかのように考えることは経験的事実に 反し,このような解釈は有害である。むしろ第1年末の設備資金支出甜,000万 円ほこれを他の用途に使用したならば獲得出来たであろう利益率を機会損失と 考えて,これを第1年末から第4年末までこの会社の平均利益率による複利で ころがして行って第4年末の終価において考察するのが正しいやり方だと思 ・う。各年の営業上の純収入にしても同様に第4年末の終価紅おいて考えるべき であると思う。いまこの会社の平均利益率を15%として上述の計算例にこの考 え方を適用すると次の第21表の如くなる。 第 21 表

番 号 ≒ % l O l l 【 2 】 3 l

4 そうしてこの節0年末の支出100,000万円と純収入の第4年末の終価258,320 万円を比較して,この投資案の経済性を判定するのが経験的事実に合致し,正 しいやり方だと思うのである。 そしてこのことは内部利益率法についても同様に言いうることであると思 う。資本価値法や内部利益率法ほ将来の数値を割引いてすべての数値を現在に. 引き直して,現存するかのように仮定して考賂する点において,すでに経験的事 実に反し,j[しい方法であるとほ讃い難いのである。むしろそれは終仙において 考えるべきである。最払jりレスト・アルバッノ\が.掛備投資計11如こ線型封l山i法を 適用Lて,各年度の調達資金に限度がある場合聴これを・制限条件として,リニア ・−・プログラミングを迫川している。18)そのJ紬斜こ1:】裾淵数の方においてほ係

(33)

動的設備投資計算法における欠怖の除去についで 叫・∂ぶ− 数として各投資案の資本価値を使用している。ところが資本価値は会社がたと えば引算期間の始めにおいて将来の収入またほ.支出の現在価値に相当する金額 を計算利子率と同一・の利廻りで直ち紅借入れたり貸付けたりすることが出来 ることを仮定している。すなわちこのことは制限条件の方で調達資金の限度に 制限をおいていながら,目標(利益)関数の方でほ計算期間の始めに自由に現 在価値の金額に相当する設備資金を調達出来るという仮定をしていることにな る。これは矛盾である。この点にホルスト・アルバッノ\の重大な欠陥があると思 うのであるが,このことに関しては別の論攻でくわしく論じたいと思■う。 次に内部利益率法は各年の営業上の純収入がその投資案の内部利益率と同一・ の利率で再投資されると仮定しているのであるが,このことは経営の実際にお いて行われないことが多いから不適当な仮定であると言わなければならないで あろ・う。 最後に資本価値法ほ投資利益率を反映し得ないという欠陥を有している。そ こでこの資本価値法の欠点を修正するために現在価値指数法(IndexofPresent Value Method)という方法が生じてきた。この方法紅よると設備への投資額 を除外して,各年の営業上の純収入の現在価値を設備への投資額で割った指数 すなわち現在価値指数を経済性の判定尺度として用いるのである。すなわちい ま次のような設備投資案があるとする。そして計算利子率を10%とする。 第0年度末 支 出=1,500万円 第1年皮末 純収入=1,000万円 第2年皮束 純収入ニ1,000万円 これに対して現在価値指数法を適用してみると次の如くなる。

各年の純収入の現在価値=+=1,736万円

現紺膵数(PresentValueIndex)=芸昌昌一ニ=6

この指数ほ1より大であることが必要であり,またこの指数の大なるものよ り順次序列をイ]・せられるのである。しかしこの方法ほ投資棚の大きさを考慮し ていないという欠陥がある。またこの方法においても上に述べた将来の数個を

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香川大学経済学部 研究年報 3 Jエ)d、ヲ 占61一一 現在に割引いて現在存在するかの如く考え.る資本価値法の欠陥を包蔵している のである。資本価値怯および内部利益率法は以上述べたような種々なる欠点を 有して−いるから筆者ほこれらの方法は経営に実地に使肝することほ不適当であ ると考えるのである。 (3)ハイスタ」−の経済原則による経済性計算は補充投資の利廻りについて, その時の企業の実際の利廻りを予定しているのであるが、このような企業の実 際の利廻りをその場合々々にあたって一・々具体的に予測して引算することは不 可能であり,また慈恵的な利廻りを決定することによって:経済性計算の結果を ゆがめることになる。それ政経営者ほ将来の補充投資に関してどうしても一・定 の平均的なコンスタントな利廻りを予め予測し決定しておかなければならない であろう。 (4)経済原則匿基く経済計算はきわめて多数の独立的投資案の間に順位を付 さなければならないときに,投資利益率を反映し得ないという欠陥を竃してい る。 筆者はノ\イスターの主張にほ以上のような欠点があると思うのである。そこ で多数の独立的投資案を比較して,その中からどれを選択すべきかという問題 が生じた場合に,ノ、イスタ・−の経済原則による経済計算の長所を有しながら,し も投資利益率を反映する適正な方法ほないものであろうか。ここにおいて筆者 は次のような設備投資の経済性計算を主張するのである。すなわち先ず第1 に数年乃至10年間の1計算期間を適正に決定する。そして各投資実についてこ の計算期間の始めと終りにおける支出額と収入額をノ\イスタ−の経済原則によ る経済計算の手法に似たやり方で決定する。その場合に計算利廻りとしてほ企 業の長期の平均利益率を画一・的に採用する。また計算期間の始めの正味の投資 支出額ほ除いて,それ以外の各年末の現金の流れほ正負の如何を問わず,すべて 計餅期間の終りの純イ仙において一考える。そして計卯期間末の収入朝倉計を計算 期間始めの投資支出額で割ることによって指数を求める。 この指数を筆者は「経済指数」と呼び虔いと思う。次紅企業の長期の経営資 稚対必要営業利益率によって切捨率を決定する。そして同一・の計算期間の期首 における10,000円がこの切捨率を利廻りとして複利で増殖して行った場合の封

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動的設備投資討静法における火曜の除去について 一身7−… 静期間末の元利合計を求め,これを最初の10,000円で割ることによって「 ̄切拾 率となる標準経済指数」を求める。各投資実の「経済指数」がこの「標準指数 」より大であればその投資案ほ合格圏内に入る。 さらにこの「経済指数」の大小によって各投資案の間に優先順位を付けるの である。次にこの筆者の主張する経済性計算の具体的計算例をあげてみよ■う。 いま次のような2つの競合する投資案2および8があるとする。封算期間は 5年である。 投資案2: 第0年皮末 文 出=100,000方円 第4年皮末 純収入=200,000万円 投資案3: 第0年度末 支 出==80,000万円 第5年度未 純収入=152,800万円 こ.の会社の長期の平均利益率を12%とすれば投資案2の純収入の第5年度末 の終イ酎ま200,000×(1一卜0..12)=224,000万円である。したがって投資案2の指 数は

「経 済 指 数」==224

となる。いま切捨率を10%とすれば

「切拾率となる標準指数」=墜土生壁ここ.161 100

,000 したがってこの投資案2は合格圏内紅入るのである。また投資案3の同一音卜

算期間に潔ける「経済指数」は=191である0それ放校資案8も合欄

内に入るのである。そしてまた投資案2が投資案3よりも優先した順位を付せ られるのである。さらにまたこのような「経済相数」に.基く計算の−一・変型とし て次のよ・うな方法も考えられる。すなわち 投賃案2:100,000(1+よ2)5=224,000 ∠2≡=て16% 投贅案3: 80,000(ト=…】)5±152,8qO Z=】言14∈彰

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