鳥大農研学
R(Bull Fac Agric,Tottori Univ)33 82∼
90(1981)家 畜 ふ ん尿 の耕 地 還 元利 用 の実 態 と経 営 的 課 題
―一 ′
鳥取県における事例調査 をもとに 一一
尾崎
繁
*昭和
55年 7月31日受付
Facts and Problemes On the Use Of
Manure in a Cultivated Field
―
Case Study in TOttOri Prefecture―
Shigeru OzAKIキ
In recent years, manure in livestock farming has become excessive resulting from the expansion of farna scale. On the other hand, crop farming needs manure to increase soil prOductivity. It is advantageous to combine livestock farming and crop farming. But, there are many difficult questions arising from this combination ln order to define these problems, the author made a survey in 1978々 ヤ1979 of 6 cases of this combination in l` ottori Prefecture and the next 6 prOblems were exanined. (1)Reconsideration of the effect of the manure,(2)Estabhshment of techniques in the usc of the manure.(3)Estab一 lishment of techniqucs in prOducing a good quality manure. (4)Economical evaluation of the manure and establishment of a marketing system。 (5)Increase in the combinatiOn of livestock farming and crop farming。 (6)Recognition of the part played by agricultural co― operative associations, and the fOrmulation of an administrative program. 耕種+和牛 の結 びつ きで象徴 された,烏取県の農 業は, 農業生産の機械化
,省
力化 の進展 にともない,1960年ご ろか ら和牛部 門 が急速 に衰退 し,耕
種 専作 に傾斜 してい った。 この結果,耕
種農家 はたい きゅ う肥 などの良質な 有機 質肥料 の供給源 を失 い,地
力の減遅 を打 くことにな った し,一
方,和
牛以外の家 畜 も合めて戸数の減 った畜 産農家 は,耕
地基盤の拡張 を見ぬまま飼養規模の拡大 を 図ったため,手
に余 るふ ん尿 が経営発展の大 きな制約 と なって立 ちはだか るよ うになった。 鳥取 統計情報事務所の推計 (1976年■月1日現在)4) によると,県
下の畜産農家 の うち,家
畜ふ ん尿 をたい き ゅ う肥造 りにまわ した農家 が87%,そ
の まま田畑 にまい た農家 が42%と なっているが,それ らが施用 された面積 は県下の田るよび普通畑面積合計の39%にす ぎない。 こ の ことは,地
域的 にみて家 畜ふん尿の過 剰 あるいは偏在 と, その一方 で不足状態 が同居 してい ることを示す もの とい える。 この よ うな過剰 と不足 を解消 し,耕
種 な らびに畜産農 家 の健 全 な発展 をはかる方策 として,家
畜ふ ん尿 を媒体 (結合生産物)とす る農家 間 あるいは地域間の補完結 合*鳥
取 大学農 学部 農 業経営 学 科農 業経営学 研究室組織 の設立 が各地 で試み られて いる。 この結合関係 は文 字 どお り “有無相通ず
"の
考 え方で,一
見,容
易 に成 り 立つ よ うに思 われるが,い
ざ実施段 階 になると,技
術的 にも経営的 にも問題 が多い。 本報告 はこれ らの問題 を整理 し,その対応策 を考 える 目的で行 った県内6事例の実態調査 の結果で ある。ただ し,調
査事例の なかには,組
織設立後 間 もないため問題 点 が十分 に出つ くしていない もの があった ことを,あら か じめことわってお く。 なお,こ
の報告の要 旨は1980年度の総合農学学会で発 表 した。 調査方法 および調 査地域の概況1.調
査方法 と調査事例 の概 要 調査 事例 には第2次農業構造改善事業,畜
産経営環境 保全集落群育成事業 などの助成 を受 けて既 に補完結合組 織 が設立 されてい る市町村 のなかか ら,地
域性1補
完 結 合型 (作物 と畜種 との結 びつ き)な
どを考慮 して第1表 調査事例の名称奉 (組織の設立年次)①会甲道甦贔 晋
(1977) ② 八頭 討昂帰 町農協 ③東伯郡大栄町農協 (1975) ④ 束伯郡東伯町農協 (1977)⑤米角再ぁ高農協
⑥境自葛搾
)農
協
*名 称の番号は本報告における説明順を示す。 に示す6事例 を選定 した。任意集 団で組織 される八頭郡 郡家町の事例 を除 くと,その他 はいず れも農協 が組織 の 中心的 な役割 を果た している。 調査 は1978年12月∼翌年 3月 に行 い,組
織の管理運営 責任者 な らびに耕種 ・畜産両農家の代表 と面談 した。 第2表 調査事例 の ある市 および町の農家, 畜産経営環境保全集落群育成 畜産経営環境保全集落群育成 畜産経営環境保全集落群育成 高能率集団畑作営農推進 畜産経営環境保全集落群育成 第2次農業構造改善 団体営畜産経営環境整備 第2次農業構造改善2.調
査地域 の農業概 況 調査事例 は県内東 ・中・西部 に各2か所ずつ分布 して いるが ,こ れ らを取 り巻 く市 または口子の農業概況 は第2, 3表に示 す とID・りで ある。東部 に位置す る郡家町 と河原 町 はよ く類似 してお り,経
営耕地規模 は ともに県平均 を 経営耕地 な らびに家畜飼養の概況(1975年)* 主 な関連 助 成事 業 飼料作物・麦・だいず ―一 乳用牛 (51戸,35 ha) (3戸
,148頭) 水稲・野菜・果樹 ―― 肉用十・ 乳用牛 (289戸,223 ha)(70戸,482頭)(20戸 ,178頭) すいか
,
長いも一一 肉用キ (820戸,450 ha)(630戸 ,140 ha)(36戸,2,500∼ 3,000頭) 野菜・果樹 。しば ―
ブロイラー (1,700戸,1,770 ha) (39戸 ,284万羽) 葉たばこ・水稲・は くさい 一― 】巴育豚 (のべ394戸
,256 ha) (6戸
,3,500頭) 白ねぎ・いちご・水稲 ―一 月巴育豚・ 採卵鶏 (地域内260 ha,地域外)(27戸,9,700頭)(38戸 ,41万羽) 第1表 調査対象事例 の名称 および補完結合型 の概要 補完結合型 (耕種 ―一 蓄産)(組織の規模) 市・町 総農家数
優家
動
総 経 営 耕地 面 積 (1戸 平均) ・経営耕地面積の構成 畜種別飼養頭羽数(飼養農家1戸平均規模 ) 水 田畑
樹 園地 乳用牛
肉用牛
豚
採 卵 鶏 〕イ ラー・・ 郡 家 町 河 原 町 大 栄 町 東 伯 町 米 子 市 境 港 市 力・% 1,413 (8.0) 1,492
(72)
1,338 (233) 1,734 (15,4) 5,350 (100) 1,401 (138) 1,103 ( 78) 1,129 ( 76) 1,598 (119) 1,771 (102) 3,492 ( 65) 561 ( 40)% % %
75,4 4 2 20 4 67 3 7.4 25 3 37 9 56.0 6.1 51.4 32 3 16 3 62.3 34.0 3 7 28 3 70 1 1 8 頭 頭 頭 羽 百 羽 431 134 944 22,029 109(216) (25) (42.9) (612) ( 55)
178 482 889 13,057 204 ( 5 4) ( 6 9) (37 0) ( 225) ( 68) 672 2,528 7,945 18,810 1,263 ( 8.3) (13 0) (30 8) ( 459) (1,263) 1'路)i駕
)組
1)イ
将
:4)守
研
) 476 1,374 10,369 77,697 1,612 ( 4 0) ( 2 1) (34 9) ( 272) ( 115) 29 13 6,457 466,509 330 ( 4,1) ( 1 3) (69.4) (6,664) ( 165) *農林水産省統計情報部 :1975年 農業セ ンサス鳥取県統計書 (1976)よ り作成。**出
荷羽数。尾崎 繁 第3表 調査 事例 の ある市 および町の農業粗生産額 とその内 わけ(1977年)ネ 市 ・町 総 額 ネ* (割合) 耕 種(第3位までの金額 と作物) 蓄 産(第3位 までの金額と畜種〉 /1ヽ 言十 億J合う 第1位
第2位
第3位 刀ヽ 言十 (害」ぞド) 第1位
第2位
第3位 君石 場だ 田丁 '可 原 口丁 大 栄 町 羽〔イ白田子 米 子 市 境 港 市 百 万 円・% 2,401 ( 100) 2,023 ( 100) 4,600 ( 100) 7,377 ( 100) 9,079 (100) 4,281 ( 100) 百 万 円・% 1,985 ( 83) 1,781 ( 88) 3,579 ( 77) 3,507 ( 47) 6,667 ( 73) 百 万 μl 白 力 円 白 万「 941 724 160 (米
) (果
実) (工
芸 作) 954 594 115 (米) (果
実) (野
菜) 2,112 763 312 (野菜) (米
) (呆
実) 1,072 874 856 (果 実) (里
子菜) (
米)
2,728 2,377 1,196 (米) (野
菜) (工
芸 作) 990 156 73 (野菜) (米
) (工
芸作) 白 万 円 % 416 17) 240 12) ( ( 1,019 ( 22) 3,862 ( 52) 2,381 ( 26) 2,994 ( 70) 百 万 円 百 万FI 百 万 円 162 147 92 (乳 用牛)(
鶏)(
豚 ) 64 63 58 (乳 用キ)(
豚)(
鶏 ) 448 217 187 ( 豚)(乳
用牛)(
鶏 ) 2,532 759 472 ( 鶏)(乳
用牛)(
豚 ) 1,133 921 157 ( 鶏)(
豚)(肉
用キ) 2,074 888 9(
鶏)(
豚)(乳
用牛) *農林水産省統計情報部 :1977年 生産農業所得統計(1979)より作成。**耕
種,畜産 に養蚕,加工農産物 を加 えた金額。 やや下回 る80a弱で,米
と果実 (な し,か
き)を主 とす る農山村で ある。畜産 は乳・肉用牛 がやや 目立つ程度で ある。 これに対 して中部 の大来町,東
伯町 は鳥取県農業 の代表的地位 を占め,耕
種 ・畜産 とも盛 んで ある。大来 町 はなかで もすいか,長
いもなどの野菜作 と乳オス月巴育, 豚 の飼養 が盛 んで あ り,東
伯町 はな し,野
菜, しばのほ か年間25億円の粗生産額 をあげるブロイ ラー生産 が全国 的 に有名で ある。 互 いに隣接す る米子市 と境港市の農業 は,経
営耕地規 模 こそ小 いがともに畑作,鶏
・豚 の飼養 に特色 がある。 とくに境港市は,砂
畑 を利用 した白ね ぎ,い
ちごの栽培 と,養
豚 ・養鶏 (採卯)で
抜 きん出ている。 事例別 にみた家畜ふん尿利用の実態1,東
郡家営農集団 この地域では,1971年よ り水田の県営ほ場整備事業 が 実施 されたが,工
事後 の排水不良のため,従
来 か らの水 稲+牧
草 十葉たばこの作付 け組 み合せ が不可能 となった。 これに対処す るため1977年に丼古,稲
荷,堀
越 の3集落 51戸で東郡家営農集団 (任意集団)を設立,水
田の乾田 化 とあわせて集団営農,水
田の高度利用 を推進す ること になった。本集団は参加農家の水田約
35haの利用権を設定し
,耕種農家に①作物②栽培型③農地管理型
(仝面委託
,一部
委託,個 人管理
)④
利用料を示す。集団はこれに対する
耕種農家の希望 をまとめて全体計画 をたて,委
託分 (集 団 にとっては受託分)は
,集
国内の3戸の酪農家 (成牛 148頭飼養)が
中心 になって管理 す る。 1978年 度の実積 では委託分 が夏作27.2ha(全部飼料作),冬作24.5 ha(飼料作14.4ha,麦10。lha),個人管理分 が夏作7 4ha(だい
ず6.3ha,野菜1.lha),冬作 が9.5ha(麦 4,7ha,野菜4.8
ha)と なっている。 委託 を受 けた酪農家 は
,た
い きゆう月巴配分計画 に従 っ て耕地 にふん尿 を還元 し,その代 りに生産 された飼料作 物 を受 けとることで利益差 の精算 を済 ま してい る。飼料 作物 の転作奨励金 (10aあ た り75,000円)は
耕種農家側 が受 け取 っている。 牛合の敷料 には2戸がオガ クズ, 1戸がカ ンナ クズ を 用 い,年
間 の ふ ん尿 生 産 量 は1,700t(ふん1,000t,尿 700t)と推定 されている。ふ んは野積み され,そ
の大部 分は 6月 (500t)と 10月 (200t)に散布 されるが,野
積 みのため品質管理 が不十分 である。尿はバキ ュームカー で主 に自己の農地 に散布 している。2.河
原町農協 本町畜産 の中核 をなす肉用牛 は,1975年以降規模拡大 がさらに進 んだが,それ とともに環境汚染 に対す る住民 の苦情 も増加 した。 ちょ うどこの頃,ほ
場整備事業 を実 施 中で あった町 は,整
備後 の地 力培養対策 をも兼ねて19 77年に畜産経営環境保 全集落群育成事業の導入 に踏み切 った。 この事業で は289戸の223 haの耕地 と90戸の660頭の 乳・肉用牛 が対象 となり,処理 を要するふんは年間5,059t (う ち241tは水分調整 用 ノコクズ),尿は1,068t(うち 704tは吸着用 ノコクズ,364tは
液状)と見込 まれてい る。ふんは町内6か所 のたい】巴合 に運 んで3,287tの たい きゅう肥 とし,尿
は20か所 の尿溜 か らバキュームカーで 耕地 に散布す ることになっている。 ただ し,実
際の組織的活動 は事業第2年目の1978年度か らス ター トしたため
,当
年度の実積 は60∼70haの 耕地 で70t前後のたい きゆう】巴施用 にとどまった もの と推定 され る。 この量 はたい きゅ う肥生産量の20%弱で あるか ら,なる相当量 が未利用のまま残 されたことになる。10a あた りのたい きゅう月巴施用基準 は水稲,い
ちご, さとい も,た
ねまぎが各2t,な
し,メ ロ ン,葉
たばこ,牧
草 が各ltと
なっている。 たい きゆう月巴の希望 は農協のそ菜,稲
作,果
実の各生 産部 が農家の希望 を取 りまとめて生産指導課 に申込み, 同課 は肥育,酪
農各部 にそれを割 り当て る。 たい きゅう 肥の価格 は, 2tあ
た り3,000円 で ある。3,大
栄町農協 本町で肉用牛 (乳オス)生
産 が本格的 に始 まったのは 1968年か らで あるが,現
在では県下の先進的 な集 国産地 とな り,個
別農家の経営 および技術水準 も高 い。飼養規 模 の拡大 にともな う環境汚染対策 と しては,は
や くか ら 畜舎の移転 と団地造成 を進 め,ふ
ん尿処理 の方法 もオガ クズ牛ふん と して耕地退元を主軸 として きた。ォガクズ 牛ふんの流通 は従来,個
別 に相対で行 われて きたが,19
75年か ら農協畜産課 が中心 となって耕種・畜産両農家の 補完結合組織 をつ くった。参加範囲は耕種 がす いか,長
いも生遊農家,畜
産 は12集落の肉 用牛 飼 養 農 家 36戸, 2,500∼3,000頭 である。 オガクズキふんの年間生産量 は2t車
で約3,000∼ 3,500 台分 (月平均250∼300台)と推定 されるが,その流通経 路 はほぼ3分の1ずつ 自家利用,相
対取 引 き,農
協 あっ せん となっている。相対取引 き (販売,稲
わ らとの交換 など)は
従来 か ら町一円で行 われていた もので1耕
種農 家 か ら注文 を受 けた畜産農家 が耕地 まで運搬す るか,耕
種農家 が畜産農家の ところまで取 りに行 くかのiヽず れか で ある。農協 あっせんは畜産課 が生産指導課の協 力を得 て,す
いかるよび長 いもの生産組織 を通 じて行 っている もので ある。耕種農家の時期別希望数量 をもとに畜産課 が地 区別の牛ふん配布計画 をたてて畜産農家 に連絡 をと り,連
絡 を受 けた畜産農家は,各
たい積場 に配置 された ショベルロー ダーで2tダ
ンプに積んで耕地 まで運 ぶ。 料金 は農協 の経済貯金 口座 か ら引 き落 とし,機
械施設維 持 費の一部 にあてている。 牛ふんの価値 につ いては耕種農家 によ く認識 されてお り,需
要期 には生産 が追 いつかぬ状態で ある。 しか し, 不要需期 の6∼8月 には余 りが ちで あるため, 2tあ
た りの料金 を需要期 よ り500円値引 きして2,500円 とした り, 隣接町への利用 を働 きかけている。4.東
伯町農協 本町で は1970∼ 78年にかけて7か所の大規 模ブロイ ラ ー団地 が造成 されたが,こ
れ ら団地 の技術指導,生
産物 の販売,鶏
ふん処理 につ いては,農
協畜産課 が中心的 な 役割 を果た している。 また,耕
種・畜産両農家群の結合 組織づ くりには農協 をあげて取 り組 んで お り,は
や くか ら「土づ くり運動」7)ぁ るいは 咽 地複合化構想」の先駆的 事例 と して全国的 に知 られている。 鶏ふんの利用範囲は町一円で あるが,そ
の多 くは野菜 作農家 に集 中 し,利
用面積 は延べ1,000 ha強, これに要 す る鶏ふん量 は年間約8,200t(乾燥ふん)と されている。 これに対 して共同の鶏ふんたい積処理所 を経 由す る鶏ふ んは284万 羽分 の3,400tほどで,必要量 の約42%で
ある。 別宮 るよび馬場 が平団地 の実績 をみ ると,1978年には 14戸,136万羽分の乾燥 鶏ふんが1,632t生産 され,この うち85%にあた る1,380tが農協 経 由で袋詰め出荷 され, 残 りの15%は鶏舎 か ら直接 に耕地 に搬 出 して施用 されて い る。袋詰め(13kg)1袋
の価格 は88.23円で ある。 鶏 ふんの一部 はバ ラ取 引 きされているが,その量 は僅少で ある。 ウイ ン ドレス鶏舎の鶏ふんは農協職員がバキュー ムカー を使 って無料で集め,た
い積所 に搬入 す る。鶏ふ ん希望の耕種農家 は農協畜産課 に申込み,現
物 の納入報 告 を待 って代金 は経済貯 金 か ら引 き落 とされ る。 鶏ふんの10aあた り施用基準 は水稲,す
いかで初春 に 0.5t,だいこん,はくさいで初秋元肥 と して0.2∼0.3t, しばで5年に1回の更新期春 に2t,収
穫 ・刈取後 に随 時0,2tな どとなっている。5,大
高農協 畜産公害 の解消 と飼養規模 の拡大 を目的 と して,1977 年 に肥育豚団地 が造成 されたの を機 に,本
地 区 における 豚ふん尿の組織的 な耕地還 元利用 が始 まった。 造成 された団地 は6戸 ,3,500頭規模 の もので,計画に よれば年間のふん尿生産量 は7,840t(尿は ノコクズに吸 着,80日】巴育の年4回転)と なる。 これ をたい積発酵 さ せて4,500tの たい きゆ う肥 とすることになっている。 こ のたい きゆう肥 は全量 が農協管内の延べ394戸 ,256 haの 耕地 に還元 され る。 施用量,面
積 とももっとも多いのは葉 たば こ (100ha,1,200t)で
次 いで水稲,飼
料作物,は
くさい,す
いか, くわ,い
ちごの〕贋である。 また,不
需要期 には1棟のた い肥舎(347m2)だけでは保管で きなくなるので,こ
れ ら 余剰分は団地 の近 くに建設 される米子葉たば こたい月巴生 産組 合のたい月巴工場 に供給す ることになって いる。 ノコ クズは境港市の本工団地 まで4.5t積 み トラックを使って 毎 日1回 , 6戸の農家が輪番制で取 りに行 ってい る。尾崎 繁 耕種農家 がたい きゆ う肥 を注文す る場合 には
,直
接団 地 か農協 に連絡すればよい。代金請求伝票 は運搬用2t
ダンプの運転 日誌 と照合 され,現
金 または経済貯 金 口座 で決済 される。 tあ た りの価格 は管内で運 んで行 った場 合は 2,000円,直
接取 りに来 た場合は無料で あるか ら, たい きゅう月巴その ものは無料 とい うことになる。2,000円 の もの と無料 の ものの取 り扱 い実績 は,ほ
ぼ8:2の
比 率で ある。6.中
浜農協 本地区は耕地の75%が
砂畑で あるため,た
い きゆうB巴 の必要度 が高 く,古
くか らその供給源 と して養Л系,養
鶏 とも盛 んで あった。第2次大戦後,飼
養規模 の拡大 をは かる農家 が増 えるとともに,環
境保全上 か ら集落内での 飼養 が不可能 となって きたので,1971∼72年にわたつて これ ら養豚 ・養鶏農家 を1か所 に集 めて団地 を造成 した。 この よ うな経過 があるため,当
時 か らふん尿の耕地還 元 利用 にはとくに配慮 がなされて きたが,その後の飼養規 模の拡大 によって既存の処理施設のみでは対応不十分 と 第4表 調査事例 別 にみた家畜ふん尿の処理 なったので,1979年か ら新規事業 によつて施設の整備 ・ 拡充 をはかることになった。 この事業 が完 了す ると,団
地外 も含めて27戸の養豚農 家 と38戸の養鶏農家 が豚9,700頭 (う ち繁殖豚600頭)採
卵鶏41万羽 を飼養す ることになるが,こ こか ら排 出 され るふん尿 は豚1こつ いては29,594t,鶏では16,761t, こ れに豚舎汚水147,825t(う ち汚泥1,460t)と莫大 な量 と なる。 これ らは各種の処理過程 を経 て最終的 にはたい積 月泰ぷん2,960t,乾
燥汚泥750kg,たい積 鶏ふん (樹皮混 入 のバー クたい月巴,商
品名 “セルフ ミン")13,289t,乾
燥鶏ふんと,500tと なる。 製品の地域 内 (境港市全域)利
用はたい積豚ふ んで10%,た
い積鶏ふ ん34%,乾
燥鶏ふん40%の見込 みで ある。 価格 はオガクズの入 らないたい積豚ぷんでtあたり3,000円 (運搬 は利用者),たい積鶏ふんで20kg詰め1袋250円 前 後で ある。7.事
例別の家畜ふん尿利用上の問題点 以上6事例 が抱 えてい る家畜ふん尿利用上の問題点 を ・施用技術面 および流通 ・組織 面の問題点 事 例 ふ ん尿 の処理 および施 用技術面‡ ふん尿の流通 および補完結合組織面孝 ① 那 家 町 Oたいきゅう肥の品質がよくない(生まふん施用 も多い)。 O運搬・散布 を引 き受 ける畜産農夕 に労 力的負担かかり過 ぎo O耕種農家がほ しいときに入手で きない(一時的品不足)。 O収益性の高い輪作体系が確立 していない。 Oふん尿の需要期,不需要期の調整がうまくいっていない (たい きゅう肥保管施設の未整備)。 O畜産農宏 と耕種農家の連帯意識が十分に一致 していない。 O転作奨励金 に支 えられた土地利用権の設定で未定着。 ② 河 原 町 Oた いきゅう肥が未完熟のためと価格が高い(2tあたり 3,000円)た めか,需要が計画を下回っている。 O果 樹類への施用は栽培管理上の制約がある。 Oオ ガクズ牛ふん以外のふん尿もほしい。 O畜産農家は公害発生の防止のみを考え,耕種農家はその吐 け 日として利用されている, という意識がある。 O農 協主導で事業計画や組織づくりが行われたため,補完結 合の意図が木端農家まで浸透 していない。 ③ 大 米 町 O敷料が不足するため良質なたいきゅう】巴の製造ができない。 Oた いきゅう肥施用の長いもにコガネムシが多発(1979年)。 Oた いきゅうB巴の価格が高い(2tあたり需要期3,000円,不需 要期2,500円)。 Oふ ん尿不需要期に一部を耕種農家のほ場にたい積保管する方 法の検討(需要期における既存保管施設の効率低下)。 Oた いきゅう肥の原価計算法の検討と道正価格の決定。 O敷料としてのモ ミガラ利用(粉砕利用を検討中)。 ④ 東 伯 町 O生 ま鶏ふんの施用は雑草を繁茂させるため完熟化が必要。 O発酵完熟化のための共同処理施設が不足 している。 O集 ふん時の畜産農家の健康管理が十分でない。 O集 ふん作業の省力化と鶏合防疫を目的としたバキュームカー の導入とその効率的な利用(ウインドレス鶏舎の場合)。 O共同処理施設建設のための敷地確保。 O鶏ふんのバラ利用による袋詰め,運搬経費の節減。 Oバラ利用による大量施用を行うためには,ほ場の集回化と作 物別の土地利用計画の策定が必要。 O鶏ふんたぃ積処理所の収支は赤字となっている。 ③ 米 子 市 Oた いきゅう肥が未完熟のためと価格が高いためか,需要が計 画を下回つている(このためt4,000円を半額に値下げ)。 O切 り返し労力および保管施設が不足 している。 O葉たばこへのたいきゅう肥,鶏ふん施用には常1約がある。 O不 需要期の保管施設の拡張と需給関係の調整。 O畜産農家と耕種農家の連帯意識が不足(たとえば耕種農家に よるたいきゅう肥切 り返し労力の提供などが考えられる)。 O発 酵菌の利用による完熟豚ふん製造技術の導入と経済性。 ⑥ 境 港 市 Oオ ガクズ豚ふんのたいきゅう肥化技術が確立 していない。 Oオ ガクズ豚ふんの野菜類に対する施用基準の検討。 O尿の浄化処理法 とオガクズによる吸者たい肥化法との経済的 比較がで きていない。 Oオガクズ豚ふんたい肥合の年間回転率が3回転 と低い。 O樹皮混入のたい積鶏ふんの地区内利用は限界にきているので, 他地域への販路拡張が必要(広域利用)。 *こ の分類は便宜的なもので,明 確に区別できない項目もある。また,事例別の項目の配列は順序不同で順位を示すものではない。整理す ると第4表の よ うになる。 この表で は便宜的 に問 題点 を2つに分 けて整理 し
,そ
の1つをふん尿供給側の 畜産農家 とそれを利用す る耕種農家 がそれぞれに抱 えて いるよ り直接的 な問題,い
いかえるとふん尿の処理技術 と施用技術面の問題 とし,他
の1つを両農家群 にまたが る結合組織 およびふん尿流通面の問題 と して まとめ てみ た。 しか し,実
際 にはこれ らの問題 は複雑 に絡 み合 って いるので,この よ うな単純 な分類 整理で は無理 があるこ 耕種農家 (ふん尿利用側) Oほ場 が未整備のため運搬 ,散 布が困難。 Oほ場散布の労 力が不足。 O運搬用またはほ場散布用の機械 が不足。 O水分や悪臭が多くて使用 に不便。 Oいつでも欲 しいときに入手で きない。 Oたいきゅう肥舎などの保管施設がない。 O品質にムラがあるので使 うのが不安。 O施用基準が不明確である。 O思ったより価格が高い。 O仲介組織がないのφ 予ゝたくても使えず。1.家
畜ふん尿の地 力培養効果の再確認 家畜ふん尿の耕地還元利用の基本 をなす ものは,地
カ ならびにその培養 に果 たす家 畜ふん尿の役割 を耕種・畜 産両農家 が正 しく認識す ることで ある。一般的 には有機 質B巴料の名の もとに10ぱひ とか らげに理解 されていて, なんで も施用 しさえすれば効果 が上 がるよ うな錯 党 にloh ちいつている農家 が少 な くない。施用方法 を間違 えたた めに耕種農家 が大 きな損失 を被 った例 は数 多 く,それが 家畜ふん尿 に対す る過小評価 となって施用 を控 えさせ る 結果 となっている。一方,畜
産農家側 の認識不足 はふん 尿の粗雑 な処理方法 を招 き,これまた施用上の ブ レーキ となっている。 そもそも地 力または土壊肥沃度 とは「作物 が必要 とす るだけの養分,水
倉 および空気の供給 がで き,土
壊微生 物の活動 を活発 に し,作
物 に有害 な病原菌,害
虫の繁殖 その他有害物質の発生 を抑制 し,強
健 な作物 を育て るこ とので きる力またはその程 度」0と一般 に説明されている。 化学肥料 (無機質肥料)お
よび油 かす 。たい肥 などの有 機質肥料の施用 は地 力培養の主要 な手段 で あるが,その 役害」は両者 それぞれで異 っている。す なわち,前
者 はも っぱ ら作物 の養分供給のため に施 用 されるの に対 して, 後者 は特 に現在の化学月巴料で は代替の きかない面で地 力 培養 に貢献 しているもの と考 えられてい る。 とは否 め ない。 家 畜ふん尿 の耕地還元利用上の課題 第5表は第4表の調査事例別問題点にその他 の知見5,6) も加 えて,耕
種農家 (ふん尿 を自家利用す る畜産農家 も 含む),畜
産 農 家,補完 結合組織 の中枢 をなす農協 の3 つに分 けて,問題 の再整理 をした もので ある。 これ らを 6項目にまとめて以下 に考察 を加 えてみ る。 農 協 (仲介役側) Oほ場整備事業の促進。 O畑地化の促進 によるふん尿施用の拡大。 O不需要期の保管施設の建設。 O畜種別ふん尿加工処理技術の確立。 O作物別ふん尿施用基準の設定。 O敷料の確保 と新 しい敷料の開発。 O耕種農家 に対するふん尿利用のPR。 O耕種・畜産両農家の連帯意識の高揚。 Oふん尿の道正価格の算定。 O広域的 なふん尿利用組織の育成。 しか しなが ら,ひ
と口に有機 質 といって もlA)油かす, 魚粉 などのよ うないわゆる「有機 質肥料」のほかに(B)完 熟 たい きゆう月巴,緑
月巴などの「粗大有機物」,(C)オガクズ, バー ク(樹皮 )な ど,そして(D)家畜ふん尿,汚泥 などに分 類Dで
き,それぞれに地 力の培養 に果たす役割や程度が 異 っている。 地 力培養効果 につ いて比較的 よ くわかっているのはA,Bグ
ループで,中
で もBグ
ループは有機質の代表 ともい うべ きもので ある。 これに対 してC,Dグ
ループには地 力培養効果 につ いて不明 な点 が多 く,このため施用量 や 施用技術 も十分 に確立 してい ないのが現状である。 この 直接的理 由 と しては,バ
ー クやオガクズの よ うに材料 そ の もの が新 しい種類で あつた り,家
畜生 まふんや半熟 た い きゆう肥の よ うに大量施用の問題 が深刻化 したのが近 年 になってか らといったデー タ収集上の時間的制約のほ か,多
岐 な生産過程 を経 ることによる材料組成のバ ラつ きとか,施
用対象作物 の 多様化 など問題 の複雑性 をとり あtヂることがで きる。2.家
畜ふん尿 の施用技術 の確立 家畜ふん尿の施用量や施用技術 が未確立 なことは前述 した ところで あるが,す
で に裏づ けデー タの揃 っているBグ
ループの完熟 たい きゆ う】巴施 用 に関す る次のような 一般的結論2)が参考 になる。「土壌 の適 当な管理 を除外 し 第5表 家畜ふん尿の耕地還元利用 を促進す るための課題 (第4表参照) 畜産農家(ふん尿供給供1) O完熟たいきゅう肥 をつ くる労 力が不足。 O不需要期 に保管する施設がない。 O保管施設,処理・運搬用機械 に金がかか り過 ぎる。 O処理 ・保管施設の敷地難。 O敷料の入手が困警。 O加 工・処理技術が不明確である。 O手 間をかけた割に価格が安い。 Oた いきゅう】日こ対する耕種農家の不理解。 O仲 介組織がないので利用 してもらえない。尾崎 繁 あ らゆる場合 にたい きゆう肥の効果 は多々 ます ます便ず るとい う考 え方 は誤 りで ある。 たい きゆ う月巴の増施 は養 分供給の面 か らみて も, また物理性 の改善の面 か らみて も良好 な土壊 を造成す るために きわめて有効 な手段 では あるが
,決
して十分 な手段 で ないことを忘 れてはな らな いJ。 この結論 を裏づ けるもの と して,た
とえば大山灰土壌 の畑 の一部や通気性 ・排水 ともに良好 な砂畑,良
好 な団 粒構造 をつ くりやすい植土で は,た
い きゆ うB巴の施用 が なくても適量の化学月巴料 の施 用で代替で きる し,一
方, 水田土壊では物理性の問題 が畑 の場 合よ り小 さいためた い きゆ う肥施用の効果 がほ とん ど現 れ ない場合 もあるという
p地
力培養効果は有機質と土壊 との長年月のかか
わり合いによって現れるものと判断されるので
,試
験期
間のお さえ方 によっては上記 デー タに対す る評価 も変 り うるかも知れないが,少なくとも現段 階においては,土壌 の種類 によってたい きゆう月巴施 用の効果が異 ることだ け は確 かであると) これ と同 じことが作物 の種類 や生育段 階 につ いて もい える。た とえば多 くの飼料作物 や野菜類のよ うにかな り の程度の施用力判叉量 ・品質の向上 に効果 を発揮す るもの もあれば,成
木 に達 したナ ンとか育苗期間中の野菜類の よ うに施用量 を誤 まるとかえってマイナスになるもの も ある。 しかも,家
畜ふん尿の性状 は多種 多様 であるから, これ まで に述べて きたよ うな組 合せ を十分 に検討せぬ ま ま施用 した場合 には,効
果 どころか作物 の生育や品質 を 阻害 した り, ときには収穫皆無 といった事態 も発生 しか ね ない。家畜ふん尿 がまちがいな く作物 の安定 多収,品
質向上 に結 びつ くよ うな施用技術 の確立 が望 まれる。3.家
畜ふん尿の処理技術 の確立 家畜ふん尿 を利用す る耕種農家 の側 か ら見 ると,家
畜 ふん尿の施用 には,品
質面で前項で述 べたよ うな不安 が たえずつ きまとう。成分 がはっ きりしていて,時
期 を問 わず安定 した高品質のふん尿 を希望す ることは当然 とい える。 また,取
り扱 い易 さとい う点で水分や悪臭 が少 な く,で
きれば袋詰めに したもの とい う要望 も強 い。 これ にこたえるため一部では,一
般 の化学月巴料 と同 じよ うに 加工 して製品化 を行 っているが1こ
れには多額の設備投 資 を伴 うので,ど
こで も真似 がで きることではない。 このため,大
中家畜のふん尿では, さしあたってたい きゆう肥化す ることが一般化 してい る。腐熟発酵 が十分 に行 われたたい きゆう肥 は手で握 って もパサパサ した感 じで,悪
臭 もほ とん ど しないことはよ く知 られている。 しか し,このよ うなたい肥 をつ くるためには適度の水分 と温度,そ して好気性菌 による発酵 を促す ための酸素の 補給 が不可欠 となる。畜合の敷料にオガクズやモ ミガラ などを使 っている場 合 には,従
来 か らの稲 わ らや山野草 の場合 に比べ て分解 しに くい成分が多いので,前
記の三 拍子 をそろえて時 間 をかけて完熟 させ ることが必要で あ る。 また,乾
燥鶏ふん につ いて もほ場 での二次発酵が起 こらないよ うに処理 しなければな らない。 三拍子 の中で, と くに苦心 を要す るのは酸素の補給で あるが,通
常,こ
のため にはたい積ふんの切 り返 し作業 を行 っている。 多量 のたい積ふんの切 り返 しにはパ ワー シ ョベルなどの機械 力と,切
り返 したのめの作業空間が 必要で ある。 しか し現実 には,設
備 はあつて も労働 力事 情 やたい きゆ う肥 に対す る認識不足 か ら十分 にこの作業 が行 われてIDhらずj未
熟 なたい きゆう肥 を供給 して耕種 農家 との あいだに トラブルを生 じている例 も少 なくないo これを防 ぐため,設
備投 資はかさむが発酵処理機械 をは じめか ら導入 してい るところもある。 要す るに,家
畜ふ ん尿 をよろこんで耕種農家 に利用 し て も らうためには,それ な りの処理技術 を修得 して対応 しなければな らない とい うことである。 また,近
年の敷 料不足 に対応 したふん尿 の処理加工技術 の開発や敷料 そ の ものの開発 にも目を向 ける必要 がある。4.家
畜ふ ん尿の経済的評価 と流通 システムの確立 家畜ふん尿の中 には乾燥鶏ふんの よ うに古 くか ら市価 をもって流通 してい るもの もあるが,多
くの ものは市価 がなかった り,あ
って も同種類の もので かな りの価格差 がある。 この理 由 と しては,ふ
ん尿の処理 に手 をやいて いる畜産農家側 が,は
じめか ら価格問題 を出す と耕種農 家 を束」激 して需要 がス トップす るかも しれない とい う配 慮や,前
述 したよ うなふ ん尿 その ものの効 力や品質が安 定 していないため客観的 な評価 をすることがむず かしい, といった事情 を考 えることがで きる。 また,耕
種農家側 は高す ぎるといい,畜
産農家側 は安す ぎるとい う背景 に は,両
農家 がおかれてい る立場 の相違 もある。 しか し,今
後ふん尿の流通量 が増 え,製
品その ものの 品質 も安定 して くれば,当
然,両
者 に納得のい く経済的 評価 が必要 になって くる。 この場合,その評価方法 には ① 肥料成分 とか月巴効 によるもの,②
生産原価 によるもの, ③ 両方 をあわせたもの,な
どが考 えられ るが,①
に関 し ては長年 月にわた る地 力の増進効果 をどのよ うに評イ面す るか とか,②
に関 しては耕種・畜産 両農家の費用の負担 区分 などが問題 となろ う。 現状 では価格問題 をひとまず おいて,ふ
ん尿の流通体 系づ くりが先行 している。毎 日多量 に排 出 される家畜ふん尿の始末が先決で ある以上当然 の成 りゆきともいえる。 各事例 ともそれ な りの工大 を重 ねて現在の体系 をつ くり だ しているが
,流
通上のネ ックとなっているのは次の諸 点で ある。 ① ふん尿の不需要期 (冬または夏)の
調整 :こ の時期 にあわせて保管施設 をつ くると需要期 には逆 に利用効率 が落 ちる。② 処理・加工・保管施設建設のための用地確 保 :畜 産公害の二次汚染 を理由 に確保 がむず か しくなっ ている。③ 機械施設の効率的利用 :ふ ん尿の不需要期 に おける稼動 力の低下 が問題 となる。 また,耕
種農家側 で は,ほ
場 に運 び込 まれたあとの散布作業 に手 をやいてい る。 オペ レー ターの確保 や機械設備 のたい きゆ う】巴製造 ∼運搬・施用 にいたる一貫利用体系の確立 が望 まれる。①道路網の整備および農地の集団化
:ふん尿の施用を容
易 にす るための環境づ くりで ある。5.耕
種・畜産両農家の連帯意識 の高揚 耕種農家 には,畜
産農家のやっかい物 を始末 してやつ ているとい う意識 が多少 とも潜在 してい る。 しか し, 1 で述 べたよ うに,家
畜ふん尿の適正 を施 用が地 力の培養 に大 きな役割 を果 たす ことを認識 し,あ
わせて資源 の有 効利用 とい う観点 に立つ ならば,それは大 きな誤解 で あ るといわなければな らない。 お互 いに持 ちつ持 たれつの 立場 にあることを再確認 して,農
業の発展 を期 す ること が大切で ある。 このよ うな連帯意識の高揚によって,こ
れ まで にあげ て きた問題のい くつ かは解決の途 が開 かれ る可能性 があ る。た とえば,耕
種農家の積極的 な協 力によって出来 る こととしては,不
需要期 におけるふん尿の 自家 ほ場での 一部 たい積 引 き受 けとか (ただ し,二
次公害 の発生防止 技術 の確立 が前提),保管施 設建 設 用地 の提供, さらに はふん尿加工処理時 の労働 力や稲 わ ら,飼
料作物 の提供 などがあげ られる。 また,畜
産農家 と してはふ ん尿の運 搬 ・散布時 における機械 や労働 力の提供 などが可能で あ ろ う。 このよ うな土地,労
働 力,機
械 の相互利用 は とり もなお さず補完結合関係 のよ り高度 な展 開 を目ざす もの といえる。6.農
協 および行政の役割 と対応 農協 は管内の耕種 ・畜産両農家 を掌握 してい るので, 両者の利害 を調整 して補完結合関係 を推進す るの に適役 といえる。 また,各
種の関連事業の事業主体 となってい るので,行
政側 との交渉役 として もふ さわ しい。 ただ し, これ らの役割 は,あ
くまで主体 は農業者 自体 にもたせ る ことが大切で ある。 ふん尿の加工処理技術 とか施用技術 に関す る情報提供 や子旨導の役割 も欠かせ ない。施用技術 に関連 して,収
益 性 の高 い輪作体系の導入 や土地 の高度利用の促進 をはか り,ふ
ん尿の受 け皿 を拡 げてい くことも必要で ある。 こ れ らは農業改良普及所,関
係 団体 との連携 によって密度 が高 くなろ う。 さらに,ふ
ん尿流通事業の収支計算 をす る場合,こ
の 事業 を単独 にとらえるな らば,ふ
ん尿の流通価格 をあげ ない限 り,赤
字決算 になることもおこ りうる。 しか し, 価格 が高いために流通 にブ レーキがかか るよ うでは本末 転倒 となる。 この結合関係 が本来ね らい とす るところを 理解す るな らば,ふ
ん尿で赤字 が出て も農畜産物 の生産 面で赤字 を補 って余 りある収益 があがるはずで ある。ふ ん尿の流通 が従来の化学肥料 や農薬の取 り扱 い量 を押 え 農協 の収益 を悪化 させ るとい うの も近視眼的 な発想 と考 えなければならない。 なる,畜
種 によっては地域的 に偏在 していて,その地 域で は入手 がむずか しいふん尿 があった り,地
域 内だけ ではふん尿供給量 に過不足 が生 じる場合 がある。 これ ら に対処す るためには農協 間の横 の連絡 を密 に し,広
域的 なふん尿流通組織 をつ くる必要 が生 じる。 また,費
用便益比的 な考 え方 か らすれば,ふ
ん尿流通 事業の投資効率 はかな り低 いことが予想 される。 それだ けに行政面 か らの助成 は欠かせ ないが,全
般的 にみて, その助成額 は畜産農家側 に厚 く,耕
種農家側 に うすい。 その意味で耕種農家側へ配慮すべ き点 をい くつ かあげる な らば,一
時貯蔵施設の建設,ほ
場 内での運搬散布用機 械 の導入,ほ
場整備 などをあげることがで きる。 とくにほ場整備 に関 しては,運
搬車の進入 がで きる農 道の整備,な らびに散布機械 の運転能率 とふん尿の施用 効果 をあげるための排水対策 とほ場 の集団化 などが当面 の課題 となる。 結言 余 った家畜ふん尿 を不足 している耕地 に動 かす,とい う着想 を実行 に移す段 階で
,い
かに多岐 にわた る問題 が 存在す るかが,今
回の調査で明 らかになった。 そ して不 十分 なが ら,調
査事例 はそれぞれの問題対処 の仕方 を考 え,飼
養規模 の拡大 とふん尿の有効利用 とい う当初の 目 的 を果 た しつつ ある。 しか し,ど
ちらかとい えばそれは畜産農 家側 に片寄 っ た解決方法で あって,耕
種農家 との有機的 な結合 は まだ 不完全で ある。例 えば大家畜の場 合では,水
田裏作の利 用 とたい きゆう肥の交換,モ
ミガ ラなどの副産物 の活用, 裏作放棄田へのふん尿散布 (ふん尿不需要期 の対策)な尾崎 繁