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ウンシュウミカンの早期落果と昼夜の温度条件-香川大学学術情報リポジトリ

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ウソシュウミカンの早期落果と昼夜の温度条件

井上 宏・銭 長発*

EFFECT OF DIFFERENT TEMPERATURES BETWEEN DAY AND NIGHT

ON THE EARLY FRUIT DROPSIN SATSUMAMANDARINS

HiroshiINOUEandChang−faCHIEN

Effectsoftemperaturesbeforeandafternoweringontheearlyfruitdropinsatsumamandarin(CVOkitsu

Wase)werestudiedTwo−year−Oldpottedtreeswer・egrOWninthesunlitphytotronroomsheldatvariousday andnighttemperatures(incombinationwith25,20and15℃)andinthefield

Flowering was advanced withincreasing temperature,Whereas theflowering period was considerably Shortenedandmoreabnormalflowerswereproduced Thesizeofovaryatfullbloomwassignificantlygreater

atlower temperatures,and waslargest at20/20℃day/nightThe close relationship was found between temperatureandfruitdropAthightemperatures,therateoffruitdroprapidlyincreaSediustafteranthesis

andr・eaChedamaximumaboutaweek afterfullbloom Atlower temperaturesbelow20/20℃,however,it

gr・adua11yincreasedafter anthesisandreachedamaximumabouttwoweeksafterfullbloom Severer fruit

dr■OpOCCurredinshorter period athightemperaturesthan atlowertemperatures Consequently,tOtalfruit

dropratiowasconsiderablyhigherathigher temperaturesthanatlower temperaturesMorefruitsdr’Opped

bydaywhenthedaytemperatur−eWaShigherthanorsameasthenighttemperatureIncontrast,fruitdrop mostlyoccurredatnightwhenthenighttemperatureWaShigherthanthedaytemperatureTherateoffruit

dropinlea且ess fruit was higher thaninleafy fruit,and almost a11theleafless fruits dropped at higher temper■atureS Onemonthafterfullbloom,thefruitsizewaslargestat25/25℃andsmallestat15/15℃ Thehigherratio Ofthelongitudinallengthtothetransversediameter(L/Dratio)wasobservedinthefruitathightemper−atureS ウソシュウミカンの発育期からの昼夜の温度条件が早期落果に及ばす影響を観察した。鉢植えの2年生の早生ウソ シュウミカン‘興津早生’を供試し,ファイトトロソの25,2d及び15℃婁の昼夜温の組合せによる9温度処理区と露地 区を設けた。 高温区ほど開花が早く,開花期間も短かくなったが,不完全花の発生も増加した。開花時の子房は低温区で大きく, 20−20℃区で最大であった。気温と生理的落果の関係は密接で,25−25℃区などの高温区の落果のピークは早く現れ, 高かった。落果期間も短く,全落果率も高かった。昼夜問いずれも20℃以下の低温区では,落果のピークが現れるの が遅く,落果期間は長く,落果率も低くなった。昼温が夜温より高いか昼夜温が同じ場合には,昼間の落果が多かっ たが,夜温が高い場合には,夜間の落果が多くなった。とくに,25℃と15℃の組合わせで最も顕著であった。有美果 はいずれの処理区においても,直花果より落果が少なかったが,気温が高くなるほど直花果の落果率は高くなった。 満開期後1か月の幼果の大きさは,25−25℃区で最も優れ,15−15℃区で最も劣った。異形指数は.高温区ほど小さく, 腰高果を示した。 *現在 中華人民共和国農業現代化研究所(湖南省長沙而)

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12 香川大学農学部学術報告 第39巻 第1号(1987) 緒 ウソシュウミカソの早期落果は通常,5月上中旬の開花期前の菅の状態から始まり,開花後1・、2か月の間,持続 する。自然条件下では最高気温が22∼23℃から,最低気温は12∼13℃から次第に上昇していく期間である。近年発達 したウンシュウミカンの/、ウス栽培でほ,/、ウス内の気温を調節することによって,生理的落果の抑制や促進をはか るなど,気温の高低と落果の多少の関係を結実管理技術の上に活かしている。そこで筆名らは早生ウソシュウミカン について昼夜の室温を調節し得るファイトトロソ内に鉢植えの幼樹を搬入し,昼夜の気温の変化が早期落果に及ぼす 影響を観察した。 材料及び方法 前年定植した漬径30cmの素焼鉢植えのカラタチ台‘興津早生’2年生樹で,1樹あたり100前後の花菅の発生したもの を選び,1982年5月1日に温度処理を開始した。温度条件の設定には香川大学農学部構内のファイトトロンの25,20 及び15℃室を用い(湿度75%),それぞれの処理に応じて鉢を搬出,入した。露地区は隣接のほ場においた。処理区と してほ昼夜恒温として−25,20,15℃室に.そのままおいた3区と昼間(年前6時∼午後6時)と夜間(午後6時一年前 6時)を上記の温度の組合せで変温した6区を設けた。落菅,落花及び落果数の調査は午前6時と午後6時に毎日実 施し,昼間及び夜間の落果数としてまとめた。調査は6月下旬に打ち切って,全着菅数に対する落雷,落花,落果数 の合計または昼,夜間別合計を全落果率または昼,夜間落果率として算出した。生理落果調査期間中の露地の最高, 最低気温は第1図のとおりで,それぞれ22∼27℃,12∼18℃であった。なお,1区3鉢を供試した。 最高気温 一一一■ .′ / / ′′

/_最低気温 5 6 7 月 第1図 露地の最高及び最低気温(旬別) 結 果 1.花啓発生後の温度処理と開花期 花菅発生後の温度処理が開花期に及ぼす影響は第2図のとおりである。露地区においては5月9日に開花し始め, 5月17日に開花を終ったが,25−25℃区(昼一夜温)においては,処理後6日目に開花を始め,10日目には開花が終わ り,開花期間はわずか5日間であった。昼温と夜温の平均温度が低くなるほど開花始めが遅くなり,開花期間も長く なる傾向があり,本実験の処理で最も低温の15−15℃区で露地区より開花が抑制され,5月10日から開花し,開花期間 は12日間であった。同じ昼夜の平均温度の区の間では,開花期はほとんと変わらなかった。温度と開花開始期及び開 花期間の間には,いずれも負の高い相関関係(−1“0,−095)が囲められた。

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1ト 満開日 第2図 開 花 期 第1表 満開期の花器の大きさ(直花) 処 理 区 花 垂 (昼一夜) (mg) 径 横 扇 房∵払 子 25−25℃ 204 7 25 − 20 245 2 20 − 25 263 6 25 −15 231−5 15 − 25 289 5 20 − 20 299 8 20 −15 296 5 15 − 20 291 8 15 −15 293 4 露 地 249 1 2 2 5 6 6 3 0 3 0 4 6 8 ︵X︶ 5 2 7 4 3 6 5 1 1 1 1 2 2 2 2 2 2 7 3 9 5 0 8 6 5 4 1 9 0 8 9 3 7 3 3 5 5 2 3 2 2 3 3 3 3 3 3 7 0 1 1 5 4 6 3 0 8 0 2 0 0 4 8 2 4 5 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 0 0 0 0 0 0 1 0 1 1 9 9 9 9 9 9 0 9 0 0 7 5 6 8 6 8 3 8 1 4 2花蕾発生後の温度処理と満開期の花器の大きさ それぞれの温度処理区の満開期の花器の大きさは第1表のとおりである。花重,子房重,子房の横径,縦径とも 20−20℃区が最大で,昼間を25℃にした区及び20−25℃区で花器は小さかった。一腰に温度処理開始後満開日までの日 数が長い区はど子房を含め,花器が大となる傾向にあった。花菅発生日の5月1日から温度処理による満開日までの 日数と子房重との相関係数ほ+071であった。 3“生理的落果の波相 (1)露地区 露地における生理的落果の波相は第3図のように2頂曲線を示し,開花虐後の5月中旬に1次落 果の大きな山が見られ,5月末に第2の山が見られた。昼夜間別に落果率をみると(第2蓑),昼間の落果率が高く(全 体の落果の54%),夜間が低かったが,ピーー・クはいずれも同時期であった。

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香川大学農学部学術報告 第39巻 第1号(1987) 14 落 果 率 ︵%︶ 月[口 4 1 1 1 8 5 6 2 0 3 15 18 21 24 27 第3図 落果波相(露地区) メ 第2表 全落果率と昼夜間別落果率 処 理 区 全落果率 昼間落果率 夜間落果率 992% 543% 984 66 8 993 24 7 969 85 9 960 21 2 929 51 4 714 37 9 83 7 31 8 73 0 43 7 93,0 50 4 449% 31 6 74 6 11 O 74 8 41 5 33 5 51−9 29 3 426 25−25℃ 25 − 20 20 − 25 25 }15 15 − 25 20 − 20 20 −15 15 − 20 15 −15 露 地 (2)昼夜恒温区 昼夜恒温の25,20及び15℃室内での落果波相は第4図のとおりである。開花期は高温区偲ど 早くなり,開花期間は短くなった。室温が低くなるほど落果率は低くなったが,いずれも昼間の落果率が夜間のそれ より高くなり,昼間に55∼60%が落果した。1次落果のピークほ20−20℃及び15−15℃区では昼,夜間とも同時期であっ たが,25−25℃区では夜間のピークが若干早くみられた。なお,高温区には不完全花が多くなった。 (3)昼夜変温区 昼夜の変温条件下で落果波相を観察すると第5∼7図のとおりである。25℃と20℃,25℃と 15℃の組合せで夜温を昼温より高くした場合,いずれも全落果率は変わらなかったが,夜間の落果率が著しく高くなっ た。ただし,1次落果のピークは同時であった。20℃と15℃の組合せでも同じ傾向を示したが,夜間の気温の低い力 が全落果率は低かった。昼温を25,20または15℃としてそれぞれに夜温の3段階を組合わせて,上述の全落果率を検 討すると,夜温の低いほど落果率は低下したが,これは夜間の落果率の低下によるものであった。−方,夜温を同じ にして昼温を変えた場合をみると,昼温が低いほど,落果率は低下した。処理区ヰ,20−15℃区で全落果率が最低であっ た。 4不完全花の発生 落花調査において花がとくに小さく,花柱も短く,あるいは花柱がない不完全花が観察された。これらの不完全花 は離脱が比較的早く,あるものは開花後一両日で落下した。不完全花の発生率ほ第3表に示すとおりである。昼夜恒

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5 6

6 9 121518 2124 27 30 2 5 8 111417 20 日

第4図 落果波相(昼夜恒温区) 第3蓑 不完全花の発生歩合 第4表 有菓果と直花果の落果率 処 理 区 発 生 歩 合 処 理 区 菊 菜 果 直 花 果 25−25℃ 25 − 20 20 − 25 25 −15 15− 25 20− 20 20−15 15 − 20 15 −15 露 地 % 9 9 2 9 8 8 0 9 7 1 6 4 4 3 3 1 0 0 2 25−25℃ 25 − 20 20− 25 25−15 15− 25 20− 20 20−15 15 − 20 15−15 露 地 958% 99.7% 925 100 O 976 100.0 89,7 98 5 923 97.1 827 96.3 48“0 90.9 607 88 1 442 78 2 839 953

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香川大学農学部学術報告 第39巻 第1号(1987) 16 0 0 4 3 落 果 率 ︵%︶ 3 6 9121518 2124

3 6 9121518 2124 27日

第5図 落果波相(昼夜変温区 −25,20℃−)

3 6 9121518 2124 2730 3 6 9121518 2124 2730 2 5 8 日

第6図 落果波相(昼夜変温区 −25,15℃−)

温の25℃区では69%の不完全花が発生したのに対し,昼または夜温を20℃に下げると4%台に・15℃に下げると3%

台に低下した。昼夜恒温の20℃区では18%,昼夜いずれかを15℃に下げるとほとんど不完全花は発生しなくなった0

昼夜恒温の15℃区では07%にすぎなかった。露地区では2“1%を示した。 5.有葉栗と直花果の落果率

結果枝の着葉の有無により有美果と盾花泉に分けて,花苦から幼果にいたる落果率を温度処理との関係でまとめる

と,第4表のとおりである。すべての処理区で直花果の落果率は有葉栗のそれより大であった0夜温を25℃にした処

理区の直花果の落果率はほとんど100%に近かったのに対し,菊菜果のそれほわずかに低かった◇昼温を25℃にして夜

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落 果 率︵%︶ 6 月

21 24 27 30 2 5 8 11 14 17 日

0 2 落 果 ハリ l 率 ︵%︶ 2 1 9 6 5 3 6 月

15 18 21 24 27 30 2 5 8 11 14 17 日

第7図 落果波相(昼夜変温区 ∬20,15℃−) 第5表 満開後1か月の幼果の大きさ 杭 径 縦 径 (mm) (mm) 処理区 2 4 0 3 9 7 3 6 3 0 9 9 9 9 9 0 1▲ O l 1 0 0 0 0 0 1 1 1 1 1 7 8 2 3 0 3 6 2 4 4 9 ︵‖0 5 7 8 1 9 1 7 3 2 1 1 1 1 1 1 1 25−25℃ 25 − 20 20 − 25 25 −15 15 − 25 20 − 20 20 −15 15 − 20 15 −15 露 地 3 6 6 0 8 1 8 9 4 8 7 7 3 6 7 2 0 1 8 4 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 3 0 6 4 1 8 1 4 1 1 3 4 2 3 1 0 1 0 2 1 温を15℃に下げると花曹の10%が着果した。昼夜恒温の20℃区では看葉栗の落果率は827%,15℃区のそれは44.ノ2% と激減した。昼夜変温でも低温になるほど落果率は小となったが,同じ温度の組合せでは夜温が昼温より高い場合に 落果率は大となり,この傾向ほ宥菓花で著しかった。なお,露地の菊菜果の落果率は839%,直花果のそれは953% であった。 6温度処理と幼果の肥大

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18 香川大学農学部学術報告 第39巻 第1号(1987) 各温度処理区における花の満開後1か月の幼果の大きさほ第5表のとおりである。昼夜恒温の25℃区で最も大きく, 15℃区で最小であった。昼夜温とも低温になるほど幼巣の肥大ほ劣った。果形指数をみると,昼温または夜温が25℃ である場合ほ腰高果となったが,それより低温になるほど果実ほ偏平になる傾向を示した。 考 察 香川県下の露地栽培のウソシュウミカンの開花は,−・般に5月上中旬に始まり,下旬に満開となり,6月上旬に終 る。しかし,その年の気象条件により,開花の時期に若干のずれがある。 開花に及ばす気象条件としてほ,気温が最も重要である。高温は開花を早めるが,花器の発育の劣ることが,ブド ウ,ミカン,カキなどで指摘されている。本実験でも高温区では低温区にくらべ,開花ほ早くなったが,花器の発育 は劣った。 20℃以下の温度区では,開花期は高温区より遅かったが,花器の発育ほ比較的良好であった。とくに,20−20℃区が 最も優れ,花と子房は最も重く,子房径も最大であった。15−15℃区では花器の発育は良かったが,開花が遅く,期間 も長かった。また,この区でほ開花時において,未展開あるいは展開花弁の萎縮現象が見られた。満開後1か月を経 過しても,萎凋した花弁が付着したままであった。しかし,−・般に低温区でほ花菅の発育の期間が長く,徐々に充実 して,花は大きく,子房も大となった。 西宗(5〉は露地での早生ウソシュウミカンの生理的落果について6系統を用いて3年間調査を行った。一・般に落果ほ 5月10日ごろ始まり,5月下旬にピークが現れ,6月中下旬に第1次落果が終った。本調査では,25−25℃,25−20℃ 及び20−25℃など高温区での落果の開始期,そのピー・ク,また落果終了期はすべて早く,落果期間も幾かった。露地区 と20−20℃区における落果のど・一・クと解了期は,西宗の調査と概ね一・致した。20−15℃,15−20℃と15−15℃などの低温 区においては,比較的遅く,落果期間も長かった。西宗の7日間隔の落果数調査では,そのピ・−・クは30∼50%前後で あった。本実験では,3日間隔でまとめたが,高温区の落果のピ1−・クは高かった。低温区の落果のと・−クほ,非常に 低かった。 ウソシュウミカンでは普通開いた花の平均17%内外が結果するが,花が少なくて結果率の高い場合にほ約30%,花 が多くて結果率の低い場合には5−・6%内外である。本実験の高温区の結果率は0∼16%にすぎず,20−20℃区と露 地区では7%前後であった。低温区ほ17−29%前後であった。 松本(4〉はカンキツの生理的落果の内因として主に花器の発育不完全,不受精,樹体の栄養不良など,外因として, 主に日照,温度,降雨,薬害や風害などをあげている。単為結果性のウソシュウミカンでは不受精は原因とならない。 また,花器の発育不完全による例も少ない。したがって,生理的落果の主因は樹体内の栄養状態と外因によるもので ある。本実験においてほ,温度処理以外の条件を同一・としたので,落果数ほ主に温度の条件を反映したものと思われ る。高温下で落果が多かったのほ,この時期には果梗の細胞分裂と肥大が旺盛であり,高温が離層細胞の分裂を促進 し,さらに生理的にも不安定な時期にあったものと思われる。また,花菅生長期には,高温のため開花が促進された が,花器は充実し得なかった。これも高温下で大量に生理的落果を生じさせた原因になったように思われる、 以上の成績から見て,発菅から第1次落果のど・−クが終了するまでの間に,温度が25℃に達するか,またほ夜間20℃ 以上になった時はげしい落果を引き起こす。低温になるほど落果ほ減少するが,15−15℃区より落果率がわずかに大と なった。したがって,20℃から15℃の間にウンシュウミカンの結果の適温があると考える。 自然条件下と同様に昼間温度が高く,夜間温度が低い場合や,昼夜同温度の場合においては,昼間の落果が多かっ たが,夜温が高く,昼温が低い条件下においては,夜間の落果が多かった。とくに,25−15℃区と15−25℃区において は,昼夜の落果の差が大きく,明らかに異なる高さの落果波相が形成された。果してこの離脱が昼夜いずれに行われ るかを明らかにするため,落果がピークになる時期の朝夕6時に連続して1週間,枝を振動させて落果状況を見たと ころ,25−15℃区においては,朝強く振動させても落果ほ少なかったが,夜6時では軽い振動で容易に落果した。15−25℃ 区においては,全く相反する状況を示した。この状況からも昼間の高温は,昼間に花菅または幼果の離脱を促進し, 夜間の高温は夜間に離脱を促進するようであった。いずれにしても低温が離脱を抑制或は停止させ,高温が促進させ ることは明らかである。これらの現象が離層部周辺で形成される物質の増減によって起こるものか、単に組織的な歪 みの大小によるものか,今後の検討課題である。 伊東ら(2)によると,有葉花は直花より発育が良く,着果率も高い。本実験でも有菓果は直花巣よりも落果率が低く, 落果が始まるのも遅かった。これは伊東らの実験成績と全く同様であった。一般に強勢樹では有葉花が多く,弱勢樹

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加した。気温を制御できるハウス栽培では温度管理によって摘果作業の一部を代替することができるわけである。 岩崎(3)の調査によると,ウンシュウミカンの不完全花の発生率は0∼10%の問であった。不完全花が発生する原因 については,前年の結果盈の過多,樹体内の貯蔵養分の不足,早期落葉或は土壌乾燥による同化作用の減退などが考 えられる。本実験の各温度処理区の不完全花の発生率は,昼夜の平均温度が20℃以下の処理区においては0−18%の 間であったが,25℃では69%を示し,高温区で不完全花の発生ほ多くなった。このことから発雷より開花に至る期間 を短くする高温処理ほ不完全花の発生を助長するようである。ただし,同一・処理区における樹間差異が比較的大きかっ た。 小笠原(6)はウソシュウミカンの生長に最も適した温度は26℃前後であるとしている。本実験での満開期後1か月の 平均果重及び果径の大小から見て,25−25℃区で果実肥大が最も良く,15−15℃で最も劣った。これらから25℃前後の 温度は,果実の生長にほ好適のようであった。 /、ウスミカンで開花期の高温は三富カソ型の果梗部の突出した果実を生じる原因となる。筆名の一人,井上(1)ほ昼 夜恒温の条件下ではとんど果皮で占められる幼果の肥大を観察したところ,25℃区では果梗部の子房壁が厚く,細胞 層数は多く,構成細胞も大きかったが,赤道部の子房壁の厚さは薄かった。15℃区刊ま果梗部の子房壁は薄かったが 赤道部のそれほ,他の温度区よりもむしろ厚く,細胞層数も多かった。本実験の結果も同様で,高温区の果形指数(横 径/縦径)ほ小さく,腰高果であり,低温区の異形指数は大きく,偏平果であった。 /\ウスミカンの開花期前後の温度管理は昼温28℃,夜温18℃が一・般的であるが,着果が著しく多い場合には早期落 果期間中の温度をやや高めに設定して摘果の労力を省き,少ない場合にはやや低目に(夜温を15℃に近く)設定して 着果数の確保を図る必要がある。ただし低目の設定は幼果の肥大を抑え.るので,着果の程度をノみて,出来るだけ早く, 高温に移さねばならない。 引 用 文 献 (1)井上 宏:蘭学要旨,昭55秋,495(1980). 堂(1973). (2)伊東秀夫,井上弘明,森谷陸男園学雑,45(3), (5)西宗忠之園学雑,12(4),284−294(1941). 225−230(通76). (6)小笠原佐与橋:ミカン栽培全科,27,東京,農山 (3)岩崎藤助東海近畿農試研報,園芸部,3,1 漁村文化協会(1963)” −16(1956). (4)松本和夫:柑橘園芸新書,138−159,東京,養緊 (1987年5月30日受理)

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