マグネシウム開発の事業化に問す る研究
新潟経営大学教授 蛇 名保彦
は じめに J 1.産業構造の 「グ リーン化」
とマグネシウム開発の意義 (1)地球環境 問題 と経済 ・産業のあ り方 (2)産業構造 「グリー ン化」の必要性 (3)「グリー ン化」 と自動車産業 (4)マグネシウム開発 の意義2.
マグネシウム開発の現状 と問題点 (1)特性 (丑 純マグネシウム (参 マ グネシウム合金 (2)技術 \ (∋ 精錬技術 (彰 成形技術A.
ダイカス ト法B.
射 出成形法 (テ クソモル ド法)C.
塑性加工法 (3)用途 (∋ 構造材A.
自動車a.
マ グネシウム開発 の歩み と自動車産業b.
燃費向上 と車両軽量化 C.マ グネシウム開発 における欧米 と日本の 自動車 メーカーB.
情報関連機器a.
情報機器 (PCを除 く)b.
ノー ト型パ ソコンC.
電気製品D.
「軽量材料」 における競争関係 とマグネシウム成形品a.
マ グネシウム成形品 とアル ミニウム成形品b.
マグネシウム成形品 とプラスチ ック樹脂 (彰 非構造材 (4) リサイクル -(丑 ダイカス ト法 ② テ クソモル ド法 むすび -1-はじめに 地球環境問題の重要性が叫ばれて久 しいがここに来て注 目すべ き動 きが始 まっている。 それは、 これまで単 に世論 の喚起 という段階に止 まっていたこの問題が最近に至って 急速に経済社会に浸透 し実体化 し始めた ということだ。最 近の産業界 に日を向けると、それがあたか もビジネスチャ ンスの到来であるかの如 き観 を呈 している。それ どころか、 ついこの間まで国際競争力強化 に躍起 となっていた 日本の 代表的な産業である自動車産業や電気 ・電子産業に属する 大企業 まで もが まるでこの間題への対応如何が 自社の浮沈 を左右 しかねない と言わんばか りの加熱ぶ りである。 こう した事態 を見 聞 きす るにつ け問題の浸透ぶ りに驚か され る。 今や、経済や産業は 「グリーン化」の奔流 に向けて一 斉 に走 り出 していると言 って も決 して過言ではない よう だ。 マグネシウム開発問題が 日本の産業界 に華々しく登場 し て きたの もこうした 「グリーン化」の流れ と無縁ではない。 地球温暖化に関わる大気汚染問題は自動車など輸送機関が 排 出するC02と密接 に関係 しているが、そうした状況下で、 自動車の燃費向上 とそれに伴 う車両軽量化が至上命題 とさ れ、 さらにこの車両軽量化 にとって不可欠な軽量材料 とし てマグネシウム合金が アル ミニウム合金 とともにまるで "救世主''の到来の如 く迎 えられている。 また大量生産 ・ 大量消費 ・大量破棄 というこれまでの人類の 「使い捨て生 活様式」 を 「循環型生活様式」に転換 させ るためには廃棄 物 ・リサイクル対策が急務 とされているが、そ うした中で、 リサイクル性 に劣 る化学製品材料であるプラスチ ック樹脂 に代わって リサイクルの優位性 を発揮 し易い金属材料たる マグネシウム合金が再評価 されつつあるの も時代の流れの 反映であろうか。 こうして、マグネシウムは 「軽量革命
」
の騎手 として華やかに登場 しつつあるのだ。 こうした時代認識に基づいて本稿 はマグネシウム開発問 題を取 り上げた。その場合、物理的 ・機械的 ・化学的性質 に由来する特性論、精錬 ・成形のための技術論、構造材 ・ 非構造材 としての用途開発論、 さらにはリサイクル性 など 論点は多義に亘る。 だが本稿 は、こうした論点 を踏 まえな が らも、マグネシウム開発の事業化 という問題に焦点を当 てた。その事業化が中小企業や地場産業にとって も極めて 重要な問題であると考えられるか らだ。 本稿 は別稿 (伊 平一也 「新潟県県央集積地域の企業経営におけるマグネシ ウム開発- ヒヤ リング調査 による現状 と課題-」)の序論 に当たるものである。 本稿 とともに別稿 も併せ読んで もら えれば幸いである。 1.産業構造の 「グリーン化」 とマグネシウム開発の意義 (1)地球環境問題 と経済 ・産業のあり方 地球環境問題 と経済 ・産業のあ り方 との関係が大 きくク ローズアップされて きた重要な契機の一つ として1997年12 月に開かれた 「地球温暖化防止京都会議」 を挙げなければ ならない。この会議では、温暖化の主因をなす大気汚染の 防止に焦点が絞 られ、さらにそのために不可欠な措置 とし てCO2(二酸化炭素)排 出量 に関する各国 ・各地域の削減 目標が決め られた。その結果各国とも経済や産業のあ り方 が改めて問われることになった。CO2排出量はエネルギー 消費量に深 く依存 してお り、そのエネルギー消費はさらに 経済 ・産業活動 と密接 に関わっているのだか ら、それは当 然のことだと云える。 か くしてCO2排出量規制は経済 ・産 業のあ り方に抜本的な変更を迫ることになった。 言 うまで もな く地球環境問題 としては、温暖化防止だけ ではな く、大量生産 ・大量消費 ・大量廃棄 というこれまで 人類が営々として営んで きた悪 しき生活習慣 を断つべ く廃 棄物 ・リサイクル対策 も急務 とされてお り、 また有害化学 物質、重金属、窒素酸化物、オゾン層破壊物質などの環境 負荷物質の生態系へ の排 出の最小化 も不可欠 とされてい る。CO2排出量規制だけではな く、 こうした廃棄物 ・リサ イクル対策や環境負荷物質排出最小化 も経曙や産業のあ り 方に重大 な変更 を迫ることは想像 に難 くはない。従 って、 CO2排出量規制 と経済 ・社会 との関係 について も、地球環 境問題 と経済 ・社会 との関係如何 という文脈 において考察 されなければならないということになる。 (2)産業構造 「グリーン化」の必要性 か くしてわれわれは、地球環境問題はそ もそ も経済 ・産 業のあ り方に対 して一体 どのような変更を迫るのか という 問題を検討 しておかなければならない ということになるの だが、地球環境問題 と経済 ・産業のあ り方 との因果関係 を 明 らか にす るとい うようなことはそ う容易 い仕事ではな い。そこでここでは、 こうした関係 を比較的定量的に測定 し得 るCO2排出量削減 と経済 ・産業 との関係 に問題を絞っ て しか もとりあえずは日本経済の場合 を通 じて検討 してみ ることにしよう。 上記の京都会議で決め られたCO2排出量 に関する日本の 削減 目標は、2008年か ら2012年 までの 5年間に1990年比で 6%削減するというものであった (因みにアメリカの場合 の削減率 は7%であ り、EUは 8%である)。だが 日本の排 出量は96年には3.36億 トン (炭素換算) に達 してお り90年 の排 出量3.07億 トン (同) に対 してす ら既 に9.4%増加 して しまっていることになる (注1)。 そこで、上記の 目標値 を-2-達成するためには2010年における排 出量 を90年度のそれに 対 して約18%削減 しなければな らない とい うことになる。 この削減率に対する分野別寄与率 を試算 してみると、エネメ ルギー転換で47%、産業部門で29%、運輸部門で12%、民 生部門で12%の割 り当て となる (注2)。 要するに18%削減 のノルマはその殆 どがエネルギー部門 ・産業部門 ・運輸部 門などに課 されることになる。 そのことは、18%もの
CO2
削減は経済 ・産業構造の抜本的な転換抜 きには到底実現不 可能である- ということを物語る以外の何物で もない と云 えよう。 要するに、地球温暖化防止のためだけで も経済構造なか んづ く産業構造の 「グリー ン化」が避けて通れないが、況 や廃棄物 ・リサイクル対策や環境負荷物質排出最小化 をも 考慮 に入れるならば、こうした 「グリー ン化」
はいよいよ 不可欠 となるということは容易 に理解 されよう。 (3)「クリーン化」
と自動車産業 さて 日本の場合、CO2
削減 目標達成のために運輸部門に 割 り当て られた数倍が12%であるということは前述 した通 りであるが、それは産業部門全体の悠 に3分の1を超 える 大 きな倍である。 運輸部門がこうした大 きなノルマを達成 するためにはその担い手である自動車の燃費向上が不可欠 になるということは今や誰の 目にも明 らかである。C02
の 排出量は燃費 と逆比例の関係 にあるか らだ。 ところで燃費 と車両重量 はこれ また逆相 関の関係 にあ る。 すなわち重量が重ければ重いほど燃費は低下する (図 表 1参照)。その結果、他の条件 を一定 とすれば、車両重 量 はCO2
排出量 に比例するとい うことになる。 つ まりCO2
排出量低下のためには車両重量低下が不可欠であるという ことだ。か くして後述するように自動車メーカーは車両軽 量化 に血 まなこになっているのである。 車両軽量化 はアメリカにおける一連の規制措置か ら始 ま った。まず同国では自動車の排気ガス規制 として1980年代 後半 より燃料効率規準CAFE (
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規制が実施 された (注3)。 さらに1990年10月 には カ リフォルニ ア州で排 ガスゼ ロ車 を 目指 したZEV
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規制が制定 された (注4)。その 後 こうした措置はヨーロッパや 日本 にも広がっていった。 その結果 こう/した規制措置 を契機に欧米諸国の自動車メー カーは車両軽量化 に向けて一斉に動 き出 した。例えば、米 のGM
(ゼネラル ・モー タース)、 フォー ドをは じめ独 の VW (フォルクスワーゲ ン) さらには 日本で も本田が大幅 に軽量化 に乗 り出 した とされる (注5)。 (因みに、 日米欧 における燃費関連の規制措置 と今後の動向に関 して整理す ると図表2の通 りである。) か くして自動車産業にとっては燃費向上によるCO2
排出 量の削減が今や至上命題 とな りつつあるのだが、 こうした 「グリー ン化」 は自動車産業のみな らず他の産業 について も大な り小な り求め られているのであって、 自動車産業は その代表例に過 ぎない と云える。 (4)マグネシウム開発の意義 こうした車両軽量化 に貢献 しているのが 「軽量材料」で ある。 代表的な 「軽量材料」は、金属品としてはアル ミニ ウム合金 とマグネシウム合金であ り、化学品としてはプラ スチ ック樹脂である。 その中で一躍注 目を浴びているのが マグネシウム合金である。 マグネシウムの世界需要動向を一瞥すると1990年代 に入 って大幅に増加 している。 その需要増 を支えているのはマ グネシウム合金に対する大幅な需要拡大である。 マグネシ ウム合金の需要が拡大 したのは、後述するようにマグネシ ウム開発技術の進展によって、軽量性、強度など性能の面 で大 きな改善がみ られ、物理的 ・機械的特性の面で今や同 じ金属材料であるアル ミニウムにも比肩 しうるに至ったか らである。 ところで注 目すべ きはダイカス ト用マグネシウム合金の 伸びである。90年か ら97年にかけての 7年間にマグネシウ ム全体の需要 は3
2
.4%増加 しているが、 ダイカス ト部門の それは162.5%と急増 している。 その結果、用途別のシェア ではダイカス ト用 はアル ミニウム合金用 に次 ぐ重要な地位 を占めるに到 っている (図表 3)。 ダイカス ト部門への需 要増 を支えたのはアメリカであったが、近年 ヨーロッパ も そ うした役割 を担 い始めている (図表4参照)。 そ して重 要なことはこうしたダイカス ト部門の大口需要者がアメリ カや ヨーロッパにおける自動車メーカーであるということ だ。何故 ならばダイカス ト需要の90%は自動車産業である とされているか らである (注6)0 このようにマグネシウムが 自動車産業においてとりわけ 車両軽量化が求め られるようになった今 日の自動車産業に おいて需要が急増 し始めているということに注 目しなけれ ばならないのだが、そのことは、マグネシウムとりわけマ グネシウム合金の特性-すなわち軽量性 と強度の双方を兼 ね添えた材料であるという優れた特性-が車両軽量化 によ る燃費向上を迫 られた自動車メーカーにとっては無視 Lが たい重要性 を帯びるに至ったということを意味 している。 さらにこれまた後述するようにマグネシウム合金が リサ イクル性 に富 んだ金属材料 であるとい うことも重要であ る。軽量化 という点ではプラスチ ックも優れた材料の筈で-3-500 1000 1500 2000 車両重量(Kg) (出所)松崎邦男 「マグネシウム合金の特性 と製品開発の動向」 図表1 車両重量 と燃費の関係 日本 米 国 欧州 2000年 ●対90年比8.5%改善 (ガソリン乗用 車) ○ 良燃 費車 に対 する税制優遇 ●独 、デンマーク良燃 費車 に対する税制優遇 ●対93年比5%改善 (ガソリン軽 中量貨物 車 ) ●3U100km導入 2005年 ●対95年比 15%改善 (ガソリン乗用 車 ) ☆第 1世代 PNGV導入 ●独 自工会対95年比25%改善 目標 :80MPG ○ 欧州 自工会 目標 :CO2量 155g/km 技術 :HEV ○ EC委 員会 目標 :CO2量 120g/km
2010年 ●対95年比20%改善 (ガソリン乗用 車 ) ☆ 第2世代 PNGV導入 ●対 95年比 15%改 善 (ディーゼル乗 用 車 、軽 中量 目標 :100MPG+排気o(乗用 車 )、50MPG(軽量 ト 貨物 車) ラック) (出所)http://vw .keikyO-onet.ocn.ne.jp/jkl.htm 図表2 日米欧の1995-2010年燃費関連要件の変遷 と今後の動向 (注)TotallMAshipments:360,600MT (出所)ロバー ト・L・エ ドガー 「マグネシウムの需要(1998年)」 (日本マグネシウム協会 Fマグネシウム』[1999年6月号])p.2より。 図表3 マグネシウムの用途別需要
-4-'000 tons 0 0 0 0 0 0 0 0 0 8 7 6 5 4 3 2 1 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998十
NorthAmerica 十 Other壬 Europe
(注)lMFshipment
(出所)ロバー ト・L・エ ドガン 「マグネシウムの需給 (1998年)」
(日本マグネシウム協会 rマグネシウム』[1999年6月号])p.6より。
ある。 だが化学製品か らなるプラスチ ック樹脂 は元来 リサ イクル性 に欠 けている。 それ に対 して金属製 品たるマ グネ シウム合金 はプ ラスチ ックに対 して リサ イクル性 において 遥 か に優 れてい るの はあ る意 味 で は当然 の こ とだ と云 え る。 産業 の 「グ リー ン化」 とい う観点か らはこの金属製 品 と しての リサ イ クル性 もまた重 要 な意 味 を持 つ こ とにな る。 か くして、マ グネシウム開発 が産業 の 「グ リー ン化」 の 下で-す なわち 「グ リー ン ・ビジネス」 として-その重要 性 を次第 に増 しつつある とい う点 にわれわれ はその意義 を 見 出 し得 るのである。 で はマ グネシウム開発 の現状 は どうか、 またそ こには ど の ような問題点が療 たわってい るのか。 この点 を次 に観 て み よう。 (注1)平 田 賢 「地球温 暖化対 策技術 と北東 アジア天然 ガスパ イプライ ンの展望」 ([財]とっ と り政策総合 研 究セ ンター ・北東 アジア経済 フォー ラム資料集) よ り。 (注2) 同上。 (注3) この法律 に よる と、乗用 車 と軽 トラ ックは現在 の 平均燃費 をそれぞれ27.5mpg(ll.7km/1)、20.4mpg (8.7km/1)以上 にす ることが求め られている とされ る (水 野 進 「マ グネ シ ウムの応 用 と需給 動 向」 (日本 マ グネ シウム協 会 『'99マ グネ シウムマ ニ ュ ア ル』[1998年11月])p.16、Grebetz,Uay, Haerde「リサ イクル したマ グネシウム製 ダイカス ト品ぼ格付 け」 (日本 マ グネシウム協会 『マ グネ シ ウム』1998年11月号)p.1及 び ロバ ー ト・L・エ ド ガ- 「マ グネ シウムの需給 (1998年)」 (日本 マ グ ネ シ ウ ム協 会 『マ グ ネ シ ウ ム』1999年 6月号 ) p.5-6参照。 (注4)大富敬康 「環境 が火 をつ ける 『自動車 ビッグバ ン』 (中央公論社 『中央公論』1998年7月号)p.59-60 参照。 (注
5
)例 えばGM
グルー プの独 ア ダム ・オペ ル は重 量 を 750キログラムに抑 え、CO2
排 出量 を走行1キロメ ー トル当た り90グ ラムに まで減少 させ た新車 を開 発 した と伝 え られ る (日本経済新 聞1999年9月16 日よ り)。 (注6
) ロバ ー ト・L
・エ ドガ - 「マ グ ネ シ ウ ム の 需 給 (1998年)
」 (同上)p.5よ り。 (ノ-5-2.
マグネシウム開発の現状 と問題点 マ グネシウム開発 問題 を考察す る場合、マ グネシウムの 物理 的 ・機械 的 ・化学的 にみた特性、精錬 ・成形 に亘 る技 術、構造 (工業用)材 ・非構造 (化学用)材 としての用途、 リサ イ クル性 - とい う四つ の観 点 か らの検 討 が欠 かせ な い。そ こで まづその特性 か ら観 てみ ることに しよう。 (1) 特 性 マ グネ シウムの特性 を考 える場合、純粋 のマグネシウム とマ グネシウム合金 とでは大 き く異 なる。 そ こで まづ純マ グネシウムの場合 か らみてお こう。 ① 純 マ グネシウム まず、マ グネシウムは資源 として比較 的入手 の容易 な金 属 である とい うことを指摘 してお こう。 それは地殻依存度 8番 目の元素 で あ り (図表5[1]参 照)、 そ の化合物 は 様 々な鉱物 として広 く分布 してお り (図表 5[2]参照)、 海水 中に も溶解 している (図表5[3]参照)。従 って資源 としてのマ グネシウムは殆 ど無尽蔵 である と言 って よい。 さらにマ グネシウムは物理 的 ・機械 的特性 において も優 れている。 図表6はマ グネシウム と他金属 の物理 的 ・機械 的性質 を比較 した ものであるが、マ グネシウムの最 も重要 な特性 はそれが実用金属 中最軽量 であ る とい う点 にあ る。 す なわちその比重 はアル ミニ ウムの約65%、鉄 の約22%と 極 めて軽量 である。 しか しなが ら純マ グネシウムは非常 に柔 らかい。 また腐 食性 を有す るな ど化学的性質 に関 しては難点が少 な くない (図表7)。従 って こうした欠点 を克服 しない限 りと くに構 造材す なわち工業用材料 としての活用 の途 はけわ しい とい うことになる。 (勤 マ グネシウム合金 そ こで登 場 して きたのが各種 のマ グネ シウム合 金 であ る。す なわち、図表8に掲 げるような各種 の 目的 を伴 った 元素 を添加す ることによって、マ グネシウムが本来持つ軽 量性 とい う特性 を損 なうこ とな く、 しか も強度、耐力 さら には耐食性 の面 で も他 の合金 に遜色 のない特性 を伴 った合 金 (注 1) を新 たに造 り出す こ とが可 能 になったのであ る (図表9参照)。 か くしてマ グネシウム合金の登場 を待 って、後述す る よ うにその用途 は非構 造材 か ら構造材へ と飛躍 的 に拡大す る ことが可能 になったのである。★クラーク数:地球の表面から16kmまでの岩石圏、海洋及び大気圏 を含め、地球表層部の各元素の依存度を重量百分率で示した数 (l)地穀構成図 (クラーク数★) 元 素 含有量(mg/I) ナ トリ ウ ム Na 10,500 マグネシウム Mg 1,300 アルミニウム At 0.01 け い 素 Si 3 カ リ ウ ム K 380 カ ル シ ウ ム Ca 400 鉄 Fe 0.01 (3)海水中の主な金属元素 紘_ 物 名 組 成 Mg(%) ペ リクレーズ Periclase MgO 60 ブル ーサイト Brucite Mg(OH)2 41 マ グ サ イ ト Magnesite MgC03 28 轍 倍 岩 Olivine (MgFe)Sio4 28 蛇 紋 岩 Serpentine 3MgO.2Si02.2H20 26 海 水 SeaWater 3MgO.4Si02.H20などの溶液 23 キーザライト Kiesrite MgS04.H20 17 ドロ マ イ ト Doーomite MgS03.CaCO3 13 カーナ ライト Carnamte MgCl2.KC卜6H20 9 力 イ ナ イ ト Kainite MgS04.KCl.3日20 9 か ん 水 Brine NaC卜KCl.MgCl2 0.7-3 (2)主なマグネシウム含有鉱物 (出所)時末 光 「最近のマグネシウム合金の現状」 (日本マグネシウム協会 Fマグネシウムダ イカス ト・チクソ技術テキストJ[1998年10月])p.2より。 図表5 マ グネシウム賦存状況 全 属 名 原子量 比 重 融 点 沸 点 溶融潜熱 比 熱 線膨張係数 (g/cm3) (K) (K) (KJ/kg) (」/kg.K) (103/K) マグネシウム 24.305 1 1.74 923 1,376 372.90 1,022 26.0 アルミニウム 26.98154 2.70 933 2,750 396.84 900 23.5 秩 55.847 1 7.87 1,809 3,160 272 444 12.1 鍋 63.546 8.99 1,356 2,855 - 385 17.0 亜 鉛 65.38 7.13 693 1,179 - 383 31.0 チ タ ン 47.90 4.54 1,941 3,535 - 519 8.9 (出所)時末 光 「最近のマグネシウム合金の現状」 (日本マグネシ ウム協会 『マグネシウムダイカス ト・チクソ技術テキス ト1 [1998年10月])p.2より。 図表
6
マグネシウム と他金属 の物理的および機械的性質 耐食性良好 アルカリ性薬品 (苛性ソーダ、アンモニア水 、炭酸ナトリウムなど)、鉱物油 、動植物油 、フッ化水素酸 、フッ化物 、クロム酸 、シアン化物 、酸素ガス、 水素ガス、-酸化炭素ガス、蒸留水 、中性有機化合物 (出所)時末 光 「最近のマグネシウム合金の現状」 (日本マグネシウム協会 『マグネシウムダイカス ト・チクソ技術テキス ト』[1998年10別 )p.3より。 図表7 純 マグネシウムの化学的物質 に対 する耐食性 記 号 記 号 目 的 A アル ミニウム 機械 的性質の改善o M マ ン ガ ン 耐食性 の改善 ○ Q 級 耐熱強度の改善 ○ Z 亜 鉛 耐食性 、強度の改善○ S シ リ コ ン クリープ強度の改善 o H ト リ ウ ム Zrとの共存にて結 晶粒の微細化 により機械的性質の改善o K ジル コニウム 結晶粒を小さくするo E ミッシュメタル 機械 的性質の改善o (出所)水野 進 「マグネシウムの応用 と需給動向」 (日本マグネシウム協会『'99 マグネシウムマニュアルj)p.11より。 図表8 マグネシウム合金 に対 す る主要添加元素 と添加 目的-6-\
性 質 マグネシウム合金 アルミニウム合金 鍋 AZ80 AZ92-T6 2017 AC6A一丁6 ステンレス鋼 鋳鋼 比重 1.80 1.82 2.79 2.77 8.02 7.84 引張 強さ(Nmm-2) 343 274 421 264 1196 617 耐力(Nmm-2) 235 156 274 166 1058 412 伸び (%) 7 2 22 4 15 25 比 引張強さ(Nmm-2) 190 151 151 95 149 78 ※比 強度 はそれぞれの強度 を比 重で割った値 (出所)諸住正太郎 『マグネシウム読本』 [カロス出版社 、1998年 4月 刊】p.5より。 図表9 マグネシウム合金、アル ミニウム合金および鋼の強度比較 (2)技 術 次 に技術類型であるが、 この点に関 しては、 まず二通 り のアプローチが必要である。 一つは純性マグネシウムの精 錬技術であ り、今一つはマグネシウム合金の成形技術であ る。 まず前者 についてはどうか。 ① 精錬技術 精錬方法は下図か らも明 らかな通 り二種類ある。 一つは 熟還元法であ り、 もう一つは電解法である。 熟還元法 とは、酸化マグネシウムに珪素、炭素 などの還 元剤 を混入 して減圧下で高温 に加熱 して還元 されたマグネ シウム蒸気 を冷却部で濃縮する方法である (注2)。 さらに この場合、主な方法 としては、 ドロマイ ドを原料 として加 熱脱炭酸の後、高温、高真空中でフェロシリコン
(
Fe
S
i) で還元す る 「ピジ ョン法」 と、 同 じ原料 をFe
S
i
とアル ミ ナを還元剤 として比較的低真空中で還元する 「マグネテル 法」 とがある (注3)。 一方電解法は、マグネシウムを含有す る原料 に塩化処理 し、含水塩化マグネシウム(
Mg
C1
2
)
とし、 さらに数種の 工程 を経て結合水の分離 を行 った後、溶融塩化マグネシウ ムの状態 で電気分解 してマ グネシウムを得 る方法 である (注4)。 そ してこの方法 には、 ドイツのイーゲ- (Ⅰ.G)社 が 開発 したⅠ
.
G
法 、 ア メ リカの ダ ウ ・ケ ミカル(
Do
w
Ch
e
mi
c
a
l)社が開発 したDo
w
法、新電解法、 カーナライ ト法 などがある (注5 ) 。 マグネシウム精錬法 さてこれ らの精錬方法の評価であるが、前者の熱還元法 なかんづ く 「ピジ ョン法」 は小資本で も参加で きる点に特 色があ り、後者の電解法 はその工程か らして大資本 を必要 とす るが、その代 わ り大量生産 には有利 である とされ る (注6)。 従 って各国 ・各企業の事情 によってそれぞれが活 用 されているとい うのが実情である (注7)。 ② 成形技術 ところで精錬法 によって得 られたマグネシウムは純マグ ネシウムであるために,、前述 した ようにそれだけでは工 業用材料 としては使 えない。そこで各種のマグネシウム合 金に加工 して成形 に供す る必要があるが、そこで登場 して くるのが成形技術である。成形技術 も精錬技術 と同様多種 多様である。 とくに成形技術 は用途に直結す るだけに用途 開発 と共 に発展 して きた。その発展過程 は大 きく分ければ 次の三つの過程 を辿 っている。 ダイカス ト法、射 出成形 (チクソモル ド)法、塑性加工法である。 そ こでまず ダイ カス ト法か ら検討 に入 ることにしよう。A.
ダイカス ト法 ダイカス ト(
Di
e
-
Ca
s
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i
n
g
)
とはそ もそ も鋳造 を意味す る言葉であるが、そのことか らも容易 に想像で きるように、 それは鋳造技術の一種であると考 えてよい。その意味では マグネシウム合金はそ もそ も鋳造技術 と共 に発展 して きた と言 える。 .前述 したように、純粋 なマグネシウムは軽量性 において 珪素還元法 一一二一一⊂
炭素還元法 カーバ イ ト法 アル ミニウム還元法I
G
法Do
w
法 新電解法 カーナライ ト法 ー7-ピジョン法 マグネテル法は金属の中で屈指の強みを発揮す るが、他方その ままでは 非常 に柔 らか く到底工業用材料 としては使 えない。そこで アル ミニウムや亜鉛などの添加材 を用いて強度や耐性 を高 める必要がある。 こうして造 り出されたマグネシウム合金 の特性 は工業用材料 なかんづ く自動車などの車両軽量化 に 極めて有効であったために、その需要はその成形技術 と共 に大 きく伸 びることになった。実はこの場合の成形技術 と して中心的な役割 を果た したのが鋳造技術 なかんづ くダイ カス トであった とい う訳だ (注8)。 しか も後述す るようにリサイクルをも含めてダイカス ト を中心 にマグネシウム合金に対す る需要増が見込 まれてい るが (注9)、そのことは同時に、 こうした需要増 に対応す る上で ダイカス トの技術 的限界 を も露呈す るこ とになっ た。 ダイカス ト法が製品の量産化 には必ず しも通 した技術 ではない とい うところに問題が生 じているのだ (注10)。
B.
射出成形法 (チクソモル ド法) つ ま りマグネシウム合金の大量成形 にとって鋳造技術 に はそ もそ も限界が存在す るとい う訳だ。そこで新たに取 り 組 まれたのが、樹脂の成形で使 われている射出成形法 とダ イカス ト法 との融合技術の開発であった。その結果登場 し て きた の が 射 出成 形 法 の 一 つ で あ る 「チ ク ソモ ル ド (Thixo-Moulding)法」
である (注11)。 この新方式 によって得 られた成形品はダイカス ト法 によ って得 られたそれ よりもその機械的 ・化学的特性 において 優 れている点 は確 かに否定 し難い ようだ。図表10[1
]が 証明 しているように、引張強 さ、伸 び ともに、射出速度が 上昇するに連れてテクソモル ドが ダイカス トより優位性 を 高めている。 また同図表10[2]が示 しているように、耐 食性 について も前者が後者 を大 きく上回っている。 従って機能面で観 る限 り、マグネシウム需要が増大すれ ばす るほどチクソモル ド法の優位性が高 まることは否定で きないであろう。 だがテクソモル ド法 において使用 される 1 射出成形機 は極めて高価 な機械であ り (注12)かつ米のテ クソマ ッ ト社 (Dow Chemicalの子会社) にその独 占製 造 ・販売権が帰属す るとい う特殊 な制約条件 を有す る機械 で もある (注13)とい うことを見落 とす訳 にはいかないで あろう。 その意味ではテクソモル ド法は日下の ところ必ず しも汎用性 を伴 った技術ではない とい うことにわれわれは 留意 しておかなければな らない。 か くして、テクソモル ド法は、経済的余裕 を有する大企 業 にとっては利用可能であって も、そ うした余裕 を持たな い中小企業や地場産業 にとっては利用困難であるとい う企 業経営上の制約条件 を有 しているとい うことを指摘 してお かなければならないであろう。C.
塑性加工法 そこで第三の成形技術の登場が期待 されるところとなる のだが、それが塑性加工法である。 それは、押 し出 し、圧 延、鍛造などか らなるが、その機械的性質に関 しては上記 の二つの技術 に比べて用途次第では優れた特性 を発揮 しう 得 る (図表11[1][2]参照) (注14)。 しか も資本 ・資金の 面で も、 自らの既存蓄積技術 を有効 に活用するならば中小 企業や地場産業に とって も決 して大 きな負担 とはならない と考えられる。 従 ってそのニーズは潜在的に大 きい と推測 されるのである。 しか しなが らその潜在的ニーズが大 きいか らといって、 マグネシウム合金の成形 に関する塑性加工法は、 日本では 未 だ本格 的 に開発 されている訳 ではない。技術 的難点が 多 々残 されているか らだ。例 えばその一つ に 「加工硬化」 (成形の全過程 [10-20過程] を終 える前 に加工硬化 によ って伸びに くくな り破断 して しまうこと)がある。 またプ レス成形 品の場合 には、内部部品 をね じ止 めす るための 「ボス」が形成で きないが、 この点 も重要 な難点の一つ に 数えられよう。 だが同時にこうした難点 も次第に克服 され る方向に向かいつつあるということもまた見逃 されてはな らない (注 15)。従 って この成形法 も、後述す る ように (本章[
3
]-①-
D
参照) コス ト引 き下 げの余地が大 きい と い う有利性 も手伝 って、今後次第に実用 に供せ られる可能 性 は大 きい と観て よいであろう (注16)。 (3)用途 マグネシウムは構造用 (工業用)材料 として使 われると ともに非構造用 (化学用)材料 として も用い られている。 そこで用途に関 してはまず構造材か ら観てお こう。 (∋ 構造材 図表12はこれまでマグネシウムが工業用材料 として使用 されて きた事例 をまとめた ものである。 それか らも明 らか なように工業用材料 としての用途は多岐に及んでいる。 そ の中で現在開発対象 となっている主要製品分野 を挙げるな らば、 自動車、情報関連機器、電気製品の三分野である。 A.自動車a.
マグネシウム開発の歩み と自動車産業 マグネシウム開発 は正 に自動車産業 と共 に歩んで きた と 言って も過言ではない。それほど両者の関係 は深い。マグ ネシウム と叫 との最初の出会いは 「イ ンディー500」であ る。
「インデ ィー500」 とはアメリカのインディアナポ リス で1911年以来開催 されているカー レースの ことであるが、 1921年にはマ グネシウム製 ピス トンを装着 した車が出場 し て俺勝 し、爾来
レーシングカーの性能向上 とマグネシウム -Lq-0 0 5 0 ril r■l ( t2 d m ) 仙 想 rA 蛸 f J m 6 4 2 0 ■︼l ■l ■l ■l % .n 草 8 6 0 0.5 1.0 1.5 2.0 射 出速度(m/S) (出所)暗末 光 「最近のマグネシウム合金の現状」(日本マグネシウム協会 Fマグ ネシウムダイカス ト・チクソ技術テキス トj 【1998年 8月])p.18より。 (1)機械的性質の比較 (^ e p JN Lu U \ 6 Lu ) 雌 増 僻嘩
AZ91D AM60B AE42 AS41 Mg-Al合金 の種 類 (出所)中津川 勲 「マグネシウムのチクソ成形」(日本マグネシウム協会『99マ グネシウムマニュアル』)p38より。 (2)化学的性質の比較 図表10 ダイカス ト法 とチクソモル ド法の特性比較 マグネシウムはその結 晶構 造からみて冷 間での加工性 に劣るが、 適温 に保 持 しながら加工すれば各種 の塑性 加工法が応用できる○ 押 出し 中空体を含 めてマグネシウムの塑性加工 には押 出し加工が最も適 するo ダイスの製造ができればどんな形状の押 出し加 工もでき、晶質が良く機 械 的性 質のそろった材料 が得 られるo 圧 延 マグネシウムは冷 間圧 延性 が悪 く、板柳 ま一般 に性 質が劣るが、厚板 は寸法安定性 が良く、定盤 や工作用板材 などとしての性 能 がよい○ 薄板 は凹み抵抗が大きいのでその点 では有用 であるが、加 工 費が高くつくのが欠点である○ 鍛 造 マグネシウム合金 は容易 に鍛 造ができ、鍛 造品の機 械 的性 質も良いo (出所)諸住正太郎 Fマグネシウム読本』[カロス出版社、1998年4月刊]p.57より
(
1)マグネシウム合金の塑性加工法 と製品特性 成形法 . 使 用材料 成 形温度(℃) 成形サイクル(秒) 備 考 適 用 実績 ダイカスト AZ91D 650- 20-30 薄肉成形 に向くo表面 の研磨 やパテ埋めが必要で、バリも多 く、後加 工に手間がかかる モバイルPC、ポータブルMD、カメラ、携帯電話など チクソモールディング AZ91D 550-600 30-45 リブやボスの多 い形状 に向 く○表 面 の研 磨 やパテ モバイルPC、ポータブルMD、デジタル ビデオ一体 埋 めが必要で、バリも出て、後加工も必 要 型カメラ、携帯電話など プレスフォージング AZ31B ∼400 ∼10 表 面 晶 質 に優 れ、表面 の研磨 やパテ埋 めが不要 ○ある程度の高さのボスは形成できるo材料 費は高い○ ポータブルMD (注)AZ91Dは鋳造用 合金、AZ31Bは展仲村 (2)塑性加工法 と他の成形法の比較 図表11 マグネシウム合金の主な成形法 -9-(出所)『日軽メ二カル』[2000年 3月号】)p.33より。金 属 名 ′ 使 用 例 航 空 宇 宙 関 係 ジェットエンジン部品、ホイール、窓枠、椅子、ドア-丁番、補助翼胴、床、ヘリコプター部品、人工衛星部品 軍 需 関 係 携帯用小屋フレーム、運搬具、ミサイル部品 原 子 力 関 係 燃料被覆材 陸 上 輸 送 機 器 雪上車、二輪車のクランクケース、ギヤーボックス、カバー、ホイール、自転車のフレーム、ハブ 荷 役 機 器 運搬車、パレット、ドソクボ-卜、手押車 (含ゴルフクラブ用) 産 業 用 機 器 工作用ジグ、定盤、水準器、印刷ロール、印刷版、捺染枠、タラップ、機械部晶、船舶用コンテナー、セメント外板、コンクリート仕上板 農 林 鉱 業 機 械 チ土ンソー、農薬散布機、芝刈機、さく岩機 .釘打機のクランクケースハウジング、燃料タンク、コンクリートカッターのケースカバー 電 気 .通 信 機 器 携帯無線受発信器ボディー、電気ドリルのハウジング、コンビユ-タ-部品、海難救助電池、乾電池、タ-ンテーブル部品、ステレオピソクアップ、スピ-カーフレ-ム l 事 務 用 機 -.器 タイプライター.テレックスのハウジング、パソコンのハウジング 光 学 用 機 器 カメラ.映写機 .双眼鏡のボディー、ビデオカメラのフレーム、ビデオフレーム、引延檎 レジャースポーツ用品 野球バット、キャッチャーマスク、テニスラケット、洋弓のハンドル、釣用リ-ル、スキー靴止め金具、バ卜ミントンジョイント、ボーリウングのピン (出所)時末 光 「最近のマグネシウム合金の現状」 (日本マグネシウム協会 『マグネシウムダイカス ト・チクソ 技術テキス トJ[1998年8月])p.12より。 図表12 マグネシウム合金の構造材 としての使用例 自動車メーカー マグネシウム需要量 (トン) 1. Ford 17,500 2. GeneralMotors 9,400 3. Chrysler 7,050 4. Toyota 4,200 5. Mercedes 2,700 6. Audi 1,600 7. Volkswagen 1,250 8. BMW 700 9. Fiat 500 10. Porche 250
●NorskHydro賛料
(1)1997年マグネシウムダイカスト部品利用自動車メーカー 1955 1960 1965 1980 GMフルサイズバン GMミニバン GMミニバン Chrysler FordL.トラック V.W. Audi Mercedes Mercedes Fiat SavanaaExpress SafariaAstro BuickParkAvenue ミニバン F-150 Passat A4&A6 SLK SL ATfaRpmeo156
'NorskHydroや料
(2)マグネシウムの使用量の多い車種例 (kg/台)
1990 2000
OTransumissonCase OC山tchHousing OTininingCaseCover OOilPan Ocoolong OcylinderHeadCover )DiskWheel (Explamation)
)TOYOTA ▽FUJITUHeavy'Ind. ◇HONDA ◎DAIHATSU [コNⅠSSAN △SUZUKl ○MAZDA ※KOREA
OcylinderHeadCover
◇CylinderHeadCover OsteeringWhee一Core ◇SteeringWheelCore
◇DiskWhee一
◇cylinderHeadCover ◇lntakeManifoldCover ◇lntakeManifoldChamber LSteeringLockHousing
lSteeringWheelCore ■CylinderHeadCover
■BrakePedalBranket □SteeringLockHousing ☆Steerin9LockHousing *SteeringWheelCore △SteerlngWhee一Core
▽SteeringWheelCore ◎CyHnderHeadCover
(3)アジアにおける自動車部晶の採用例
(出所)井藤忠男 「ダイカス ト・チクソ成形におけるマグネシウム部品の現状」 (日本マグネシウム協会「99マグネシウムマニュアルJ)p.138-139より。 図表13 自動車メーカーのマグネシウム合金使用比較
-(
ナ金の開発が文字通 り串の両輪の如 く進展 して きた とされ ち (注17)。 こうした経緯 を経てマグネシウム合金 は遂 に実用車 にも 通用 されるのであるが、その代表例 としては1946年以降の 独 フォル クス ワーゲ ン(
Vo
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社 のケースが挙 げ られ る。 この場合 には2,500万台の動力系 に一台当た り 約21kg(総量 で は年 間4万 トン以上) のマ グネシウム合 金が使 われた とされている (注18)。だがその後、VW社 のモデルチ ェンジ (1970年) に伴 い大幅 に使用量が減少 し 爾来マグネシウム合金の需要 も低迷が続いた。 こうした低迷時代 の打開に繋がったのが前述 した1980年 代後半のアメ リカにおけるCAFE
規制である。 その結果今 度は ヨーロ ッパ に代 わってアメ リカで 自動車へのマグネシ ウム合金の利用が急速 に進み出 した。例 えば北米では、製 造 される自動車一台当た りのマグネシウム合金使用量 は85 年 には0.8kgであったが、90年 には2.2kg、95年 には5kgへ と増加 していった と報告 されてい る (注19)。一方 こうし た燃費向上の要求は需要低迷が続 いていた ヨーロ ッパで も マ グネ シウム合 金 の需要拡大 に結 びつ き始 めてい る よう だ。例 えばI
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によれば97年 にはマグネシウム合金 ダイカス ト向け出荷が
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を超 えてい るが、その背景 には 自動車 向けの利 用が大幅 に増大 し始めている とい う事情が横 たわっている もの と推測 され る (注20)。さらに 日本 もこうした動 向 と 無縁 で はない。 日本 の 自動車業界 で もス テア リング コラ ム ・ロ ック ・ハ ウジングか らステアリングホイール芯へ と 自動車利用が本格化 し始めているとされる (注21)。 その結果、現在では自動車産業 におけるマ グネシウム合 金の利用 は、アメ リカ、 ヨーロッパのみな らず 日本の 自動 車 メーカーに到 るまで広範 に広が ってい る (図表13参照) (注22)。 ではこうした動 きは今後 も一層広が り且つ深 まるもの と 想定 して もよいであろうか。 この点 を考 えるためには、 自 動車産業 における燃費向上問題 を考察 しておかなければな らないであろう。 b.燃費向上 と車両軽量化 入手デー タの関係でやは り日本のケース を中心 に して こ の間題 を考 えてみ よう。 まずわれわれは、問題の考察 に当 たってい ま一度CO
2排 出量規制問題 に立ち戻 らなければな らない。先 にCO2
排 出量削減のための部門別割 り当てにつ いて指摘 したが、 この問題の考察のためには、実 はそれだ けでは不十分であ り、 さらにCO2排 出量 の部門別実績 自体 のチェ ックが必要 となる。 図表14[1]は1994年度 にお けるCO2排 出量 の部 門別 内 訳であるが、それによれば運輸部 門は凡そ20%と産業部門 の半分近 くに匹敵す る大 きさである。 しか もその大半が 自 動車 に起 因す る とされてい る (注23)。では 自動車の どこ に問題が存在す るのか。それ を検討す るために、 自動車の 製造、走行、廃棄 に至 るまでのCO2排 出ライフサ イクルを 観察 してみ る と、 図表14[2]か ら明 らか な ように走行過 程の排 出量が圧倒的に多い ことが判明す る。 つ ま り走行 中 の燃 料 の燃 焼 に問題 が あ る とい う訳 で あ る。 か くして、 1995年比 で2010年迄 に燃費 を22.5%向上 させ る とい う案が 日本政府 よ り1998年1
0月13日に自動車業界 に対 して提示 さ れたが (注24)、実 はその背後 には燃費問題 を巡 るこうし た厳 しく且つ切迫 した事情が横 たわっていたのである。 では燃費向上のための方法 としては何が有効 なのか。そ れは結局、 「エ ンジ ン燃焼改善」 (エ ンジ ン燃料効率 向上) (図表14[3])と車両軽量化 (図表14[4])の二点 に帰着 す る と言 って よいであろ う。 前者では数10%のオーダーで CO2削減効果が期待 で きる し、 また後者 について も、一般 的には10%の軽量化 で5%程度の燃費効果が期待 され る と 報告 されてい る (注25)。つ ま り燃費問題の解決のために はエ ンジン燃料効率 向上 と車両軽量化の両面戦略が必要 と されている とい うことだ。 それでは後者の車両軽量化のについては如何 なる手段が 考 え られるのか。主要 な手段 は、 (イ)車両の ダウ ンサ イ ジ ング、 (ロ)部 品統合 や 中空化 な どに よる部 品軽量化 、 (ハ)材料 の軽量化 -の三つである とされる (注26)。さら に最後の材料軽量化 に関 して も、二つのプロセスす なわち、 (イ) まず現在主 として使用 されてい る鋼 自体 の高強度化 による軽量化、 (ロ)次いでアル ミニ ウム合金、マ グネシ ウム合金、 プ ラスチ ック樹脂 な どの低比重材料す なわち 「軽量材料」の活用- とい うプロセス を経 なければな らな い、 とされる (注27)。 か くして、 日本の 自動車業界 では、車両軽量化が確かに 燃費 向上戦略 の一環 として位置づ け られてい る とい って も、その ことが直ちに 「軽量材料」 の活用 に繋が る訳では ない し、況や 「軽量材料」の中でマグネシウム合金の使用 に対 して無条件で優先使用権が与 え られている訳で もない (注28)とい う点 に注意 を払 ってお く必要が あろ う。 従 っ て、少 な くとも日本の 自動車業界 においては、マグネシウ ム合金需要 自体 は次第に拡大す るに して も、それが欧米の 自動車業界 において観 られるような大幅 な拡大や急増 に繋 がる可能性 は 目下の ところ必ず しも大 きい とは云 えない と 言わざるをえないのである。 だが、将来 ともそ うした可能性が ない とは言い切れない。 何故 な らば次の二つの要因を無視す ることはで きないか ら -ilil-運輸 (1)国内co2排 出量の部門別 内訳 (3)自動車の低燃費化技術 (% )
梯
JJ 唱蟹
茶 事 40 30 日本の平均 的乗用車(2000cc)走 行9.4万Km (2)自動車co2排 出量 内訳 エンジン燃焼 改善 25 摩擦 損失低減 伝 達効率の向上 軽 量化 空気抵抗低減 ころがり抵抗低 減 5 0 5 ■︼l ■l (IJ ∈ 苫 批 W , E] 車両製造 4% 二コ 対 梢 造 7,06 Eヨ 輸送 2% 医∃維掛 管理 0.04% 廃 棄 ・リサイクル CO2総排 出量:26t 日本 自動車工業会参考●
●
●
●
●● ●●
●
●● 。●.
●
I.
●
●
● ●I ● 500 1000 1500 2000 車両重量 (Kg) (4)車両重量と燃費の関係 (出所)真鍋 明「マグネシウム合金の自動車への適用」 ([社]軽金属学会 『第56回 シンポジウム :今、注 目を集 める マグネシウム材料』[1999年3月19日])p.55-56より。 図表14 自動車産業における燃費向上対策 74 77 80 83 86 89 92 97 西暦 年度(出所)http://www.keikyo-unet.ocn.ne.jp/Jadj3.htm 図表15 普通 ・小型乗用車用の主原料の構成比推移 (自工会那 斗)
2-である。一つは前述 したマグネシウム合金開発 における急 速な技術進歩である。 とりわけそれが 自動車部品のモジュ ール化 ・システム化 に結びつ くならば、それは単 に ``材料 韓・量化" としてだけではな く ``部品軽量イビ'をも通 じて-さらに敷街すれば両者の相乗作用 を通 じて- 自動車 メーカ ーに大 きな影響 を及 ぼす可能性 を学 んでい るか らだ (注 29)。 それ は正 に 「軽量革命」 と呼ぶべ きものであ ろ う (注30)。二つ 日はやは り前述 した リサイクル要因である。 マグネシウム合金は他の軽量材料 に比 して技術的にリサイ クル性 に優 れてお り、 しか も自動車業界 はこうした リサイ クル性 を重視 してお りかつそれによる経済効果すなわちコ ス ト引 き下げ効果にも注 目しているか らだ (注31) 。
C.
マグネシウム開発 における欧米 と日本の 自動車メー カー われわれは、マグネシウム開発 について欧米の自動車業 界の方が 日本の業界 よりも積極的な姿勢であるとい うこと を最後 に指摘 してお きたい。 日本の 自動車業界では車両軽 量化のために使われる材料の中で最 も伸 びているのは専 ら アル ミニウムであるが (図表15参照)、欧米の場合 にはア ル ミニウムとともにマグネシウムの利用 も進んでいる。 まずアメリカの自動車メーカーでは、エ ンジンやパ ネル のアル ミ化 とともにマグネシウム利用 による軽量化が進展 しているとされる (注32)。その背景 には官民共同で推進 され て い る 「超 低 燃 費 次 世 代 車 開発 プ ロ ジ ェ ク ト」(
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が軽量金属材料 としてアル ミニウムとともにマグネシウム を重視 しているとい う事情があるか らだ と考 え られる (注 33)。
また ヨーロッパで も、CO2排 出削減 と燃費向上のために 「3Lカー」 (3リッタカ- ;3リッ トルの燃料で1
0
0
キロメー トル走行可能な車)の開発が急務 とされ、 しか もリサイク ル も大 きな課題 とされているために、アル ミニウムとマグ ネシウム材料の使用が積極的に行われていると伝 え られる (注34)。例 えば、3Lカー としてVW (フォルクスワーゲ ン) は1
9
9
8
年のパ リ ・モー ター シ ョーでLUPO
を発表 したが、 その車両骨格 は鉄鋼構造ではあった とはいえ、 フー ド、 フ ロン トフェンダー、 ドア一、テールゲー トアウターにはア ル ミ版が、 またサスペ ンシ ョンアームにはアル ミ鍛造品が それぞれ使 われるとともに、バ ック ドアのインナーパ ネル やステアリングコラムにはマグネシウムが使用 された とさ れる。 その結果、約1
8
0
kg
の軽量化 に成功 し、軽量化の燃 費改善寄与率は2
0
%
に達 した とのことである (なお、エ ン ジン関連寄与率は6
0
%
、空力特性 はそれは2
0
%
であった)。 か くして、欧米の 自動車メーカーはアル ミニウム精錬事 業 との提携 だけではな くマグネシウム精錬事業 に対 して も 競 って投資 し始めているが (注35)、それはこうしたマグ ネシウム利用 における積極的な姿勢 を反映 した ものである と考えられる。 以上のことか らも窺 えるように、欧米の 自動車メーカー と日本の 自動車メーカー との間にはマグネシウム開発問題 に対 して 目下の ところ些か ``温度差''が感 じられのは否め ない ようだ。B.
情報関連機器 情報 関連機器 について はPCを除 く情報機器 とPC関連 (ノー ト型パ ソコン) とに大別 される。a.
情報機器 (PCを除 く) この分野における日本での導入状況 を一瞥す ると、1
9
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0
年代 に入 り業務用 テ レビカメラの匡体 として導入 されたの を皮切 りに、その後9
0
年代後半 には民生用デジタルビデオ カメラの笹体 を中心 に広がっていった。業務用か ら民生用 へ の転換 において画期 をな したのが1
9
9
6
年 に.発売 された SONYのDCR-
ⅤⅩ1
0
0
0
である。 その場合、設計上求め られ た重要 なポイ ン トは、 (イ)振動 メカノイズの低減、 (ロ) 機内温度上昇防止 (放熱、熱分散)、(ハ)電磁環境適合性、 (ニ)軽量化、 (ホ)剛性、強度、 (へ)高級感 (質感、美 観及び感触)、 (I) リサイクル性- な どであった とされる が (注36)、 こうした課題 に応 えるための匡体 としてマグ ネシウム合金 ダイカス ト品が採用 された訳である。その後、 製品 としてはデジタルカメラ一体型VTR
の開発が進 む と ともに、機能的には上記 (二)の軽量化が製品の軽薄短小 化 とともにさらに追求 されることになるが、そのこともま たマグネシウム合金の特性が一層重視 されその採用が相次 ぐことに結びついた。 b.ノー ト型パ ソコン ところでマグネシウム合金が製品の軽量 ・小型化 に適す るという特性 は、携帯用機器 にとっては最適であるとい う ことで もある。 そこでノー ト型パ ソコンへのマグネシウム 合金の採用今 と事態が進展 してい くのはある意味では当然 の成 り行 きであった。1
9
9
7
年か ら9
8
年 にかけて、マグネシ ウム合金が上記の情報関連機器 と共 にノー トパ ソコンのハ ウジング (笹体) として各社の製品において一斉 に採用 さ れて行 ったのはこうした事情 による。 ■ 特 にノー ト型パ ソコンは携帯性だけではな く機能性や操 作性 まで併せ持つ ことが要求 され、その結果それは、携帯 性 ・機能性 ・操作性 とい うオフィス環境 にとって必要な三 つの機能全てを充たすに至った。 ノー ト型パ ソコンのこう した優 れた機能 は既存のディスク トップ型パ ソコンの地位 を脅か し遂 にはそれを凌駕する勢いで売 り上げを伸 ば して - 13-いる。 ノー ト型パ ソコンのこうした 目覚 ましい進出に対 し てマグネシウム合金が極めて重要な役割 を果た していると い うことも見落 とせ ないであろう。
C.
電気製品 マグネシウム合金の特性 を活用す る分野は、上記の情報 関連機器、ノー ト型パ ソコンに止 まらず さらに他の電気製 品に も波及 しつつある。 まず ミニディス ク(
MD)
のマグ ネシウム化が挙 げ られる。MD
の普及 には 目覚 ましい もの があるが、 とりわけ携帯用MD
は国内において売 り上げ金 額、台数共 にヘ ッ ドフォンステ レオ(
TAPE)
、 コンパ ク トディス ク (携帯用CD)
を凌 ぐ勢 いであ り、全世界的に も数年後 には同様 の状況 を迎 える もの と予測 されている (注37)。 こうした中で特 にS
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は主要 メカ部 品の殆 どに亘ってマグネシウム合金 を採用 しているが、そ れによってMD
のマグネシウム化が決定的になった と云 え そ うだ (注38)。 さらにマグネシウム合金の応用範囲はこうした小型化だ けではな く大型電気製品の領域 にまで及びつつあることも 注 目しておかなければな らない。例 えば松下電着封ま、 日本 製鋼所 と共同で大型テクソモル ド成型機 を開発 し、それを 使 ってテ レビキャビネ ッ トに初めてマグネシウム合金 を採 用す るこ とに成功 し、 さ らに2
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型 テ レビ(
TH-
2
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)
としてその販売 を開始 した と伝 え られる (注39)。D.
「軽量材料」における競争関係 とマグネシウム成形品 このように自動車産業や電機 ・電子産業 を中心 にして軽 量材料の重要性が飛躍的に高 まってお り、それは文字通 り 「軽量革命」 の観 をを里 しているのであるが、それで は、 この軽量材料 とりわけその中の主要材料すなわちアル ミニ ウム成形品、マグネシウム成形品さらにはプラスチ ック樹 (1)材料の物理的特性比較 脂 という三者の間で今後 どの ような競合関係が想定 される のか。 またその中でマグネシウム成形品は如何 なる地位 を 占めることがで きるのか。最後 にれ らの点 を用途開発論 と の関連で観てお こう。a.
マグネシウム成形品 とアル ミニウム成形品 まずマグネシウム成形品 とアル ミニウム成形品 との代替 性 について。既 に述べた ように両者の関係 については、 自 動車産業 に観 られるように、 目下の ところマグネシウムが アル ミニウムの優位性 を覆す には至ってはいない。 確かに両者の特性比較 においてはむ しろマグネシウム合 金の方が優位 に立っている面が多い と言 える。 軽量材料の 物理的 ・機械的特性比較 を行 うと以下の通 りである。 まず 物理的特性 については、軽量性 においてマグネシウム合金 が樹脂 とともに最 も優位 な地位 を占めてお り (図表16[1
]
参照)、 さらに機械 的特性 において も比強度の面でマグネ シウムが圧倒的に優位 な立場 にあると云 える (図表16[2] 参照)。 だが経済性 においてはアル ミニウム成形品が圧倒的に優 位 に立 っていることは否定 し難い ようだ (注40)。その結 果前述 したように、市場規模の面で もアル ミニウムが圧倒 的に有利 な立場 にあるとされる (注28参照)。 だか らこそ 自動車産業において もマグネシウム成形品がアル ミニウム 成形品を凌駕す るには至 っていないのだ。 無論将来 とも、マグネシウム成形品がアル ミニウム成形 品に代替す る可能性が皆無 とい う訳ではない。一つ には、 成形技術の発展 とリサイクル問題が前者 に有利 に作用す る か らである。二つには、経済性の面で も条件が変化す る可 能性が強いか らだ。この点に関 しては、次 に述べ るように、 プラスチ ックに対す るマグネシウムの代替性が問題のカギ 材 料 密 度 熱伝導度 導電率 線膨張率 溶解温度範囲 (Mg/m3) (W/(m℃)) (%lACS) (×10-6/℃)(
℃) アルミニウム (5182-0) 2.7 119 30 24.1 577-638 鋼銀(SPCO) 7.8 71 16 ll.7 約1530 樹脂 (SMC) 1.8 - - - -(2)材料の機械的特性比較 ネオ 料 引張強 ・耐 力 伸 び ヤング率 比強度 比剛性 剛性メリット (N/mm2) (N/mm2) (%) (KN/mm2)(TS/β×106mm)(E/pXlO6mm) (E1/3/〟) アルミニウム 270 130 26 71 10 2600 7.15 鯛飯 210 180 42 210 4.2 2700 3.54 樹脂 70 1.5 ll 3.9 610 5.58 (出所)http://www.keikyoIUnet.OCn.nO.jp/Jqt12.html 図表16 軽量材料の特性比較 -14-モ握っている。だがマグネシウム ・アル ミ√ニウム関係 にお いてそ うした逆転が将来生 じるにして も、そのためには今 少 し時間 を要す る と考 えておか なければな らないであろ う 。
b.
マグネシウム成形品 とプラスチ ック樹脂 ではマグネシウム成形品 とプラスチ ック樹脂 との関係 に ついてはどうか。そこでは既 に両者の逆転関係が始 まって いるとみ られな くもない。上述 した ように、情報機器か ら 始 ま りノー ト型パ ソコンさらには電気製品に至 るまでいわ ば 「マグネシウム化」
の波が急速に押 し寄せているが、そ のことは、従来 この分野での主要材料であったプラスチ ッ ク材料 との関係 においてニューカマーである筈のマグネシ ウム成形品が既 に前者 に対 して優位 な立場 に立ちつつある とい うことを窺 わせ る。 では客観的に観て両者の関係 はどうなのか。両者の特性 及び経済性 を比較 してみると以下の通 りである。 まず材料 としての物理的 ・機械的特性 においては、軽量性 について は両者の間に遜色がない として も、弾性率や引張強 さの面 ではマグネシウム合金の方がプラスチ ックよりも造かに優 れている (図表16〔2〕参照)。だが コス ト面ではプラスチ ックの方が今 なお優位性 を保 っている。 例 えばプラスチ ッ ク樹脂 はキログラム当た り約300円に対 して、マ グネシウ ム合金は同 じく約500円とされている (注41)。しか しなが らマグネシウム成形品におけるコス ト面でのこうした割高 の解消 も時間の問題であると考え られる。何故な らばマグ ネシウム合金の特性 は技術的にさらに薄肉化 を可能 として お り (注42)、一層の軽量効果が期待 で きるが、それは同 時に成形品におけるコス ト低下の可能性 にも繋がるか らで ある。 しか もリサイクル性 とい う点ではマグネシウムはそ もそ も金属であるという有利性 をプラスチ ックに対 して有 して いるとい う点 をも考慮するな らば、両者の関係 における逆 転 もそ う遠 くない時期 に起 こ りうる可能性があると言って もよいであろう。 われわれは上述 した電気 ・電子分野 におけるマグネシウ ム成形品の急速な普及の背景 にはプラスチ ックに対するマ グネシウムのこうした代替関係が存在 しているとい うこと を強調 しておかなければな らないであろう。 さらにこの点 は、アル ミニウム成形品に対するマグネシウム成型品の経 済面 における不利性の克服 を通 じて、両者の関係 における 逆転化の可能性 に繋がるとい うことも重要である。 電気 ・ 電子分野における 「マグネシウム化」
は当然マグネシウム 成形品の量産化 に結びつ く。 その結果、マグネシウム成形 - 1 5 -品の コス トは大幅に低下する可能性が生 じる。 (とりわけ、 人手ののかかる工程 を減 らし得 るとい う点ではプレスフォ ージング法やプレス成形法が、 また歩留 ま りの余地の大 き いことではテクソモル ドな どが ダイカス ト法 に比べてコス ト引 き下げの可能性がそれぞれ大 きい と観 られている [注 43]。)言 うまで もな くそれは、マグネシウム成形品のアル ミニウム成形品に対する価格競争力の相対的有利化 をもた らし、両者の関係 における逆転化の可能性 に現実味 をもた せ る結果 となるのである。 ② 非構造材 マグネシウムは歴史的にはむ しろ化学用 に使用 されて き たのである。 例 えばパ イプラインの防食の ように、多金属 を陰極防食す るための犠牲陽極 として用い られることが多 かった。 この他、 グリニヤール反応での触媒、写真撮影用 のフラッシュ、照明弾、花火 な どにもよ く使 われて きた。 その後、前述 した ように合金開発 と成形技術の発展 と共に 工業用材すなわち構造材 として使用 される方が主力 となっ たのである。 だが今 日もなお、マグネシウムが、上記の化 学用材すなわち非構造材 として も使われてお り、われわれ の生活 にとって欠かせない金属であるとい うことも見落 と してはな らないであろう。 以下でその用途 を列記 してお く (注44)。 ・グリニヤール試薬製造用 ・花火 ・フラッシュ (閃光剤) ・照明弾用 ・防食用犠牲陽極 ・水素吸蔵合金 ・電池 ・制振合金 ・合金添加用 (アル ミニウム合金用、亜鉛 ダイカス ト合金 用) ・脱硫剤 ・脱酸剤 ・還元剤等反応用 ・ダクタイル鋳鉄製造用 ・合Siマグネシウム溶融浴 による鉄鋼の珪素浸透法 ・多孔体の製造 ・人体用 (4) リサイクル マグネシウム合金が代替材料であるプラスチ ックに比べ て リサイクル性 に富んでいるとい うことは既 に指摘 した。 プラスチ ックが化学製品か らなる材料であるのに対 してマ グネシウム合金は金属製品か らなるそれであるか ら、ある 意味ではそれは当然のことだ とも云 える。 だが今後、共 に 金属材料 に属するアル ミニウム合金 との競合関係が問われ るもの と想定 されるのでマグネシウム合金の リサイクル性に関 して もよ り詳細 な研究が必要であると考 え られる。以 下ではそ うした観点 に立 って、 とりあえずマ グネシウム合 金の リサイクル性 について若干触 れてお こう。 ① ダイカス ト法 まず ダイカス ト成形法 において使用 されるマ グネシウム 合金 についてこの点 を確 かめてお こう。 ダイカス ト用マグ ネ シウム合金 の再生性 は比較 的高 い と考 えて も良い よう だ。何故 な らば、マ グネシウム合金の再生 に要す るエネル ギーは、新塊製造のエ ネルギーの4%に過 ぎず、技術 的に も新塊精錬 プロセスの最終工程で行 われるマグネシウム合 金製造 と同 じである とされるか らだ (注45)。マ グネシウ ム合金の リサイクル性 におけるこうした有利性 は、今後マ グネシウム合金需要が増大す る もの と見込 まれる今 日、極 めて重要 な意味 を持つ もの と考 え られる。 使用済み製品や 成形過程で発生す るマ グネシウム屑材 の リサイクルを通 じ て材料及び製品の供給量増加 とコス トダウン低下 を図るこ とによって需要拡大 と供給増加 の好循環 を実現 し得 るか ら だ (注46)。 (参 テクソモル ド法 チ ?ソモル ド成形法 において使用 される原料チ ップにつ いて も再生可能性がある。 その場合二つの方法が想定 され ている。 一つ は再溶解法であ り、今一つ は直接法である。 両者 を比較 した場合、後者の直接法の方が技術的に もコス ト的 に も有利 である とされ る (注47)。その結果、現在 は イ ンゴ ッ トをチ ップに加工す る際 に要す る加工費 (注48) が節減で きることにな りテ クソモル ド成形の コス ト低減が 可能 になる とされている (注49)。われわれは リサ イクル によるチ クソモル ド法のこうした技術的 ・経済的可能性 に ついて も考慮 を払 ってお く必要があるであろ う。今後、マ グネシウム合金 とアル ミニウム合金の代替性 を考 える上で も、 この点は重要 なポイ ン トの一つ となる もの と考 え られ るか らである。 (注1)マ グネシウム合金 の表示方法 (ASTM方式) は以 下の通 り。 例 えばAZ91Dの場合 A Z 9 1 D l I