Palliative Care Research 2015; 10(2): 901‒5
緒 言
ベルランド総合病院(以下,当院)は病床数 477 床,診療 科数 26 科の地域医療支援病院である.当院では 2008 年 5 月 より緩和ケアチーム(以下,PCT)を発足させ,カンファレ ンスおよび病棟ラウンド(以下,CR)を行ってきた.当院 PCTは医師,看護師,薬剤師,理学療法士,作業療法士,栄 養士,臨床心理士,医療ソーシャルワーカー(以下,MSW), 事務員で構成され,病棟からの依頼を受けて毎週水曜日の午 前に CR を実施している. 以前,われわれは PCT が抱える問題点を解決する手段の 1 つとして,緩和ケアチーム情報共有データベース(以下,DB) を独自に構築し,DB による運用とその有用性に関する報告 を行った1).この DB では,患者評価にホスピス・緩和ケアに おけるクリニカルオーディットのツールである STAS(Sup-port Team Assessment Schedule)2)の日本語版 STAS(以下, STAS J)3,4)を導入し,PCT の各職種が提供可能な情報につい ても CR 前に DB に入力するフォームを構築した.その後, PCTメンバーからの意見をもとに,より効率的かつ効果的に 情報抽出と共有を可能にするためにDBの改良を行ってきた. 今回は,以前報告したDB1)からの改良点について報告する.方法(DB の改良)
DB は,市販のデータベース作成ソフトである Microsoft Access® 2007を用いて独自に構築した.DBは院内ネットワー ク上に設置し,院内のどのパソコンからも情報の入力と閲覧 を可能とした.今回のおもな改良点 5 点を,以下に示す. 1 介入内容の追加(図 1‒⑤) チームメンバーが患者に介入した際の記録を入力する「介 入内容」の項目を新たに設けた.これは DB 上の掲示板の役 割をするもので,入力方式も自由記載にし,各 PCT メンバー の介入内容を明確に共有できるようにした.また,CR での 検討内容についても,CR 終了後にこのフォームに記載する こととした. 2 問題点ごとの提案内容入力フォームの追加 以前の DB では,すべての問題点と PCT からの提案内容を 同じフォームに入力していたが,問題点をより明確にするた めに入力フォームを追加し(図 1‒④),問題点ごとに提案内 容を入力して,処方提案があれば具体的な処方内容について も記載することとした.3 Palliative Prognostic Index の追加(図 2)
患者の全身状態や予後を評価するための Palliative Prognos-tic Index5)を計算するフォームを新たに追加した. 4 患者情報データシートの改良(図 3) DB に入力された情報は,患者情報データシートとして A4 用紙 2 枚に印刷されるようにした.1 枚目には患者基本情報 (ID,氏名,性別,年齢,CR 実施日,ラウンド対象有無, ADL(activities of daily living),performance status,安静度, 疼痛部位,痛みの性質,PCT への依頼内容,各職種の情報, 介入内容),2 枚目には PCT からの提案内容と,以前の DB で は各ラウンド日の分しか表示されなかった STAS J の評価を 時系列で表示できるようにした(図 3 右下).
活動報告
緩和ケアチームデータベースの改良に向けた取り組み
渡邊 裕之
1,4),江藤美和子
2,4),山﨑 圭一
3,4) 1)ベルランド総合病院 薬剤部(現 奈良県立医科大学附属病院 薬剤部),2)ベルランド総合病院 看護部, 3)同 乳腺センター,4)同 緩和ケアチーム 受付日 2014 年 9 月 10 日/改訂日 2015 年 1 月 29 日/受理日 2015 年 2 月 3 日 2011 年に,ベルランド総合病院緩和ケアチーム(以下,PCT)で構築した PCT 情報共有データベース(以下,DB)の 有用性を報告した.今回は,PCT のニーズに応じて DB の改良を行った.おもに以下の 5 点について DB の改良を行った. 1)各 PCT メンバーが患者介入時の記録を自由記載するフォームを設けた.2)問題点ごとに提案内容を入力するフォー ムの改良を行った.3)患者情報データシート上に STAS‒J の評価を時系列に表示できるようにした.4)Palliative Prog-nostic Indexの計算フォームを追加した.5)日本緩和医療学会に提出する緩和ケアチーム登録に必要なデータを簡便に抽出 できるようにした.この DB は市販の DB 作成ソフトで構築されており,どの施設でも利用可能であることが有用な点であると思われる. Palliat Care Res 2015; 10(2): 901‒5
Key words: 緩和ケアチーム,データベース,情報共有,Microsoft Access
902 緩和ケアチームデータベースの改良 Palliative Care Research
図 1 緩和ケアチーム情報共有データベースの患者情報画面
①患者氏名,生年月日,性別,緩和ケアチームへの依頼内容について,②入退院記録, ③カンファレンス・ラウンド実施一覧,④問題点のリスト,⑤介入内容の記録.
図 2 緩和ケアチームカンファレンス・ラウンドによる患者評価入力画面(左上)と Palliative Prognostic Index 計算フォーム(右下)
2 枚目:緩和ケアチームからの提案内容(最新順) ,時系列で示した STAS‒J の評価 図 3 緩和ケアチーム情報共有データベースから出力される患者情報データシート 1枚目 : 患者基本情報(ID, 氏名, 性別, 年齢, カンファレンスおよび病棟ラウンド実施 日, ラウンド対象有無, ADL
〈activities of daily living〉,
performance status, 安静度 ,疼痛部位 ,痛みの性質 ,緩和ケアチームへの依頼内容 ,各職種の情報 ,介入内 容)
904 緩和ケアチームデータベースの改良 Palliative Care Research
5 緩和ケアチーム登録のデータ抽出機能 日本緩和医療学会に提出する緩和ケアチーム登録(http:// www.jspm.ne.jp/pct/index.php)に必要なデータのうち,この DBに入力されている ID,名前,依頼日,疾患(がん腫),年 齢,依頼の時期,依頼時の依頼内容,performance status,転 帰,介入終了日を抽出できるようにした.
考 察
以前,われわれは PCT の運用に DB を活用することで,「病 棟配属の PCT リンクナースによる患者情報の評価と問題点 の入力」➡「各チームメンバーによる患者情報の入力」➡ 「CR 実施」➡「CR での検討内容の報告」➡「その後の変更 内容と評価」という一連の流れができ,PCT の活動が体系化 されたことを報告した.また,STAS J を用いて評価項目を共 通化したことで,患者の問題点となっている項目が明確とな り,それに対する解決策や,その後の評価が可能となったこ とを報告した1). 今回の DB の改良では,PCT メンバーから要望のあった項 目を追加した.1 つは,PCT メンバーが介入した内容につい て時系列で表示させるための「介入内容」の項目を設定し表 示するようにした.当院の PCT は全メンバーが兼任で参加し ているため,週 1 回の CR に参加できない場合でも,その時 の検討内容を確認できるようになり,患者情報共有の伝達 ツールとしての役割を強化することができた. 問題点とそれに対する提案内容を入力する項目を設けたこ とで,主治医を含めた依頼者側と PCT の間で,患者の問題点 と症状緩和の方針について共有できるようになった. 患者情報データシートは介入内容を表示できるようにし, STAS Jの評価を時系列で表示させることで,PCT 介入後の 経時的変化をデータシート上で確認できるようにした.これ により,PCT の CR 後の患者状態などの評価も容易となった. また,STAS J のスコアが悪化した項目を問題点として挙げ ることで重点的に介入すべき項目が明確になった. 患者の全身状態や予後を評価するために Palliative Prognos-tic Index5)に必要な項目を選択するだけで簡単に計算できる フォームを新たに追加したことで,現在行われている治療の 妥当性を判断する指標の 1 つとして活用することができるよ うになり,より適切な症状緩和を PCT から提供できるように なると考えられた. そして,日本緩和医療学会緩和ケアチーム登録のデータ集 計作業の業務負担を少しでも軽減するために,DB から登録 に必要なデータを簡便に抽出できるようにした. この DB は,市販の DB 作成ソフトで構築されており,か つ施設に導入されている電子カルテに依存していない独立し たものであるため,システム変更やカスタマイズを必要に応 じてできること,それに関わる費用もほとんどかからないこ と,そして,どの施設でも利用可能であることが有用な点で あると思われる.将来的には,各施設の PCT 活動にこのよう な DB が導入され,PCT からの提案内容やその後の評価を参 考にそれぞれの患者の緩和医療に役立てることができる体系 を築くことができ,施設内にとどまらない PCT の情報共有が 可能になるのではないかと考える.この報告が,そのような 取り組みの一助になることを切に願う次第である. 謝辞 今回の DB 改良にご協力いただいた当院 PCT メンバーの皆様 に深謝いたします. 文 献 1) 渡邊裕之,石川奈名,藤本和美,他.緩和ケアチームデー タベースの構築によるカンファレンスおよび病棟ラウン ドの促進効果.Palliative Care Res 2011; 6: 209 15. 2) Carson MG, Fitch MI, Vachon ML. Measuring patientout-comes in palliative care: a reliability and validity study of the Support Team Assessment Schedule. Palliat Med 2000; 14: 25 36.
3) 宮下光令,笹原朋代.STAS J を用いた緩和ケアの自己評 価.看管理 2005; 15: 993 8.
4) Miyashita M, Matoba K, Sasahara T, et al. Reliability and validity of the Japanese version of the Support Team Assess-ment Schedule(STAS J). Palliat Support Care 2004; 2: 379 85.
5) Morita T, Tsunoda J, Inoue S, et al. The Palliative Prognostic Index: a scoring system for survival prediction of terminally ill cancer patients. Support Care Cancer 1999; 7: 128 33. 著者の申告すべき利益相反なし
Palliative Care Research
Clinical Practice Report
The approach for development of palliative care
team database
Hiroyuki Watanabe
1,4), Miwako Eto
2,4)and Keiichi Yamasaki
3,4)1)Department of Pharmacy, Bell Land General Hospital(currently Department of Pharmacy, Nara Medical University Hospital), 2)Department of Nursing, Bell Land General Hospital, 3)Department of Breast Surgery and Palliative Medicine, ditto, 4)Palliative Care Team, ditto
In 2011, we reported the usefulness of a database(DB)that was established by the members of a palliative care team (PCT). Since then, we updated DB depending on the requests of PCT. We revised DB mentioned below. We developed
a form for keeping a record of PCT members’care for patients, their family members or others, and a record of recom-mendation for each problem list. We also updated another form so that the evaluation of Support Team Assessment Schedule of Japan(STAS‒J)had been showed sequentially, added an entry form of Palliative Prognostic Index, and extracted data required by Japan Society for Palliative Medicine in order to evaluate the activity of PCT. The database could be used by many hospitals, because it was created by the commercially available software.
Palliat Care Res 2015; 10(2): 901‒5