(人工衛星4)
人工衛星の電波を受けようⅠ
なべアンテナ
<目 次> 1.ねらい<目的と概要> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2.この教材を用いることのできる活動団体の経験年数 3.関連項目 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 Ⅰ.静止衛星・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1.ねらい 2.材料集めの情報やヒント 3.静止衛星の説明 4.科学する心を育てるための具体的なヒント 5.この教材を用いることができる子どものレベル Ⅱ.アンテナのしくみ・電波の性質 ・・・・・・・・・・・・・・・4 1.ねらい 2.材料集めの情報やヒント 3.アンテナと電波 4.科学する心を育てるための具体的なヒント 5.この教材を用いることができる子どものレベル 6.安全対策 Ⅲ.中華なべアンテナ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 1.ねらい 2.材料集めの情報やヒント 3.中華なべアンテナによるBS信号の受信 4.科学する心を育てるための具体的なヒント 5.この教材を用いることができる子どものレベル 6.安全対策 本教材は宇宙とのつながりを軸として科学を身近に感じてもらうために作った 科学教材です。本教材の利用による事故等については一切責任を持ちかねます ので、本教材の利用は、経験のある指導者の指導の下に行って下さい。 2007年(平成19年)2月28日 「宇宙教育のためのリーダー育成」委員会人工衛星の電波を受けようⅠ
- なべアンテナ -
1.ねらい<目的と概要> 自分の家の周りの BS(Broadcasting Satellite)アンテナが全て南西の方角を向いている理由を 理解させます。静止衛星の概念とアンテナのしくみを視覚的に示して直感的理解を助けます。また、 電波の性質を学び、身近な中華なべでもBS が受信できることを示して興味を持たせます。 このテキストでは、I 静止衛星、Ⅱ アンテナのしくみ・電波の性質、Ⅲ 中華なべアンテナの 3 つ に分けて紹介します。 2.この教材を用いることができる活動団体の経験年数 経験年数は問わない。 3.関連項目 3-1.学習指導要領との関連 小学校編:理科の内容 C区分「地球と宇宙」 中学校編:理科の第1分野(3)「電流とその利用」 第2分野(6)「地球と宇宙」 技術科の内容A 技術とものづくり 3-2.活動総覧(活動マップ):「人工衛星」 3-3.教材系統図(カリキュラムマップ):「人工衛星」「科学工作・科学実験」 3-4.キーワード:人工衛星 衛星(静止衛星) 電波 アンテナ 中華なべ ※ 上記3項は、以後のⅠ、Ⅱ、Ⅲ章に共通の内容です。Ⅰ.静止衛星
1.ねらい<目的と概要> 人工衛星が止まっているわけではなく、地球の自転と同期しているために見かけ上止まって見え ることを理解させます。文字にすると難しそうなケプラーの法則を Java アプレットによる「動き」 で直感的に捉えさせます。 2.材料集めの情報やヒント パソコン、インターネット接続環境、地球儀が必要となります。インターネット検索により面白 そうなJava アプレットを探してみました。他にも良い教材があるかもしれません。 3.静止衛星の説明 3-1. まず人工衛星がどういうものかを直感的に理解させるために、 「大砲で人工衛星」http://www2.biglobe. のJAVA アプレットを利用します。地 上 300km の高さで大砲 ne.jp/~norimari/science/JavaApp/canon/canon.html からさまざま 見 3-2. 次に、ケプラーの法則を直感的に理解させるために、 「Physics2000」(英語)http://www.colorado.edu/physics/2000/applets/satellites.html まくすると地球を周回する軌道にのります。複 な速さの砲弾を打ち出し、その飛び方 を ま す 。2 ~ 3km/s か ら 始 め 、 7.7km/s まで徐々に上げていきます。 初速が遅いと途中で地上に落ちますが、 7.7km/s では落ちずに地球を一周する こ と が 分 か り ま す 。 第 一 宇 宙 速 度 (7.906km/s)より遅いのは、高度が 0 ではなく、300km であるためです。 のJAVA アプレットを利用します。マウスでクリックす ると白い点が出て地球の重力に引かれて加速度的に落下 していきます。ドラッグしてからマウスを放すと初速が つき、う 数の白点を飛ばしてその飛び方を観察します。月による 摂動があって多少乱れますが、(A)軌道の形が楕円であ ること、(B)楕円軌道の近地点付近を通過する時の方が 遠地点付近を通過する時より速くなること、(C)地球か らの平均高度が高いほど地球を一周するのにかかる時間 が長くなること、の 3 点を見て取ることが出来れば成功 です。これらはそれぞれケプラーの第一、第二、第三法則で説明できるものです。3- te →1/4 second、 から見ると衛星が止まっているように見える(すな り長くなります。静止衛星の軌道はただ一つしかないの で 3- りのBS アンテナが全て南西の方角を向いている理由」 4.科 4- 4-2.軌道運動の特徴を子ども自身が見出せるまで待つ忍耐が必要かもしれません。 4-3.地球から38 万 km ほど離れると軌道周期がどの程度になるか問いかけて見ましょう。月が る助けになるかも知れません。 周りの公転周期が一番短 5.こ 軌道がかなり地球すれすれに飛んでいる等のイメージの理解は可能だと思います。 3.次に、静止衛星の軌道を理解させるために、 「SCIENCE@NASA」(英語)http://science.nasa.gov/RealTime/JTrack/3D/JTrack3D.html の JAVA アプレットを利用します。始め る前に View→Zoom In で地球に寄って おき、マウスをドラッグして視点を高緯 度側に設定しておくと良いでしょう。 Options→Update Ra Options→Timing→×1000 として、衛星 の動きを早送りで観察します。Satellite → Select で軌道を表示する衛星を切り替 えると、様々な高度や軌道傾斜角を持っ た人工衛星があることが分かります。 徐々に地球から Zoom out していくと、 赤道上のある高さの円軌道に沿って多く の人工衛星が存在することが見て取れます の動きと地球の自転が同期しており、地球 わち静止衛星)ことを理解させましょう。 この軌道に衛星が密集している理由をケプラーの第三法則を思い出しながら考えましょう。 静止衛星の高度は35786km で周期は 23 時間 56 分 4 秒(1 恒星日)です。この高度よりも低く なると人工衛星の軌道周期が地球の自転周期より短くなり、逆にこの高度よりも高くなると人 工衛星の軌道周期が地球の自転周期よ 。Satellite → Select で BS-3N を選択します。衛星 、これだけ込み合っているのです。 4.最後に、地球儀を用意し、日本からみると静止衛星がどちらの方角に見えるかを考えます。 放送衛星は東経 110 度の静止軌道上にあります。地球儀の直径 30cm であれば、放送衛星は東 経 110 度・緯度 0 度の赤道上空 84cm に位置します。これを日本の地上から見ると南西の空に 見えるはずです。これで「自分の家の周 が分かったと思います。 学する心を育てるための具体的なヒント 1.7.7km/s がどのくらい速いかを時速に直して想像させましょう。 1 ヶ月かけて地球を一周することを理解す 4-4.ケプラーはもともと惑星の運動から法則を見つけました。太陽の い(or 長い)惑星は何かを考えさせましょう。 4-5.静止衛星の軌道周期が 24 時間でないことをきっかけに、平均太陽日と恒星日の違いについ て考察すると良いでしょう。 の教材を用いることのできる子どものレベル 小学校高学年でなければ全てを理解するには難しいかもしれませんが、低学年でも低高度衛星の
Ⅱ.アンテナのしくみ・電波の性質
1 アンテナの曲面が電波を受信機に集めるように設計されていることを理解させます。 2.材料集めの情報やヒント ンターや家庭にあるもので用意することができます。用意するものは、 B のと細かい もの)、アルミ箔、ダンボール、ペットボトル(空のものと水を満たしたもの)です。実際の活動 O BSC45R を用いました。 3 いるビームがほぼ垂直になるように傾けてアンテナ ナの上からピンポン玉を落とします。 り、受信機にうまく 当 3 すが、 ww.sun-ele.co.jp/explain/bs/bs-hoko.html を参考にします。微調整は受信された映像を見ながら行います。信号が受信できている状 ろいろなものを挟んで受信状態が変わるかどうかを観察しま す と受信が出来なくなります。金属や 水 で 4.科 4- おかないと信号の受信が出来ないことを意味するからです。 4-2.アンテナの材質を確認させます。電波は金属で反射されることを理解させます。 を通しにくい(通しやすい)ものの材質との 関係を考えさせます。 .ねらい<目的と概要> ほとんどのものがホームセ S アンテナ、ピンポン玉、同軸ケーブル、BS チューナー、テレビ、金網(目の粗いも ではアンテナとしてMASPR .アンテナと電波 3-1.アンテナのしくみの説明 BS アンテナのお皿を上に向けます。受信機がつい て を固定し、アンテ ピンポン玉がアンテナ面で跳ね返 たれば成功です。うまくアンテナを固定すれば、ア ンテナ面上のどこに落としても受信機に当たるはずで す。これでアンテナの曲面が電波を受信機に集めるよ うに設計されていることを理解させます。 -2.電波の性質の学習 BS アンテナ、BS チューナー、TV を相互に接続 定します。向けるべき方向は地域によって異なりま サン電子株式会社「放送受信のノウハウ」http://w など し、BS アンテナを静止衛星の方向へ向け固 態でアンテナ面と受信機の間にい 。ダンボール・空のペットボトル、目の粗い金網を挟んでも受信状態は変わりませんが、ア ルミ箔、水の入ったペットボトル、目の細かい金網を挟む を通過できないという電波の性質を学びます。BS 信号の周波数は 12GHz で波長は約 2.5cm す。この電波は目の間隔が 3cm 程度の金網は通り抜けますが、目の間隔が 3mm 程度の金網 では反射されてしまいます。 学する心を育てるための具体的なヒント 1.ピンポン玉がうまく受信機に当たるアンテナの傾きを予め確認しておくことは重要ですが、 最初は敢えて傾きをズラして失敗例を見せておくのも効果的です。なぜなら、これはアンテナ を目的の衛星にちゃんと向けて 4-3.電波を通す(通さない)ものの材質と、電気4-4.波長より十分細かい金網で反射されるという電波の性質の応用例を考えさせます(電子レ ンジの扉やきく8 号のアンテナなど)。 5 6 見 る場合、ふざけて転落しない様に事前によく注意し おきましょう。 .この教材を用いることのできる子どものレベル 小学校低学年から可能。 .安全対策(子どもに危険を予知させる指導を含む) 通しの良い場所として建物の屋上で活動す て
Ⅲ.中華なべアンテナ
1.ねらい<目的と概要> 身近な中華なべでも BS が受信できることを示して興味を持たせ ます。 2.材料集めの情報やヒント ほとんどの材料がホームセンターや家庭にあるもので用意するこ とができます。 用意するものは、BS アンテナ(受信機のみ)、同軸ケーブル、 BS チューナー、テレビ、中華なべ(直径 35cm)、竹ひご、タコ 糸、ガムテープ、両面テープ、消しゴム、クリップ、分度器、方位 磁石、段ボール箱(右写真参照)です。 3.中華なべアンテナによる BS 信号の受信 なべ底の中心に消しゴムを両面テープで貼 り付け、できるだけ底面に対して垂直にな るように竹ひごを立て、タコ糸とガムテー プを用いて固定します。竹ひごの真ん中あ たりに短いタコ糸を結び、糸の先にクリッ プをつけます。竹ひごと鉛直に垂れた糸が なす角φを分度器で測ります。仰角θ=90° -φとなります。段ボール箱に扇形の穴を 開け、中華なべをセットします。 前述の「放送受信のノウハウ」などを参 考にしてBS 衛星へ向くように方位角と仰角 を調整します。方位角は北から東回りに測 る角度で、方位磁石と分度器を用いて調整 します。仰角の調整は段ボール箱に開けた 穴の大きさで調整します。 Ⅱで用いたBS アンテナから受信機のみを取り外し、なべにかざして受信状態が良くなる位置を探 します。受信状態は受信機の傾きにも依存しますので傾きを変えながら最適な位置を探してくださ い。 4.科学する心を育てるための具体的なヒント 4-1.単に受信機をBS 衛星に向けただけでは受信できないことを確かめてみましょう。 4-2.予めピンポン玉を使ってどこに受信ポイントがあるかを予測させておくと良いかもしれま せん。 4-3.中華なべアンテナが正確にBS 衛星に向いていれば竹ひごに沿った位置で受信できますが、 方向がずれていると受信ポイントも竹ひごから離れた位置に移動します。この理由を考えてみましょう。 5.この教材を用いることのできる子どものレベル 角度をはかる作業は小学校高学年の知識が必要。アンテナのセッティングが終われば低学年でも 体験できる。 6.安全対策(子どもに危険を予知させる指導を含む) 見通しの良い場所として建物の屋上で活動する場合、ふざけて転落しない様に事前によく注意し ておきましょう。 教材提供 :日本宇宙少年団水沢Z分団 松本晃治氏 追記、編集:「宇宙教育のためのリーダー育成」委員会 教材開発グループ お問合せ先:財団法人日本宇宙少年団 TEL.03-5542-3254 FAX.03-3551-4870 e-mail kyozai@yac-j.or.jp 発行 :宇宙航空研究開発機構 宇宙教育センター ©JAXA 無断転載を禁じます