地球環境保全と環境税について
著者
浅野 裕司
著者別名
Yuji Asano
雑誌名
東洋法学
巻
36
号
1
ページ
55-85
発行年
1992-09
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00003515/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja地球環境保全と環境税につ
いて
浅
野
裕
司
はじめに
地球環境保全については、国際的に環境と開発の対立問題を含み、先進国と途上国の溝を埋める財政上の配慮が必 要である。地球温暖化防止を目指す気候変動防止枠組条約案は、一九九二年五月一〇日、国連で開かれていた政府間 交渉で採択された。同年六月の﹁環境と開発に関する国連会議﹂︵地球サミット︶で調印されることとなった。 この小稿が刊行される時期にはブラジルでの地球サミットは終了され、二酸化炭素︵CO︶を中心とする温室効果 ガスの排出抑制に踏み出すという世界共通の課題が認知されよう。論争もあるがフロン、メタン等、温暖化原因とな え る温室効果ガスのうち、COは温暖化全体の半分を引き起こすとされる。生態系でも問題となっている熱帯雨林の破 壊に代表される世界的な森林の伐採による荒廃も温暖化に影響するとされ、その保全問題がある。気候変動枠組条約 案も国益が衝突、内容があいまいな点も指摘される。しかし、枠組みが発展途上国を含む世界各国の合意により構築 東 洋 法 学 五五地球環境保全と環境税について 五六 された意義は一応評価しなければならない。また、二酸化炭素︵CO︶排出規制目標値の設定は実現しなかったが、 米国抜きの条約では意味がない。条約案確定で、今後は温暖化防止の具体策が重要となろう。持続可能な開発を避け て通れない以上、先進各国が地球環境汚染物質の発生源に課税する環境税︵国裳ぎ”臼①簿↓震︶を一斉に導入し、 その税収の全部あるいは一部を国連や世界銀行等、国際機関に設ける特別環境基金に拠出して、途上国にその税収を 還流することにより地球環境保全に役立たせることも環境法︵円薯絆9旨㊦簿ゼ鋤乏︶における重要課題の一つである。 そこで、地球温暖化問題を巡ってこれらの問題の論究を試み、大方の御叱正と御批判を抑ぐことにしたい。 温暖化防止条約と温室効果ガス抑制の問題点 一九九二年五月九日、国連本部で行われていた気候変動に関する枠組条約︵鳴寅ヨΦ類○憂○○黛Φ暮一989ぎ鶏① ユレ ○訂お①︶案の最終政府間交渉会議において、﹁大気中の温室効果ガスの抑制は、人類の普遍的な責務﹂とする前文 と二六力条の規定を賛成多数で採択した。地球温暖化防止条約と一般に称されているこの条約案は、﹁持続可能な開 発︵ω霧鼠欝凹のU磐色ε鱒Φ嶺齢︶﹂を合言葉に、主要国による非公式協議であるが、地球環境の保全を目指す画期的 な国際合意となった。しかし、各国の誓約は﹁拘束力のある目標の達成﹂ではなく、﹁自主的な対策の実施﹂に留ま り、将来に課題を残した。同条約は、一九九二年六月にブラジルで開かれる﹁環境と開発に関する国連会議 ︵¢巳けa2呂○霧08罐8φ89円鷺群象臼①導鎖&UΦく色ε簿Φ導﹂⑩8G瓢○国U︶﹂の首脳会議で調印されること になった。
会議では、リペール議長提案のコ一酸化炭素︵CO︶等、温室効果ガス︵9留呂・奮Φ○霧︶の排出量について、 二〇〇〇年迄に以前の段階に戻す﹂、﹄九九〇年レベルの排出量を努力目標とするしを米国が支持し、また、途上国 が﹁補償としての非商業べースの技術移転﹂や﹁世界銀行の管理から独立した新基金の設置﹂の要求を断念する等、 各国が妥協への道を探った。同条約により、各国政府が新たに負う義務は、ω温室効果ガスの排出源と吸収源に関す る目録を作成、公表、ωエネルギ⋮利用の効率化等、温暖化の進行を抑制する対策をとる、⑥先進国は、開発途上国 が必要とする資金を用意する、こと等である。同条約は、批准国が五十力国に達した時点から発効する。先進国は発 効後六ヵ月以内にコ九九〇年レベルでの排出抑制﹂を努力目標に、対策のプログラムと効果の予測を報告しなけれ ばならない。各国の計画は、第︻回締約国会議で、国力に応じて妥当か否か審査される。また第二回の締約国会議を 一九九八年末迄に開催し、二〇〇〇年以降の努力目標を定める。気候変動枠組条約案の要旨は次の通りである。 ︻前文甲窪蓉露①︼ 人間活動が温室効果ガスの大気中濃度を高め、地表及び大気の温暖化をもたらし、自然生態 系及び入類に悪影響を及ぽす可能性がある。地球規模の気候変動は、それぞれの責任、能力及び社会経済的状況に応 じて、締約国が可能な限り協力することを求めている。温室効果ガスの排出削減行動は、経済実態のみでも正当化さ れることを認識する。開発途上国が、経済成長と貧困撲滅の達成を最優先させる正当な必要性を認識、気候変動防止 への対応は社会・経済開発との関連で、経済開発に支障を来さない包括的手法で実施されるべきであると確認する。 ︻第一条・定義︼︵略︶ ︻第二条・目的○ど8鶴ぎ︼ 究極の目的は、人類の活動によって気候システムに危険な影響がもたらされない水 東洋法 学 五七
地球環境保全と環境税について 五八 準で、大気中の温室効果ガス濃度の安定化を達成することにある。 ︻第三条・原則汐ぎ。乾8︼ 締約国は、独自の環境開発政策に従って自国の資源を利用する主権を有し、主権 領域内の活動が、領域外諸国の環境に被害を与えない責任を負う。締約国は、共通且つ差異のある責任と能力に従い、 現在及び将来の人類世代のために気候システムを保全する義務を有する。排出量の多い先進国は率先して行動すべき である。締約国は、気候変動の原因を除去・削減し、被害を軽減する予防措置を設定せねばならない。重大な被害が でる脅威がある場合、科学的根拠の不足を理由に措置を遅延させてはならない。人問活動に誘発された気候変動を防 ぐ政策及び手段は、各国の独自な状況によって固有であり、且つ国家開発計画に統合されるべきである。 ︻第四条・コミットメント︵誓約︶︼ 1 全ての国の共通コミットメント ︵イ︶温室効果ガスの排出及び吸収のインベントリi︵目録︶の作成 ︵ロ︶ 具体的対策を含んだ計画の作成・実施 ︵ハ︶温室効果ガスを削減する技術の開発普及に関する計画の推進 ︵二︶森林等の吸収源の保護増大に関する対策の推進 2 先進国の特定コミットメント ︵イ︶ 政策及び措置 先進国は、温室効果ガスの排出を抑制し、吸収源を保護・増大することにより、気候変動を緩和させるための政策
及び措置をとり、条約の目的に沿って温室効果ガスの長期的排出傾向の修正において率先した行動を示す。各国の事 情等を踏まえつつ、温室効果ガスの量を一九九〇年代の終り迄に従前のレベル迄回帰させることは係る長期的傾向の 修正に貢献する。 ︵ロ︶情報の通報と審査 温室効果ガスの排出量を一九九〇年の水準に回帰させることを目指して、温室効果ガスの排出及び除去に関する政 策、措置、予測に関する情報を、この条約の発効後六ヵ月以内に、締約国会議に通報する。この情報は、締約国会議 にょって、定期的に審査される。 3 資金・技術協力 先進国は、途上国がコミットメントを実施するのに要する費用に充てるため、新規且つ追加的資金を供給する。先 進国は、技術移転等を促進し、容易にし、融資するための全ての実際的な措置をとる。 ︻第五条・調査及び組織的観測︼ ︻第六条・教育、訓練及び広報︼ ︻第七条・締約国会議︼ ︻第八条・事務局︼ ︻第九条・科学的・技術的助言のための補助機関︼ ︻第一〇条・実施のための補助機関︼ 東 洋 法 学 五九
地球環境保全と環境税について 六〇 ︻第二条・資金機構︼ 資金機構は、締約国会議の指導の下で機能し、同会議に対し責任を負う。締約国会議は、 政策、計画の優先順位及び適格性基準を決定する。本メヵニズムの運用は、既存の国際組織に委ねられる。プロジェ クトの融資が、上記の政策等に合致したものであることを確保するための手法等について締約国会議と上記の国際組 織が取決めを締結する。第一回締約国会議において第一二条に定める暫定的措置︵上記の国際組織として地球環境基 金GEFを指定︶を継続すべきか否かを決定する。 ︻第τ一条・実施に関する情報の通報︼ 通報・審査制度についての規定 第二二条から第二六条略 以上のように集約された条約案文は、対立についての妥協の産物と言っても過言ではない。CO排出量の具体的な 規制に反対する米国、二〇〇〇年の排出量を一九九〇年水準に安定させるとする欧州各国と日本、それに先進国の責 任を主張する発展途上国である。日程を延長しての交渉の結果、CO規制については一九九〇年代末迄に﹁それ以前 の水準に戻す﹂との文言で、米国と欧州・日本間の合意が成立した。何時の水準に戻すのか、戻した後、安定させる 義務はないのか等は不明確のままである。一方、資金問題では、先進国側が﹁新規の追加的な資金提供﹂を約束し、 そのための機構として、先進国が主張する世界銀行の地球環境資金制度︵GEF︶を暫定的に活用することとなった。 こうした妥協の産物が、人類の生き残りを賭けた良識ある政策を示すとは、到底考えられないが将来を方向づける第 一歩の準備段階とはなり得た。拘束性を欠いた条約案から推測すれば、ブラジルでの地球サミットは期待されるもの にはならないであろう。米国は、欧州や日本と異なり十年間でニケタ台の人口増加が見込まれており、温室効果ガス
の排出量を現在レベルに安定化するには、他の先進国と比較にならない程の思い切った省エネルギ⋮政策が必要とな る。温暖化抑制を理由にした経済政策はブッシュ米国大統領の政権の命取りとの見方があり、科学的根拠が不十分と お の意固地な迄の主張に表れている。先進国は、世界最大のエネルギi消費国で、COの排出量の四分の一を占める米 国を抜きにした条約は実効性がない、として米国と妥協したが、心底に出来得るならば経済の犠牲を最小限にしたい との共通認識があったことは否定できない。先進国が目指すべきCO等の排出量レベルを﹁ターゲット﹂から﹁ガイ ドライン﹂に、そして﹁エイム︵努力目標ごへ変更がなされ、交渉段階で条文字句の採択に時間と精力が注がれた。 結果として、対策をとる、基金を提供する、こと等で合意をみたが、いつ迄に、どれ程の温室効果ガスを削減する、 との約束は残念ながら不明確のままとなった。勿論、従来考慮されてきたエネルギi利用について、現状のままでは 地球に悪影響を及ぼすと各国政府が合意した意義は大きい。しかし、条約上の義務が極めて抽象的で、拘束性が乏し い点でも異例の条約案と言えよう。資金問題を巡り先進国と開発途上国が激しく対立した直後に、同条約をパッケ⋮ ジで採択するとの議長宣言は異様であって、条約の基本手続としては極めて不十分と指摘せざるを得ない。 わが国には、現行の温暖化防止行動計画︵一九九〇年一〇月閣議決定︶により、二〇〇〇年迄の九〇年レベルでC O安定化の努力を示せば、条約上の責任は果たせるとし、この程度の条約ならば新たな法律措置は不要との意見もあ るようであるが、余りにも安易な考え方と言える。温暖化対策を地域レベルで定着化する法律が必要であり、対策と 進行の成果について、市民が報告を受け、審査する機関を地域レベルで設置することも考慮されるべきである。 条約案では、﹁温室効果ガス﹂︵主として二酸化炭素︶の排出規制を狙いとし、但し、具体的な目標値や目標達成期限は
東洋法学 六一
地球環境保全と環境税について 六二 明記しないことになった。これは、米国の主張する地球温暖化のメカニズムは、科学的な不確実性に溢れるとする意見 の強さであり、温暖化の主犯とされるCOでさえも科学技術の発達で別の物質に置き換わる可能性もあるとする説を 否定しきれないことにもよる。確かに温室効果の脅威を説く人々が持ち出す観測記録は、気象データが正確に整理保 存されるようになった一八八○年以降のもでしかない。地球の温暖化傾向については、科学界に一定のコンセンサス﹄ があると言われているが正しいとは言えない。そこにあるのはコンピュータはそう予測しているという共通認識だけ ハヱ である。温室効果を巡る議論の軸になっているのは、国連主催の﹁気候変動に関する政府聞パネル︵IPCC︶﹂が 出した一連の答申であるが、これもコンピュータによるモデルがべースである。温室効果を科学的に考察する上で考 慮しておくべき最大の基本は、気象と気候の違いである。気象は例えば今日の天気のような短期的現象を指し、気候 は次世記に及ぶ長期的なスパンでみた現象をいう。気象変化の大半は、基礎的な変数が現在なお総体的にしか判明し ていないような広大で複雑なシステムの微小な揺らぎから生まれるものであって、大した意味をもたない。天気予報 に使用されるコンピュ⋮タは、未だに来週の天気さえ正確に予測できない。その程度で、次の世紀の気温を予測でき るかという疑問は当然でてくる。 しかしながら、人類が環境に放出している二酸化炭素は、炭素換算で年間約六〇億トンにも上る。今後、現在のレ ベルで温室効果ガス排出量を安定化︵増加率ゼロ︶できたとしても、、地球温暖化の進行は止まらないとされてい ハヨレ る。地球サミットでの議論の基盤となるTPCCの一九九〇年報告は次のように警告している。CO等、温室効果ガ スの排出量を現状維持したり、削減するといった対策を何もとらなければ、二十一世紀末にはCO濃度は産業革命前
の四倍となり、平均気温は現在より約三度上昇すると想定している。さらに、一九九〇年レベルと同じ排出量を維持 しても、一二〇〇年には大気中のCO濃度は現在の約τ五倍となる。気温は、最初の二〇ー三〇年間は、一〇年当 り約○・二度の割合で昇温し、︸二〇〇年には約一・六度上昇する。一九九〇年レベルの半分に削減してCO濃度は カ 増加し、二一〇〇年に約○・六度上昇すると分析している。報告によると、大気中に放出されたCOの寿命は推定で 五〇1二百もの長さがある。このため、排出量を削減しても、効果が出てくる迄は時問が掛り、濃度の変化はゆっく りとしか現われない。しかも現状維持するだけでは、大気中のCO濃度は結果として増加する方向に進行する。報告 はCO濃度を現在のレベルで安定するには、人間活動による排出量を現在より六〇パーセント以上削減する必要があ ハゆ ると結論している。もし超えてはならない臨界濃度があるならば、早急に排出を削減すればする程効果があるとも指 摘している。人類は、年に六〇億−七〇億トンの炭素を空気中に放出しているとされるが、大気を観測する装置には その半分しか検出されない。残りの半分はどこに消滅したか、一つの可能性は、地球上では森林消滅が進む地域もあ るが、植林が進められている地域もある。木材資源の確保のために造られた人工林では、成長の速い木が植えられる。 かくして地球上では空前の数の若木が育ちつつあり、それが余分な炭素を︵二酸化炭素の形で︶吸収していることも 考えられている。 温室効果ガスの排出量の削減を各国に義務付ける条約は、米国の要求を受けて削減の量や期隈を具体的に示してお らず、確かに妥協の産物となっている。しかし、公害を規制する措置は如何なるものでも常に歓迎すべきものであり、 また、世界的なエネルギー効果の改善を文書の形で謳うのは重要な一歩であって、簡単には進行しないかもしれない
東洋法学 六三
地球環境保全と環境税について 六四 が、大半の国には条約に謳われた義務を果たす責任がある。エネルギi節約を目指すべきだという各国政府への圧力 ハきレ は今後も高まって行くものと考えられる。さらに、気候変動枠組条約は、各国が国内の経済問題に関して決定を下す 際にギ地球環境への影響を考慮しなければならないという理念を国際法を組み込むことになり、これは将来、環境保 全の上で重要な成果をもたらすことにもなろう。 ︵1︶
32
54
、.勺畠o澄ω餌&U⇔塞Op90ぴ巴ミ震鼠お回馨①簿器o鑓ξ且○○旨鷺弩Φ︾霊ぐωす、、両髪群8営①濤巴菊①も ≧Φ雛区段ω円ぎ○菩Φ嘗ρH導霞⇒呂s巴いΦαQ巴鋤&ぎω§鼠8鉱即獅き象○鱒︷○同Ωoぴ鉱Ω誉鶏ΦO訂おや8響餌導器倉 。。銭畠︵︶Φ簿㊦二8狸 ぽδお○くΦ羅濤①葺巴勺き巴8Ω嘗鶏Φ○冨謁ρ弓○○田翼︾ωωΦ馨Φ馨ヵの勺○港○︿R≦Φ≦レ8P ℃瓢㎏8霧鋤&縮○欝譲喧2㌦.禽○ぴ鉱≦舘薯謎摩①包ω︶、.ω9①溝痒。︾導豊sp<○一b①ρ添ρ顛︾謎霧樽這8い..瓢Φ≦ 98接○霧①ヵ80慧噂講ωご○を難掌ωω窪8β、.ω○一窪8Ψ︾薦霧けω、る8, 宅○○田拐櫛>ωωoω欝o馨ヵ巷○旨一8ρ ↓罐≦○凱α鰐箋算8讐①馨る認∼一8ρ>鼠,客§鉱○”v節ψ拶じ oO註ξ︶剛鷺群○⇒搭窪蟹口ω巽①ω導島①お8碧紳幻○ωや 国辱ぎp濤㊤導巴088讐ω︶噂呂o一Φω鋤p伽ω窪象①αQδω口8ど担浮ぼ窪ω節騨い図Ooダd舅箋①一aoゴ臼汐αR団霞○冨冴昌Φ⇒ ○Φ導巴霧9無賞るΦ劉 二 環境税と導入上の問題点 環境税︵国薯ぎ添導の濤↓輿︶と言っても様々なものが考えられる。その具体的内容や範囲は必ずしも明確ではない。先進各国が地球環境汚染物質の発生源に課税する環境税を一斉に導入し、その税収の全部あるいは一部を国連や 世界銀行等の国際機関に設ける特別環境基金に拠出する。そして途上国にこれら税収を還流することにより環境保全 に役立たせるのが目的である。世界中を駆け巡っている環境税導入問題であるが、環境に悪影響を与える行為に課税 すれば、税金の支払いを少なくしようとして、環境を悪化させる行為を減らす。その結果、良い環境が守られる、と いう単純な発想である。汚染物質の使用を禁じたり、制限を設けたりする直接規制の方が効果は確実ではあるが、企 業や消費者が﹁環境を汚せばコストが高くつく﹂ということを切実に感じ、自主的に環境対策を考える効果が期待で きるというものである。前述したように地球環境悪化の問題と言っても、オゾン層の破壊、酸性雨︵8箆邑雛︶に よる森林破壊、地球の砂漠化、地球の温暖化等、様々な問題が含まれており、その対策は容易ではない。エネルギー 政策が絡む地球温暖化対策は、最も解決の困難な課題である。地球の温暖化︵笹3巴類9巨轟︶や温室効果 ︵αQ3Φ嘗○器Φ&Φ9︶問題は、そのメカニズムや影響の程度に不透明な部分があるが、主な原因は化石燃料 ︵♂ω巴密巴ω︶の大量消費に基づく二酸化炭素︵CO︶に起因するものと考えられている。そうしたことから、一 九八八年六月、カナダ政府が主催して地球変動に関する国際会議が開かれ、その声明は﹁先進国の化石燃料への賦課 を財源にする基金の設立が必要しとし、ここに初めて環境税の導入を提言した。これを契機に、一九九〇年一月、フ インランドが実施したのを皮切りに、オランダ、スウェーデン、ノルウェーの四力国がCO税を導入した。いずれも 炭素含有量やCO排出量に応じて排出源に税負担を定めたものである。産業界からの反対が起きたが、増減税同額で 実施した。環境税には、本来二つの目的がある。一つは環境汚染源抑制効果の狙いであり、もう一つは、環境対策の
東洋法学 六五
地球環境保全と環境税について 六六 財源を調達しようとする役割を期待するものである。 環境税の導入例は、一九九〇年一月、フィンランドでは、石炭、重油、軽油、天然ガス、泥炭︵自動車燃料のガソ リン、軽油は別に燃料税︶を対象に、税額︵排出量中の炭素一トン当たり︶約八百円となっている。オランダは、一 九九〇年二月に導入し、ガソリン、軽油、重油、石炭、天然ガスを対象に税額は約三百円となっている。スウェ⋮デ ンは、一九九一年一月︵既存のエネルギ⋮税は減税︶に導入し、石油、石炭、天然ガス、LPG、ガソリン︵電力会 社、電力集中型産業に免税措置︶を対象に税額約二万円となっている。ノルウェ⋮は、一九九一年一月に導入し、ガ ソリン、重油、軽油、灯油、天然ガスを対象に税額約一万∼二万三千円となっている。 環境税は、石油、石炭、天然ガス等に課税する燃料税︵エネルギi税︶と、産業廃棄物、農薬、自動車等を対象に する非燃料税に分けることができる。前者のエネルギi税は、炭素税︵○窪げ8↓舞︶やCO税として表われている。 また非燃料税の場合、電池やプラスチック箱に賦課する環境税として、既にスウェーデンやイタリアでは導入されて いる。環境税を化石燃料を対象とする税金と狭く限定すると、各国で既にガソリン、石油、天然ガス等に対しエネル ユレ ギー税として賦課されている。一般的なものはガソリン税であり、欧州諸国を中心に大半の国が六〇パーセント以上 の税金を課している。米国をはじめ三〇∼四〇パーセントのところもあり、なかでも米国はガソリン税が低率で環境 保全の点からも国際世論の批判を浴びている。因に米国は三一・八パーセント、日本は四四・九パーセント、スウ ェーデンは六七・ニパーセントである。エネルギ⋮税は、これまで主として、道路財源等の確保のために目的税の性 格をもって活用されてきた。日本では、これに該当するのが石油諸税である。輸入原油の段階から、ガソリン、軽油
等の小売り段階に至るまで、重層的に種々な税が賦課されている。三・五兆円程の税収の中で、その九〇パーセント 以上が道路整備に充当されている。 前記、炭素税を導入している国の税収は殆どの国が目的税ではなく一般財源に繰り入れているが、オランダは使途 を環境対策に限定している。フィンランドは、一般財源に繰り入れ、自動車燃料に対する燃料税を増税している。オ ランダは、一般環境政策法に基づき、環境対策に充当している。スウェ⋮デンは、一般財源に繰り入れ、電力会社、 電力集中型産業に免税措置をなし、既存のエネルギー税は減税している。ノルウェーは、一般財源に繰り入れ、燃料 ハ レ 以外の用途の石油類は対象外とし、税導入と同時に所得減税を実施している。 わが国で環境税を考慮する場合は、炭素税を具体的に検討する必要があろう。しかし、新税だけに、課税の目的や 仕組み、既存税との調整等、検討すべき課題は多い。幅広い物価上昇を伴うため、低所得者層の負担が重くなるので、 減税や社会保障支出の増加も検討しなければならない。勿論、炭素税とは別に、国内の省エネや開発途上国への資金 援助を進めるための財源調達にだけ的を絞った環境税の導入も考えられる。従って環境税を考慮する場合、既存の燃 料税体系を基礎に置き、既存税収の一部を環境税の目的から読みかえるのか、あるいは全く新税として環境税を創設 するのかの二者選択がある。両者の組み合わせも考慮されるであろう。炭素税の導入は、石油、電力、鉄鋼、化学業 界等の反対が強い。何にどれだけ使うかも決まらないうちに、税の議論をするのは早急すぎるし、環境税だけが財源 ではないとしている。特に、鉄鋼業界は、省エネでCOを減らしてきている、税でさらに減るか否かも疑問と反発し ている。諸国の例をみても、徴税事務が簡単にできるから、輸入や製造の段階で課税される可能性が強い。理屈の上
東洋法学 六七
地球環境保全と環境税について 六八 では、最終的に製品価格に転嫁し、消費者が負担することにはなっても、直接のコスト増は、産業界が負担すること になる。 現状では、石油、石炭、天然ガス等の化石燃料の使用に課税する炭素税を導入する案が最も適当と考えられるが、 硫黄酸化物、窒素酸化物、肥料、殺虫剤、バッテリi、プラスチック容器等へ課税するのも、一種の環境税である。 一般市民団体は、この点も考慮し物価への影響と国民の新しい税負担を気にしている。使途が分からない第二消費税 的な環境税に生活協同組合連合会も反対としている。但し、何のためにどういう使われ方をするのか、単に地球の使 用料等の名目で税金を取るだけならとても納得できない、としながらも地球環境を汚してきた日本の市民として費用 を負担することは賛成とする良心的な市民もいる。問題は、環境を守る具体策がないまま、金銭だけが先行しており、 税を何に使用するかを全く明らかにできていないのが、日本の現在の立場である。危機に瀕している大気、海洋、森 林は金銭では回復不可能である。現状の政治体制では基金を生み出すために環境を破壊する恐れが十分あり安易な新 税は考えるべきではない。環境税を一般財源として集めるだけでは何も解決しない。 わが国でも、これ迄汚染物質の排出抑制を目指した課徴金制度や税制面からの特別償却制度等、直接規制するもの はいくつかある。一九七四年に導入した硫黄酸化物排出への課徴金制度や公害防止用設備を優遇する特別償却制度等 がこれに相当する。しかし、前者は被害者への補償財源確保のため、後者は企業に対し公害防止設備を促すための税 制で、検討されている環境税とは別のものである。 環境に悪影響を与える二酸化炭素の発生源に課税、消費者の利用コストを高めることで、その排出、消費の抑制を
狙った環境保全を目指す間接税︵従量税方式︶は、わが国には未だ存在しない。炭素税の導入により二酸化炭素の発 ヨ 生を今世紀末には現在より一〇パーセント以上削減できるとわが国政府はしている。 持続可能な開発を考慮するとき、発展途上国の環境保全に必要な資金は、年間千二百五十億ドルと試算されている。 このうち、政府開発援助︵ODA︶で五百五十億ドルを支援、残り七百億ドルを先進各国が環境税で調達しなければ ならない。一口に炭素税といっても、各化石燃料によって、二酸化炭素の一単位当たりの排出量に開きがある。この ため、欧州・北欧四力国が採用しているように、消費量当たりの炭素含有量から負担率を決めることになり、消費量 単位では天然ガス、石油、石炭の順で負担が重くなる。石油関連税は、揮発油税、地方道路税等、関税を含めると国 税、地方税合わせ八税目︵一九九二年度見込み額四兆千四百三十六億円︶もあり、この税収の使途しだいでは、二重 課税の恐れも出てくる。特に、二酸化炭素排出量にでき得る限り広く均一に課税する必要があるが、既存税制の下で、 かなり不均等に課税されており、これをある程度調整しない限り、炭素税はエネルギ⋮源に対し大きな歪みを与える ことにもなろう。 発展途上国側は、環境税の支援資金を一般の地域開発整備等にも活用しようという動きもあるが、公正負担で使途 を明確に環境保全に限定しないと炭素税の理念が崩れることになる。その点では、使途を環境保全財源に限定した目 的税にした方が税の性格からも馴染みやすいことは勿論である。 EC委員会は、一九九二年五月一三日、地球温暖化防止で問題になっているCO税について、日本及び米国が同時 に導入することを条件にECとして導入する案を採択した。EC内では当初、EC単独でも導入すべきだとの意見が
東洋法学 六九
地球環境保全と環境税について 七〇 ハまレ あったが、日本及び米国との横並びまで後退した。米国は、CO税に反対の立場を明確にしており、臼本・米国・E Cでの早期導入は難しくなった。EC委員会は、まず一九九三年に石油の場合で一バレル当たり三ドルのCO税を導 入、その後、年︸ドルずつ増やして二〇〇〇年に︸○ドルとする。但し、EC産業の国際競争力に留意し、米国や日 本等、他の先進国が同様の税を導入した時点で効力が生じるようにしている。EC委員会は、この案を閣僚理事会 ︵エネルギi・環境相︶に提出し承認を求めることにした。米国大統領はCO税導入を明確に否定している。米国が 動かない以上、ECとしてもCO税が実現する可能性は当面殆どなくなったと言えよう。EC委員会は、一九九一年 九月にCO税導入の構想を発表、その後、具体化の検討を進めてきた。この閲、EC産業界は﹁ECだけが導入した お ら日本や米国に対する競争力が失われる﹂と強く反発、湾岸産油国も﹁新税はCO削減効果より経済に与える悪影響 の方が大きい﹂等と反対していた。ECは、その後、環境相理事会でEC委員会の提案したCO排出抑制のための環 境税導入を討議したが意見の一致はみられず、デンマ!ク、オランダ等が地球サミットに臨むEC政策に明確な形で CO税導入を盛り込むよう主張したのに対し、英国、スペイン、ギリシャ、ポルトガルが反対した。実際に、既に導 入しているオランダ、ノルウェ⋮等の環境税の中身は、石油課税となっている。 石油輸出国機構︵OPEC︶が炭素税に反対する理由は、既に石油関税等、石油には一種の﹁環境税﹂が課税され ており、それも産油国に当然入るべき収入が消費国に収奪されている形であり、これ以上の課税は到底、容認できな いというものである。この主張には、全面的に認められるものではないが、産油国側の立場に立てば、当然出てくる 考え方と言えるのであろう。
一九九二年四月のOECD環境税作業部会の報告書原案は、二酸化炭素︵CO︶排出抑制には直接規制よりも石油、 石炭等に課税する炭素税による間接規制が有効と評価している。炭素税導入の際には、税率や課税方式の違いで先進 国聞の国際競争力に格差を生じないよう各国均一の税率にすべきことを提案している。税収を環境対策財源に限定す る目的税とせず、減税と組み合せることで国内の合意が得られやすいと指摘している。一九九二年七月の会合で最終 調整したうえで、一九九二年一〇月に公表する予定とされている。OECDの作業部会が示しているように世界で同 時に、同一の税率で導入すれば、競争力格差は起こらないであろう。炭素税導入については、国際的な協調が必要不 可欠である。産業界が懸念する炭素税導入による経済成長率への影響であるが、短期的には企業の対応の遅れ等で影 響が出るにしても、長期的には企業も炭素税に適応していく筈であり、資源の有効活用も行われるようになるものと 考えられる。 環境税については、炭素税だけが環境税とする傾向もあるが、環境対策実施の財源調達のための躍的税として、 ﹁たばこ﹂や﹁切手﹂に課税したり、消費税の税率アップを図る場合も、環境税と呼ばれることがある。 わが国で目下、導入を課題にしているのは環境税の中の炭素税であり、二酸化炭素を減らすために石油等に課税す ることについては、十分な効果を上げるためには極めて高い水準に設定することが必要である。そのためには産業界 に対する適切な規制等、様々な政策手段との比較考量をする必要があり、国民の負担、財源の使途についての慎重な 議論を重ねるべきである。 本来、エネルギー税は景気を後退させることにも、インフレに拍車を掛けることにもつながらないものである。政 東 洋 法 学 七∼
地球環境保全と環境税について 七二 策を間違えなければ増税策ではなく、代用税と言えるものである。ECの場合には、この税からの歳入の総計を推計 し、その分を付加価値税︵VAT︶や事業税から控除して個人にも企業にも増税とならないよう配慮している。新規 にエネルギー税を導入するために従来の税を見直したり廃止したりの方策をとることから景気に影響はでないと考え ソ られている。ECは、財政的には現状のままで、ただ発想の転換があるだけとしている。 わが国も、これから政府税制調査会等で、どのような形の環境税を導入するか検討に入るが、新税の創設だけに、 課税の仕組みと負担、既存税との調整、税収の使用等、難問は多い。 ︵1︶ ︵2︶ ︵3︶ ωき︷○&印○鉱潟ω帥濯o訂巳︾ミΦ。 。酔芦↓鋤釜鋤8︷OH房薯片Op旨窪琶筆080鋤○類こ○財菊●ω餌一8びOo壱○毒8ω糞群○㌣ 難Φ導巴沁①ω℃○湯塗ご墜い鋤≦鋤&筆8鼠8w↓冨≦OH嵐国β≦囲8蓉①馨這謡∼る8、 スウェーデンの9尋89霧箆①↓舞>9についてはω”口○鋤汐8節拶>ミ霧薮前掲書一四二頁、一顯三頁。スウ ェーデンでは、 九九一年一月から二酸化炭素や窒素酸化物、硫黄酸化物を排出する原因となる石油、石炭、天然ガス、ガ ソリン等の燃料に課税する総合的な環境税をスタートさせるている。例えば炭素税の場合排出量一キログラムにつき、○・ 二五クロ⋮ネ、約五円を基準に石炭や重油、ガソリン等から排出させる量によって税額を徴収している。勿論、浄化対策等 によって排出量を抑えれば、その分、税額が軽減される仕組みである。 平成三年七月に自民党税制調査会で検討された環境税に関するものは、その骨子として、ω石油一キロ・リットル当たり ︵LPG、天然ガスは一トン当たり︶を基準にした従量税で、現行の石油税に上積み課税する、吻原油・石油製晶等の輸入 ズ 業者と蟹内採取業者から国税︵間接税︶として徴収する、等であり、他に窒素酸化物︵NO︶を抑制するため、税負担が ガソリンの半分しかない軽油税も引き上げを検討する、としている。環境税の税収規模は、湾岸戦争の九〇億ドル追加財政
支援の財源措置として、平成三年度一年限りで設けられた石油臨時特別税︵一リットルH一円二銭︶の年間約二千三百億円 程度を想定し、これらを一般会計の歳入に組み入れた上で、CO低減のための技術開発や都市緑化の推進等、地球環境対 策に充てる考えとしている。課税のべ⋮スとなる石油税︵一リツトル判二円四銭︶は、石油や石油製品の輸入段階を中心に 課税している間接税で、課税対象も原油に揮発油、灯油、軽重油等、広範囲にわたる。これ迄の論議の中では、オランダの りな ﹁CO排出税﹂のように燃焼の際に発生するCO量に応じて、ガソリンや重油等、燃料種類別に課税すべきであるとの意 見もあったとされる。しかし、その場合は、徴収事務が煩雑な上に、石油や天然ガス等、化石燃料の殆どを輸入に頼ってい る現状から、おおもとの輸入業者から徴収する石油税への上乗せが合理的との判断に傾いている。大都市で問題になってい るNO対策としての軽油税強化に対しては、軽油に代わるディーゼル車の代替エネルギーがないことから、運送業界を中 心に反対が予想される。このため、軽油の税負担をガソリンに近づける見返りとして、ディーゼル・トラックの積載重量の 上限を引き上げる考えが示されている。なお、これ迄、わが国にあるシンクタンクの試算によれば、日本でCO排出量 トン当たり四千円の環境税︵原油課税とすると、 リットル当た豊丁五円に相当︶を毎年ふやし続けると、価格上昇によ き る化石燃料の消費抑制効果が表われ、二〇〇五年には、CO排出量が現在の水準より少なくなり始めるという。環境税は、 一度かけただけでは納税者がそれに適応してしまい、課税効果が薄れる。そこで、累進課税が必要になるという考え方であ るが、悶時にこのエネルギ⋮価格の上昇によりGNPの成長率は年率○・四パーセント減少するとしている。 ︵4︶米国は、温室効果ガスの主体であるCOを全世界の総排出量の二四パーセントも出している。COの世界的な規制は、 石炭、石油を燃やし続けることで、大国の繁栄をほしいままにしてきた米国に発想の転換を迫る必要がある。米国は、基本 的には、長い閲この社会を貫いてきた消費が発展につながるという儒念によるところが大きい。焦点となった二酸化炭素の 排出規制に法的な拘束力と期限をつけることについて消極的な態度を取り続けてきた。地球の温暖化に対する温室効果ガス の影響は、まだよく判っていない。今、規制に向けた急激な政策転換を行えば経済的に大打撃を被ることになると主張する。 米国は、二酸化炭素︵CO︶等、温室効果ガスの抑制は、各国の自主的な努力國標にとどめるべきだとしており、 CO等の抑制目標を公約する考え方に﹁科学的な根拠が乏しい﹂と反発してきた。一方、米国では、国際的にも導入が検 東 洋 法 学 七三
地球環境保全と環境税について 七四 討課題になっている環境税に対して、二酸化炭素や窒素酸化物、硫黄酸化物等の排出総量を決めて、排出権の売買市場を創 設し、割り当てられた量以上を排出したい場合は余裕のあるところから売り出された排出権を買って排出する仕組みの排出 権売買がなされている。大気浄化法︵ΩΦ鶏︾騎>9︶の二酸化硫黄︵SO︶削減対策でも排出の権利を一トン当たり五百 ドルで企業間で売買できるとされる。この排出権売買という考え方は、各企業の排出量が厳格に守られているか監視するこ とが難しく、また環境汚染物質を減らしていくという思想も乏しく、﹁権利を買えば汚染してもいいという考え方はおかし い﹂という批判もあってEC関係国からの評判がよくない。一九九二年四月二十一日、米国商品先物取引委員会︵CFT C︶は、地球環境問題に市場原理を導入する初の試みとして注目されているシカゴ商品取引所︵CBOT︶の﹁亜硫酸ガス 排権﹂先物取引計画を認可した。取引開始時期は未定であるが、CBOTは排出権現物の第 回競売が実施される一九九三 年三月迄に上場する方針。排出権制度は、酸性雨の原因の一つとされる亜硫酸ガス排出量を二〇〇〇年迄に現行の約半分ま で削減するとの米国環境保護策の一環である。一排出権当たり∼トンの亜硫酸ガス排出が可能で環境保護周︵EPA︶が証 券の形で発行する。岡ガス排出源である火力発電所を抱える各電力会社は、手持ちの排出権分が排出限度となるが、排出量 が限度を下回れば、余った排出権を超過しそうな他の会社に売却して利益を得られる。 米国のΩΦ巷≧円︾9については、ω﹃口○蝕霧ω節肇︸ミ霧爵前掲書一八四∼一四五頁。ζ﹂・○践獣ω節罰じ O尋 勾信ぼPO器①ω器α属鶏Φ誌巴ω欝↓輿頃簿&レ8N尋 ︵5︶ オランダでは、環境関連の法律を一本にまとめた﹁環境保護法﹂の立法化が進んでいる。一九八九年二月よりCOの排 嵐に対する課税を実施しており、ガソリン等の燃料税にCO一トン当たり一ギルダi︵約七十円︶を上乗せし、一年間に 一人当たり三百円弱の負担になっている。さらに、燃料税を三〇∼五〇パーセント引き上げ、同時にそれに見合う分の所得 税を減税しようとする炭素税の増税案もある。Ω↓Φω需嘗①節距肇口2訂釜ぎ三⇒↓蕃寝①爵の匿&ωレ8曽 なお、ECに強力な影響をもつドイツの場合、二〇〇五年までにCOを一九八七年レベルより二五パ⋮セント削減する という厳しい規制を打ち出しているのに、条約では排出規制について明確な目標と縛期の設定が見送られ、自国が経済的に 不利になるのではないかとの懸念がある。規制に関して一歩踏み込んだ政治宣言を出すことで懸念を薄めようというのがド
イツの狙いである、但し、地球サミットでは政治宣書が行われる機会はないものと思う。目麩o需弩↓舞燦磐き8ぎ一8即
串ρじ
oΦお①ω窪廼琴嬢○巳①H訂轟9鋤ど9の象90σΦ畷Φ貰ぴ○鼻一8狸鍔団鑛色ζ裸象田麟鼠Φ竿写巨ω巴○霧。 。・ゲ無謎ΦωΦ貫 一⑩⑩甲 ︵6︶型じ OΦぼ①βd欝語一$。疑9汐留触両霞○冨冴。﹃象○①旨巴霧。げ養﹂8一、 三 地球環境基金運営に関する問題点 地球環境保全は、発展途上国の環境保全と開発対策への先進国の責任があり、途上国支援のための資金拠出問題が ある。実際に裕福な国が貧しい国への援助を拒否すれば地球環境を守ることは不可能である。そこにまた先進国によ ぞツ る資金援助の拡大の必要性がある。一九九二年四月、東京で開催された地球環境賢人会議でも嘗言において、ω環境 税等、新たな財政政策の導入、ω世界銀行の地球環境基金︵GEF︶の大幅拡大、⑥民間資金の活用による新基金の 検討等、が軸としている。国連に対して環境資金問題を継続的に協議する委員会の設置も求め、また具体的には、開 発途上国の環境対策に当面は年間五百億ドル規模の追加資金が必要として世界銀行による貢献拡大を求めている。世 界銀行・国際通貨基金︵IMF︶の合同開発委員会は、一九九二年四月二八日、環境問題支援を強化するため、原資 となる第二世銀︵IDA︶の第一〇次増資交渉の年内終了等を謳った共同声明を採択した。環境支援強化のため、第 一〇次増資は第九次増資の百十七億SDR︵IMFの特別引き出し権、一SDR翻約丁三ドル︶を﹁相当上回る規 東 洋 法 学 七五地球環境保全と環境税について 七六 模﹂とすると共に、環境融資への増加分︵環境増分︶の積み増しを検討することを謳った。同委員会で焦点となった のは環境と開発の両立を達成するための資金支援態勢である。途上国からは、そのための新たな援助基金等が必要と の声もあったが、共同声明では﹁既存の開発機関を通じて供給する﹂ことで合意した。国内環境問題は、第二世銀の 活用、国際環境問題︵温室効果オゾン層保護等、四プロジェクト︶は世銀資金のひとつである地球環境ファシリテ ィ︵十億SDR︶の活用を確認した。 発展途上国への援助については、年平均千二百五十億ドルが必要となるとする地球サミット事務局の試算がある。 しかし、具体的対策の内容や従来の開発援助資金との区別等が不明確であり、発展途上国の自助努力等を前提とした 資金提供も検討しなければならない。発展途上国においては、むしろ経済成長と生活水準の向上が、環境悪化の最大 の原因の一つである人口増大、貧困を解決するという意見もあるが、地球環境問題には、その解決に当って国際協力 が不可欠であって長期的な視点からの技術による対応が必要であろう。 地球環境の保全に役立てるため世界銀行に設けている地球環境基金︵GEF︶は、一九九一年五月に世界銀行、国 連環境計画︵UNEP︶、国連開発計画︵UNDP︶の三機関が共同で創設したものである。臼米欧の先進国や世銀 が一九九四年五月迄の三年間の試験期間分として、総額十億SDR︵国際通貨基金勤1MF髄の特別引き出し権、約 十三億ドル︶の資金を拠出した。基金を通じて、ω地球温暖化防止、ω生物の多様性保存、⑥海洋汚染の防止、@オ ゾン層の保護、の四分野について、途上国に資金援助している。地球環境基金運営改革案が一九九二年六月の国連環 境開発会議︵地球サミット︶の正式合意に向け示されているが、ω先進国主導と批判の強い基金の運営に発展途上国
の意見が反映されるよう投票制度を導入する、ω複数の基金を作らず現在の基金を地球温暖化の防止や絶滅寸前の生 物の保存等色々な目的に活用する、⑥三年毎に増資する、等が柱となっている。同基金参加国は同案に大筋合意して いるので、同基金の積極活用を打ち出す方針であり、一九九四年春に予定している基金増資の規模、各国の資金分担 は地球サミット後に決定する。改革案は、基金の運営を透明にし公平性を高めることに主眼を置いている。同基金の 援助案件は、世銀の事務局が選定しているので、途上国からは﹁実質的に先進国の意向が反映されているしとして批 判が強い。改革案は、先進国、途上国を含めた参加国会合の権限を強化し、多数決による公平な投票制度の導入を打 ち出している。具体的には、同基金への参加国を増やすと共に、各国が代表を送り、援助案件が適切か否かを合議で 決める方式にする。また、基金は地球温暖化防止や生物の多様性保存等、複数分野の地球環境対策を対象にする。 地球環境賢人会議では、ODA︵政府開発援助︶ばかりでなく民間資金の役割に注目しており、税制上の優遇を条 件に、企業や財団等、民間からの寄付を募り、官民共同管理の﹁新基金﹂構想の可能性も示唆した。 地球サミットでは、資金問題が最重要課題とされ、日本が発展途上国に対する資金貢献策を具体的に示すことが要 請されている。ドイツは、途上国への資金援助問題でも積極的な姿勢を示し、新規資金の拠出の用意があること、将 来、ODAの規模をGNP比で○・七パ⋮セント迄高めていく方針を示している。 これ迄触れてきたように国際環境基金は、先進国から環境税の形で広く薄く資金を集め、環境対策をとる余裕のな い途上国に振り向けるものである。途上国向け環境援助の側面もあり、先進国から途上国への資金還流にもつながる。 検討されている事項は、先進国がそれぞれの国で課税した環境税収の全部あるいは一部を、国連、世界銀行等、国際 東 洋 法 学 七七
地球環境保全と環境税について 七八 機関内に設ける特別環境基金に拠出する。基金は途上国の廃棄物処理施設建設や熱帯雨林保護対策等に、無償援助や 低利融資の形で資金を供与する。具体的な課税対象や仕組みについては、OECDや国連で検討しているが、現状で はオランダ、スウェーデンが既に導入しているCO税を国際統一基準にして採用するものと思われる。CO税は、石 ワロ 油、石炭、天然ガス等の化石燃料を大量に扱う燃料生産者等に対し、CO排出量に応じた税率で課税する。COのほ ズ か窒素酸化物︵NO︶や原子力使用への課税構想もあった。 一九九一年三月の世銀理事会において地球環境ファシリティ︵GEF︶.及びこれに関連する各種信託基金の設立が 承認されたが、参加国は、GEFが試験的性格のものである点を強調し続けており、実証的、革新的、実験的教訓が 得られる点を強調している。GEFへの拠出は、日本を含め二四力国で、その内、九力国は途上国である。拠出は任 意のものであり、コアファンドに八億四千四百万ドル、協調融資に三億二千四百万ドルニ九九一年一二月総計︶と なっている。それに加えて、他の二国間援助機関や国際金融機関、とりわけ世銀との協調融資も多額になっている。 GEFは、地球環境資金の供給方法の主流であり、これが、どのような形態になろうとも、結局は、UNCEDの結 果であるアジェンダ鍛、二国間・多国間の各種協定及び各国の戦略や開発優先順位との結び付きを一層固めていかな ければならない。初期には、追加の基金は任意拠出によって賭われ、最終的には巨額の資金調達には、任意拠出に加 えて、革命的方法、多く言われている炭素税、売買可能な排出権、その他、地球公共財の利用料が必要であるとする レ 意見もある。 森林保全から水資源の利用、人口抑制までアジェンダ21に盛られた三十九分野の実現のため年間千二百五十億ドル
を先進国から途上国に支援されることが必要とされている。途上国自身の負担は、この四ー五倍と見込まれる。現在、 先進国から供与されるODAは、二国問援助を中心に年閥約五百五十億ドルであり、先進国のGNPの○・三五パー セントにあたる。地球環境賢人会議は、途上国の環境と開発の調和を理由に、これを当面○・七パーセントに、将来 的には一パーセントに拡大するよう求めた。その財源として、エネルギ⋮利用に課ける環境税や廃棄物への課徴金等 の財政手法も提案し、先進国の決意を促した。しかし、現在の先進国と途上国の間の資金の流れを考慮すると、OD Aの拡大だけではアジェンダ21の実現は極めて困難といえる。国際経済の動きは、一次産品の価格低迷や累積債務問 題によって、途上国を不利な状況に追い込んでいる。海外からの資金提供も、環境保全の分野に行き渡る可能性は乏 しくならざるを得ない。資金がかえって、乱開発への投資となる危険すら指摘されるからである。さらに、多国間援 助の国際資金管理のメカニズムを巡り、国際的に南北間の対立がエスカレ⋮トする傾向がある。地球環境基金︵GE F︶の第一号は、西アフリカ、コンゴにおける世界銀行ののプロジェクトであるが、﹁ピグミ⋮が先住する熱帯雨林 の商業伐採に対する援助以外の何物でもなどと米国のNGO﹁環境防衛基金﹂のコリナ・ホルタ氏から批判されて いる。GEFの支援基金は、これ迄七十二件、五億八千四百万ドルの融資が決まっている。途上国が二〇〇〇年迄に 必要な援助額は、年千二百五十億ドル︵十六兆円︶であり、現在行われているODAを除いた七百億ドルを新たに工 面しなければならない、と国連環境開発事務局は表明している。先進国側は、GEFを数十億ドルに拡大することで、 この資金需要に対応したい考えである。これに対し、米国の影響力の強い世界銀行に反発する途上国側は一九九一年 六月の第一回途上国閣僚会議で、GEFとは別の新基金﹁グリーン・ファンド﹂の設立を主張している。地球環境を 東 洋 法 学 七九
地球環境保全と環境税について 、 八○ 破壊してきた元凶は先進国、との先進国責任論を振りかざした。しかし、一九九二年四月の第二回途上国会議のクア ラルンプール宣言には﹁既存の資金メヵニズムでも、基金として利用しうる﹂との表現が盛り込まれた。途上国の意 思を公平に反映すること等の改革を条件にGEF容認とも受け取れる内容となっている。これは、先進国責任論に固 執して、千二百五十億ドルを引っ込められた場合に元も子もない、と恐れた途上国政府の化けの皮がはがれた、とみ ハ レ る説もある。 GEF参加国会議は、援助対象分野に砂漠化防止と森林保全を追加し、また、拠出国の協議によるこれまでの援助 プロジェクトの決定方式を改め、国連と同様の一国一票制に、拠出金に応じた票数を上乗せする投票制度を採用する。 第三者機関としてプログラム案を審議する科学技術助言委員会︵STAP︶にも国内非政府組織︵NGO︶の意見を 反映させることで、、開放制を進める方針を固めた。現実には、途上国が指摘するように、GEFは確かに先進国主導 型となっており、地球規模の環境対策に対象を限定しているため、途上国が切実に欲しがっている公害、飲料水、尿 尿処理等の施設への資金は出ない。しかし、ノゥハウを持つ世界銀行が援助プロジェクトの策定に加わらなければ、 資金還流は現実に不可能である。GEFの別枠として設置されているオゾン層保護基金は、UNEPが世銀抜きでプ ロジェクトを策定するため、まだ一件も実現していない。地球サミットでも、だれが資金を拠出するかで紛糾するも のと思われる。また資金運用でも対立し、会議の成功は難しいであろう。これからは、民間の資金拠出にょる信託を ハゑ 応用した途上国援助を考える必要がある。
21
43
じ ご酎○類ダじ拶ゑゆ一;ω鼠替Φo座疑Φ薯○詠俳 L・ジャヤワーディナ﹁大規模な途上国援助と地球環境契約﹂︵小林光・池田善一訳︶かんきょう一九九二年三月号七頁。 モハマド・T・エルアシェレイ﹁環境のための国際的資金供給﹂︵塚本瑞夫・小林光訳︶かんきょう∼九九二年三月号ご工 頁。 凡人会議主催メンバi・岩崎駿介筑波大教授。 拙稿﹁地球環境保全と企業の環境責任﹂東洋法学第三五巻第一号七三頁以下。 四 生物多様性保全条約と知的財産権の保護 一九九二年五月、ナイロビの国連環境計画︵UNEP︶本部で行われていた、多彩な生物種の保存と環境システム 保全を目的とした﹁生物学的多様性保全条約しの交渉会議は参加九十九力国の満場一致で、同条約が承認され、外交 会議で正式採択された。六月のリオデジャネイロで開かれる地球サミットで調印されることになった。 地球上に生存する﹁種﹂の数は、五百万から三千万と推定されているが、名前の付けられたものは僅かに百四十万 種である。全米国科学アカデミi研究評議会の報告では、熱帯林や湖沼の破壊等で毎日二百種もの生物が絶滅し、人 口が倍増する三十∼五十年後迄の絶滅種は計二百万種にも達するという。バイオテクノロジーの発達により遺伝子が 新たな医薬品の開発や食糧増産に道を開いたこともあり、危機感を強める国連環境計画︵UNEP︶は一九八八年、 専門家会合を設置した。七回の条約交渉を経てナイロビで、遺伝子、生物種、生態系の全てのレベルでの保全を目指 東 洋 法 学 八一地球環境保全と環境税について 八二 す生物の多様性保全条約が採択された。同条約は、生物の﹁持続的利用︵サステナブル・ユ⋮ス︶﹂が基本理念である。 焦点の一つであった生物工学︵バイオテクノロジー︶等の技術移転問題で、先進国側が主張した知的財産権の保護を 条文化することで合意した。最終提案では、生物学多様性保全のために、先進国から発展途上国への資金協力、技術 協力を謳っている。また、初めて遺伝子資源に対する国家主権を認め、先進国の発展途上国内での無軌道な遺伝子物 質採取、開発、利用に歯止めを掛ようとしている。途上国がその大半を所有する﹁種﹂の多様性を保全するために、 先進国が開発した生物工学技術を途上国に供与すべきだとの主張に対し、米国や日本が知的財産権の尊重を主張、商 業的価値のある技術移転に難色を示していた。結局、知的財産権は﹁効果的且つ適切﹂に保護されなければならない との条項が加えられることとなった。また、遺伝子資源の所有権を認めたことで、遺伝子を国外に持ち出す際は所有 国の事前承認が必要となり、またその遺伝子を使う研究開発に所有国が参加するよう努力するることが義務付けられ た。しかし、草案で盛り込まれ同条約の目玉の一つとして注目されていた﹁地球規模の保全地域指定﹂構想が南北問 題を背景とした対立から削除される等、保全の理念のすき間から生物資源を巡る各国の利益綱引きの思惑が覗く内容 になった。 条約は前文と四十二条から構成され、前文では﹁人類は他の生命体と地球を共有する﹂とした上で﹁先進国、大企 業は生物学的多様性を利用することで利益を享受してきた﹂とし、これ以上の損害が出ないよう発展途上国を援助す ることとしている。第一条の﹁目的﹂では草案の生物学的多様性の保全、継続利用に加えて、発展途上国側からの強 い要望で得られる利益の分配が条約の目的に加えられた。
生態系の保護に重要な地域を指定する﹁グローバル・リスト﹂が同条約の最も重要な条項であったが、途上国側が、 国内の森林開発等の足枷になりかねないと警戒したため削除された。このため骨抜き批判が噴出し、フランスはこの 点に固執して条約採択に参加しなかった。 一般に、薬晶や食料晶等、生物工学を用いて開発する製品は、途上国の多様な遺伝子資源を利用することが多い。 これまで野放しだった資源の管理に枠をはめることで、資源利用が制限されるほか、先進国は開発によって得た利益 の一部を所有国に還元することが必要になる。 生物界全体の保全を目指すことでの合意は画期的であったが、条約の実効性には疑問も多い。特に生物資源の多く は途上国にある。生態系を守るには、先進国から途上国への技術移転、資金援助は欠くことのできない要素である。 開発途上国への財政援助制度についても、先進諸国の主張が十分反映されていない。途上国の保護措置に対する先進 国からの資金援助制度は、運営面で途上国の意見が反映されるような制度改革を条件に、暫定的に世界銀行が中心に 管理している地球環境基金制度︵GEF︶を活用する。しかし、制度の運用は、条約の締約国会議の指示の下で進め られるため、英国、ドイツ等の先進諸国は、多数派の途上国の影響が強まると警戒している。保全については、締約 国が自国内で保全リストを作成、地域を指定し、自国の裁量で多様性の保全に努めることが求められるが、条約によ る拘束力はなく、努力目標に留まっている。 何れにしても、多様性保全のための規制手段であったグローバル・リスト条項が削除され、生物資源の利用手続き を取り決めた内容に変質したことは実効性に疑問があり、本来の地球環境保全の理念から外れた失敗の条約であると
東洋法学 八三
地球環境保全と環境税について 八四 いえる。
おわりに
地球環境保全問題は、南北問題ことに先進国と途上国の関係が極めて重要なポイントになっている。途上国は地球 環境悪化は先進国の責任であり、地球環境保全の費用の大部分は先進国が負担すべきであるとする。途上国への資金 供給の増加は難問が伴う。しかし、資金供給のあり方が地球サミットの成否の鍵を握ることになろう。地球パ⋮ト ナーシップは、まず先進工業国において、地球生態系の収容能力に対する負荷を大幅に削減するための対策から始めp られねばならない。税制及び財政政策の見直しは、需要パタ⋮ンを変える上で有効であると同時に、先進国において は追加的財源を生み出すことを可能にする。地球温暖化防止条約を合意にこぎつけた現在、世界の森林減少を食い止 めるための﹁森林についての原則声明﹂の内容が地球サミットの焦点に浮上した。法的な拘束力をもつ森林条約の交 渉をすみやかに開始する趣旨を森林声明に盛り込むか否かである。熱帯雨林は種の重要な資源であり、熱帯林は全森 林の四十四パ⋮セントを占め、温室効果ガスである二酸化炭素を吸収する。国連食糧農業機関︵FAO︶にょると毎 年、日本の面積の半分近い千七百万ヘクタールの熱帯林が地上から消えている。緊急課題は日本が絡んでいる乱伐で あるが、木材や燃料にしなければ生活できない南北格差が残る。先進国からの借財を返環するために森林を失う現状 の世界構造を変えないと解決しない。環境税の創設はより慎重に、その目的、税収の使途の明確化、課税の仕組みと 負担、既存税との調整をより論究しなければならないと思う。また、地球環境保全には今後、信託法理の応用が重要となるものと考える。
この小稿の筆を置くにあたり、財界・学会で御活躍されておられる水島廣雄博士に御指導いただいていることを学
恩とともに感謝を申し上げておきたい。 ︵一九九二年五月末稿︶
東 洋 法 学