第21回日本難病看護学会 学術集会 メインテーマ「難病療養者のセルフマネジメント支援」
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(2) 目次. 1.開催概要および目的. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 1. 2.教育講演. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 3. 「慢性疾患セルフマネジメントプログラムの可能性 -ピアの力で自己効力感を高める-」 近藤房恵Abbott (Samuel Merritt University). 3.シンポジウム 「臨床における意思決定支援の実際と課題」. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 座長抄録. 14. 座長 : 牛久保美津子(群馬大学大学院保健学研究科) 蛸島八重子(北海道医療ネットワーク連絡協議会). シンポジスト 「若年のクローン病患者が出会う意思決定場面と看護支援」 . ・・・・・・・・. 15. ・・・・・・・・. 21. 富田真佐子(昭和大学保健医療学部看護学科) . 「ALS患者の治療の意思決定支援」. 高橋奈美(北海道医療大学大学院博士課程 慢性疾患看護専門看護師) . 「クリティカルケア領域における意思決定支援の課題 . ・・・・・・・・. 27. 他職種医療チームによる意思決定支援における看護師の役割」 神田直樹(北海道医療大学看護福祉学部 急性・重症患者専門看護師) 4.本学術集会を終えての感想 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 32.
(3) 1.開催概要および目的 【第 21 回日本難病看護学会学術集会】 メインテーマ 『難病療養者のセルフマネジメント支援」 日時:2016 年 8 月 26 日(金) ,27 日(土) 会場:北海道医療大学 当別キャンパス 在宅医療への移行が叫ばれる中,療養者のセルフマネジメントが療養生活のあり様を左右 することになると思われる.そのため医療者は多職種と協同し療養者の持てる力を引出し, 自己効力感を高める支援を行うことがこれまで以上に重要となる.そこで,以下のプログラ ムを通し,療養者・家族とともに,セルフマネジメントについて理解を深め,具体的方法や プログラム及び支援を検討することで,今後の難病看護の充実に寄与することを目的とした.. 【教育講演】 日時:2016 年 8 月 26 日(金)10:30~12:00. 「慢性疾患セルフマネジメントプログラムの可能性 -ピアの力で自己効力感を高める-」 講師 : 近藤房恵 Abbott (Samuel Merritt University) 慢性疾患セルフマネジメントプログラム(Chronic Disease Self-Management Program : CDSMP)は,完治しない病気を持つ人たちが,充実感のある自立した生活を営むことを目指 したプログラムであり,米国スタンファオード大学で開発された. 本講演では,CDSMP の 目的,内容,効果,日本での実践などの紹介と慢性疾患患者自身が課題に対し乗り越える 力をつけるための支援を講演する.本講演で医療者が CDSMP の内容や効果を理解すること で,各地域でのワークショップ開催に結びつき,在宅療養者のセルフマネジメント支援が 充実することを目的とした.. 【シンポジウム】 日時:2016 年 8 月 27 日(土)9:30~11:10. 「臨床における意思決定支援の実際と課題」 シンポジスト 3 名 「若年のクローン病患者が出会う意思決定場面と看護支援」 富田真佐子(昭和大学保健医療学部看護学科) 「ALS患者の治療の意思決定支援」 高橋奈美(北海道医療大学大学院博士課程 慢性疾患看護専門看護師) 「クリティカルケア領域における意思決定支援の課題 他職種医療チームによる意思決定支援における看護師の役割」 神田直樹(北海道医療大学看護福祉学部 急性・重症患者専門看護師). 1.
(4) 意思決定はセルフマネジメントの主要概念の一つである.療養者は療養生活のあらゆる 場面で意思決定をしているが,そのプロセスには迷いや不安があり,決して簡単なもので はない.医療者はそのプロセスにどう関わり,支援するかが問われている.本シンポジウ ムでは,シンポジストそれぞれの立場での看護実践を発表し,それをもとに討議すること で,難病の特徴と病期による意思決定のプロセスや支援について理解が深まり,療養者の 意思決定プロセス支援につなげることを目的とする.. 2.
(5) 2.教育講演 「慢性疾患セルフマネジメントプログラムの可能性 -ピアの力で自己効力感を高める-」 近藤 房恵 Abbott サミュエル・メリット大学看護学部 教授・ケースマネジメントプログラムのデイレクター 慢性疾患セルフマネジメントのプログラム (Chronic Disease Self-Management Program) は、. 1997 年からスタンフォード大学患者教育研究センターのケイト・ローリック博士を中心に研究開発され ました。このプログラムでは社会学習理論の「自己効力感」という概念に基づいて、薬物療法、食事療 法、運動療法や生活習慣を変えること等、多くのチャレンジを抱えた慢性の病気や難病を持つ患者を対 象にワークショップを開催しています。 ワークショップはグループ学習形式で、研修を受けたリーダーが二人一組になって、週1回、2 時 間半のクラスを 6 週間にわたって教えています。参加者が自分の病気とうまくつきあえる自信をつけて いけるように、 「自分の感情に対処する技術」、 「運動を始める上での必要な知識」、 「薬の適正使用に必 要な知識」 、 「家族や医療者とのコミュニケーションを円滑にはかるための技術」、 「適切な食生活につい ての知識」 、 「アクションプラン」 、 「意思決定の方法」、 「問題解決法法」等、様々な演習がワークショッ プには盛り込まれています。 日本には 2005 年に導入され日本慢性疾患セルフマネジメント協会が設立し、2006 年より特定非営 利活動法人としての活動が始まりました。現在までに 21 都道府県でワークショップを開催し、70 以上 の異なる疾患をもつ人、1900 人がワークショップに参加しています。 この講演では、セルフマネジメントの定義、理論的な背景や効果の機序、自己効力感が慢性疾患の 自己管理の効果の鍵になるという認識のもと、自己効力感を高めるような教授方法がいかにプログラム の中に取り入れられているかについて話します。また、諸外国での研究成果に触れるとともに、日本で の研究結果についても話します。最後に、いかに看護師がこのような患者主導・患者主体のプログラム に関与していくことができるのか、いかに看護師が患者との共同関係を作り上げていくことができるの かという課題に触れ、セルフマネジメント教育を取り入れた看護実践のパラダイムシフトの必要性につ いても述べます。このようなパラダイムでは、看護師の役割も変化し、看護師の意識変革が必要になっ てきます。. 3.
(6) 目標 • セルフマネジメントの定義を理解する • セルフマネジメントのワークショップの基にな る理論や前提を理解する • ワークショップの仕組みや成り立ちについて の理解を深める. 慢性疾患セルフマネジメントプログラム の可能性 -ピアの力で自己効力感を高める-. • だから、こういう風に教えているのか・・・・「うん、うん」 • ああ~、なるほど・・・納得という気持ちが深まる. サミュエル・メリット大学看護学部 日本慢性疾患セルフマネジメント協会 近藤房恵. • 研究成果について学ぶ • セルフマネジメントを促すプログラムへの看 護師のかかわりを理解する. CDSMPの日本での展開. CDSMP の開発・発展. 患者中心の医療の実践. • 1980年代. • 2003年 患者会の国際シンポジューム. – 最初は関節炎をもつ人を対象としたセルフマネジメントのプ ログラムとして、スタンフォード大学患者教育研究センターで 開発された – 慢性疾患をもつ人へのセルフマネジメントのプログラム (CDSMP) の開発. – 患者中心の医療を考える国際シンポジューム 2003年:患者会活動で社会に響かせる「患者の 声」. • 2004年 患者会米国研修 • 2005年. • 1990年代 – CDSMPに関する5年間の研究 – HIV/AIDSを持つ人のセルフマネジメントのプログラム. – 日本慢性疾患セルフマネジメント協会の発足. • 2000年代. • 2006年. – 糖尿病のセルフマネジメント(スペイン語) – オンラインのセルフマネジメントプログラム. – 特定非営利活動法人日本慢性疾患セルフマネ ジメント協会設立. 川でおぼれた人の対処法にみる 3つのモデル ①. 慢性疾患のセルフマネジメントプログラム (CDSMP) とは • 慢性疾患、難病、障害をもった人々が病気とうまく 付き合い、自分らしく日常生活を送ることができるよ うに支援するための教育プログラムです。 • 「病気を持つ人の、病気を持つ人による、病気を持 つ人のために作られたプログラム」. 医学モデル. 4.
(7) 川でおぼれた人の対処法にみる 3つのモデル ③. 川でおぼれた人の対処法にみる 3つのモデル ②. 公衆衛生モデル. セルフマネジメントモデル. 病気をもっていても・・・. • 病状は推移する。一番良く知っ ているのは「自分」. • 元気に生きるということ・・・ • 医療者におまかせしたくっても・・・・. 花子の病状の経過. 良くなる. – ほとんどのケアは自己管理である 専門家による治療. 受診1. 受診2. 受診3. 自己管理 セルフケア 1月. 2月. 3月. • 積極的な自己管理者になる. セルフマネジメントプログラムの 3つの基本前提. 自己管理(セルフマネジメント)とは? • • • • • • •. 自分が 自分の健康・病気に関することを よく知って、よく学んで、 医療者や家族と相談して、 自分で決めて、 決めたことを実行し、 その責任をとっていく。. • 慢性の病気を持つ人は、よく似た問題を 抱えています • これらの問題が、生活に大きく影響を与 えています。. 「病気をもって生きるのは自分である。」. 5.
(8) 自分らしい生活をするための 3つの課題. セルフマネジメントプログラムの 3つの基本前提 • 慢性の病気を持つ人は、病気に対処す るだけではなく、病気より生じる生活上 の問題や、情緒的な問題にも対処しな ければなりません. 治療の マネジメント. •病気の不安 •制限された生 活へのイライ ラ •「なんで自分 だけが」とい う、やるせな い思い. セルフマネジメントワークショップへの 参加の理由. •社会的な役割 (仕事、家事、 育児など) •友人との関係 •趣味の活動. CDSMPワークショップ – 毎週2時間半のクラスを 6週間 – 2人のトレーニングを受けたリーダが教える • 少なくとも一人は慢性疾患を持っている人 • 標準化されたマニュアルに基づいて教える. 楽しめることを 見つけたい. – 1回に8~16人の参加者 – 参加型の学習形式 – 各週毎に異なるテーマ • アクションプランとその評価、問題解決. 薬を飲み忘れな いようにしたい. 毎日楽な気分 で過ごしたい. 生活の マネジメント. (http://patienteducation.stanford.edu/). 自分の治療に積 極的に関わりたい. 医師に自分の希 望を伝えたい. 感情の マネジメント. •痛み、しびれ、疲労な ど •自分の病気/病状を知 る •自分の望みを医療者に 伝える •服薬、食事、運動など を適切に行う. 家族に自分のことを わかってもらいたい. Banduraの社会認識理論: 自己効力感 (Lorig, 2001, pp. 32-39). CDSMPワークショップ:理論の実践. 自己効力感. • Banduraの社会認識理論 –自己効力感. ある特定の行動を とる能力があると いう認識. -自信をつけていく. – ピアーの力で. 成果効力感 ある特定の行動が 望む結果をもたら すという期待感. 6. 行動変容.
(9) Banduraの社会認識理論: 自己効力感 (Lorig, 2001, pp. 32-39). Banduraの社会認識理論: 自己効力感 (Lorig, 2001, pp. 32-39) 自己効力感. • 達成した体験を積む • 似たような境遇の人が目 標達成に成功しているの をお手本にする. • 達成したい目標を対処可能な小さい目標に おろしていく. • 似たような境遇の人 が目標達成に成功し ているのをお手本に する. • 達成する能力があるという自信を育てる. • 言葉での説得. • 言葉での説得. • 身体的状態や症状の 意味を解釈する. • 身体的状態や症状の意味 を解釈する. • 身体的状態や症状の意味に 目を向けていく. Banduraの社会認識理論: 自己効力感 (Lorig, 2001, pp. 32-39) 成果の効力感. • 成功体験を積む. •「あの人にできるのだったら、私にも できるかもしれない。」 • 成功した人がお手本になる •基本的な情報 • • • •. 重要さの認識 恐れさせる 励ます 支援する. CDSMPワークショップ:理論の実践. • 行動が望む成果をもたらし ているのであれば、人はそ の行動を継続して行く確率 が高い • 期待は現実的であるべき である(時間的な制約も含 めて) • 大きな目標を実行可能な1 週間毎のアクションプラン におろしていく. • 自己効力感-自信をつけていく • 自己効力感を高めるような教授法. CDSMPワークショップ: 自己効力感を高めるような教授法. 教授法の基本前提:ピアーの力 • 慢性の病気を持つ一般の人は、詳 しく書かれたリーダー用のマニュア ルがあれば、専門家と同じくらいか、 またはそれ以上に効果的に、 CDSMPを教えることができる. • 自分と同じような人に教えられる (ピアー) – 患者がリーダー – 医療の専門家(知識)VS 患者(実施). 7.
(10) 自信をつけていく. 医療の専門家(知識)対 患者(実施). • お手本が大切. • 専門家がリーダーであるグループと 一般の人 がリーダーであるグループの、比較をした研究. お手本が 大切な時. – 自分と同じような人に教えられる – リーダーの一人は病気を持つ人 – お互いに助け合う. – 専門家がリーダーであったグループでは、参加 者はよく知っていました – 一般の人がリーダーだったグループでは、参加 者が実際にいろいろ実行していました – 専門家は、質疑応答という、落とし穴に入り込む ことがあります. • 「あの人にできるのだったら、私にもできるかもし れない」 • 成功した人がお手本になる. CDSMPワークショップ: 自信をつけていく教授法. 教授法の基本前提. • アクションプラン • フィードバック. • このプログラムは、実際に教えられ る内容よりも、どのように教えられる かの過程が重要である. – 問題解決法 • ブレインストーミング. • • • •. 自信をつけていく • アクションプラン. 話し合い 症状の再解釈 説得や支援 安心した雰囲気でお互いから学ぶ. 自分が決めていくプロセス • アクションプラン – 「自分がしたいこと」 – 「こうするべきだ」と他の人から言われていることではなく – 「しなければならない」と自分が思っていることでもなく – もちろん、リーダーが「した方がいい」とか「させてあげたい」 とか思っていることでもない. •達成したい、大きな目標を実行可能な1週間毎の アクションプランにおろしていく •実現可能なプラン •「自分にもできる」という自信を育てる •成功した体験を積み重ねていく •自分が決めていくプロセス •リーダーは参加者が自分の目標を達成できるよう に援助すること. • フィードバックと問題解決 – アクションプランのフィードバック – 問題があれば、ブレインストーミングをみんなで – 問題を出した人に「どれかつかえそうなものがある」か聞く. 自信度 7以上. 8.
(11) ブレインストーミング. 自信をつけていく • 症状の再解釈. • 目的はひとつの“テーマについて”、できるだけ多くの案 をできるだけ短い時間に出し合うものです. • • • •. 「症状はすべて病気のせい」 何もできない. ~ブレインストーミングの約束事~ (リーダーが説明するせりふ) 何か案を持っている人は、だれでも発表できます ブレインストーミングの最中には、出された案に対し、 肯定的、または否定的な意見を出しません ブレインストーミングが終了するまで、出された案につ いて、どんな質問もしないし、話合いもしません すべての案ができったところで、あいまいな案につい ては、明確にしてい きます. 病気 疲労. 「病気以外の他の原因」 体の状態や 症状の意味を再解釈. 呼吸困難. 筋肉の緊張 症状の 循環. うつ状態 行動を起こしていこう とする動機づけ. 自信をつけていく. 痛み ストレスと不安. 困難な感情. 自信をつけていく:個人の尊重. • やわらかい説得や支援. • 参加者は、 – 自分の今いるところから、 – 自分が学びたいことを、学びたいだけ、 – 自分のやり方で、 – 自分のペースで、 • 学んでいき、病気とともに生きることに 自信をつけていきます。 • 参加者の学びは、それぞれに異なります。. – アクションプランの進行状況について、お 互いに電話する – アクションプランの成果をみんなに発表 (フィードバック) – 自然な周りからの圧力が行動の実施を促 進する. 自信をつけていく: 安心して参加できる雰囲気づくり. 自信をつける:参加型の学習方法 • 自然に参加を促す方法が取り入れられている. • 秘密の保持 • リーダーは評価する人ではない. • 全員が話す機会. – 「いい」とかとか「悪い」とか決めない – 非難しない、決め付けたりしない. – 最初にやってくれる人を募って、その後は順番に回るやり方. • 二人一組で話す. • 強制したりしない. – 病気を持つ人は持つ人同士 – 一緒に来た人とは組みにならない. – 無理にやらせたりしない – 発言したくない人は言わなくてもいい. • • • •. • 個人の意志が尊重された雰囲気 • 安心した雰囲気でお互いから学ぶ • リーダーが自分の案を教えるのではない. 9. ブレインストーミング 自由に発言する 実技(呼吸法、運動) リーダーによる実演する(コミュニケーション技法).
(12) 自信をつける:6週間の意義. セルフマネジメントの道具箱. • 実際に試してみる機会を持って、やった 結果を評価して、学んだことを積み重ね ていきます。このように、少しずつ学んで いく時に、人は一番よく学びます。その ため、CDSMPは、6週間かけて学ぶよ うになっています. 運動 意思決定 薬 疲労の管理 計画を立てる. 問題解決 フィードバック 心を活用する 痛みの管理 コミュニケーション. よい呼吸法. 健康な食事. 医療者との協働. 感情の理解. 疾患特有の健康教育との違い. 慢性疾患をもちながら、元気に生きよう なぜ. • 疾患特有. • セルフマネジメント. • 医師の指示. • 自分がやりたいから. サポート. 教える人 • 医療者. セルフマネジメント 道具箱. リラクゼーション. 肯定的な 考え方. 運動 健康な食事. 内容. • 療養上の知識. 病気の 種類. • 大体ひとつの病 • 慢性の病気であれば、 気 なんでも、一緒に. コミュニケーション 技術. 問 題. 解 決. 薬の使い方. できると思うよ、. できると思うよ 、. • 少なくとも1人は病気を 持つ人(お手本) • セルフマネジメントの 技術や方法. できるよ - 自信いっぱい. サポートグループとの違い • サポートグループ(支援中心) – 私はひとりではない。 – 何でも話せて、わかってもらえる。 – 助け合える仲間がいる。. セルフマネジメントに 関連する研究. プラス • セルフマネジメント(積極的に行動をおこす) – 積極的な自己管理者になることを選んで、 – セルフマネジメントの技法を学び、使ってみる。 – 問題が生じれば、問題解決技法を活用する。. 10.
(13) カイザー病院(2001). スタンフォード大学(2001) • • • •. • • • •. 対象者952人 年齢:40~90歳、平均65歳 追跡期間:6ヵ月、1年、 2年 結果. – 健康状態の改善や社会生活の向上 – セルフマネジメント行動の改善(運動の増加、医 師とのコミュニケーションの改善) – 医療サービス活用の減少(救急外来受診の有意 な減少、外来受診と入院日数の減少の傾向). – 健康状態の改善や健康上の苦しみの軽減 – セルフマネジメント行動の改善(運動の増加、医 師とのコミュニケーションの改善) – 医療サービス活用の減少(外来受診、入院、救 急外来受診). メタアナリシス:方法. 上海CDSMP(2003) • • • •. 対象者954人 年齢:平均64歳 追跡期間:6ヶ月 結果. (CDC, 2011). • 目的:CDSMPと関節炎のセルフマネジメントの プログラムに関する研究を分析し、その効果 を評価する • 期間:1984年から2009年 • 分析の対象となった研究の数:23 • 研究の対象者数:8,688 (2,902人はRCTsで、 5,779人は 縦断的研究). – 健康状態の改善 – セルフマネジメント行動の改善 – 医療サービス活用の減少(入院日数の減少). メタアナリシス: 結果. 対象者489人 年齢:平均62.2歳 追跡期間:1年 結果. (CDC, 2011). CDSMPの医療費への影響. (2013). • 4-6ヶ月、9-12ヶ月の短期間の研究 – 自己効力感の向上 – 健康上の苦しみやうつ状態の改善. • 研究対象数:1,170 (17州にまたがる22団体) • フォロアップ期間:開始前、6ヵ月後、1年後. – 身体的健康の改善(エネルギーと疲労の改善、 機能レベルでの改善は認められない). • 結果:有意な改善 – 救急外来受診の減少 (5%) 、6ヶ月後と1年後 – 入院回数の減少 (3%) 、6ヵ月後 – 経費削減の可能性:. – 健康行動(医師とのコミュニケーション、認識技法 の活用、運動の向上) – 健康状態の改善 – 社会生活の向上 – 医療サービス活用の改善は認められない. • 参加者一人に対し $364、 • 国の経費として $3.3 billion(5% の慢性疾患を持つ成 人が受講すれば). 11.
(14) 日本におけるCDSMPアウトカム評価: 対象者128名の6ヵ月後の追跡調査. 病と病ある人生への向き合い方の変化:. 東京大学大学医学系研究科(2008、山崎、湯川、米倉、近藤). 東京大学大学医学系研究科(2008、山崎、湯川、米倉、近藤). 参加者33名の3ヵ月後の追跡調査より • 75% 以上の参加者が. . 健康状態の改善や健康上の苦しみの軽減 症状への対処行動の改善 自己効力感の向上 日常生活充実度評価の向上 糖尿病患者やリウマチ性疾患者は、受講後肯 定的な変化をより多く得ている 糖尿病患者で、HbA1cに改善の傾向が認めら れる(n=17). – – – – –. 気持ちが楽になったという感覚 少しずつでよい、無理しなくてよいという感覚 仲間と出合ったことによる強さ できないことよりできることに目が向くようになった 何事に対してもよい方向に考えるようになった. • 50%以上の参加者が – 他人の助けとなっているという感覚 – 物事をある程度受け止められるという感覚. CDSMPとの出会い:私の学び. 病気や障害をもつ人と 医療者:. • 2001年 「慢性疾患の自己管理ガ イダンス:患者のポジテブライフを 援助する」 – 「病気をもって生きて行く上で、とても大切な 事柄が、こんなにわかりやすく、患者さんの視 点から書かれてある・・・。」. 望まれるパートナーシップ -. – “患者”を援助するという思い. CDSMPを通じての私の学び. • 2007年 「病気とともに生きる:慢性 疾患のセルフマネジメント」 – 病気をもつ“人 ”と一緒にやっていく. 私の学び:医療者としてのかかわり方 ○患者さんが、自らの治療に対して以前よりも前向きに向き合うようになる。 ○患者さんが積極的にコミュニケーションをするようになる。その結果、より 適切な診断に基づいた治療の選択をすることができるようになる。 ○患者さんの治療満足度が高まる。. リーダーとして • 医療者としての役割を横において、ひとりの人として、 • 病気を持つ人を、問題を抱えている、ひとりの人の人 として、 • 病気を持つ人に何かしてあげるのではなく、 • 病気を持つ人が、その人のやり方で、その人のペー スで、その人がいるところから、病気とともに生きるす べを学んでいくのをサポートする。. 治療に対する患者さんの参加意欲が高まり、その結果、 健康状態が改善される。 私は、日々、線維筋痛症を含めた膠原病・リウマチ性疾患一般の診療にあ たっています。患者さんの診療の際には、2回目か3回目の診療のときに CDSMP受講を薦め、多くの患者さんにCDSMPを受講してもらっています。 私が患者さんにCDSMPを勧める理由は、まず「①治療に対して積極的にな れること」があります。また「②日々の不安やイライラを自分で解消できるように なること」や「③主治医に質問や自分のニーズを伝える勇気を持てるようになる こと」、そして「④自分の病気を客観視できるようになること」などがあります。 CDSMP受講により、パターナリスティックにこれしなさい、あれしなさいではな く、相談しながら治療を進めていくということがやりやすく、従って治療方針が決 定しやすくなります。CDSMPは医療ではありませんが、医療を受ける前の準備 段階として非常に有効であり、私たちの医療をやりやすくする触媒効果がある と思います。 (熊本リウマチ内科 院長 坂田研明先生). 外からのサポート • このプログラムを自分の患者に紹介する。 • ワークショップを開催する場を提供する。. 12.
(15) ご清聴ありがとうございました。. ご質問?. 13.
(16) 3.シンポジウム 「臨床における意思決定支援の実際と課題」 座長抄録 牛久保美津子(うしくぼみつこ)1) 蛸島八重子(たこじまやえこ)2) 1). 群馬大学大学院保健学研究科. 2). 北海道難病医療ネットワーク連絡協議会. 意 思 決 定 支 援 は 、正 解 律 が な い 。そ れ ゆ え 、難 病 療 養 者 と 向 き 合 う ナ ー ス は 、病 院 看 護 、 訪問看護、施設看護などの看護活動のあらゆる場所で、日々悩まれていることと思う。そ の人の人生は誰にも決められない。意思決定支援は、療養者が自分らしい生活を送れるよ うに支援するために重要なものであり、生き方支援そのものと言える。 医療技術の進歩により、多くの選択肢が登場した。医学モデルでは、1 分1秒でも長く 生きられる治療法が最優先であり、何を選んだらいいかは明白である。しかし、人が自分 の生き方を考える上では、治療一辺倒の考え方ではなく、生活モデルでの考え方が必要で あ る 。生 活 モ デ ル で は 、病 気 は 一 つ の 要 素 に す ぎ ず 、人 生 観 、死 生 観 、価 値 観 、家 族 関 係 、 経済面など多様な側面からその人を理解し、思いに寄り添うことが大前提である。人生の 物語の主人公は患者である。そして、意思決定支援は、患者の思いに寄り添いながら支援 する「プロセス」なのである。そして、療養者の思いを引き出し、その思いを関係支援者 とともに共有し、最期までつないでいく。 意思決定支援には、多くの逆境がつきものである。たとえば、本人の意思を確認できな い状況、本人が決められないほど心理状態が不安定な状況、もともと他人任せでいろいろ なことを決めてきた人、また本人よりも家族の意思で決められてしまう家族間の関係性、 説明の際の医師の姿勢や態度による影響や説明内容の偏りや過不足などなど、課題は山積 である。 本シンポジウムでは、佐々木会長よりご推薦された3名のシンポジストの先生にご登壇 をいただく。冨田真佐子氏からは、炎症性腸疾患をかかえながら生きる人々が、病気と折 り合いをつけながら生活を送るうえでの意思決定支援のご経験をとおしてのご発言をいた だく。神田直樹氏からは、患者本人の意思が確認できなく、代理意思決定が必要とされる クリティカルケア領域における支援経験をとおして、チーム医療が不可欠であるとのご発 言 を い た だ く 。そ し て 、高 橋 奈 美 氏 か ら は 、筋 萎 縮 性 側 索 硬 化 症 者 が 行 う 様 々 な 意 思 決 定 、 特に人工呼吸器を装着するかしないかといった命に直結する選択を含めての意思決定の支 援経験をふまえてのご発言をいただく。さまざまなお立場から問題提起をいただき、皆様 のご経験と合わせて、難病分野における意思決定支援について考えていけたらと思う。 病状進行による喪失体験のたびに、療養者と家族は意思決定の連続をせまられる。しか も、不確かさの中で、療養者と家族が納得のいく意思決定ができるよう支援する。それゆ え、意思決定支援においては、ケアする人をケアする文化も必要である。当事者も支援者 も意思決定を行うことは苦悩でなく、むしろ選べることは幸せと受け止めてもらえるよう な意思決定支援、難しい状況の中でも本人の意思を尊重できる意思決定支援のあり方を模 索する。 14.
(17) 【シンポジウム】臨床における意思決定支援の実際と課題. 若年のクローン病患者が出会う意思決定場面と看護支援. 富田真佐子(とみたまさこ) 昭和大学保健医療学部看護学科. ク ロ ー ン 病 は 難 治 性 の 腸 疾 患 で あ り 、指 定 難 病 に 定 め ら れ て い る 。好 発 年 齢 は 10 歳 代 後 半 か ら 20 歳 代 前 半 と 若 く 、未 だ 病 因 の 特 定 、治 療 法 の 確 立 に は 至 っ て い な い 。症 状 は 腹 痛 、 下 痢 に 加 え 痔 瘻 、肛 門 周 囲 膿 瘍 な ど の 肛 門 病 変 、発 熱 や 倦 怠 感 な ど 全 身 性 症 状 も 出 現 す る 。 寛解期には健常者と変わらない社会生活が送れるものの、不安定な時期には消化器症状が 長引き低栄養や鬱的な症状、腸管外合併症をもたらすことも稀ではない。また重度の再燃 期 に は イ レ ウ ス や 瘻 孔 、膿 瘍 に よ り 激 し い 苦 痛 を 強 い ら れ る 。約 70% の 患 者 は 手 術 を 経 験 し、術後の再手術率も高い。将来への夢に向けて活動する若い時期に発症した患者の多く は、長い人生の中で何度か再燃を繰り返し、病気を抱えながら仕事や結婚、出産、子育て など様々な選択に迫られる。クローン病は生死に直接つながる疾患ではないが、それゆえ に長いこれからの人生を考えて意思決定を行っていかなければならない。 クローン病の治療は薬物療法を中心に、従来は経腸栄養法と厳しい食事療法がスタンダ ー ド で あ っ た が 、 抗 TNF-α 抗 体 療 法 や そ れ に 続 く 新 た な 治 療 法 が 開 発 さ れ つ つ あ る 。 抗 TNF-α 抗 体 療 法 を 選 択 す る か 、 経 腸 栄 養 法 や 中 心 静 脈 栄 養 法 を 選 択 す る か 、 手 術 か 否 か 、 場 合 に よ っ て は 人 工 肛 門 を 選 択 し な け れ ば な ら な い こ と も あ る 。抗 TNF-α 抗 体 療 法 の 効 果 は高いが副作用や効果減弱も報告され、治療の選択および長期継続を迷う患者も多い。ま た治療の選択だけではなく、病気を抱えながらの結婚や就職、就学においても数々の選択 を迫られる。毎日の生活は食事や仕事量、社会参加など、常に再燃の不安を抱えながらの 小さな意思決定の連続である。このような様々な意思決定にあたり、患者は多くの選択肢 の中からこれからの人生への影響を考慮し、自らの価値観、日々の生活のあり方、家族の 思いを重ねて選択していかなければならない。危機的な状況下では、目先のことに捉われ 判断が難しくなっている場合もある。インターネットの普及により情報の入手は容易にな ったが、逆に溢れる情報をどう解釈し、個別性と照らし合わせていくかも難しい。 ゴールは病気があっても自分らしく幸せに生きたいということであり、様々な選択はそ こに向かうプロセスである。最終的な意思決定の答えは患者自身が持っている。それを引 き出すために看護師は患者との信頼関係を築く中で医師からの説明を補足し、生き方やニ ーズを尊重しながら迷いを共に整理し、患者が納得できる意思決定を支援していく必要が ある。ここでは、患者が遭遇する意思決定場面について事例や研究結果をもとに提示し、 必要な支援について述べていきたい。. 15.
(18) 概念 • クローン病は原因不明(免疫が関与)で、主と して若年者にみられ、潰瘍や線維化を伴う肉芽. 若年のクローン病患者が出会う 意思決定場面と看護支援. 腫性炎症性病変からなり、口腔から肛門までの 消化管のあらゆる部位に起こりうる。発熱、栄 養障害、貧血などの全身症状や関節炎、虹彩 炎、肝障害などの全身性合併症がおこりうる。. 昭和大学保健医療学部看護学科 富田真佐子. 病状・病変は再燃・寛解を繰り返しながら進行 し、社会生活が損なわれることも少なくない。 難病情報センター ホームページ(一部省略)より. 病変. 症状. • 小腸や大腸、またはその両者に縦走潰瘍、敷石 像やアフタ、または狭窄が存在. • 主症状:腹痛、下痢、体重減少、発熱、 肛門病変など. • 潰瘍性大腸炎が粘膜までの潰瘍であるのに対し 炎症は腸管の筋層まで達する. 炎症 ↓ 下痢・体重減少・発熱 ↓ 倦怠感 ↓ QOLの低下. 持続する鈍痛または 狭窄部位を通過するときの痛み イレウスでは激痛とおう吐. 長崎クリニックホームページより. 患者数の推移. 予後. H25年度 39,799人. 発症10年後の 累積手術率は40-50% 生涯手術率は80%以上. 寛解と再燃を繰り返す. 2007年のVermeire Sの文献より 100% 80% 60% 高度活動期 40%. 軽度活動期 寛解. 20% 0%. 発症1年後. 10~15年の長期経過 難病情報センターHPより. 16.
(19) 推定発症年齢. 人生イベントが多い青年期に発症. 男性:20~24歳 女性:15~19歳に発症する人が多い 男性:女性 = 2:1 平均年齢:30代~40歳前後. ありふれた普通の毎日が奪われる. 治療. 結婚・出産・子育て • 妊娠への影響は少ないが、活動期は妊娠を継続 できない場合もある。 • 寛解を維持出産した患者さんも多い • 薬物の影響. 仕事・家事 • 仕事上の不利益 • 病状悪化による仕事への影響. 内科的治療 • 経腸栄養法 • 中心静脈栄養法 • 5-ASA製剤 • ステロイド • 免疫調整薬 • 抗TNFα抗体療法. どうせまたすぐ 働けなくなるんで しょ! 仕事辞めたほうが いいんじゃない. (静注点滴・自己注射). 治療. 経管摂取をあわせた成分栄養剤摂取例. 内科的治療 • 経腸栄養法 • 中心静脈栄養法 • 5-ASA製剤 • ステロイド • 免疫調整薬 • 抗TNFα抗体療法. 就寝中に経鼻摂取 3パック=900kcal. 0:00. 経鼻と経口で 1日1200kcal. ★ ★. 夕食. ★. 18:00. 6:00. 朝食 12 :00. 昼食 残りのカロリーは 食事から. 外科 • 狭窄形成術 • 腸切除術 • 肛門病変に対する ドレナージ法 • 人工肛門造設術. (静注点滴・自己注射). 昼間経口で 1パック=300kcal~. 17. 外科 • 狭窄形成術 • 腸切除術 • 肛門病変に対する ドレナージ法 • 人工肛門造設術.
(20) 抗TNFα抗体療法. 治療の効果 治療選択者全体. 77% 治療中断者. 治療継続者. 33% 89%. 非常に感じる. 治療への期待. 84%. 再発を予防したい. 医師に自分から質問した. [値]%. インターネットで調べた. [値]%. 他の患者から話を聞いた. 85%. 元気に仕事や学業・家事をしたい. 89%. 家族に心配かけずに済む 20%. 40%. 60%. 80%. [値]%. 講演会で話を聞いた. 81% 0%. [値]%. パンフレットを読んだ. 95%. 趣味など余暇を楽しみたい. ややそうだ. 21% 0. 10. 20. 40. [値]%. 治療計画. 効果があるか心配. 70. [値]%. 25%. 妊娠出産への影響の心配 50. 60. 70. 80. 90. 100. 41% 0%. (%). 20% ある. (5段階評価で「あった」「ややあった」と回答した割合). 18. n=162. 24%. (該当なしを除く) 40. 100. 63%. 経腸栄養法があっている. 30% 30. (%). 90. 65%. 状態が良いので必要ない 将来の見通し. 80. 40%. 副作用等に対する不安. [値]%. 薬の副作用. 20. 60. 効果が持続するか. [値]%. 10. 50. 治療に対する不安や考え方. 治療効果. 他の治療の可能性. 30. 100%. 医師からの説明. 0. 全く感じない. 97%. 症状を良くしたい. そうだ. あまり感じない. (複数回答). 38%. 食事制限を少なくしたい. どちらともいえない. 情報収集. n=162. 経腸栄養法に抵抗がある. やや感じる. 40% ややある. 60%. 80%. 100%.
(21) 治療に対する意思決定. 意思決定支援に必要とされる要素. • 162名のデータでは‥. • 置かれている身体の状況と予測. 健康状態. • どのような選択肢があるのか • どのような結果をもたらすのか. 情報提供. 抗TNF-α抗体療法の. 治療継続 76名. 選択あり 98名 対象者. • 何を大切にしたいのか • どう生きたいか. 治療中断 22名 選択なし 64名. 価値観. 合計 162名 図1 対象者. ある選択の場面 1. • 正中創に皮膚瘻 消化液が漏れる • 膀胱瘻→膀胱炎→膀胱痙攣→血尿 • 経腸栄養法から中心静脈栄養法へ • イレウスで緊急入院→イレウス管留置 →入退院の繰り返し • 抗TNFα抗体療法 2回投与で終了、効果減弱 • イレウスの悪化 激痛と嘔吐の繰り返し. • 10代後半で発病 • 20代後半に再燃 • 炎症が激しく低栄養の状態で長時間の手術 • 縫合不全、腹膜炎、再手術 • 正中創に回腸ストーマを造設 • なんとか術後を乗り越え • 社会復帰. • 修士論文の最終提出と初めてのシンポジスト. • 人工肛門閉鎖 • 数年後、再燃‥‥。. 見失った一番大切な願い. 「治療に専念する」という選択を 受け入れられなかった この困難を 何とか乗り切りたい. 責任を果たしたい 迷惑をかけられない. 私の願い • ありふれた小さな幸せ • それを失ってまで?. 何とかなる? いや、もう自分では どうにもならない?. • がんばりたい • あきらめたくない • 迷惑をかけてはいけない • それが自分の生き方 • 目先のことに縛られた「価値観」 • 先が見えず、本当は何が一番大切 なのか「願い」を見失った. 支える家族の気持ち 諦められない やり遂げたい がんばりたい. 病人というレッテルを 貼られたくない. 家族は許し てくれる. 痛みの増強 不安. 何もできない 無力感. 治療に専念すべき. 19.
(22) その人の思いに寄り添う看護支援. ある選択の場面 2. • ADLに影響がなく、無理をしてしまう 生命に関わる疾患ではなく、再燃と寛解を繰り返しながら も長い人生をこれからも生きる. • 40代、再び悪化 • とうとう痔瘻‥‥. • 価値観を大切にすること • 生き方を尊重すること • 答えは患者さんの中にある. 肛門部狭窄. • トイレで号泣する激痛. • 目先のことにとらわれ未来が見えていない こともある • 冷静さを失っているときは、 気持ちを受け止めた上で、 一番大切なものは何かを見つめ直す支援も必要. 情報提供. 2つの選択肢. • 中心静脈栄養法で. • 永久的人工肛門. • 時間がかかる • 再燃しやすい. • 比較的早く寛解導入 • 再燃については不明. 腸の安静を保ち炎症 を抑え、シートン法 にて排膿する. 人工肛門を選択 • 延々と続く激痛から逃れたい • 中心静脈栄養法を選択した場合の経過が予測で きた • 2度目だったので、スト-マのある生活が イメージできた • 回腸より下行結腸ストーマの方が管理が楽 • デメリットだけではなくメリットが分っていた 寛解維持、下痢や排便の苦痛軽減. • 家族の支え 1度目は納得できず、選択肢もなかったが、 2度目は選択できるだけの情報を持ち、自ら選択する ことができた. まとめ • クローン病患者は、再発の不安を抱えながらも 食事や治療、仕事や社会参加など毎日の小さな選択を 繰り返して生活している • 特に若い患者は、結婚や出産、就職など、これからの 長い人生をどう生きていくのか を考えた意思決定が 必要 • インターネットが普及し、情報が氾濫している中で、 個人に合わせた役立つ情報を見出す • 「答え」は患者自身が持っている • 目先のことに捉われ、先を見失っていることもある • 何が大切なのかを共に確認しながら納得できる 意思決定を支援していく. 20.
(23) 【シンポジウム】臨床における意思決定支援の実際と課題. 「臨 床 に お け る 意 思 決 定 支 援 の 実 際 と 課 題 」 ALS 患 者 の 治 療 の 意 思 決 定 支 援 高橋. 奈美(たかはし. なみ). 北海道医療大学大学院看護福祉学研究科博士課程 ALS は 原 因 不 明 の 神 経 難 病 で あ り ,病 気 の 進 行 に 伴 い ,嚥 下 障 害 や 呼 吸 障 害 が 生 じ た 場 合に,胃ろうや人工呼吸療法といった治療を受けるか否かの意思決定をしていくことにな る.胃ろうや人工呼吸療法の選択は,生死を左右するとともに,一度,導入すると,一生 涯,治療を伴う療養生活を送ることを意味する.療養生活の場は,大きく在宅療養と施設 入所の二つあるが,在宅の場合は,介護を担う家族の状況や居住する地域で利用できる訪 問系サービスの整備状況,また,施設入所の場合は,人員や施設基準等から受け入れる医 療処置が限られている現状や入所に必要な費用の負担などを考慮する必要がある.そのた め,治療の意思決定には,患者がこれまで大切にしてきた価値観の他,療養生活の場や介 護 す る 家 族 の 意 向 な ど も 影 響 す る た め , ALS 患 者 の 治 療 の 意 思 決 定 は よ り 難 し く な る . さ ら に ,ALS は ,原 因 不 明 で 有 効 な 治 療 法 が な い 進 行 性 の 疾 患 で あ る こ と か ら ,診 断 に よって心理的な危機状態に陥っていたり,病気の進行に伴い,パワーレスな状態や自己コ ントロール感を持てないといった状態に陥っていたりすることがある.そのため,もとも と意思決定する力がある患者でも,意思決定する力が低下し,意思決定することが難しく な っ て い る 場 合 も あ る .ま た ,球 麻 痺 に よ り コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 障 害 が 生 じ て い る 場 合 は , 意思決定に必要な情報収集することや,医療者や家族とうまくコミュニケーションを図る ことが十分にできないまま意思決定を迫られる場合もある. そのため,患者と医療者の間で信頼関係が構築できていない場合は,特に,患者は治療 を勧める医療者へ不信感を抱きやすく,適切なタイミングで治療に関する十分な話し合い が う ま く 進 ま な い 状 況 も 生 じ る .医 療 者 は ,ALS 患 者 の 状 況 を う ま く 汲 み 取 り な が ら 意 思 決定を支援することが重要である.特に,チーム医療における調整役割を担い,患者の身 近な存在である看護職が,患者に寄り添い,治療の意思決定を支援することは重要な役割 である.しかし,その役割を十分に発揮するためには,看護職の意思決定支援に必要な知 識・技術の向上や意思決定支援にうまく関わっていくための仕組みづくり,組織のニーズ に添った,患者とその家族を支援するための支援体制の構築が必要であると感じている. 看護職が患者の意思決定に積極的に関わっていくことで,患者,そしてその家族が納得 のいく意思決定ができるようにすることが重要であるが,特に重要なのは,その関わりの プロセスにおいて,患者自身が持っている力を信じ,その力を引き出すことで,患者自身 が病気の進行に伴う変化にうまく対処できるようエンパワメントすることであると考えて いる.シンポジウムでは,これまで神経難病をサブスペシャリティとする慢性疾患看護専 門 看 護 師 と し て , 看 護 外 来 や 組 織 横 断 的 な 活 動 を 通 し て 関 わ っ て き た 経 験 を も と に , ALS 患者の治療の意思決定支援について述べたい.. 21.
(24) ALSの経過 【進行の特徴】 進行の速さ,障害されていく部位は人それぞれ 先の見通しを持ちにくい 少し生活に慣れた頃に新たな障害が生じる. 臨床における意思決定支援の 実際と課題. 終末期. 原因不明 有効な治療法 が未確立 進行性. ~ALS患者の治療の意思決定支援~. 進行 診断. 北海道医療大学大学院看護福祉学研究科 博士課程 社)日本看護協会認定 慢性疾患看護専門看護師. 症状の 発現. 高橋 奈美. 日々の生活,生命,家族への影響. 【症状】 ADL低下 嚥下障害 構音障害 呼吸障害. 【対処】 介護 胃ろう造設 意思伝達装置 人工呼吸療法. 意思決定を行う際には, 『病気が悪くなったらどうするか・・・』という,つらい話となる. ALS患者の治療の意思決定を難しくさせる要因 ①原因不明,有効な治療法が未確立 ②進行性. 疾患特性. ③病気進行の不確実性 ④生死に関わる治療の意思決定が必要. ALS患者の意思決定をどのように 支援していくと良いのか?. 患者. ⑤病気との折り合いの難しさ ⑥他者の手を借りて生きることへの苦悩 ⑦霊的苦悩(スピリチュアルペイン) ⑧コミュニケーション方法の確立. 何ができるのか?. ⑨情報提供の難しさ ⑩患者と医療者が話し合うことの難しさ. 医療(者). ⑪医療システムの確立(必要な医療が受けられるか) ⑫家族の意向 ⑬患者と家族が話し合うことの難しさ. 家族・介護(者). ⑭家族の介護負担・介護体制の確立・療養の場の確保. ALS患者にとって病気の進行を考えることの辛さ. 一番辛かった時期. • これからどうなるか不安,でも考えないようにしている. ①症状を自覚してから,ALSと診断されるまでの時期. • ALS患者の吸引について書かれている冊子を医師から手渡され, 息子がこうなることを考えたくもなくて,思わず冊子を伏せた. ②ALSと診断され病気の説明を受けた時期 ③自分でできていたことができなくなり,人の手を借りなくては いけなくなってきた時期. 進行の先を見通して早め早めに治療選択について相談しておくことが望ましい. しかし,多くの患者や家族は,これからの病状の進行や先行きについて不安を 持ってはいるものの,それを顕在化させることに恐れをもっている.. 支援のニーズは,診断時から高く,進行期に至る 病気の進行や治療選択に焦点を当てるのではなく,患者や家族の現在の気が かりや不安に対応するためのケアを充実させていくことが重要ではないか?. 22.
(25) 家族間の呼吸器装着に関する話し合いの状況. 家族間の呼吸器装着に関する話し合いの状況. (高橋,2016). • 家族間で呼吸器装着に関する話し合いができていたの は,5組中1組.. 家族間の呼吸器装着に関する話し合いの状況 A B C D E. A氏は診断時に呼吸器を装着しない意向を家族に伝えているが,診断時以降は 話していない. • 呼吸器装着について,家族間で本音で話し合うことの 難しさを感じ,専門職の介入を希望していた家族もいた.. B氏は一切,家族と病気や呼吸器装着についての相談をしていない C氏は主治医には装着の意向を伝えているが家族には伝えておらず,家族もC 氏に聞けずにいる.家族は,専門職に間に入ってもらって,C氏と本音で話し合 い,今後について相談したいと思っている. 家族間で話し合うことの難しさがある. 患者と家族の思いを,互いに共有しコミュニケーションを 促進することが大切. D氏は妻に装着について相談したいと思っているが,妻はD氏の決断が先であ ると考えて返答を避けており,話し合いができていない 夫婦で呼吸器装着をしないことを話し合った上で県外に住む娘たちにもその意 向を伝え了解を得ていた. 意思決定支援に向けた援助の方向性 • 診断時より支援を開始する • 病気の進行と向き合うことは,患者にとって辛いことである.治療の選 択が迫られる時期より前から,気がかりや不安に対するケアを行って いく.そのケアの積み重ねのプロセスが,治療の意思決定支援につな がる. • 家族間で,病気や治療の話し合いを持つことが難しい.患者と家族が 互いの思いを共有する機会を持ち,コミュニケーションを促進する.. 患者の不安に丁寧に寄り添い解決する 家族間のコミュニケーションを促進する. 面談により得られる効果 • 外来の待ち時間の有効活用 • 面談により気になる症状や徴候があれば,すぐに外来診察でタイム リーに対応できる • セルフマネジメント(体重管理,誤嚥,呼吸機能低下など). 悪い知らせを伝える際に配慮すること. • 患者-家族,患者・家族-医療者間のコミュニケーションの促進 • 患者自身が症状や生活への影響などを語ることで,病気との折り合 いをつけていく・・ • 治療の意思決定を患者自身が前向きに考えていくことができる・・・. 23.
(26) SPIKES 悪い知らせを伝える際の6段階のプロトコル. 事例 胃ろう造設をめぐって医師との話し合い がうまくいかなかった事例. 1.SETTING (準備) 話す内容にふさわしい場所や時間を用意する 2.PERCEPTION (患者・家族の状況把握). • A氏40代男性 妻と二人暮らし.ALSと診断されて2年 が経過.機能評価目的で入院した.検査の結 果,%FVCが50%と,呼吸機能の著しい低下があった. そのため,医師は,胃ろう造設のタイミングを逸して はいけないと,A氏に胃ろう造設をすすめたが,A氏は, 「そんなのする気はない」と怒りをあらわにし,その後, 話し合いができずに困っていると医師からCNSに相談 があった.. 病状等今の状態の患者の理解,心配を知る 3.INVITATION (確認) 患者が望む情報の範囲・程度・目的を知る 4.KNOWLEDGE (情報提供) 患者が理解できる方法で情報を提示する 5.EMPATHY AND EXPLORATION (共感と探索) 相手の感情に気づき共感的態度で対応する 6.SUMMARY AND STRATEGY (要約と対策) 話し合ったことを要約し,戦略を示す. 1.SETTING (準備). 状況を整理する 医師 ・ALS患者に熱心に関わる医師 ・これまでの経験からALS患者への胃ろう造設 はメリットが多いと考えている. ・これまで治療の意思決定は医師主導で行っ てきたことが多かった. ・Aさんは,外来で医師とはほとんど話さないた め,医師は,「Aさんが何を考えているかわから ない.行き詰まりを感じている」と戸惑っていた.. 話す内容にふさわしい場所や時間を用意する. Aさん. 【信頼関係の構築】【時間の確保】. ・表情が固く,医師・看護師に対して,自身の 思いを表出することはなかった.. A氏は医療者との関係が構築できておらず,病棟看護師もA氏 と話すことができていなかった.そのため,CNSは,比較的ゆっ くり時間を持てる食事介助に入り,支援者として認識してもらう ようにした.. ・妻とは談笑している姿が見受けられ関係は 良い. ・胃ろうの知識はない. 【A氏自身から思いを語ってくれるのを待つ】 CNSの支援の方向性. 少しずつ,A氏が自分の思いを語ってくれるようになるまで待っ た.. 病棟看護師 ・神経内科専門病棟であり,ALS患者へ のケアには慣れていた. ・しかし,Aさんは必要な最低限のことしか話さず, 「とっつきにくく,どう関わって良いかわからない」 と戸惑っていた.. 医療者と関係が構築できていないため,まず は,CNSが中心となってAさんとの関係構築を 目指すこととした. 胃ろうやその他の栄養管理についての知識 を持った上で,胃ろう造設についてA氏自身 15 が決定できるよう支援していく.. 【プライバシーの確保】 A氏は個室に入院しており,プライバシーは守られていた.. 3.INVITATION (確認). 2.PERCEPTION (患者・家族の状況把握). 患者が望む情報の範囲・程度・目的を知る. 病状等今の状態の患者の理解,心配を知る 【他患の病気に関する情報】. 【自覚症状】呼吸機能が悪いという自覚はない. ・A氏は,病気の進行は人それぞれであり自分とは違うため,他の人のこと は知りたくない. 【胃ろう造設への疑問】嚥下に問題がないのになぜ胃ろうをしなければならない のか. 【コーピングのスタイル】. 【医師への不信感】 医師には何を言っても無駄,期待していない. ・自分もそうなっていくと思うと悲しくなるだけだから,今まで考えないように していた. 【A氏の希望】バイクが好きで何よりの楽しみであったこと,免許更新まで1年半 あり,それまでに治るという奇跡を信じており,それまでは願掛けの意味でも身 体に傷をつけるようなことをしたくないと考えていたことなどを涙をこらえながら 語った.涙を拭けないA氏にかわって涙を拭き,CNSは,傍で涙がおさまるのを じっと待った.. ・病気のことを考えると涙が出るため,妻に悲しい思いをさせたくないと,病 気のことをあえて考えない日々を送ってきた 【情報を必要とするタイミング】 A氏からCNSに「胃ろうってどんなもの?」と質問があった. 【家族間の話し合いの状況】夫が病気の話をしたがらないため,病気や治療に 関する相談を夫婦間でしたことがなかったこと. 胃ろうについて情報提供するタイミングと捉え,もしよければ,胃ろうについ て詳しく説明させてもらいたいことを伝え,A氏の同意を得た.. 【情報提供のタイミングの判断】. これまでA氏が語った病気や治療への思いを主治医や他スタッフと共有して も良い旨の許可をもらい,チーム間で共有した.. 胃ろうに関する情報提供をA氏の心の準備状況をアセスメントしながら,タイミン グを待つこととした.. 24.
(27) 5.EMPATHY AND EXPLORATION (共感と探 索) 相手の感情に気づき共感的態度で対応する. 4.KNOWLEDGE (情報提供) 患者が理解できる方法で情報を提示する. A氏の決定を尊重すること,治療の選択につい ての思いは揺れ動いて当然であること,疑問 や不安が出たら,その都度,相談していくこと を約束した. ・A氏の反応を確認しながら,胃ろう造設についてパン フレットを使いながらA氏に説明する内容について, 主治医,病棟看護師と相談の上,A氏へ情報提供した. ・胃ろう造設できる時期は呼吸機能との兼ね合いから限ら れていること ・胃ろう以外の栄養・水分補給の方法 ・他患の胃ろう造設後の生活状況 【見たくない情報】胃ろうの実物が写ったパンフレットは見た くない. 6.SUMMARY AND STRATEGY(要約と対 策) 話し合ったことを要約し,戦略を示す. 倫理的な医療従事者とは. • 胃ろう造設後も口から食べることができることがわかり,前向 きな気持ちになったが,今回の入院ではPEGを造設せず,もう 少し後にしたい.(呼吸機能の状態から一カ月以内位には決 定した方が良い). • 「同情(SYMPATHY)」と「共感(EMPATHY)」の違いを理解し, 自分が「独善」に陥っていないかを一歩立ち止まって考え, 自分の判断を他のスタッフと共有する「チームプレー」がで きること. • NPPVは,今後PEG造設を視野に入れるためにも導入する. 板井孝壱郎. • 急変時は挿管しない(TPPVはしない). • 自宅での生活を続ける. 医療従事者に望むこと 「共感」. 同情と共感の違い. (第11回日本難病看護学会学術集会 シンポジウム 笠松美智子さん). 自分の辛さをわかってもらえてると思える人と出会うと,自分 の辛さが減るような・・・心が軽くなるような・・・痛みが和らぐよう な気がする・・・. ≪同情≫ • 「私なら」という視点. ALSに効く薬はないけれど,自分の辛さをわかってくれてると 感じる言葉や表情,雰囲気は薬よりも効きます.人に癒されま す. これは私の経験かもしれませんが,励ましやなぐさめの言葉. • 悪意はなくても「自己中心」 ≪共感≫ • 「この患者さんは,何を望んでいるのか」を常に意識しようとする視点 • どこまでも「患者中心」. は,心から出た言葉かそうでないかはすぐわかってしまいます. 無理なお願いかもしれませんが,仕事に忙殺されないで,そ の人その人に向き合って接して欲しいです.. 25.
(28) 課題 • 支援ニーズの高い,診断時から看護師が継続的に支 援に関わることができるための体制づくり. • 看-看連携の強化 外来-病棟-在宅をうまくつながるための工夫. • 自由に語り合える組織風土づくり. 26. 5.
(29) 【シンポジウム】臨床における意思決定支援の実際と課題. クリティカルケア領域における意思決定支援の課題 多職種医療チームによる意思決定支援における看護師の役割. 神田 直樹(かんだ なおき) 北海道医療大学看護福祉学部看護学科. 救急看護や集中治療看護に代表されるクリティカルケア領域では、患者の意識が不明であることや治 療のために鎮痛を余儀なくされることにより、患者が十分に意思を表現することができない場合がある。 また、緊急性が高く、予後や治療方法の選択肢、治療による結果が不明確な状況で意思決定をせざるを 得ない状況が存在する。このような状況では、代理意思決定が必要な場面が多く、患者の価値観や信念、 背景要因を考えながら最善の方法を検討していく。特に治療方針や延命処置など生命に直結する重大な 選択をする場合は、家族と医療者がともに慎重な検討を重ねていく必要がある。 クリティカルケア領域の看護師は、患者の救命を主眼におく一方で患者の最大限の利益を考えた倫理 的判断を家族とともに検討していく必要があり、その過程の中で様々な倫理的ジレンマを抱えることも ある。倫理的ジレンマの要因は、意思決定に関係する人々の価値観や組織文化、風土、職種による価値 観の相違など複雑であり、その解消は単純におこなえるものではない。このような倫理的ジレンマの積 み重ねは、看護師の不全感を生み、離職やモチベーションの低下の原因となりうる。また、意思決定支 援の質にも影響を及ぼすと考えられる。 近年、終末期ケアのガイドラインが厚生労働省や日本医師会、各学術団体から提言されている。どの ガイドラインにも共通しているのは、患者の意思が不明な場合は、家族と医療チームで方針を検討する とされている。このような背景から、施設によっては、多職種合同のカンファレンスを開催し終末期医 療の方向性や治療方針の方向性について話し合う場を設けて検討するところも出てきている。これまで それぞれの医療職が、それぞれの立場で代理意思決定者を支援していたが、多くの職種が同じ机上で議 論し、チームとして意思決定を支えることが必要になっている。このような取り組みは、前述の価値観 の相違よる倫理的ジレンマの解消につながる可能性も期待される。 難病看護領域でも同様に、複雑な状況の中で代理意思決定をしなければならない場面があり、倫理的 ジレンマを抱えることが多いと推察される。医療チームとして患者の意思決定を支えるために、看護師 は個別の事情に配慮し、関係する人々の価値観を明確にしながら、家族や他職種と合意形成をする場を 調整していく必要がある。個々の医療者あるいは家族の倫理的判断ではなく、チームとして問題をどの ように捉え、判断を下すかを検討する事が重要で、そのためのシステムづくりが必要となると考える。 今回のシンポジウムでは、難病領域とクリティカルケア領域の看護師に共通する、患者・家族の意思 決定を医療チームで支えるための課題と看護師の役割について考える機会としていきたい。. 27.
(30) クリティカルケアの意思決定の特徴. 第21回日本難病看護学会学術集会 シンポジウム 【臨床における意思決定支援の実際と課題】. • クリティカルケア領域が対象とする患者の意思決定の特性. クリティカルケア領域における意思決定支援の課題. 本人が意識障害、あるいは鎮静のため意識が確認. −多職種医療チームによる意思決定支援における看護師の役割−. できない 本人の意思決定が家族や医療者に委ねられやすい. 北海道医療大学看護福祉学部看護学科 神田 直樹. 治療についての意思決定の時間的猶予が少ない 日本救急看護学会「救急医療領域における看護倫理」ガイドラインより一部改変. クリティカルケアにおける意志決定の特徴. クリティカルケアの意思決定の特徴. 価値のバランスが崩れた状態で. • 突然の発症や症状の悪化で、自分(家族)の予後を左 右する重要な治療に関しての選択を限られた時間で迫 られる。. 意思決定が行われる可能性がある. 患者自身の価値に基づいた冷静な判断ができない可能性. 納得して決定したつもりが後から後悔する 自責の念 想像していた結果との乖離 先生におまかせ. 通常のインフォームドコンセントモデルが成り立たない. 医療者中心の医療が存在せざるを得ない. クリティカルケアにおける意志決定の特徴. クリティカルケアにおける意思決定の特徴. クリティカルケアの特性上、救命のた. • 生命の直結するような意思決定の判断が求めら れる。. めには医療者中心の医療が存在せざる. • 本人の意識を明確に確認する事が困難な状況も あり、本人の意思の尊重が難しい場合もある。. 得ない。. • 医療従事者同士の価値対立やジレンマが生じや すい環境にある。. 様々なジレンマが生じる こともある. • 終末期医療の提供が曖昧で、充実した終末期医 療の提供が困難な場合もある。. 患者・家族の権利を最大限尊重し なければならない。. • 多くの場合、代理意思決定が行われる。. 28.
(31) 意思決定を支える クリティカルケア看護師の役割 . 意思決定を左右する価値観 • 呼吸不全で来院された患者さん。静脈血酸素飽和度は 60%、意識ももうろうとしています。呼吸回数も5回/ 分と呼吸停止直前の状態です。患者さんは末期の肺がん で余命数ヶ月と言われているそうです。この患者さんを 助けるためには人工呼吸が必要です。あなたは、どのよ うな判断を下しますか。. 治療などに関する意思決定の場面では、緊急度が高くて も患者家族の自己決定権を尊重する必要がある。 1. 2. 3. 4.. 患者、家族の価値(考え)を知る 価値のバランスの不均衡を是正すること スタッフ(医師)との調整 自己決定した患者・家族を支える. 患者の価値観 人工呼吸を しなければ 助からない. 意思決定を支える看護師に求められる行動は?. 価値観. 医療集団 の価値観. 意思決定. 家族の価値観. 患者の. • S氏. 86歳. 男性. 診断名. 末期の肺がんだけど 最期まで全力で治療したい. 人工呼吸を行う. 価値を共有しながら関係する人々が納得する意思決定. 価値観. チームで行う意思決定. 多職種チームで行う意思決定の実際 • 家族構成. 自然の経過で 様子を見る. • それぞれの立場の価値観のみで、問題を捉えてい ないか? • 関係する人々の価値は明らかになっているか? • 価値の対立軸が生じている問題か? • 関係する人々の価値の明確化、価値の背景、患者 の最善の利益を考えることにつながっているか?. 医療者 個人の価値観. 医師の価値観. 末期の肺がんだから 積極的な治療は望まない. 価値を共有しながらの意思決定支援. 意思決定の中に含まれる価値観 看護師の. 倫理的判断. 多職種チームで行う意思決定の実際. 筋萎縮性側索硬化症. – その後、退院し自宅療養していたが、球麻痺が進行し嚥下困難や. 妻83歳、長女59歳、二女55歳、三女49歳. 呼吸不全が見られ、神経内科病棟に入院となった。. • 経過. – 神経内科病棟で酸素投与し様子を見ていたが、酸素化能の低下が. – 会話中に言葉の出にくさを感じ、自宅近くの病院を受診し、精密検 査目的で検査入院となった。検査の結果、筋委縮性側索硬化症(ALS) と診断された。. 著しく、人工呼吸管理目的に集中治療室に入室となった。 – ICUに入室後、人工呼吸器装着について説明すると本人は、「もう. – 担当医より本人、家族に病名と現在の病状、治療は治癒を目的とし たものではなく、進行を抑える目的で行うこと、病状の進行状況に は個人差があるが、今後徐々に病状は進行していくことが説明され る。. 年だから辛い治療はしないで欲しい、だから、人工呼吸はしたく. – 説明の席で家族は「病状が進行しないようにできる治療はしてほし い。」と希望した。本人は、「年だからそんなに治療はしなくても いい。家族に迷惑がかからないように死にたい」と話していた。. – 家族から話しを聞くと「本人は嫌だと言うが出来るだけ長生きし. ない。呼吸できなくなったそれが自然な流れだから。」とゆっく り話した。 てもらいたい。そのために、必要な治療は積極的にしてもらいた い。」と話した。. – 症状の進行を遅らせるため、リルゾールの内服治療が開始された。. 29.
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