骨格筋電気刺激による仮想力覚提示-押し込み量による刺激量の変化-
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(2) Vol.2015-CG-159 No.3 2015/6/30. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report PC HMD. Virtual object. Display virtual object AR marker. Force feedback. Identify AR marker Virtual hand. Electrical stimulation device Stimulate. Contact detection 図 1 システム全体図. Fig. 1 Overview of the system. 図 2 バーチャルハンド. Fig. 2 Virtual hand. 示する手法を構築した.そして上記システムを用いること で,どのような硬さ感覚を知覚することが可能か検証する ために,硬さ感覚検証実験を行ったのでその結果を示す.. 2. 骨格筋電気刺激を利用した 力覚提示システム 2.1 システム概要 ここでは構築した力覚提示システムの構成について説明 する.図 1 にシステムの概略図を示す.本システムは大き く分けて視覚情報提示部と電気刺激部から構成される.. Electrical stimulation. 視覚情報提示部においては拡張現実の技術を用いて仮想. Pseudo force feedback. 物体を表示を行う.仮想物体の表示には ARToolKit[9] を 使用した.ARToolKit では,事前に設定したマーカーパ ターンをカメラで読み取る事で,カメラと仮想物体との位. 図 3 システム動作風景. 置・姿勢の座標を計測することが可能になり,仮想物体を. Fig. 3 Overview of the using the system. カメラ映像内に重畳することが可能となる.このカメラ映 像をヘッドマウントディスプレイ(以下:HMD) (Oculus. 2.2 バーチャルキャラクターとのインタラクション. 製 Oculus Rift)に表示する.このとき,HMD にカメラ. 2.1 節で説明したシステムの利用してバーチャルキャラ. (Logicool 製 HD Pro Webcam C920)を取り付け,撮影位. クターに触れる感覚を提示する,バーチャルキャラクター. 置と目線を一致させることで,システム使用者が見ている. とのインタラクションシステムを作成した.システム使用. 方向を HMD に表示することが可能である.そして,ユー. 風景を図 3 に示す.このシステムでは 2.1 節で説明したよ. ザーの手と仮想物体との間において接触の検知を行う.接. うに,バーチャルハンドとバーチャルキャラクターとの接. 触を検知するに当たって,ユーザーの手と仮想物体の間で. 触判定を検知することで,電気刺激による力触覚の提示を. 接触を検知することは困難であるため,触れる対象となる. 行う.それに加えて,接触判定を検知した際に,バーチャル. 仮想物体 (バーチャルオブジェクト) とは別にバーチャルハ. キャラクターが腕を振り払うような動作を行ったり,キャ. ンドを表示し操作を行う.図 2 にバーチャルハンドの画像. ラクターの声が再生されるなどの反応をするものとなっ. を示す.. ている.これにより,触れることによってユーザー,バー. 電気刺激部ではバーチャルハンド接触時に電気刺激を. チャルキャラクター両者の間で動作のフィードバックが行. ユーザーに与える.今回は電気刺激装置として H2L 社製. われる,インタラクティブなシステムとして利用すること. の PossessedHand[10] を使用した.PossessedHand は 18ch. ができる.. の電極から最大 42 [V] のパルス列による電気刺激が可能で ある.コンピュータに USB で接続することで動作制御を 行うことができ,シリアル通信により刺激チャンネル,刺. 3. 接触方向および押し込み量を考慮した 刺激位置や強度の決定. 激の大きさ,パルス幅・パルス間隔・刺激回数といった刺. ここまで骨格筋電気刺激を利用した力覚提示システムお. 激パルスの調節が可能である.また PossessdHand の回路. よびそれを利用したバーチャルキャラクターとのインタラ. 内部にはコンデンサが内蔵されており,一度に人体に流れ. クションシステムについて述べた.しかし,現状のシステ. る電流量を制限することで安全性を確保している.. ムでは問題となる点が 2 点あった.ひとつは電気刺激箇. ⓒ 2015 Information Processing Society of Japan. 2.
(3) Vol.2015-CG-159 No.3 2015/6/30. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 所が一箇所のみに限定されていた点である.物体に触れた. Contact object. Contact object. (a) Contact from the front. (b) Contact from the side. 時に腕に加えられるトルクの方向は,そのとき取っている 姿勢や腕の動かす方向によって決まると考えられる.例え ば,正面にある物体に対し,手を正面に突き出すように触 る場合,トルクは肘関節の屈曲する方向に生じ,一方で側 面から触る場合は肘関節の進展する方向に生じると考えら れる.このため,仮想物体に触れる方向や位置に応じて, 電気刺激によって肘関節に与えるトルクの方向は変化させ る必要があり,それには複数箇所に取り付けた電極を選択 的に刺激するシステムが必要である.また,もう一つの問. 図 4 接触方向検出方法. Fig. 4 Overview of the method that detect contact direction. 題点として触れてから押し込む強さに応じた反力の変化を 考慮していない点がある.本来,実物体を押す際には加え る力の強さに応じて反力の大きさは変化するが,現在のシ. Virtual object Contact position (x, y, z). ステムでは押す強さによらず電気刺激強度は一定となって. Virtual object Position after N frame (x , y , z ) Distance. いる.現状のシステムではバーチャルキャラクターにゆっ くり触れたのにも関わらず,大きな反力が返ってくる,と いったように力覚として不自然なものとなってしまう.そ. (a) Contact with virtual object. (b) Push into virtual object. こで以上の問題点を改善するために,接触方向による刺激. 図 5 刺激強度決定方法. 箇所の設定および押し込む強さによる刺激強度の設定につ. Fig. 5 Overview of the method that determine stimulation. いてシステムの改良を行った.. strength. バーチャルハンドを表示している AR マーカー座標の算出. 3.1 接触方向に応じた刺激位置の変更. を行う.このマーカー座標をバーチャルキャラクターに触. この節では,接触方向による刺激箇所の設定手法につい. れた状態での接点座標として記録しておく.次にバーチャ. て説明する.人が物体に触る際,その物体に触る方向とい. ルハンドをバーチャルキャラクターに押し込み,(b) の状. うのは大まかに,前面方向,右側面方向,左側面方向,背面. 態になったとする.このとき検出されたバーチャルハンド. 方向,上面方向,底面方向の 6 方向に分けることができる.. を表示している AR マーカーの座標を N フレーム後のバー. また 6 方向それぞれで,触る際に取りうる腕の姿勢は大ま. チャルハンドの位置として記録しておく.この接点座標,. かに推測することが可能である.例えば前面方向から触る. N フレーム後の座標の 2 点間の距離を毎フレームごとに算. 際には腕を前に突き出すような姿勢を取ることが推測され. 出し,これを押し込み距離と定義する.この押し込み距離. る.そこで,バーチャルキャラクターに接触した際,この. の大きさに応じて刺激強度の決定を行う.刺激強度は以下. 6 方向のいずれから接触したのかを判別し,刺激箇所を選. の式より決定した.V は電圧 [V],c は電圧の初期値 [V],. 択する.今回,6 方向を識別するための手段として,バー. k は電圧の変化率,d は押し込み距離 [mm] を示す.. チャルキャラクターの各方向別々に接触判定を検知する透 明なオブジェクトの取り付けを行った.そして接触したオ. V = c + k ∗ rounddown(d/20). (1). ブジェクトの種類を判別することで電気刺激箇所の選択を. この式は,押し込み距離 20 [mm] につき電圧が k の値だけ. 行った.図 4 に上記手法の概略図を示す.(a) は正面方向. 変化することを表す.k の値を調節することで,刺激電圧. から触る場合,(b) は側面方向から触る場合を示している.. の変化率を調節することが可能である.. 3.2 押し込みに応じた刺激強度の変更. 3.3 システム動作検証. 次に押し込む強さによる刺激強度の設定手法について説. 押し込み距離に応じた刺激強度変化について,正しく動. 明する.今回押し込む強さを定量化するにあたって,バー. 作するのか確認するためにシステムの動作検証を行った.. チャルキャラクターに手を押し込んだ距離を押し込む強さ. 設定した押込み距離と電圧の関係性について表 1 に示す.. として用いた.すなわち,バーチャルキャラクターに押し. 表 1 に示したようシステムを動作させたときの押込み距離. 込んだ距離が大きければ大きいほど,より強い力で押し込. と電圧値の計測を行った.結果を図 6 ,図 7 に示す.図 6. んだと仮定する.図 5 に押し込み量算出手法に関する概略. は横軸が時間,縦軸が押込み距離と電圧値を示しており,. 図を示す.(a) がバーチャルキャラクターに触れた状態,. 図 7 は横軸が押し込み距離,縦軸が電圧を示している.こ. (b) が押し込んだ状態を示している.まず (a) の状態にお. れらの図より,押し込み距離が大きなるにつれて電圧値が. いてバーチャルキャラクターの接触状態を検知したとき,. 増加しており,表 1 で設定した押しこみ距離の区間と電圧. ⓒ 2015 Information Processing Society of Japan. 3.
(4) Vol.2015-CG-159 No.3 2015/6/30. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 表 1 押し込み距離と電圧値の対応. を与える.そして,押し込み動作を何度か繰り返してもら. Table 1 Correspondence of the push distance and voltage value. い,知覚した力感覚を記憶してもらった.電圧変化率は表. Push distance α [mm]. Voltage [V]. 0 < α < 20. 10. ターンは 4 種類設定しており,今回は最も押し込んだとき. 20 ≤ α < 40. 15. 40 ≤ α < 60. (表 1 における押し込み距離 80 ≤ α のとき)の電圧値が. 20. 60 ≤ α < 80. 25. 80 ≤ α. 30. 1 における各電圧値を変えることで変更している.変化パ. 各パターンにおいて 21, 23, 27, 30 [V] となるように調節し ている.今回の実験では単純に電気刺激によって知覚する 次に,力覚提示デバイスによる力感覚提示を行う.力覚提. Push distance Voltage. 100 80 60 40 20 0 0. 35 30 25 20 15 10 5 10 15 20 25 30. 示デバイスを用いて同じように押し込み動作を行ってもら い,物理的なデバイスによる力感覚の提示を行った.図 9. Voltage [V]. Push distance [mm]. 力感覚のみを評価したいため,視覚提示は行っていない.. Time [s]. に使用風景を示す.このとき,デバイスのバネ定数を変更 することで様々な硬さを提示し,記憶した力感覚と最も一 致するバネ定数を選択してもらった.力覚提示デバイスに は Phantom Premium(3D 社製) を利用し,バネ定数の大 きさを 0.05∼0.4 [N/mm] の間を 0.05 [N/mm] づつ変化で きるよう設定し,被験者に自由に選んでもらった.そして, 刺激した電圧値(最も押し込んだときの値)と被験者が選 択したバネ定数との対応をとることで両者の間にどのよう. 図 6 押し込み距離および電圧値の時間変化. な関係性があるか検証した.なお,電気刺激による力感覚. Fig. 6 Push distance and voltage value. が上手く記憶できない場合があるため,両者の感覚提示は. Voltage [V]. 一つのバネ定数を選択するまで,何度行ってもよいことと. 35 30 25 20 15 10. した.. 4.2 実験結果 実験結果を図 10 に示す.横軸が電圧 [V],縦軸が選択し たバネ定数 [N/mm] を示している.図 10 より,電圧の増 加に伴って,選択したバネ定数が大きくなっていることが. 0. 20 40 60. 80 100. Push distance [mm] 図 7. 押し込み距離および電圧値の関係性. Fig. 7 Relationship between the push distance and voltage value. 値が正しく対応していることが分かる.. 4. 硬さ感覚検証実験 4.1 実験方法 3 章で説明したシステムより,電圧の変化率を変更する. 確認できた.Sub. A,Sub. C についてはそれぞれ 30 [V] のとき,27 [V] と 30 [V] のときにおいて,知覚した硬さ感 覚が 0.4 [N/mm] よりも大きいと回答した.また,Sub C については他の被験者よりも大きい値のバネ定数を選択す る傾向があった.このことから,個人差はあるものの,電 圧値で感じる硬さ感覚には相関があることが示唆された.. 5. まとめと今後の課題 本稿では,骨格筋電気刺激を利用した力覚提示システム を構築し,バーチャルキャラクターとのインタラクション システムへの利用を行った.また,システムの改良を行い,. ことで様々な硬さを再現できる.そこで,このシステムを. 接触方向による刺激位置の変更,また押し込み量に応じた. 用いることで硬さ感覚を提示可能か,また刺激電圧の変化. 刺激強度の変更を可能にした.そして,改良したシステム. によって知覚する硬さ感覚がどのように変化するか検証す. を用いてユーザーの知覚する硬さ感覚について検証実験を. る実験を行った.実験の被験者は 22∼23 歳の健常男性 3. 行ったところ,電気刺激の変化率を変えることで,硬い物. 名を対象とした.はじめに電気刺激による力感覚提示を行. 体や柔らかい物体を再現できる可能性が示唆された.. う.被験者には右手を正面方向に突き出すような動き(押. 現状のシステムでは細かい姿勢を考慮した刺激箇所や強. し込み動作)を指示した.図 8 に指示した姿勢を示す.図. 度の変更は行っていない.同じ接触点でも肘や肩の関節角. 8(a) の Push target を接触対象としており,Push target. 度によって関節に生じるトルク方向や大きさは変化すると. に手が触れたところから押し込み距離に応じた電気刺激. 考えられる.そこでリアリティのある力覚を提示するため. ⓒ 2015 Information Processing Society of Japan. 4.
(5) Vol.2015-CG-159 No.3 2015/6/30. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Push target. [2]. [3]. (a) The scene of the using system 図 8. (b) Indication attitude. [4]. 実験風景. Fig. 8 Overview of the experiment. [5]. [6]. [7]. [8]. 図 9. 力覚提示デバイス使用風景. [9]. Fig. 9 The scene of the using haptic device. Sub. A Sub. B Sub. C are answers that the subjects felt the stiffness more than 0.4 [N/mm] ). Spring constant㻌㼇N/mm㼉. ( ,. 0.4. [10]. (1994). Adamovich, S. V., Fluet, G. G., Mathai, A., Qiu, Q., Lewis, J. and Merians, A. S.: Journal of NeuroEngineering and Rehabilitation, Journal of neuroengineering and rehabilitation, Vol. 6, p. 28 (2009). 衛藤春菜,的場やすし,佐藤俊樹,福地健太郎,小池英 樹,梶本裕之:指先への電気刺激により触覚提示を行う タッチディスプレイ技術,Interaction (2012). Bau, O., Poupyrev, I., Israr, A. and Harrison, C.: TeslaTouch: electrovibration for touch surfaces, Proceedings of the 23nd annual ACM symposium on User interface software and technology, ACM, pp. 283–292 (2010). 梶本裕之,川上直樹,前田太郎ほか:皮膚感覚神経を選 択的に刺激する電気触覚ディスプレイ,電子情報通信学 会論文誌 D, Vol. 84, No. 1, pp. 120–128 (2001). 吉元俊輔,黒田嘉宏,井村誠孝,鍵山善之, 大城理:空 間透明型電気触覚ディスプレイの開発と道具操作支援へ の応用,生体医工学,Vol. 49, No. 1, pp. 54–61 (2011). Farbiz, F., Yu, Z. H., Manders, C. and Ahmad, W.: An electrical muscle stimulation haptic feedback for mixed reality tennis game, ACM SIGGRAPH 2007 posters, ACM, p. 140 (2007). Kruijff, E., Schmalstieg, D. and Beckhaus, S.: Using neuromuscular electrical stimulation for pseudo-haptic feedback, Proceedings of the ACM symposium on Virtual reality software and technology, ACM, pp. 316–319 (2006). Kato, H. and Billinghurst, M.: Marker tracking and hmd calibration for a video-based augmented reality conferencing system, Augmented Reality, 1999.(IWAR’99) Proceedings. 2nd IEEE and ACM International Workshop on, IEEE, pp. 85–94 (1999). Tamaki, E., Miyaki, T. and Rekimoto, J.: PossessedHand: techniques for controlling human hands using electrical muscles stimuli, Proceedings of the SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems, ACM, pp. 543–552 (2011).. 0.3 0.2 0.1 0. 20. 22. 24. 26. 28. 30. Voltage [V] 図 10 実験結果. Fig. 10 Result of the experiment. には姿勢を細かく計測し,それに応じた関節トルクの大き さを推定し,そしてその関節トルクを発生するために必要 な刺激強度を決定する必要がある.今後は,Kinect など のモーションキャプチャーを用いてユーザーの姿勢および バーチャルキャラクターとの位置関係を計測を行うシステ ムを導入することを考えている. 参考文献 [1]. Massie, T. H. and Salisbury, J. K.: The phantom haptic interface: A device for probing virtual objects, Proceedings of the ASME winter annual meeting, symposium on haptic interfaces for virtual environment and teleoperator systems, Vol. 55, No. 1, Chicago, IL, pp. 295–300. ⓒ 2015 Information Processing Society of Japan. 5.
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