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Pythium spinosum によるスズランエリカ根腐病(病原追加)

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Academic year: 2021

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Title

Pythium spinosum によるスズランエリカ根腐病(病原追加)(

本文(Fulltext) )

Author(s)

舟久保, 太一; 景山, 幸二

Citation

[関東東山病害虫研究会報] vol.[57] p.[59]-[60]

Issue Date

2010-12-01

Rights

The Kanto-Tosan Plant Protection Society (関東東山病害虫研究

会)

Version

出版社版 (publisher version) postprint

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/43559

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

(2)

59 関東東山病害虫研究会報 第57 集(2010) スズランエリカ(Erica formosa)はスズランのような可 憐な白い花をつける常緑低木の花木である。山梨県ではクリ スマスツリー仕立てと早期開花技術を開発し「クリスマスエ リカ」として新商材を開発し,産地が形成されている。栽培 形態は施設鉢花栽培であり,かん水方法は底面給水やエキス パンドメタル上の頭上かん水が行われている。2006 年 8 月に 激しい根腐れを起こし,株が萎凋・枯死する症状が多発し問 題となった。これについては,Pythium helicoidesによる病 害であることが判明し,スズランエリカ根腐病として報告し た(舟久保ら, 2009)。 同 産 地 で , 2009 年 に 発 生 し た 根 腐 れ 症 状 か ら ,P. helicoidesとは異なる菌が多数分離される場合があった。こ こでは,その病原性の確認と菌の同定を行ったので報告する。 材料および方法 1.発生状況 発生状況について観察調査した。根腐病の発生地域である 北巨摩地域の全施設について,栽培期間の4 月〜11 月にか けて調査を行った。 2.菌の分離 常法により糸状菌の分離を行った。分離培地は素寒天培地 を用い,単菌糸分離を行い,PDA 斜面培地に移植した。 3.病原性の確認 滅菌土に植え付けた健全なスズランエリカ苗に分離菌を 接種した。接種源は, あらかじめCMA 平板培地で培養して おいた分離菌ERRSAM-1 株の菌叢を 100mlの滅菌水に 1 シャーレ(直径9cm)分加えホモジナイズして準備した。作 成した菌体懸濁液を 1 ポット1 シャーレ分かん注した。その 後,25℃の人工気象室内(L:12h,D:12h)で管理した。発 症後,罹病部から菌の再分離を行った。 4.分離菌の同定 分離菌ERRSAM-1 株について,芝草葉培養(Waterhouse, 1967)と CMA 平板培地を用いて形態的特徴について調査し た。 形態と合わせ,rDNA-ITS 領域の塩基配列を決定し,DDBJ データベース上の菌株と相同性比較を行った。 また生育温度と適温について,あらかじめ培養しておいた 分離菌を直径 4mm のコルクボーラで打ち抜き,CMA 平板 培地に置き,5,10,15,20,25,30,35,40℃で 24 時間 培養し,菌叢半径を測定した。 結果および考察 1.発生状況 発生は 4 月〜11 月にかけて確認された。8月を除く月で はすべて本菌によるものであり,8月には同一圃場で一部P. helicoidesによるものも見られたが多くは本菌によるもので あった。病勢については,P. helicoidesが激しい根腐れを起 こし, 進展も早いのに対し,本菌によるものは緩慢であった。 2.菌の分離 発症部位から P. helicoides とは異なる同一の卵菌類が高 頻度で分離された。なお,2009 年にはP. helicoidesは8月 に一部(分離率10%)分離されたのみであった。 3.病原性の確認 接種30 日後に株の萎凋が見られた。根は褐色に腐敗して いた。発症部からは接種菌と同一の菌が再分離されたことか ら,本菌による病害であると考えられた。 4.分離菌の同定 分離菌 の形態学 的特徴 は,球 形〜レ モン型の hyphal swelling を形成し,造卵器は頂生または間生で,亜球形,表 面に指状の突起を多数もつ。直径は 15.6〜27.6μm。造精器

Pythium spinosum

によるスズランエリカ根腐病(病原追加)

舟久保太一・景山幸二

* (山梨県総合農業技術センター・*岐阜大学流域圏科学研究センター)

Root Rot of

Erica formosa

Caused by

Pythium spinosum

Sawada

Taichi F

UNAKUBO2

and Koji K

AGEYAMA

摘 要

スズランエリカ根腐病はPythium helicoides Drechsler による病害であるが,それとは異なる菌が分離され る場合があった。そこで,本菌による接種試験を行ったところ,病原性が確認され,同定の結果P.spinosum Sawada であることが判明した。本菌はスズランエリカ根腐病の病原としては未記載であるため,スズランエ リカ根腐病の病原として追加することを提案する。

1 本報の要旨は第57 回関東東山病害虫研究会(2010 年 2 月 26 日,静岡県静岡市)において発表した。

2 Address:Yamanashi Prefectual Agritechnology Center,1100 Simoimai,Kai-shi,Yamanashi 400-0105,Japan 2010 年5月 13 日受領

(3)

60 Annual Report of the Kanto-Tosan Plant Protection Society, No. 57, 2010 は棍棒状,同菌糸性まれに異菌糸性,1 つの造卵器に 1 個側 着する。卵胞子は主に充満で,直径15.6〜26.4μm であった。 菌糸生育は 5℃〜35℃で認められ,適温は 25〜30℃であっ た(第1 表,第 1 図)。 rDNA-ITS 領域の塩基配列の相同性検索の結果,Pythium spinosum と 99%以上の相同性があった。

以上の結果から,分離菌はPythium spinosum Sawada と同定した。 スズランエリカ根腐病ではP.spinosum は未記載である ため,病原の追加を提案する。 2 種の病原菌が引き起こすスズランエリカ根腐病について は,観察の結果次のような違いが見られるようである。P. helicoides による根腐病の発生は,標高 800〜900mの産地 で8〜9 月にのみ確認されている。ただし,激しい根腐れを 起こすとともに,病勢進展も早く大きな被害となる。それに 対しP.spinosumによる根腐病は4 月〜11 月の長期間にわ たり発生が見られるが,病勢の進展は緩やかである。ただし, 発生に気づかず,放置すると秋に多発するケースも認められ た。 本病を初めて確認した2006 年はすべてP. helicoidesによ るものであったが,2009 年はP. spinosumによる根腐れが 主であった。このことは,その年の気象条件等により菌の優 占種が変化する可能性を示唆している。 今後,これらの菌の発生生態や栽培管理環境等を多角的に とらえ,防除対策を構築する必要がある。 引 用 文 献 舟久保太一ら(2009)日植病報 75 : 186.

van der Plaats-Niterink, A. J. (1981) Stud. Mycol. 21 : 1-241.

Waterhouse G. M. (1967) Mycol. Pap. 109 : 1-15.

第1表 病原菌の形態的特徴と生育温度

分離菌 ERRSAM-1 Pythium spinosuma)

遊走子 未形成 未形成 hyphal swelling 頂生または間生,球形~レモン型平滑,直径 19.2~28.8μm 頂生または間生,球形~レモン型平滑,直径 33μm 以内 造卵器 頂生または間生,亜球形,直径 15.6~27.6μm 表面に指状の突起を多数もつ,突起の長さ 3.6~14.4μm 頂生または間生,亜球形,直径 14~21μm 表面に指状の突起を多数もつ,突起の長さ 3.5~8.5μm 造精器 造卵器に 1 個側着,棍棒状,同菌糸性まれに異菌糸性 造卵器に 1 個側着,棍棒状,同菌糸性まれに異菌糸性 卵胞子 主に充満(まれに非充満),直径 15.6~26.4μm 雌雄同株性 主に充満(まれに非充満),直径 13~20μm,雌雄同株性 生育温度 5~35℃(適温 25~30℃) 5~35℃(適温 25~30℃) a)Plaats-Niterink (1981) 第1図 スズランエリカの病徴および病原菌

A:根の褐変腐敗(右) B:hyphal swelling C:造卵器,造精器,卵胞子 D:指状の突起を多数もつ造卵器

A

B

C

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