産業素材
を直接台金にろう付けしているもの(c)があり、BNC100 は(b)、BNC160 は(c)の構造を有している。 BNC100 と BNC160 及び従来材種の材種仕様を表 1 に、 物理特性を表 2 に示す。BNC150(コーティド)と BNX10 (ノンコート)は高速加工用の従来材種であり、BNC80 (コーティド)は高精度加工用の従来材種である。 高 速 加 工 用 材 種 で あ る B N C 1 0 0 は 、 c B N 含 有 率 が 約 40vol %で、cBN 平均粒径が 1μm の微粒組織を特長とする 新開発の専用母材に TiAlN と TiCN を主成分とする特殊セ ラミックをコーティングすることにより、特に切削速度 200 ∼ 300m/min の高速加工領域において優れた耐摩耗性を 発揮する。1.
緒 言
立方晶窒化硼素(cBN)はダイヤモンドに次ぐ高硬度・ 高熱伝導率を示し、鉄系金属との反応性が低いという特徴 を有する。cBN 粉末を特殊セラミック結合材が焼結させた cBN 焼結体工具「スミボロン®」は従来研削加工で行なわ れていた焼入鋼などの高硬度材の切削化を可能とした工具 である(1)。最近では、地球環境問題に対する意識の高まり を背景に、消費電力の低減が可能な高速切削加工や、従来 研削加工が主体であった高精度加工用途における、研削ス ラッジなどの産業廃棄物の削減を目的とした切削化のニー ズが高まっている。 このようなニーズに対応するべく、切削速度 300m/min の高速加工においても優れた耐摩耗性を発揮し、長寿命加 工を可能とする焼入鋼高速加工用材種「BNC100 」と、面 粗度規格が Rz = 1.6μm、かつ寸法精度が IT6 級の加工をも 可能とする焼入鋼高精度加工用材種「BNC160」を開発し た。以下にその特徴と性能について述べる。2.
BNC100、BNC160 の特長と形状
2 − 1 BNC100、BNC160 の構造と材種の特長 図 1 にスミボロン®のチップの外観とその刃先断面を示す。ス ミボロン®は cBN 焼結体を超硬台金にろう付けすることに より形成され、刃先稜線部にはチャンファーを有している。 最近ではこの cBN 焼結体チップにセラミックをコーティン グし、高機能化したチップが主流となっており(2)、(3)、そ の構造は図 1 に示すように、底面が超硬で構成されている cBN 焼結体をろう付けしているもの(b)と、cBN 焼結体Development of SUMIBORON® BNC100 for High-Speed Cutting and SUMIBORON®BNC160 for High-Precision
Cutting of Hardened Steel ─ by Minori Teramoto, Katsumi Okamura, Satoru Kukino and Tomohiro Fukaya ─ Cubic boron nitride (cBN) shows high levels of hardness and thermal conductivity second only to diamond and has a low affinity to ferrous metals. Cutting by polycrystalline cBN(PCBN) tool “SUMIBORON®”, which is produced by
binding cBN particles with a special ceramic binder, has many advantages over conventional grinding process. Recently, the increasing global awareness of environmental issues has induced demands for speed and high-precision cutting. In order to satisfy such demands, new PCBN grades BNC100 and BNC160 have been developed. High-speed cutting at 250 m/min or higher and high-precision cutting with a surface roughness (Rz) of 1.6 µm and the tolerance class IT6 can be achieved using BNC100 and BNC160. The features and cutting performances of these new grades are described in this report.
焼入鋼高速加工用スミボロン
®
BNC100 および
高精度加工用スミボロン
®
BNC160 の開発
寺 本 三 記
*・岡 村 克 己・久木野 暁
深 谷 朋 弘
チャンファー cBN焼結体 超硬バックメタル 超硬台金 工具刃先 a) チャンファー セラミックコーティング cBN焼結体 超硬バックメタル 超硬台金 b) チャンファー セラミックコーティング cBN焼結体 超硬台金 c) 工具刃先 スミボロン®(ノンコート) スミボロン®(コーティド) 外 観 刃 先 断 面 図 図 1 スミボロン®の外観と工具刃先断面図一方、高精度加工用材種である BNC160 は、平均粒径 3 μ m の cBN 粒子を約 60vol %含有する新開発の専用母材 に、BNC100 と同様の TiAlN と TiCN からなる複合セラ ミ ッ ク コ ー テ ィ ン グ を 適 用 し て い る 。 こ れ に よ り 、 BNC160 は BNC80、及び BNC100 を凌ぐ耐欠損性と、中∼ 高速加工領域において BNC100 に匹敵する耐摩耗性を両立 させている。 2 − 2 BNC100、BNC160 の刃先仕様 cBN 焼結 体工具は、一般的に高硬度の被削材を切削する際の欠損を 防ぐ為に、チャンファーと呼ばれる刃先稜線部を面取りし た刃先処理を有する。表 3 に示す「標準型」「LS 型」「HS 型」の複数の刃先仕様を BNC100、及び BNC160 に適用す ることにより、多種多様な用途に対応でき、新材種の切削 性能を最大限に発揮することが可能となる。LS 型は切れ味 を重視した刃先処理で、チャンファー角度を小さくし、切 れ刃表面を平滑にする特殊処理を施したことを特長とす る。HS 型はチャンファー角度を大きくすることにより、 耐欠損性を改善した刃先処理である。
3.
BNC100、BNC160 の切削性能
3 − 1 高速加工用材種 BNC100 の切削性能 (1)耐摩耗性評価 BNC100 と、比較のために BNC150 と BNX10 を用いて、 耐摩耗性を評価した。浸炭焼入鋼 SCM415(HRC58-62)を 被削材とし、切削速度 250m/min の高速条件での外径切削 を実施した。また、刃先処理は全てチャンファー角度が 25 °の標準型に統一した。逃げ面摩耗量 VB の測定結果を図 2 に示す。 BNC100 の逃げ面摩耗量は BNC150 と比較して 40 %低減 されている。これは、BNC100 の焼結体が、鉄との親和性 の低い TiN を主成分とする結合材の割合が高いことに加 え、さらに耐摩耗性に優れる新開発の特殊セラミックコー ティングを有している効果による。 また、BNC100 の欠損寿命は BNC150 と比較して 30 %以 上、BNX10 と比較して 50 %以上改善されている。これは、 表 2 BNC100,BNC160 の物理特性 表 1 BNC100、BNC160 の材種仕様 BNX10 27 − 31 0.80 − 0.90 1.00 − 1.10 1.05 − 1.15 抗折力(TRS)[GPa] 材 種 硬 度[GPa] BNC100 29 − 32 BNC150 29 − 32 BNC160 31 − 33 1.10 − 1.20 BNC80 31 − 33 1.00 − 1.10 表 3 BNC100,BNC160 の刃先仕様 チャンファー幅W 丸ホーニング 工具刃先 チャンファー角度 α° 工具型番:4NC-CNGA120408 刃先処理: 被削材:SCM415(HRC58-62)丸棒切削条件:Vc =250m/min, ap =0.1mm, f =0.1mm/rev, dry
BNC100 BNC150 BNX10 標準型 標準型 標準型 25° 25° 25° 0.12mm 0.12mm 0.12mm あり あり なし チャンファー幅 チャンファー角度 材 種 刃先処理 丸ホーニング 5 0 10 150 100 50 逃げ面摩耗量VB[μm] 切削距離[km] BNC150標準型 BNC100 標準型 BNX10標準型 図 2.BNC100 高速加工の耐摩耗性評価 BNC150 TiCN TiAIN + TiCN 膜 種 セラミックコーティング(PVD) 45 − 50 40 − 45 cBN 含有率[vol %] cBN 焼結体 用 途 材 種 2 2 膜 厚[μm] 高速加工用 BNC100 2 1 cBN 粒径[μm] TiN TiN 結合材 BNX10 − − 40 − 45 3 TiCN 高精度加工用 BNC160 TiAIN + TiCN 2 60 − 65 3 TiN BNC80 TiN 2 60 − 65 3 TiN BNC160 標準型 25 15 25 チャンファー角度[°] 材 種 刃先処理 BNC100 標準型 LS 型 LS 型 20 HS 型 30 0.17 0.10 0.12 0.17 0.12 チャンファー幅[mm] あり あり あり あり あり 丸ホーニング
BNC100 が微粒 cBN で構成される微細組織を有することに 加えて、粒子間結合力の高い新結合材の適用により、焼結 体強度が向上していることによる。 (2)刃先処理評価 標準型と LS 型の BNC100 を用いて、連続切削を行い、 切削抵抗と耐摩耗性評価した。切削抵抗を図 3 に、逃げ面 摩耗量 VB の測定結果を図 4 に示す。LS 型の切削抵抗は、 標準型と比較して 30 %低減され、また、LS 型の逃げ面摩 耗量も、標準型と比較して 20 %低減されている。これは LS 型の低抵抗特性により、切削時の刃先への負荷が低減さ れたためと推定している。LS 型の適用により安定した寸法 精度を維持しながらの長寿命化が可能となる。 3 − 2 高精度加工用材種 BNC160 の切削性能 (1)刃先処理と切削抵抗 図 5 に BNC160 の各種刃先処理の切削抵抗を測定した結 果を示す。LS 型はチャンファー角が 20 °と切れ味に優れ、 切削抵抗が最も小さい。HS 型はチャンファーが 30 °と大き く、強度重視の刃先処理である。標準型はチャンファー角 が 25 °で、最も汎用性に優れる。 (2)高精度加工評価 このうち、BNC160 の LS 型は高精度加工で最も優れた切 削性能を発揮する。図 6 に BNC160 の LS 型と標準型、及 び BNC80 の耐摩耗性と面粗度を比較した結果を示す。浸炭 焼入鋼 SCM415(HRC58-62)を被削材とし、切削速度 200m/min での外径切削を実施した。LS 型の適用により、 BNC80 対比で、逃げ面摩耗量が 30 %低減され、面粗度の 安定性も同等以上である。これは、新開発の特殊セラミッ クコーティングが、BNC80 に適用されている TiN からなる 特殊コーティングと同様に、前切れ刃境界部の摩耗を平滑 に進行させ、面粗度を改善させる特長を有することに加え、 耐摩耗性において TiN 特殊コーティングより優れることに よる。 工具型番:3NC-TPGW110304 刃先処理: 被削材:SCM420(HRC55-57)
切削条件:Vc =150m/min, ap =0.08mm, f =0.07mm/rev, dry
LS型 標準型 15° 25° 0.17mm 0.12mm あり あり チャンファー幅 チャンファー角度 型 番 丸ホーニング LS型 標準型 切削抵抗(主分力 ) [N] 50 40 30 20 10 0 図 3 BNC100 刃先仕様と切削抵抗 工具型番:3NC-TPGW110304 刃先処理: 被削材:SCM420(HRC58-62)
切削条件:Vc =150m/min, ap =0.08mm, f =0.07mm/rev, dry
LS型 標準型 HS型 20° 25° 30° 0.10mm 0.12mm 0.17mm あり あり あり チャンファー幅 チャンファー角度 型 番 丸ホーニング LS型 標準型 HS型 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 切削抵抗(主分力 ) [N] 図 5 BNC160 刃先仕様と切削抵抗 工具型番:4NC-CNGA120408 刃先処理: 被削材:SCM415(HRC60-62)
切削条件:Vc =200m/min, ap =0.1mm, f =0.1mm/rev, dry
LS型 標準型 15° 25° 0.17mm 0.12mm あり あり チャンファー幅 チャンファー角度 型 番 丸ホーニング 2 0 4 6 8 10 0.25 0.20 0.15 0.10 0.05 逃げ面摩耗量VB[μm] 切削距離[km] BNC100 標準型 BNC100 LS型 図 4 BNC100 刃先仕様と逃げ面摩耗量
図 7 に BNC160 の LS 型と BNC80 で加工精度を評価した 結果を示す。BNC160 は優れた耐摩耗性により、刃先の後 退量が小さく、切削抵抗も低いために被削材の加工径変化 を抑制できる。IT6 級の寸法公差の加工においても、寸法 補正の回数が少なく、安定した高精度加工が可能である。 BNC160 の標準型は図 6 の結果から分かるように、良好 な面粗度を安定して達成でき、耐摩耗性も優れている。標 準型は刃先強度が LS 型よりも高いので、要求面粗度が Rz = 3.2μm 程度で加工能率も要求される一般的な仕上げ 加工において特に優れた性能を発揮する。 BNC160 の HS 型は高能率加工で最も優れた性能を発揮す る。図 8 に BNC160 の HS 型、標準型と BNC80 の高能率加 工における耐摩耗性、耐欠損性を評価した結果を示す。HS 型は BNC80 と比較して逃げ面摩耗量を 30 %低減し、欠損 寿命を 80 %改善できた。さらに、BNC160 の標準型と比較 しても、欠損寿命を 50 %改善できる。HS 型は刃先強度が 標準型よりもさらに改善されているので、浸炭層除去加工 などの高送りや大切り込みの高能率加工においても優れた 性能を発揮する。 工具型番:4NC-CNGA120408 刃先処理: 被削材:SCM415(HRC58-62)丸棒
切削条件:Vc =200m/min, ap =0.1mm, f =0.1mm/rev, dry
チャンファー幅 チャンファー角度 材 質 標準型 LS型 標準型 刃先処理 丸ホーニング 25° 20° 20° 0.12mm 0.10mm 0.10mm あり あり あり BNC160 BNC160 BNC80 2 0 4 6 8 150 100 50 逃げ面摩耗量VB[μm] 切削距離[km] BNC160 標準型 BNC80 標準型 BNC160 LS型 0 1 2 3 3.0 2.0 1.0 面粗度Rz[μm] 切削距離[km] BNC80 標準型 BNC160標準 BNC160 LS型 i)逃げ面 摩耗量 ii)面粗度 図 6 BNC160 の耐摩耗性評価と仕上げ面粗度評価 LS型 標準型 チャンファー幅 チャンファー角度 材 質 刃先処理 丸ホーニング 工具型番:4NC-CNGA120408 刃先処理: 被削材:SCM415(HRC58-62)Φ40丸棒
切削条件:Vc =200m/min, ap =0.1mm, f =0.1mm/rev, dry
BNC160 BNC80 20° 20° 0.10mm 0.10mm あり あり 補正 補正 補正 補正 -20 -10 0 +10 +20 加工径変化量(μm) 径公差 16μm 0 1 2 3 4 5 切削長(km) BNC160 LS型 寸法変化推移 -20 -10 0 +10 +20 加工径変化量(μm) 径公差 16μm 0 1 2 3 4 5 切削長(km) BNC80標準型 寸法変化推移 図 7 BNC160 刃先仕様と加工径変化量 工具型番:4NC-CNGA120408 刃先処理: 被削材:SCM415(HRC58-62)丸棒
切削条件:Vc =150m/min, ap =0.15mm, f =0.25mm/rev, dry
25° 30° 20° 0.12mm 0.17mm 0.10mm あり あり あり チャンファー幅 チャンファー角度 材 質 BNC160 BNC160 BNC80 標準 HS型 標準型 刃先処理 丸ホーニング 0 1 2 3 4 5 200 150 100 50 逃げ面摩耗量VB[μm] 切削距離[km] BNC160 HS型 BNC80 標準型 BNC160 標準型 図 8 高能率加工における刃先仕様の影響
焼入鋼の連続、断続、及び高精度加工におけるスミボロ ン®の推奨領域を図 9 に示す。BNC100 は切削速度 120 ∼ 300m/min、送り 0.03 ∼ 0.20mm、切り込み 0.03 ∼ 0.30mm で使用可能であり、高速領域における仕上げ切削において 優 れ た 性 能 を 示 す 。 ま た 、 B N C 1 6 0 は 切 削 速 度 1 2 0 ∼ 250m/min、送り 0.03 ∼ 0.20mm、切り込み 0.03 ∼ 0.35mm で使用可能であり、LS 型は中速領域における寸法や面粗度 の精度が必要である仕上げ切削において優れた性能を示 し、汎用性の高い標準型や HS 型の選定により切り込みや 送りが大きく、高負荷の加工にも適用可能である。切削液 に関して、連続切削では乾式、湿式共に適用可能で、断続 切削では乾式条件で、切削性能が向上する。
6.
使用実例
図 1 0 に B N C 1 0 0 の 使 用 実 例 を 示 す 。 N o . 1 は V c = 250m/min の高速切削条件によるプラネタリギア部品の内径 加工の実例である。BNC100 標準型は従来材種と比較して 欠損寿命を 1.4 倍に向上させることができた。No.2 はシャ フト部品の外径加工の実例である。セラミックス工具に対 して、加工の高速化が可能となり、生産能率を 1.5 倍に向 上しただけでなく、10 倍の工具寿命を達成した。N0.3 は寸5.
適用領域
0.1 0.2 0.3 0.35 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 300 220 170 120 50 0 送 り(mm/rev.) 切り込み(mm) 切削速度 V(m/mn) BNC100 BNC160 BNC200 300 200 100 切削速度 V (m/mn) 断続の強さ 断続部分の 割合 弱断続 ∼25% 50% 75% 100% 油穴数個程度 ボルト穴端面等 ギヤ端面等 スプライン軸外径 中断続 強断続 ワ ー ク 例 BNC160 BNC200 BNC300 BNC100 6.3 3.2 1.6 従来cBN BNC160 LS型 i)連続加工に おける 推奨領域 ii)断続加工における推奨領域 iii)高精度加工に おける 推奨領域 面粗度 Rz(μm) (良好) 図 9 スミボロン®使用適用領域 1.4倍寿命達成 切削距離43km BNC100 標準型 他社コーティドcBN 0 加工数(個) 100 140 200 φ90 No.1 焼入鋼内径連続加工 ・プラネタリギア (SCM420H, 浸炭材HRC61-65) ・Vc=250m/min. ・f=0.05mm/rev. ・ap=0.05mm ・Wet ・4NC-DNGA150412 1.5倍能率,10倍寿命達成 切削距離15km (Vc=100m/min) BNC100 標準型 セラミックス 0 加工数(個) 100 500 1000 φ25 No.2 焼入鋼外径連続加工 ・シャフト (SCr42OH, 浸炭材HRC58-62) ・Vc=150m/min. ・f=0.1mm/rev. ・ap=0.15mm ・Wet ・4NC-CNGA120408 図 10 BNC100 の使用実例(1)法公差 13μm のシャフト部品の外周加工の実例である。要 求精度に対し、BNC100 の LS 型を適用することで、安定し た加工を可能とし、BNC100 標準型の 1.5 倍寿命を達成した。 No.4 は面粗度規格が Rz = 1.6μm のピニオンギア部品の外 径端面加工である。面粗度が安定しにくい従来材種に対し、 BNC100 のワイパー形状の工具を適用することで、高能率 で安定加工が可能となり、BNC150 の 1.25 倍の寿命を達成 した。 図 11 に BNC160 の使用実例を示す。No.5 は Rz = 1.6 μm の面粗度と IT6 級の寸法公差規格のインプットシャフ ト部品の外径加工の実例である。BNC160 標準型は従来材 種と比較して 1.5 倍の寿命を達成した。No.6 は面粗度規格 が Rz = 2.0μm のサンギア部品の内径加工の実例である。 従来材種ではビビリが発生したのに対し、BNC160 標準 型では優れた耐摩耗性により、2 倍の寿命を達成できた。 No.7 は面粗度規格が Rz = 1.6μm のシャフト部品端面加工 である。BNC160 標準型は BNC80 標準型と比較して耐摩耗 性が優れることで長寿命化できたが、更に、BNC160 の LS 型により良好な面粗度を安定して達成し、1.5 倍の寿命を 達成した。No.8 は送り量 0.13mm/ rev の高能率加工と、面 粗度規格が Rz=1.6μm の混合であるシャフト部品の外径加 工である。BNC80 標準型では高能率加工の際に欠損が発生 していたことに対し、BNC160 の標準型では 1.3 倍寿命を達 成できたが、微小チッピングが発生した。BNC160 の HS 型 では正常摩耗であり、BNC80 の 2 倍寿命を達成した。
7.
結 言
焼入鋼高速加工用材種の BNC100 は Vc = 250m/min 以上 の高速加工で従来工具の 1.5 倍以上の寿命を発揮する。ま た、焼入鋼高精度加工用材種の BNC160 は面粗度規格 Rz = 1.6μm、かつ IT6 級の高精度加工を可能とする。これらに より消費電力の低減と、研削の切削化による環境対応が進 み、さらに生産コストの低減に貢献できるものと考える。 高精度加工1.5倍寿命達成 切削距離14km BNC100 LS型 BNC100 標準型 BNC150 標準型 0 加工数(個) 50 100 150 寸法公差 13μm φ30 No.3 焼入鋼外径連続高精度加工 ・シャフト部品 (浸炭材HRC60-62) ・Vc=200m/min. ・f=0.05mm/rev. ・d=0.1mm ・Dry ・4NC-CNGA120408 仕上げ加工1.25倍寿命達成 切削距離9.4km BNC100 標準型 BNC150標準型 0 加工数(個) 250 400 500 面粗度 Rz=1.6μm φ45 φ90 ・ピニオンギア (SCM420H, 浸炭材HRC61-63) ・Vc=180m/min. ・f=0.12mm/rev. ・ap=0.2mm ・Dry ・4NC-CNGA120408W No.4 焼入鋼外径端面連続仕上げ加工 図 10 BNC100 の使用実例(2) 高精度仕上げ加工1.5倍寿命達成 切削距離8.8km BNC160 標準型 他社コーティドcBN 0 加工数(個) 50 100 150 公差 13μm 面粗度 Rz=1.6μm φ40 No.5 焼入鋼外径連続高精度加工 ・インプットシャフト (SCr415, 浸炭材HRC58-60) ・Vc=180m/min. ・f=0.05mm/rev. ・ap=0.15mm ・Dry ・4NC-DNGA150408 仕上げ加工2倍寿命達成 切削距離9.4km ビビリ発生 BNC160 標準型 他社cBN 0 加工数(個) 100 200 φ50 面粗度 Rz=2.0μm No.6 焼入鋼内径連続加工 ・シャフト部品 (SCr415, 浸炭材HRC61-65) ・Vc=170m/min. ・f=0.1mm/rev. ・ap=0.2mm ・Dry ・4NC-CNGA120408W 図 11 BNC160 の使用実例(1)参 考 文 献 (1)原他、「スミボロン BN200 の性能」、住友電気、第 113 号、161 (1978) (2)原田他、「コーティド cBN 焼結体工具の開発」、SEI テクニカルレ ビュー、第 158 号、75(2001) (3)岡村他、「焼入鋼断続加工用スミボロン® BN350、BNC300 の開 発」、SEI テクニカルレビュー、第 165 号、87(2004) 執 筆 者 ---寺 本 三 記*:住友電工ハードメタル㈱ ダイヤ技術開発部 岡 村 克 己 :住友電工ハードメタル㈱ ダイヤ技術開発部 久 木 野 暁 :住友電工ハードメタル㈱ ダイヤ技術開発部 主席 深 谷 朋 弘 :住友電工ハードメタル㈱ ダイヤ技術開発部 グループ長 ---*主執筆者 仕上げ加工1.5倍寿命達成 切削距離7.5km BNC160 LS型 BNC160 標準型 BNC80 標準型 0 加工数(個) 50 100 150 面粗度 Rz=1.6μm φ50 No.7 焼入鋼端面仕上げ加工 ・シャフト部品 (浸炭材HRC58-62) ・Vc=200m/min. ・f=0.05mm/rev. ・d=0.1mm ・Dry ・4NC-CNGA120408 高能率加工2倍寿命達成 切削距離16.6km BNC160 HS型 BNC160 標準型 BNC80 標準型 0 加工数(個) 100 200 Rz6.3μm f=0.13 Rz1.6μm f=0.05 φ70 8 23 35 No.8 焼入鋼外径加工 ・シャフト部品 (SCr420H、HRC58-63) ・Vc=200m/min. ・f=0.05,0.13mm/rev. ・d=0.1,0.2mm ・Dry ・4NC-CNGA120408 図 11 BNC160 の使用実例(2)