190 (78) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
フク イ タカ ミ尚見(昭和2
医学博土 留第892号 昭和63年2月19日 学位規則第5条第2項該当(博士の学位論文提出者) 置換弁心内膜炎における血栓塞栓症と抗凝血薬療法 (主査)教授 広沢弘七郎 (副査)教授 丸山 勝一,教授 肥田野 信論 文 内 容 の 要 旨
目的 置換弁心内膜炎(PVE)は人工弁置換術後の合併症 の中で,最も重要なものの一つである.一般に人工弁 置換術を行なった患者は,血栓塞栓症(TE)防止のた め抗凝血薬療法を受けており,PVEの患者もその例外 ではない,それにもかかわらず,PVEにおいてはTE の合併が多いとされ,一方出血の合併も多いため,抗 凝血薬療法を継続すべきかどうかについては,未だ結 論がでていない現状である. 今回当施設のPVE症例について,TEあるいは出血 の合併の臨床的意義と,抗凝血薬療法の功罪について 検討し,報告した. 対象および方法 昭和39年1月から昭和60年12月までに東京女子医科 大学日本心臓血圧研究所において,人工弁置換術を行 なった1,939例のうちPVEと診断された29例(男性14 例,女性15例,年齢4~62歳,平均34.7歳)を対象とし, 原疾患,弁置換部位,心電図所見,弁置換からPVE発 症までの期間,TE,出血の合併の有無と転帰について 調べた,TE,出血合併例については, PVE発症から TEあるいは出血までの期間,その際の抗凝血薬療法 の有無,凝」日傭についても調べた. 結果 弁置換術からPVE発症までの期間は2日から6年6 ヵ月(平均584日)であった. 29例のPVEのうち12例(41.4%)にTEの合併がみ られた,TEの部位は,脳10例(14回),腎6例(6回), 肺3例(3回),四肢2例(2回),脾2例(2回),腸間膜2 例(2回)であった.反復性に多臓器にTEをおこした 例が7例認められた.TEが死因となった例は7例で あったが,最終的にはTE合併例全例が死亡した, PVE 29例のうち10例(34.5%)に出血症状の合併が みられた.出血部位は脳5例(5回),消化管4例(4回), 手術の術創3例(3回),気道1例(1回),歯肉1例(1回) であった.出血合併10例中9例が死亡したが,うち出血 が死因となったのは6例であった。TEと出血を合併し たものは4例で,すべて死亡した. PVE 29例のうち27例が抗凝血薬療法を受けていた。 TE発症時のトロソボテスト(TT)値は31.5%以下で平均13.9%であった.出血合併時のTT値は
7.5~30.5%(平均18.6%)であった. 抗凝血薬としては,warfarinの経口投与が27例,う ち1例で一時的にheparinの経静脈的投与が行われた. 残りの2例では抗血栓療法は行われなかった. 考察 当施設では,TT値で10~25%をコントロールの目 標として抗凝血薬療法を行なっている.PVEでは凝血 能を良好なコントロール下に保っていても,TEを合 併する例,あるいは出血を合併する例が多く,いずれ の場合も,PVEの予後に少からぬ影響を与え,または 致命的となることがわかった.PVE発症例の抗凝血薬 療法については,その有用性,凝血能のコントロール と治療域の問題等,今後も検討を要すると思われた。 結語 PVEでは抗凝血薬療法施行例でも, TEおよび出血 の合併が多かった.PVEにおける抗凝血薬療法につい 854一191 ては,解決すべき問題が多くのこされている.