Title
Process of progression of coronary artery lesions from mild or
moderate stenosis to moderate or severe stenosis. A study based
on four serial coronary arteriograms per year( 内容の要旨
(Summary) )
Author(s)
横家, 弘一
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第1229号
Issue Date
2000-01-19
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15042
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氏 名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 横 家 弘 一(愛知県) 博 士(医学) 乙第1229 号 平成12 年1月19 日 学位規則第4条第2項該当
Process of progression of coronary
arterylesionsfrom mild ormoderate StenOSis to moderate or severe stenosis.A study based on four serial
COrOnary arterlOgramS Per year
審 査 委 員 (主査)教授 藤 原 久 義 (副査)教授 贋 瀬 教授 清 島 満 論 文 内 容 の 要 旨 冠動脈狭窄の進展は年間7%から12%の病変に認められるといわれているが.その詳細についてはいまだ明ら かでない。一般に急性冠症候群をきたす時たは粥腫の破裂と血栓形成によって狭窄が突然に高度になると考えら れている。一方,粥腫自身が血栓や粥腫破裂を伴わずに成長して冠動脈狭窄が徐々に進展することも想定されて いる。そこで冠動脈狭窄の進展には,突然の著明な進展と,軽度の持続的な進展があるという仮説を立て,他の 血管(この研究の非観察血管)の病変治療のために行われた経皮的冠動脈形成術(PTCA)のため,1年間に4回 の連続的な冠動脈造影を施行した患者の,PTCAを行なっておらずガイドワイヤーも通過していない血管(この 研究の観察血管)に存在する冠動脈病変を連続的に定量的に観察し,その進展過程を明らかにすることを試みた。 対象と方法 岐阜大学第二内科と4関連病院で1991年から1995年までの5年間に行われた,およそ15000名のPTCA患者から, 冠動脈狭窄の進展のあるものを以下の基準で選び出した。1)およそ1年の期間に4カ月おきに行われた4回の連続 した冠動脈造影があること,2)最終冠動脈造影以前にPTCAを行なっておらず,ガイドワイヤーも通過してお らず,梗塞責任血管でない血管(この研究の観察血管)が少なくとも一つあること.3)連続的な冠動脈造影が 定量的冠動脈造影解析を行なうに十分明瞭で,同一方向で撮影されているもの,4)臨床的に有意な進展とは, 初回の冠動脈造影において20%以上の狭窄度を有する病変が1年間で15%以上狭窄度が増加したものと定義した。 これらの基準を満たす有意の進展を示した病変は36人の患者の36血管に存在した。また,この基準の1),2),3) を満たし,かつ観察期間中の狭窄度の変化が5%未満であった患者50人の50血管を無作為に選び出しこれを進展 のなかった対照群とした。最初の冠動脈造影が最終冠動脈造影の11±1カ月前,第2回冠動脈造影が7±1カ月前, 第3回冠動脈造影が3±1カ月諭 そして最終冠動脈造影と4回施行されていた。冠動脈造影は冠動脈撃縮の影響を 除外するためニトログリセリンの冠動脈内投与を行った乱 左右冠動脈の造影をそれぞれ少なくとも6および3方 向行い,心血管計測システムを用いて狭窄度の変化を定量的に計測した。それぞれの4回の冠動脈造影問での狭 窄度の増加の程度を,著明(15%以上),軽度(5∼14%),進展なし(5%未満)に分けた。その形態はAmbrose が提唱した基準に基づいて求心性病変,TypeI偏心性病変,TypeⅡ偏心性病変,多発性不整に分類した。また 初回冠動脈造影の時点および観察期間中の対象患者の冠動脈危険因子と服薬内容,血清中C反応性タンパク (CRP)について調査を行った。 結 果 臨床的に有意な冠動脈病変の進展のみられた36観察血管において,突然の著明な進展のある14血管(typel) と著明な進展のない22血管(type2)とに分類が可能であった。狭窄度はtypelで44±14%,46±13%,46±13%, 88±10%と推移して,著明な進展はすべて第3回と最終冠動脈造影との間でみられた。type2においては,44±11 %,50±9%,59±9%,67±9%と徐々に進展していた。急性冠症候群はすべて第3回と最終冠動脈造影との間で みられ,tyPelでは14例中10例と,type2の22例中3例より多く認めた。Typelの患者においては.第3回冠動脈造 影の狭窄度はほとんど同じであるにもかかわらず,最終冠動脈造影の狭窄度は,急性心筋梗塞の責任病変で最も
-113-高く,次いで新規発症の労作性狭心症で,無症状の群では最も低かった。また,type2の患者では,不安定狭心 症であった患者の狭窄度は無症状の患者より有意に高かった。非観察血管から観察血管への側副血行路は,tyPel の5人の急性心筋梗塞患者の最終冠動脈造影においてのみ軽度もしくは中等度認められた。形態学的に粥腫の確 認や血栓形成を示唆するAmbrose typellの偏心性病変は,typelの8例とtype2の4例で新しく出現していた。 初回,第3回,最終冠動脈造影時の血清CRPは,typel(n=11)では0.2±0.3,0.1±0.1,0.1±0.2mg/dL, type2(n=18)では0.4±0.4,0.4±0.4,0.3±0.3mg/dLであり,対照群(n=40)では0.2±0.2,0.2±0.2,0.2 ±0.1mg/dLであった。すなわち,血清CRPの値は,tyPelと対照群ははぼ同様であるが,tyPe2ではtypelや対 照群よりも有意に高かった。また梗塞の発症後3時間以内に採血が行われた急性心筋梗塞患者72例では血清CRP は上昇していなかった。 考 察 1年間に4回施行された冠動脈造影の分析から冠動脈病変の進展形式を,全く狭窄度が変化しないが,ある時急 激に中等度∼高度狭窄に至る進展(typel)と一定の割合で徐々に進行する進展(type2)の2つに分類すること が可能であった。粥腫の確認や血栓形成を示唆するAmbrose typeⅡ病変がtypelで高率に認められたことなど より,typelの進展の機序はおそらく粥腫破裂,血管内皮障害とそれに引き続く大きな血栓であり,tyPe2の進展 の機序はおそらく粥腫の成長もしくは冠動脈造影上検知できないような小さな血栓の形成であると推測される。 また,tyPe2の進展を示した患者において血清CRPが高かったが,これは炎症性の変化が冠動脈狭窄の緩やかな 進展に関与していることを示唆するものである。急性冠症候群は,typelにおいてもtype2においても,その狭窄 度が高度に達し側副血行が十分でないときに発症すると考えられるが,その発症率はtypelにおいて高く,急性 心筋梗塞に限るとtypelにおいてのみ認められた。しかしながら,最終冠動脈造影の狭窄度はtype2がtypelより 低く,またこのあとtype2進展を示した血管においてもPTCAが施行されていたため,type2血管が最終的にどの ような経過をとるのかは不明である。しかしこのように持続的な進展が続けば,高度狭窄に達したとき急性冠症 候群を発症しうることは十分に考えられる。 Typelの患者においては著明な進展は突然に,平滑な血管壁をもつ,先行する進展のない血管に発生し,先立っ ておこる血清CRPの上昇も認められないのでこの突然の進展と急性冠症候群を予知するのは難しい。一方,type2 の患者においては血清CRPがと昇しており,予測因子の一つとなりうることが示唆された。また,tyPe2では中 等度の狭窄が存在すれば,数カ月後には狭窄度が高度に達して新規の狭心症を発症すると予測することも可能と 思われる。以上より,急性冠症候群を予知することはtypelの患者においては難しいがtype2の患者においては可 能であると思われる。 結 語 この研究は冠動脈疾患の進展形式にはtypelとtype2の二つのタイプがあることを明らかにし,この概念は冠動 脈疾患の進展における重要な情報をもたらした。 論文審査の結果の要旨 申請者 横家弘一は,冠動脈疾患の進展の過程には二つの異なった型があることを明らかにし,冠動脈疾患の 進展における重要な情報をもたらした。 この新知見は循環器学の進歩に少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表誌]
Process of progression of coronary arterylesions frommi1d or moderate stenosis to moderate or
SeVere StenOSis.A study based on four serialcoronary arteriograms per year
1999年 CirculationlOO:903∼909