Title
鍛造解析用剛塑性有限要素法の機能向上( 内容の要旨
(Summary) )
Author(s)
商, 健
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 甲第163号
Issue Date
2002-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/1884
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏名(本籍) 学 位 の 種 類 学位記号番号 学位授与年月日 専 攻 学位論文楚 目 健 (中華人民共和国) 博 士(工学) 甲 第 163 号 平成14年 3月25日 生産開発システム工学専攻 鍛造解析用剛塑性有限要素法の機能向上
(A FunCtionalIDPrOVe皿ent Of Rigid-Plastic Finite Ele皿ent Hethod for Analysis of Forging Processes)
学位論文審査委員 (主査) 教 授 後 藤 学 (副査) 教 授 戸 梶 志 郎 教 授 堂 田 邦 明
論文内容の要旨
近年,機械工学における数値シミュレーションの活用はめざましい.塑性加工の分野にお いても例外ではない.解析手法としては,有限要素法(FEM)がほかの手法にはない利点 を有しており,それゆえにエンジニアリング・ワークステーション(EWS)あるいはパー ソナル・コンピューター(PC)などコンピューターの急速な機能向上と相まって,数値シ ミュレーション技術は塑性加工の各分野にわたらて,大企業はおろか中小企業に至るまで, 盛んに利用されつつある.すなわち,金型の経験的設計手法を回避してリードタイムを短縮 して,製品のコスト低減と高機能化をもたらし,さらに多品種少量生産方式への対応ができ つつある. 塑性加工の数値シミュレーションに用いるFEMには,弾塑性FEMと剛塑性FEMがあ る.押出し,鍛造のようなブロック材成形では,全変形に占める塑性変形の割合が極めて大 きく,また除荷に伴う弾性的回復が問題にならない場合が多いので,弾性変形を無視しても 十分な精度を持つ解が得られるという理由で,解析効率の高い(つまり計算時間の短い)剛 塑性FEMがよく用いられる. 本研究は,すでに開発されている鍛造用剛塑性FEMプログラムの妥当性,正確さを確認 した上で,その機能向上を図ることを目的としている.剛塑性FEHを用いて鍛造加工の数値 シミュレーションを行う際に,信頼性に直接関係する解析精度が最も重要視される.すなわ ち,精度が高く,実際の変形とよく一致し,実加工に有益な指針を与える解析が望まれる. 鍛造解析の精度に大きな影響を及ぼす主な因子は,変形の進行に伴って有限要素が局所的に 厳しくひずむことと,要素あたりの体積変化である.本研究の主要な目的は,これら二つの 問題に対応する処理手法の開発と,これらの手法の導入による解析機能の向上である.それ をPCレベルのコンピューター上で手軽にできるようなシステムの構築を目標とした.鍛造 解析においては,変形が大きくなるにつれ,局所的に相当ひずみが極端に大きくなったり, 要素がゆがみ過ぎてFEM解析の精度劣化を招き,あるいはJacobianマトリックスが負債に なって計算続行ができなくなる場合もある.こうした場合,有限要素の再分割が必要となる. それゆえ,剛塑性FE凹解析において,シミュレーション中に完全な自動要素再分割手法ある いはシステムを作ることが重要である.さらに,現場技術者にとってPCが使えることと, 使い易さ(User-friendly性)も大きなファクターである.最近のPCの機能向上は目覚ましく,PC上で簡単操作で有限要素解析できるシステムの開発は必須となっている. 本研究では,まずPC上で簡単に操作できるシステムの開発を目指して,PCのCRT画 面を見ながら操作可能な,自動的な要素再分割処理アルゴリズムを開発した.ただし,2次 元と軸対称に限る.(任意3次元解析はPC上ではかなり厳しい.)このアルゴリズムは,有 限要素シミュレーションの途中で要素再分割が必要かどうかの判断を行い,任意境界に対し て自動的に適切な四辺形要素を生成する.このアルゴリズムの特徴の一つは,境界要素 (Boundary Ele皿ent,略BE)を構成することであり,もう一つはひずみの高い箇所の要素 (すなわち変形の厳しいところ)を局所細分化する機能である.さらに,要素再分割のため 一時停止しているFEH計算を自動的に再起動させるために,再分割処理の追加技術として, 変形形状の伝達機能と図形処理機能を付加した.それによって,有限要素法の計算をしなが ら,同時にPCのCRT上に図形を描画させることにより変形の状況をチェックすることが でき,もし再分割処理が必要ならre皿eShingを施し,その後また計算を続行させることがで きる.従って,すべてのシミュレーション過程が中断なしで完了できるUser-friendlyなシ ステムとなっている.そして,具体的応用例として,複雑な二段の軸対称鍛造工程をシミュ レーションして,得た結果を実験データと比較検討し,その有効性を検証した. 剛塑性FEH解析の他の課題として,本来非圧縮として解析しているにも拘わらず,被加工 材の体積が変化(主に減少)する事で,特に多段型鍛造などでは,後段において材料の型内 充満という鍛造では必須の要件が満たされなくなる.この問題に対して,その重要さにも拘
わらずあまり真剣に検討されて来なかった.本研究では,解析中の体積変化問題に対して,
体積変化をコントロールする処理法を新たに提案した.剛塑性FEHの最大の特長は,比較的 大きな時間増分あるいは変形増分を用いても計算が可能となることである.しかし,増分を 大きくすると,各要素に対して節点座標更新時に体積変化が若干生じる.各ステップでの体 積変化は微小であっても,時刻t=0から時刻tまで積分を繰り返していると,それらが蓄 積されて,かなりの体積変化となる.その結果,ダイス穴への材料の充満度が悪くなり,ま た解析の精度が低くなる.この体積変化をある程度小さく抑え,FEM解析精度を確保するた めに,本研究では,体積変化を発生する可能な原因を逐一に分析した上に,簡便な体積補償計算スキームすなわち体積補償法(Volu皿e Loss Recovery略VLR)を提案した.この体積
補償スキームは,時刻士(計算ステップ乃)における速度場を求める際に,それまでに蓄積 された体積変化を補償するものである.これによる等価体積変化抑制荷重を通常の剛塑性FEH の右辺苛重項に加えるだけで,体積変化を容易に抑制する計算が可能となる.しかし,時刻 い△f(計算ステップか1)に移行する場合に生じる体積変化については体積補償法では 無視する.この体積変化をも考慮すると,体積保存性はさらに向上すると期待される.時間 増分At 間に生じる体積変化を抑制する研究は,過去にCoupezとChenotらが行っており, 体積増分制御法(Incre皿entalVolune Control略ⅠVC)として提案している.本研究では, VLRとⅠVCを組み合わせることを提案した.すなわち,これを簡単形状の円柱ビレットのア ップセッティングと押出し問題に適用し,体積保存性が格段に向上することを示した.さら に,より複雑な鍛造問題にVLRやⅠVCを適用する場合,体積変化がどの程度抑えられるか検 討した.解析対象の加工は,冷間軸対称多段(4段)鍛造と,平面ひずみ逐次自由鍛造(鍛
伸)である・多鱒鍛造では,複数円弧から成るダイスを用い,多数回のリメッシングを要し
た.それに対して,円弧ダイスとリメッシングの影響について検討した.その結果より,冷 間多段鍛造など複雑な加工に対しても,VLRとⅠVCは被加工材の体積欠損の低減に有効であ ることが分かった.なお,ダイスが凹状曲線を持つ場合,通常の前進差分法では表面の要素 節点がダイス中へ貴人するのを幾何学的操作でダイス表面へ戻し,ⅠVCでは更新後の要素体 積が変化しないように処理する.共に幾何学的な修正時に体積変化が生じる.VLRは初期ま たはリメッシュ時の要素体積を基準として体積補償を行うので,こうした体積変化は修正可 能であり,ⅠVCより一層効果的である.さらに,提案したこの体積補償スキームを,ダイスによる拘束がない,体積損失がより大きい鍛伸加工へ適用し,その有効性を検証した.逐次 鍛伸加工の解析に対しても,ⅠVCやVLRを導入すると被加工材の体積が保存され,特に加工 後の材料長さの予測精度が高くなる.また,簡易皿ulti-SteP解析によるスラブ厚さ分布の 予測は1-Step解析では不十分であり,一段あたり4-SteP以上の増分計算とすることが必要 であることも分かった.さらに,便宜上トstep解析による時でも,剛性域の判定基準を適 切に選びさえすれば,スラブ厚さ分布をある程度正確に予測することは可能であることを示 した.
論文審査結果の要旨
提出された学位論文に関して,審査委貞会において公正にして慎重な審査を行った
結果,その内容は工学博士の学位に十分値するものであるとの結論を得た.即ち,直接的物作り(製造)技術として工業全般を支えてきている塑性加エは,
大きく分けて鍛造・押出しといったバルク(塊)材加工と板材加工があるが,本研
究はバルク材塑性加工のIT化に関するものである.近年,機械工学における数値 シミュレーションの活用はめざましいが,塑性加工の分野においても例外ではなく, これを活用して,金型の経験的設計手法を回避してリードタイムを短縮し,製品の コスト低減と高機能化をもたらし,さらに多品種少量生産方式への対応ができるも のと、多大な期待を集めている.いわば,塑性加工におけるIT革命である.計算 手法としては、押出し,鍛造のようなバルク材加工では,全変形に占める塑性変形 の割合が極めて大きく,また除荷に伴う弾性的回復が問題にならない場合が多いの で,弾性変形を無視しても十分な精度を持つ解が得られるという理由で,解析効率の高い(つまり計算時間の短い)剛塑性有限要素法(FEM)がよく用いられる.
本研究は,すでにある程度開発されている鍛造用剛塑性FEMプログラムの妥当性, 正確さを検討した上で,その大幅な機能向上を図ることを目的としている.鍛造解 析の精度に大きな影響を及ぼす主な因子は,変形の進行に伴って有限要素が局所的 に厳しくひずむことと,要素あたりの体積変化である.本研究の主要な目的は,こ れら二つの問題に対応する処理手法の開発と,これらの手法の導入による解析機能 の向上である.それをPCレベルのコンピューター上で手軽にできるようなシステ ムの構築を目標としている.鍛造解析においては,シミュレーシ畠ン中に完全な自 動要素再分割手法あるいはシステムを作ることが重要である.さらに,現場技術者にとってPCが使えることと,使い易さ(User-friendly性)も大きなファクターで
ある・最近のPCの機能向上は目覚ましく,PC上で簡単操作で有限要素解析でき るシステムの開発は必須となっており、本研究の前半でそれにある程度成功してい る・即ち、まずPC上で簡単に操作できるシステムの開発を目指して,PCのCR T画面を見ながら操作可能な,自動的な要素再分割処理アルゴリズムを開発してい る・さらに,要素再分割のため一時停止しているFEM計算を自動的に再起動させ るために,再分割処理の追加技術として,変形形状の伝達機能と図形処理機能を付 加し,それによって有限要素法の計算をしながら,同時にPCのCRT上に図形を 描画させることにより変形の状況をチェックすることができ,もし再分割処理が必 要ならそれを施し,その後また計算を続行させるようにしている.従って,すべてのシミュレーション過程が中断なしで完了できるUser一触en心yなシステムとなって いる・そして,具体的応用例によりその有効性を検証している.第二の課患として,
本来非圧縮′として解析しているにも拘わらず,被加工材の体積が変化(主に減少)
する問題への対処である.特に多段型鍛造などでは,後段において材料の型内充満 という鍛造では必須の要件が満たされなくなる.本研究では,体積変化を発生する 可能な原因を逐一に分析した上に,簡便な体積補償計算スキームすなわち体積補償法(Ⅶ1ume
LossRecovery略VLR)を提案している.これは,計算の各段階で,
それまでに生じた体積変化を解消しようとする手法である.これに対して,一段階
ごとの補正法として,体積増分制御法(Incremental
VblumeControl略ⅠVC)
も提案している・.さらにVLRとⅠVCを組み合わせることを提案している.そして, 押出し・多段鍛造・逐次鍛伸などいくつかの加工プロセスを実際に数値シミュレー ションすることによって,他の主要な情報の精度を保ちつつ,体積一定性が十分な 精度で補償されることを確認している.同時に,解析結果から付随的に,こうした 数値シミュレ「ションに関する有用な多くの情報も得ている. 以上,学位論文として十分の内容と判定した.