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見込・受注生産環境における作業負荷の分散を考慮した生産座席システムの評価

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2010 年度 卒業論文

見込・受注生産環境における作業負荷の分散を

考慮した生産座席システムの評価

指導教員 宮本 裕一郎 助教

上智大学 機械工学科 管理工学研究グループ

A0771248 渡辺幸太

(2)

2

目次

第1章 序論 ... 4 1.1 研究背景 ... 4 第2章 生産座席システムについて ... 5 2.1 生産座席システムとは... 5 2.2 生産座席システムのアウトライン ... 5 2.3 生産座席の種類 ... 8 2.4 生産座席システムの特徴 ... 10 第3章 問題説明 ... 12 3.1 生産座席システムの課題 ... 12 3.2 問題説明 ... 13 3.3 従来モデル ... 13 3.4 本研究のモデル ... 13 第4章 モデル ... 15 4.1 需要と受注 ... 15 4.2 製造工程 ... 15 4.3 生産計画 ... 15 4.3.1 基準生産計画 ... 17 4.3.2 生産座席枠の設定 ... 18 4.3.3 自由座席枠の設定 ... 19 4.3.4 生産座席枠への割り当て ... 20 4.4 評価尺度 ... 23 4.4.1 従来研究で用いられていた評価尺度 ... 23 4.4.2 本研究で新たに用いる評価尺度 ... 23 第5章 数値実験 ... 25 5.1 実験目的 ... 25 5.2 実験条件 ... 25 5.3 実験結果 ... 26 5.4 結果の要約 ... 33

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3

第6章 結論 ... 35 謝辞 ... 36 参考文献 ... 37

(4)

4 第1章 序論 1.1 研究背景 現在の市場環境では,多様化,短納期化が進み,市場ニーズをすばやくとら えタイムリーに高付加価値製品を供給できるスピードと感度に富んだ仕組みが 必要となってきた.そのためには,物と情報のスピードアップ,すなわち,販 売の最前線と生産現場とが,ダイレクトに対話できる生販統合の仕組みが必要 となる.このような環境の中で生販統合型の生産座席システムは現在の重要な 生産形態の1つとして考えられる. 受注生産を行っている生産システムでのスケジューリング方法として,2つ の対照的な考え方ができる.一つは,注文を受けてからスケジュールを作成す る方法であり,もう一つは,最初にスケジュールを作って,これに注文を割り 当てる方法である.従来からあるスケジューリングシステムは前者に近く,本 稿で述べる「生産座席」あるいは「生産座席システム」は後者の考え方に基づ くスケジューリングシステムである. 伝統的な生産管理システムは,注文を受けてから生産スケジュールを作成 するシステムになっている.そのため,販売部門は,過去の納入実績や製造と 販売の両部門で合意された製造リードタイムを考慮して,顧客と受注納期の均 衡を行い,納期遅れを起こす仕事の割合の統計量を求め,妥当な納期を決定す る,といった研究が重要になってくる.また,受注時に納期の妥当性をシミュ レーションによって評価する方法も提案されている.しかし現実には,需要の 変化によって受注から出荷までにかかる日数は日々変化している.また,シミ ュレーションに頼ることにも,データ入力の繁雑さやリアルタイム処理能力な どの点から限界がある.このため,実務における受注納期の決定は,販売員の 経験に頼ることが多い.こういった状況下において,販売員は,一つでも多く のオーダーを受注しようと,無理な納期設定を許したりする.あるいは獲得し たオーダーの納期を守るため,実際に受注した納期より早い納期を生産部門に 指示したりすることが多くなる.これは,生産部門へ不必要に特急ジョブを送 り込む結果になる. 今回これらの点を解決するための生産管理システムとして生産座席システム について述べる.

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5 第2章 生産座席システムについて 2.1 生産座席システムとは 生産座席システムとは「受注時に,製造設備の使用日程・資材の使用予定など にオーダーを割り付け,顧客が要求する納期どおりに生産するための方式」で ある. この方式は,製造工程を一種の座席と見立てる.そこで,営業部門があたかも 列車や飛行機の座席を予約するかのような感覚で,顧客の希望する製品の生産 を予約するものである. 「生産座席」は,列車や飛行機など交通機関でいう「指定席」や「予約席」 に似た考え方である.ただし,交通機関での座席が有形物であるのに対して, 生産座席で言う座席は,生産能力あるいは生産時間を表す無形のものである. 例えば,1月10日に組み立て工程でA製品20個の生産座席を設定した場合, 1月10日にA製品20個を完成(あるいは生産着手)させようと計画したこ とを意味する.当然これらは,生産部門が達成可能な計画であることが前提と なる.販売部門は,受注活動を行って,計画された生産座席をオーダーで埋め ていく.ちょうど列車の指定席切符を発売するのに似ている. 生産座席システムは,販売部門と生産部門と生産管理部門の3者が共有でき る情報を提供する.販売部門は,顧客が要求する納期近くの空いている生産座 席を探し,客の満足が得られるような座席にオーダーを割り当てればよい.販 売部門は,コミュニケーションネットワークを使って,客先からでも,この生 産座席システムに直接アクセスし,リアルタイムで即座に受注したオーダーの 完成時期や重要なユニットの生産日程を知ることができる.生産部門は,座席 の予約状況を見ながら,納期遅れが生じないように生産準備や生産進渉を微調 整する. 2.2 生産座席システムのアウトライン 生産座席システムではまず最初に製品の需要の予測に基づき生産座席枠を作 成する.この生産座席枠は販売部門と生産部門がリアルタイムに情報のやり取 りを行うためのデータベースとなる.言い換えれば生産座席枠は販売部門と生 産部門の情報を統合するシステムと言える.

(6)

6 生産座席システムのアウトラインを図2.1に示す. 図2.1 生産座席システムのフロー 以下では生産座席枠の作成,生産座席枠へ到着オーダーの割り当て,生産指 示の流れについて述べる. (1) 販売部門と生産部門の情報をもとに基準生産計画(MPS)を作成する.基 準生産計画とは各独立需要品目(最終製品や補修部品等,その需要が他の 品目とは独立に,販売や業務計画などに基づいて決められる品目)に対す る各タイム・バケットで生産すべき数量を与える計画書のことでこの基 準生産計画により資材の調達量 を決定し,また,販売部門に売上目標を 与える. (2) 基準生産計画を基づいて,詳細な生産スケジュールを作成する.ここで

生産管理部門

MPS(基準生産計画)

生産座席枠の作成

生産座席

生産座席枠

の修正

生産

生産準備

生産部門

販売

販売部門

顧客

受注情報 受注可能か返答 販売情報 生産情報 需要予測 生産指示 注文 受注可能か 返答 生産情報

(7)

7 決定される生産スケジュールが「生産座席」である. (3) 引き合いのあった,あるいは受注したオーダーを特定の生産座席に割り 当てる.空いている生産座席の探索とそこへのオーダーの割り当ては, 販売員が直接アクセスできる.もし,適当な空席があれば,そこにオー ダーをわりあてることによって,そのオーダーの生産日程の概略を受注 の段階で決めることができる.このステップでは,受注状況に応じて生 産座席を調整することも必要である. (4) 生産座席枠の生産能力は過去の生産実績や受注の予測に基づき決定する. 生産の指示は生産座席枠のオーダーの割り当て状況に応じて発令される. (3)のステップの処理が鉄道会社や航空会社の指定席予約システムに似てい るといえる.生産システムでは最新の予約情報は販売部門と生産部門がリアル タイムに把握できるようになっている.販売部門に要望納期の指定された受注 品のオーダーが発生すると生産座席枠により納期指定日までに製品が完成でき るかどうかの判断が行える.また生産部門は必要な材料や生産能力が満たせて いるかどうかを生産座席枠によって判断できるような仕組みになっている.

(8)

8 2.3 生産座席の種類 一般的に航空機の座席は指定した飛行機の座席番号によって表わされていて, それと似たように生産座席はオーダーの所要加工時間と生産能力(工数)で表わ される.以下では様々な種類の生産座席の例を示す. 図2.2では単一工程のシステムで加工順序に応じて生産座席の設定を行った ものである.ここでは製品A,B,C のオーダーを割り当てる生産座席とどの 製品でも割り当てられる生産座席S(自由座席枠)で構成されている.図2.3で はすべての生産座席枠に様々なオーダーを割り当てることのできる生産座席の 設定である.また生産座席枠の生産能力はすべて均一である.図2.4,図2.5 はロット生産での生産座席の設定で,図2.4は需要の予測をもとに製品のロッ トサイズを決定し生産座席枠としたものである.図2.5はタイムバケットあた りの総生産能力は均一だが製品ごとの生産座席枠の大きさは需要予測に基づい て作成するため異なっている.図2.6はタイムバケットごとの総生産能力それ ぞれ異なっている.[1] 図2.2 各製品ごとの生産座席枠と自由座席枠で構成される場合 図2.3 全ての生産座席枠が自由座席枠の場合 A B S A B A C A B S A B A C ・・・ ・・・ 日数 A :製品Aの生産座席枠 C :製品Cの生産座席枠 S :全ての製品を割当てられる生産座席枠 (自由座席枠) B :製品Bの生産座席枠 S S S S S S S S S S S S S S ・・・ ・・・

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9 図2.4 需要予測より各製品ごとに生産座席枠の大きさを定めた場合 図2.5 タイムバケットごとに複数の製品の生産座席枠を設け,また, 各製品ごとに生産座席枠の大きさを定めた場合 図2.6 タイムバケット当たりの総生産能力を定めた場合 A 30 10B 25C 40D 30A 25C 30A 10B 40D 30A ・・・ ・・・ 製品Aのロットサイズ

t期

A 20

B 15

C 30

E 15

t+1期

A 20

B 15

C 30

E 15

+2期

A 20

B 15

C 30

E 15

+3期

A 20

B 15

C 30

E 15

・・・ ・・・

ロットサイズ

(または生産量)

80

90

90

80

t期

t+1期

t+2期

t+3期

タイムバケット当たりの総生産能力

・・・ ・・・

(10)

10 2.4 生産座席システムの特徴 生産座席は電子掲示板のような形をとっていて,販売部門と生産部門の双方 が可視化してある生産座席にアクセスできるようになっているため,両部門の 連携が取りやすくなっている.生産部門がまず生産座席枠を作成し,販売と生 産の両部門が生産座席の情報をもとに仕事の管理を行う.生産座席システムは このような仕組みのため以下のような特徴をもっている. (1) 顧客情報を一元管理することができる. (2) オーダーが到着すると顧客の要求する納期指定日までに製品が完成する かどうか,また間に合わない場合でもその日に変わる最も早い完成日を顧 客に提示することができる. (3) 販売部門と生産部門が共通の情報でリアルタイムに需給調整できる. (4) 生産座席システムでは生産座席に到着した順にオーダーを割り当ててい き ,早く到着したオーダーによいサービスを提供できる. (5) 受注情報が早い段階で入手でき資材調達などの生産準備を精度良く行え る. これらの5つの特徴の中でも特に(3),(4)が重要である.生産座席システム では顧客からオーダーが到着した時点で製品の完成日が決定するため信頼でき る納期が提示することができる.また顧客は販売部門と連絡を取り相談するこ とによって納期指定日の変更を行うことも可能となる.これらの特徴が特に混 合生産や小ロット生産の場合に生産座席システムの利点となる. 一方,オーダーを受け取り生産座席枠に予約を入れた段階でその座席枠は埋 まってしまい変更が利かなくなってしまう.つまり,生産座席枠が埋まってい くにつれて後から到着するオーダーには座席枠が残っていない状況が発生して しまい,良い納期の提案ができなくなってしまう.このようにファーストイン・ ファーストアウト方式を行うことにより生産座席システムでは以下のような欠 点が挙げられる. (1) 製造工程が増えると空座席が無くなってしまう. (2) リードタイムの分散が増加してしまい,また,納期遅れが増えてしまう. これらの欠点はオーダーの生産座席枠への割り当て方に幅を持たせることに よって解消することができると思われる.しかし,同時に生産座席システムの 利点が無くなってしまい従来の生産管理システムと差別化が図れなくなってし まう考えられる.生産座席システムは主に顧客との相談をする時,顧客のオー

(11)

11

ダーがより満たせるような受注の割り当てを行いたい時,顧客がより信頼でき る納期を知りたい時,販売部門と生産部門の連携を取る時などに従来の生産管 理システムと比べて優れているといえる.

(12)

12 第3章 問題説明 3.1 生産座席システムの課題 生産座席システムはあらかじめスケジュール(生産座席枠)を作成し,これにオ ーダーを顧客の要望する納期に合わせて割り当てる方式であるため,受注時の 段階で実現可能な納期を顧客に回答することができる.しかし,このシステム を導入するにあたっては, (1) 仕様の決まっていない部品やユニットの生産座席をどう設定するか.生産 座席システムでは,オーダーの仕様が決まっていない段階で生産座席を 計画することから,この問題を解決する必要がある. (2) 生産座席枠をどのように設定すると最適になるか.すなわち,生産座席を 設定する日程の粗さをどの程度とするか,品目ごとの座席数をいくつに するか,安全余裕はいくつ設定すべきか,どの品目でも割りつけられる 「自由席」を設けるべきか,設けるならその座席数はいくつにするか, などに関して最適な意思決定をしなければならない. (3) オーダーをどのように生産座席枠に割り当てるのが最適か.すなわち空い ている座席のどこに割り当てるか,残業時間を使って生産座席を増やす べきか,座席が空いていないとき他の製品の空いている座席を使うべき か,ほかのオーダーの座席を変更すべきか,受注オーダーで埋まらなか った座席をどう処理するか,などを最適意思決定しなければならない. その際,工数の違う座席が混在していると,取り扱いが複雑になる. (4) 生産指示を現場に発するとき,生産座席へ割り当てられたオーダーの生産 順序をどの程度まで変更してよいか.生産部門には,作業のしやすいオ ーダー順に生産したいという誘惑がいつも存在する.しかし,この段階 での生産座席順序の変更は,あいた座席より後ろの座席を前に詰める, といった最小限の変更にとめるべきと考える. (5) 顧客側からの指示は絶対的であり,受注する側から意見や提言が言えない という慣行が日本の一部企業に存在しているように思える.このような 慣行は,企業が生産座席システムのような考え方を受け入れる障害とな ろう. などを解決しなければならない.

(13)

13 3.2 問題説明 本研究では,見込・受注生産環境において特に市場の需要環境に焦点をおき, 工程の能力設定のための政策変数および生産座席枠への割り当てのための政策 変数を導入し,次のことを明らかにする. (1) 所与の見込・受注生産比率の条件下で3つの政策変数が受注品の要望納期 充足度,見込み品の品切れ率,完成受注品の平均滞留日数および作業負荷 の分散にどのような影響を与えるか (2) 見込品の安全在庫量が一定の水準の下で受注品の要望納期充足度を一定 の値以上かつ見込み品の品切れ率,完成受注品の平均滞留日数および作業 負荷の分散を一定以下に維持する2つの政策変数の範囲はどのようになる か 以上を分析することにより,生産座席システムの構築可能性を明らかにする ことを目的とする. 3.3 従来モデル 従来の生産座席システムの研究として,田村,藤田[2]が生産座席システムの 概要や特徴を述べ,単一工程において従来の受注生産システムと生産座席シス テムの比較に関する研究を行っている.また,阿久沢[3],久我[4],大場,坪 根,植竹[5]らは,生産座席システムの適用事例を示した.これらの研究は従来 の受注生産システムと生産座席システムの比較に関する研究や生産座席システ ムの適用事例を示した研究である. 小林,坪根[6]らは見込・受注生産環境において工程の能力設定のための政策 変数および生産座席枠への割り当てのための政策変数を導入し,どのような製 造環境で生産座席システムが適応するかに関する研究を行った.評価尺度は受 注品の要望納期充足度および見込品の品切れ率で行っている.本研究でのモデ ルは小林,坪根らのモデルをもとに作成したものである. 3.4 本研究のモデル 小林,坪根[6]らの研究では評価尺度が受注品の要望納期充足度および見込品 の品切れ率で行っている.研究結果としては工程の生産能力を上げる,また, 受注品・見込品の双方を割り当てられる座席枠を多く設けることによって要望 納期充足度,見込品の品切れ率を抑えられることがわかった.しかし,工程の 生産能力を上げるということは実作業現場では作業負荷が増大する欠点が考え られる.また,完成受注品の滞留日数に変化が起きることなども考えられる.

(14)

14 そこで本研究では新たな評価尺度として作業負荷の分散(ムラ),完成受注品の平 均滞留日数をモデルに導入し政策変数が評価尺度にどのような影響を与えるか を検証する.評価尺度の詳しい説明については第4章で述べる. また,従来研究ではオーダーを生産座席枠に割り当てる際はバックワード方 式で割り当てていた.本研究ではオーダーの割り当て日を決定する政策変数と して割り当て日決定パラメータを導入し,オーダーの割り当て日を変化させる ことによって評価尺度にどのような影響を与えるかを検証する.割り当て日決 定パラメータの詳しい説明については第4章で述べる.

(15)

15 第4章 モデル 本研究において想定する生産座席システムの問題設定について述べる. 4.1 需要と受注 1)製品は,1種類の見込品と多種類の受注品から構成される. 2)見込み品の需要と受注品の受注は各日末に到着する. 3)各受注品には要望納期があり,各受注品が到着してから要望納期までの日 数は記号d で表し,確率変動する. 4)見込み品の需要量と受注品の受注量は確率変動とし,各期における見込品 の需要量および受注品の受注量は独立とする. 4.2 製造工程 1)製造工程は,1工程である. 2)見込み品と受注品の加工手順はいずれも同一であるが,加工時間は受注品 ごとに異なる. 3)各日末に到着する受注品は,到着日の翌日から生産可能とする. 4.3 生産計画 生産計画は,基準生産計画,生産座席枠の設定,自由座席枠の設定,受注品・ 見込品の割り当て,生産指示からなる.それぞれの計画の概要を表4.1に示す.

(16)

16 表4.1 生産計画の概要 まず最初に,基準生産計画で第(w-2)週末に需要・受注予測に基づいて受注 品および見込品の第w週の生産能力を計画する(図4.1). 図4.1 生産計画立案時点 t-L+1 t-L t t+1 t+2 t+L t+L+1 … … … … 第(w-2)週(w-1)週 第w週(計画対象週)(w+1)週 第w週の計画を立てる時期 計画の種類 計画目的 基準生産計画 第w週の 総生産能力の決定 生産座席枠 の設定 受注品座席枠および 見込品座席枠の設定 自由座席枠 の設定 見込座席枠の一部を 自由座席枠に変更する 生産座席枠 への割り当て 見込品および 受注品の割り当て 生産指示 割り当てが確定した受注品および 見込品への生産指示の発令

(17)

17 基準生産計画に基づいて第w週の各日の受注品および見込品の生産座席枠を 設定する.自由座席枠の設定では見込品座席枠の一部を受注品・見込品双方と も割り当て可能な自由座席枠に変更する.次に,設定した生産座席枠に受注品 および見込品の生産を割り当てる.生産指示では割り当てが確定した受注品お よび見込品の生産指示を行う. 4.3.1 基準生産計画 基準生産計画では第(w-2)週末に受注品および見込品の第w週の生産能力 を決定する.第w週の所要生産能力は第(w-2)週末までに受注し,第(w-1) 週末までの生産座席枠に割り当てることができなかった受注品の受注残,受注 予測量および見込品の需要予測量を基にして,到着するであろう受注品に対し てどのくらいの能力を確保するかを表す政策変数ε(座席枠設定パラメータ)を 導入して計画する. を第w週の総生産能力とすると (4.1) となる.ここで は座席枠設定パラメータ(政策変数)であり, は第w- 2週末時点での受注品の受注残の加工時間の総計である.また および はそれぞれ第w週の見込品および受注品の需要予測および受注予測に基づいた 所要加工時間の期待値である.第w週の需要予測に基づいた見込品の所要加工 時間の期待値を ,受注品の受注予測に基づいた所要加工時間の期待値を , また,第(w-1)週末の見込品の推定在庫量を ,第w-1週の見込品の生産 予定数量を とすると o w o w s w w

R

Z

R

X

=

+

2

+

ε

ε

o w

Z

2 w

X

s w

R

R

wo 1 ˆ − w I 1 ˆw p s w

R

o w

R

(18)

18 , (4.2) , (4.3) (4.4) (4.5) となる.ここで は見込品の安全在庫量, は第w週の見込品の需要予 測量, は第w週の受注品の需要予測量, は受注品の平均単位加工時間(1 個あたり), は見込品の加工時間(1個あたり)である. また, は第(w-2)週末の見込品の実在庫量, は第w-1週の見込 品座席枠の空席の総数である. 決定した第w週の総生産能力は生産を平準化させるために1日ごとに均等に 配分する. を第w週の1日あたりの総生産能力とすると (4.6) となる.ここで は基準生産計画期間(第w週の稼働日数)であり, は第w 週の1週間の総生産能力である. 4.3.2 生産座席枠の設定 基準生産計画をもとに見込品および受注品それぞれについて生産座席枠を設 定する. 1)受注品座席枠の設定 第w週の毎日の受注品座席枠を受注品所要加工時間,受注残の所要加工時間 および座席枠設定パラメータεを用いて設定する. を第j日の受注座席枠 とすると. (4.7) となる. SI λˆw o m s m 2 − w I s w SEN 1 w o o w m d R = ⋅ ˆ s w w s w SI I m R =(λˆ + −ˆ 1)⋅ 1 1 2 1 ˆ ˆ ˆ − − − − = w + ww w I p I λ s s w w SEN m pˆ 1= 1/ L X Yw = w/ w Y L L Z R SE wo o w o j =(ε⋅ + −2)/ (j=t+1,t+2,,t+L) o j SE w w X

(19)

19 2)見込み品座席枠の設定 見込品座席枠を1日の能力から受注品座席枠を差し引くことによって設定 する. を第j日の見込品座席枠とすると, (4.8) となる. 生産座席枠設定例を図4.2に示す. 図4.2 生産座席枠設定例 4.3.3 自由座席枠の設定 受注品が要望納期日の受注品座席枠に割り当てられないとき,見込み品座席 枠の一部をパラメータξ(政策変数)を用いて自由座席枠に変更する.自由座席枠 第w-1週 第w週 第w-2週 t-L t-L+1 t t+1 t+2 t+L-1 t+L 受注座席枠 見込座席枠 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ :加工済み受注座席枠 :加工済み見込座席枠 :見込座席枠 :割当て済み受注座席枠 :受注座席枠 o j w s j Y SE SE = − (j=t+1,t+2,,t+L) s j SE

(20)

20 には,受注品,見込み品双方とも割り当て可能である. を第t日の自由座 席枠とすると (4.9) となる.ここで は座席枠変更パラメータ(政策変数)である. 4.3.4 生産座席枠への割り当て 生産座席枠への割り当ては,受注品,見込品の順に行う. 1)受注品の割り当て まず受注品の割り当て日の決定は割り当て日決定パラメータDS(政策変数) を用いて行う.第t日末に到着した受注品の要望納期までの日数にDSを掛け た日を受注品の割り当て日とする.すなわちDSが0の場合はフォアワード方 式,DSが1の場合はバックワード方式で割り当てることになる.割り当て日 の決定に関しての例を図4.3に示す.この場合要望納期までの日数を4日, 割り当て日決定パラメータDSを0.7 としているためt+3 日の受注座席枠に割 り当てる.また受注品が受注座席枠に割り当てられないときは,自由座席枠に 割り当てる.決定した割り当て日の生産枠に割り当てられない場合はその前後 1日の受注座席枠,自由座席枠に割り当てる.それでも割り当てられないとき はまたさらにその前後1日の座席枠を見るといった具合に要望納期内の割り 当てられる日を探索する.要望納期内の日に割り当てられない受注品は,要望 納期日より後の日の受注座席枠,自由座席枠に割り当てる.なお,この場合は 納期遅れとなる.受注品の割り当て例を図4.4および図4.5に示す. 2)見込品の割り当て 見込品は,第t日末に第(t+1)日の見込座席枠および自由座席枠の空席に割 り当てる.また,第(t+1)日の受注品座席枠に空席があるときは,受注品座 席枠の空席にも見込品を割り当てる. s t t

SE

F

=

ζ

(

0

ζ

1

)

ζ

t

F

(21)

21 図4.3 割り当て日決定例 図4.4 受注品の割り当て例1 (受注品が納期日の受注品座席枠に割り当てられる場合) t+4(納期指定日) t+1 t+2 t 受注座席枠 見込座席枠 自由座席枠 割当て済みの座席枠

7

.

0

=

DS

FCT DDT t+3

割当て期間決定パラメータ

受注品割当て日となる 受注座席枠 見込座席枠 割当て済みの座席枠

・・・

・・・

到着した受注品の加工時間 t+1 t+d t+d+1 1日の生産能力

(22)

22 図4.5 受注品の割り当て例2 (受注品が受注座席枠に割り当てられない場合) t+4(納期指定日) t+1 t+2 受注座席枠 見込座席枠 自由座席枠 割当て済みの座席枠

7

.

0

=

DS

FCT DDT t+3(割当て日)

割当て期間決定パラメータ

前倒し 遅らせ 到着オーダー 納期内に割り当て できない受注品の生産

(23)

23 4.4 評価尺度 評価尺度として,要望納期充足度α,品切れ率β,完成受注品の平均滞留日 数γ,作業負荷の分散δを用いる. 4.4.1 従来研究で用いられていた評価尺度 1)要望納期充足度α 要望納期充足度は要望納期を満たした受注品の個数 と受注品の個数 を用いて,以下のように求める. (4.10) ここで は要望納期を満たした受注品の個数となり, は受注品の個数と なる. 2)品切れ率β 見込品の品切れ率は,品切れ量の合計を総需要量で除したものとし,以下の 式より求める. (4.11) ここで は第t日末の見込品の在庫量となり, は第t日の見込品の需 要量となる. 4.4.2 本研究で新たに用いる評価尺度 3)完成受注品の平均滞留日数γ 完成受注品の平均滞留日数は,完成した受注品が納品するまでに滞留した日 数で以下の式より求める. (4.12)

= t t t os t de de

α

os t de det

− = t t t s t I

λ

β

) 0 , max( s t I

λ

st

− = j j k k k de du DT ,0) max(

γ

os t de det

(24)

24 ここで は受注製品kの納期指定日となり, は受注製品kの完成日と なる. 4)作業負荷の分散δ 実製造現場では作業時間に不均衡が大きく生じてしまうと作業負荷のムラに なってしまうと考えられる.本研究では作業時間の分散を平均で割ったものを 作業負荷のムラとしてとらえ以下の式より求める作業負荷のムラを評価尺度と して取り入れる. (4.13) ここで は作業時間の平均, は第t日の作業時間, は全期間の作 業時間の平均 となる. k DT duk

x

x

t

=

t t

n

x

x

ave

2

)

(

1

δ

ave

(25)

25 第5章 数値実験 5.1 実験目的 所与の受注品比率の下で座席枠設定パラメータε,座席枠変更パラメータξ および割り当て日決定パラメータDSが受注品の要望納期充足度α,見込品の 品切れ率β,完成受注品の平均滞留日数γおよび作業負荷の分散δに与える影 響を明らかにする. 5.2 実験条件 1)見込品の1週間の需要予測量をλとし,1日の需要量は平均 ,変動 係数 の正規分布に従い,単位加工時間 は基準化して1とする. 2)受注品の1週間の受注予測量を とし,1日の需要量は平均 のポア ソン分布に従うとする. 3)受注品の平均単位加工時間 は平均2の指数分布に従い,要望納期までの 日数は[3,4,5,6,7,8,9,10]の一様分布に従うとする. 4)一週間の日数を とし,総稼働時間の期待値 を 200 と する 5)総稼働時間の中で中品の生産時間がどれくらいの比率を占めているかを表 す変数として受注品比率τを用いる.受注品比率τは次式のように表され る. 6)シミュレーション期間は各水準ごとに 600 週とし,初期値による影響をな くすために最初の100 週を切り捨て,その後の 500 週のデータを用いて評 価する. ) / (λ L 2 . 0 = ρ d ) (ms⋅λ +mod λ τ ⋅ + ⋅ ⋅ = o o s m d m d m 5 = L ) / (d L o m

(26)

26 5.3 実験結果 図5.1~図5.3は座席枠設定パラメータεと評価尺度の関係を示したグラ フである. 図5.1は座席枠設定パラメータεと要望納期充足度αの関係を示している. 座席枠設定パラメータεを大きくすると要望納期充足度αが増加する.これは, 座席枠設定パラメータεを大きくすると受注座席枠が大きくなるためである. また,受注品比率τが小さいときは座席枠設定パラメータεの増加が小さい段 階で要望納期充足度αが増加していることがわかる. 図5.2は座席枠設定パラメータεと平均滞留日数γの関係を示している.座 席枠設定パラメータεを大きくすると平均滞留日数γが伸びている.これは受 注座席枠が大きくなると受注品が納期よりも早い時期に完成してしまうためで ある.また,受注品比率τが小さいときは平均滞留日数γが伸びやすいことが わかる. 図5.3は座席枠設定パラメータεと作業負荷の分散δの関係を示している. 座席枠設定パラメータεの作業負荷の分散δへの影響はあまりないことがわか る. 図5.1 座席枠設定パラメータεと要望納期充足度αの関係 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 要望納期充足度 α 座席枠設定パラメータε si=1.5 ξ=0.3 DS=0.0 τ=0.5 τ=0.7 τ=0.9

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27 図5.2 座席枠設定パラメータεと平均滞留日数γの関係 図5.3 座席枠設定パラメータεと作業負荷の分散δの関係 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 平均滞留日数 γ 座席枠設定パラメータε si=1.5 ξ=0.3 DS=0.0 τ=0.5 τ=0.7 τ=0.9 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 作業負荷の分散 δ 座席枠設定パラメータε si=1.5 ξ=0.3 DS=0.0 τ=0.5 τ=0.7 τ=0.9

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28 図5.4~図5.6は座席枠変更パラメータξと評価尺度の関係を示したグラ フである. 図5.4は座席枠変更パラメータξと要望納期充足度αの関係を示している. 座席枠変更パラメータξを大きくすると要望納期充足度αは増加する.これは, 座席枠変更パラメータξを大きくすると受注品の割り当てが可能な自由座席枠 が大きくなるためである.また,受注品比率τが小さいときは座席枠変更パラ メータξの増加が小さい段階で要望納期充足度αが増加する. 図5.5は座席枠変更パラメータξと平均滞留日数γの関係を示している.座 席枠変更パラメータξを大きくすると平均滞留日数γは増加する.これは,自 由座席枠が大きくなると受注品の割り当てが行いやすくなるため結果として納 期指定日より早い期間に受注品が完成してしまうと考えられる.また,受注品 比率τが大きいと平均滞留日数は増加しにくくなることがグラフからわかる. 図5.6は座席枠変更パラメータξと作業負荷の分散δの関係を示している. 座席枠変更パラメータξが0.3~0.5 あたりで作業負荷の分散δを低い値に抑え られることがわかる.また,受注品比率τが高いと作業負荷の分散に影響が出 にくいことがわかる. 図5.4 座席枠変更パラメータξと要望納期充足度αの関係 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 要望納期充足度 α 座席枠変更パラメータξ si=1.5 ε=0.5 DS=0.0 τ=0.5 τ=0.7 τ=0.9

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29 図5.5 座席枠変更パラメータξと平均滞留日数γの関係 図5.6 座席枠変更パラメータξと作業負荷の分散δの関係 0 1 2 3 4 5 6 7 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 平均滞留日数 γ 座席枠変更パラメータξ si=1.5 ε=0.5 DS=0.0 τ=0.5 τ=0.7 τ=0.9 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 作業負荷の分散 δ 座席枠変更パラメータξ si=1.5 ε=0.5 DS=0.0 τ=0.5 τ=0.7 τ=0.9

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30 図5.7~図5.9は割り当て日決定パラメータ DS と評価尺度の関係を示した グラフである. 図5.7は割り当て日決定パラメータ DS と要望納期充足度αの関係を示して いる.割り当て日決定パラメータDS を大きくすると要望納期充足度αは増加す る.また,受注品比率τが大きいと要望納期充足αには影響が出にくいことが わかる. 図5.8は割り当て日決定パラメータ DS と平均滞留日数γの関係を示してい る.割り当て日決定パラメータDS を大きくすると平均滞留日数は低下する.こ れは割り当て日決定パラメータDS を大きくするとバックワード方式に近い割 り当て方になり納期指定日に近い日からオーダーの割り当てを行っていくから である.また,受注品比率τが低いと,割り当て日決定パラメータDS が低い値 では平均滞留日数が高くなっていることがわかる. 図5.9は割り当て日決定パラメータ DS と作業負荷の分散δの関係を示して いる.割り当て日決定パラメータDS を大きくすると作業負荷の分散δが増加し ていることがわかる.また受注品比率τが大きいと作業負荷の分散δが増加し やすくなることがわかる. 図5.7 割り当て日決定パラメータ DS と要望納期充足度αの関係 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 要望納期充足度 α 割当て日決定パラメータDS si=1.5 ε=0.5 ξ=0.3 τ=0.5 τ=0.7 τ=0.9

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31 図5.8 割り当て日決定パラメータ DS と平均滞留日数γの関係 図5.9 割り当て日決定パラメータ DS と作業負荷の分散δの関係 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 平均滞留日数 γ 割当て日決定パラメータDS si=1.5 ε=0.5 ξ=0.3 τ=0.5 τ=0.7 τ=0.9 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 作業負荷の分散 δ 割当て日決定パラメータDS si=1.5 ε=0.5 ξ=0.3 τ=0.5 τ=0.7 τ=0.9

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32 図5.10および図5.11は要望納期充足度を 95%以上,品切れ率を5%以下, 平均滞留日数3日以内,作業負荷の分散0.5 以下に維持する政策変数の範囲を示 したグラフである. 図5.10は割り当て日決定パラメータ DS を 1.0 と一定した場合に条件を満 たす座席枠設定パラメータεと座席枠変更パラメータξの範囲を示している. 評価尺度を一定の値に維持するためには,座席枠変更パラメータξよりも座席 枠設定パラメータεを大きくしなければならないことがわかる.また,受注品 比率τが大きいときは座席枠設定パラメータεを大きくする必要があることが わかる. 図5.11は座席枠変更パラメータξを 0.5 と一定した場合に条件を満たす座 席枠設定パラメータεと割当日決定パラメータDS の範囲を示している.評価尺 度を一定の値に維持するためには,座席枠設定パラメータεと割当日決定パラ メータDS を大きくしなければならないことがわかる.これは,割当日決定パラ メータDS を大きくすることによって要望納期充足度αを増やせ,また,平均滞 留日数ξを大きくすることによって平均滞留日数γを著しく抑えることができ るからである.受注品比率τが大きいときは座席枠設定パラメータεと割当日 決定パラメータDS を大きくする必要があることがわかる. 図5.10 一定条件を満たすための座席枠設定パラメータεと 座席枠設定パラメータξの範囲 座席枠設定パラメータε si=1.5 DS=0.7 τ=0.5 τ=0.7 τ=0.9

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33 図5.11 一定条件を満たすための座席枠設定パラメータεと 割当日決定パラメータDS の範囲 5.4 結果の要約 (1)座席枠設定パラメータεを大きくすると受注品の要望納期充足度は増加 し,また,受注品の平均滞留日数は増加する.作業負荷の分散への影響 は小さかった. (2)受注品比率τが大きいとき,受注品の要望納期充足度を上昇させるには 座席枠設定パラメータεを大きくする必要がある. (3)座席枠変更パラメータξを大きくすると受注品の要望納期充足度は増加 し,また,受注品の平均滞留日数は増加する.作業負荷の分散は座席枠 変更パラメータξが0.3~0.5 あたりで低い値を示した. (4)受注品比率τが大きいとき,座席枠変更パラメータξの値が要望納期充 足度,受注品の平均滞留日数,作業負荷の分散へ与える影響は小さかっ た. (5)割り当て日決定パラメータDS を大きくすると受注品の要望納期充足度は 増加し,平均滞留日数は減少する.作業負荷の分散は増加した. 座席枠設定パラメータε si=1.5 ξ=0.5

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34 (6)受注品比率τが大きいとき,要望納期充足度と平均滞留日数は減少する. また,作業負荷の分散への影響はほぼなくなる. (7)要望納期充足度を95%以上,品切れ率を5%以下,平均滞留日数3日以 内,作業負荷の分散0.5 以下に維持するためには,座席枠変更パラメー タξよりも座席枠設定パラメータεと割り当て日決定パラメータDS を 大きくする必要がある.

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35 第6章 結論 本研究は,見込・受注生産環境において様々な見込・受注生産比率の条件下 で工程の能力設定のための政策変数,生産座席枠への割り当てのための政策変 数および受注品の割り当て日の決定のための政策変数が評価尺度である受注品 の要望納期充足度,見込品の品切れ率,受注品の平均滞留日数,および作業負 荷の分散に与える影響を明らかにした.また,評価尺度が一定の水準を維持す る政策変数の範囲を明らかにした. その結果,目標とする要望納期充足度,品切れ率,平均滞留日数,作業負荷 の分散を決定すれば,この4つを同時に満たす適切な政策変数の領域を求める ことができるようになった. 生産座席システムを実際の生産企業において実施するためには,まず,求め られた適切な能力設定のための政策変数と生産座席枠への割り当てのための政 策変数の領域が,経済的および技術的に実現可能であるかを検討する.その結 果,実現可能であると判断されれば,生産座席システムは構築可能となろう. 本研究の製造工程は単一で研究を行ったが,今後の研究課題として生産座席 枠の調整を考慮した場合や製造工程方段階の場合について解析する必要がある と考える.

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36 謝辞 本研究を進めるにあたり,終始丁寧にご指導をいただきました宮本裕一郎助 教に深く感謝の意を表します. また,研究全般にわたり有益なご助言をいただきました伊呂原隆教授に深く 感謝の意を表します. その他,本論文をまとめるにあたり,お世話になりました管理工学講座の皆 様に深く御礼申し上げます.

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37 参考文献

[1]Takayoshi Tamura,Seiichi Fujita and Takeo Kuga:“The Concept and Practice of the Production Seat System”,MANAGERIAL AND DECISION ECONOMICS,VOL.18,(1997) [2]田村隆善,藤田精一:“生産座席システムについての一考察”,経営システム, Vol.4,No.1,(1999) [3]阿久沢正:“電算機生産における生産座席予約システム”,経営システム, Vol.4,No.1,(1999) [4]久我健夫:“個別受注生産における生産管理システム―豊田工機座席指定シ ステムによる負荷の平準化”,Vol.4,No.1,(1999)

[5] Masaaki Ohba,Toshihumi Uetake and Hitoshi Tsubone:“Logistics innovation the film manufacturing industry”,The Journal of Manufacturing Technology Management,Vol.11,No.2,(2000)

[6]小林義和,坪根斉:“見込・注文生産環境における生産座席システムに関す る研究”,日本経営工学会論文誌,Vol.52,No.1,(2001)

参照

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