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良心館ラーニング・コモンズ 高頻度利用者の学習特性

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第一部  研究論文・文献紹介

良心館ラーニング・コモンズ 高頻度利用者の学習特性

同志社大学 学習支援・教育開発センター准教授  

浜島幸司

同志社大学 学習支援・教育開発センターアカデミック・インストラクター  

鈴木夕佳

同志社大学 学習支援・教育開発センター助教  

岡部晋典

〈要約〉

本稿では同志社大学良心館ラーニング・コモンズ(LC)のヘビーユーザー(高頻度 利用者)へのインタビュー調査から、彼らの利用実態と学習特性を明らかにした。LC 全体および一部エリアの利用統計を確認後、学生の利用目的、学習内容、自覚する学 習成果といった特徴を抽出した。LC内での学習行動パターンを確認した。これらの知 見をもとに授業外学習施設が果たす意義と今後の学習支援の方向性を論じた。

1.問題設定

本稿では良心館ラーニング・コモンズ(以下、LC)における学習行動の特徴をヘビー ユーザー(高頻度利用者)のインタビュー調査結果を用いて明らかにする。

現在、高等教育の潮流として大学生は大学で何を学んだのかを重視することが強く 求められている。そこでは適切に講義・演習が行われているか、学生がきちんと学ん でいるかを測定するといった、学びの質とその保証が問われている。

最近の学生調査の結果では大学生が学業を中心とした生活を送っていることが報告 されている(武内,2014)。大学生の学習時間に注目した谷村(2011)は調査データ から彼らの意識、態度、成績との関連を分析している。また、浜島(2014)はこれま で経年で実施されている「学生生活実態調査」データを再分析し、1996年から2011年 の間で大学内での滞在時間が50分ほど増加したことを明らかにし、学生の学びの時間 が増加したことを示唆している。これらよりOECD等による国際比較の結果は「最近 の大学生は勉強していない」という通俗的な言説と異なり、最近の大学生はキャンパ ス内で勉強に比重を置いた生活をしていることが推察される。

学内で学習する大学生を支援するためにLCをはじめとして授業外学習施設が各大学

(2)

に新規で設置もしくは増改築されはじめている。しかし、施設利用者の学習成果につ いて論じた研究は山田(2014)による調査分析1)があるものの絶対的な数は依然とし て少ない。現在の学生がどのような学習行動をしているかを把握しておくことは大学 生の学習成果を問うことと同時に、大学側が学習空間のより円滑な運営に資するため にも急務であるといえる。

そこで本研究では施設内を高頻度で利用する学生に注目して、彼らの学習行動を探 るべくインタビュー調査を実施した。この手法を選択した理由は高頻度利用者(ヘビー ユーザー)の利用特性を当事者の声および経験を質的な側面から収集し、探索的に迫 るためである。

本稿の構成は以下のとおりである。第2章ではLCの概要と各エリアを紹介したうえ で筆者らが収集した利用に関する統計データを確認する。第3章では今回の調査概要 と結果を示す。第4章では得られた知見をまとめる。第5章では結果を踏まえて授業 外学習施設が果たす意義と今後の学習支援の方向性を論じる。

2.LCの概要と利用状況

・概要と各エリア紹介

2013年4月、同志社大学は今出川キャンパスの「良心館」の2Fと3Fに広さ2,550㎡

のLCを設立した。ここに来れば自然と勉強したくなるような「知的欲望開発空間」を コンセプトに学生同士で語り合い、触発しあいながら学習できる空間づくりが企図さ れている。空間づくりの具体的な特徴のひとつとして各エリアを仕切る壁がほとんど なくお互いの学習状況が見えるようになっていることが挙げられる。また、LC内にあ る様々な机や椅子、ホワイトボードは移動性・可変性を重視しており、学生らが学び の形態によって自由に組み替えたり、移動させて使用したりすることができる(井上,

2013 岡部・鈴木,2014)。

2Fは「クリエイティブ・コモンズ」というコンセプトで、学びの交流と相互啓発 を主眼としたフロア設計になっている。2Fは4つのエリアで構成されている。それ ぞれ、「プレゼンテーションコート」、「インフォダイナー」、「グローバルビレッジ」、「グ ループワークエリア」という名称である。3Fは「リサーチ・コモンズ」というコン セプトで、アカデミックスキルの育成空間を主眼としている。3Fは5つのエリアで 構成されている。それぞれ、「グループスタディールーム」、「ワークショップルーム」、

「プリントステーション」、「マルチメディアラウンジ」、「アカデミックサポートエリア」

(3)

第一部  研究論文・文献紹介 という名称である(岡部・鈴木,2014)。各階には貸出ノートPCロッカーがあり、学

生証があればLC内に限り自由に貸出・返却できる。LC内にはプリンタもあるので印 刷も自由におこなえる。各エリアの概要を表1に、エリアマップを図1にそれぞれ示 した。

LCは利用学生が仲間と集まって学ぶ場所であるにとどまらず、講演会や報告会の実 施、専門スタッフへの学習相談、プレゼンや映像の編集、文集やポスターの印刷など、

学習に関する人的支援や設備が用意されている。

表1 良心館ラーニング・コモンズの各エリアと概要

階 エリア名称 概要

2F

グローバルビレッジ ・ 留学コーディネーターが疑問・質問や不安に対して適切なア ドバイス。

・通路に面したハイカウンターで、国際交流(日本語禁止)。

・ 3つの大画面で海外放送(世界170局)をみながら、情報交換 可能。

グループワーク エリア

・ 台形や四角い机、あるいは勾玉型の机を組み合わせて、数人 から10数人までの小セミナー会場にセッティング可能。

・机を組み合わせて行うさまざまなグループワークに便利。

プレゼンテーション コート

・ オープンかつフレキシブルな使い方ができるラーニング・コ モンズのシンボルエリア。

・ポスターセッションや展示会としても利用可能。

インフォダイナー ・ 短焦点プロジェクター/プラズマディスプレイとホワイト ボードのあるファミリーレストラン風ボックス(全16席)。

3F

デスクトップPC ・自習用のために62台を常設。

マルチメディア ラウンジ

・専属スタッフが常駐している編集スタジオ。

・画像制作と処理、動画編集など、作業可能。

プリント ステーション

・ セルフコピーのほか、ポスター・ちらし印刷、製本、名刺、T シャツ・グッズ作成、ラミネート加工など業務展開。

・専属スタッフが、印刷やデザインに関する相談にも応じる。

ワークショップ ルーム

・アカデミックスキルの講習会などを開催。

・簡易スタジオとしても使用可能。

グループスタディー ルーム

・グループ学習可能な空間(全7部屋)。

・ホワイトボード、電子黒板などが使用可能。

アカデミック サポートエリア

・ 専門スタッフが常駐し、さまざまな技術的、現実的な問題に 対して、サポートとチュータリングを実施。

出典:http://ryoshinkan-lc.doshisha.ac.jp/usage/

(表現等を一部、加筆修正している)最終アクセス日:2015年5月11日

※3FデスクトップPCについてはHPの記載はなかったため筆者らが追記した

(4)

〈2F〉

〈3F〉

図1 良心館ラーニング・コモンズの各エリアマップ

出典:同志社大学受付管理・備品貸出管理システムHPより

(http://sakura.doshisha.ac.jp/)最終アクセス日:2015年5月11日

(5)

第一部  研究論文・文献紹介

・利用状況

本節では本研究においておこなうインタビュー調査の背景を確認するために量的側 面からLCの利用動向を確認する。

図2は平日(月曜から金曜[開館日のみ])の一日あたりLC平均入室者の推移を示 したものである。初学期開始の4月は2,000人以上の利用があり、4,000人近くと増えて いる。期末試験後の8−9月の利用は減少する。10月に入り2,500人以上の利用が続く が、期末試験後の2−3月になると利用は少なくなる。これらのように学生生活のイ ベント(試験期間・休暇期間など)に応じて、一日あたりのLC利用学生数に差異がみ られる。

(人)

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

2013年度 3,369 989 787

2014年度

2,384 2,744 2,623 2,675 3,265 2,625 513 663 987 767 3,946 3,949 3,407 3,376 3,296 3,085 2,236 2,281 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000

図2 良心館ラーニング・コモンズ(平日1日あたりの平均来室者数)

2013年4月〜2014年12月

2014年度4月から12月の学部学年別の延べ入室者数を示したものが図3である。ま ずは法学部、経済学部、商学部、文学部学生の利用が多い。今出川キャンパスから離 れた学部、とりわけ京田辺キャンパス学部(文化情報学部、理工学部、生命医科学部、

心理学部、スポーツ健康科学部、グローバル・コミュニケーション学部)の学生利用 は少ない。学年別では1年次生の利用が多い。次いで2年次生、3年次生、4年次生 の順となる。小山(2014)は初年次にレポート執筆のための学習行動できたかどうか によってその後の学習習慣に差異が生じることを指摘している。ここから1年次生の

(6)

利用が多いLCでは継続的な学習習慣を促す場所になりうることが示唆される。

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図3 2014年度 良心館ラーニング・コモンズ 学部学年別延べ入室者総数 2014年4月〜12月

・2Fと3Fの予約エリアの利用状況

LCではいくつかのエリアで利用の際に予約が必要となる。ここでは各月の2Fイン フォダイナー(図4)と、3Fグループスタディールーム(図5)の予約利用件数(合 計)の推移を示した。なお、2013年6月16日より各エリア予約システムのログダウン ロードシステムが稼働しはじめたため、同年7月からのログを分析対象としている。

インフォダイナーは全16席用意されており、2名以上で利用するという条件がある。

利用は1回の予約につき2時間以内と制限がある。ここは飲食可能な場所でもあるた め、お昼時になると多くの学生で賑わっている。図4が示すように春学期開始の4月 から7月にかけて予約件数が増加し、秋学期開始の10月以降に再び利用件数が2,000を 超えている。

グループスタディールームは全7部屋あり、そのうち5部屋が利用時に予約を必要 とする。本稿ではその5部屋を分析対象とする。またインフォダイナーと同様、利用 は1回につき2時間以内と制限がある。本エリアの存在する3Fは全面的に飲食禁止 になっている。インフォダイナーは一席あたり6人程度の利用が限度であるが、グルー プスタディールームはそれ以上の人数規模(おおむね10名程度を想定)での話し合い スペースとして活用されている。図5より春学期開始の4月は152件の予約であるが 5月以降大幅に増加し6−7月では550件を超える利用がみられる。秋学期開始の10

(7)

第一部  研究論文・文献紹介 月になると400件以上の利用がある。

(件)

インフォダイナーは全16席が予約対象 予約開始は、2013年7月以降 2F インフォダイナー予約利用件数(月合計)

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

2013年度 1,8771,075 630

2014年度 1,241

1,599 1,819 1,818 2,051 2,215 1,981 805 610 771 585 2,452 2,589 2,305 2,042 0

500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000

図4 良心館ラーニング・コモンズ 2Fインフォダイナー 各月別予約利用件数 2013年4月〜2014年12月

(件)

グループスタディールームは5部屋が予約対象 予約開始は、2013年7月以降 3F グループスタディールーム予約利用件数(月合計)

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

2013年度 402 153 64

2014年度 152

339 391 446 466 467 415 107

76 185

96 582 565 552 373 0

100 200 300 400 500 600

図5 良心館ラーニング・コモンズ 3Fグループスタディールーム 各月別予約利用件数 2013年4月〜2014年12月

(8)

予約利用件数の結果からインフォダイナー、グループスタディールームともに授業 期間中(春学期、秋学期)に多くの利用があることがわかる。

・3Fアカデミックサポートエリアの学習相談と相談回数

学習相談を実施しているエリアが3Fアカデミックサポートエリアである。ここで はインストラクター3名、ラーニング・アシスタント(LA)2名、図書館より情報 探索アシスタント1名でチームティーチングを行っている。学習相談を受け付けた際 には「名前」、「学籍番号」、「相談日」、「相談時間」、「相談内容」、「対応内容」といっ た項目を記録している。これらのデータは統計的に処理され、個人が特定されない形 で集計を行い、学内外に学習相談状況を公表している。学習相談の記録は2013年4月 よりおこなっている。

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月12月 1月 2月 3月 2013年度(延べ755名) 39

2014年度(延べ739名) 50

6 31 87 86 151 58 78 53 61 25

8 29 27 134 132 101 110 106 122 0

20

(人数)

40 60 80 100 120 140 160

図6 良心館ラーニング・コモンズ 3Fアカデミックサポートエリア 学習相談 各月別人数 2013年4月〜2014年12月

各月ごとに相談件数をまとめ、その推移を示したものが図6である。2013年度は延 べ755名、2014年度は12月までで延べ739名の学習相談を受け付けた。学期開始月から 徐々に相談件数が増えていき試験期に相談のピークを迎えるとくに2014年12月には 151件の相談があり、卒業論文作成に関する質問が多く含まれている。

2014年度4月から12月までの学部別相談件数を示したものが図7である。社会学部、

経済学部、商学部、法学部からの相談が多い。社会学部は良心館のあるキャンパスか

(9)

第一部  研究論文・文献紹介 らやや離れたところに位置しているためか入室者自体は少ないが(図3参照)、学習

相談の利用者は他学部よりも多い。

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図7 良心館ラーニング・コモンズ 3Fアカデミックサポートエリア 学習相談 学部別人数(2014年度) 2014年4月〜12月

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図8 良心館ラーニング・コモンズ 3Fアカデミックサポートエリア 学習相談 相談の内訳件数(2014年度) 2014年4月〜12月

(10)

図8では学習相談の内訳を示した。相談内容としては「レポートの書き方」、「調査・

研究の方法」、「その他」が多い。そのなかで時期ごとの特性を述べておくと、2014年 7月は「レポートの書き方」に関する相談が多くあり、12月は卒業論文に関する内容 が多くを占めた。

2014年4月から12月までの相談回数別の人数(割合)とユニークユーザー(一度で も相談に来た学生)数、相談回数平均・標準偏差・中央値・最大回数を表2に示す。

2014年度4月から12月に相談を寄せた739名のうち、ユニークユーザーは309名である。

少数ではあるが「10回以上」相談に来る学生もいる(1.9%)。なお、最大相談回数は「46 回」であった(1名)。

表2 良心館ラーニング・コモンズ 3Fアカデミックサポートエリア 学習相談 相談回数・ユニークユーザーの比較

2014年4月〜12月

人数 割合

相談回数

1回 191 61.8%

2回 50 16.2%

3回 24 7.8%

4回 7 2.3%

5回 7 2.3%

6回 4 1.3%

7回 7 2.3%

8回 7 2.3%

9回 6 1.9%

10回以上 6 1.9%

ユニークユーザー総数 309 100.0%

延べ総数 739

情報 平均 2.39

標準偏差 6.82

中央値 1

最大 46

以上、LCの利用程度を数値で確認した。ここからは実際に学生の具体的な利用内容、

評価、要望など、「利用者の声」を集め、分析する。次章にてインタビュー調査の概 要と結果を示す。

(11)

第一部  研究論文・文献紹介

3.インタビュー調査

3−1 調査の概要

本研究では学生のLC利用実態の把握のため「LC利用に関するインタビュー調査」

を実施した。実施概要は以下のとおりである。被調査者の一覧を表3に示す。

表3 被調査者一覧(インタビュー日順)

No 対象者名 学部 学年 性別 インタビュー日 備考 1 A 文 4 女性 2014年10月17日

2 B 法 2 男性 2014年10月21日

3 C1 商 3 女性

2014年10月22日 3名1グループ

4 C2 商 3 女性

5 C3 商 3 女性

6 D 文 2 男性 2014年10月22日 7 E 政策 1 男性 2014年10月22日 8 F GR 2 女性 2014年10月27日

9 G1 法 2 男性

2014年10月29日 2名1グループ

10 G2 GR 2 男性

11 H 商 3 男性 2014年10月31日 12 I 文 3 女性 2014年10月31日 13 J 経済 2 男性 2014年11月6日 14 K 政策 1 男性 2014年11月14日 15 L 商 4 女性 2014年11月20日 16 M 商 4 男性 2014年11月20日

17 N1 経済 3 男性

2014年11月26日 2名1グループ

18 N2 経済 3 男性

19 O 神 1 女性 2014年12月4日

注)GRはグローバル地域文化学部

・調査目的:開館2年を経た段階でのLCの具体的な利用状態を知るため

・調査方法:個人もしくはグループに対し、半構造化インタビューを実施

実施にあたっては学習支援・教育開発センター内で実施要項、項目案を 作成し、関係部局に周知・協力の依頼をおこなった。インタビューはア カデミックサポートエリアの教員がおこない、対象者の同意を得てICレ コーダーに保存した。個人情報を含め記録は厳重保管している。

・調査時期:2014年10月〜12月

(12)

・調査場所:LC内(2Fもしくは3Fの周囲に話し声が漏れない場所を利用)

・対 象 者:LCの各エリアを高頻度で利用する学部生(19名[個人とグループ])

高頻度利用者の推薦はLC 2F受付スタッフに協力依頼をした。アカデ ミックサポートエリア利用者は教員間で検討し、対象者に依頼した。

・調査主体:学習支援・教育開発センター

・調査項目:下記の項目を「インタビューシート」に盛り込み、流れに応じて質問

①LC内利用エリアの目的

②LC内利用エリアでの学習活動(活用頻度と活用内容をあわせて聞く)

③ ICT機器(プロジェクター、電子黒板等)やホワイトボードなどの設 備の利用

④LCを利用することによって、自分が感じる学習成果

⑤現在のLCの状況・サービスの満足度

⑥LCスタッフでサポートできること

⑦LCについて言いたいこと

⑧図書館やラウンジ等と、LCをどのように使い分けているのか

本インタビュー調査は上記調査時期に打診し、調査への同意が得られた学生を対象 として実施された。よってLC全体の利用動向を代表するものではない。しかし学生の LC内の利用を語る声としてはLC開館以降初の質的調査資料であり、現在のLC像のス ナップショットの一つとして報告する価値は十分あると考えられる2)

3−2 インタビューの結果

・高頻度利用者(ヘビーユーザー)の利用頻度 本節ではインタビューの結果について紹介する。

まず、LCを日頃どのくらい利用しているかを尋ねた。被調査者は全員LCを活用し ているが、その活用の仕方は3つのパターンに分かれた。

(1)学期中に常時利用し、かつ「ほぼ毎日」利用している

(2)学期中に常時利用し、かつ「平均すると週に1−2回」利用している

(3)レポート等の締め切り直前など、必要に応じて「ほぼ毎日」利用している

(1)にあてはまる学生は(B, D, J, K)であり、(2)は(A, E, F, G, I, L, M, O)、(3)

(13)

第一部  研究論文・文献紹介 にあてはまるのは(C,  H,  N)であった。LCを利用する時間には個人差があるものの、

平日の「閉館時間(22時)まで」を自分の学習で利用するという発話(B, D)や、グルー プで「朝(9時)から閉館までずっと居る」(C,  H)というきわめて長い時間をLCで 過ごしているという発話もあった。一方で数分だけといった短時間の利用といった発 話は今回の被調査者にはいなかった。

・利用目的、利用場所

全体を通してLCの利用目的として授業の予習・復習に関する発話が多くを占めた。

また一部ではあるが勉強系サークル(G,  N)、資格取得(B)に向けて利用しているこ ともわかった。被調査者たちの1週間の予定は授業を中心に構成されていた。他にも サークル活動、アルバイトなどの学外活動もおこなっている学生もいるものの学外活 動が主たる学生生活を占めているわけではなかった。また、彼らの中でLCの存在は図 書館、学部所有の学習室、PC教室、ラウンジ、サークル棟などと同様に学生生活を過 ごすための意味のある大学内施設の一つとして認識されていた。

そこでインタビューでは対象者に自らが利用するエリアについてひとつ挙げても らった。表4はこの結果について記した。●は主な利用エリアとして発話したもので あり、◯は使った経験があるエリアを示している。表4のとおりエリア問わず広範囲 に利用(表内の●と○が多い)する学生と、一部のエリアを重点的に利用(表内●と

○が少ない)する学生の2つに傾向が分かれた。

主な利用エリア(●)と利用したことがあるエリア(○)について調査したところ、

インフォダイナーやグループスタディールームはグループによる学習として利用して いる(A, E, H, J, L, M, O)との発話が得られた。また、自分ひとりで学習する場合に は2Fグローバルビレッジやプレゼンテーションコート(A, B, D, H, J)、3Fではデ スクトップPC(A, H, I, J, K, L, M, O)を利用するとの発話が得られた。

(14)

表4 被調査者の良心館ラーニング・コモンズ利用エリア

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次に各エリアでおこなっている具体的な学習内容について得られた発話を列挙す る。2Fについては下記のとおりである。

〈グローバルビレッジ〉

「留学コーディネーターへの留学相談」(E, F, I)

「長机のあるところで、授業のための自習」(D)

「海外放送が見られるエリアで実際に英語のヒアリング」(K)

「海外放送が見られるエリア横の丸いテーブルでゼミメンバーと相談、打ち合わせ」

(N)

〈グループワークエリア〉

「ゼミメンバーや自主勉強会の仲間と打ち合わせ」(N)

〈プレゼンテーションコート〉

「予約のないときにノートPCを借りて自習」(A, B, H, J)

「インフォダイナーの予約が取れないときにグループで相談、打ち合わせ」(H)

〈インフォダイナー〉

「ゼミでの打ち合わせ」(A, B, C, D, E, F, G, H, J, K, L, M, N, O)

「勉強系サークルの活動場所として利用」(G, O)

(15)

第一部  研究論文・文献紹介 これらの調査のなかで特徴的であると思われる発話を取り上げる。インフォダイ

ナーでは利用時間に制限がある。被調査者のMは利用時間を意識して以下のように学 習を進めている。

   卒論をグループでインフォダイナーをよく利用しているのですが、1回の2時間 をかなり意識しています。とはいってもいきなりグループで話し合いは進みませ ん。まず、開始の30分ぐらいは雑談を交えながら、緊張をほぐすことに使います。

そのあとで自由に意見を出し合い、ホワイトボードに書き込んだり、PCを接続 した大画面をみながらコメントを入力したりしています。徐々に集中力を高めて いって残り30分で今回の話し合いの「まとめ」を必ずして成果と次にすべきこと を共有します。(M)

続いて3Fでの具体的な学習内容である。

〈デスクトップPC〉

「授業の予習・復習または資格取得のための自習」(A, H, I, J, K, L, M, O)

〈マルチメディアラウンジ〉

「(2014年度秋学期に導入された)3Dプリンタの利用」(A, K, L)

「手書きのメモをファイルにするためにスキャナを利用」(B)

〈プリントステーション〉

「授業の課題で特別な用紙での印刷指示があり、相談と利用」(O)

〈ワークショップルーム〉

「勉強系サークルでのメンバー間で共同学習」(G)

「その時間に予約が入っていなければノートPCを借りて授業の予習・復習」(A, H)

〈グループスタディールーム〉

「ゼミや勉強仲間との相談、打ち合わせ」(A, C, E, G, H, J, L, M, N, O)

〈アカデミックサポートエリア〉

「サポートエリアに常駐しているスタッフへ学習相談」(J, L, M)

・利用のきっかけ

本節ではLCを認知し、利用に至った経緯について報告する。LCが開館したのは 2013年4月1日である。LCの開室時期と現在の2年次生の入学時期は同時であり、2 年次生以下は違和を感じることなく利用していることが確認された(B, D, E, F, G, J, K, 

(16)

O)。3年次生以上は在学途中からLCができたということもあり、友人や教員からの 情報を入手して利用したという意見が得られた(A, C, H, I, L, M, N)。

グローバルビレッジに常駐する留学コーディネーターへ相談に行った学生は「留学 関係部署に置いてあったパンフレットを見た」(I)ことがきっかけだったという。他 の留学相談者は「友だちから一度、行ってみるといいと言われた」(E, F)という。同 様にマルチメディアラウンジを利用した学生は「友だちがFacebookで、『3Dプリン タを今なら無料で使用できる』と書いてあったので行ってみた」(A)と発話している。

アカデミックサポートエリアでは具体的な学習に関する相談ではなく「PCの操作を 聞きに行ってみた」(J)ことが利用のきっかけという発話が得られた。スタッフと一 度話をしてみることで「学習相談に対する敷居が低くなった」(J)という。同じく「な んとなく顔を出してみたら面白かった」(M)という発話もある。反対に「LC内に設 置してある『学習相談をしています』、『レポートの書き方を教えます』と示された看 板を見て『相談に行こう』と思いました」(L)と個人が相談してみたいと思い悩んで いたことを解決するために足を運んだという発話もある。アカデミックサポートエリ アへの利用については多様なきっかけが存在することが推察される。

ゼミといった正課科目の課題がある場合、2Fインフォダイナーや3Fグループス タディールームの利用の際は「必要に迫られて」(C,  G,  N)使っているという発話が 得られた。また、他にも「高校の進路指導の先生からLCの存在を聞かされており、入 学したら『行ってみたい』と思っていた」(O)との発話もあった。

・LCの設計思想とその受容

LCの基本設計思想は壁を取り払った利用者間の学びの双方向性にある。自らの学び が他者の学びに影響を与えることもあれば、逆に他者の学びから刺激を受けるという

「構成主義的」な学びを実現するための設計が企図されている(井上,2013 岡部・鈴木,

2014)。このことについて設計者側の大学の意図と実際に利用する学生たちの受容は どのような共通項、異質項があるかを問うた。

インフォダイナーの機器利用については「(他の利用者が)ホワイトボード、プロジェ クターをうまく活用していて感心するし見習いたい」(A,  F,  J)という発話があった。

このように他者の学びを好意的に評価するものもいるが「自分たちの議論が白熱して いるときに周囲がうるさいのは気になってしまいます」(M)という発話をおこなう ものもいた。また、自分が勉強しているときに周りを見回して「自分の他にもここで 勉強している学生がいると感じる」(D,  J)という発話もあり、LC利用者の一人とし

(17)

第一部  研究論文・文献紹介 て自らは学びの場の一員であるという共通意識を持っていることがうかがえる。

LCは静寂を旨とした場ではない。これに対する意識としては「話し合うのがLCの 特徴なので、それが嫌ならば自分が図書館に行って勉強すればよい」(B,  H)、よほど のことでなければ周囲が「うるさくても気にならない」(D)という発話が得られた。

中には「自分は多少うるさいほうが勉強に集中できるのでちょうどよい」(B)という 発話もあった。

・自覚する学習成果

被調査者の学習効果についての自覚を「意識面」と「能力面」から整理した。「意識面」

については「知的好奇心」(M)、「科目内容の理解」(D)、「勉強時間の増加」(N2)、「留 学目的の強化」(E, F)という内容であった。「能力面」については「レポートの書き方」(J,  L)、「文献の調べ方」(L)、「チームワーク」(H, O)、「PC操作」(N1)という内容であった。

たとえば「レポートの書き方」について、以下の2つの発話を紹介する。

    (学習相談前は)レポートを書いていても自分の思うほど点数をもらえてない なという感覚がありました。しっかり書きたいと思ったのでアカデミックサ ポートエリアに行き、ここで『起・承・転・結』のように筋道を意識した書き 方を教えてもらいました。その後、レポートだけでなく、就職活動でも実際に 意識してやってみました。(L)

    (アカデミックサポートエリアのスタッフは)身近な相談相手だと感じていま す。最初、1年次の春学期は書式の問題等でレポートの成績があまりよくなかっ たのですが、最近ではレポートの成績が上がってきたと感じています。これま で(アカデミックサポートエリア)の相談でいただいたメモを見ながら、レポー トを書くようにしています。(J)

「文献の調べ方」については以下のような発話が得られた。

    (学習相談後)自分で調べる能力がずっと上がったと思っています。これまで はWikipediaを見たりしていたのに、学内検索ポータルサイト(DOORS)や CiNiiなどのデータベースを(自分で)検索できたりするようになりました。友 だちにも教えてあげられるようにもなりました。(L)

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以上のように被調査者のなかには、LCを用いたことで他者にも教えることができる といった学習に対する自信を獲得したものもいる。

・施設への満足と要望

〈スタッフに対して〉

グローバルビレッジの留学相談コーディネータースタッフは「丁寧に対応してくれ ている」(F,  E,  I)と高い評価であった。「留学することを目的にするのではなく、留 学して何をしたいかを考えさせてくれたこと」(F)が有益だったという。

アカデミックサポートエリアのスタッフに対しては被調査者からは学習相談対応に 満足(J,  L,  M)であるものの、更なる要望として「レポートの内容にも踏み込んでコ メントしてほしい」(J)との発話もあった。「レポートの書き方」に関する相談に対 してはスタッフ間でレポートを書くために必要な形式を優先するように申し合わせて いる。これはアカデミックサポートエリアが単位認定や成績評価そのものといった正 課の授業担当教員の裁量の領域(および各教員に帰する説明責任の領域)に踏み込ま ないためにおこなっている措置である。しかし、何度も学習相談に足を運ぶ学生とも なると形式だけでなく、もっと踏み込んだアドバイスが欲しいと感じている。加えて

「学習相談は2Fにも人が常駐していたほうがよいのではないか」(N)、「留学生を対 象としたセミナーもあると嬉しい」(K)と、さらにサポートの量・質の拡充を求める 声も挙がっている。

〈告知・宣伝〉

LC内の告知、宣伝について本対象者たちは口を揃えてよくわからないという。今回 の被調査者はLCのヘビーユーザーである。にもかかわらず、LC内の大型画面で映像 配信されているサイネージ情報は見ていない。さらにほとんどの発話者が当LC専用 HPの存在すら知らない。2014年度から2Fと3Fの各エリアの利用状況をリアルタ イムで知らせる機能もウェブページに追加したものの今回の被調査者には浸透してい ない。

3Fアカデミックサポートエリアについてもここを主なエリアとして利用する学生 以外には知られていないことがわかった。「スタッフが誰なのかもっとわかるように したら相談が増える」(L)、「留学相談は2F入口のすぐそばでしかもいつも学生が 相談している様子を見ることができるので何をやっているのかはだいたいわかるが、

3Fの学習相談は入口からかなり奥まで進まないとわからない」(O)との意見が得ら

(19)

第一部  研究論文・文献紹介 れた。

〈飲食〉

LC内での飲食に関する要望が挙がっている。「長時間いるのでせめて3Fの飲料だ けでもOKにしてほしい」(C, F, H)はヘビーユーザーならではの意見である。また「飲 食禁止の境界がわかりづらい」(E)、「2Fでは飲食可能なエリアがあるにもかかわら ず、3Fでは全面飲食禁止というのをどのように学生に納得させる説明ができるのか」

(A)といった質問、意見があった。

〈設備・運営〉

今後のLC改善についてさまざまな発話が得られた。「情報はすべて開示してほしい」

(B)、「2Fのグローバルビレッジは一部日本語禁止なのに日本語で話している人がい るのはどうかと思う」(O)、「自主勉強会を告知するような掲示板があると嬉しい」(G)、

「もっと長く開館してほしい」(C, J)、「空調が暑かったり寒かったりする」(N)、「ノー トPCの電源を差し込むコンセントが少ない」(L)と、各自の利用に即したLCへの改 善を訴えている。

貸出ノートPCを使用したことがあるすべての学生からノートPCの不具合および処 理速度の遅さへの不満が述べられていた。今回の調査時期にPCの不具合が頻発し、不 具合の解消方法が確定していなかったことが重なったため言わずはいられなかったと 推察される。

4.インタビューを踏まえた学生の学習特性についての考察

インタビューから得られたLC利用者の学習特性を「ラーニング・コモンズの利用類 型」、「LC内の使い分け」、「LCとそれ以外の学習空間の使い分け」、「友人、スタッフ から必要な情報を得る」の観点からまとめる。

4−1 ラーニング・コモンズの利用類型

3章の結果からわかるように、学生はLCを目的によって使い分けている。ここでは 3章2節での非調査者の利用実態をもとに、学生によるLC利用の類型化をはかる。ま ずLC内で彼らが「個人で学ぶため」に来館しているのか、それとも「対人で学ぶため」

に来館しているのかという軸が存在する。さらにLC内「空間の利用」を目的とするの

(20)

か、それともLC内で展開されている「サービスの利用」を目的とするのかという軸が 存在する。この2つの軸を交差しマトリックスにした類型を図9に示した。図9の各 象限における特徴的な学習行動について述べる。

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図9 良心館ラーニング・コモンズの利用類型

「自習」はプレゼンテーションコート(イベント等の予約がない場合)、グローバル ビレッジの長机のあるスペース、ワークショップルーム(事前に予約がない場合)等 の空間を利用した「個人による」学習パターンである。

「学習教材の利用」はデスクトップPCやノートPCを使用した学習教材(たとえば図 書館が作成した学習動画を用いた学習、語学教材のDVD閲覧)を利用した個人による 学習パターンである。ほかにも、一人でマルチメディアラウンジの機材を用いて情報 編集技術を自習するといったパターンもこの象限にあてはまる。なお、念のため付言 しておくと今回の調査において「学習教材の利用」、たとえばe-Learningに対して多大 な学習時間を費やしていると発話した学生は存在しなかった。しかしながら筆者らが 日常的にLCにおいて業務に従事するなかで、「孤独な学習」をおこなっている学生は 一定数観察されるため類型のなかに取り入れた3)

「グループ学習」はインフォダイナー、グループワークエリア、プレゼンテーショ ンコート(イベント等の予約がない場合)、グループスタディールーム、ワークショッ プルーム(事前に予約がない場合もしくは自分たちで予約する場合)を利用した対話 や作業に基づいた集団による学習パターンである。

「専門スタッフへの相談」はグローバルビレッジでの留学相談、マルチメディアラ ウンジでの専用ソフトの操作方法、アカデミックサポートエリアでの学習相談など、

LC内の各エリアが提供する人的サービスを利用した学習パターンである。

(21)

第一部  研究論文・文献紹介 以上の類型が示すように、利用者たちは「自習」、「学習教材の利用」、「グループ学

習」、「専門スタッフへの相談」と自らの目的とする用途にあわせてLC内の空間やサー ビスを使い分けている実態がある。

4−2 LC内の使い分け

本節では学生はLC内のどこをよく利用し、反対にどこを利用しないのかについて考 察する。今回の被調査者はLCを学習するための施設として認識している。授業および 勉強を中心とした学生生活を送る際には頻繁にLCを利用しているとの発話が得られて いる。さらに学生たちは利用エリアを意識的に使い分けていることが明らかになって いる。たとえば2Fを中心に活動する学生は3Fには行かないという発話が得られて いるのがその証左である。「留学相談が終わればすぐにLCを出る」(E,  F,  I)、「階段で 移動するのが面倒。2Fに人が一杯だったら、もう3Fへ行かない」(N1)等の発話 がそれにあたる。「インフォダイナーの人気は飲食が認められた空間だから。そこは 3Fとは違う」(M)といった発話も認められた。これらから被調査者たちは学習上 の必要性に従ってエリアを使い分けていることがわかる。

他にも2Fと3Fとの違いについて以下のような発話が得られた。「3Fの落ち着 いた雰囲気が好き」(G)、「2Fはブレインストーミングの場で、3Fは討論を深める 場」(H)、「2Fでは見知らぬ学生に話しかけることもできるが、3Fはみんな静かに 勉強していて、それはできない」(K)等の発話にあるように、学生らはエリアごとの 環境特性による学習空間の違いを自覚している。LCを利用する学生は他者の存在は意 識している。とくに2Fの使い方において顕著であるが、他者の発する音やざわめき はLCを利用するうえでの前提条件として受容されている。これより学びの場において は「静かにしなければならない」という通俗的な言説を覆す学びを学生が実践してい ることがわかる。同様に、静かにしなければならないという場合は図書館へ行くといっ た使い分けをおこなっていることもわかる。

ただし、エリアごとの環境特性による学習空間の使い分けをおこなっていることは 本調査で明らかになったものの、本LCの設計意図である「構成主義」的な設計思想が 直接的に学びに反映しているかどうかについては今後の検証課題となるであろう。と いうのも「(周囲の学生が)何を書いているのか凝視するまではしない」(J)といっ た発話にあるようにインタビューした被調査者たちのオープンスペースへの受け入れ 方は他者から「学ぶことを学ぶ」ところまでには至っていないことが推察される。た だし付言しておくと、今回の調査では被調査者は他者の学び方を認識していないこと

(22)

がわかったに過ぎない。この結果をもってして、構成主義的設計思想は学生の学びに 影響を与えていないという判断は拙速でもある。「構成主義的」な設計という意図と、

学生の学習のありかたの変容といった結果のこの2つの一致点が観察しうる可能性は 依然として存在するため、設計思想に対する学生の受容については今後の検証課題と して留保しておきたい。

4−3 LCとそれ以外の学習空間の使い分け

学生による学習空間の使い分けはLC内部だけではなく、LC以外の学習施設に対し ても認められる。

インタビューからLCは他の学内施設とは異なる空間であると意識されていることが わかった。LCが開館したことによって「大学でグループが集まって相談するようになっ た」(H)、「図書館内のグループ学習室ではなく、LCを使うようになった」(Cグループ)、

「キャンパスは遠いけれども、LCのほうが勉強しやすい」(E)、「ノートPCは新町キャ ンパスでも借りられるが、新町キャンパスにはLCと同じような学習する環境がない」

(K)といった発話が得られた。つまりLCのほうが他の学内空間に比べて(集団的な)

学習に適している環境との認識がなされている。

LC以外の学習環境として、たとえば学内では図書館、学部所有の学習室、PC教室、

ラウンジなどがある。また大学外では自宅や喫茶店、ファミリーレストランなどが存 在する。これら各施設との使い分けについても「図書館は本を借りる場所」(A)、「ど うしても静かに集中したいときは図書館に行く」(D)、「ラウンジではうるさすぎてグ ループ学習はできない」(H)、「下宿なのでやむを得ない場合以外は家で勉強したくな い」(B,  N1)、「LCの閉室時間を過ぎたらファミリーレストランに行く」(C,  H)等の 発話が寄せられた。今回の対象者たちはLCが学習を目的にした学生たちの集まる空間 であると位置づけていることがわかる。

4−4 友人、スタッフから必要な情報を得る

彼らのLC利用特性として浮かび上がってきたのは自分たちの人間関係、ネットワー クの活用である。留学相談のきっかけも学部の友だちからの紹介であった。また「同 じサークルの学生をよくLC内で自習しているのを見かけるので、PC操作など困った ときには彼に相談することが多い」(D)といった発話のように学習空間でも友人を頼 りにしている。

 友人に限らずスタッフを頼りにすることもある。LC内では「困ったときに受付に

(23)

第一部  研究論文・文献紹介 行ってお話を聞きます」(B,  C,  D)や「赤ジャン(LC内で貸出PC、デスクトップPC、

プリンタなどの技術補助をする学生アルバイトスタッフ)に相談しています」(O)と 自ら関係スタッフの元に行って必要な情報を得るようにしている。ここではLC専用 HPやLC内の告知ポスター、サイネージといった広報媒体でも情報提供はしているも のの、彼らのほとんどがチェックしていない状況とは対照的である。被調査者たちは 施設内で話の通じるスタッフを見つけて直接の対話から必要な情報を入手することで 問題を解決している。また、LCのスタッフに相談したことによってレポートの執筆に ついて自己能力の向上感を得る学生が存在することや、LCで理解した情報資源の使い 方を他の友人に教えるケースがあるなど、ここからは自分が不得意だったと感じるこ とを克服すると自信につながり、自信をもつことでさらに学習意欲が高まるといった スパイラルが推察される。他にも学生同士のつながりがLCのなかでも観察されること から、今後は自己能力感という「間接評価」やGPAそのものといった「直接評価」と いう個人のみを対象とする分析軸のほかに、友人同士の網の目のなかで学びがどのよ うに醸成されているかをも調査することも必要である。これは高等教育のなかで協調 学習を重視する潮流に呼応した形で学生の学びを測定する有効な手段になる可能性が ある。

5.今後の学習支援にむけて

彼らの学習特性をもとにLCが果たす意義と今後の学習支援、とりわけ運営の方向性 について述べてみたい。

インタビュー調査からLCはこれまでの学内施設とは異なった公共(コモンズ)的な 学習空間として位置づけられていることがわかった。LCは個人もしくはグループでの 学習にかかわらず学習者のニーズに即した場を提供している。被調査者からは既存の 学内学習施設(図書館、学部専用の学習室等)と競合することなく新たな学習のため の施設として利用されている。

とはいえ、現段階はLCを開館して2年度目の状況であり、運営にあたっても手探り の部分もまだある。より安定した運営を目指すべく改善点もある。先述したLC利用の 4パターン(「自習」、「学習教材の利用」、「グループ学習」、「専門スタッフへの相談」)

を踏まえれば、利用者に対してより明確な形で各エリアの特徴を提示して目的と行動 とが一致できるような施設内改善へと進めることができるのではないか。具体的には

「グループ学習」充実のために2Fインフォダイナーのスペースを増やしたり、3F

(24)

グループスタディールームを飲食可にしたりすることが挙げられる。加えて、3Fデ スクトップPC以外にも自習のためのエリアを新規に設ける、長時間利用者を念頭に置 いた水分補給を許可するといったこともひとつの方策である4)

一方、本研究で観察された学生の学習行動パターンそのものについて、これが大学 生の学びとしてどのように評価あるいは位置づけられるのか、問いつづける必要もあ る。LC全体はオープンスペースで壁や境界を取り払った設計となっている。LC利用 者が枠にとらわれず自由に学習をおこない、かつ他者との公共空間を意識しながら相 互に学びあう場であることがLCの趣旨となる。これに従えば、利用者による自由な学 習行動、さらには想定をも超えた学習が展開されることが求められるといえる。一方、

本調査の範囲においては彼らの利用目的は明確で学習先を使い分けた利用がなされて いる。これはLC内の各エリアを「開かれた」空間として網羅的にかつ有機的に利用す る学生とは反対に「閉じた」空間の利用と捉えることができる。おそらくこれは利用 者のみに問題があるとはいえず、運営側にも要因がある。具体的にはLC常駐スタッフ 間の情報共有が少ないことが挙げられる。常駐スタッフは日々発生する業務を処理す ることを目下のところ優先せざるを得ず、他のエリアの状況まで理解しきれてはいな い。このようにLC内スタッフ自身が「閉じた」空間にいる限り、「開かれた」空間と しての利用を促すのは難しい。ゆえに全体を意識した相互連携が必要となる。すでに LC発展の鍵として「学習の本質を理解した組織が核になり、関連部署と連携ができる

『共通言語』を確立し、高等教育の課題と対峙する」(井上,2013:22)と述べられて いるが、全体を意識した相互連携はいまだ十全なものとはいえない。

ともあれ、データから何を読み取り、運営に活かしていくのかという点については 個々人の経験のみにとらわれないエビデンス・ベースドの姿勢を保っていかねばなら ない。これを保ちながら、よりよいLC運営とは何かについて日々省察し、検討してい く必要がある。

〈注〉

1) 主に社会学部学生を対象とした「ラーニング・コモンズ実態調査」(2013年10月実施)にて 当LCの利用状況と自覚する学習態度、意欲、成果について調べている。

2) 全学部生を対象とした大規模なLC利用アンケート調査も同時期に実施しており、2015 年1月時点でおよそ4,000サンプルの回収があった。こちらの集計結果については別の機 会に報告したい。

(25)

第一部  研究論文・文献紹介 3) 岡部(2014)は従来のe-learningは個人で行う学習であったが、LCのような公共空間と接

合することで新たな学びが立ち現れてくる可能性を述べている。

4) ただし、学習支援は学生のすべての要望(ディマンド)を叶えることではない。例えば

「睡眠がとれること」は学生の要望の一つかもしれないが、それによって学習環境を極 端に阻害する場合は注意するなどがそれにあたる。大学の学習支援として求められるこ と(ニーズ)を満たすことが優先となる。

〈参考文献〉

浜島幸司,2014,「大学生の大学滞在時間──4時点(1996年・2001年・2006年・2011年)の比較 から──」『武蔵野大学 教養教育リサーチセンター紀要 The Basis』(4),pp.99-113.

井上真琴,2013,「ラーニング・コモンズの理念と目的を探して──同志社大学の経験から─

─」『IDE 現代の高等教育』(556),pp.17-22,IDE大学教育協会.

小山治,2014,「初年次教育におけるレポート執筆に関する学習行動の促進──授業履修者 に対するパネル調査による検証──」『徳島大学 大学教育研究ジャーナル』(11),pp.1- 13.

岡部晋典,2014,「e-ラーニングとラーニング・コモンズ」,河島茂生編著,『デジタルの際──

情報と物質が交わる現在地点──』,第7章,pp.231-265,聖学院大学出版会.

岡部晋典・鈴木夕佳,2014,「同志社良心館ラーニング・コモンズ揺籃期の一年──アカデ ミック・インストラクターの視座を通して──」『同志社大学 図書館学年報』(39),

pp.69-77.

武内清,2014,『学生文化・生徒文化の社会学』,ハーベスト社.

谷村英洋,2011,「大学生の学習時間と学習成果」『大学経営政策研究』(1),pp.69-84,東京大学 院教育研究科経営・政策コース.

山田礼子,2014,「アクティブ・ラーニングを通じての学生の学びとそれを支える環境」『大学 教育学会誌』(36)1,pp.32-40.

〈付記〉

 LC利用インタビュー調査実施にあたり、LC内関連部署の多くの皆様にご協力いただい た。多忙な中、19名の学部生の皆様より率直なLC利用状況をお話いただいた。この場を借り て、ご協力いただいたすべての方にお礼を申し上げたい。

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