図書館における障がい者サービスを考える : 公共
図書館の視覚障がい者サービスを中心として
著者
近藤 友子
雑誌名
清心語文
号
22
ページ
83-74
発行年
2021-02
URL
http://id.nii.ac.jp/1560/00000494/
清心語文 第 22 号 2021 年2月 ノートルダム清心女子大学日本語日本文学会 1. はじめに 今日の日本における公共図書館ではさまざまな図書館サービスが展開されている。 図書館サービスと言ってもその内容は違うものであり、また対象者の年齢や想定して いる人物像にも違いがある。本稿においては図書館サービスの中でも視覚に障害を持 つ人へ公共図書館での障がい者サービスを中心として説明を行い、これからの障がい 者サービスに必要とされるものを探っていく。 また図書館法第 2 条 2 によると「地方公共団体の設置する図書館を公立図書館」と 呼ぶが、本稿では一般的呼称として使われる公共図書館の表記を用いる。また近年の 多くの公共図書館では「障害」ではなく「障がい」など、ひらがなを含めた表記が多 くみられることから、本稿でも図書館サービスとしての「障がい者サービス」ではひ らがなを交えた表記とする。「障害」の表記は、社会的状況として障害を受けている 状態を表すものとして漢字の表記を用いる。 2. 図書館とは 図書館には様々に館種の違いがある。例えば公共図書館、大学図書館、学校図書館 などがある。図書館における基本的な活動やサービス内容などは共通した部分も多い が、館種の違いによる業務内容や対象者の違いや、また個別の各図書館ごとの違いも しくは特色などがみられる。例えば図書館の基本的な点として、その構成要素として 重要な三点は「資料」・「職員」・「施設」があげられる。(図 1 参照)資料とは具体的 には、本や雑誌、視聴覚資料としての CD や DVD、また近年ではデータベースなど も含まれる。職員は狭義の意味では図書館の専門的な視覚を持つ図書館司書や司書補 などの存在、また広義に考えれば事務的な業務を行う人や警備関係の人なども考えら える。施設とは図書館の建物そのものから、館内の設備としての本棚や机、椅子など も含めて考えられる。こうした広い意味で考えた場合、この三つの要素はお互いに必 要不可欠な要素であり、それぞれバランスを整えていくことで全体的な調和も取れて いる。しかし実際には各図書館における状況の違いなどにより、これらの要素にも違 いがでてくる。例えば交通の便が悪い地域では、施設的な設備の補強として車でも利 用できるように駐車場を整備する必要性がみられたり、予算的な問題で資料の充足が 難しい面を持つ図書館もあるだろう。その意味では下記の図 1 のように各頂点の要素 はお互いの必要とする要素やバランスの在り方考えてネットワークの連携を高めてい く必要があるだろう。そして四つ目の要素ともいえる「利用者」との関わりを考えて いくことが図書館においては求められている。
図書館における障がい者サービスを考える
― 公共図書館の視覚障がい者サービスを中心として ―
近 藤 友 子
八三「資料」 「職員」 「施設」 ←「利用者」の関わり 図 1 図書館の三要素 3. 図書館サービスとその機能 図書館は先にも述べたように館種の違いがあるが、そこにおける基本的な要素は共 通している。図書館業務においても基本に同じといえる点はあるが、そこにおけるサ ービスの在り方にはやや違いがあるとも考えられる。 まず基本的な図書館業務の機能としては、資料の収集・組織化・保存・提供という 流れがある。(図 2 参照) 「収集」 → 「組織化」 → 「保存」 (テクニカルサービス) 「提供」 (利用者サービス) → 図 2 図書館の機能 この図 2 にあるように収集から提供までは一連の連なりのある業務内容であるが、 収集・組織化・保存は「テクニカルサービス」と呼ばれている。これは資料を収集し、 その収集資料を組織的に分類や整理を行う業務のこと、また資料の形態や状態により 保存状態を決めていくことなどが技術的な点に関わることによる。また提供という機 能は「利用者サービス」とも書かれているが、これは資料の提供を直接的に利用者に 相対して行うサービスであり、一般的に図書館を利用する人との関わりが大きいもの である。 こうした図書館の基本的業務の中で、各種の図書館サービスが展開されている。例 えば資料の貸出や返却のサービスがあげられるが、図書館法第 17 条により公立図書 館は資料の利用に対して対価を徴収できない、すなわち無料で資料の利用ができるこ とになっている。今日の公共図書館では貸出や返却のサービスは無料で利用できる状 態であり、この点は利用者にとって最も大きな利点であるともいえる。また公共図書 館などでは、子ども向けの読み聞かせなどを行い、児童サービスに力を入れていると 八二
ころもある。また近年では児童・生徒などへのサービスを中心とした YA サービス(ヤ ングアダルトサービス)などを展開して、中学生や高校生の利用者に向けた図書館サ ービスのアピールを展開している図書館も見られる。このように「貸出サービス」、「児 童サービス」、「YA(ヤングアダルト)サービス」の他、ILL(Inter Library Loan: 図書館間相互貸借)による複写サービスや本の貸し借りなどの相互貸借の提供、そし て本稿で取り上げている障がい者サービスなど、様々な図書館サービスが日々の図書 館業務の中で行われている。 4. 大阪市立中央図書館の障がい者サービス 図書館において様々な図書館サービスが行われていると前項において述べたが、そ の中で障がい者サービスとはどのようなサービスといえるだろうか。ここでは障がい 者サービスを行っている図書館として大阪市立図書館の中心的な図書館である大阪市 立中央図書館を例として見ていきたい。 本稿で例として大阪市立中央図書館の障がい者サービスを取り上げたのは、日本図 書館協会と国立国会図書館が近年共催で開催している「障害者サービス担当職員向け 講座」において大阪市立中央図書館の障がい者サービス担当職員の方が講師で講義を されているなど、障がい者サービスへの取り組みが見られる図書館のためである。尚、 本稿では大阪市立中央図書館が大阪市立図書館の中で最も規模が大きく中心的な図書 館であり、障がい者サービス担当者がいる図書館であるため「大阪市立中央図書館の 障がい者サービス」として述べているが、大阪市内の区の図書館でも障がい者サービ スの提供ができるように中央図書館の障がい者サービスとの連携は行われている。 大阪市内に存する図書館であるため、障がい者サービスの対象者は大阪市内・八尾 市内(大阪の近隣地域)に住居しているか、大阪市内に通勤通学している人で、何ら かの障がいを持っている人が基本となっている。具体的な対象者や、そのサービス内 容については表 1・表 2(注 1)にまとめた。 表 1 大阪市立図書館の障がい者サービス対象者 対象者 身体障がい者手帳等の所持者 介護保険の認定を受けている方 発達障がいの認定を受けている方 支援学校に在学または特別支援教育を受けている方 その他 この表 1 から障がい者サービスの対象者は身体に障がいを持つ人や介護保険の認 定、発達障がいの認定を受けている人も対象となっていることがわかる。また特別支 援教育を受けている人もその対象者としており、様々な障がいに対したサービスの展 開が感じられる。 八一
表 2 大阪市立図書館 障がい者サービスの内容について サービス 名称 対象者 内容 備考 貸出サー ビス 表 1 の対象者 貸出点数:20 点、貸出期間:32 日(約 1 ケ月) 代理可(図書館カード要) 対面朗読 サービス 視覚に障がいのある方、視覚障がいにより活字で の読書が困難な方。 録音、送迎可。 音訳資料 の利用 視覚障がい、学習障がい、知的障がい、加齢による 視力低下などにより活字 での読書が困難な方。 録音資料(カセットテ ープ、DAISY、マルチ メディアデイジー)の 利用、貸出。 全国の図書館から無 料で取り寄せ可能。 郵送によ る貸出サ ービス 重度の身体障がいにより 図書館へ来館できない 方。 自宅へ郵送可。(返送も 可)図書・雑誌、録音 資料、点字資料。 日本郵便の制度(第 4 種郵便・心身障害 者用ゆうメール)を 活用。期間:32 日(郵 送日含む)受取館は すべて中央図書館。 ファック スによる 問合せサ ービス 聴覚・言語障がいにより 電話の利用が困難な方。 資料の申し込み、資料 用意をファックスで連 絡。所蔵調査や調べ物 も可。 ファックス番号は中 央図書館。 その他 聴覚障がい者の方。 字幕(手話)付きビデオ、 字幕(手話)・音声解説 付きDVDの提供。 障がいのある方。 図書館にある様々な資 料の提供。 大活字本、LL ブック、 点字つき資料など。 表 1 からサービスの提供者は視覚障害をもつ人だけにサービスを絞ったものではな いことがうかがえるが、表 2 を見るとサービスの提供内容としてはやや視覚障害に関 係するものが多いように感じられる。特に対面朗読サービスや音訳資料の利用等は、 図書の利用において視覚的に利用困難を持つ人を想定している。また郵送による貸出 サービスも点字資料が含まれており、これは日本郵便の制度として無料で郵送を行う ことができる。また期間も通常の一般利用者は 14 日間(2 週間)であるが、郵送期 間なども考えて 32 日間とやや長くなっているなど、障がい者サービスの貸出の特徴 八〇
ともいえる。 その他、聴覚障がいや言語障がいの方へのファックスを用いたサービスや、重度の 身体障がい、学習障がい、知的障がい、などの障がいにおいても資料の提供サービス を行っており、障がい者サービスは広く図書館資料を様々な利用者へ提供する活動を 支えており、資料へのアクセスの保障もしくは簡潔に表現するならば、本と人とをつ なげる働きをしているのだと言えるだろう。 5. 図書館資料と障害を考える 図書館では本や雑誌をはじめととして多くの資料(メディア)が利用されている。前 項の大阪市立図書館の障がい者サービスに関する「図書館にある様々な資料」(注 2)に おいては、大活字本、LL ブック、点字資料、絵本(点字・さわる絵本・布)、DAISY (音声デイジー、マルチメディアデイジー)、字幕(手話)・音声解説付きの資料などを 紹介している。こうした資料は視覚、聴覚、触覚などを用いることで、その内容にア クセスでき、内容を知ること、楽しむことができる。ここでは図書館資料と障害につい て考えていく。 5. 1 障害とは 図書館で一般的に利用されている印刷された冊子体は墨字資料と呼ばれるものであ る。紙に現代では墨ではなくインクで印刷された資料と説明したほうが理解しやすい かもしれない。この墨字資料は視覚という感覚を用いることで目から内容(情報)が 入り、神経を伝達して脳にてその情報が処理されて知識として利用されていく。本稿 では視覚障害を中心として障がい者サービス考えているが、視覚障害をもつ人たちは この目からの内容(情報)入手が困難な状況に置かれている人たちである。この点が 大阪市立図書館の「図書館の利用に障がいのある方へ」という表記において、図書館 資料の利用が困難な状況に置かれている利用者ということになる。
「利用が困難」という考え方は、世界保健機構(WHO:World Health Organiza-tion)により 2001 年に制定された「国際生活機能分類」(ICF:International Classifi-cation of Functioning, Disability and Health)が参考になる。ICF は人間の生活機能 と障害に関する状況を記述することを目的とした分類である。生活機能と障害の部門 では、心身機能と身体構造、活動と参加の構成要素があり、背景因子の部門では環境 因子と個人因子から構成されている(注 3)。生活機能や環境因子という視点を取り入れ ている点は、障害というマイナスで捉えられやすい面をプラスの側面で考えさせる新 しさを持っている。こうした考え方が社会的にあることにより、障害は個人にあるも のではなく、個人を取り巻く環境が障害を生み出しているという視点が考えられる。 また 2016 年(平成 28 年)4 月 1 日からは「障害を理由とする差別の解消の推進に 関する法律」(略称:障害者差別解消法)がスタートし、障害のある方への「合理的配慮」 が求められるようになった。障害者差別解消法では「不当な差別的取扱いの禁止」と「合 理的配慮の提供」(注 4)が求められている。これにより図書館においても利用者に対し て合理的配慮の提供として、障害を持つ人への資料の提供に対して取り組む必要性が 七九
高まった。例えば図書館関係のイベントにおいて手話通訳者の導入や要約筆記サービ スの提供などを行っている事例もあり、前項 4 で述べた「障害者サービス担当職員向 け講座」においても聴覚障害者に向けた説明のために手話通訳者を取り入れていた。 5. 2 視覚障害とは 大阪市立中央図書館の障がい者サービスの中では視覚障害に関係するサービスが他 の障害よりも多いことは述べたが、では視覚障害とはどのような障害であるのか。 視覚障害とは視力が全くないか視機能が弱くて日常生活もしくは仕事などにおいて 不便や不自由をきたしている障害である。単に目が見えない、見えにくいというだけ でなく、視覚からの情報摂取に障害を持つ人たちであるといえる。これは図書館利用 に困難をきたす点で考えるならば、図書館への来館時の困難さや、資料(例えば本や 雑誌など)の利用に支障をきたしている状態の人たちを指す。視覚障害の障害(機能 不全:disability)としては、視力や視野、色覚、光覚など多様な機能障害が含まれ ている。視力障害はメガネなどを用いて矯正しても視力がある一定以上は回復しない 状態が継続して続く状態のことである。また視野障害として、目の見える範囲が狭い (狭窄)や、両端が欠けたり、上下が欠けたり(半盲)、中心部が欠けたり(暗点)す る状態もあり、人により様々な症状が存在している。また特定波長の色が認識できな い状態(色盲)の色覚障害や、夜になると全く見えなくなる夜盲症や、逆に明るいと 眩しくて見えなくなる羞明(シュウメイ)などの障害もある。このようにある一定 のもとで見えにくくなる状態や、残存視力はあるが見えにくさをかかえた弱視(low-vision)の人もいる。また視力障害は全く見えない「盲」(全盲:blindness)という認 識を持つ人もいるが、視覚障害には述べてきた以外にも様々な状態があり、全盲だけ ではないことの理解が図書館職員には求められており、障がい者サービスを進展させ るためには必要だと考える。 また視覚障害者サービスで利用する資料としては先にも述べたが、触覚を用いた触 読による点字関係の資料(点字図書、点字雑誌、点字絵本)や、聴覚を用いる音声関 係の資料(音声訳のカセットテープ、DAISY 関係資料)などもある。拡大写本とい う文字を大きく拡大した資料もあるが、図書館には通常の資料を拡大により読みやす くする拡大読書機も設置されているときがある。弱視の人にとっては文字を拡大する 機器は文字の認識に必要な機器である考えられる。また音声による資料は、全盲の人 だけでなく弱視の人や、加齢により文字資料の利用が困難になってきた人にも利用し やすいが、音声データを再生する機器が必要となる。他にも手話(字幕)付きの資料 などもあるが、ビデオ等においても再生する機器は必要であり、障がい者サービスに は印刷された紙や点字などの紙媒体の資料だけでなく、音声データ等の利用のための 再生機器も設備として備えておくことが不可欠となる。もちろんそうした機器の利用 方法の習得は図書館員にも必要な技術であると考えられ、現代の図書館員には様々な 情報機器に対する知識や技術力が求められる時代となっている。 七八
5. 3 聴覚障害とは 視覚障害とともに聴覚障害に対する障がい者サービスも進められている。大阪市立 中央図書館においてもファックスサービスにおいての連絡や調べ物への対応を行って いる。聴覚障害とは何らかの原因により音が聞こえないもしくは聞こえにくいために、 日常生活や就労の場などにおいて不自由を強いられる障害のことである。また聴覚障 害は大きく 3 つに大別されることが多い。聾(ろう)は全く音が聞こえない聴覚障害 であり、難聴は聞こえにくい、聞き取りにくい状況のことである。また病気や事故な どにより中途で聞こえなくなった中途失聴も聴覚障害として存在してあることを知っ ておく必要があるだろう。聴覚障害になった時期により「先天的」と「後天的」の違 いがあり、言語(発語)障害を併せ持つ人が少なくない。後天的に聴覚障害を持つこ とで、聞くことに困難はあるが、声を出したり、文字の読み書きはできる人もいる。 また難聴においては、伝音性難聴と言われる外耳・内耳の障害による難聴がある。こ れは音が伝わりにくい障害であり、補聴器により改善が可能である。感音性難聴は、 内耳、聴神経、脳の障害による難聴のため音が歪んだり響いたりして、言葉が明確に 聞こえない。音は聞こえてはいるが何の音であるのか、言葉などの場合は内容の理解 が難しいなどの障害がおこる。伝音性難聴と感音性難聴の両方の原因をもつ混合性の 難聴もあり、障害の内容を明確につかむことは難しいとも考えられる。障害を持った 時期などにも視野を広げ、個々の障害の違いへの理解が求められる。 聴覚障害の手話付きの資料なども有効なメディアと言えるが、聴覚障害を持つ人の すべてが手話を理解できるわけではない。唇の動きを読んでコミュニケーションがで きる、もしくは補聴器をつければ聞こえる、目が見えるから筆談すればよいなどの聴 覚障害を持つ人を取り巻く誤解は多い。すべての聴覚障害者が手話ができないように、 唇の動きを読める人も全員ではなく、補聴器をつけても会話がスムーズに行えるわけ ではない、また聴覚障害を持つ人にとっては言語(発語)の練習や、文字の読み書き の修得も簡単なものではない。唇の動きを読める人も正面から明確な唇の動きを追う ことで内容を掴むなど簡単なことではない。今日のようにマスクを日常的に用いる状 態などでは、唇の動き自体を掴むことが困難である。音声が聞こえづらい、もしくは 聞こえないことで言葉の構文や漢字がわからない、もしくはコミュニケーションの方 法(手話、筆談、読唇など)の方法を理解してもらえない、などの状況が生まれてく る場合もある。聴覚障害は一見して外見から判断しづらい障害でもあるため、その理 解をいっそう難しくしており、聴覚障害者への誤解はコミュニケーションのとりづら さをも生み出している。 5. 4 発達障害、学習障害とは 発達障害とは、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、 注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であってその障害が通常低年齢 において発現するものとして政令で定めるもの」(注 5)と文部科学省の発達障害に関 する頁においても説明がなされている。この説明の中に出てきた主な発達障害とし て、自閉症とは「3 歳位までに現れ、他人との社会的関係の形成の困難さや言葉の発 七七
達の遅れがみられるもの」であり、学習障害(LD:Learning DIsabilities)は「基本 的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推 論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すも の」である。また注意欠陥 / 多動性障害(ADHD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は「年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性 を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすもの」と説明 がなされている(注 6)。 こうした説明からも発達障害や学習障害は脳の機能障害であることがわかるが、読 み書きなどに対する障害が現れる障害であることを理解しておくことで、文字資料を 用いることの困難さが推測できる。近年は「ディスレクシア」(Dyslexia)という言 葉も聞くことがあるが、これは学習障害の一種で識字障害や読字障害とも呼ばれ、文 字の読み書きの学習に困難を持つ障害である。 表 2 の大阪市立図書館の障がい者サービスの提供内容を参考にするならば、音声 資料の利用において「マルチメディアデイジー」という資料名があげられていた。 DAISY(デイジー:Digital Accessible Information SYstem)とは、視覚障害者だけ でなく、印刷物の利用が困難な人々のために製作されるデジタル録音図書の国際標準 規格のことである。またこの DAISY の方式で作られたマルチメディアデイジーとは 音声とテキスト(画像等)がシンクロ(同期)して用いられている DAISY 図書である。 視覚から印刷された文字資料の利用が困難な利用者であっても、テキストと画像をと もに利用できることで、音声が文字情報の理解を助けることができる。近年では学校 教育の場において教科書をマルチメディアデイジーで製作することで、学習障害を持 つ人たちの有益な学習教材として利用されるなども見られる。公共図書館の障がい者 サービスにおいても、発達障害、学習障害への支援を広めていくことは今後の課題と いえる。 6. 対面朗読と障がい者サービス 公共図書館で行われている障がい者サービスとして「対面朗読」というサービスが ある。これは視覚障害を持つことで印刷された資料の利用が困難な人たちに対する図 書館サービスであり、1970 年代ごろから少しずつ公共図書館において広まりをみせ てきた。一般的には対面朗読という呼称を耳にすることが多いが、例えば京都府の福 知山市立図書館では「対面読書サービス」と言われている。 福知山市立図書館は中央館と三つの分館(三和分館、夜久野分館、大江分館)の 四つの図書館がある。その中で JR 福知山市駅前にある福知山市立図書館中央館は、 2014 年(平成 26 年)に新しく開館した図書館である。福知山市は京都府の北部・中 丹地方に位置する人口は約 8 万人程度の歴史ある都市である。福知山市駅前という賑 やかな駅前に「市民交流プラザ」という複合施設があり、その 1 階と 2 階に福知山市 立中央図書館は位置している。開館時に障害者サービスとして対面読書サービスを始 めたが現在の定期的な利用者は 1 ~ 2 名であり、対面読書を支える音訳者も 10 名程 度とまだまだ少ない規模といえる。この点は 2019 年度に福知山市立図書館中央館の 七六
対面読書サービスを支える音訳者(8 名)に「対面読書に関わる音訳者の意識調査ア ンケート」を行った結果の中で、対面読書活動に対する課題として「対象者が少ない ことが悩み。」、「利用者が増えると良い。」(注 7)という記述がみられた。これは対面読 書サービスを利用する人が対面読書サービスを支える音訳者よりも数が少ないことが 原因であり障がい者サービスの利用度の低さを表している。JR の駅前に位置してい る公共図書館ではあるが、電車の本数は少なく、車を利用する人が多い地域のため、 視覚に障害を持つ人にとっては利用困難である。この事例は地域性や障害との関わり なども考えたうえでサービスの展開を図っていくことが大切であることを考えさせ る。また対面読書の内容においても学術書よりも小説や地域の広報誌などの利用が見 られるため、対面読書ボランティアの音訳者への研修(注 8)では、小説やパンフレッ トなどの読み方や、イラストや写真の説明方法などを学ぶことが多い。 写真 1 「対面読書ボランティア研修会の会場風景」 7. さいごに 図書館における障がい者サービスについて、公共図書館を事例として考えてきた。 今日の情報技術の進展の時代の中では紙の印刷物だけでなく、デジタルデータを活用 した音声データの役割や、様々な情報機器の設置も障がい者サービスにおいては必要 である。そのためには先にも述べたように図書館員にも障がい者サービスのための知 識や機器を取り扱うための技術が必要とされている。対面読書サービスの研修のよう に、サービス内容の充実をはかるための学習も求められる。障害を理解していく中で 障害を取り巻く現状や課題を明確にしていくことも可能と考えらえる。本稿では図書 館の障がい者サービスとして視覚障害についての資料や研修などを中心に説明を行っ てきたが、様々な障害に対しての視野を広めて図書館サービスの充実を図るとともに、 利用者一人一人の個性への理解を進められるよう努力していきたい。 (こんどうともこ/ノートルダム清心女子大学 文学部 日本語日本文学科 准教授) 注 1 表 1 は大阪市立図書館の「図書館の利用に障がいのある方へ 2.サービスを 七五
うけるには」を参考に筆者作成。表 2 は「図書館の利用に障がいのある方へ 2. サービスをうけるには、3.対面朗読サービス、4.郵送による貸出サービス、5. ファックスによる問合せ、6.図書館にある様々な資料」を参考に筆者作成。 [https://www.oml.city.osaka.lg.jp/?page_id=454#top][2020 年 10 月 18 日確認 ] 2 大阪市立図書館の「図書館の利用に障がいのある方へ 6.図書館にある様々な 資料」を参照。 [https://www.oml.city.osaka.lg.jp/?page_id=454#top][2020 年 10 月 18 日確認 ] 3 『国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-』世界保健機関 中央法規 p.8「4. ICF 構成要素の概観」を参照 [https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/42407/9241545429-jpn. pdf?sequence=313&isAllowed=y][2020 年 10 月 18 日確認 ] 4 「合理的配慮」を知っていますか? 内閣府 p.3 参照。 [https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/gouriteki_hairyo/print.pdf] [2020 年 10 月 18 日確認 ] 5 文部科学省「発達障害とは」の頁より一部引用、参照。 [https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/hattatu.htm][2020 年 10 月 18 日確認 ] 6 文部科学省 「特別支援教育について 主な発達障害」の頁より一部引用、参照。 [https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm][2020 年 10 月 18 日確認 ] 7 「障害者サービスの基本と課題-福知山市立図書館を参考に考える-」 「4(2) 音訳ボランティアへの意識調査 対面読書に関わる音訳者の意識調査アンケー ト」より 『広島女学院大学人間生活学部紀要』7 号 p.23 - p.26 2020 年 3 月 16 日 [http://harp.lib.hiroshima-u.ac.jp/hju/metadata/12321][2020 年 10 月 18 日 確認 ] 8 「対面読書ボランティア研修会の会場風景」福知山市立図書館中央館 2 階研修 室にて 2020 年 8 月 28 日(金)撮影 キーワード=公共図書館、障害、障がい者サービス 七四