国立大学法人電気通信大学 / The University of Electro‑Communications
コンセント単位での計測を可能としたフリーソフト ウェアツールによる消費電力値自動収集システムの 実装と改善
著者 竹内 純人
雑誌名 電気通信大学紀要
巻 28
号 1
ページ 61‑69
発行年 2016‑02‑01
URL http://id.nii.ac.jp/1438/00006821/
電気通信大学紀要 28 巻1号 pp.61-69(2016)〔報告〕
Received on September 7, 2015.
1教育研究技師部
2電力見える化システム :
http://www.uec.ac.jp/about/activity/setsuden/mieruka.html
コンセント単位での計測を可能としたフリーソフトウェアツール による消費電力値自動収集システムの実装と改善
竹 内 純 人1
Development of automated data acquisition system by free software tools to collect electricity consumption based on wall outlet unit
Sumito TAKEUCHI Abstract
To collect electricity consumption, the automated data acquisition system has been developed since 2013 by the Operational Improvement Project team in the Department of Academic Engineering Services, the University of Electro-Communications. In this system, Electricity consumption is measured by the sensor of microcomputer, followed by sending data to the data collection server using local area network. And free software tools are employed to control this data acquisition process. To obtain detailed information about electricity consumption, we started collecting data based on wall outlet unit. We also added feature to get the graph data of power consumption for specific time period on the Web.
In this report, we introduce the automated data acquisition system to collect electricity consumption, and explain some troubleshooting tasks occurred during the operation.
Keywords: BEMS, IEEE1888, smart grid system, sensor network
コンセント単位での計測を可能としたフリーソフトウェアツール による消費電力値自動収集システムの実装と改善
竹内 純人
1Development of automated data acquisition system by free software tools to collect electricity consumption based on wall outlet unit
Sumito TAKEUCHI
Abstract
To collect electricity consumption, the automated data acquisition system has been developed since 2013 by the Operational Improvement Project team in the Department of Academic Engineering Ser- vices, the University of Electro-Communications. In this system, Electricity consumption is measured by the sensor of microcomputer, followed by sending data to the data collection server using local area network. And free software tools are employed to control this data acquisition process. To obtain detailed information about electricity consumption, we started collecting data based on wall outlet unit. We also added feature to get the graph data of power consumption for specific time period on the Web.
In this report, we introduce the automated data acquisition system to collect electricity consumption, and explain some troubleshooting tasks occurred during the operation.
Keywords: BEMS, IEEE1888, smart grid system, sensor network
1 はじめに
東日本大震災を契機として、組織的な節電活動に対す る社会的要求は、切実さを増すばかりである。電気通信 大学でも2010年度より『電力見える化システム』を構 築し、大学施設全体および各建て屋単位における電力使 用状況をリアルタイムに確認することができる体制を整 えている2。本システムは電気通信大学に施設されてい る建て屋について次の機能を提供するものであり、電気 通信大学における節電活動に大きく貢献している。
1. 年/月/日/時/30分 の各単位による電力使用 状況のグラフ表示、建て屋毎の使用量比較 2. 上記グラフのソースデータについてのCSV出力 3. 時間毎の電力総使用量が標準を上回った場合の警
告通知
上記3の警告は施設課の担当者にシステムから通知さ れる。その後、施設課担当者による節電要請のメールが 大学関係者に通知される運用となっている。
1電気通信大学 教育研究技師部
2電気通信大学 電力見える化システム:
http://www.uec.ac.jp/about/activity/setsuden/mieruka.html
一方で、本システムの電力計測範囲は建て屋単位まで であるため、その先のより詳細な電力使用状況、具体的 には、
• 建て屋内のフロア
• 研究室
• コンセント
などの単位で電力使用量を把握できるようにするには、
多大な追加費用が掛かることもあり、2015年現在、実 現には至らずにいる。そのため、学内では「電力を多く 使用している研究室や設備が不明」、「学内で節電に協 力的な人だけが一方的に不便や我慢を強いられているの ではないか」などの議論が巻き起こっており、早急な解 決が望まれている。
この状況を受け、電気通信大学 教育研究技師部は2013 年度より、学内業務改善プロジェクトの一環として新し く「消費電力計測プロジェクト」を立ち上げ、次の要素 からなる独自の電力計測システムを構築を目指した。
• 市販されている電力計測センサ
コンセント単位での計測を可能としたフリーソフトウェアツール による消費電力値自動収集システムの実装と改善
竹内 純人
1Development of automated data acquisition system by free software tools to collect electricity consumption based on wall outlet unit
Sumito TAKEUCHI
Abstract
To collect electricity consumption, the automated data acquisition system has been developed since 2013 by the Operational Improvement Project team in the Department of Academic Engineering Ser- vices, the University of Electro-Communications. In this system, Electricity consumption is measured by the sensor of microcomputer, followed by sending data to the data collection server using local area network. And free software tools are employed to control this data acquisition process. To obtain detailed information about electricity consumption, we started collecting data based on wall outlet unit. We also added feature to get the graph data of power consumption for specific time period on the Web.
In this report, we introduce the automated data acquisition system to collect electricity consumption, and explain some troubleshooting tasks occurred during the operation.
Keywords: BEMS, IEEE1888, smart grid system, sensor network
1 はじめに
東日本大震災を契機として、組織的な節電活動に対す る社会的要求は、切実さを増すばかりである。電気通信 大学でも2010年度より『電力見える化システム』を構 築し、大学施設全体および各建て屋単位における電力使 用状況をリアルタイムに確認することができる体制を整 えている2。本システムは電気通信大学に施設されてい る建て屋について次の機能を提供するものであり、電気 通信大学における節電活動に大きく貢献している。
1. 年/月/日/時/30分 の各単位による電力使用 状況のグラフ表示、建て屋毎の使用量比較 2. 上記グラフのソースデータについてのCSV出力 3. 時間毎の電力総使用量が標準を上回った場合の警
告通知
上記3の警告は施設課の担当者にシステムから通知さ れる。その後、施設課担当者による節電要請のメールが 大学関係者に通知される運用となっている。
1電気通信大学 教育研究技師部
2電気通信大学 電力見える化システム:
http://www.uec.ac.jp/about/activity/setsuden/mieruka.html
一方で、本システムの電力計測範囲は建て屋単位まで であるため、その先のより詳細な電力使用状況、具体的 には、
• 建て屋内のフロア
• 研究室
• コンセント
などの単位で電力使用量を把握できるようにするには、
多大な追加費用が掛かることもあり、2015年現在、実 現には至らずにいる。そのため、学内では「電力を多く 使用している研究室や設備が不明」、「学内で節電に協 力的な人だけが一方的に不便や我慢を強いられているの ではないか」などの議論が巻き起こっており、早急な解 決が望まれている。
この状況を受け、電気通信大学 教育研究技師部は2013 年度より、学内業務改善プロジェクトの一環として新し く「消費電力計測プロジェクト」を立ち上げ、次の要素 からなる独自の電力計測システムを構築を目指した。
• 市販されている電力計測センサ
1
62 竹内純人 (2016 年 2 月)
• 市販されている小型のマイコンボード
• 計測データ収集用PCサーバ
• 大学内ネットワーク(学内LAN) 上記のシステム要素を組み合わせ、
• いま現在、どのフロアのどのコンセントが、どれ だけの電力を使っているのか?
• 各コンセントの(一定期間における)電力の使用 割合はどのようなものか?
をリアルタイムで把握するシステムを現在も構築中で あり、これまでの成果として、一応の安定稼働を実現さ せた電力計測システムをWebにて公開中3である(図 1、図2)。
図1: 消費電力計測システム: 計測結果の一覧
図2: 消費電力計測システム: 電力使用グラフ 本システムでは、ハードウェアは市販品から成るが、
ソフトウェアはLinuxを中心としたフリーのツールのみ
3http://eco2.tech.uec.ac.jp/ecop-test/index2.php 2015年9月現在、仮運用中。
で構成されている。また、ツール間のデータ連係のため に必要となる機能のみ、教育研究技師部で新たに開発し た。センサ計測に関わるシステムは、その計測データ総 量が数百万〜数千万件単位になることも珍しくはなく、
このような規模のデータを処理するには、市販のOLAP ツールやデータ分析ツール4を利用することも一般的な 解決策とされている。本システムも、同様の規模のデー タを処理対象とするものであるが、ソフトウェアに関わ る部分は前述の理由により、ライセンス費用の支払いや 再配布の制限などは一切発生しない。そのため、様々な 規模の組織に対して、比較的安価かつ容易に導入可能な センサ計測システムとなっていることが、大きな特徴と なっている。
これに加え本システムは、過去2年の実運用に基づく 種々の改良を施し、4章にて後述する次の特徴も併せ持 つに至った。
• 24時間365日のデータ収集
• 軽微なエラーがあっても稼働が継続する仕組み
• 計測済データの多重化保存、消失事故への対応(バ ックアップ/リストアの保証)
• 取得済みのセンサデータに対する、多様な分析手 法の適用
• スケールアウトへの対応
しかしながらここに至るまでにはプロジェクト内で 多くの試行錯誤を経ており、とくに2013年度末の時点 では、本格的な情報システムの構築ノウハウが教育研 究技師部内で未成熟だったこともあり、計測データ収集 サーバの稼働ははなはだ不安定なものであった。そこ で、2014年度のプロジェクト活動では、主としてサーバ システムの強化に主眼を置き、システム全体の信頼性、
堅牢生、柔軟性および運用性向上の実現を目指した。
本稿では、プロジェクトのこれまで取り組みおよび、
2013年度までに構築したシステムの概要を述べた後、
2014年度に実施した計測データ収集サーバの改善点/
新規構築点を詳説する。最後に教育研究技師部電力計測 プロジェクトの今後の展望について述べる。
2 先行研究
2.1 東大グリーン ICT プロジェクト
センサネットワークを活用し組織的かつ大規模に節 電活動を行った例としては、東京大学の『東大グリーン ICTプロジェクト』がある[1]。
4市販のデータ分析ツールでは、導入にあたって数十万〜数百万の ライセンス費用が掛かることも珍しくない。
• 市販されている小型のマイコンボード
• 計測データ収集用PCサーバ
• 大学内ネットワーク(学内LAN) 上記のシステム要素を組み合わせ、
• いま現在、どのフロアのどのコンセントが、どれ だけの電力を使っているのか?
• 各コンセントの(一定期間における)電力の使用 割合はどのようなものか?
をリアルタイムで把握するシステムを現在も構築中で あり、これまでの成果として、一応の安定稼働を実現さ せた電力計測システムをWebにて公開中3である(図 1、図2)。
図1: 消費電力計測システム: 計測結果の一覧
図2: 消費電力計測システム: 電力使用グラフ 本システムでは、ハードウェアは市販品から成るが、
ソフトウェアはLinuxを中心としたフリーのツールのみ
3http://eco2.tech.uec.ac.jp/ecop-test/index2.php 2015年9月現在、仮運用中。
で構成されている。また、ツール間のデータ連係のため に必要となる機能のみ、教育研究技師部で新たに開発し た。センサ計測に関わるシステムは、その計測データ総 量が数百万〜数千万件単位になることも珍しくはなく、
このような規模のデータを処理するには、市販のOLAP ツールやデータ分析ツール4を利用することも一般的な 解決策とされている。本システムも、同様の規模のデー タを処理対象とするものであるが、ソフトウェアに関わ る部分は前述の理由により、ライセンス費用の支払いや 再配布の制限などは一切発生しない。そのため、様々な 規模の組織に対して、比較的安価かつ容易に導入可能な センサ計測システムとなっていることが、大きな特徴と なっている。
これに加え本システムは、過去2年の実運用に基づく 種々の改良を施し、4章にて後述する次の特徴も併せ持 つに至った。
• 24時間365日のデータ収集
• 軽微なエラーがあっても稼働が継続する仕組み
• 計測済データの多重化保存、消失事故への対応(バ ックアップ/リストアの保証)
• 取得済みのセンサデータに対する、多様な分析手 法の適用
• スケールアウトへの対応
しかしながらここに至るまでにはプロジェクト内で 多くの試行錯誤を経ており、とくに2013年度末の時点 では、本格的な情報システムの構築ノウハウが教育研 究技師部内で未成熟だったこともあり、計測データ収集 サーバの稼働ははなはだ不安定なものであった。そこ で、2014年度のプロジェクト活動では、主としてサーバ システムの強化に主眼を置き、システム全体の信頼性、
堅牢生、柔軟性および運用性向上の実現を目指した。
本稿では、プロジェクトのこれまで取り組みおよび、
2013年度までに構築したシステムの概要を述べた後、
2014年度に実施した計測データ収集サーバの改善点/
新規構築点を詳説する。最後に教育研究技師部電力計測 プロジェクトの今後の展望について述べる。
2 先行研究
2.1 東大グリーン ICT プロジェクト
センサネットワークを活用し組織的かつ大規模に節 電活動を行った例としては、東京大学の『東大グリーン ICTプロジェクト』がある[1]。
4市販のデータ分析ツールでは、導入にあたって数十万〜数百万の ライセンス費用が掛かることも珍しくない。
コンセント単位での計測を可能としたフリーソフトウェアツール による消費電力値自動収集システムの実装と改善
竹内 純人
1Development of automated data acquisition system by free software tools to collect electricity consumption based on wall outlet unit
Sumito TAKEUCHI
Abstract
To collect electricity consumption, the automated data acquisition system has been developed since 2013 by the Operational Improvement Project team in the Department of Academic Engineering Ser- vices, the University of Electro-Communications. In this system, Electricity consumption is measured by the sensor of microcomputer, followed by sending data to the data collection server using local area network. And free software tools are employed to control this data acquisition process. To obtain detailed information about electricity consumption, we started collecting data based on wall outlet unit. We also added feature to get the graph data of power consumption for specific time period on the Web.
In this report, we introduce the automated data acquisition system to collect electricity consumption, and explain some troubleshooting tasks occurred during the operation.
Keywords: BEMS, IEEE1888, smart grid system, sensor network
1 はじめに
東日本大震災を契機として、組織的な節電活動に対す る社会的要求は、切実さを増すばかりである。電気通信 大学でも2010年度より『電力見える化システム』を構 築し、大学施設全体および各建て屋単位における電力使 用状況をリアルタイムに確認することができる体制を整 えている2。本システムは電気通信大学に施設されてい る建て屋について次の機能を提供するものであり、電気 通信大学における節電活動に大きく貢献している。
1. 年/月/日/時/30分 の各単位による電力使用 状況のグラフ表示、建て屋毎の使用量比較 2. 上記グラフのソースデータについてのCSV出力 3. 時間毎の電力総使用量が標準を上回った場合の警
告通知
上記3の警告は施設課の担当者にシステムから通知さ れる。その後、施設課担当者による節電要請のメールが 大学関係者に通知される運用となっている。
1電気通信大学 教育研究技師部
2電気通信大学 電力見える化システム:
http://www.uec.ac.jp/about/activity/setsuden/mieruka.html
一方で、本システムの電力計測範囲は建て屋単位まで であるため、その先のより詳細な電力使用状況、具体的 には、
• 建て屋内のフロア
• 研究室
• コンセント
などの単位で電力使用量を把握できるようにするには、
多大な追加費用が掛かることもあり、2015年現在、実 現には至らずにいる。そのため、学内では「電力を多く 使用している研究室や設備が不明」、「学内で節電に協 力的な人だけが一方的に不便や我慢を強いられているの ではないか」などの議論が巻き起こっており、早急な解 決が望まれている。
この状況を受け、電気通信大学 教育研究技師部は2013 年度より、学内業務改善プロジェクトの一環として新し く「消費電力計測プロジェクト」を立ち上げ、次の要素 からなる独自の電力計測システムを構築を目指した。
• 市販されている電力計測センサ
1
• 市販されている小型のマイコンボード
• 計測データ収集用PCサーバ
• 大学内ネットワーク(学内LAN) 上記のシステム要素を組み合わせ、
• いま現在、どのフロアのどのコンセントが、どれ だけの電力を使っているのか?
• 各コンセントの(一定期間における)電力の使用 割合はどのようなものか?
をリアルタイムで把握するシステムを現在も構築中で あり、これまでの成果として、一応の安定稼働を実現さ せた電力計測システムをWebにて公開中3である(図 1、図2)。
図1: 消費電力計測システム: 計測結果の一覧
図2: 消費電力計測システム: 電力使用グラフ 本システムでは、ハードウェアは市販品から成るが、
ソフトウェアはLinuxを中心としたフリーのツールのみ
3http://eco2.tech.uec.ac.jp/ecop-test/index2.php 2015年9月現在、仮運用中。
で構成されている。また、ツール間のデータ連係のため に必要となる機能のみ、教育研究技師部で新たに開発し た。センサ計測に関わるシステムは、その計測データ総 量が数百万〜数千万件単位になることも珍しくはなく、
このような規模のデータを処理するには、市販のOLAP ツールやデータ分析ツール4を利用することも一般的な 解決策とされている。本システムも、同様の規模のデー タを処理対象とするものであるが、ソフトウェアに関わ る部分は前述の理由により、ライセンス費用の支払いや 再配布の制限などは一切発生しない。そのため、様々な 規模の組織に対して、比較的安価かつ容易に導入可能な センサ計測システムとなっていることが、大きな特徴と なっている。
これに加え本システムは、過去2年の実運用に基づく 種々の改良を施し、4章にて後述する次の特徴も併せ持 つに至った。
• 24時間365日のデータ収集
• 軽微なエラーがあっても稼働が継続する仕組み
• 計測済データの多重化保存、消失事故への対応(バ ックアップ/リストアの保証)
• 取得済みのセンサデータに対する、多様な分析手 法の適用
• スケールアウトへの対応
しかしながらここに至るまでにはプロジェクト内で 多くの試行錯誤を経ており、とくに2013年度末の時点 では、本格的な情報システムの構築ノウハウが教育研 究技師部内で未成熟だったこともあり、計測データ収集 サーバの稼働ははなはだ不安定なものであった。そこ で、2014年度のプロジェクト活動では、主としてサーバ システムの強化に主眼を置き、システム全体の信頼性、
堅牢生、柔軟性および運用性向上の実現を目指した。
本稿では、プロジェクトのこれまで取り組みおよび、
2013年度までに構築したシステムの概要を述べた後、
2014年度に実施した計測データ収集サーバの改善点/
新規構築点を詳説する。最後に教育研究技師部電力計測 プロジェクトの今後の展望について述べる。
2 先行研究
2.1 東大グリーン ICT プロジェクト
センサネットワークを活用し組織的かつ大規模に節 電活動を行った例としては、東京大学の『東大グリーン ICTプロジェクト』がある[1]。
4市販のデータ分析ツールでは、導入にあたって数十万〜数百万の ライセンス費用が掛かることも珍しくない。
2
• 市販されている小型のマイコンボード
• 計測データ収集用PCサーバ
• 大学内ネットワーク(学内LAN) 上記のシステム要素を組み合わせ、
• いま現在、どのフロアのどのコンセントが、どれ だけの電力を使っているのか?
• 各コンセントの(一定期間における)電力の使用 割合はどのようなものか?
をリアルタイムで把握するシステムを現在も構築中で あり、これまでの成果として、一応の安定稼働を実現さ せた電力計測システムをWebにて公開中3である(図 1、図2)。
図1: 消費電力計測システム: 計測結果の一覧
図2: 消費電力計測システム: 電力使用グラフ 本システムでは、ハードウェアは市販品から成るが、
ソフトウェアはLinuxを中心としたフリーのツールのみ
3http://eco2.tech.uec.ac.jp/ecop-test/index2.php 2015年9月現在、仮運用中。
で構成されている。また、ツール間のデータ連係のため に必要となる機能のみ、教育研究技師部で新たに開発し た。センサ計測に関わるシステムは、その計測データ総 量が数百万〜数千万件単位になることも珍しくはなく、
このような規模のデータを処理するには、市販のOLAP ツールやデータ分析ツール4を利用することも一般的な 解決策とされている。本システムも、同様の規模のデー タを処理対象とするものであるが、ソフトウェアに関わ る部分は前述の理由により、ライセンス費用の支払いや 再配布の制限などは一切発生しない。そのため、様々な 規模の組織に対して、比較的安価かつ容易に導入可能な センサ計測システムとなっていることが、大きな特徴と なっている。
これに加え本システムは、過去2年の実運用に基づく 種々の改良を施し、4章にて後述する次の特徴も併せ持 つに至った。
• 24時間365日のデータ収集
• 軽微なエラーがあっても稼働が継続する仕組み
• 計測済データの多重化保存、消失事故への対応(バ ックアップ/リストアの保証)
• 取得済みのセンサデータに対する、多様な分析手 法の適用
• スケールアウトへの対応
しかしながらここに至るまでにはプロジェクト内で 多くの試行錯誤を経ており、とくに2013年度末の時点 では、本格的な情報システムの構築ノウハウが教育研 究技師部内で未成熟だったこともあり、計測データ収集 サーバの稼働ははなはだ不安定なものであった。そこ で、2014年度のプロジェクト活動では、主としてサーバ システムの強化に主眼を置き、システム全体の信頼性、
堅牢生、柔軟性および運用性向上の実現を目指した。
本稿では、プロジェクトのこれまで取り組みおよび、
2013年度までに構築したシステムの概要を述べた後、
2014年度に実施した計測データ収集サーバの改善点/
新規構築点を詳説する。最後に教育研究技師部電力計測 プロジェクトの今後の展望について述べる。
2 先行研究
2.1 東大グリーン ICT プロジェクト
センサネットワークを活用し組織的かつ大規模に節 電活動を行った例としては、東京大学の『東大グリーン ICTプロジェクト』がある[1]。
4市販のデータ分析ツールでは、導入にあたって数十万〜数百万の ライセンス費用が掛かることも珍しくない。
2
• 市販されている小型のマイコンボード
• 計測データ収集用PCサーバ
• 大学内ネットワーク(学内LAN) 上記のシステム要素を組み合わせ、
• いま現在、どのフロアのどのコンセントが、どれ だけの電力を使っているのか?
• 各コンセントの(一定期間における)電力の使用 割合はどのようなものか?
をリアルタイムで把握するシステムを現在も構築中で あり、これまでの成果として、一応の安定稼働を実現さ せた電力計測システムをWebにて公開中3である(図 1、図2)。
図1: 消費電力計測システム: 計測結果の一覧
図2: 消費電力計測システム: 電力使用グラフ 本システムでは、ハードウェアは市販品から成るが、
ソフトウェアはLinuxを中心としたフリーのツールのみ
3http://eco2.tech.uec.ac.jp/ecop-test/index2.php 2015年9月現在、仮運用中。
で構成されている。また、ツール間のデータ連係のため に必要となる機能のみ、教育研究技師部で新たに開発し た。センサ計測に関わるシステムは、その計測データ総 量が数百万〜数千万件単位になることも珍しくはなく、
このような規模のデータを処理するには、市販のOLAP ツールやデータ分析ツール4を利用することも一般的な 解決策とされている。本システムも、同様の規模のデー タを処理対象とするものであるが、ソフトウェアに関わ る部分は前述の理由により、ライセンス費用の支払いや 再配布の制限などは一切発生しない。そのため、様々な 規模の組織に対して、比較的安価かつ容易に導入可能な センサ計測システムとなっていることが、大きな特徴と なっている。
これに加え本システムは、過去2年の実運用に基づく 種々の改良を施し、4章にて後述する次の特徴も併せ持 つに至った。
• 24時間365日のデータ収集
• 軽微なエラーがあっても稼働が継続する仕組み
• 計測済データの多重化保存、消失事故への対応(バ ックアップ/リストアの保証)
• 取得済みのセンサデータに対する、多様な分析手 法の適用
• スケールアウトへの対応
しかしながらここに至るまでにはプロジェクト内で 多くの試行錯誤を経ており、とくに2013年度末の時点 では、本格的な情報システムの構築ノウハウが教育研 究技師部内で未成熟だったこともあり、計測データ収集 サーバの稼働ははなはだ不安定なものであった。そこ で、2014年度のプロジェクト活動では、主としてサーバ システムの強化に主眼を置き、システム全体の信頼性、
堅牢生、柔軟性および運用性向上の実現を目指した。
本稿では、プロジェクトのこれまで取り組みおよび、
2013年度までに構築したシステムの概要を述べた後、
2014年度に実施した計測データ収集サーバの改善点/
新規構築点を詳説する。最後に教育研究技師部電力計測 プロジェクトの今後の展望について述べる。
2 先行研究
2.1 東大グリーン ICT プロジェクト
センサネットワークを活用し組織的かつ大規模に節 電活動を行った例としては、東京大学の『東大グリーン ICTプロジェクト』がある[1]。
4市販のデータ分析ツールでは、導入にあたって数十万〜数百万の ライセンス費用が掛かることも珍しくない。
2
コンセント単位での計測を可能としたフリーソフトウェアツールによる消費電力値自動収集システムの実装と改善 63
このプロジェクトはマルチベンダー、マルチサブシス テム環境におけるセンサデータ収集システムに関して、
研究成果を積極的に公開している。プロジェクトの目的 は次のとおりである。
1. ファシリティーマネージメントシステムの稼働実 態の正確な計測と解析
• マルチベンダー、マルチサブシステム環境で の統合的データ収集技術の確立
• 大学における総合教育研究棟におけるデータ 収集指針の確立
2. 計測データの解析・表示による効果の検証 3. 先進的制御技術・制御システムの導入とその効果
の検証
東大グリーンICTプロジェクトホームページ http://www.gutp.jp/
「研究開発計画の概要」 より引用[2]
同大学では2008年よりICTを用いたセンサネット ワークによる省エネルギー推進システムを提唱してお り、同年にグリーン東大工学部プロジェクトを発足させ ている[3]。以降、継続的かつ組織的に学内施設の省エ ネルギー活動推進に取り組んでおり[4]、東大グリーン ICTプロジェクトも、これらの取り組みの延長にあるも のといえる。
本稿で紹介する電気通信大学の消費電力計測プロジェ クトは、上述した東大グリーンICTプロジェクトの研 究成果を参考にして開始された。とくに、上記プロジェ クトで提唱され標準規格化されたIEEE1888プロトコ ルは、本稿で紹介するセンサデータ収集システムの中核 を担う技術として現在も活用中である。
2.2 その他の先行研究
その他の先行研究としては、静岡大学における「環境 負荷モニタリングシステム」を挙げることができる[5]。 同大学では2010年3月の情報基盤システムの更新に合 わせ、静岡浜松両キャンパスにおける電力、ガス、水道 の使用量を1分周期で自動収集するシステムを開発し、
運用を行っている。同システムの特徴は、電力のみなら ず、各種センサを用いてガス、水道の使用量までもリア ルタイムに計測し、同大学内のLANを通じてデータセ ンターにあるプライベートクラウド上の環境負荷モニタ リングサーバに計測データを自動収集していることにあ る。これらの収集データは、Webブラウザにて各種グラ フ(棒グラフ、折れ線グラフ、積算グラフ、円グラフな
ど)で表示され、過去のデータと比較できるようになっ ている。
この他、消費電力の計測/可視化を行うシステムの開 発、運用に取り組んでいる事例は大阪大学、東京農工大 学でも報告されており[6][7]、名古屋大学では大学施設 内におけるスマートエネルギーシステム導入時のシュミ レーション研究の報告がなされている[8]。
このように、ICTおよびセンサネットワークを組み合 わせ、より広域的な視点から省エネルギーを推進、支援 するシステムの構築は、多くの組織で取り組まれている ものであり、本稿で紹介するシステムも、その流れの一 環にあるものといえる。
2.3 教育研究技師部 消費電力計測プロジェク トの位置づけ
『東大グリーンICTプロジェクト』はセンサネット ワークにおける新たな標準技術を確立し、マルチベンダ 環境におけるデータ収集システムの普及を促進するもの であるが、1つの組織において必要充分な機能を満たし た電力計測システムを運用するためには、このプロジェ クトで公開されている成果だけでは不十分である。具体 的には、
• 建築物内のフロア、研究室など名称と設置済みセ ンサとの対応を取るデータベースシステム
• ネットワーク障害、サーバ障害および電源障害発 生時における取得済みセンサデータの保護と回復 の仕組み
• その後の拡張性を見込んだシステム構築の進め方 などは、電力計測に取り組む各組織の工夫と判断に委ね られており、後述する『東大グリーンICTプロジェク ト』の成果システムを中核にして、組織それぞれの事情 を鑑みたさまざまな周辺要素システムを追加してゆくこ とが必要となる。
教育研究技師部における消費電力計測プロジェクト では、これら実際にセンサネットワークを構築するにあ たって必要とされる種々の周辺技術を整理し、より広範 な組織に適用可能なWebサービスとしての電力計測シ ステムの構築を目指している。また、システムの構築過 程と要素技術、発生した問題点などを整理して公開し、
より多くの組織に参考とされる実践事例となることを目 標とし、もってプロジェクトの存在意義としている。
このプロジェクトはマルチベンダー、マルチサブシス テム環境におけるセンサデータ収集システムに関して、
研究成果を積極的に公開している。プロジェクトの目的 は次のとおりである。
1. ファシリティーマネージメントシステムの稼働実 態の正確な計測と解析
• マルチベンダー、マルチサブシステム環境で の統合的データ収集技術の確立
• 大学における総合教育研究棟におけるデータ 収集指針の確立
2. 計測データの解析・表示による効果の検証 3. 先進的制御技術・制御システムの導入とその効果
の検証
東大グリーンICTプロジェクトホームページ http://www.gutp.jp/
「研究開発計画の概要」 より引用[2]
同大学では2008年よりICTを用いたセンサネット ワークによる省エネルギー推進システムを提唱してお り、同年にグリーン東大工学部プロジェクトを発足させ ている[3]。以降、継続的かつ組織的に学内施設の省エ ネルギー活動推進に取り組んでおり[4]、東大グリーン ICTプロジェクトも、これらの取り組みの延長にあるも のといえる。
本稿で紹介する電気通信大学の消費電力計測プロジェ クトは、上述した東大グリーンICTプロジェクトの研 究成果を参考にして開始された。とくに、上記プロジェ クトで提唱され標準規格化されたIEEE1888プロトコ ルは、本稿で紹介するセンサデータ収集システムの中核 を担う技術として現在も活用中である。
2.2 その他の先行研究
その他の先行研究としては、静岡大学における「環境 負荷モニタリングシステム」を挙げることができる[5]。 同大学では2010年3月の情報基盤システムの更新に合 わせ、静岡浜松両キャンパスにおける電力、ガス、水道 の使用量を1分周期で自動収集するシステムを開発し、
運用を行っている。同システムの特徴は、電力のみなら ず、各種センサを用いてガス、水道の使用量までもリア ルタイムに計測し、同大学内のLANを通じてデータセ ンターにあるプライベートクラウド上の環境負荷モニタ リングサーバに計測データを自動収集していることにあ る。これらの収集データは、Webブラウザにて各種グラ フ(棒グラフ、折れ線グラフ、積算グラフ、円グラフな
ど)で表示され、過去のデータと比較できるようになっ ている。
この他、消費電力の計測/可視化を行うシステムの開 発、運用に取り組んでいる事例は大阪大学、東京農工大 学でも報告されており[6][7]、名古屋大学では大学施設 内におけるスマートエネルギーシステム導入時のシュミ レーション研究の報告がなされている[8]。
このように、ICTおよびセンサネットワークを組み合 わせ、より広域的な視点から省エネルギーを推進、支援 するシステムの構築は、多くの組織で取り組まれている ものであり、本稿で紹介するシステムも、その流れの一 環にあるものといえる。
2.3 教育研究技師部 消費電力計測プロジェク トの位置づけ
『東大グリーンICTプロジェクト』はセンサネット ワークにおける新たな標準技術を確立し、マルチベンダ 環境におけるデータ収集システムの普及を促進するもの であるが、1つの組織において必要充分な機能を満たし た電力計測システムを運用するためには、このプロジェ クトで公開されている成果だけでは不十分である。具体 的には、
• 建築物内のフロア、研究室など名称と設置済みセ ンサとの対応を取るデータベースシステム
• ネットワーク障害、サーバ障害および電源障害発 生時における取得済みセンサデータの保護と回復 の仕組み
• その後の拡張性を見込んだシステム構築の進め方 などは、電力計測に取り組む各組織の工夫と判断に委ね られており、後述する『東大グリーンICTプロジェク ト』の成果システムを中核にして、組織それぞれの事情 を鑑みたさまざまな周辺要素システムを追加してゆくこ とが必要となる。
教育研究技師部における消費電力計測プロジェクト では、これら実際にセンサネットワークを構築するにあ たって必要とされる種々の周辺技術を整理し、より広範 な組織に適用可能なWebサービスとしての電力計測シ ステムの構築を目指している。また、システムの構築過 程と要素技術、発生した問題点などを整理して公開し、
より多くの組織に参考とされる実践事例となることを目 標とし、もってプロジェクトの存在意義としている。
3
• 市販されている小型のマイコンボード
• 計測データ収集用PCサーバ
• 大学内ネットワーク(学内LAN) 上記のシステム要素を組み合わせ、
• いま現在、どのフロアのどのコンセントが、どれ だけの電力を使っているのか?
• 各コンセントの(一定期間における)電力の使用 割合はどのようなものか?
をリアルタイムで把握するシステムを現在も構築中で あり、これまでの成果として、一応の安定稼働を実現さ せた電力計測システムをWebにて公開中3である(図 1、図2)。
図1: 消費電力計測システム: 計測結果の一覧
図2: 消費電力計測システム: 電力使用グラフ 本システムでは、ハードウェアは市販品から成るが、
ソフトウェアはLinuxを中心としたフリーのツールのみ
3http://eco2.tech.uec.ac.jp/ecop-test/index2.php 2015年9月現在、仮運用中。
で構成されている。また、ツール間のデータ連係のため に必要となる機能のみ、教育研究技師部で新たに開発し た。センサ計測に関わるシステムは、その計測データ総 量が数百万〜数千万件単位になることも珍しくはなく、
このような規模のデータを処理するには、市販のOLAP ツールやデータ分析ツール4を利用することも一般的な 解決策とされている。本システムも、同様の規模のデー タを処理対象とするものであるが、ソフトウェアに関わ る部分は前述の理由により、ライセンス費用の支払いや 再配布の制限などは一切発生しない。そのため、様々な 規模の組織に対して、比較的安価かつ容易に導入可能な センサ計測システムとなっていることが、大きな特徴と なっている。
これに加え本システムは、過去2年の実運用に基づく 種々の改良を施し、4章にて後述する次の特徴も併せ持 つに至った。
• 24時間365日のデータ収集
• 軽微なエラーがあっても稼働が継続する仕組み
• 計測済データの多重化保存、消失事故への対応(バ ックアップ/リストアの保証)
• 取得済みのセンサデータに対する、多様な分析手 法の適用
• スケールアウトへの対応
しかしながらここに至るまでにはプロジェクト内で 多くの試行錯誤を経ており、とくに2013年度末の時点 では、本格的な情報システムの構築ノウハウが教育研 究技師部内で未成熟だったこともあり、計測データ収集 サーバの稼働ははなはだ不安定なものであった。そこ で、2014年度のプロジェクト活動では、主としてサーバ システムの強化に主眼を置き、システム全体の信頼性、
堅牢生、柔軟性および運用性向上の実現を目指した。
本稿では、プロジェクトのこれまで取り組みおよび、
2013年度までに構築したシステムの概要を述べた後、
2014年度に実施した計測データ収集サーバの改善点/
新規構築点を詳説する。最後に教育研究技師部電力計測 プロジェクトの今後の展望について述べる。
2 先行研究
2.1 東大グリーン ICT プロジェクト
センサネットワークを活用し組織的かつ大規模に節 電活動を行った例としては、東京大学の『東大グリーン ICTプロジェクト』がある[1]。
4市販のデータ分析ツールでは、導入にあたって数十万〜数百万の ライセンス費用が掛かることも珍しくない。
2
このプロジェクトはマルチベンダー、マルチサブシス テム環境におけるセンサデータ収集システムに関して、
研究成果を積極的に公開している。プロジェクトの目的 は次のとおりである。
1. ファシリティーマネージメントシステムの稼働実 態の正確な計測と解析
• マルチベンダー、マルチサブシステム環境で の統合的データ収集技術の確立
• 大学における総合教育研究棟におけるデータ 収集指針の確立
2. 計測データの解析・表示による効果の検証 3. 先進的制御技術・制御システムの導入とその効果
の検証
東大グリーンICTプロジェクトホームページ http://www.gutp.jp/
「研究開発計画の概要」 より引用[2]
同大学では2008年よりICTを用いたセンサネット ワークによる省エネルギー推進システムを提唱してお り、同年にグリーン東大工学部プロジェクトを発足させ ている[3]。以降、継続的かつ組織的に学内施設の省エ ネルギー活動推進に取り組んでおり[4]、東大グリーン ICTプロジェクトも、これらの取り組みの延長にあるも のといえる。
本稿で紹介する電気通信大学の消費電力計測プロジェ クトは、上述した東大グリーンICTプロジェクトの研 究成果を参考にして開始された。とくに、上記プロジェ クトで提唱され標準規格化されたIEEE1888プロトコ ルは、本稿で紹介するセンサデータ収集システムの中核 を担う技術として現在も活用中である。
2.2 その他の先行研究
その他の先行研究としては、静岡大学における「環境 負荷モニタリングシステム」を挙げることができる[5]。 同大学では2010年3月の情報基盤システムの更新に合 わせ、静岡浜松両キャンパスにおける電力、ガス、水道 の使用量を1分周期で自動収集するシステムを開発し、
運用を行っている。同システムの特徴は、電力のみなら ず、各種センサを用いてガス、水道の使用量までもリア ルタイムに計測し、同大学内のLANを通じてデータセ ンターにあるプライベートクラウド上の環境負荷モニタ リングサーバに計測データを自動収集していることにあ る。これらの収集データは、Webブラウザにて各種グラ フ(棒グラフ、折れ線グラフ、積算グラフ、円グラフな
ど)で表示され、過去のデータと比較できるようになっ ている。
この他、消費電力の計測/可視化を行うシステムの開 発、運用に取り組んでいる事例は大阪大学、東京農工大 学でも報告されており[6][7]、名古屋大学では大学施設 内におけるスマートエネルギーシステム導入時のシュミ レーション研究の報告がなされている[8]。
このように、ICTおよびセンサネットワークを組み合 わせ、より広域的な視点から省エネルギーを推進、支援 するシステムの構築は、多くの組織で取り組まれている ものであり、本稿で紹介するシステムも、その流れの一 環にあるものといえる。
2.3 教育研究技師部 消費電力計測プロジェク トの位置づけ
『東大グリーンICTプロジェクト』はセンサネット ワークにおける新たな標準技術を確立し、マルチベンダ 環境におけるデータ収集システムの普及を促進するもの であるが、1つの組織において必要充分な機能を満たし た電力計測システムを運用するためには、このプロジェ クトで公開されている成果だけでは不十分である。具体 的には、
• 建築物内のフロア、研究室など名称と設置済みセ ンサとの対応を取るデータベースシステム
• ネットワーク障害、サーバ障害および電源障害発 生時における取得済みセンサデータの保護と回復 の仕組み
• その後の拡張性を見込んだシステム構築の進め方 などは、電力計測に取り組む各組織の工夫と判断に委ね られており、後述する『東大グリーンICTプロジェク ト』の成果システムを中核にして、組織それぞれの事情 を鑑みたさまざまな周辺要素システムを追加してゆくこ とが必要となる。
教育研究技師部における消費電力計測プロジェクト では、これら実際にセンサネットワークを構築するにあ たって必要とされる種々の周辺技術を整理し、より広範 な組織に適用可能なWebサービスとしての電力計測シ ステムの構築を目指している。また、システムの構築過 程と要素技術、発生した問題点などを整理して公開し、
より多くの組織に参考とされる実践事例となることを目 標とし、もってプロジェクトの存在意義としている。
64 竹内純人 (2016 年 2 月)
3 2013 年度までに構築した消費電力 計測システムと問題点
ここで、本プロジェクトにて2013年度末まで構築し た消費電力計測システムについて述べる。
3.1 システムの要素技術
3.1.1 電力計測センサ本プロジェクトでは、電力計測センサとしてクランプ 式交流電流センサを採用した(図3)。
図3: 設置した電力計測センサ
図3のものは最大80Aまでの電流に対応したもので あるが、他に最大200Aの電流にも対応できるものも購 入し、計測精度の確認作業と併せて、計測対象の電源の 電流値に合わせて適切なものを設置するようにしてい る。購入単価は高いものでも数千円程度である。
3.1.2 マイコンボード
電力計測センサに計測命令を送り、取得したデータを サーバに送る機器として、Raspberry Piというマイコ ンボードを利用した(図4)。
図4: マイコンボードRaspberry Pi
このマイコンボードは、マイクロSDカード内にLinux システムをインストールしシステムを運用することがで きる。本プロジェクトでは、Debian GNU Linuxをイン ストールしたRaspberry Piを用い、
• 一定間隔で電力計測センサへ電力計測命令を発行 するプログラム
• 計測した電力値をサーバに送信するプログラム をPerlおよびPHP言語を用いて独自開発した。ま た、マイコンボードのI/Oピンと電力計測センサを接続 する基板も大学内の設備を利用し、独自に開発を行った。
3.1.3 IEEE1888
センサで計測したデータをマイコンボードを経由して サーバに送信する際の通信プロトコルとして、IEEE1888 を採用した。これは、複数のベンダの機器が混在するス マートグリッドシステムなどにおいて、あらゆるセンサ 情報をインターネット上で送受信するためのオープン規 格として2011年に国際標準化された通信プロトコルで ある[9]。この規格の開発には、東京大学グリーンICTプ ロジェクトが中心的に関与しており、別名FIAP(Facility Information Access Protocol)とも呼ばれている。
本プロトコルは前述した静岡大学の環境負荷モニタリ ングシステムにも採用されており、国際標準というだけ でなく運用実績の観点からも、本システムへの採用が適 切と判断した[10]。
3.2 2013 年度までに構築したシステム
2013年度までに構築したシステムの概要を図5に示 す。図5: 2013昨年度までに構築したシステム
(1)電力計測センサ
前述の電力計測センサを配電盤にある電力線に取
コンセント単位での計測を可能としたフリーソフトウェアツールによる消費電力値自動収集システムの実装と改善 65 り付けている。2013年度は共通教育部および吉田
研究室(情報理工学研究科)の協力を得て、D棟 物理実験室および西3号館5階の分電盤にセンサ を取り付けており、2015年9月現在も稼働中で ある。
(2)データ収集/送信端末
電力計測センサの制御は、前述のマイコンボード
(Raspberry Pi)が行う。ボードに付属している I/O ピンの読み取りコマンドにより電力計測セ ンサに計測指令を発行し、取得した値を後述する データ蓄積サーバ(FIAPサーバ)に送信する。こ の際の通信プロトコルにIEEE1888を使用する。
IEEE1888では、設置先のセンサを直接制御する
ための端末をGate Way(GW)と呼んでいる。本 稿も以下、同様の名称を用いる。
(3)FIAPサーバ
IEEE1888形式で送信されたセンサデータを受信
し、データベースに蓄積するサーバシステムであ る。実際のデータ受信/処理を担うサーバアプリ ケーションは東大グリーンICTプロジェクトにて 配布されているFIAPStorage25を使用した。FI-
APStorage2では、個別のセンサ毎に、データベー
スに次の3つのデータが格納される。
• センサID
• 計測日時
• 計測値
(4)データ表示アプリケーション
FIAPサーバと同一の物理PCに、計測値を表示 するWebアプリケーションプログラム実装した。
本アプリケーションはPHP言語にて開発されて おり、IEEE1888にてFIAPStorage2から取得し たセンサID/計測日時/計測値を一覧およびグ ラフ形式でWebブラウザに表示するものである。
(5)データ閲覧
システムを利用するユーザは、Webブラウザ経由 で、電力計測値を確認する
3.3 システムの問題点
2013年度は電力計測の仕組みそのものが試行錯誤で あったため、実際にシステムを構築してみると、多くの 運用上の問題が発生した。
5http://fiap-develop.gutp.ic.i.u-tokyo.ac.jp/dist/
3.3.1 ネットワーク障害による計測漏れ
2013年度までのシステムでは、GWにて取得した計 測値はメモリ内部の変数値に格納した後、(一時ログな どに出力せず)即時に送信処理を行うように実装した。
そのため、GW – FIAPサーバ間にネットワーク障害が 起こった場合、その間の計測値は全て破棄されてしまっ ていた。
3.3.2 GWの死活監視不足
夏場の配電盤設備の中は、通常の室内利用では想定さ れない過酷な温度状況にさらされる。本システムで採 用しているGWは、特段の動作条件6が定められておら ず、ボードも簡易的な手作りの収納箱に入れた状態で稼 働させているため、熱暴走などの動作不良が起こりやす い状況にあった。そのような中で、GW動作に関する 死活監視の仕組みが存在しなかったため、システムの障 害原因の切り分け作業に多くの時間が費やされる状況に あった。
3.3.3 FIAPサーバの障害
FIAPサーバ上で稼働させたFIAPStorageはTom- cat7上で動作するサーブレットベースのWebアプリケー ションであるが、長時間稼働させるとメモリ不足などの 理由で異常終了する障害がたびたび発生した。稼働させ ているサーバPCも古い年代のもので、1GBのメモリ内 でOS(Ubuntu10.4LTS)/Tomcat/PostgreSQL8を 稼働させていたため、チューニングの余地も少なく、数週 間〜1カ月程度の連続稼働に耐えられない状況であった。
4 電力計測システムの強化と改善 4.1 再構築システムの方針と概要
上記の問題点を受け2014年度では、主たるプロジェ クト活動として電力計測システム全体の強化と改善作業 に取り組んだ。また、本作業に先立ち方針および具体的 な目標の検討を行い、次のとおりとした。
• 信頼性/堅牢性の強化
– 24時間365日のデータ収集の実現9
6据置きを前提とした組込系のマイコン製品では、動作条件仕様に
「温度:−30℃〜+70℃/湿度:20%〜90%RH(結露無きこと)」
などのように定めているのが一般的である。
7http://tomcat.apache.org/
8http://www.postgresql.org/
9ただし、建て屋設備には法定停電が発生するので、年の稼働率が 100%にはならない
66 竹内純人 (2016 年 2 月)
– 軽微なエラーがあっても稼働が継続するよう にする
– 計測済データの保存多重化、消失事故への対 応(バックアップ/リストアの保証)
• 柔軟性/運用性の獲得
– 取得済みのセンサデータに対して、多様な分 析手法を容易に適用できる仕組みとする – 正常稼働時のサーバ/GWに対する人的オ
ペレーションを可能な限り低減する
• システムのスケールアウト対応
– システム全体の処理量増加への対応を容易に する
上記方針に基づき2014年度に再構築した電力計測シ ステムの概要を、図6に示す。
図6: 2014昨年度に再構築した電力計測システム
4.2 強化/改善のポイント
2014年度に再構築したシステムのポイントを次に述 べる。
4.2.1 信頼性/堅牢性の強化
ネットワーク障害やサーバ障害の発生時でも、GWが 稼働していれば電力計測センサによる定期計測が継続で きるように、GW(Raspberry Pi)–データ集積用サー バ間にファイル同期ツールのSubversion10を導入した。
本ツールは、複数のコンピュータ間で、任意のディレク トリおよび、その中に格納されているファイル群のデー タ内容を、任意のタイミングで同期させることを可能と するものである。
10https://subversion.apache.org/
図7: ファイル同期ツールの仕組み
図7のとおり、本ツールをGWおよびデータ集積用 サーバに導入し、電力計測センサで計測した電力値を GW内のファイルとして保存し続けるように動作させ る。そして、データ集積用サーバと通信可能な時に、一 括してファイル同期を行い、同期が成功した後は、デー タ集積用サーバ側で必要な処理を行いファイルを削除す る。この仕組みにより、電力計測システムの一部が以下 の状況にある場合でも、GWが稼働し続ける限り、セン サによる電力値計測が継続することを可能とし、かつ計 測済みデータ消失のリスクを大きく低減させている(信 頼性の向上)。
• ネットワーク障害発生時
• サーバ障害発生時
• サーバの再起動時、メンテナンス実施時
また、不要になったファイルの削除はデータ集積用 サーバ側で行われるので、ファイル同期のタイミングで GW側に保存されているファイルも削除されるように なっている。これにより、GW内に永遠にファイルが溜 まり続けることを防いでいる。
続いてデータ集積用サーバ側の処理であるが、受信し た計測値データについては、フォーマットの統一やメン テナンスの容易性などを考慮し、「中間貯蔵DB」という 位置づけで、FIAPサーバとは別に稼働する独自のデー タベースを構築し、この中にデータを蓄積する方式とし た。蓄積を行うプログラムはPHP言語によるバッチ処 理として次の手順で実装され、数分間隔で定期的に起動 されることにより、GWから受信したデータファイルを 処理している。
1. 同期されたデータファイルを読み込み 2. 中間貯蔵DBにレコードとして格納 3. データファイル削除
また、日単位で中間貯蔵DBおよびファイル同期ツー ル11のフルバックアップを行い、万一のデータ消失事故
11ファイル同期ツールには、ファイルの履歴管理を行う機能も含ま れており、サーバ側の管理データをバックアップすることで、履歴を 追って過去のファイル追加/変更/削除状態を復旧することができる
コンセント単位での計測を可能としたフリーソフトウェアツールによる消費電力値自動収集システムの実装と改善 67 発生の際の復旧が短期間に可能となるようにしている
(堅牢性の向上)。
上記の仕組みを導入することにより、2013年度まで のシステムと比べて、信頼性/堅牢性の強化が図られて いる。
4.2.2 柔軟性/運用性の獲得
一般に、センサで計測されるデータは大量になるもの であり、それらの計測データについて「どのように分析 を行うか」は、様々な手法が適用されうる。この点を考 慮し、本システムでは複数の分析手法やデータ加工方式 に基づいたデータ表示を実現できるよう、その加工方式 毎にFIAPサーバを準備する方式に再構築した。具体 的には、データ集積用サーバ内に仮想化基盤アプリケー ション(VMware Player12)を導入し、複数の仮想PC
(Ubuntu 12.04LTS Server)それぞれにFIAPサーバを 構築し、運用している。現在はこの仮想化基盤の中に2 つのFIAPサーバを構築し、1分毎に計測される電力値 データについて、それぞれ次の加工データを格納して いる。
• 中間貯蔵DBに格納されている計測済みデータの 最新値
• 中間貯蔵DBに格納されている計測済みデータの 10分毎の平均
上記それぞれのデータについても、先と同様に定期的 に起動されるデータ集計用バッチ処理により、データ取 得/それぞれのFIAPサーバに送信という処理を行って いる(図8)。
図8: データ集計、それぞれのFIAPへ配信の仕組み このような仕組みにすることで、システム全体とし ては中間貯蔵DBの正しささえ保証されていればFIAP サーバはいつでも復元できるようになる。これにより、
多様な分析手法に対して柔軟に対応できるようになると ともに、FIAPサーバのバックアップ作業を不要とする ことができるため、システム全体における運用性の向上 も図られている。
12http://www.vmware.com/jp/products/player
4.2.3 システムのスケールアウト対応
図6に示したデータ集積用サーバ内のシステム要素は 次のとおりである。
• データ受付用Webサーバ(Apache/WebDAV)
• ファイル同期ツール(Subversion)
• 中間貯蔵DB(PostgreSQL)
• 中間貯蔵DBへのデータ格納スクリプト(PHP)
• 仮想化基盤(VMWare Player)の中の仮想PC(FIAP サーバ)
• FIAPサーバへのデータ配信スクリプト(PHP)
• データ表示用Webサーバ(Apache/PHP) 上記のシステム要素間のデータ授受は、全てTCP/IP にて完結できるようになっている。そのため、必ずしも 単一のサーバ機内に全ての要素が導入されている必要は 無く、データ処理量の増大に伴い、それぞれの要素を別 のサーバに移して稼働させたり、異なるサーバで同一要 素を多重化させたりすることが容易にできるようになっ ている。すなわち、システムのスケールアウト要求につ いての対応を実現可能な仕組みとなっている。
2015年8月現在、中間貯蔵DBのレコード量増加に伴 い、FIAPサーバへのデータ配信スクリプトによる1回 の配信処理時間が10分以上掛かる場合が発生しており、
GWのデータ送信に対して、データの加工/配信が間 に合わない状況になりつつある。そのため、近い将来、
データ集積用サーバの性能を強化するとともに、データ 集積用サーバのシステム要素を複数台のPCで並行稼働 させることを検討中である。
4.2.4 その他の特徴
上記に含まれない図6に示したシステムの特徴を列挙 する。
OS、アプリケーション自動更新
GW、サーバ内で稼働中のOSおよびアプリケー ションが日単位で最新版に自動更新される 稼働状況監視
GW、サーバ内で稼働中のOS、アプリケーション、
システム稼働状況について異常を検知した場合、
管理者にメールが通知される。メモリ不足などで サーバアプリケーションが停止した場合も、自動 で再起動される