九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
食品中のアクリルアミド迅速定量法の開発と低減化 に向けた減少機構の解析
吉岡, 俊暁
https://doi.org/10.15017/4060007
出版情報:九州大学, 2019, 博士(理学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
(様式6-2)
氏 名 吉岡 俊暁
論 文 名 食品中のアクリルアミド迅速定量法の開発と低減化に向けた減少機 構の解析
論文調査委員 主 査 九州大学 教授 神田 大輔 副 査 九州大学 教授 諸橋 憲一郎 副 査 九州大学 准教授 藤村 由紀
(生物資源環境科学府)
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本研究は,コーヒー飲料中のアクリルアミド (AA) 低減に向けた新たな戦略を立案することを目 的として,超臨界流体クロマトグラフィー/タンデム質量分析 (SFC/MS/MS) を用いた迅速高感度なA A定量分析法の開発,およびコーヒー飲料中におけるAA減少機構の解析に取り組んだものである.
SFC/MS/MS分析法と従来の液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析 (LC/MS/MS) 法のAA分析 における感度を同一の質量分析計を用いて比較した結果,開発したSFC/MS/MS分析法はLC/MS/MS 法と比べて約10倍の高感度化を達成した.さらに,従来のAA分析のための簡易前処理法であるQuE ChERS法で得られた抽出液に対して,精製・濃縮操作を行わずに簡便な希釈および遠心分離操作の みで前処理を行う手法へと改良を行った.その結果,特にAA含有量の少ない飲料類においてもAA の定量が可能であった.本分析法による1サンプルあたりの分析所要時間は35分であり,LC/MS/MS 法 (75分) と比べて分析時間を大幅に短縮できた.本分析法は,AA低濃度サンプルの多検体分析が 可能なため,様々な食品中のAA含量の実態調査,品質管理,および低減研究に非常に有効である.
また,ミルクコーヒー保存中のAAの減少原因について,AA 付加体が生成しているという仮説を 立て,AAと13C3-AAを添加したミルクコーヒー抽出液の液体クロマトグラフィー/高分解能質量分析 で得られた精密質量データを用いてAA付加体の探索を行った.ミルクコーヒー中に含まれる5000種 以上の検出化合物の中から,AA添加と13C3-AA添加サンプル間で4倍を超える強度差と,AAと13C3-A Aの精密質量差 (Δm/z = 3.0102),および保持時間の一致度からAA付加体候補化合物の絞込みを行っ た.最終的に,得られたAA付加体候補化合物の標準品を合成し比較することで,AA付加体の構造決 定を行った.その結果,ミルクコーヒー保存中におけるAAの減少に対する生成物質として,ミルク コーヒー液中の3HP-AAとPy-AA,およびミルクコーヒータンパク質中のLys-AAとCys-AAの4種のA A付加体を特定した.また,4か月間保存したミルクコーヒー中のAA減少量に対する4種のAA付加体 の生成量が合計75% (3HP-AA, 5.1%; Py-AA, 0.6%; Lys-AA, 51.7%; Cys-AA, 17.9%) であり,特に タンパク質中のLysとCysがAA低減に寄与しており,ミルクコーヒー中でAAが減少する機構の大部 分を明らかにした.
以上の結果は,様々な食品の多検体分析を必要とするAAの実態調査や低減研究に対するSFC/MS/
MSを用いたAA分析法の有効性を示した.また,コーヒー飲料中でのAA減少機構の解明に寄与する ものであり,コーヒー飲料の内在性タンパク質とAAとの反応性を活用した新しいAA低減法を開発す るための重要な知見を得たものとして価値ある業績である.また,本研究内容は,申請者を筆頭著 者とする論文を国際学術誌に発表している.
以上,本研究は博士(理学)の学位を得る資格を有するものと認める.