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― ― 台湾の「海女 」に関する民族誌的研究

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Academic year: 2021

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(1)

写真 1 木製の水中眼鏡と自家製のマスクをつけて海に潜る

(澳底/沈得隆撮影 2018 年 7 月)

写真 2 紫色の石花菜は水洗いと天日干しを 6 回ほどくり返すと白く なる(龍洞/藤川美代子撮影 2019 年 3 月)

44

 本共同研究が注目するのは、台湾で

「海女(ハイルー)」と呼ばれる女性た ちとその暮らしである。台湾各地の海 沿いには広く「海女の民俗」が存在す る。しかし、

1

)農本主義的傾向の強 い漢族研究では、海を生業の場とする 人々の存在自体が等閑視されるほか、

2

)東アジア研究では「海女といえば 日本か韓国済州島」との先入観が存続 しつづけており、台湾の海女はこれら 二重の意味で見落とされてきた存在と いえる。

 こうした背景を踏まえて本研究では、

1

)台湾の海付きの村を対象に、海女 の潜水漁・海藻の手繰り寄せ・その他 の漁撈活動をめぐる民族誌的調査を実 施し、それを「村のくらし」全体の中 に位置づけて描くこと、

2

)漢族研究 の文脈で台湾の海女民俗を捉えるため の視座を獲得すること、その上で

3

) 台湾の事例を日本の海付きの村と比較 しながら、東アジアあるいは環太平洋 島嶼部全体を射程に入れた新たな形の

「アマ研究」模索のための足がかりを 摑むことを目指している。

台湾の「海女 (ハイルー) 」に関する民族誌的研究

 ― 東アジア・環太平洋地域の海女研究構築を目指して ― 

国際常民文化研究機構/プロジェクト型共同研究(一般)

研究の目的および 2018 年度の活動報告

研究代表者 藤川 美代子

期間:2018年

4

1

日~2022年

3

31

[共同研究者]

藍紹芸(台湾基隆市八斗子漁村文物館)

新垣夢乃(東京福祉大学)

許焜山(台湾基隆市八斗子漁村文物館)

[代表者]藤川美代子(南山大学)

齋藤典子(東洋大学)

沈得隆(台湾基隆市八斗子漁村文物館)

兪鳴奇(歴史民俗資料学研究科博士後期課程)

安室 知(日本常民文化研究所)

(2)

写真 3 海中で石花菜を採る女性(龍洞/許焜山撮影 2018 年 6 月)

写真 4 台湾東北角で採れる海藻類(フォークタームは話者によって 差異が認められる)

45

日本常民文化研究所年報 2018 台湾の「海女(ハイルー)」に関する民族誌的研究

■ 2018 年度の活動

2018年度第1回共同研究会 2018514日 

南山大学人類学研究所 藤川美代子・新垣夢乃・齋藤典子・兪鳴奇

○台湾予備調査 2018729日~85日 

台湾台北市、基隆市、新北市 藤川美代子・新垣夢乃・齋藤典子・許焜山・沈得隆・藍紹芸

○内間長三氏に関する追跡調査 201887日~10日 沖縄県久高島 新垣夢乃

○台湾の海女に関する資料・現地調査 2018816日~93日 

台湾台北市、基隆市、新北市 藤川美代子・齋藤典子・兪鳴奇・許焜山・沈得隆・藍紹芸、王麗香(通訳)

○沖縄の海藻・貝類採取ならびに潜水技術の伝播に関する現地調査 201934日~9日  沖縄本島、久高島 藤川美代子・兪鳴奇・許焜山

○台湾てんぐさ漁調査 2019325日~41日 台湾台北市、基隆市、新北市貢寮区龍洞、新北市貢寮区和 美、新北市貢寮区澳底 藤川美代子・斎藤典子・新垣夢乃・許焜山・沈得隆・藍紹芸

 初年の

2018

年度は予備調査を経て、

基隆市・新北市にまたがる通称「台湾北 部・東北角」の海岸線一帯における海女 文化を本研究の主な対象とすることを決 定した。夏季・春季現地調査では、次の ような課題について基礎的なデータを収 集することに努めた。

1

)日常の文脈か ら乖離する「海女」という呼称とあるべ き「海女」像、

2

)沖縄と台湾の潜水技 術をつなぐ歴史、

3

)各世帯の生計に見 る家族の役割分担、

4

)家族の歴史と潜 水技術の習得・継承、

5

)海・磯の空間 認識と海藻類・貝類の分類・利用法をめ ぐる民俗知識、

6

)潜水漁を可能にする 道具の構造と職人の技術、

7

)「よい石 花菜(=テングサ科の総称)とは何か」

をめぐる個々のアクター間の言説の相違 とそれを支える価値観、

8

)テングサの 販路から見える世界とのつながり、

9

) 海洋資源枯渇と保護をめぐる複数の物語、

10)海の危険を回避するための民俗的叡

智。これらの課題を踏まえ、歴史的背景 の解明ならびに海藻・貝類の潜水漁を対 象とした比較研究のために、沖縄県内数カ 所での資料調査・現地調査も並行して実 施した。

 今後も各課題の追究に努めるほか、潜水漁の対象物である海藻類・貝類の種類の同定、あるいは 海藻の工業利用(=多糖類を抽出し、食品・化粧品・医薬品・塗料などに用いる)の把握などについて、

理系研究者にも協力を仰ぎながら、ミクロ・マクロ両面から台湾の海女文化を捉えることを目指し たい。

参照

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