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1 .上海語の変調体系

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Academic year: 2021

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(1)東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 第 6章. St ud ie. s). 上海語変調体系の探求とその意義 :結論に代えて. 第 3章か ら第 5章までは上海語の 2種類の変調 ( 広用式変調 と窄用式変調)に関す る個別的. な問題 を扱 ってきた。 本論文を締めくくるにあたってこの章では、前章までの議論を総合す る. gn. ことで広用式変調 と窄用式変調が上海語の変調体系をどのよ うに構成 しているのかを考察す. re i. 6. 1節) 。また、本研究が提案す る上海語の変調体系は声調研究において どのような意義お る (. Fo. 6, 2節) o最後に、今後考察を行 う必要がある残 された課題に よび特色 を持つのかを議論する (. ity. of. 6. 3節) 0 ついて論 じる (. rs. 6 . 1 .上海語の変調体系. ive. 上海語の変調体系の考察を行 う前に、第 3章か ら第 5章までの議論 を要約 しよう。まず、第. Un. 3章では広用式変調で観察 され る変調変種の問題 を扱 った。 広用式変調では第 1音節が T5( 陽 A)である 4音節語で 2種類の変種が現れることが従来の記述 によって報告 されてお り、これ. o. らの変調変種は自由に交代すると解釈 されていた ( 許宝華 ・湯珍味 ほか 1 98 8など) 。しか し、. ky. 変調変種の出現分布の詳細な調査はこれまで行われてお らず、変調変種が本当に自由変異の関. (T o. 叙述 係 にあるのかは定かではなかった。 そ こで、本研究では異なる形態統語構造 と文の種類 ( 文 と疑問文)で変調変種がどのような出現分布 を示すのかを調査 した。調査の結果 、T5変調 4. is. 音節語では 4音節全体で 1つの変調適用範囲を形成す る第 2音節拡張変種 と最終音節拡張変種. he s. に加 え、2音節 十三音節の 三つの変調適用範囲か らなる 2 +2変種 とい う3種類の変種が出現す. al T. ることが判明 した。また、これ らの変調変種の出現分布は形態統語構造によって大きく偏 るこ とが調査か ら明 らか となった。 具体的に言 うと、最終音節拡張変種 は調査対象である 4種類の. Do ct. or. 形態統語構造の全てで出現 したが、第 2音節拡張変種 と 2 +2変種は ( 1例 を除いて)2音節 +2. 音節 の構造を持つ複合語で しか現れなかった。 一方、叙述文 と疑問文の違いは変調変種の出現 分布 に有意な影響を与えなかった。以上の結果は変調変種の出現分布が形態統語構造の影響 を 受けていることを示 している。第 3章の議論か ら広用式変調 と形態統語 レベルおよび音韻 レベ. ルの関係 は図 6 ‑ 1のよ うに表す ことが可能である。. 1 53.

(2) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 形態統語 レべ/. St ud ie s). 広用式変調. 図6 ‑ 1 .広用式変調 と形態統語 レベルおよび音韻 レベルの関係 ( 図 31 8の再掲). .. gn. 広用式変調 自体は 【 1 】声調削除、【 2】声調連結、 【 3】( デフォル ト声調の)L o w挿入 ( 22 . 3 . 1. Fo r. 形成 ( Duatmu1 9 9 3 、C h e n2 0 0 0 )は形態統語 レベルによって規定 されるO. ei. 節参照)からなる音韻的な現象であるが、第 3章で示 したような変調変種の出現分布やフッ ト. of. 次に、第 4章では広用式変調で挿入 されるデフォル トの I . ow 声調の音声実現を音響音声学 的に記述 し、その結果からデフォル ト声調が音韻派生の どの段階で挿入 されるのかを考察 した。. ity. 広用式変調では第 1音節の声調が ( 複数音節か らなる)語全体の ピ ッチを決定 し、第 2音節以. rs. 降の声調は語のピッチに関与 しない. この現象を分析す るために従来の音韻的研究 ( zeea nd. ive. Ma d d i e s o n1 9 7 9など)は第 2音節以降の声調を全て削除 し、第 2音節には第 1音節の声調、第. Un. 3音節以降にはデフォル トの Lo w声調を連結する解釈を提案 した。Yi p( 2 0 0 2 ) によると ( 言語 一般の)デフォル ト声調は音韻 レベルから音声 レベルに至るまでの複数の段階で挿入 される可. yo. 能性があ り、挿入 される段階によってデフォル ト声調の音韻的振 る舞いや音声実現が異なる。. ok. そのため、Yi pはデフォル ト声調 とい う概念を利用す る際には音韻派生のどの段階で挿入 され. (T. るのかを明確にする必要があると指摘するが、上海語でこの間題を考察 したのは C h e n( 2 08 ) など少数の研究に限 られていた。. sis. そこで本研究はデフォル ト声調が挿入 される音節のピッチを音響音声学的な手法で調査 し、. he. その調査結果か ら上海語のデフォル ト声調が音韻派生のどの段階で挿入 され るのかを考察 し. al T. た。調査の結果、デフォル ト声調の Lo wが挿入 される第 3音節以降ではピッチが急激に下降 を始めるが、後続音節に向か うにつれてピッチの下降速度が徐々に減速す ることが判明 した。. 2 0. Do. ct. or. a s ymp t o dc ) ピッチ下降は C h e n( 0 8 ) が示 した調査結果 とは異なってお このような漸近的な (. り、 ( 北京語および上海語の)音韻 レベルで指定 される声調の音声実現 と共通する。筆者は本. 研究の調査結果にもとづいて上海語のデフォル ト声調は遅 くとも音韻 レベルの最終段階まで には挿入 されると主張 した。第 4章の議論にもとづ くと、デフォル ト声調が挿入 され るレベル は図 6‑ 2( 図 4‑ 1 1の再掲)のように表す ことが可能であるO. 1 5 4.

(3) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 広用式変調. die. s). ( デ フォル ト声調). St u. 図6 ‑ 2 .広用式変調でデフォル ト声調が挿入 されるレベル. gn. ‑ 1 1の再掲) ( 図4. デフォル ト声調が音韻 レベルで挿入 されるとい うことは、広用式変調は音韻 レベルまでで処理. re i. が完結する現象であることを意味する。. Fo. 最後に、第 5章では窄用式変調が音声的な現象なのか、それ とも音韻的な現象なのかを考察. of. した。動詞+目的語や主語+述語などの句構造に適用 される窄用式変調では曲線声調が全て水 陰平)とT2( 陰去)が同じ調値 [ 4 4] を取ると記述 されてきた ( 許宝華 ・ 平声調に変化 し、Tl(. rs it. y. 9 8 8など) 。従来の研究ではこの窄用式変調を 【 1 】音声的な現象 ( 発話速度に応 湯珍味ほか 1. 石汝傑 1 9 95、銭乃栄 1 99 7) と 【 2】音韻的な現 じた ピ ッチの連続的な変化) と見なす解釈 (. ive. ch e n2 0 0 0 、岩 田 2 α相、朱暁農 2 0 0 5 )が提案 負 ( 水平声調化 と声調の中和) と見なす解釈 (. Un. されていたが、窄用式変調が起きている音節のピッチがどのように実現す るのかはこれまで客 観的には調査 されてお らず、どちらの解釈が妥当なのかを判断できなかった。 そこで本研究で. yo. は、3種類の曲線声調を調査対象 として異なる 3つの発話速度での窄用式変調時のピッチを音. ok. 響音声学的に記述 し、その結果か ら窄用式変調が音声的な現象なのか、それ とも音韻的な現象. (T. なのかを考察 した。調査の結果、3種類の曲線声調は発話速度が速 くなるにつれてピッチの変 Tl )およ 動幅が縮小するものの、少なくとも 2つの曲線声調 什lとT3)ではピッチの下降 (. is. T3)が維持 されることが判明 した。また、窄用式変調を音韻的な現象 と見なす解釈で び上昇 (. es. は中和す ると考えられていた TlとT2の ピ ッチ曲線は l名の発話者の速い速度の発話を除い. Th. て合流せず、この 2つの声調のピッチ間には有意な差が存在することが明 らかとなった。以上. al. の結果は窄用式変調が音韻的な水平声調化でも声調の中和現象でもなく、む しろ発話速度に応. or. c o m 血u o u s )に変化する音声的な現象であることを示唆する. じてピッチの変動幅が連続的 (. 現することが可能である。. Do. ct. 3( 図5 ‑ 1 1の再掲)のように表 第 5章の結果を踏まえると、窄用式変調が起きるレベルは図 6‑. 1 55.

(4) s). 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). die. 窄用式変調 図6 1 3 .窄用式変調が起 きるレベル. St u. ‑ 1 1の再掲) ( 図5. gn. 第 3章か ら第 5章までの議論を総合す ると、上海語は図 6 4 に示す よ うな変調体系を持っ と. Fo re i. 解釈できる。. 形態統語 レべ ノ. ive. rs. ity. of. 広用式変調. 窄用式変調. Un. 図6 1 4.上海語の変調体系. yo. 囲 む4では 【 1 】広用式変調は音韻的な変調であるが ( 変調変種の出現分布な どで)形態統語. ok. レベルの影響 も受 けること、【 2】広用式変調 はデフォル ト声調の挿入 も含 めて音韻 レベルまで. (T. 3】窄用式変調は音声 レベルの変調であるこ で処理が完結 し音声 レベル とは関わ らないこと、【 とが示 されている。また、広用式変調 と窄用式変調はそれぞれ別の レベルで独立 して存在 して. Th. es. is. いることが図 64 か ら見て取れ る.. al. 6 . 2 .本研究の意義と特色. or. 前節で示 した上海語の変調体系は、上海語研究 と漢語 ( お よび言語一般の)声調研究におい. Do. ct. て どのよ うな意義および特色を持つのだろ うれ まず、上海語研究における意義か ら考えてみ よ う。従来の上海語変調の研究では広用式変調 を分析対象 とした ものが多 く、これに対 して窄. 1 9 95 ) や ch e n( 2 0 0) など少数 に 用式変調お よび上海語変調体系の考察を行 ったものは石汝傑 (. 1 9 9 5 ) は広用式変調 と窄用式変調の レベルの違いを正 しく指摘 した唯一の研 限 られ る。石汝傑 ( 究であるがこの解釈 を支持するような客観的なデータを示 さなかったため、彼の解釈が以後の. 1 56.

(5) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 研究で注 目されることはなかった。 また、Che n( 20 0) に至っては生成音韻論 ( 特に韻律理論). St ud. 解釈 した) 。以上を踏まえると、本研究は客観的なデータにもとづいて上海語の変調体系を実. ie. Ch e nはどちらの変調 も音韻 レベルで起きると のレベルの違いに目を向けることはなかった (. s). の枠組みで広用式変調 と窄用式変調を捉えることを目的 としたため、広用式変調 と窄用式変調. 1 9 9 5 ) が指摘 した広用式 証的に考察 した初めての研究であると言える。本研究によって石汝傑 (. ベルの影響を受けるが音声 レベル とは関わ らないことが明 らか となった。. gn. 変調 と窄用式変調の レベルの違いが実証的に示 されただけではなく、広用式変調は形態統語 レ. re i. 次に、前節で提案 した上海語変調体系が漢語 ( および言語一般)の声調研究において どのよ. Fo. 9 8 0年前後か ら生成音韻論を利用 し うな特色を持つのかを考えてみよう。漢語の声調研究は 1 た研究が主流 となったが、このような研究は様々な漢語方言の中か ら分析可能な現象を個別に. of. 取 り上げることはあっても、ある特定の方言が どのような変調体系を持つのかを包括的に考察. rs it. y. p( 2 02 ) を見てみよう。Ti p( 2 02 ) は生成音韻論を用いた ( 言 することはなかった。 例 として Yi 語一般の)声調研究の入門書であるが、第 7章で漢語の声調および変調現象を扱っている。そ. ive. c o n t ext u ls a a n d h i ) 、北京語の T3 ( 上声)変調 と軽声、上海語の広 こでは、広東語の文脈変調 (. Un. 用式変調、関南語の変調など個別の変調の問題は扱われているが、( 複数の変調を持つ方言の). Ti p2 02は漢語以外の声調言語も扱っているが、 変調体系に関する議論は一切行われていない (. ok yo. そこでも変調体系に関する議論は行っていない) 0. 9 8 6、 生成音韻論以外の枠組みでは変調が起きるレベルを方言横断的に考察 した研究 ( 五重 1. (T. 李小凡 2 04、王福堂 205 )はいくつか存在するが、特定の方言がどのような変調体系を持つ. h i のかを詳細に考察 した研究は北京語以外ではほとんど行われていない。北京語の例 として、S. Do. ct. or. al. Th es is. ( 1 9 9 9 ) が挙げた 3種類の変調の レベルを( 61 ) に示す。. 1 57.

(6) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). ( 61 )北京語で観察 され る 3種類の レベル の変調 ( S hi1 9 9 9:1 1 0、6l cの例は李小凡 2 0 0 4: 28117. ie s). よ り引用). a .音韻的変調 ( p h o n e mi cs a nd h i ). St ud. T3変調 :T3‑ TZ/ ̲T3 l e xi c ls a a nd hi ) b.語嚢的変調 (. ign. 数詞 「 ‑」bi ( Tl ) ] で起 きる変調 Ⅰ.後続音節 が Tlの場合 :T4 ‑ Tl 一天 bi C r4)t iz mC rl ) ]「 一 日」. 一百 bi C r4)b ir a T3 ) ] 「 百」. Fo. I n後続音節が T3の場合 :T4‑ T3. re. Ⅱ.後続音節 が T2の静 合 :T4‑ T2 ‑年 bi C r 4)n i a n( T2) ]「 一年 」. of. Ⅳ.後続音節が T4の場合 :T2‑ T4 一半 bi C T 2)ba nC T4) 】 「 半分」 C .文法的変調 ( gr m ma t i c ls a an d hi ). rs ity. 重複形式で起 きる変調 ( Qは軽声 を表す). Ⅰ.重複要素の声調が Tll 5 5 】 の場合 :T1 ‑ T1‑ 8. ive. 例)尖 U i nC a rl ) 】「鋭い」:尖尖)L的 Ui n( a Tl ) j i anr C rl )d e( 8) ]. Un. Ⅱ.重複要素の声調が T2【 35 ] の場合 :T2‑ T1 ‑ a 例)囲 bu肌 ( T2) ]「 丸い」:圃囲J L 的 bu m ( T2)rum ( Tl )d e( g ) ]. ok yo. Ⅲ.重複要素の声調が T3[ 21 4] の場合 :T3 ‑ T1 ‑a. 例)好 Pa o( T3 ) ]「 良い」:好好 J L 的 pa o( T3 )ha o r( Tl )d e( 8) ]. (T. Ⅳ.重複要素の声調が T4[ 51 ] の場合 :T4 ‑ T1 ‑0. es. is. 例)慢 [ ma n( T4)「 遅い」:慢慢 J L 的 【 ma nc r 4)ma n r( Tl ) de( 8) ]. 音韻的変調 ( 61 a ) である T3変調 は T3が 2つ並んだ際に先行す る T3が T2に変化す る現象であ. Th. る。この変調 は音韻的な条件 を満たせ ばあ らゆる文法形式 に適用 され る。( 61 b) の語嚢的変調 と. al. は特定の語 にのみ適用 され る変調であ り、数詞 「 ‑」で起きる変調が例 として挙げ られ る。数. or. 詞 「 ‑」 の声調は単独音節時では Tlであるが、名詞 ( お よび類別詞)が後続す る場合には後. み適用 され るとい う意味で S hi( 1 9 9 9 ) は「 語嚢的変調」と呼ぶ 11 ㌔( 石l c ) は北京語の重複形式 「 Ⅹ‑ Ⅹ. Do. ct. 続音節 の声調 によって 「 ‑」の声調が変化す る。 この変調 は数詞 「 ‑」 とい う特定の語嚢にの. 1 1 7s hiが挙げた文法的変調の例は断片的であったため、( 6l c ) では李小凡. ( 20 0 4: 2巷 岬 示 した体系的な例. を用いた。 l I i ただし、( 61 b ‑ N) の変調は数詞. 「 七」【 q i C rl ) i 「 八」PaC rl ) ] にも適用されるO. 1 58.

(7) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). ( r ‑ d e ) 」で重複要素 ( 形容詞)の 2番 目の声調が Tlに変化す る現象であるO( 61 C ) では 「 囲」 [ yu a n] 、. St ud ie. 節になると全て Tlに変化する1 1 ㌔この変調は重複形式 とい う特定の文法形式で しか起 こらな. h i ( 1 9 9 9 ) は 「 文法的変調」 と呼ぶo いとい う意味で S. 馳 ( 1 9 9 9 ) のよ うに北京語では変調体系の考察が比較的進んでい るが、それ以外の漢語方言で は変調体系の詳細な考察はほとん ど行われていない120。 また、s hiのように変調体系を考察 し. gn. た研究では 「 音声 レベルで起きる変調」に言及 していない とい う問題点がある。第 5章で扱っ. re i. た上海語の窄用式変調のように変調は音韻 レベルだけではなく音声 レベルで も起 き うるのだ. Fo. が、( 61 ) では声調の音韻的な変化 しか含まれてお らず音声 レベルで起きる変調の存在は ( 少な. ( 2 0 0 4 ). of. くとも明示的には)想定 されていない121。 変調の レベルを方言横断的に考察 した李小凡. は、漢語の変調を 「 語音変調」( 音韻的要因のみが適用条件 となる変調 :北京語で 6l aが該 当). ity. と「 音義変調」( 音韻的な適用条件に加 えて特定の語構造や文法構造に しか適用 されない変調 :. rs. 北京語では 6l bと 6l cが該当)に分類す ることを提案 したが、この分類で も音声 レベルで起 き. ive. る変調の存在が考慮 されていない に の分類では音声 レベルの変調 と音韻 レベルの変調が とも. Un. 1 98 6 ) や石汝傑 ( 1 99 5 ) は 「 語 レベルの変調 ( 威 に 「 語音変調」にま とめられて しま う) 。五毒 ( 喝変調) 」と 「 語 レベルではない変調 ( 不成伺変調) 」 と呼び分けることで音韻 レベル と音声 レ. o. ベルの変調を区別 したが、それ らの変調 ( 特に音声 レベルの変調)の詳細な考察は行わなかっ. ky. た。つま り、これまでの漢語 ( お よび言語一般)の声調研究は 「 音声 レベルで起きる変調」の. (T o. 存在に関 して ( 暗黙的には認識 していた としても)明示的な議論 をほ とん ど行 ってお らず、客 観的なデータを収集 してその存在を実証的に捉 えよ うとす る試み も行 っていない。. he s. is. 以上を踏まえると、本研究が窄用式変調のような音声 レベルで起 きる変調 の存在 を初めて実 証的に示 しただけではな く、それを ( 上海語の)変調体系に組み込んだ点は漢語 ( お よび語. al T. 一般)の声調研究において大きな意義を持つ と筆者 は考える。 これまでの漢語変調の研究は主 観的な調値に全面的に依存 して考察を進めるだけではなく、「 変調 は音韻 レベルの現象である」. Do ct. or. とい う前提に従って分析 を行 う傾 向が強かったため、音声 レベルで起きる変調 にも音韻論の枠. 1 1 9. ( 石l c ) では声調の変化に加えて音節末尾 ( 0血)でアール化 ( ノ L 化)も起きる。 李小凡 ( 2 0 叫 や王福堂 ( 2 0 0 5 ) は漢語方言で観察される変調を変調が起きるレベルで分類することを 試みているが、これらの研究でも特定の方言の変調体系の精密な考察は行っていない。 1 21 ( 61 ) で示した変調は全て音韻論の枠組みで分析可能である。例えば、( 61 叫で示 した北京語の数詞 「 ‑」 で起きる声調の変化は 【 1 】Tl‑ T4/ TlorTZorT 3、【 2】Tl一叩2/ ̲ T4という2つの音韻規則で表現す ることができ、 ( 6l c ) で示 した重複形式での声調の変化もDua n mu( 2 07: 2 47 ) が音韻論的な分析を提案して いる。 1 2 0. 1 5 9. s). o ] 、「 慢 」【 ma n ] の基底的な声調はそれぞれ T2、T3、T4であるが、重複形式の第 2音 「 好 」Pa.

(8) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 組みを誤って適用 している可能性が大いにあると筆者は推測する。漢語の変調体系をより正確. ud ie. 明確に認識 し、そのような変調を正確に把握するためには音響音声学的なデータにもとづく必. St. 要があるとい う調査研究の指針を本研究は示 している。. ign. 6 . 3 .残された課題. re. 最後に残 された課題に関して述べる。上海語の変調研究で今後取 り組むべき重要な問題 とし. Fo. l 】自然発話を用いた調査、および 【 2】聴覚音声学の手法を用いた調査が挙げられる。 て、【 以下、詳述する。. of. 本研究が行った音響音声学的な調査では、分節音や形態統語構造を統制 した語を挿入 した枠. ity. 文を発話者に読ませることでデータを収集 した。このように統制 された語を使用することは基. rs. 本周波数などを安定的に計測できるとい う大きな利点があるが、これ らのデータから得 られた. ive. 結論が調査対象以外の語にも必ず当てはまるのかは定かではない。また、本研究では読むタス. Un. クでデータを収集 したが、このような読むタスクによって得 られたデータが実際の発話 と全 く 同じ傾向を持つ とい う保証も得 られていない。以上の問題点を解決するためには、今後様々な. yo. 形態統語構造や分節音を持つ語を含んだ自然発話のデータを用いて本研究の調査結果を検証. ok. する必要があると筆者は考える。ただ し、上海語の自然発話を集めたデータベースはこれまで. (T. 作成されてお らず、このような調査を行 うためにはデータベースの作成か ら行 う必要があるこ とを付記 しておく。. sis. 次に、筆者は聴覚音声学的な手法を用いて本研究の論考を検証する必要があると考える。本. he. 研究では上海語の話者から得 られた音響音声学的データを収集 し、その分析から上海語変調の. lT. p r o d u c i t o n )を考察対象 としたo Lか 音韻論を考察 した.つま り、本研究では言語音の産出 ( し、話者の産出データで観察された統計的な差を上海語の聴音が必ず区別 して聞き分けるとい. Do c. to. ra. う保証はなく、わずかな差 しか存在 しない場合には聴者はそれ らの差を聞き分けられない可能. 性 も否定できない。特に第 5章の窄用式変調の問題では話者が 2つの声調 ( TlとT2) をわず かに区別 して発話 しても、聴音にはその違いが聞き分けられず 2つの声調を区別 しない可雛. b o v1 9 9 4はn e rme a r g e r ' と呼び、英語での例を も完全には排除できない ( そのような現象を La 複数挙げている) 。 したがって、上海語の変調音韻論の理解をさらに深めていくためには、産. e p r c e p t i o n )の 出データの分析から導かれた本研究の結論を聴覚音声学的な手法を用いて知覚 ( 1 6 0. s). に把握するためには、音声レベルで起きる変調が変調体系を構成する重要な要素であることを.

(9) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 視点から検証する必要がある。. St ud ie. することで変調の問題を実証的に考察 した研究は漢語 ( および声調言語一般)ではほとんど行. s). 以上のような問題点が本論文には残 されているが、音響音声学的なデータを収集および分析. われてお らず、本研究は声調研究に新たなアプローチを提案 したと言える。今後、上海語以外 の漢語方言でも客観的なデータにもとづいて変調の考察を行 うことによって漢語変調の理解. Do. ct. or al. Th. es. is. (T ok. yo. Un ive rs. ity. of. Fo. re. ign. が飛躍的に拡大することが期待 される。. l らl.

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