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社会権の政策規範性に関する研究 ―比較憲法政策学の観点から―

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Academic year: 2021

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博士(公共経営)学位論文 概要書

社会権の政策規範性に関する研究

―比較憲法政策学の観点から―

Forschung über Politiksnormativität des Sozialrechts -Aus der Perspektive der vergleichenden

Verfassungspolitikwissenschaft-

2011 年 3 月

早稲田大学大学院 公共経営研究科

北村 貴

KITAMURA, Takashi

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本論文では、社会権の政策規範性に関する調査・研究を行っている。本論文では、社会 権の政策規範性を「社会権を実現するための憲法政策を施行しなければならないと公的機 関に対して命令している規範としての性質」と定義している。この政策規範性の定義に基 づき、①日本における政策規範性が時系列でどのように変化しているのか、②日本におけ る政策規範性が他の先進国と比較してどのような特徴を持っているのか、③先進国におけ る成文憲法上の社会権規定の有無が政策規範性の強さ・傾向とどのような関係になってい るか、を分析している。方法論として、各種統計指標に基づいて生存権、教育を受ける権 利、勤労権の三つの社会権のそれぞれの政策規範性の強さを示す代理変数を算出している。

これらの代理変数がそれぞれの社会権の政策規範性の強さを表していると仮定した上で、

代理変数の分析を行っている。本論文の構成は以下の通りである。

第 1 章で、本論文の研究目的及び研究の背景について論じた上で、本論文の全体像を示 している。

第 2 章で、本論文における「憲法政策」及び「政策規範性」を定義した上で、社会権に 関して、政策規範性の観点から憲法政策研究を行う重要性を示している。

第3章で、「政策規範性の強さを示す代理変数の算出」という本論文の方法論を提示して いる。具体的には、「憲法解釈による収集すべき指標の範囲の確定」、「憲法政策及び憲法現 実に関する指標の収集」、「指標を組み合わせることによる代理変数の算出」という三つの 過程について論じている。

第 4章、第5章及び第 6章で、それぞれ生存権、教育を受ける権利、勤労権の政策規範 性の強さを示す代理変数を算出している。具体的には、生存権の政策規範性の強さを示す 代理変数としてLPNI (Life Policy Normativity Index) を、教育を受ける権利の政策規範性の 強さを示す代理変数としてEPNI (Education Policy Normativity Index) を、勤労権の政策規範 性の強さを示す代理変数としてWPNI (Working Policy Normativity Index) をそれぞれ算出し ている。その上で、それぞれの代理変数によって表わされる各種社会権の政策規範性の分 析を行っている。その結果、政策規範性の強さに関しては、「日本における三つの社会権の 政策規範性は、いずれも他の先進国と比較して弱いとい」ことが明らかになった。一方、

日本における三つの社会権の政策規範性の傾向に共通する特徴はないことが明らかになっ た。

また、「成文憲法上に社会権規定を有する国の政策規範性は、成文憲法上に社会権規定を 有しない国の政策規範性よりも強い」及び「成文憲法上に社会権規定を有する国の政策規 範性は、成文憲法上に社会権規定を有しない国の政策規範性よりも強化の程度が大きい」

という仮説の成否を統計的に検証している。具体的には、各国を成文憲法上に社会権規定 が存在するか否かを基準に二つのグループに分けた上で、それぞれの代理変数を用いて有 意差検定を行っている。その結果、いずれの仮説も統計的に否定された。つまり、政策規 範性の強さ及びその傾向に対しては、成文憲法上の社会権規定の有無が影響を与えていな いという結果となった。この結果は、従来の立憲主義の考え方とは相反する結果である。

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第 7 章で、総合的な社会権の政策規範性の強さに影響を与えている要因について考察を 加えている。三つの社会権の個別の政策規範性の強さを示す代理変数を統合したSPNIの分 析を行った結果、「社会権の政策規範性の強さ」は、大陸法体系に属する国のほうが英米法 体系に属する国よりも強くなっていることが明らかになった。SPNIが社会権の政策規範性 の強さを正確に表していると仮定すると、社会権の政策規範性の強さに対しては、立憲主 義において重視されている「成文憲法上の社会権規定の有無」ではなく、「各国の属する法 体系」が影響を与えていると推察できる。

第8章で、本論文の内容をまとめた上で、結論を述べている。

本論文の特色は、以下の三点にまとめることができる。

① 憲法学界の主な研究対象である憲法解釈ではなく、憲法政策を研究対象としている点。

② 「裁判規範性」や「法規範性」とは異なる「政策規範性」という観点から社会権研究 を行っている点。

③ 社会権の政策規範性の強さを示す代理変数を用いて分析を行っている点。

特に③は、憲法学に計量的な手法を組み込むものであり、他に類のない本論文の最大の特 色である。その意味で、本論文は、憲法学研究の新たな可能性の一つを示したと言える。

参照

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