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著者 藤井 数馬

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(1)

英語中間構文の認知的視点からの研究の必要性と拡 張における一考察

著者 藤井 数馬

雑誌名 主流

号 64

ページ 97‑122

発行年 2003‑03‑15

権利 同志社大学英文学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000015192

(2)

英語中間構文の認知的視点からの 研究の必要性と拡張における一考察

I

藤 井 数 馬 1 

.はじめに

97 

我々人間は,外部世界の認識を言語に反映させようと,合理的なコミュニ ケーションツールとして経験的に言語体系を発達させてきた.例えば,能動 態と受動態の使い分けは,外部世界の認識の反映に拠るところが大きいと考 えられる.すなわち,同じイベントについて話す際にも,動作をする側に焦 点を向ける場合には一般には能動態が,動作をされる側に認知的に焦点を向 けた場合には一般に受動態が使われるのである.

これら能動態と受動態に加えて, (1)に示すような,中間態

( m i d d l ev o i c e )  

あるいは中間構文

( m i d d l ec o n s t r u c t i o n )

,あるいはこれらをまとめて一般 に

m i d d l e "

と言われているものが,

Sweet 

(1

8 9 2

1 8 9 9 )

J e s p e r s e n  

(1

9 2 7 )

, 

Curme ( 1 9 3 1 )

ら伝統文法家によって紹介されて以来,様々な枠組みによっ て今まで研究されてきた.

(1) 

a .  T h i s  book s e l l s  wel

l. 

b .  The f a b r i c  washes e a s i l y .   c .   T h i s  k n i f e  c u t s  w e l l .  

しかし実際のところ,この

m i d d l e "

は,文法カテゴリーとしてそれほど一 般に広く定着しているとも言い難く,その名称も研究者によって様々な意味 で用いられているという状態にある.その結果,一口で「中間構文」といっ ても,その意味は,研究者や研究の枠組によって異なるというのが現状である.

(3)

9 8  

英語中間構文の認知的視点からの研究の必要性と拡張における一考察 そこで,本論では 2章で

m i d d l e "

に関する先行研究を振り返り,簡単 に三系統に分類したい.続く 3章では,英語の中間構文に的を絞り,容認性 にまつわる特性を紹介し,認知の視点からの研究の有用性を説きたい.また,

4章では,中間構文と他の構文と関連づけすることによって,拡張関係の考 察を試みたい.

2

胴 中 間 構 文 に 関 わ る 先 行 研 究

中間構文は,

Sweet ( 1 8 9 2

1 8 9 9 )

Jespersen ( 1 9 2 7 )

をはじめとする 伝統文法家によって考察が始められたとされている.

しかし

1 9 6 0

年代

Chomsky

をはじめとする生成文法家が言語学研究で 大きな流れを作ると,中間構文も(変形)生成文法の枠組みから研究される こととなった.生成系からのアプローチの源流となったものは,

Keyser  and Roeper  ( 1 9 8 4  

(以下

K

R))

であり,その後,

Hale and Keyser  ( 1 9 8 6

, 

1 9 8 7  

(以下

H

K))

, 

Jaegg

1i  (1

9 8 6 )

, 

Fellbaum ( 1 9 8 7 )

, 

Fagan  ( 1 9 8 8 ) ,  Fellbaum and Z r i b i ‑ H e r t z   ( 1 9 8 9  

(以下

F

Z ) ) ,  Kawamoto 

(1

9 9

1), 

S t r o i k  

(1

9 9 2 )

, 

Z r i b i ‑ H e r t z  

(1

9 9 3 )

, 

Ackema and Schoorlemmer  ( 1 9 9 5  

(以下

A &S ) )

等にヲ│き継がれ発展していった.生成系の研究といっ ても,決してひとくくりにまとめられるものではない2が,概ね以下のキー ワーズが用いられていると,少なくとも生成系の流れを汲むものであると思 われる:

( a ) α

移動

(Move‑α)

,(b)中間形成規則

( M i d d l eFormation R u l e :   MFR) 

, 

( c )

派生

( d e r i v a t i o n )

.これら生成系のアプローチの共通点は,言 語の形式面や統語面を独立したものとして重視し,いかにして中間構文を規 則づけて,派生させるかという説明に終始し,基本的に意味の面を考慮にい れていない点にある.

また,

Langacker

, 

Lakoff

をはじめとする研究者たちによる一連の認知 言語学3が注目を集め始めると,意味論や語用論,認知文法の視点からの中 間構文の研究もさかんとなった.その源流となったのものとして,

Lakoff 

(4)

英語中間構文の認知的視点からの研究の必婆性と拡張における一考察

9 9  

(1

9 7 7 )

vanOosten 

(1

9 7 7 )

が挙げられる.この三編の研究の後は,

O'Grady 

(1

9 8 4 )

, 

van Oosten 

(1

9 8 6 )

,吉村(1

9 9 5 )

,山梨(I

9 9 5 )

, 

T a n i g u c h i  

(1

9 9 5 )

, 

Sakamoto  ( 2 0 0 1 )

, 

Yoshimura 

(1

9 9 8

, 

2 0 0 1 )

等が認知 系の流れを汲み発展させている.これらの流れではいずれも,生成系の研究 のような,

t r u t h ‑ c o n d i t i o n a l

な文法性判断や統語論の自律性を主張するの ではなく,プロトタイプ理論を取り入れている.

さらに,中間構文をもっと広く捉え,英語に限らず,様々な語族,語派を 研究対象とし,言語類型論の観点から研究した者もいる.その代表者として

Kemmer ( 1 9 8 8

, 

1 9 9 2 )

が挙げられる 4

本論では、類型論的に中間構文を捉えるのではなくへ (1)に示したような 英語の中間構文のみを考察の対象とし,認知的な視点から分析を試みたい.

3

圏中間構文の諸特性

現代英語の中間構文には,中間構文であることを示すマーカーがないこと からも,この構文を形式上定義することは難しい。また,その特性も今まで の研究において色々と挙げられてはいるが,未整理の感は否めない.そこで,

この章では,英語の中間構文の諸特性を挙げることでそれがどんな構文であ るかを再検討していく.また,その性質や特性から,認知言語学の枠組みに おける研究の意義を説いていきたい.

3 . 1 .

中間構文の文法性

v s .

容認性

中間構文は,様々な独自の特性を持ち合わせているが,それら特性はいず れも,規則化することは不可能であり,その容認、性も個人によって異なりう るものである.例えば,まず以下の例を見てみよう.

(2) 

a .   * 

Th

i s  meat c u t s .   b .  T h i s  magazine s e l l s .  

(3) 

a .  ? ?  The c a r  d r i v e s .  

(Fellbaum 1 9 8 6 :  9 )  

(Yoshimura 2 0 0 1 :  1 8 4 )  

(Fellbaum 1 9 8 6 :  9 )  

(5)

100  英語中間構文の認知的視点からの研究の必要性と拡張における一考察

b . I  thought we  were o u t  o f  g a s ,  but t h e  c a r  DRIVES! 

(Fellbaum 1 9 8 6 :  9 )  

(4) 

a .  T h i s  b r e

α

d  c u t s .   ( c f .  2 a )  

(H & K 

1 9 8 7 :  1 8 )  

b .  T h i s  meat d o e s n ' t  c u t .   ( c

f. 

2 a )   (Fellbaum 1 9 8 6 :  9 )  

一般的には,中間構文には副調類が伴うことが多く,

( 2 a )

で示されるよう に,副詞類のない中間構文の容認性は低くなる.しかし,

( 2 b )

のように副 調類抜きでも容認できる例もある.また,

( 3 a )

のような

marginal

な丈も,

( 3 b )

のようにある種の音調を加えれば容認的になる場合もある.

( 4 a )

T h i s  b r e

αdがイタリック体であるのは,コントラストが伴っていることを 示しているのだが,このように,ある種のコントラストが主語に伴う時や,

(4b)のような否定辞を伴う時も容認される場合があることを示している.

従って,

I

中間構文には副調類がなければならない」といった規則を立てる ことはできない.

では, (4b)で示されたように,否定辞があれば副調類抜きでも容認され るかといえばそれも常に真とは限らない.

(5) 

a .  The f l o o r  j u s t  w o n ' t  c l e a n .  

b .  * T h i s  wine j u s t  w o n ' t  d r i n k .   ( v a n  Oosten 1 9 7 7 :  4 6 6 )  

(5)の三文を比較すると,動詞cleαnを用いた文は副詞類抜きでも容認される のに対し,動詞

drink

を用いた文は否定辞があっても容認されないことが 分かる.ここでも,

I

否定辞があれば副詞類抜きでも容認できる」といった 類の「規則

J

も立てることはできない.つまり,一般的に,中間構文には副 詞類が必要で,それがない時は容認性が下がる傾向にあるということは言え るが,この特性を規則化してしまうと,中間構丈の本質がつかめないと思わ れる.換言すると,文法性というスケールで考えるのではなく,容認性とい うスケールで中間構文を考察する方が有効だと言えよう.

(6)

101 

3 . 2 .

中間動詞6

中間構文では,一般に他動調を自動詞的に用いる.

(6) a. This vinyl floor {Iays/*liesl in a few hours. 

b. These mosquitoes {kilν'*diel only with a special spray. 

(Fellbaum 1986: 2) 

ただし,一般に中間動調は自動詞用法が確立していないので,前節で見たよ うに,副詞類を用いてagentをimplyさせることによって他動性7を上げ たコンテクストの中でのみ自動調的に用いることが可能となる.以下の表1 は,代表的な中間動詞のリストである.

中間動詞 ergative verbs, act, adapt, add up, adjust, anneal, assemble,  astonish, bake, baptize, blow, bribe, broil, button, cancel, cast,  catch, chew, circulate, clean, compare, compose, construe,  convert, convince, cook, cover, crush, cut, dance, deciphr, develop, dice, digest, discourage, draw, dribble, drink, end,  exchange, fasten, feel, fish, fix, fold away, fold up, freeze,  frighten, frustrate, fry, grind, handle, hook, hurt, intimidate,  iron, kill, knot, launder, lay, let, lift out, listen, mold, mulch,  pack (up), paint, peel, photograph, plant, play, plug in(to),  polish, press, print, proofread, pull out,put up, read, recycle,  refrigrate,rent, ride, rhyme, roast, row, rub, saw, scale, scan,  scare, screen, seduce, sell, serve, shift, ship, show, slice, smoke,  solve, spoil, spray, stain, steer, steam, strike, surprise, swallow,  take, teach, televise, train, transcribe, transfer, translate,  transmit, transport, transplant, transpose, trim, type, wash,  wax, wipe (up), write, etc. 

1

表1からも分かるように,中間構文には,基本的に,他動詞用法の他に自 動調用法も確立した能格動詞 (ergativeverb) も用いることができる (cf. Taniguchi 1995

, 

H & K 1987) . 

(7) a. He broke the window. 

b. The window broke. 

(transitive usage)  Gntransitive usage) 

(7)

1 0 2  

英語中関構文の認知的視点からの研究の必要性と拡張における一考察 c. The window breaks easily. 

(8) a. He split this wood. 

b. This wood sp1it.  c.τ'his wood splits easily. 

(middle usage)  (transitive usage) 

C

i

ntransitive usage)  (middle usage) 

(7), (8)では,能格動詞である

b r e a k

s p l i t

を中間動詞としても用いること ができることが示されている.

また, Perlmutter 

( 1 9 7 8 )

によって分類された非対格動調(unaccusative  verb)と非能格動詞 (unergativeverb)8のうち,能格動調と比較的共通す

る非対格動詞は中間構文に多く用いることができる傾向にある.一方,非能 格動詞は一般に,中間構文には使えないとされている (cf.

K 1 9 8 7 ) .  

また,知覚動詞 (e.g.

s e e

, 

watch

, 

h e

α

r )

や理解 (e.g.

u n d e r s t

α

nd

, 

grasp

, 

l e a r n )

や疑い (e.g.

doubt

, 

q u e s t i o n )

,感情 (e.g.

r e f u s e )

等を表す動詞,

創造 (e.g.

c r e a t e

, 

b u i l d

, 

k n i t )

や破壊を表す動詞 (e.g.

d e s t r o y )

,主語が受 益者になる動詞 (e.g.

r e c e i v e )

も一般的には中間構文には用いることができ

ないとされている.ただし,これら使えないとされている動調でも,ある種 のコンテクストや音調が伴えば使用可能となる場合もあり,絶対的に決まっ ているものではないことに注意が必要である.

3 . 2 . 1 .

中間動詞とコンテクスト

この動調による容認性の違いについては,動詞が主語に対してどれだけ影 響を与えたかということが重要だとする主張がある (cf.

H  &  K 1987

,  Fagan 

1 9 8 8

, Kemmer 

1 9 8 8

, F & 

Z 1 9 8 9 ) .

すなわち,主語のaffectedness が高ければ高いほど中間動調として適切となるというものである.しかし,

これには反対意見も多く (cf. Fellbaum 

1 9 8 7

, Sakamoto 

2 0 0

1),この主語が affectされたかどうかという基準もあいまいになることが多いので問題もあ ると思われる.

このようなあいまいな説明しか与えられないことを裏付けるように,中間

(8)

動調であるかどうかは,一元的に決められるものではなく,さまざまな意味 や文脈に根ざした要素も考えなければならない.その例として,以下を参照 されたい.

(9) a. * This applesauce wi11 eα

rapidly. 

b. Keep these pills away from the baby. They're powerful

, 

but they  eα

like they were candy. 

c.  A: What shall 1 have for lunch

, 

an apple or a grapefruit? 

B: Since you only have five minutes

, 

take 

an 

apple. 

I t  

t s  

more  rapidly than a grapefruit. 

(van Oosten 1977: 462‑3;強調は筆者) (10) a. *? This corner sells well. 

b. [conversation between the staff in a bookshop on a book that is  newly publishedl 

A: Which corner shall we use to display the book? 

B: 1 think

,  • • • • Th

α

c o r n e r  s e l l s  w e l l .   I t '  

s far better than this  one.  (Yoshimura 2001: 191) 

1)a. * Boys teach easily. 

b. Boys teach easily

, 

but girls don't. (吉村1995:295) 

(9a)だけを見れば,動詞Eαtは中間構文では使用できない非中間動詞 (nonmiddleverb)であるかのように見えるが,ある種のコンテクストが 与えられれば, (9b, c)に見られるように中間構文の中で使用できる中間動 詞として容認される.つまり,

r

動詞eαtは非中間動詞である」とは一概に 言えないことを示している.また,酬では,中間動詞として使用できる

s e l l

がコンテクストなしで (10a)のように使用されると意味解釈できないが,

ある種のコンテクストを与えてやれば容認できるようになる.同様に,似)は 動詞teαchが対比のコンテクストでは中間動詞になりえることを示してい

(9)

1 0 4  

英語中間構文の認知的視点からの研究の必要性と拡張における一考察 る.ここからも,表1で分類した中間動調の境界線はあくまで便宜的なもの で絶対的なものではないことが窺えよう.このように,

middle marker

の ない英語の中間構文において,中間構文になれる条件は,動詞の持っている 意味のみで決まってくるのではなく,その使用されるコンテクストや状況に

よっても柔軟に変わりうるものである.

3 . 2 . 2 .

中間構文と容認性のゆれ

英語の中間構文にはそれを示すマーカーがないためか,容認性が人によっ て異なるものもある.以下に示されたのがその例である.

均 a . ? ?   T h i s  l a k e  f i s h e s  wel

l. 

( T a n i g u c h i  1 9 9 5 :  1 1 2 )   b .  P l a n t s  d i e  e a s i l y  i n  t h e  s h a d e .   (K 

R 1 9 8 4 :  3 8 4 )  

これらの文は,中間構丈として容認するか,しないかの判断が人によって異 なるという例文である.これらは,

3 . 1

節でもふれたように,中間構文は,

文法性のスケールで判断されているのではなく,具体事例から得られる情報 量で意味が理解できるかどうか,という容認性のスケールで判断しているこ とを示している証拠であろう.また,これらの状況を認知図式で表せば,下 のようになるだろう.

U

T h i s  l a k e  f i s h e s  w e l

l.

1

(10)

105  L 

2

3

poetic context  τ'his lake fishes well. 

metaphorical cnxt This lake fishes well. 

C l

Za)のような構文を認める人は,その人の言語システムの中に取り入 れられた図2のような認知図式をもっていると考えられる.一方この種の構 文を認めない人は,図1のようにまだ実際の言語文脈で聞く限りの段階で,

確立された言語システムの中にはそれがまだ取り込まれていない認知図式を 持つ人である,とみなすことができる.この文と接する機会が多ければ,図 1から図2のような認知図式へと移行する場合もあるだろう.図中のLは 確立した言語システム,

U

は実際の言語使用の文脈を示している.また,

(9

ト イ

11)の例でも見たとおり,中間構文の容認、性は,文脈によっても大きく変 わる.従って,図2のような認知図式を持つ人でも,特定の文脈 (e.g.詩の 文脈,比倫の文脈等)が与えられれば,その文脈により同のような文を容認 できるようになる可能性はある(図3参照). 

今まで見てきたように,英語の中間構文は多くの特徴を持ち合わせており,

それらの特徴は規則でしばることのできない,ルースなものである.同じ中

(11)

106  英語中間構文の認知的視点からの研究の必要性と拡張における一考察 間構文でも,その容認性は個人によって異なる.このような中間構文を研究 する際,人間の事態認知の面から考えていかなければならないのは自明であ り,その点で認知言語学の枠組みで研究することの意義は大変大きいもので ある.

3

.4.属性文

英語の中間構文は,一般に主語で示されたものの属性 (property)を示す (cf.吉村 1995).例えば, (Ia)ならば

T h i sb o o k

の属性を示した文と言え る.それを売る人は誰でもいいのである.この文の主旨は,

r

誰が売っても,

どこで売っても ,

T h i s  b o o k

はとにかくよく売れる」ということである.中 間構文が属性文である,分かりやすい例を挙げてみたい.

a.This dress buttons. 

b. 

? ?  

This dress fastens.  CFagan 1988: 201)  (14) The clothes wash with no trouble because. . . 

a)  '"  they're machine‑washable. 

b)  *...1 have a lot oftime.  (van Oosten 1977: 460) 

(13b)に関しては, ドレスというのは一般にどれも締まる (fasten)もので あり ,

T h i s  d r e s s

の属性を示しているとは言い難い.一方 (13a)のように ボタンでしまる(ジップでなく)というのは

T h i sd r e s s

の属性を表してい ることになり,容認される.従って, (13b)をより適切にするには,以下 の様にして属性を示したらいいであろう.

(15) a. This dress won't fasten.  b. This dress fastens easily. 

こうすれば,

T h i s  d r e s s

の属性を表す文となり,容認J性が上がる.また,同 に関しでも ,

The c l o t h e s

の特性を(a)で、は表しているが, (b)では個人的な理 由であり ,

The c l o t h e s  

の特性とは直接関係ないので,容認されない丈とな

(12)

107 

っている.このように,中間構文の理解,容認、性の判断には,文法的知識以 外にも,一般的常識や百科事典的知識が必要になってくる.このような一般 常識等が,中間構文理解のためには必要になってくるから,能格構文等と比 べると,子どもが中間構文を獲得する年齢が高い

( c f .K  &  R 1 9 8 4 )

のであ ろう.

中間構文の,属性を表す文であるという性質を考慮に入れると,以下の説 明も容易になされるであろう.

(16) 

a .  *  T h i s  c a r  d r i v e s  c a r e f u l l y .   C T a n i g u c h i  1 9 9 5 :  9 8 )  

b .  *  The p r i c e  d e c r e a s e d  w i l l i n g l y .  (Kawamoto 1 9 9 0 :  8 4

8 5 ;n o t e  5 )  

a .*  B u r e a u c r a t s  b r i b e  e a s i l y  t o  keep them money. 

(K 

& R 

1 9 8 4 :  4 0 7 )   b .  The p l i e r s  a d j u s t  * { t o  g e t  a  f i r m  g r i p  on them l .  

( F e l l b a u m  1 9 8 6 :  2 )  

a .T h i s  wine d r i n k s  l i k e  i t  was w a t e r .   ( v a n  Oosten 1 9 7 7 :  4 5 9 )   b .  *  The orange j u i c e  d r i n k s  r i g h t  o u t  o f t h e  r e f r i g e r a t o r .  

( v a n  Oosten 1 9 7 7 :  4 6 0 )  

a .

good t e n t  p u t s  up i n  a b o u t  two m i n u t e s .  

( v a n  Oosten 1 9 7 7 :  4 5 9 )   b .  *  The t e n t  p u t s  up i n  my  back y a r d .   ( v a n  Oosten 1 9 7 7 :  4 6 0 )  

(20) 

a .  Books a b o u t  o n e s e l f  n e v e r  read p o o r l y .  

b .  *  Books a b o u t  h e r s e l f r e a d  p o o r l y .   ( S t r o i k  1 9 9 2 :  1 3 6 )  

同のように,いくら中間構文に適切な主語,適切な動詞が用いられていて も,

c αr e f u l l y

ωi l l i n g l y

といった副詞が使われていると,非容認、的になる.

つまり,

I

誰にでも できる」という属性を表すのが中間構文なのに,

( 1 6 a )  

のような特定の

agent

imply

する

c αr e f u l l y

や(I

6 b )

のように

agent

を 強く

imply

させすぎる副調はこの特質と合わない.

I

誰にでも注意深く運転

(13)

108  英語中間構文の認知的視点からの研究の必要性と拡張における一考察 できる車」というのは想像しにくく,注意深く運転するには誰か特定の

agent

が必要で,これが言語化されるのが必然である.この他にも,

d e l i b e r α t e

e x p e r t l y

i n t e n t i o n a l l y

, 

s k i l l f u l l y

など,

a g e n t

を強く

imply

し すぎてしまう

a g e n t ‑ o r i e n t e d

な副調は中間構文内で一般に用いることはで

きない.

また,属性文である中間構文なので,特定的な目的匂や特定な条件がつい ては,主語に表されたものの属性を表しにくくなるので,一般に容認、性が下 がる.制のように,不定詞句により,目的を表す説明を加えることによって,

特定性が増し,一般的な主語がもっている独自の属性が表しにくくなった文 の容認性は落ちる.同様に,

M 一 ト

‑(1めに示された例のように,主語で表された ものの特定性が高く,一般的な特性を表しにくくなっている文の容認性もそ れだけ落ちている

これまでの考察で見てきたように,中間構文の特性,特徴は意味や文脈に 根ざした個人個人の容認性で判断されるものである.これは,一つには,古 期英語時代にはあった

middlemarker

がなくなり,動詞中心で統語的な判 断のよりどころがなくなったため,個人の経験や身体性や使用文脈に根ざし た容認できるかどうかの判断へと変わってきたことが関係しているのだろ う.このような,非常に不安定な現代英語の中間構文を研究するには,認知 言語学の枠組みを使うことは極めて有効で、あり,また必要で、あることは明ら かである.

4 .

構 文 聞 の 干 渉 と 関 連 性

4 . 1 .

中間構文と他の構文の関連性

今まで見てきたように,中間構文は規則で割り切れない,多くの特徴を持 ち合わせている.それらの特徴は,他の構文とも関わりのあるものもあり,

中間構文の発達の裏には他の構文との関わり合いや干渉を感じることができ る.例えば,中間構文は,その形式や意味特性から,能格構文,受動構文,

(14)

英語中間構文の認知的視点からの研究の必要性と拡張における一考察 非対格構文,非能格構文,知覚構文等と関わりがあると思われる.以下,そ の関連性を見ていきたい.

4.1.1.能格構文との関連性

中間動調と能格動詞との関連性は, 3.2節でもふれたが,中間構文と能格 構文は,その互いの類似性からしばしば比較研究されてきた (cf.K & R 

1984, H & K 1987, Kawamoto 1991, Noguchi 1989).この類似性を最も顕著 に示すものとして,次の例文を参照されたい.

(21) This door closes easily. 

この文は,中間構文としての読みと,能格構文としての読みの聞であいまい である.すなわち ,

This door

の属性を表す中間構文としての読み (22a) と,一回性のイベントを示す能格構文としての読み (22b)の二通りが可能 である.英語では形式上, (21)という一つの形から二つの読みが可能であいま いであるため,両者を明示的に区別するには以下のように余分に要素を付け 足さなければならない 10

(

22) a. This door closes easily; you just have to press down. 

(middle reading) 

b. This door closes easily; it takes a gust of air.  (ergative reading)  (Fellbaum 1986: 6) 

このように,両者の類似性は形式上だけでは区別できない時もあり,その 上それぞれの意味も決して遠いわけではない.この類似性は認めなければな らないが,全く同ーということではないことに注意が必要で、ある.例えば,

信功Thisdoor easily closes. 

と副詞Eα

s i l y

を動調の前に持ってきたら,一般に,この時点で中間の読み はなくなり,能格の読みだけ残ることになる (cf.Fellbaum 1986).従って,

(15)

110  英語中間構文の認知的視点からの研究の必要性と拡張における一考察 中間構文の副詞は基本的には動調の後ろの位置に固定されていなくてはなら ず,能格の副調の方が

f l e x i b l e

に動けるということになる 11

これは,認知言語学の大きな基本的な考え方の一つ,

I

形が異なれば意味 も異なる

J ( c f .

池上

1 9 9 9 )

に則して考えれば,easiかという副調でも使用さ れる位置や構文が異なれば,その機能は異なり,意味も微妙に異なることは 必然である.実際, (22b)のような能格構文の中に使われる ωsilyの意味 は,

a tt h e  s l i g h t e s t  p r o v o c a t i o n

, 

without such c a u s a t i o n "

という,原因に 言及したような意味であり,一方の (22a)のような中間構文に用いられる

silyは,

withe a s e

, 

with no d i f f i c u l t y "

というような,行為の

f a c i l i t y

に 関連した意味となっている

(Fellbaum1 9 8 6 :  6 ) .

このように,全く同一で はないものの,その形式,意味両面において,中間構文と能格構文との類似 性は見過ごすことはできない.実際,

Jespersen 

(1

9 2 7 )

も,中間構文は,

能格構文の

o u t g r o w t h '

だと主張している.

4.1.2.受動構文との関連性

中間構文は,主語で表されたものの属性を示す構文であることは,

3

.4節 で考察した。この特性は,受動構文にも共通するものであり,両者の関連性 を考察できる.

(24) 

a .  ?  T h i s  bed was s l e p t  i n  by J  o h n .   b .  T h i s  bed was s l e p t  i n  by N  a p o l e o n .  

c .   T h i s  bed was s l e p t  i n  by n o b o d y .  

(池上

1 9 9 1 :8 7

必) 伺

a . *  The c a p i t a l  i s  o f t e n  v i s i t e d  by me. 

b .  The c a p i t a l  i s  o f t e n  v i s i t e d  by many t o u r i s t s  e v e r y  y e a r .  

6)

a .   The 

Ar

my  was d e s e r t e d  by J  o h n .  

b .  The 

Ar

my  was d e s e r t e d  by i t s  c o m m a n d e r ‑ i n ‑ c h i e

f.  (安井

1 9 8 9 :1 3 8 ‑ 9 )  

上の (24a)は,

T h i s  bed

John

という一介の人が寝ていたという叙述

(16)

英語中間構文の認知的視点からの研究の必要性と拡張における一考察 では不自然な感を与えるが, (24b)や (24c)のように,歴史上著名な

N

α

: p o l e o n

によって寝られたり,誰にも寝られなかったという叙述ならば,

自然な英語となることを示している.これは,すなわち,主語で表された

T h i s  bed

の属性をよりよく表している表現の方が自然であるということで ある.同様に,伺,例でも,主語である

Thec a p i t a l

, 

The Army

の属性がよ

く示されている(b)の文の方が容認、性が高いことが分かる.

これらの例からわかるとおり,受動構文でも主語で表されるものの属性を 示した文の方が,一般に容認性が高いことになり,この点で中間構文と共通 していると言える.また,意味の面においても,中間構文の意味は受動であ り,受動構文と形式は異なってはいるが,類似している点も少なからずある と考えられる.

4.1.3.非対格構文との関連性

3.2節でも考察したように,能格構文と比較的共通性を持っているといわ れる,非対格動調を用いた非対格構文も,能格構文と同様,中間構文と関連 性を持っていると考えられる.この非対格構文から中間構文に発展,拡張し たという主張は,古く伝統文法家からも指摘されている (cf.Jespersen  1927: 347‑352, Curme 1931: 437‑442).また, Sakamoto  (2001)も同様に,

非対格構文と中間構文の類似性を主張し,中間構文の一部は非対格構文から 拡張されたものであると主張している.実際,昔の英語の中間構文のいくつ かの例では,以下のように,非対格構文と容易に区別できない例もある.

制a.my plays 

w o n ' t

α

c t .   .  . 

my poesy 

w o n ' t  s e l l  

b. the book 

would n o t  t r

α

n s l

α

t e  

well  c.  1 am at a sentence that 

w i l l  n o t  

ω

r i t e  

(Jespersen 1927: 347‑51; from Sakamoto 2001: 93)  4.1.4.非能格構文との関連性

一般に,非能格動詞は中間構文に使うことはできないとされているが,

(17)

112  英語中間構文の認知的視点からの研究の必要性と拡張における一考察 部使える場合もある.例えば,以下の例のように,中間の読みと,非能格の 読みとの間であいまいな例もある.

(28) 

a .  1  d o n ' t  d i s c o u r a g e  s o  e a s i l y .  

b . I  d o n ' t  s c a r e  s o  e a s i l y .   ( v a n  Oosten 1 9 7 7 :  4 6 7 )  

これらが,もし,主語で表された Iによるある行為への意思を表明する表現 ならば,

I

私はそんな簡単には落胆させない

J

I

私はそんな簡単には怖がら せないj という非能格としての読みになる.しかしもし,主語で表された Iにそのような意思の表明の意図はなく,単にIの属性を述べる文であるな らば,

I

私はそんなに簡単には落胆しない

J

I

私はそんな簡単には怖がらな い

J

という中間の読みになる

( c f .Fellbaum 1989

, 

Sakamoto 200

1). 

Sakamoto ( 2 0 0 1 )

は,闘で示されたような文は,非能格構文からの拡張例 だと主張している.また,

S ( 1 9 9 5 )

も,英語とオランダ語を比較しな がら,中間構文と非能格構文との関連性を述べている.

4.1.5.知覚構文との関連性

本論文でいうところの,知覚構文とは,下の例に代表されるようなものを 指す.

(29) 

a .  The j a c k e t  l o o k s  n i c e .   b .  T h i s  lemon t a s t e s  s o u r .   c .   T h i s  c h a i r  f e e l s  c o m f o r t a b l e .  

つまり,主語があり,その次に知覚を表す動詞

( e . g .b i t e

, 

chew

, 

f e e l

, 

l o o k

, 

t

αs t e

, 

s m e l l

, 

sound)

が続き,さらに副調的な働きをする形容詞Ci

. e .f

1

a t   a d v e r b )

が続く構文である.

こういった構文と,形容調を使った以下のような中間構文とその聞には何 かしらの共通性や干渉があるように感じられる.

(18)

英語中間構文の認知的視点からの研究の必要性と拡張における一考察 113 

a .T h i s  meat c u t s  t e n d e r .  

b .  T h i s  c a r  runs s w i f t .

12 

( 3 0 a )

t e n d e r

には副詞形

t e n d e r l y

が,

( 3 0 b )

s ωi f t

には副詞形

s w i f t l y

がそれぞれ存在しており,文中で副詞的な働きをしているのにもかかわらず,

形容詞形である

t e n d e r

s ω i β

が用いられているところに,闘のような知 覚構文からの何らかの影響や干渉を感じずにはいられない.以下,この点に ついて考察する.

4.2.構文聞の干渉性と予測性

前節では,中間構文は,能格構文,受動構文,非対格構文,非能格構文,

知覚構文等と関連しあっていることを指摘した.また,節の最後には,これ ら関連しあっている構文聞の問でお互いに影響,干渉,比較というものが起 こっているのではないか,という予測を立てた.そこで,この観点から,

( 3 0 a )

で挙げた例を再びここで取り上げて考察してみたい.

T h i smeat c u t s  t e n d e r .  

(= 

3 0 a )  

中間構文で使用される副調類は,副詞だけでなく,副調勾やこの例丈のよ うな形容調もあるのは事実である.しかし,あくまで,その使用頻度,使用 される種類からいってやはり副調が最も典型的なものであるということは,

言えるだろう.そこで,刷に目を転じてみると ,

t e n d e r

という形容調には

t e n d

甘かという副詞も存在しているのに,形容詞が使われていることが分か る.これには,背後に

T h i smeat i s   t e n d e r "

という,知覚構文と共通した 概念があり,中間構文との干渉によって制のような文が使われているのでは

ないか,と思われる.そこでまず,知覚構文の背後には

[ S u b j +  BE  +  A d j ]

という概念があるということを提案したい.

BE

というのは,

Subj

Adj

を結ぶ,概念的な

c o p u l a

であることを示している.

側で用いられた構文を用いて,このことを認知図式で表すなら,下の図4

(19)

114  英語中間構文の認知的視点からの研究の必要性と拡張における一考察 のように表すことができるだろう.

│知覚構文のスキーマ[Su.+PceμionVerb+崎 1.

(背後に[Subj¥+BE+Adj.lという概念あり

二二二ブ、記己二

│阿叩

h刷丘吋j附 抽 凶sn剖山問州i詑加刈ωE

e

II

m

T'1凶削h1i1s1lm白印e

Imon10

, 何(Thejackeωtisnicωe) :  (: This lemon isour) :  (:This chair is comfortable) ::(.  . .):  4

図4は,太い線で固まれた具体事例の背後には,点線で固まれた概念があ ることを示している.そして, (3れま,こういった [Subj+ BE + Adj]とい う ス キ ー マ を 持 つ も の と , 中 間 構 文 の ス キ ー マ の ブ レ ン デ イ ン グ (blending)によって誕生したと思われる.これを,山梨 (2000:Ch.5)を モデルに図で表すなら,下の図のようになるものと思われる.

Y

‑ 一 ・ 日 間 一

VA一 一 一 ・ 凶 一 キ一 市一

T U

4  

2 7  

L

構 コ 一

覚 二 一

7 2

一 ‑ 一 一 ‑ 一

l  Thism倒 cu.両一一~

5

このように,中間構文,知覚構文両者の構文の干渉により,新たな文が抽出 されたと考えることにより,問題の構文についての説明がつく.つまり,制 の構文の背景には中間構文のスキーマ以外にも

T h i smeat i s   t e n d e r

という 概念も存在し,それが互いに干渉してこの様に副詞形があるにも拘らず形容

(20)

115  詞が使われるという,中間構文のスキーマからしたら非プロトタイプ的な構 文ができあがったものと考えられるのである.

また,以下の例文についても,受動構文と中間構文の干渉によって生じた と思われる.

(32) a. This shop opens at seven.  b. This supermarket closes at eight. 

一一」↓三ニニー

s..‑.~.

lThis ern kt esat eightl  6

雨戸

hopensat

問問│

同の文は,このように,受動構文と中間構文との干渉や影響により使用され るようになったと思われる.そして次第に実際の言語状況に根づき,言語使 用の文脈の中で周辺的な用法として使われていたものが,確立した中間構文 の用法のーっとして使用できるように変わってきたものと思われる.

このように,中間構文のスキーマと知覚動詞を用いた構文のスキーマ,受 動構文のスキーマは,便宜上,別々の文法カテゴリーとして捉えられている が,両者が互いに干渉し,影響を与え合っていることは図からも窺えよう.

また,具体事例が実際の発話文脈で使用され,触れ合うことで,その具体事 例から抽象的なスキーマを形成していることにも注意しなければならない.

この点は, Lakoff (1987)の主張する経験基盤主義の考え方とも軌をーにす

(21)

116  英語中間構文の認知的視点からの研究の必要性と拡張における一考察 るものと思われる.このようなネットワークが実際にはもっと大きい範囲で 構成されていて,その中の一部として中間構文が位置しているのであって,

決して構文構文が独立して存在しているわけではない.

また,この構文の拡張のモデルを使うことで、構文の今後の拡張発展可能 性も窺える可能性もあり,大変興味深い.例えば,

T h i s  me

α

t  c u t s  t e n d e r l y  

から

T h i sme

α

t  c u t s  t e n d e r

への拡張を行うことが容認されるからといって,

「文法的に」等しい ,

T h i s  k n i f e  c u t s  e a s i l y

* T h i sk n i f e  c u t s  

s y

と拡張 する可能性は今後もないと予測できる.というのも,その背後にあるべき,

* T h i s  k n i f e  i s   e a s y

という構文自体が非容認的であるからである.このよう に,この構文のネットワークを用いていけば,今後どのような用法が生まれ る可能性があり,どのような用法はまず今後も拡張されないか,さらには,

どんな誤用発話がなされうるのか,という今後の予測もでき,言語学や,誤 法研究や言語教育に対しでも大変有用であると思われる.

5

町結論

本論文では,認知言語学の視点から,英語の中間構文に関するさまざまな 考察を展開してきた.

z

章では,いわゆる

m i d d l e "

に関する先行研究を振 り返り,大まかな三系統に分類した. 3章では,英語の中間構文に焦点を絞 り,さまざまな特性を考察した.それら特性は規則化できるものではなく,

個人個人の経験に根ざした柔軟な容認性のスケールで判断しながら中間構文 は用いられていることを考察した.また,この考察からも,中間構文を認知 言語学の視点から研究することの有効性,必要性が確認できることを指摘し た.

4

章では,中間構文と,能格構文,受動構文,非対格構文,非能格構文,

知覚構文とが互いに関わりあって,干渉し,影響していることを指摘した.

そして,現在は中間構文として確立して用いられているものでも,その成立 には様々な構文の相互作用が関わっていることを例を挙げながら論じた。こ ういったモデルは,これから先の拡張の可能性を知る点からも有効で、あるこ

(22)

とも主張した.

英語の中間構文を考えるにあたって,本論文で繰り返し述べてきたように,

文法的マーカーがないため,純粋な統語論のみの研究では明らかに不備が生 じてしまう.意味的,認知的な要素も考えながらその独自の特性をひとつひ とつ詰めて研究していくという地道な作業以外には,主語や文脈や音調や,

あるいは個人個人によって容認性が大きく変わってしまいかねないこの「不 安定な」構文をより深く理解できる道はないと思われる.その点で,今後と も,中間構文の研究を認知の視点から研究を続けることは大変重要だと思わ れる.

ただ,本論文では,紙面の都合上,共時的な視点のみで,通時的な視点は 入れていない.しかし,中間構文の本質を捉えるためには,その歴史的な発 展過程を考察することも大切であると思われる.それによって,本論文で扱 った,構文聞の干渉や影響にもさらに深い洞察が与えられることだろう 13

従って,今後は,共時的な視点のみならず通時的な視点も取り入れた考察に より,より多角的な研究が望まれる.

また, Crystal  (1988: 254)でも指摘されているように,英語の中間構文 の形は,現在デンマーク語でも使われるようになってきている.英語の世界 的な影響力,干渉力ということを考えると,今後英語の中間構文の形は他言 語でも用いられるようになる可能性は十分にある.従って,言語類型論の研 究においても,構文聞のみならず,言語聞における中間構文の干渉,影響等 を扱う研究が出てくるならば示唆深いものになると思われる.

今後は,このように汎時的 (pan‑chronic)な視点も含んで,中間動詞で 用いられるものの特性,構文聞の拡張関係などを考察していけば,さらに中 間構文の謎が解けていくものと思われる.

1本論は,筆者の修士論文 A Cognitive Approach to the English Middle 

(23)

118  英語中間構文の認知的視点からの研究の必要性と拡張における一考察 Construction"  (2002)を大幅に削減,修正したものである.詳しくは,拙稿を参 照のこと.また,大学院在学時代,講義中に貴重なコメントを常に下さった指導教 授の石黒昭博教授にはここで改めて甚大な感謝を表したい.

2先行研究についての詳しい内容については,字数の関係で大幅に削減した.詳し くは, Fujii  (2002)を参照のこと.

3認知言語学の基本的なパラダイムについては, Langacker  (1987, 1991),山梨 (1995, 2000) ,吉村 (1995)等を参照のこと.

4言語類型論的に捉えた意味での中間構文は,個別言語でいうところのそれとは異 なることに注意が必要で、ある.詳しくは, Fujii  (2002)を参照のこと.

5 言語類型論的に捉えた中間構文は,英語の中間構文よりも使用範囲が広く,中間 構文であることを示すmidd1emarkerの存在により,より形式的で意味や話者主 体の経験等に左右されにくいものである.詳しくは,筆者の修士論文を参照のこ

と.

6本論で言う「中間動詞

J

(midd1e verb)とは,中間構文の中で使うことのできる 動詞という意味である.その点で,安井 (1989)の言う,中間動詞 (e.g.,have,  cost, weigh)とは本質的に異なるものである.後者の意味での中間動詞とは,

I

目 的語をとれるのにもかかわらず受動文として使うことのできないjという特性を前 景化した意味でのものである.また, Sweet (1892‑98)のいう passiva1verb"と いうのも,本論のmidd1everbと同じものである.

7本論でいう他動性 (transitivity)とは,主語として表されているものが目的語と して表されているものに対して,その行為を通じてどの程度「影響を与える」かと いうことを意味するものである.例えば,John hit Billというような文では,主語 のJohnが目的語のBillに対して,殴る (hit)という大きな影響を与えているの で,この文の他動性は高いと言える.一方,The glαss brokeというようなagent が表されていない文や,目的語のない構文などの他動性は一般的には低いというこ

とになる.ただし,他動詞構文だからといって必ずしもその他動性が高く,自動詞 構文だからといって他動性が全て低いとは限らず,他動性の判断はその文ごとに個 別に行われなければならない.

8 この非対格動詞と非能格動詞の分類はPerlmutter (1978)に始まる.能格動詞 の多くは非対格動詞に分類されるものであると言われる.この非対格動詞は,主語 が他動詞構文の目的語のようにふるまい,一般に非意図的 (non‑vo1itional)で完 結的 (te1ic)であるとされている.一方,非能格動詞は,主語が他動詞構文の主語 のようにふるまい,一般に意図的(volitional)で非完結的 (ate1ic)という特徴を もっと言われている.さらに詳しくは, Perlmutter (1978)を参照のこと.

9 ただし,これらもあくまで一般的な「傾向」であって,規則化できるわけではな

(24)

い.実際,以下のような例外も指摘されている.

( i)  a. *Haηy seduces willingly.  (van Oosten 1977: 469; note 4)  b.HarTseduces easily and willingly.  (van Oosten 1977: 462) 

( ii) The dog food cuts and chews like meat in order to make your pet happy.  (F Z 198928) 10  ただし,ここでは紙面の都合上議論を発展できないが,時制も中間と能格の読み

の聞のあいまい性と深く関連していると忍われる.例えば,This door opens eαsily  では,筆者個人的には中間の読みが優先するように思えるし ,This door opened  eαsilyでは一過性のイベントを表す能格の読みが優先するように思える.一般に言

われているように,中間構文は,主語の属性を示すものであり,テンスという概念 からは切り離されて考えられている.一方,能格構文は,イベントを表すことが多 く,一般的には,現在時制よりはむしろ過去時制を伴ったほうがより自然に聞こえ ることが多いのであろう.

11  ただし,これまでの一連の議論で明らかにしてきたように,これも規則化はでき ない.実際,以下のように,副詞が動詞の前に置かれでも中間の読みが可能な例も ある.

( i)  a. Letters easily transpose when you are typing.  b. French easily translates when you are in love. 

c.  Leaves easily mulch in the fall.  (K & R 1984388;note 7) 

12  この例文は,同志社大学における英語学特講の授業で,石黒教授から,形容詞を 用いた中間構文の例として示唆して頂いたものである.ここで改めて感謝の念を表

したい.

13  山梨 09952000)も,共時的な視点と通時的な視点を組み合わせた汎時的 (pan‑chronic)な視点の有効性を主張している.

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参照

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