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現代数学への流れ

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Academic year: 2021

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(1)

浪川 幸彦

June 13, 2007

2

関数の近似

 関数を近似することは,数の近似以上に様々の曲面で重要になる。例えば星やロケットな どの動体を有限回観測して,その軌道を求めることがある。図情報を位置と時間の関数と考 えれば,図を描くことも関数の近似であり,近年コンピュータの発達と共に著しい発展を見 せている。

 同時に関数の近似は数の近似と異なる難しさも出てくる。ここでは二つの点を挙げよう。

1.二つの関数が「近い」とはどういうことか? 数の場合には「絶対値」があって,二つ の数の近さの概念がはっきりしていた。つまり「誤差」「近似度」の考え方が明確であった。

関数の場合には,視点によって近さの捉え方がいろいろあり,応用上もどれが適しているか を考えなければならない。

2.近似関数を求める手段として適切なものがあるか? いくら良い近似を与える関数があ るからといってそれを求めるのが難しいのでは何もならない。実用上ではできるだけ短時間 で求めることも要求される。

 ここではむしろ古典的な関数(多項式,三角関数)の近似法を考えることで,こうした原 理的な部分を学ぶ。

#したがって「現代数学への流れ」というタイトルには少し似つかわしくないかも知れない。

むしろ「ウェーブレット解析」などの現代的な手法の源流がどのようなところにあるかを学 ぶのだと言えよう。

2.1

テイラー展開と剰余項

 関数の中で最も簡単なものは多項式である。したがって多項式を用いて関数を近似しよう と考えるのは自然である。また多項式の次数が上がるほど複雑になるから,より精密な近似 ができると考えるのも自然である。問題はその先で,ある1点の近くで関数を近似しようと

1

(2)

するか,ある範囲の中で関数を近似しようとするかで方法が分かれる。最も単純なのは,あ る範囲の中の有限個の点で値が一致するように多項式を決めることであるが,ここではまず 皆さんが1年で学んである程度知っているテイラー展開,すなわちべき級数による近似から 話を始める。これはある1点の近くで関数を近似しようとするものである。

2.1.1

テイラーの公式

 まず定理を復習しておく。

Theorem 2.1.1 (テイラーの公式).

区間

|x − a| < R

で定義された連続関数

f (x)

が連続な

n

微分を持ち,さらに

(n + 1)

回微分

f ( n +1) (x)

も存在するとすれば

f(x) = f(a) + f 0 (a)(x − a) + f 00 (a)

2! (x − a) 2 + · · · + f ( n ) (a)

n! (x − a) n + f ( n +1) (ξ)

(n + 1)! (x − a) n +1

が成り立つ。ここで

ξ

a

x

との間のある点である。最後の項を(ラグランジュの)剰余 項とよぶ。

Remark. n = 0

は平均値の定理である。

Theorem 2.1.2 (テイラーの公式(積分形の剰余項) ).

上の定理でさらに

(n+1)

回微分

f ( n +1) (x)

が連続であると,剰余項は次のように表せる:

R n +1 (a, x) = Z x

a

f ( n +1) (t)

n! (x − t) n dt.

2.1.2

テイラー展開

Definition 2.1.3.

区間

|x − a| < R

で定義された連続関数

f (x)

が何回でも微分可能であると する。このとき形式的な級数

T a f (x) = f(a) + f 0 (a)(x − a) + f 00 (a)

2! (x − a) 2 + · · · + f ( n ) (a)

n! (x − a) n + · · ·

f(x)

x = a

におけるテイラー展開(またはテイラー級数)とよぶ。

Remark. T a f(x)

x = a

で収束するとは限らない。またたとえ収束してももとの

f(x)

と一 致するとは限らない。

例:f(x) = exp

x 1

2

(x 6= 0), = 0 (x = 0). T 0 f(x) ≡ 0.

一定の条件がみたされる場合には,テイラー展開は収束してもとの関数を表す。

Theorem 2.1.4.

上の定義における条件の下で,さらに

|x − a| < R

ですべての導関数が一様

に有界であるとする。すなわちある数

M

が存在して,|f

( n ) (x)| < M, n = 0, 1, 2, · · ·

が成立 するとする。このとき剰余項は

0

に収束する。すなわちテイラー級数は収束して,f

(x)

に等 しい。

(3)

Idea of proof.

条件から

f ( n +1) (ξ)

(n + 1)! (x − a) n +1

= |f ( n +1) (ξ)|

(n + 1)! |x − a| n +1 < M R n +1

(n + 1)! → 0 (n → ∞).

Examples.

1)f(x) =

e x , a = 0.

e x = 1 + x + x 2 2! + x 3

3! + · · · + x n

n! + x n +1

(n + 1)! e θx (0 < θ < 1).

2)f(x) = sin

x, a = 0.

sin x = x − 1

3! x 3 + 1

5! x 5 − · · · + (−1) n 1

(2n + 1)! x 2 n +1 + · · · .

3)f(x) = cos

x, a = 0.

cos x = 1 − 1

2! x 2 + 1

4! x 4 − · · · + (−1) n 1

(2n)! x 2 n + · · · .

以上はすべての

x

で収束する。

4)f(x) = log(1 +

x), |x| < 1.

log(1 + x) = x − x 2 2 + x 3

3 − · · · + (−1) n− 1 x n

n + · · · .

実はこの範囲すべてでの収束を言うためにはこの定理では不十分(0

< x < 1

ならよい)。

またこの展開は

x = 1

でも正しい(前回のプリント)。

Remark.

皆さんは現在複素関数論を学んでいると思う。複素関数の世界では,「微分可能」と

いう条件がきわめて強いため,関数が一度微分可能(すなわち正則)であれば,実は何回で も微分ができて,しかもそこでのテイラー展開は収束してもとの関数に等しい。

2.1.3

べき級数

収束べき級数の一般論をまとめておこう。

Definition 2.1.5.

与えられた数列

{c n }

と定数

a

に対し,xを変数とする級数

X

n =0

c n (x − a) n = c 0 + c 1 (x − a) + · · · + c n (x − a) n + · · ·

x − a

のべき級数という。aをその中心,c

n

を係数とよぶ。

Examples. i)

(等比級数)

c + cx + cx 2 + · · · + cx n + · · · .

ii)(テイラー級数)前出

(4)

Theorem 2.1.6 (アダマールの公式).

上のべき級数に対しが単調減少で,0に収束するとき,

級数

r = 1/(lim sup

n→∞

p

n

|c n |)

とおけば,級数は

|x − a| < r

で絶対収束し,|x

− a| > r

で発散する。この

r

を収束半径と よぶ。

Remark. i)

級数

P

a n

が絶対収束するとは,級数

P

|a n |

が収束することを言う。

ii)

数列

{a n }

の上極限

lim sup a n

とは,次の条件によって一意的に定まる数

α

のことである:

ε > 0

を任意に与えたとき,

有限個の

n

をのぞき  

a n < α + ε;

無限に多くの

n

に対し 

α − ε < a n

特に

a n

が極限値を持てば,

lim sup n→∞ a n = lim n→∞ a n .

実用的には次のような定理が知られている:

Theorem 2.1.7.

上のべき級数で

lim n→∞ |c n |/|c n +1 |

が存在すれば,それは収束半径に等しい。

以下では簡単のため

a = 0

とする。収束半径内でべき級数の定める関数を

f(x)

と書く。

Theorem 2.1.8. f(x)

は収束半径内で連続である。

Theorem 2.1.9. F (x)

f (x)

の原始関数であるとすれば,

F (x) = F (0) + c 0 x + c 1

2 x 2 + · · · + c n− 1

n x n + · · ·

となる。この収束半径は

r

に等しい。

Remark.

すなわち項別積分が可能である。

したがって

1/(1 + x)

の展開を項別積分すれば,対数関数の展開が得られる。

Theorem 2.1.10. f(x)

は収束半径内で微分可能で,その微分は次のように書ける:

f 0 (x) = c 1 + 2c 2 x + 3c 3 x 2 + · · · + (n + 1)c n +1 x n + · · · .

収束半径は変わらない。

Remark.

すなわち項別微分が可能である。

これを繰り返すことで,収束べき級数が定める関数は何回でも微分でき,それは項別に微分 してえられることが分かる。これとテイラー級数の定義から直ちに

Corollary 2.1.11. f(x)

のテイラー級数は自分自身に等しい。

これらの結果が示すことは,収束べき級数の形で得られる関数(実解析関数)はきわめて「良 い」性質を持っている。しかしそれは逆にべき級数の形の近似を許す関数はきわめて特殊な ものであることを示している。したがってより一般の関数の近似を得るためには,全く別の 方法を考えなければならない。

Remark.

複素関数の世界では,微分可能であれば解析的である。

(5)

前回の出席レポートへのコメント

●レポートでの質問へのお答え

問. 授業を聞いても分からない場合はどうしたらいいですか?

答. これは質問が一般的すぎてお答えが困難です。まずどこが分からないのかをはっきりさ せましょう。講義の目的が分からないのか,内容が分からないのか,証明が分からないのか,

どうして大切なのかが分からないのか,いろいろな可能性があります。それから分からない という,その状況をどうしたいのかもはっきりさせて下さい。分からない部分を分かりたい のか,興味を持てるようになりたいのか,単位を取りたいだけなのか,これもいろいろあり ます。自分を振り返ってよく考えてみましょう。その上でなるべく早く相談に来てください。

 ある程度効果があると思われるのは,幾つか出された課題を自分で手を動かして計算して みることです。もしその計算の仕方が分からなければ,聴きに来てください。それは具体的 な質問ですから,すぐにお答えすることができます。でも最終的には自分で課題を解決する よう努力してください。自分で解いたという経験が積み重なるといつかきっと状況に変化が 起こります。

 私自身の経験を言えば,分からないときは自分で調べたり考えたりして分かろうとしまし た。そもそも講義を聴いただけで分かるなどということはほとんど期待していませんでした し。その内容が価値あるものであればあるほど,一度聞いただけで分かるようなものではな いと私自身は思っています。講義は学ぶため,自分で考えるためのきっかけに過ぎません。

連絡先

研究室:理1号館

506

号室

オフィスアワー:木曜日

11:30〜12:30(それ以外の場合は事前にアポを)

• E-mail : [email protected]

• Tel.: (052-789-) 4746

• Website : http://www.math.nagoya-u.ac.jp/˜namikawa/

講義を欠席した人は,ここから配布プリントをダウンロードして下さい。

参照

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