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皮膚のBehcet病・壊疽性膿皮症なら新しい皮膚科学|皮膚病全般に関する最新情報を載せた皮膚科必携テキスト

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Academic year: 2022

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1.B

ベーチェット

ehçet 病  Behçet disease

●再発性口腔内アフタ,皮膚病変,外陰部潰瘍,眼病変を 4 主徴とし,急性炎症を繰り返す難治性疾患.

●20 〜 40 歳代に好発し,発症に HLA-B51 が強く相関してい る.中東から日本にかけて多い.

●皮膚病変としては,結節性紅斑,血栓性静脈炎,毛包炎ない し痤そう様皮疹をきたす.針反応陽性.

●消化管,大血管,神経に重篤な症状をきたす特殊病型がある.

●治療はコルヒチンや免疫抑制薬.

疫学・症状

20 〜 40 歳代に初発し,症状の急性増悪と軽快を繰り返しな がら長期の経過をとる(図

11.11).中東から日本にかけて患

者が多い.日本では北海道など北日本に多いが,近年減少傾向 にある.皮膚・粘膜症状としては以下のものがあげられる.

①結節性紅斑様皮疹:直径 1 〜 2 cm 前後の圧痛を伴う紅斑で,

下肢や前腕に好発する.約 1 週間で消退するが再発しやすい.

②血栓性静脈炎:四肢に有痛性の皮下索状硬結として触れ,し ばしば遊走性である.

③毛包炎ないし痤瘡様皮疹:さまざまな部位に無菌性小膿疱を 生じる.針反応(4 章 p.71 参照)と同様,皮膚の被刺激性亢進 によるものと考えられる.

④口腔内アフタ:日本患者の 95%以上でみられ,初発症状で あることも多い.紅暈を伴う直径 3 〜 5 mm 前後の白苔を付け る潰瘍が単発ないし多発する.疼痛を伴い,約 10 日で瘢痕を 残さず治癒するが再発する.

⑤外陰部潰瘍:陰囊や大小陰唇に好発する.境界鮮明な深い潰 瘍を形成し,治癒後に瘢痕を残すことが多い.

眼病変〔ぶどう膜炎や前房蓄膿(hypopyon)など〕は男性に 多くみられ,急性発作により失明することがある.関節炎,副 睾丸炎もみられる.また,これらの症状の発作時とは無関係に,

消化管病変(回盲部潰瘍など),血管病変(大動脈炎や深部静 脈血栓)や神経病変(脳髄膜炎や精神症状)を生じて予後不良 となることがある.

C.その他の類縁疾患 other diseases related to vasculitis

11.11① Behçet 病(Behçet disease)

a,b:疼痛を伴う再発性口腔内アフタ.c:深い外陰 部潰瘍.

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病因

遺伝的要因(HLA-B51 と強い相関がある)や環境因子(レ ンサ球菌感染など)を背景として,好中球の機能亢進や自己免 疫,血管炎を生じると考えられているが不明である.

病理所見

結節性紅斑様皮疹においては,好中球およびリンパ球を主体 とした中隔性脂肪織炎であるが,生検時期によっては血管炎や 血栓性静脈炎を伴うことがある.

診断

厚生労働省研究班作成の診断基準が存在する(

11.2).経

過中に 4 主症状が出現したものを完全型 Behçet 病と呼ぶ.近 年は完全型となる症例は少ない.国際診断基準は若干異なり,

口腔内アフタが必須条件で針反応が診断基準に含まれる.

治療

皮膚病変に対してはステロイド外用や NSAIDs 内服,コルヒ チンなどを用いる.眼症状に対しては免疫抑制薬や抗 TNF-a 抗体製剤が有効である.特殊型ではステロイド大量投与や抗凝 固薬内服などが行われるが,ステロイド減量中に眼症状の悪化 を招くことがある.

2.川崎病  Kawasaki disease

同義語:急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群(acute febrile mu-

cocutaneous lymphnode syndrome;MCLS)

●以下の 6 つの徴候をもつ原因不明の疾患.① 5 日以上続く 発熱,②両側眼球結膜の充血,③口唇・口腔咽頭粘膜病変(発 赤やいちご舌など),④不定形発疹(紅斑など),⑤四肢末端 の変化(浮腫・紅斑で始まり落らくせつを生じて治癒する),⑥非 化膿性頸部リンパ節腫脹.

●4 歳以下の乳幼児に好発し,近年増加傾向にある.冠動脈障 害の合併が問題となる.

●発症早期の免疫グロブリン大量静注療法が第一選択である.

症状

3:2 の割合で男児に多く,前駆症状はない.39℃前後の発 熱から始まり,次に示すような症状を呈する.

①四肢末端の変化:発病初期から指趾爪囲に境界明瞭な紅斑が

11.11② Behçet 病(Behçet disease)

a:深い外陰部潰瘍.b,c:結節性紅斑様皮疹.d,e:

毛包炎様皮疹.

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生じて拡大し,発病 3 〜 5 日で手足の硬い浮腫(硬性浮腫)と なり動作が制限される.これは 1 〜 2 週間持続し,回復期に末 端側から膜様落屑を生じて治癒する(図

11.12).

②不定形発疹:発症 3 〜 5 日頃から全身に発疹(不定形発疹)

を認める.紅斑であることが多いが,麻疹様,びまん性紅斑,

蕁麻疹様などさまざまな発疹をとりうる.水疱はみられない.

数日で鱗屑をつけて軽快することが多い.

③口唇・口腔咽頭粘膜病変:発症 2 〜 3 日から口唇のびまん性 発赤や亀裂がみられ,舌のびまん性発赤(いわゆる“いちご舌”)

を認める.

④両側眼球結膜の充血:発症 2 〜 3 日から生じ,1 〜 3 週間持 続する.滲出液などは伴わない.

⑤非化膿性頸部リンパ節腫脹:急性期に片側性に生じることが 多いが,出現頻度は 65%程度である.

⑥その他の皮膚症状:発症早期に BCG 接種部位の発赤,小水 疱や膿疱をみることがある.また,発症数か月以降に爪甲横溝

(19 章 p.352 参照)をみることがある.

そのほか,関節痛や痙攣などを生じうる.本症の重大な合併 症は心病変である.とくに冠動脈瘤や冠動脈狭窄によって,心 筋梗塞や突然死をきたしうる.

病因

原因不明であるが本態は急性の全身性血管炎ととらえられる.

診断・治療

厚生労働省川崎病研究班作成の診断基準を参考にする.治療 は発症早期(7 日以内)の免疫グロブリン大量静注療法が第一 選択である.これにより致命率や冠動脈合併症の頻度は大幅に 減少した.

3.壊疽性膿皮症  pyoderma gangrenosum;PG

●小膿疱と丘疹に始まり辺縁が隆起した潰瘍を急速に形成す る.下半身に好発.

●炎症性腸疾患,大動脈炎症候群,白血病などの基礎疾患に合 併することが多い.

●治療はステロイド外用・内服,シクロスポリン内服など.

症状

10 〜 50 歳代の女性に好発し,好発部位は下肢,殿部および 11.2 Behçet 病の診断基準

1.主症状

①口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍

②皮膚症状

(a)結節性紅斑様皮疹

(b)皮下の血栓性静脈炎

(c)毛包炎様皮疹,痤瘡様皮疹 参考所見:皮膚の被刺激性亢進

③眼症状

(a)虹彩毛様体炎

(b)網膜ぶどう膜炎(網脈絡膜炎)

(c)以下の所見があれば(a)(b)に準じる

(a)(b)を経過したと思われる虹彩後癒 着,水晶体上色素沈着,網脈絡膜萎縮,

視神経萎縮,併発白内障,続発緑内障,

眼球癆

④外陰部潰瘍 2.副症状

①変形や硬直を伴わない関節炎,②副睾丸炎,

③回盲部潰瘍で代表される消化器病変,④血管 病変,⑤中等度以上の中枢神経病変

3.病型診断の基準

①完全型

経過中に 4 主症状が出現したもの

②不完全型

(a)経過中に 3 主症状,あるいは 2 主症状と 2 副症状が出現したもの

(b)経過中に定型的眼症状とその他の 1 主症 状,あるいは 2 副症状が出現したもの

③疑い

主症状の一部が出現するが,不完全型の条件 を満たさないもの,および定型的な副症状が 反復あるいは増悪するもの

④特殊病変

(a)腸管(型)Behçet 病:腹痛,潜血反応の 有無を確認する

(b)血管(型)Behçet 病:大動脈,小動脈,

大小静脈障害の別を確認する

(c)神経(型)Behçet 病:頭痛,麻痺,脳脊 髄症型,精神症状などの有無を確認する

(難病情報センター http://www.nanbyou.or.jp/ から引用)

11.12 川崎病(Kawasaki disease)

硬性浮腫と膜様落屑を認める.

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腹部であるが顔面などにも生じうる.水疱,膿疱,出血性小丘 疹から始まる.次第に発疹が多発融合し,潰瘍を形成して遠心 性に拡大する.辺縁部は暗赤紫色で堤防状に隆起するが,穿掘 性の潰瘍を形成しており触診,視診で確認できる.潰瘍底には 黄褐色の壊死物質を入れる.疼痛を伴い,圧迫すると膿汁を分 泌する(図

11.13).時間の経過とともに中心治癒傾向が出現

して乳頭状〜網目状の肉芽組織を認め,最終的には瘢痕性に治 癒する.このような皮疹が数か月周期で慢性に再発することが 多い.

11.13 壊疽性膿皮症(pyoderma gangrenosum)

多彩な臨床像を呈する.

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病因

不明である.自己免疫説,細菌アレルギー説などがある.外 傷,打撲,皮膚生検などが誘因になることがある.

病理所見

非特異的な真皮の好中球浸潤がみられ,血管炎を伴わない.

後期では組織球や形質細胞など種々の炎症細胞浸潤と線維化を 認める.

合併症

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎,Cクローンrohn 病),大動脈炎症候群,

血液疾患(白血病や単クローン性 IgA 血症など),関節リウマ チなど.壊疽性膿皮症全体の 50 〜 70%に基礎疾患を認めるた め,全身検索が必須である.

検査所見・診断

特異的な検査所見はなく,炎症を反映して CRP 陽性,好中 球増多がみられる.本症は無菌性の膿皮症であるが,経過中に 二次感染を起こして病変部から種々の細菌を分離することが多 い.特徴的な臨床像および合併症の存在から診断する.鑑別診 断として深在性真菌症や抗酸菌感染症などがあげられる.

治療

局所にはステロイド外用やタクロリムス外用が有効である.

第一選択はステロイド内服であり,無効例にはシクロスポリン 内服や DDS などを考慮する.

4.B uerger

バージャー

病  Buerger’ s disease

同義語:閉塞性血栓性血管炎(thromboangiitis obliterans;TAO)

病因・症状

四肢の小動脈の攣縮,虚血および動静脈閉塞を生じる原因不 明の疾患.90%以上は喫煙者であり,タバコとの強い相関関係 を認める.20 〜 40 歳代の男性に好発する.Raynaud 現象(後述)レイノー や指の冷感,間欠性跛行(intermittent claudication,歩行などで 下肢に負荷を掛けると疼痛などを生じて運動不可能になり,休 息により回復する現象)で初発し,やがて些細な外傷を契機と し て 指 趾 端 や 爪 囲 に 強 い 疼 痛 を 伴 う 潰 瘍 を 形 成 す る(

11.14).虚血を反映した爪変化や,遊走性静脈炎を生じること

11.14 Buerger 病(Buerger’s disease) がある.

a:第1足趾の蒼白紫斑と潮紅.b:第1足趾.進行 性の潰瘍.c:第1足趾.血流障害による先端の壊死.

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検査所見・病理所見

サーモグラフィーで皮膚温の低下をみる.レーザードップラー 血流計で皮膚血流量を評価する.形態学的には磁気共鳴血管画 像(MR angiography)や造影 3D-CT,血管造影で多発性分節的 閉塞と先細り状閉塞をみる.病理組織学的に,急性期では好中 球の浸潤を伴う血栓形成を認め,次第に肉芽腫や線維化をきたす.

診断・鑑別診断

厚生労働省特定疾患難治性血管炎調査研究班による診断基準 がある.閉塞性動脈硬化症などと鑑別する(

11.3).

治療

禁煙,保温および運動療法が第一である.外傷を受けないよ う注意を払う.血管拡張薬,抗凝固薬などを投与する.外科的 治療法として,血行再建術や交感神経切除などを行う.

5.M ondor

モンドール

病  Mondor’ s disease

症状・疫学

30 〜 60 歳代の女性に好発し,胸部,上腹部,上肢に径 3 〜 10 mm 幅の皮下索状硬結が出現する(図

11.15).男性では陰

茎背側に生じることもある.牽引痛や自発痛を伴うことがある.

本態は皮下脂肪組織中で器質化した血栓性静脈炎ないしリンパ 管炎である.胸部手術(とくに乳房切除術)や胸部の圧迫,剃 毛などが誘因となる.

病理所見

病変部の脈管壁は線維性に肥厚し,内腔は狭窄ないし閉塞し ている.炎症細胞浸潤はみられない(

11.16).

治療

通常は数週間で自然消退するため経過観察が基本である.生 検後に速やかに消退することもある.

6.悪性萎縮性丘疹症  malignant atrophic papulosis

同義語:D

egos

デゴス 病(Degos’

disease)

体幹・四肢を中心に淡紅色丘疹が出現して数日〜数週で拡大 し,中央は白色調に萎縮,その周囲に毛細血管拡張や紅暈を伴 う直径 1 cm 前後の特徴的な皮疹を形成する.時間の経過とと

11.15 Mondor 病(Mondor’s disease)

皮下索状硬結(矢印)を認める.

11.16 Mondor 病の病理組織像

11.3 Buerger 病と閉塞性動脈硬化症の鑑別

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もに紅色調は消退し白色萎縮を残す.病理組織学的に,ムチン の沈着とリンパ球中心の細胞浸潤を血管周囲に認める.予後不 良の疾患であり脳梗塞や穿孔性腹膜炎を数年で生じるとされる が,ほぼ同様の皮疹が SLE,抗リン脂質抗体症候群,全身性強 皮症,関節リウマチなどでもみられるため,これらの基礎疾患 の有無を精査することが重要である.

7.血栓性静脈炎  thrombophlebitis

同義語:静脈血栓症(venous thrombosis)

概念

さまざまな原因により静脈(小静脈〜深部静脈)に血栓が形 成され,周囲に炎症を生じた病態である.深部静脈に生じたも のは深部静脈血栓症(deep vein thrombosis;DVT)と呼ばれ,

肺血栓塞栓症など重篤な状態を生じうる.本書では,皮膚科領 域で主に取り扱う表在性血栓性静脈炎を中心に述べる.

病因

皮静脈への物理的刺激(静脈カテーテルの留置自体による刺 激や,投与された血管拡張薬や抗ウイルス薬,抗悪性腫瘍薬な どの刺激)によるものが多い.そのほか,下肢静脈瘤,結核な どの感染症,Behçet 病や Buerger 病などで血栓性静脈炎を生じ る.誘因なく表在性血栓性静脈炎を繰り返す症例では,DVT 発症のリスクが高い.

症状

静脈の走行に一致して疼痛ないし瘙痒を伴う索状の硬結をき たし,発赤を伴う.病因によっては週単位で病変が移動し,再 発性に経過することもある.下肢 DVT においては急激な腫脹,

疼痛,熱感を生じる.

診断・鑑別診断

特徴的な臨床症状により診断は容易である.薬剤投与歴や Behçet 病,結核の検索も必要になることがある.索状の硬結を きたす鑑別診断としてクリーピング病(28 章 p.543 参照)など があげられる.下肢 DVT は蜂ほうしきえんとの鑑別が必要な場合が ある.

治療

第一に安静,そして冷却が重要である.NSAIDs 内服やステ ロイド内服を行うこともある.

図 11.11① Behçet 病(Behçet disease)
図 11.11② Behçet 病(Behçet disease)
図 11.16 Mondor 病の病理組織像

参照

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