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単純開放式ストーマの有用性

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Academic year: 2021

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(1)

単純開放式ストーマの有用性

医療法人社団朝菊会昭和病院外科

蒔田 勝見  緑川 武正  八木 秀文  相田 邦俊  坂本 道男

昭和大学藤が丘病院消化器・一般外科

加藤 貴史  田中 淳一

抄録:消化器外科手術,特に大腸外科領域においてストーマ造設は必須となる重要な手術手技 で,大腸癌イレウスに対しては救命的な処置である.標準的なストーマ造設手技は,挙上腸管 の腹壁固定,ストーマ開口とそれに続く粘膜皮膚縫合からなるが,われわれは過去 7 年間,粘 膜皮膚縫合の形成を行わぬストーマの開口と,それに続く自然成熟を待つ単純開放式ストーマ を行っている.この手技により手術時間は短縮されるため,全身状態が不良の緊急例や,ある いは浮腫により腸管粘膜の外反が困難な場合に適していると考えられる.仕上がりも 1 か月後 には粘膜皮膚形成したものとほぼ同様となる.われわれは機能的な問題や重篤な合併症を経験 していない.この手技は簡便かつ安全な方法のため,緊急例のみならず待期手術症例に対して も有用と考えており,文献的考察を加えて報告する.

キーワード:人工肛門,手術手技,粘膜皮膚縫合,自然成熟,一次開口ストーマ

 ストーマ造設手技は,機能面と合併症への対策に より工夫され変遷してきた.初期のストーマ造設は 腸管の挙上のみがなされ,全身および局所の状態が 改善するのを待ちストーマを開口するのが一般的で あった.合併症ではストーマ脱落による腹膜炎が多 かったと報告されており,予防として挙上腸管と腹 膜,筋膜への固定が行われるようになった1,2).更 にストーマ開口後に粘膜皮膚縫合が追加されるよう になった3).粘膜皮膚縫合を行わない単純開放式ス トーマにおいては腸管の開口減圧後から排便,排ガ スのストーマとしての機能を果たし,開口部が徐々 に翻転し 10 〜 14 日程で自然成熟しストーマが完成 する4).われわれの造設してきた単純開放式ストー マは機能的にも,自然修復によるストーマの形状に おいても問題なく簡便で有用な方法と考え,緊急例 のみならず待期手術症例に対しても採用している.

研 究 方 法

 対象:2007 年 7 月〜 2015 年 7 月の 7 年間に当科 で施行された人工肛門造設術は全 48 例であった.

このうち,単純開放式ストーマを作成した 41 例を

対象とした(表 1).

 方法:以下われわれの行っている手技の実際を示 す.

 1.術前準備

 腹直筋を貫通しストーマの扱いやすい場所を目標 に,緊急時でも可能な限り諸家の報告5)に準じてス トーマサイトマーキングを行っておく.

 2.手技の実際6)

 1)貫通孔の作製

 皮膚切開法として単孔式では皮膚切開後の変形を 考慮し(横長にならないよう)マーキング中心部の 皮膚を把持し直鋏で皮膚切除し約 2.5 cm の円形の 皮膚切除とする.双孔式の場合はストーマを造設す る部位で縦切開を行う.皮切長は余裕をもって腸管 を挙上できる長さとし,必要に応じ皮切を延長す る.次いで皮下脂肪を除き腹直筋前鞘を十字に切開 し腹直筋を筋鉤で分ける.その後,術者の 2 横指が 通過できる程度の腹直筋後鞘・腹膜切開を行う.

 2)腸管の挙上は,拡張腸管を使用する際には減 圧後に腸管壁の収縮が予想以上に見られることを予 測し,挙上の長さをとる.最終的に Colostomy は約 臨床報告

責任著者

(2)

1 cm,Ileostomy は約 2 cm の高さとなるとストー マの取り扱いがしやすい.単孔式の場合は線状吻合 器で切離した腸管断端を挙上,双孔式の場合は口側 腸管が下方(足側)となるようループ状に挙上する のを原則とし,より自然に挙上可能な向きとし,脱 落予防にネラトンチューブを腸間膜に通し皮下埋没 型とする.

 3)双孔式の場合は挙上腸管に合わせ,創部洗浄 後に皮切延長分を縫合閉鎖しておく.皮膚閉鎖は創 表面に糸が出ないよう吸収糸による皮下埋没縫合を 行っている.これにより面板が剥がれにくく創部に 密着し感染の予防となる.

 4)腹壁と腸管の固定は,腹直筋後鞘・腹膜,前

鞘,皮下をそれぞれ挙上腸管の漿膜筋層と,血管を 避け血流に留意しながら吸収糸で全周性に 8 〜 12 針縫合固定を行う.双孔式の場合は傍ストーマヘル ニア予防のため,口側,肛側腸管と腹壁固定も可能 な限り行う.

 5)面板を貼った後に,ストーマの開口を行う.

単孔式,双孔式とも切開口の大きさは小さめとし,

最初の切開は電メスを使用せずに行う.単孔式は線 状吻合器により処理された腸管断端の staple を避 け,中央に約 2 cm の小さな切開開口をおく(図 1).

双孔式は腸管長軸方向への前壁全層の約 2 cm の縦 切開7)を行い開口する(図 2).いずれも小さい切開 口で十分である.ストーマの粘膜皮膚縫合による形

表 1 患者背景 (n=41)

年齢(歳) 74.5

±

10.5(49‑99)

性別(男 / 女) 20/21

ASA 1.82

±

0.54(1‑3)

疾患名 大腸・直腸癌 31 例

腸閉塞 2 例

直腸癌術後縫合不全,結腸穿孔,UC,

虚血性腸炎狭窄,NOMI,腸管気腫,

鼠径へルニア嵌頓,S 状結腸捻転,各 1 例 待機 / 緊急 25/16

平均観察期間(日) 556(6‑2481)

ASA:American Society of Anesthesiologists UC:ulcerative colitis

NOMI:non-occlusive mesenteric ischemia

図 1 単孔式:断端を約 2 cm 小さく切開開口(矢印) 図 2 双孔式:腸管長軸方向への前壁全層の約 2 cm の      切開開口(矢印)

(3)

成は行なっておらず,抜糸も不要である.

 経時的ストーマの外観(図 3)を示す.

成  績

 術後の短期成績を表 2 に示す.Colostomy は 40 例,

Ileostomy は 1 例であった.単孔式は 15 例,双孔

式は 26 例であった.術直後のストーマのサイズは 縦 4.09

±

1.29(1.4‑7.0)cm,横 3.91

±

1.05(1.3‑6.0)

cm,高さ 1.72

±

0.97(0‑4.0)cm であった.術後合 併症は 5 例(12.1%)に認めた.内訳は皮下ネラト ン感染 2 例,創部感染 1 例,腸管脱出 1 例,陥凹 1 例 であったが,いずれも Clavien-Dindo 分類Ⅰ〜Ⅱであ

a:第 1 病日,全周性の腸管の浮腫と漿膜の発赤と白苔の出現(漿膜炎),粘膜の軽度外反を認める.図 3         size:縦 6.0

×

横 5.5

×

高さ 3.5 cm,基部 縦 4.5

×

横 4.0 cm.

b:第 3 病日,腸管の浮腫,漿膜炎の程度は変わらず.size:6.0

×

5.5

×

3.5 cm.

c:第 7 病日,粘膜の外反は更に進み,漿膜の発赤や白苔はほぼ消失.size:5.5

×

5.8

×

2.5 cm.

d:第 14 病日,粘膜の外反はほぼ完成し漿膜の白苔はわずかにみられる.size:4.5

×

4.5

×

2.0 cm.

e:第 21 病日,粘膜の外反は完成.size:4.3

×

4.3

×

1.5 cm.

f:第 28 病日,狭窄や変形は見られない.size:3.5(

41.7%)

×

3.0(

44.5%)

×

1.0 cm(

71.5%).

(4)

り,保存的に改善した.腸管の浮腫と漿膜炎に起因 した漿膜面の発赤とそれに続く白苔は術直後から全 例に認められたが,第 7 病日には浮腫,漿膜の発赤 や白苔は消失した.ストーマの変形,狭窄,感染性 合併症等,漿膜炎による重篤な合併症は認めなかっ た.

考  察

 一般的に単孔式,双孔式のストーマ造設手技いず れにおいても開口部の腸管粘膜縫合を行う例が多 く,開口部の単純開放のみとする手技はあまり行わ れていない8‑12)

 単純開放式ストーマが自然成熟されるまでの期間 におこる漿膜炎は必発であるが,その成り立ちは体 表にむき出しになった腸管が外気や排泄物にさらさ れるためとされている13).この漿膜炎は挙上腸管の 硬化による狭窄や蠕動運動の低下,腸管内容物の排 泄障害を引き起こす事が指摘されている14).その予 防のためには早期にストーマの完成が必要と考えら れ,粘膜皮膚縫合を伴う回腸ストーマが報告された

13,15),形成によりストーマの血流障害も経験され

る.われわれの経験では,一過性の腸管壁の血流低 下による腸管の漿膜炎の程度はいずれの症例でも軽 度であり,漿膜炎に由来する重篤な変形,硬化,狭 窄,感染性合併症は認めていないため,粘膜翻転に より早期のストーマ完成を急がなくても良いと考え られる.イレウス管等の処置による待期例,また,

直腸切断術等の待期手術例によるストーマ造設にお ける粘膜皮膚の形成は問題なく行えるが,イレウス 等の緊急例においては浮腫,うっ血等により形成が 難しい症例も経験されるため,緊急例においては更 にその有用性は大きいと考えられる.われわれは腸 管の浮腫やうっ血等の条件の悪い緊急例に対し単純 開放式ストーマを採用してきたが,粘膜皮膚縫合を 行うストーマと比較しても形態的,機能的に全例に 問題を認めなかった.そこで,条件の良い待期手術 例にも単純開放式ストーマを採用しているが,特に 機能的な問題や重篤な合併症は経験していない.し かしながら,ストーマ造設術は機能面,合併症への 対策と工夫による変遷の結果,粘膜皮膚縫合を行う 手技が一般的となっているため,特に待期手術症例 に関してはさらなる症例の蓄積を行い単純開放式ス トーマの有用性を検討したいと考えている.

利益相反

 本研究に関し開示すべき利益相反はない.

文  献

1) 鈴木義雄.人工肛門造設術式の歴史的変遷.臨 外.1982;37:1173‑1182.

2) Allingham HW Jr. Inguinal colotomy; its ad- vantages over the lumber operation, with spe- cial reference to a method for preventing fae- ces passing below the artificial anus.  .  1887;2:874‑878.

3) Patey DH. Primary epithelial apposition in co- lostomy.  . 1951;44:423‑424.

4) 開口時期からみたストーマの分類.日本ストー マ・排泄リハビリテーション学会,日本大腸肛 門病学会編.消化管ストーマ造設の手引き.東 京: 文光堂; 2014.pp11‑13.

5) 大村裕子,池内健二,大塚正彦,ほか.クリー ブランドクリニックのストーマサイトマーキン グ の 原 則 の 妥 当 性. 日 ス ト ー マ リ ハ 会 誌.

1998;14:33‑41.

6) 消化管ストーマ造設.日本ストーマ・排泄リハ ビリテーション学会,日本大腸肛門病学会編.

消化管ストーマ造設の手引き.東京: 文光堂; 

2014.pp43‑135.

7) 中越 享.消化管ストーマの種類.ストーマリ ハビリテーション講習会実行委員会編.ストー マリハビリテーション:実践と理論.東京: 金 原出版; 2006.pp42‑45.

8) 消化管ストーマ造設手技に関するアンケート調 査.森田隆幸,藤田あけみ,古川真佐子,ほか 編.ストーマ造設手技とストーマケアに関する

表 2 術後成績

術式 ストーマ造設術 28 例

Hartmann 手術 7 例 腹会陰式直腸切断術 6 例 ストーマ種類

  colostomy/ileostomy 40/1 ストーマ形状

  単孔式 / 双孔式 15/26 術直後ストーマサイズ(cm)

  縦 4.09

±

1.29(1.4‑7.0)

  横 3.91

±

1.05(1.3‑6.0)

  高さ 1.72

±

0.97(0‑4.0)

  術後合併症 皮下ネラトン感染 2 例

創部感染 1 例 腸管脱出 1 例 陥凹 1 例

(5)

アンケート報告集.青森:  第 26 回日本ストー マ・排泄リハビリテーション学会総会総会事務 局青森県立中央病院がん診療センター外科; 

2009.pp1‑29.

9) 西口幸雄,井上 透,福岡達成,ほか.単孔式 ストーマ造設術の標準的手技と問題点.日本大 腸肛門病会誌.2011;64:842‑845.

10) 赤木由人,衣笠哲史,白土一太郎,ほか.消化 管双孔式ストーマ造設術手技の標準化にむけ て.日本大腸肛門病会誌.2011;64:846‑852.

11) Cataldo PA. Technical tips for stoma creation  in the challenging patient.

2008;21:17‑22.

12) Kodner  IJ,  Read  TE.  Intestinal  stomas. 

New York: McGraw- Hill Medical; 2007. pp141‑177. 

13) Brooke BN. The management of an ileostomy,  including its complications.   1952;2:102‑

104.

14) Turnbull RB Jr. Management of the ileostomy. 

. 1953;86:617‑624.

15) Crile  G  Jr,  Turnbull  RB  Jr.  The  mechanism  and prevention of ileostomy dysfunction. 

. 1954;140:459‑466.

THE USEFULNESS OF SIMPLE OPEN STOMA WITHOUT   MUCOCUTANEOUS PLASTY

Katsumi M

AKITA

, Takemasa M

IDORIKAWA

,  Hidefumi Y

AGI

,  Kunitoshi A

ITA

 and Michio S

AKAMOTO

Department of Surgery, Showa Hospital, Tomogikukai Medical Corporation

Takashi K

ATO

 and Junichi T

ANAKA

Department of Gastroenterological and General Surgery, Showa University Fujigaoka Hospital

 Abstract    Enterostomy is an important and essential technique in gastroenterological surgery, es- pecially for patients suffering from ileus due to colorectal cancer.  The standard procedure consists of  mucocutaneous sutures following fixation of the digestive tract to the abdominal wall and opening of the  stoma.  We have carried out simple open stoma, that matures naturally by extroversion after one month,  without the plasty for the last seven years.  The procedure is suitable for emergency cases in a  bad con- dition to save time and/or for cases with extroversion difficulty due to digestive tract edema.  The final  form of the simple open stoma is very similar to the stoma with mucocutaneous plasty one month later.  

We have not experienced functional problem or severe complications.  The procedure is simple and safe  and can be applicable for cases of elective surgery; it is not merely for emergency cases.  We report this  procedure with some literature review.

Key words

:  stoma, surgical procedure, mucocutaneous suture, maturation, primary opening stoma

〔受付:12 月 4 日,2015,受理:1 月 25 日,2016〕

参照

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