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(1)

南山宗教文化研究所 研究所報

第 21 号 ・ 2011 年

はじめに 2 渡 邉 学

「宗教研究の国際化推進のための 拠点形成と総合的研究史調査」について 3

渡 邉 学 日本哲学資料集

プロジェクトの背景を語る 11 J・ハイジック

「宗教と科学」について

読書会の報告 23 大 宮 有 博 、北 垣 創 、金 承 哲 Asian Ethnology に関する報告 36

B・ドーマン インドネシアにおけるイスラムの グローカリゼーションとサブ・ナショナル化

モナッシュ大学との共同プロジェクト について 39 森山 幹弘 南山宗教文化研究所主要プロジェクト報告 46

P・スワンソン 旧師旧友 49 昨年の行事 53 研究所のスタッフの研究業績 58 Japanese Journal of Religious Studies

Volume 37 (2010) の目次 63 Asian Ethnology Volume 69 (2010) の目次 65

研究所のスタッフ 69

読みたい項目をクリックしてください。

(2)

はじめに

2011年度を迎え、本研究所は、スワンソン所員から私に所長が交代した。10年に わたるスワンソン所長の労をねぎらいつつ、2010年度の本研究所の活動を回顧したい。

本研究所は、本年度から南山大学国際化推進事業の一貫として「カリスマ刷新運動 の国際的研究――基礎文化と外来文化の葛藤と融合」(2010年度~2012年度)に着手 した。日本の聖霊運動やカリスマ刷新運動は、従来から研究されてきているが、それ ほど注目されることはなかった。今回、南カリフォルニア大学が主導してアジア、ラ テンアメリカ、アフリカ、旧ソビエト連邦をターゲットに大がかりな調査(Pentecostal and Charismatic Research Initiative)が行われることになり、本研究所はこの機会をとら えて、改めて日本を中心とするこれらの運動の台頭や展開について韓国やブラジルな どの状況などとの比較を交えて国際的な調査研究を行おうと計画している。2011年1 月には国際ワークショップを開催し、カナダとブラジルから研究者を招聘するととも に、国内の海外研究者の協力を得て、大きな成果を収めることができた。

また、ハイジック所員を代表とする日本哲学プロジェクトは、英文の日本哲学史料 集という大きな果実を刈り取るときを迎え、その成果についての報告をここに収める ことができた。

今回、本研究所が200年以来、編集出版しているAsian Ethnologyについて編集主 任のドーマン所員が報告を寄稿している。同誌の現況についてご覧いただきたい。

また、森山所員がモナッシュ大学(オーストラリア)との共同プロジェクトについ て寄稿しているのが注目に値する。

金承哲研究員(金城学院大学教授)が本研究所のGPSSプロジェクトとも深い関係 を持っている「宗教と科学」の読書会について報告しているが、金研究員は、古くか らの本研究所の友人であり、今後、ますます協力関係を深めることが期待されている。

最後に、本研究所が2011年度から3年度にわたり、科学研究費補助金に採択された ことを報告したい。これについては、拙論「宗教研究の国際化推進のための拠点形成 と総合的研究史調査」を参照していただきたい。これは、本研究所の事業を振り返り ながら、今後の国際的な拠点形成へとつなげていく重要な事業である。私は、新所長 として、また、同時に研究代表者としてさらに努力を続けていきたいと考えている。

今後ともみなさまのご指導ご鞭撻をお願いしてご挨拶としたい。

2011年6月1日 所長 渡邉 学

(3)

はじめに

南山宗教文化研究所は、1年に設立さ れて以来、以下のつの目的にそって活動 してきた1

1 宗教・文化一般、特に日本を中心とする 東洋宗教・文化に関する学際的研究 2 キリスト教と諸宗教の相互理解の促進 3 研究者の養成

本研究所は、創立されて年目を迎え、

今までの活動を振り返りながら、さらに飛 躍をすべき時を迎えている。

そこで、私は研究代表者として標記の研 究テーマ「宗教研究の国際化推進のための 拠点形成と総合的研究史調査」で科学研究 費補助金(基盤研究(A))に昨年秋に応募 し、このたび採択されることが決定した。

これから年間、この研究テーマを一つ の軸として研究所が運営されることになる ので、その内容についてここで報告するこ とにしたい。

研究目的

本研究の目的は、我が国の宗教研究を国 際発信するために海外に開かれた研究拠点 を形成することである。すなわち、日本に

おける宗教研究の総合的な研究史調査を行 うことによって、海外研究者との研究交流 と拡大に取り組み、日本の宗教研究の一層 の国際化を推進し、海外に情報発信する研 究拠点を形成することを目的にしている。

つの研究テーマ(後述)を柱とした共同研 究を、国際的な協力体制のもとに遂行し、

その成果を公開することにより、この目的 を達成する。

具体的には、(1)研究成果の出版(英文・

和文著作の刊行、英文研究誌特集号を編集)、

(2)日本における宗教研究の基礎的資料のデ ジタルデータ(pdf)化とデータベース化と その公開、()国際学会および国内学会での 発表、()国際シンポジウムの日本での開催 などによって、日本の宗教研究の国際的な プレゼンスを高め、かつ宗教研究を振興し てゆくことである。

① 宗教研究は、他の学問と同じく欧米の 影響の下に成立し、同時に明治政府の施策 と不可分であった。たとえば、姉崎正治の『宗

教概論2』(明治 年刊行、『姉崎正治著作集』

第 巻、国書刊行会、12 年)の第四部は「宗

教病理学」であり、宗教を病理的なものと みる視点は、国家に宗教を管理する理由を 与えた。とりわけ「神道」概念は、近代日 本において、アサドのいう「編成原理3」と

「宗教研究の国際化推進のための

拠点形成と総合的研究史調査」について

渡 邉 学

Watanabe Manabu

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して働き、明治政府は正統を体現する国家 神道と異端とを明確に識別した。一方で国 体を体現する神道をいかに定義するかとい う問題が生じ、他方で、正統の枠内に収ま るとされた教派神道と、それから外れた「淫 祠邪教」と呼ばれた新宗教が生じた。新宗 教研究では、社会的変動と新宗教の成立の 関係が注目され、幕末維新期以降、さまざ まな新宗教が研究対象となってきた。

1 年のオウム真理教事件以降、また、

2001 年の.11 事件以降、宗教に対する社会

の見方はさらに大きく変化した。宗教はそ れまで、伝統、秩序、儀礼、風習などの概 念とともに論じられることが多かったが、

これらの事件以降、狂信、テロリズム、破 壊、恐怖などの概念とともに論じられるこ とになった。日本では一時的に信仰率が減 少したほどである。これらの事件は、宗教 研究の意義を改めて問い直す重要な機会で あった。しかしながら、日本の宗教学界は、

むしろ沈黙を守ることを選択した。200 年 に東京で開催された国際宗教学宗教史会議

(IAHR)においても、この点を十分に深め ることはできなかった。一方、欧米では、

2001 年の.11 事件以降、宗教研究の必要性

が新たに見直されている。それは、欧米社 会がますます多民族化・多文化化しつつあ る中で、いかに社会の安定と統合を図るか という課題と、イスラームをはじめとする 異文化理解が重要であり、その点で宗教研 究が重要な貢献をするという認識があった ためである4。このような諸外国の宗教研究 の実情を考え合わせるならば、日本の宗教 研究がさまざまな社会的変動の中でいかな る研究をしてきたのかを、国際的な視点か ら検討することは、ますます多元社会とな りつつあるわが国においても喫緊の課題で あるといえよう。

また、海外において日本の宗教に関する 研究が盛んであるのに比べ、日本の宗教研 究者が国際学会に与えている影響はあまり にも少ない。要するに日本の研究者は長年、

「土着の情報提供者」(native informant)の 立場に甘んじてきたといえる。ハリー・ハ ルトゥーニアン(シカゴ大学)の主張に典 型的に現れているように、日本人による研 究は日本のイデオロギーに染まっているの で、顧慮するべきでないというのである。

このような偏見にさらされてきた現状を打 開するためにも、やはり国際的な視点から 日本の宗教研究を振り返り、その成果と意 義を明らかにすること、また近代日本の宗 教史に関する基本的な資料や研究成果を英 語で出版して国際学界に問うことがどうし ても必要である。さらに、国際的な学会に おいてそれらの価値と問題点を明らかにす る作業と、海外の研究者にとって継続的な 窓口であるような研究拠点の形成が必要で ある。

② 本研究は、100 年以上に渡る日本の宗 教研究について、関連諸学にも広く目を配 った総合的な研究史調査を行う。宗教学の みならず、哲学、社会学、文化人類学(民 族学)、民俗学、日本史、心理学等々の幅広 い分野に渡って、広く文献を渉猟する必要 がある。そのため、前述したように、本研 究の柱としてつの研究テーマを設定して いる。以下に敷衍する。

A. 神道概念の再検討:欧米の宗教研究の 分野では、近年、宗教概念を根本的に 問い直す試みが多く行われている。日 本でもその試みは始まっているが、明 治期以降、もっとも重要な役割を担っ てきた編成原理としての神道の概念が どのように成立し、神道がいかに語ら れてきたかということに関しては、一

(5)

部の先駆的な取り組みを除いては、い まだ萌芽的な研究段階にある。それゆ え、さまざまな文献資料や研究を精査 し、神道の定義を再検討することには 大きな意義がある。

B. 「近代仏教」の再検討:明治維新以降、

仏教にも大きな変化が見られ、幕藩 仏教は近代仏教へと変化していった5。 10 年代後半以降、吉田久一、柏原祐泉、

池田英俊らによって開拓され、牽引さ れてきた近代仏教研究だが、2000 年代 以降、国内外の「宗教」概念批判研究 を経て、「近代仏教」概念、さらには「仏 教」概念自体の見直しが進んでいる。

神道概念と同様に、近代仏教研究にも 根本的な再検討が迫られている。また ジェームズ・ケテラー6やリチャード・

ジャフィ7等、海外の研究者による近 代仏教の研究成果が公刊され、近代仏 教研究への注目が高まっている。また 欧米だけではなく、韓国や中国等、日 本の近代仏教研究に取り組む東アジア の研究者も増えている。こうした海外 の研究者の交流も、今後、重要となる。

つまり、「近代仏教」は世界の諸地域に 見られる仏教の変容・動向であり、こ うした研究を本研究の中に位置づける ことには、大きな意義がある。

C. 新宗教研究の再検討:新宗教研究では、

社会的変動と新宗教の成立の関係が注 目され、幕末維新期以降、さまざまな 新宗教が研究対象となってきた。社会 的変動における宗教の変化と、それに 対する研究のあり方をみることによっ て、近代日本の宗教研究の成果と意義 を改めて浮き彫りにできると考えられ る。そして、とりわけ、オウム真理教 事件以降の日本の宗教研究と.11 事件

以降の海外の宗教研究を対比すること によって、宗教研究に対する社会的要 請のちがいや今日的な意義について問 い直すことが可能になる。

D. 諸宗教間対話の実践と再検討:10 年 代の第二バチカン公会議以降、東西霊 性交流や東西宗教交流学会などの営み が続けられている。半世紀を経過した 現時点において、仏教とキリスト教の 交流の意義や成果を再検討することが 可能であるし、必要でもある。そのこ とによって、宗教間の対話や文明間の 対話が平和構築に果たす意義が改めて 明らかにされると考えられる。

③ 本研究の独創性は、日本における宗 教研究の総合的な研究史調査を、国際的な 協力体制のもとに遂行し、その成果を公開 することにより、単に研究のみならず、海 外に開かれた継続的な窓口となる研究拠点 を形成する点である。それを可能とする条 件を本研究所は備えている。まず、本研究 の主体となる南山宗教文化研究所は、長 年にわたり、英文研究誌Japanese Journal of Religious Studies(『日本宗教研究誌』、1 年 創刊、現在第 巻)を発行している。本 研究誌は、日本人による良質な日本宗教研 究を海外に紹介するとともに、海外の重要 な研究も積極的に掲載し、日本宗教に関す る研究の振興に努めてきた。また、科研費 による先研究「宗教学の国際化推進のため の研究機関の改革と交流に関する国際比較 研究」(基盤研究(B)200年度~200年 度)を行い、研究機関の在り方について、

海外機関や研究者と議論と交流を重ねてき た。その成果の一部として、Nanzan Guide to Japanese Religions(『日本宗教へのガイド』

Honolulu: University of Hawai‘i Press, 200)を 刊行している。さらに、本研究所では諸宗

(6)

教研究講座を設け、海外の優れた研究者を 一定期間客員研究所員として受け入れてき た実績がある。これらの成果を踏まえて、

本研究の遂行によって、海外研究者とのさ らなる研究交流と拡大に取り組み、日本の 宗教研究の一層の国際化を推進し、海外に 開かれた研究拠点を形成することは十分に 可能である。

つの基本テーマによる研究の成果を、 (1) 研究成果の出版(英文・和文著作の刊行、

英文研究誌特集号を編集)、(2)日本宗教研 究の基礎的資料のデジタルデータ(pdf)化・

データベース化とその公開、()国際学会お よび国内学会での発表、()国際シンポジウ ムの日本での開催などの具体的な形にする ことによって、日本の宗教研究の国際的な プレゼンスを高め、かつ研究を振興してゆ くことが十分に予想される。

研究計画・方法

本研究をテーマ毎にグループに分けて 遂行する。研究組織全体を研究代表者(渡邉)

が統括し、研究分担者は各グループの研究・

運営を主体的に推進する。海外研究者とは、

日常的にインターネットを利用して交流す るが、年に数回、南山宗教文化研究所(南 山大学)に招聘し、意見や問題意識を交換 する。また年に2回ほど全体会議を開いて、

研究の進展具合を確認し、相互に問題点を 指摘しあう。2011年度、2012年度には、関 連する国際学会(AAR、SISR 等)でパネル 報告を企画する。最終年度には、国際シン ポジウムを公開の形で開催する。英文・和 文の出版を目指し基本的資料のリストアッ プと翻訳作業を行う。RAを2名従事させ、

リストアップされたもののデジタル化を進 める。また、南山宗教文化研究所のネット ワーク上に「日本宗教研究史データベース

(仮称)」を稼働させ、インターネット上に 公開する。

平成23年度(1年目)

本研究の遂行のために以下の人員による 研究組織を立ち上げる(日本在住の外国人 をカタカナ表記し、国際共同研究者をアル ファベット表記する)。

氏 名 役割分担・研究分野 所属組織・職名

渡邉 学 研究代表者・統括 南山大学・南山宗教文化研究所・所長 スワンソン,ポール 研究分担者・近代仏教 南山大学・南山宗教文化研究所第一種研究所員 ハイジック,ジェームズ 研究分担者・諸宗教対話 南山大学・南山宗教文化研究所第一種研究所員 奥山倫明 研究分担者・神道概念 南山大学・南山宗教文化研究所第一種研究所員 ドーマン,ベンジャミン 研究分担者・新宗教研究 南山大学・南山宗教文化研究所第一種研究所員 金 承哲 研究分担者・諸宗教対話 金城学院大学・人間科学部・教授

林 淳 研究分担者・近代仏教 愛知学院大学・文学部・教授 マリンズ,マーク 研究分担者・新宗教研究 上智大学・国際教養学部・教授 大谷栄一 研究分担者・近代仏教 佛教大学・社会学部・准教授

Reader, Ian 国際共同研究者・新宗教 マンチェスター大学・日本研究・教授(イギリス)

MacWilliams, Mark 国際共同研究者・神道概念 セント ・ ローレンス大学・宗教学部・教授(アメリカ合衆国)

Baffelli, Erica 国際共同研究者・新宗教 オタゴ大学・宗教学部・講師(ニュージーランド)

Lande, Aasulv 国際共同研究者・諸宗教対話 ルント大学・宣教学部・名誉教授(スウェーデン)

Vroom, Henk 国際共同研究者・諸宗教対話 自由大学・宗教学部・名誉教授(オランダ)

(7)

研究代表者(渡邉)は研究組織全体を統 括するとともに専門とする領域の研究にも 従事する。前述してきたように研究領域は 大きく分けて つあり、A.神道概念の再検 討に関しては、奥山倫明とMark MacWilliams が担当する。両者はすでに「神道概念の歴 史性」に関する研究に着手している。B.「近 代仏教」の再検討に関しては、スワンソン と林淳と大谷栄一が担当する。前者は伝統 仏教に関してすぐれた業績を残しているし、

後者2 名はすでに近代仏教研究会等の中心

的な研究者である。C. 新宗教研究の再検討 に関しては、渡邉、ドーマン、マリンズ、

Ian Reader, Erica Baffelli が担当する。Reader は国際的にも著名な日本宗教研究者である。

D. 諸宗教対話の再検討に関しては、とりわ け本研究所が力を入れてきた分野であり、

ハイジック、渡邉、金が担当する。いずれ も東西宗教交流学会や国際学会(Society for the Buddhist-Christian Studies)で役職を持つ 中心的な研究者であり、この分野の研究に

精通している。また、Aasulv Lande とHenk

Vroom は、ともにヨーロッパで諸宗教対話

に長年携わり、とりわけVroom はヨーロッ パにおいて、キリスト教とイスラームとの 対話に大きな実績を持つ8

今回の研究に関わる1 名の研究者はきわ めて国際的である。日本人 名、韓国人1 名、

アメリカ人 名、イギリス人1 名、ノルウ ェイ人(スウェーデン在住)1 名、オランダ 人1 名、オーストラリア人1 名、イタリア 人(ニュージーランド在住)1 名からなって いる。日本在住の外国人研究者 名を含み、

海外からの多様な視点からの貢献を十分に 期待することができる。この研究組織を円 滑かつ効率的に運営するために研究代表者 の所属する南山宗教文化研究所に本研究の 事務局を設置する。このような多様な海外 研究者と連携を取りつつ、大規模な研究史 調査とその公開を期すために、外国語によ るコミュニケーション能力を持つ事務担当 者と、専門分野の知識を持つ者による資料

研究代表者 事務局(事務員・RA)

統括・協議 情報端末によるデータの共有・検討

国際共同 研究者

国際共同 研究者

国際共同 研究者

国際共同 研究者

研究分担者 研究分担者 研究分担者 研究分担者

神道概念の 再検討

新宗教研究の 再検討

諸宗教対話の 再検討 近代仏教の

再検討 研 究 組 織

南山大学 南山宗教文化研究所

協力 ・ 出納 協力 ・ 施設提供

研 究 組 織 概 念 図

(8)

集成・デジタル化作業が必要となる。RA(リ サーチ・アシスタント)2 名とバイリンガ ルの事務員1 名を南山大学において雇用し、

研究分担者や国際共同研究者との緊密な連 携やデータの集約作業に従事させる。渡邉 がこれを監督・指揮する。この体制は研究 期間が終了するまで維持する。次ページに 研究組織全体の概念図を示す。

平成2年度の研究計画は次の通りであ る。

(1) まず、採択決定後、出来るだけ早い時 期に海外研究者を招聘し、また、事務員お よびRAを雇用して、全体集会を持ち、研 究組織を発足する。これには南山大学およ び本研究所が全面的に協力する。具体的な 活動としては、年度はじめと年度末の2回 ほどの研究組織全体による研究計画の遂行 および進展状況に関する精査と打ち合わせ を行い、成果を全体で共有するとともに、

研究上の問題点や研究 ・ 調査の方法などに ついて協議する場を持つ。

(2) 研究代表者・分担者たちは国内外でそ れぞれの担当分野について研究を行い、各 分野の情報を本研究組織事務局へ集約する。

前述したつの基本テーマにおいて、総合 的な研究史調査を行い、デジタルデータと して利用できるようにする。この作業は 年間にわたって行う。特に初年度である平 成2 年度は、各分野の宗教研究資料の文献 資料の所在状況について総合的に把握する 作業がまず必要であるので、これを行い、

全体としての方針、具体的な作業日程をメ ンバーと協議する。

() 基本テーマ毎に、研究会を、年2回ほ ど開催し、研究成果の報告や発表を行う。

また、国内外の専門家を招き、講演として 一般にも公開する形で行うことにより、研 究で得られた知見を社会に還元する意味も

持っている。

() 国際学会でのパネル報告の企画と打ち 合わせのために訪米、訪欧し、協議する。

その際に、海外の出版社とも連携を取る。

出版の可能性について、具体的に検討する。

() 初年度である平成2年度は特に、デ ータ収集とその整理のためにデジタル機器 を購入・活用して、現地での聞き書き、イ ンタビューや会見などの模様はすべてデジ タルデータ化して保存する。これらは将来 の、資料集や書籍の形での刊行、ならびに デジタル・データベースでの研究成果公開 のために必要な作業である。データの集約、

整理、デジタル動画の編集などのためのパ ソコン、研究者間でのデータ共有のための 情報端末など必要なデジタル機器を南山大 学内の事務局に設置し、調査地に持ち込み 可能なノートパソコンやビデオカメラ等も 備品としてそなえる。

() また、南山宗教文化研究所のサーバー にデータベースを構築し、「日本宗教研究史 データベース(仮称)」をインターネット上 に公開する準備として、パイロット版の作 成と運用について、南山大学の情報システ ム課や基幹サーバーの担当者とも協議し、

方針を定める。

平成24年度(2年目)

平成 2 年度は、前年度と同様、年に2 回 の研究組織全体による研究打ち合わせを行 う。年度はじめと年度末に研究打ち合わせ をそれぞれ行い、成果を全体で共有すると ともに、研究上の問題点や研究 ・ 調査の方 法などについて協議する場を持つ。研究代 表者・分担者、海外共同研究者たちはそれ ぞれの担当分野において調査と研究を行い、

情報を本研究組織事務局へ集約する。情報 端末によって海外・国内でデータを共有し、

(9)

精査・討議する。またテーマ毎に研究会を 開催する。

事務局にてデータ整理・集成作業をすす める。集成された資料をもとにデータベー スのパイロット版を作成し、試験運用する。

さらに関連する国内学会などでの成果報告 を行う。

平成25年度(3年目)

最終年度である平成2 年度は、事務局の 作業としては主として成果のとりまとめ作 業に入るが、前年度までに消化しきれなか った事項の追跡調査を各分野において行う 予定である。したがって、基本的な研究集 会の場において調査報告書の編集作業も進 める。こうしたデータを集成する報告書は、

きわめて大部のものとなることが予想され る。そこで書籍としての刊行と共に、前年 度までにパイロット版を作成したデータベ ースの公開を始める。また、本研究終了後 のデータベースの継続的運営について議論 し、方針を定める。以下の様な研究成果の 発信を行う。

(1) 報告書を除いて、資料集や論文集を英 文・和文の2ヶ国語によって刊行し、内外 の今後の研究に資する。

(2) 海外での報告・討議の機会として、ア メリカ宗教学会(AAR)においてパネル・

セッションを行う。

() 日本において国際シンポジウムを行 う。場所は南山大学の施設を予定している が、東京都心などの交通の便の良い外部会 場を借りて開催することも検討する。

問題の発生や計画変更への対応について これらの研究計画は、研究分担者と常に 協議し、研究計画の遂行および進展状況に 関する精査と打ち合わせを行う。情報端末 やWEB 会議システムによって、海外研究

者との協議も日常的に行う。研究上の問題 点や研究 ・ 調査の方法などについて協議す る場を持つことにより、研究をより効率的、

かつ実質的なものへと調整しながら進めて いく。

本研究が意図している研究史調査はきわ めて大規模であり、かつ社会的な重要性も 高いと思われるため、早い段階で、より多 くの国内・海外研究者に加わってもらう必 要性や研究期間の延長も十分に予想される。

また、国際シンポジウムの開催なども大規 模な国際会議となる可能性がある。それら の実現にあたっては、日本学術振興会や財 団、諸学会、あるいは関連する他の研究機 関との合同開催も視野に入れ、わが国にお ける宗教研究の国際的なプレゼンスを高め るために、より適切な方途を模索してゆく 必要がある。

今回の研究計画を実施するに当たっての 準備状況及び研究成果を社会・国民に発信 する方法

① 南山大学南山宗教文化研究所は、共同 研究室、会議室、書庫などが完備しており、

事務局を整備し、既設のデジタル機器を活 用するとともに、新規の設備備品の設置場 所として使用できる。分担者の各研究室と も連携して、調査資料の蓄積や会議・研究 会なども開催可能である。

② 本研究に参加する学外の分担者とは、

インターネットを通して密接に連携してお り、国際共同研究者のほとんどは本研究 所と密接な研究交流をもっている。Mark

MacWilliams は、長年AARの比較宗教学部

会の理事を務め、奥山だけでなく渡邉とも 密接な交流をしてきた。Ian Reader は、イ ギリスを代表する日本宗教の研究者であり、

毎年のように研究所を来訪し、さまざまな プロジェクトで協力している。Aasulv Lande

(10)

は現在、本研究所諸宗教研究講座客員研究 所員であり、日々所員と協力関係にある。

さらに、Erica Baffelli とは、ドーマンが日本 の新宗教研究において交流をしている。

③ 本研究の成果は、

(1) 出版(英文・和文著作の刊行、英文

研究誌特集号を編集)、

(2) 日本宗教研究の基礎的資料のデータ

ベース化とその公開、

() 学会での発表(国際学会・国内学会)、

() 講演や国際シンポジウムの日本での

開催など

によって、学界に還元していく。また、

講演や国際シンポジウムは一般公開とし、

「日本宗教研究史データベース(仮称)」も インターネット上に公開し、国民一般にこ れらの成果を発信してゆく。

おわりに

このように、この科研プロジェクトは、

本研究所がこれまで研究してきた内容をさ らに深化させるとともに拡大していくこと をめざしている。この成果を踏まえて、さ らに此界に貢献することをめざしていきた い。

1. 「南山大学規程」第部「南山宗教文化研究所規程」

2条参照。

2. 姉崎正治『宗教概論』明治 年刊行、『姉崎正 治著作集』第 巻、国書刊行会、12 年。

. Asad, T., Formations of the Secular: Christianity, Islam, Modernity, Stanford University, 200.

. 私はこのような対照的な状況について以下の 論 考 に お い て 報 告 し た。“Religious Violence amid Love, Compassion, and Hate: A response to Prof. Mark Juergensmeyer,” Religion and Society: An Agenda for the 21st Century, eds. Gerrie ter Haar and Yoshio Tsuruoka, Leiden and Boston: E. J. Brill, pp. 2–. 渡邉学「愛、慈 悲、憎悪のただ中の宗教的暴力」、島薗進、ヘリー・

テル=ハール、鶴岡賀雄編『宗教――相克と平和』〈国 際宗教学宗教史会議東京大会(IAHR 200)の討議〉、

秋山書店、pp. –.

. 吉田久一「近代仏教の形成」、『講座近代仏教』〈概

説編〉第1巻、法藏館、1年。

. Ketelaar, James Edward, Of Heretics and Martyrs in Meiji Japan: Buddhism and its Persecution, Princeton University Press, 10. [岡田正彦訳「邪教/殉教の明 治――廃仏毀釈と近代仏教」ぺりかん社、200年。]

. Jaffe, Richard M., Neither Monk nor Layman: Clerical Marriage in Modern Japanese Buddhism, University of Hawai‘i Press, 2011.

. Vroom教授は病気療養のため、プロジェクトか

ら外れることになった。

わたなべ・まなぶ 南山宗教文化研究所第一種研究所員

(11)

2011年春、『日本哲学資料集』が刊行された。それは世界 中から協力者を募った共同作業がついに日の目を見た瞬間だ った。1,360ページを数えるこの著作の背後には、まさしく 日本哲学が国際化に向けて歩んできた歴史が横たわってい る。以下はその最も簡潔な叙述にすぎない。

日本哲学資料集

プロジェクトの背景を語る

J・ハイジック

James W. Heisig

『日本哲学資料集』は数週間以内に印刷を 終える。7年前に始まったプロジェクトは まさに完了しようとしているのだ。この出 版にかかわったわれわれは当初から、本を たんに1冊出すだけでは決してなく、出版 物と同じく出版に至る過程もまた重要なも のになるだろうと考えていた。そしてこの ような思いはわれわれの当初の予想をはる かに超えて正しかったことが判明した。こ の資料集の成立史を語ることは、哲学のよ りいっそう広範で現在進行形の歴史に棹差 すことになるのだが、この歴史がいまだ明 確な概要を持ち得ないように、その語りは 判然とせず、あらかじめこうなるだろうと 予告することもできない。しかし、そのよ うな歴史の一部となれたことは興奮に満ち た経験であり、他のなにごとにもまさって 出版に至る全過程でわれわれが払われた努 力に報いてくれた。

ことのおこり

日本哲学資料集を作ろうというそもそも の発案は、トマス・カスリスがハワイ大学

で哲学の准教授だった1980年にまで遡る。

当時、非西洋的伝統としては中国哲学およ びインド哲学が主流であり、日本哲学はい まだ認知を求めて模索を繰りかえすに留ま っていた。

すでに1957年にSar ve palli Rad hakrishnaと

Charles A. Mooreが編集した『インド哲学資

料集』がプリンストン大学出版部から刊行 され、1963年にはWing-Tsit Chan編『中国 哲学資料集』も出版されていた。3巻本の 日本哲学資料集が計画されてはいたものの 出版には至らず、その欠を角田柳作、Wm.

Theodore de Bary、そしてDonald Keeneが編 集し、コロンビア大学出版部から1958年に 出された『日本の伝統に関する資料集』が 部分的に埋めていた。

筆者はカスリスと1980年代に対話を重ね る機会を得たのだが、彼は哲学思想だけに 的を絞ったアンソロジーを作りたいと念願 していた。他方、ヤン・ヴァン ブラフトが 所長を務めた10年間に南山宗教文化研究所 は京都学派の哲学と取り組み、翻訳に注釈 を加えた書籍を8冊刊行しており、多くの

(12)

若い研究者の関心をひきつけていた。こう してよりいっそう広範な資料集を作成しよ うという機運が盛り上がってきた。

くわえて日本哲学への関心が高まった背 景には、15回にわたって開催された国際会 議すなわち「京都禅シンポジウム」の存在 があった。そこでは天龍寺管長・平田晴耕 老師の機知に富む指導のもと、堀尾孟、西 谷啓治、上田閑照、源了圓らが集い、海外 から66名、国内からは37名の研究者が招 かれ、禅哲学およびそれに関連する事項を 集中的に討議した。その場に最も頻繁に顔 を出したのが、すくなくとも6回にわたり シンポジウムに参加した北フロリダ大学の 哲学教授ジョン・マラルドであった。そこ での資料は『禅仏教の現在』という名で京 都において刊行された。もっとも、1994年 のシンポジウムだけは例外で、マラルドが 主催してアメリカ合衆国ニューメキシコで 開かれ、発表原稿は1995年にハワイ大学 出版部よりRude Awakenings: Zen, the Kyoto School, and the Question of Nationalismの名で 出版された。

カスリスと筆者が再会した1990年のシン ポジウムで資料集の是非について論じる機 会を得たが、その結果参加者とくに日本人 研究者から励ましを受けることができた。

その後数年にわたりこの話題は頻繁に取り 上げられ、そのたびごとに夢の成就に向け て緻密な計画が付け加わっていった。1994 年には3年後をめどにこの計画を実現させ ようと青写真を描いたが、計画が実行から 程遠く、編集作業もわれわれ二人で管理す るには手の余る規模であることに気が付く のにさほど時間を要しなかった。そこでわ れわれはマラルドに加わってくれるように 依頼した。マラルドが溢れかえる意気込み とともに受諾してくれたが、それは第一歩

が実現味を帯びるために欠かせない刺激と なった。

第一段階

出版計画をいっそう明確にし、なにをな すべきかをより具体的に考え、そして西洋 における日本哲学研究者から助言を得るた めに、われわれは2003年、南山宗教文化研 究所において準備会議を開催しようと決め た。大きく分けて古典哲学と近代哲学とい う2つの項目が立てられた。研究所は2年 ごとに主催してきたシンポジウムの第12回 目としてこの会議を実施することに賛同し た。

つぎにすべきはハワイ大学出版部編集長

Pat Crosbyに連絡をとることだった。その結

果、彼女は好意的な返答を与えてくれただ けではなく、彼女に我々がはじめて話を持 ち出してからすでに10年が経過しているこ とを思い出させてもくれた。そして事業に 着手した頃に交わした書簡のなかで総頁数 を800とし、価格は哲学を学ぶ学生にとっ て手が届く範囲に収めるということに意見 がまとまった。

こうしたことすべてを念頭に置きつつ、

2004年6月に欧米から13名の研究者を南山 宗教文化研究所に招いた。互いの報告に耳 を傾けるなかで参加者は海外において日本 哲学がいかに研究され、受容され、そして 期待されうるかについて概ね理解するに至 った。ちなみに参加者は以下の通りである。

Frédéric Girard Bernard Stevens Jacynthe Tremblay Thomas P. Kasulis 有坂陽子

Raquel Bouso Lothar Knauth フランス語圏

英語圏 スペイン語圏

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地域別報告を一通り終えた後、ブレット・

デービス、ジョン・マラルドそして筆者は

「日本哲学」とはいかなる哲学であるかとい う点で提起された問いを吟味した。そして 発表された原稿は編集されたうえで、日本 私立学校振興・共済事業団の援助を得て2 ヵ月後に5つの言語を保ったままでJapanese Philosophy Abroadとして刊行された。2006 年に翻訳版が『日本哲学の国際性――海外 における受容と展望』として世界思想社か ら出版されている。

「哲学」概念を3日間にわたって論じた結 果、術語の相違に留まらずアプローチの面 ではさらに多様であることが判明した。刊 行本の緒言から引用してみよう。

「哲学」という語の言外の意味やそれをとり まく文化的含蓄といったものが、ヨーロッ パ大陸の国々の間でさえばらばらなのであ る。たとえば、仏教思想の含蓄は、ある言 語枠では自明であるのにたいし、他の言語 枠ではほとんど顧みられない。さらに、あ る種の傾向に確固たる足場を与えているポ ストモダン思想は、国が違えば、それをも ちいることによって日本哲学の研究傾向を 政治的に疑わしいものにしてしまうことが ある。

皮肉なことに、われわれのシンポジウム と時を同じくして南山大学において開催さ れた日本哲学会第63回学術大会では、すべ ての発表が西洋哲学に関するものであり、

日本哲学を扱ったものは皆無であった。

シンポジウムの最終日は京都大学の哲学 研究者たちとの共催形式をとり、藤田正勝 と氣多雅子が企画した、日本哲学の現代的 意義に関する2時間にわたる議論がもたれ た。最後を飾って西谷啓治の孫である矢田 美穂が、集いを祝して旧西谷宅で茶会を催 した。

イタリア語圏

ドイツ語圏 中国語圏

Matteo Cestari Tiziano Tosolini Rolf Elberfeld Gereon Kopf 松戸行雄 張政遠

「海外における日本哲学の展望」、南山宗教文化研究所、 2004 年 6 月

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テクニー・ワークショップ

2005年には南山宗教文化研究所第一種研 究員である奥山倫明の助力を得て、日本学 術振興会の科学研究費を申請した。その結 果翌春までの予定で約1,800万円の資金が 獲得できたため、3人の編集者は目次の素 案を描くことにした。紙面上に構成を書き 出してみるやいなや、あきらかに2つの部 門において重複が認められた。われわれの 希望は資料集をたんなる翻訳集とすること ではなかったため、重要なテーマを見極め、

それらのテーマを思想上の主要な流れへと 結びつける方法を見つけ出さねばならなか

ったが、その答えは直ちには出なかった。

さらに取り上げる人物の取捨選択、そして それら人物の著作からどこを選び出すかが 気の重い課題としてゆく手に浮上してきた。

幸い奨励金のおかげで編集作業をより広範 な視野からみつめ、プロジェクト全体を一 歩ずつ再検討することができた。

まず誰を取り上げるかという点では、各 領域での文献に精通している少数の人材を 集め、代表作であるとともに日本思想史に 詳しくない哲学研究者や学生たちの関心を 惹きそうなものを見定めるよう依頼するこ とが最も効率的だと思われた。そして最も 助けが必要だと思われた「日本儒教におけ

Part i: major japanese schools of thought Buddhist Schools

Esoteric Traditions Shingon Tendai

Kamakura Exoteric Traditions Pure Land

Zen Nichiren

Buddhist-Based Academic Traditions Confucian Schools

Neo-Confucian Kogaku Shintō Schools Bushidō Schools

Modern Academic Schools Kyoto School Watsuji School

Psychology and Phenomenology-based Philosophies Part ii: philosophical themes in japanese thought

 Nature 自然 (cosmologies, natural philosophy, metaphysics)

 Mind and Body 心身 (psychologies, epistemologies, philosophical anthropologies)

 The World Beyond 異界 ・ 天 (transcendence, the Gods, philosophy of religion)

 Language and Truth こと (logic, rhetoric)

 Morality and Cultivation 道・和 ・ 仁・自修・学 (ethics, harmony, social order)

 Aesthetics 美学

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る哲学資料」に関するワークショップから 着手した。2006年3月、われわれ3人の編 集者は5人の研究者を招き、シカゴ北部の 郊外の町、テクニーの会議場でワークショ ップを開いた。参加者は以下の通りである。

Peter Nosco, University of British Columbia Mary Evelyn Tucker, Yale University

John Tucker, East Carolina University, Greenville Samuel Hideo Yamashita, Pomona College Michael Marra, University of California, Los Angeles

二日半にわたってこのグループは息つく 間もない議論に釘付けとなった。その結果、

充実した選び出しを行うとともに、翻訳に 関する有益なリスト、そしてなによりも重 要だったのだが、編集者として方針が間違 っていないという確信を得ることができた。

とはいえ、儒教思想に割り当てた紙面が少 なすぎたこともまたあきらかだった。あと に続くワークショップでも確認されるだろ うが、総ページ数800という当初の目算は 非現実的であり、また2部構成としてテー マを分割することもふさわしくないと感じ 始めたのである。

第1回テクニー・ワークショップを終え るにあたり、3人の編集者は主要な思想的 伝統にはそれぞれ個別の編集者が必要だと 考えるに至った。翻訳の組織化および検証、

術語索引の準備、そして章ごとの概要の執 筆といった仕事を助けるために、そうした 個別の編集者をいずれ日本に招かざるを得 ず、その意味で基金を残しておかねばなら なかった。

1年後の2007年3月、第2回テクニー・

ワークショップが「日本思想史における科 学・哲学・宗教の交流」をテーマに開催さ れたが、その際、日本のフォウス社の後援 を受けていた三田一郎の「科学と宗教」プ ロジェクトから資金援助を得ることができ た。参加者は科学史、哲学、宗教思想の専

門家たちであった。その顔ぶれはつぎの通 りである。

Nathan Siven, University of Pennsylvania Peter Nosco, University of British Columbia Willi Vanderwalle, Katholieke Universiteit Leuven 長友繁法, Temple University

Andrew Goble, University of Oregon

松丸壽雄, 獨協大学

中山 茂, 神奈川大学

John A. Tucker, East Carolina University, Greenville Peter Nosco, University of British Columbia

われわれの目的は、科学、宗教、哲学の あいだを結ぶ古代から現代にいたる文献を 選び出すことだったが、日本ではこの3領 域の区分は明治初期になってようやく定ま ったものであるため、古い時代の文献をみ ればこの3領域は相互にきわめて近い関係 にあるように思われた。この事態はそれぞ れの学術分野へと細分化されている現代思 想とは対照的である。

結局のところ、そこで選ばれた素材は『資 料集』の構成を変えることなく加えられる ことになり、科学に関しても、現代日本の 生命倫理を扱った解釈学的論考を除いて、

独立した項目にはしないことに決まった。

大半の論者の見解では1冊にまとめるほう が日本哲学を丸ごと扱う際にはいっそうふ さわしいとされたこともあって、当初は構 想されていた第2部で扱うべき項目の決定 については慎重な意見が出された。この議 論のあとをうけて編集者間での応答が数週 間続き、テーマ全体が見直された。

6ヵ月後の4月27日から29日にかけて、

「日本仏教における哲学資料」をテーマに編 集者はテクニーに再び集った。以下のよう に、仏教の各方面における数名の専門家が 議論に参加するように招かれた。

Paul Swanson, 南山宗教文化研究所 David Gardiner, Colorado College

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Paul B. Watt, DePauw University

Dennis Lishka, University of Wisconsin, Oshkosh Mark Blum, State University of New York, Albany Mark Unno, University of Oregon

Janine Sawada, University of Iowa

どのようなものを選び出し、それをどの ように並べるかを論じるかにあたり、翻訳 と方法論の問題が幾度となく浮上した。本 文から巻末の参考資料に至るまで、漢字表 記のみならず日本語の語彙も絶対に欠くべ からざるものを除いていっさい掲載しない という編集方針をとったが、それは想像し ていたよりもずっと難しい課題であった。

文体に付せられた虚飾や翻訳者の曲解を剥 ぎ取らなければならず、さらに脚注も最小 限度にとどめなくてはならなかった。しか しながら、あくまで仏教の部門も「哲学資料」

であり、かつ予想される読者が仏教文献に ついて最低限度の知識しか持ち合わせてい ないと考える以上、実際問題としてこうし た排除についてはグループ内で同意が得ら れた。

さらに問われたのは、われわれが翻訳に

おいて目指している文章の質である。これ は出版に向けてはじめから一貫して取り組 むべき課題だった。最終的にこの書物のた めに選ばれた322の抄録のうち、三分の二 以上は初めての、あるいは新しい翻訳とな った。

仏教部門のワークショップが終了するま でに『資料集』の構成は大きく変化し、わ れわれが当初想定してよりもずっと多くの 紙面を前近代的な思想に割り当てねばなら ないことが判明した。さらに、「武士道」は 直接取り扱わず、第2部において短く触ら れるべきだという合意が仏教研究者と儒教 研究者のあいだに形成され、われわれはそ れに従うことになった。またシカゴ大学の

James Ketelaarと相談した結果、神道につい

ても十分な紙面を割くよう望まれた。

「近代講壇哲学」の挑戦もまた独自の問題 を提起していた。一部門として扱うに足る だけの規模をそなえておらず、さらに日本 的な伝統と西洋哲学からの影響が交雑して いるという問題である。第4回テクニー・

ワークショップは2008年3月に以下の6名

「日本仏教における哲学資料」、テクニー、2007 年4 月

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の研究者を加えて開催された。

中島隆博, 東京大学

遊佐道子, West Washington University

松丸壽雄, 獨協大学

Bret Davis, Loyola College, Maryland Gereon Kopf, Luther College 末木文美士, 東京大学

従来と同じく、参加者はそれぞれ検討す るための文献をあらかじめ用意しておくよ う求められ、議論では誰の何を採用すべき かが論点の中核を形成した。十分に検討を 重ねるためにまずプロジェクトを3つの視 点から編集者が概観し、その後にそれぞれ のワークショップが開かれた。カスリスが 歴史的な枠組みと「哲学資料」という概念 を説明し、マラルドは哲学の実用的定義を 求めてその根拠をあきらかにした。そして 筆者は方法論的用具、文献間相互参照、そ して翻訳にあたっての原則を述べた。そし て再度われわれは見過ごした点を突きつけ られ、読者の視点から構成を見直す必要に 迫られた。このワークショップで近代講壇 哲学の起源に関する語りを20世紀における 展開から分離すべきだったことがあきらか となった。前者は並行する中国や韓国の事 例への参照を含むべきであり、後者はひろ

く理解されているように近代哲学に日本が 独自になしえた貢献という点に絞って考察 されるべきだったのである。

フロンティア・シンポジウム

テクニー・ワークショップと並行して、

もうひとつの一連のシンポジウムが西洋の 日本哲学研究者ことに若手研究者が同世代 の日本人研究者と対話することを目的に開 かれていた。シンポジウムそのものとその 成果の出版を助けるために、可能な限り『資 料集』基金からも支援を行った。こうした 成果は南山宗教文化研究所から『日本哲学 のフロンティア』シリーズとして以下の通 り刊行されている。

1. Frontiers of Japanese Philosophy, October 2006, Humboldt-Universität, Berlin. Pub- lished 2006, ed. by James W. Heisig, 313 pages.

2. Neglected Themes and Hidden Variations, March 2007, McGill University, Montréal.

Published 2008, ed. by Victor Sōgen Hori and Melissa Anne-Marie Curley, 261 pages.

3. Origins and Possibilities, June 2008, Nanzan Institute for Religion and Culture. Pub- lished 2008, ed. by James W. Heisig and Uehara Mayuko, 304 pages.

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4. Facing the Twenty-First Century, December 2008, Hong Kong. Published 2009, ed.

by Lam Wing-keung and Cheung Ching- yuen, 304 pages.

5. Nove granice japanske filozofie, ed. by Nevad Kahteran and James W. Heisig (Sarajevo: Nanzan and Šahinpašić, 2009), 240 pages. Selections from earlier volumes in the series, aided by a grant from the Japan Foundation.

6. Confluences and Cross-Currents, June 2009, Universitat Pompeu Fabra, Barcelona.

Published 2009, ed. by Raquel Bouso and James W. Heisig, 383 pages.

7. Classical Japanese Philosophy, Tallinn Uni- versity, Estonia. Published 2010, ed. by James W. Heisig and Rein Raud, 355 pages.

上 記 の 著 作 は す べ て オ ン ラ イ ン 上 で 無 料 に て 公 開 さ れ て い る。(PDF版 は 以 下 か ら ダ ウ ン ロ ー ド で き る:http://nirc.

nanzan-u.ac.jp/publications/EJPhilosophy/

EssaysInJapanesePhil.htm)。

フロンティア・シンポジウムでは111本に のぼる発表が67人によって6年間を通じて なされたことになる。いくつかのシンポジ ウムは『資料集』のために開かれたが、そ

れはその本を日本哲学の教員と学生にとっ ていっそう有益なものとするためであった。

とりわけ南山宗教文化研究所で開催された シンポジウムでは女性哲学者を扱う際に有 益な助言を得ることができた。参加者のう ち何人かはのちに翻訳者や歴史的情報の提 供者となった。

編集作業

テクニー・ワークショップやフロンティ ア・シンポジウムが進む一方で、翻訳は数 百ページにおよび、その一行一行が語彙の 統一、相互参照、誤謬修正のため厳正な精 査を必要としていた。同時に第2部で取り 上げられるべきテーマがやっと2008年に定 まり、そこには5つの話題に関する以下の 論考が含まれることになった。

Culture and Identity, Thomas P. Kasulis Samurai Thought, Oleg Benesch

Women Philosophers, 遊佐道子および北川東子 Aesthetics, Michael Marra

Bioethics, 林 貴啓

たとえ遠く離れて住んでいてもかなりの

「日本哲学――その源泉と可能性」、南山宗教文化研究所、 2008 6

(19)

編集作業を電子技術を通じてなしうるのだ が、それにもかかわらず、2005年から2009 年にかけてマラルドとカスリスは数ヶ月を 南山宗教文化研究所で過ごした。そこには

『資料集』のために必要なすべての原典が 所蔵され、かつ所内で版下が作成されてい たからである。滞在中彼らもまた「文化と アイデンティティ」および 「近代講壇哲学」

の論考執筆へ向けた準備を行った。

先に触れたように、テクニー・ワークシ ョップを通じてわれわれは、第1部で扱わ れた主要な伝統を見通し、さらに概要を作 成するために章別の編集者によって支えら れることが必要だとの確信に達していた。

幸いわれわれは望みうる限り最上の協力者 を得ることができたが、彼らはそれぞれ4 週間から6週間にわたり南山宗教文化研究 所において編集者と密接に連携しながら、

かつ翻訳者と連絡を取りながら、数え切れ ない詳細事項を詰めていった。滞在者を以 下に記しておきたい。

John Tucker, Confucian Traditions, 2007年6月

Marcus Teeuwen, Shinto and Native Studies, 2008年11月

Mark Blum, Buddhist Traditions, 2008年1月および2009年1月 遊佐道子、 Women Philosophers,

2009年9月

彼らにとっては当然のことで知る由もな かったろうが、もし彼らの助けがなければ われわれはいまなお不慣れな海域で右往左 往していたことだろう。

2009年には名古屋の芸術家である浮邉加 奈子を紹介された。彼女は『資料集』のた めに主要人物の肖像画を描いてくれること を約束してくれた。極めてぼんやりとした 原画をしばしば相手にしながらも浮邉はペ ン画による肖像画を作成し、そのおかげで

この書を仕上げるに当たって特別な風味が 加わった。

いったんすべての素材が版下に組み込ま れ、各著者の承認がえられた後は、全編に わたる初校作業に入った。その際、カスリ スが指導する大学院生、Wamae Muriukiが 援けてはくれたものの、作業量は膨大で、

また調整しなくてはならない事項があまり に多かったため、編集者間での厳密な議論 が避けられなかった。われわれは仕事の正 確さを確保するためにも日常の雑務から離 れた場所でともに集中的な時間を過ごす必 要があった。 そのような場所はバルセロナ の北西で見つかった。La Serra de Pruitと呼 ばれる牧歌的な山荘で、2010年にそこで1 週間を過ごすことにした。シカゴのローチ 財団がそのために必要な費用を提供してく れた。また南山宗教文化研究所編集助手の デーヴィッド・ホワイトは校正に関する専 門知識をもってながらくわれわれの意向に 沿う形で協力してくれた。

われわれがスペインに到着するまでに書 物はほぼ出来上がっており、細かな点で特 に急がない技巧的な事項が残されているだ けだと思い込んでいた。しかし、一日12時 間働く一週間がいかに貴重であるかがほと んどわかっていなかったのだ。時間がたつ たびにわれわれの注意力をすりぬけていた 不統合が表面化してきたのである。用語集 と索引をいかに構成するかを夕食後も議論 するなかで、「テーマ」の問題が再び浮き上 がってきた。全編を網羅した用語集に登場 する術語を文書のなかでマークしただけで は不十分であった。当初のテーマはABC 順に要旨を述べるような索引を超えて、よ り組織的に取り上げられなければならなか った。

最終的に、より進んだ理解にいたるテー

(20)

マ別の索引が必要だということで同意した。

つまり『資料集』の全内容が支配的な西洋 哲学の範疇よりもむしろ日本哲学原産の概 念を導くように組み立てられていると思わ せる索引が必要だった。テーマ別索引のだ いたいの枠組みは作られたが、カスリスが 詳細を詰めるため11月に南山に戻ってきて 初めてこの索引は最終的な形をあらわにし た。

カタロニアで1週間を過ごしたが、その あいだにLa Serra de Pruitの管理人である Jordi SerchとElisabet Iba ñezはまるで王様に 仕えるようにわれわれに給仕してくれ、ま た邪魔者が入らない贅沢な環境で働くこと ができるように、およそ想像することすら できなかったまでにすばらしい空間と自由 を提供してくれた。どこに目を向けようと ただひたすら畑と山があるだけだった。夏 の暑さをしのぐにたる高地に位置し、沈黙 に漂うのはただ羊の鳴き声のみ。それまで、

そしてそれ以降も体験したことがない色彩 の鮮やかさのなかにわれわれは紛れ込んだ のだった。

そこではごくわずかの点で章別編集者の 助けを得るためにインターネットに接続し た以外は、ただひたすら、原典にあたって こそはじめて解決できるような多くの問題 と取り組んだ。われわれの共同作業はきわ

めて手際の良いものであったた め、多くの点で記憶は常に新し く、頻繁に立ち止まって次回の 参照に備えた記録を作るような 無駄を省くことができた。同時 に、1,300ページを超えるテキス トを整然と読み進め、かつ互い の仕事をチェックするというこ とは、後回しになる仕事が多く なることを意味した。日一日と だらだらと続くにつれて、やる べき仕事の膨大さをなんと過小評価してい たことかと、われわれは互いに幾度となく 苦笑しなくてはならなかった。

4日目にわれわれは直線距離で6キロ、

自動車で1時間の距離にあるTavertetという 小さな町で昼食をとった。じつはこの遠出 には筆者の個人的な理由があった。古い友 人で、カタロニアの哲学者にして神学者で あるライモン・パニカルに別れを告げるた めである。去る1月に彼はあらゆる公の生 活から隠退する旨を書き送っていた。20年

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以上にわたって自宅で定期的に訪問客と面 会してきたが、文面はそれがもはや無理と なったことを意味していた。90歳になって 健康を損ねたため、そう決断せざるをえな かったのである。それでもなお彼はわれわ れを受け入れてくれ、生涯をかけて愛した 膨大な書籍に囲まれた書斎で忘れがたい半 時間を過ごさせてくれた。パニカルは筆者

が思い出せるその姿とは異なりいっそう静 かに、かつ遠い存在となっていたが、しか しマラルドを思い出すのに時間はかからな かった。二人は10年前にオックスフォード で開かれたある学会でほんのわずかだが面 識を得ていたのである。パニカルはいつも どおりカタロニア語と英語を混ぜ合わせな がら話したが、それは不思議と超然とした 語り口だった。筆者がバルセロナの知人か ら預かってきた挨拶をパニカルに告げると、

彼は静かに応えた。「あらゆる人が、そして あらゆるものが今のわたしには同じ人であ り同じものなのです」と。

筆者は彼の額に口付けしたが、それが最 後になるとわかっていた。そして実際そう なった。2週間後にパニカルは亡くなった。

筆者にとってこの最後の訪問は『資料集』

の営みにおけるたんなる間奏ではなかった。

パニカルは筆者がバルセロナで研究休暇を 過ごしていたときに執筆した著作Fi lósofos

de la nadaに紹介文を書いてくれたし、「哲

学」は知へ向かう知的困難を伴ったただひ とつの道だという彼の確信をめぐって筆者 としばしば議論した仲でもあった。彼は生

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涯にわたって情熱的に東洋がもつ 豊かさへ向けて道を開こうとし た。並外れた数に至る著作と彼の 抗しがたい人格的魅力によって他 人のなかに呼び起された情熱とも なった。ともに強く関心を抱くこ とがらについて夜遅くまで話し合 うなかでいったい何本のワインを 空にしたことか、どれだけ多くの 時間を過ごしたことだろう。こう いった思い出に満ちたCan Feloと いう山あいの屋敷に協力者を連れ

てくることができて、筆者は大いに誇らし いし、また満足している。

JordiとElisabetに別れを告げた後、われ われはバルセロナに戻り、そこでVictoria CirlotおよびAmador Vegaと食事をともにし た。彼らとは京都大学の上田閑照による講 義を含む日本哲学関係の公開講座を企画し たときにしばしばともに働いた仲であった。

われわれはスペインでのヘルダー社編集長 を務めるRaimund Herderと食事をともにし たこともあったが、そのときスペイン語版

『資料集』の話を持ち出してみたところ、彼 は大いに関心を示し、ただちにすらすらと 協力が期待できる 人々の名前を書き 出した。

数ヵ月後にサン トリー文化財団か らハワイ大学出版 部に出版助成とし て,00ド ル が 支 給されるという知 らせが届いた。

今になってみれば、かくも大勢の翻訳者 とともに働き、また彼らの主義や個性をわ れわれのそれと整合させるという営みは、

想像していたほど骨の折れることではなか った。もちろん意見の違いは数多く、また 妥協に迫られるのも毎度のことだった。小 競り合いにはたしかに苦労させられたが、

世界中で日本哲学を学ぶ学生と研究者の共 同体から得られた支持と協力に匹敵するほ どのものではなかった。実際、『資料集』プ ロジェクトはこのような共同体の基盤を押 し広げ、さらに日本および西洋で若い研究 者と経験をつんだ研究者のあいだにいっそ うの交わりをもたらすことをわれわれは確 信している。

もちろん『資料集』はその功罪に向けて 投げかけられる批判的評価から逃げ出して はならないであろう。しかし長年にわたる 準備のあと出版に至ったこの歩みは、いま や豊かな実りの秋を迎えたのである。

* 文中の人名には敬称を略しました。

じぇーむず・はいじっく 南山宗教文化研究所第一種研究所員

(翻訳:寺尾寿芳)

Japanese Philosophy: A Sourcebook,

ed. by James W. Heisig, Thomas P. Kasulis, and John C. Maraldo.

Honolulu: University of Hawai‘i Press, 2011. 1,360 pages.

(23)

本報告の目的は、Asian Ethnology発足の 2008年 か ら2011年 ま で の、3年 間 の 進 行 と発展を明確にすることに加えて、Asian

Ethnologyの将来の発展に向けた課題を論じ

ることである。

Asian Ethnologyの人的ネットワークの拡大

Asian Ethnologyの今後の発展を進めるよ

うに、ジャーナルに貢献できる学外と学内 の人的ネットワークを拡大する必要がある。

Asian Ethnologyというタイトルの発足後、

国際編集委員会のメンバーが一人増加した。

光栄なことに、米国のバクネル大学の准教 授カラリン・デイヴィス先生 (Coralynn V.

Davis; 人類学、ジェンダー学) が、2012年 まで委員を務めることになった。なお、ジ ャーナルのポリシーとして、国際編集委員 会員の任期は5年間となっているが、その 後の更新も可能である。学内の人的ネット ワークは、ロバート・クロッカー先生(Robert Croker; 総合政策学部教授)、ロジェ・ヴァ ンジラ・ムンシ先生(Roger Vanzila Munsi;

外国語学部講師・人類学研究所第二種研究 員)とアンドレアス・リースラント先生

(Andreas Riessland; 外国語学部准教授・人 類学研究所第二種研究員)である。今後とも、

国際と国内のネットワーク、本学のネット

ワークを拡大する予定である。

国際編集委員会議

米国で行われているアジア学学会年次学 術大会において、2009年から国際編集委員 会議を行ってきた(2009年はシカゴ、2010 年はフィラデルフィア、2011年はホノルル)。

ジャーナルの方向性、査読の進め方、発音 区別符号の基準などの話題を討論している。

貴重な会議なので、これからも、毎年続け る予定である。

特集号

Asian Ethnology は随時、テーマに基づい

た特集号を組んで出版している。アメリカ 自然史博物館に所属しているロレル・ケン ダル先生(Laurel Kendall)特別編集長の元 で、「ベトナムにおける儀礼」をテーマとし て、一つの特集号を2008年に出版した。次 の2009年に、イギリスのランカスター大 学に所属している川並宏子先生 (Kawanami Hiroko) とフランスにあるCentre Asie du

Sud-Est (東南アジア学術センター)のベネ

ディクト・ブラク・ドゥラ・ペリエール先 生 (Bénédicte Brac de la Perrière)の元で、「ビ ルマにおける宗教のあり方」をテーマとし

Asian Ethnology に関する報告

B・ドーマン

Benjamin Dorman

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