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平成 30 年度 学内研究助成金 研究報告書

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Academic year: 2022

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平成 30 年度 学内研究助成金 研究報告書

研 究 種 目

■奨 励 研 究 助 成 金 □研究成果刊行助成金

□21世紀研究開発奨励金   (共同研究助成金)

□21世紀教育開発奨励金   (教育推進研究助成金)

研 究 課 題 名 雌由来骨芽細胞より同定した遺伝子が骨粗鬆症発症に寄与するか否かの検 討

研究者所属・氏名 研究代表者: 医学部 再生機能医学教室・石田 昌義 共同研究者:

1.研究目的・内容

骨粗鬆症の病態には顕著な性差がみられるが、性ホルモンの骨粗鬆症への治療効果が限定的であるこ とと我々の研究により糖尿病モデルマウスにおける骨粗鬆症発症には顕著な性差所見を認め、骨芽細 胞や破骨細胞自身の何らかの特異的な因子やシグナル系に性差が存在することが示唆された。本研究 課題の目的は、骨粗鬆症病態の性差に関与する因子・シグナルを雌雄それぞれ由来の骨芽細胞から探 索・同定することである。

2.研究経過及び成果

(1)骨芽細胞の性差を決める因子の同定 

骨粗鬆症には性差が存在することはよく知られてお りエストロゲンやアンドロゲンは骨代謝に類似した作 用を及ぼすため、性ホルモンが関与することが考えら れている。閉経後骨粗鬆症での女性ホルモン補充療法 の治療効果は、ビスホスホネートと比較すると限定的 であることからステロイドや糖尿病に関連した骨粗鬆 症の重症度にも性差が報告されており、骨代謝におけ る性差には、性ホルモンのみでは、説明できないこと から、細胞レベルで雌雄差が存在する可能性に着目し 雌雄由来骨芽細胞の DNA マイクロアレイによる網羅 的遺伝子発現解析を行って、骨芽細胞における性差を 規定する遺伝子探索を行った。

網羅的遺伝子発現解析によって、雌で雄より発現量

が一番高い遺伝子としてSerpina3n(28.9倍)を見出した。マウスではSerpina3nは性染色体上 にはなく12番染色体上に存在し、Serine protease inhibitor family に属す新しいセリンプロテアー ゼインヒビターでありヒトとマウスで77%の相同性をもつ。Granzyme Bなどのセリンプロテアー ゼを阻害し、抗炎症作用や皮膚損傷モデルで修復治癒に関与することや筋肉分解を抑制することが報 告されているが、骨組織における生理作用や機能は未知のままである。

まず、マウス初代骨芽細胞にsiRNAに て内因性Serpina3n発現を抑制したとこ ろ雄、雌でも骨芽細胞マーカー(Runx2, Osterix, ALP, オステオカルシン)の発現 は上昇した。骨芽細胞株MC3T3-E1細胞 にSerpina3nを過剰発現させると、骨芽 細胞マーカー(Runx2, Osterix, ALP, オ ステオカルシン)の発現は減少した(図 1)。

オス メス

骨芽細胞(骨の素にな る細胞)を単離培養

メスの骨芽細胞に骨を作りにくくする遺伝子を発見!

メスに特異的な遺伝 子を見つける。

全既知遺伝子:

22,206 個のうちから メスに多い候補を探 す。

(2)

さらに骨芽細胞分化に与える Serpina3n の影響を検討する ため、間葉系幹細胞株ST2細胞にSerpina3nを過剰発現させ、

BMP2存在下で骨芽細胞分化を誘導したところ、骨芽細胞マー カー(Runx2, Osterix, ALP, オステオカルシン)の発現は減 少し、さらに石灰化まで誘導を行うと石灰化に必須な遺伝子

(ANK, ENPP-1, DMP-1)と骨細胞マーカーの一つであるス クレオスチン(SOST)の発現はSerpina3nにより減少させ、

石灰化も抑制した(図2)。

軟骨分化における Serpina3n 発現の影響を検討するため、

軟骨芽細胞株ATDC5細胞にSerpina3n安定発現株を樹立し、

軟骨分化誘導培地により軟骨細胞分化を誘導させたが、軟骨細 胞分化には Serpina3n は影響を与えないことが示唆された。

脂肪分化におけるSerpina3n発現の影響を検討するため、脂肪前駆細胞株3T3-L1細胞と間葉系幹細 胞株ST2細胞にSerpina3nを一過性発現させ脂肪分化を誘導させたがSerpina3n発現は脂肪分化に は影響を与えないことが示唆された。

さらに破骨細胞分化におけるSerpina3n発現の影響を検討するため、単球系細胞株Raw264.7細胞 にSerpina3n安定発現細胞株を樹立しRANKL刺激による破骨細胞分化に与える影響を検討したとこ ろ、破骨細胞分化にはSerpina3nは影響しないことが示唆された。初代マウス骨芽細胞においては雌 雄ともにsiRNAで内因性Serpina3n発現抑制はRANKL、オステオプロテグリン(OPG)ともに発 現を上昇させたが、破骨細胞分化の指標であるRANKL/OPG比はともに有意差はなかった。

以上より、雌骨芽細胞ではSerpina3nが雄骨芽細胞よりも発現量が高く、骨芽細胞において骨芽細胞 分化と成熟を抑制している可能性が示唆され、Serpina3nを例えば中和抗体やsiRNAなどで抑制させ れば女性における骨粗鬆発症予防につながる成果である。

3.本研究と関連した今後の研究計画

①  卵巣摘出による閉経後骨粗鬆症モデルによりインビボにおけるSerpina3nの骨への影響を確 かめたい。

②  肥満や2型糖尿病が進行すると、悪玉アディポサイトカインの一つであるPAI-1が産生分泌 される。このPAI-1の作用は、これまでの研究によれば雌マウスの骨においてのみ悪玉に作用す る機序を明らかにしたい。

雌由来骨芽細胞におけるPAI-1 への応答時における網羅的遺伝子発現解析により、RanBP3L を 見出した。RanBP3L は過去に骨分化に関する作用として1報だけ報告がある。未分化間葉系幹 細胞株にこの遺伝子を人為的に強発現させると骨芽細胞分化が抑制されるというものである。し たがって、本実験条件でもPAI-1を雌由来骨芽細胞に作用させるときに各骨芽細胞マーカーの発 現抑制がみられるのもおそらくこのRanBP3L 発現が誘導されて骨分化を抑制しているのかもし れない。そこで、RanBP3L に対するsiRNAを雌由来骨芽細胞に導入したのちPAI-1を添加す ると骨芽細胞分化抑制が解除されるかどうかをまず確認したい。続いて機序の解明は RanBP3L の発現機序を中心に明らかにしていく予定である(論文投稿準備中)。

4.成果の発表等

発  表  機  関  名 種類(著書・雑誌・口頭) 発表年月日(予定を含む)

Endocrinology. 雑誌 2018年11月1日

日本骨代謝学会 口頭 2018年7月27日 第9回アジア・オセアニア生理学会連

合2019年大会 ポスター 2019年3月29日

参照

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