100 101 102 10-2
100 102 104
Frequency[Hz]
Pressure [Pa]
FFT1 : Ave.10, Overlap.0% FFT2 : Ave.12, Overlap.10% FFT1
FFT2 DF(linear) DF(band)
図2 FFT結果と時間‐周波数分析結果の比較例
Frequency[Hz]
Position[m]
200 400 600 800 1000
101 102
図3 トンネル内の位置による発破音周波数特性
10
210
310
40
0.2 0.4 0.6 0.8
1 4<freq<31.5
Distance [m]
Distance Decay
10
210
310
40
0.2 0.4 0.6 0.8
1 31.5<=freq<80
Distance [m]
Distance Decay
図4 距離減衰の実測値
黒線:実測結果,赤線:従来予測,青線:本報予測
またFFTは周波数の抽出精度はよいものの値は過小に評 価される.一方,DFは値を正しく評価できるが,周波 数に幅を有した結果となる.したがって,図2の通り,
FFTは値を過小評価している.DFのバンド周波数処理 結果はバンド内での和のため,リニア結果より大きな値 となる.
2.3 発破音の距離減衰検討
次に,トンネル内(全長約1100m)の6点で測定した 音圧データを図1のようにDF処理し,各周波数での平
均値(積分値と等価)を算出し,横軸を発破からの距離, 縦軸を周波数とした結果を図3に示す.これより各周波 数の音圧の距離減衰を把握することができる.4Hz成分 が代表するように,概ね25Hz以下の音圧は距離減衰が ないこと,25Hz以上では減衰が顕著であることが可視化 され,把握できる.
3.距離減衰の周波数特性の評価
図3から周波数毎に,音圧を発破位置からの距離に関 する指数関数で近似し,周波数毎の距離減衰式を導出し た.文献(8)の統計分析に基づく式と比較した結果の一例 を図4に示す.本研究で導出した結果(青線)は,統計 分析に基づく結果(赤線)より実測結果(黒線)に近く, DFを用いた分析による有効性が確認できる.
4.お わ り に
本報告では,時間-周波数分析技術を用いて,トンネ ル発破音の分析および距離減衰の評価について紹介した. 更なる高精度化などと共に,本分析技術の活用範囲を拡 大していく.
参考文献
(1) 伊東圭昌,山口尚人,山崎徹,“デジタルフィルタによる時 間−周波数分析を用いた振動解析に関する基礎的検討”,日本 機械学会論文集C編,79巻801号,pp.1633-1646,2013-5 (2) Y.Itoh, T.Imazu, H.Nakamura, T.Yamazaki, “TIME-FREQUENCY
ANALYSIS WITH DIGITAL FILTER FOR NONLINEAR SYSTEM CHARACTERIZATION IN MECHANICAL VIBRATIONS”, Proc. of The 22th International Congress on Sound and Vibration, 1009, 2015-7
(3) 伊東圭昌,山崎徹,永井基,藤井智恵子,デジタルフィルタ を用いた時間-周波数分析による心電波形の可視化,可視化 情報,Vol.35,No.2,可視化情報全国講演会(京都2015)講 演論文集,pp.223-224,2015-10
(4) 伊東圭昌,今津卓,中村弘毅,山崎徹,〝ヴァイオリンの駒 構造から学ぶ機械の静穏化技術の開発“,日本機械学会 [No.15-7] Dynamics and Design Conference 2015 USB論文集, 529.pdf,2015-8
(5) 山崎徹,日吉宏和,永井祐輝,石田滋樹,ディジタルフィル タ処理によるトンネル発破音の距離減衰の考察,土木学会中 国支部第67回研究発表概要集,I-4,1004.pdf,pp.7-8,2015-5 (6) 石田滋樹,山崎徹,統計的エネルギー解析法によるトンネル
防音扉の効果予測に関する考察,土木学会第70回年次学術 講演会講演概要集,6-458.pdf,2015-9
(7) 船津弘一郎,内山恒光:トンネル発破特性と予測,日本騒音 制御工学会技術発表会講演論文集, 1-2-1, pp.57-60, 1987. (8) 石田滋樹,柿木寛也,進士正人:トンネル坑内における発破
音の音圧スペクトルレベル予測式の提案,土木学会論文集. F1, トンネル工学 Vol.67, No.3, pp.81-86, 2011
0 2 4 6 8 10
-1 0 1x 104
Pressure [Pa]
Time [s]
Frequency [Hz]
0 2 4 6 8
101 102
図1 測定音圧データとDF結果例
時間-周波数分析を用いたトンネル発破音の分析
山崎 徹
*中村 弘毅
**伊東 圭昌
***田中 俊光
***Analysis of Tunnel Blasting Sound by using Time-Frequency Analysis
Toru YAMAZAKI
*Hiroki NAKAMURA
**Yoshiaki ITOH
***Toshimitsu TANAKA
***1.プロジェクト研究の概要
各種の振動現象の把握のためには,測定を行い,測定 データを周波数分析することが多い.周波数分析技術と して,FFT(高速フーリエ変換)が主として用いられる.
しかしFFTは時間平均結果となるため,特に衝撃的な現 象などの分析には注意が必要である.瞬時的な現象の分 析には,ウェブレット解析やフィルタ処理技術か有効で あり,著者らはディジタルフィルタを用いた三次元周波 数分析(時間-周波数分析)手法(1)を開発し,それに基 づく振動モデル化法の開発(2),疾病診断のための心電波 形分析(3),ヴァイオリンの分析(4)などへの応用について検 討を行っている.
そこで本報告では,別途の研究(5)で明らかにしたトン ネル発破音の伝搬特性(距離減衰)の把握および予測に 活用した事例を紹介する.
2.トンネル発破音の時間‐周波数分析
これまでにトンネル発破音解析に統計的エネルギー解 析法(SEA)を適用し,その実用性を確認してきた(6). 一方,SEAの入力データに発破音の周波数毎の音圧レベ ルの予測が必要となり,オーバーオール値を予測する船 津らの式(7)は使用できない.そのため,発破空間内の測 定音圧をFFT処理したレベルを対象に,距離減衰の周波 数特性を統計分析し,周波数バンド毎の発破音圧レベル 予測式が提案されている(8).しかし,FFTは過渡振動の 解析には必ずしも適さず,各種の時間‐周波数分析の使 用が適している.そのため,発破音の時間‐周波数分析 を実施し,効率的かつ低騒音を実現する発破方式の開発
*教授 機械工学科
Professor, Dept. of Mechanical Engineering
**助教 機械工学科
Assistant Professor, Dept. of Mechanical Engineering
***客員教授 工学研究所
Guest Professor, Research Institute for Engineering
を最終目標に研究を行っている.ここでは,発破音の分 析結果から距離減衰の周波数特性を評価し,発破音圧レ ベル式を導出し,文献(8)の統計分析に基づく式と比較考 察したことを示す.
2.1 発破音の時間‐周波数分析
図1に,発破音(15段発,0.25秒間隔)の音圧データ を時間‐周波数分析(以下,DFと称す)を行った結果 例を示す.上図の時刻歴波形より発破は1秒で開始され ている.下図の分析結果では,周波数成分が時々刻々と 変化する状況を観察できる.なお,10Hz以下に発破の1 秒以前にフィルタ誤差の影響がみられる.また,10Hz 以下で音圧が大きく,発破間隔に起因する4Hz成分が支 配的であり,その周波数での時間による音圧の低減(減 衰)が小さいこと,50Hz以上の成分がほとんどないこと など興味深い.
2.2 FFTと時間-周波数分析の結果の比較
図2には,FFTとDFの比較の一例を示す.FFTはラ イン数に応じた時間平均結果と,オーバラップやゼロ足 しなどの処理によって得られる結果は異なってくる.一 方,DFはフィルタ誤差があるものの一意の結果となる.
148
神奈川大工学研究所 所報第39号.indd 148 2016/12/20 10:04:29
100 101 102 10-2
100 102 104
Frequency[Hz]
Pressure [Pa]
FFT1 : Ave.10, Overlap.0%
FFT2 : Ave.12, Overlap.10%
FFT1 FFT2 DF(linear) DF(band)
図2 FFT結果と時間‐周波数分析結果の比較例
Frequency[Hz]
Position[m]
200 400 600 800 1000
101 102
図3 トンネル内の位置による発破音周波数特性
10
210
310
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0.2 0.4 0.6 0.8
1 4<freq<31.5
Distance [m]
Distance Decay
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210
310
40
0.2 0.4 0.6 0.8
1 31.5<=freq<80
Distance [m]
Distance Decay
図4 距離減衰の実測値
黒線:実測結果,赤線:従来予測,青線:本報予測
またFFTは周波数の抽出精度はよいものの値は過小に評 価される.一方,DF は値を正しく評価できるが,周波 数に幅を有した結果となる.したがって,図2の通り,
FFTは値を過小評価している.DFのバンド周波数処理 結果はバンド内での和のため,リニア結果より大きな値 となる.
2.3 発破音の距離減衰検討
次に,トンネル内(全長約1100m)の6点で測定した 音圧データを図1のようにDF処理し,各周波数での平
均値(積分値と等価)を算出し,横軸を発破からの距離,
縦軸を周波数とした結果を図3に示す.これより各周波 数の音圧の距離減衰を把握することができる.4Hz成分 が代表するように,概ね25Hz以下の音圧は距離減衰が ないこと,25Hz以上では減衰が顕著であることが可視化 され,把握できる.
3.距離減衰の周波数特性の評価
図3から周波数毎に,音圧を発破位置からの距離に関 する指数関数で近似し,周波数毎の距離減衰式を導出し た.文献(8)の統計分析に基づく式と比較した結果の一例 を図4に示す.本研究で導出した結果(青線)は,統計 分析に基づく結果(赤線)より実測結果(黒線)に近く,
DFを用いた分析による有効性が確認できる.
4.お わ り に
本報告では,時間-周波数分析技術を用いて,トンネ ル発破音の分析および距離減衰の評価について紹介した.
更なる高精度化などと共に,本分析技術の活用範囲を拡 大していく.
参考文献
(1) 伊東圭昌,山口尚人,山崎徹,“デジタルフィルタによる時 間−周波数分析を用いた振動解析に関する基礎的検討”,日本 機械学会論文集C編,79巻801号,pp.1633-1646,2013-5 (2) Y.Itoh, T.Imazu, H.Nakamura, T.Yamazaki, “TIME-FREQUENCY
ANALYSIS WITH DIGITAL FILTER FOR NONLINEAR SYSTEM CHARACTERIZATION IN MECHANICAL VIBRATIONS”, Proc. of The 22th International Congress on Sound and Vibration, 1009, 2015-7
(3) 伊東圭昌,山崎徹,永井基,藤井智恵子,デジタルフィルタ を用いた時間-周波数分析による心電波形の可視化,可視化 情報,Vol.35,No.2,可視化情報全国講演会(京都2015)講 演論文集,pp.223-224,2015-10
(4) 伊東圭昌,今津卓,中村弘毅,山崎徹,〝ヴァイオリンの駒 構造から学ぶ機械の静穏化技術の開発“,日本機械学会 [No.15-7] Dynamics and Design Conference 2015 USB論文集,
529.pdf,2015-8
(5) 山崎徹,日吉宏和,永井祐輝,石田滋樹,ディジタルフィル タ処理によるトンネル発破音の距離減衰の考察,土木学会中 国支部第67回研究発表概要集,I-4,1004.pdf,pp.7-8,2015-5 (6) 石田滋樹,山崎徹,統計的エネルギー解析法によるトンネル 防音扉の効果予測に関する考察,土木学会第70回年次学術 講演会講演概要集,6-458.pdf,2015-9
(7) 船津弘一郎,内山恒光:トンネル発破特性と予測,日本騒音 制御工学会技術発表会講演論文集, 1-2-1, pp.57-60, 1987.
(8) 石田滋樹,柿木寛也,進士正人:トンネル坑内における発破 音の音圧スペクトルレベル予測式の提案,土木学会論文集. F1, トンネル工学 Vol.67, No.3, pp.81-86, 2011
0 2 4 6 8 10
-1 0 1x 104
Pressure [Pa]
Time [s]
Frequency [Hz]
0 2 4 6 8
101 102
図1 測定音圧データとDF結果例
時間-周波数分析を用いたトンネル発破音の分析
山崎 徹
*中村 弘毅
**伊東 圭昌
***田中 俊光
***Analysis of Tunnel Blasting Sound by using Time-Frequency Analysis
Toru YAMAZAKI
*Hiroki NAKAMURA
**Yoshiaki ITOH
***Toshimitsu TANAKA
***1.プロジェクト研究の概要
各種の振動現象の把握のためには,測定を行い,測定 データを周波数分析することが多い.周波数分析技術と して,FFT(高速フーリエ変換)が主として用いられる.
しかしFFTは時間平均結果となるため,特に衝撃的な現 象などの分析には注意が必要である.瞬時的な現象の分 析には,ウェブレット解析やフィルタ処理技術か有効で あり,著者らはディジタルフィルタを用いた三次元周波 数分析(時間-周波数分析)手法(1)を開発し,それに基 づく振動モデル化法の開発(2),疾病診断のための心電波 形分析(3),ヴァイオリンの分析(4)などへの応用について検 討を行っている.
そこで本報告では,別途の研究(5)で明らかにしたトン ネル発破音の伝搬特性(距離減衰)の把握および予測に 活用した事例を紹介する.
2.トンネル発破音の時間‐周波数分析
これまでにトンネル発破音解析に統計的エネルギー解 析法(SEA)を適用し,その実用性を確認してきた(6). 一方,SEAの入力データに発破音の周波数毎の音圧レベ ルの予測が必要となり,オーバーオール値を予測する船 津らの式(7)は使用できない.そのため,発破空間内の測 定音圧をFFT処理したレベルを対象に,距離減衰の周波 数特性を統計分析し,周波数バンド毎の発破音圧レベル 予測式が提案されている(8).しかし,FFTは過渡振動の 解析には必ずしも適さず,各種の時間‐周波数分析の使 用が適している.そのため,発破音の時間‐周波数分析 を実施し,効率的かつ低騒音を実現する発破方式の開発
*教授 機械工学科
Professor, Dept. of Mechanical Engineering
**助教 機械工学科
Assistant Professor, Dept. of Mechanical Engineering
***客員教授 工学研究所
Guest Professor, Research Institute for Engineering
を最終目標に研究を行っている.ここでは,発破音の分 析結果から距離減衰の周波数特性を評価し,発破音圧レ ベル式を導出し,文献(8)の統計分析に基づく式と比較考 察したことを示す.
2.1 発破音の時間‐周波数分析
図1に,発破音(15段発,0.25秒間隔)の音圧データ を時間‐周波数分析(以下,DFと称す)を行った結果 例を示す.上図の時刻歴波形より発破は1秒で開始され ている.下図の分析結果では,周波数成分が時々刻々と 変化する状況を観察できる.なお,10Hz以下に発破の1 秒以前にフィルタ誤差の影響がみられる.また,10Hz 以下で音圧が大きく,発破間隔に起因する4Hz成分が支 配的であり,その周波数での時間による音圧の低減(減 衰)が小さいこと,50Hz以上の成分がほとんどないこと など興味深い.
2.2 FFTと時間-周波数分析の結果の比較
図2には,FFTとDFの比較の一例を示す.FFTはラ イン数に応じた時間平均結果と,オーバラップやゼロ足 しなどの処理によって得られる結果は異なってくる.一 方,DFはフィルタ誤差があるものの一意の結果となる.
149 時間 - 周波数分析を用いたトンネル発破音の分析
神奈川大工学研究所 所報第39号.indd 149 2016/12/20 10:04:32