ヒト白血病T細胞を特異的に破壊するパラスポリン-4をコードする 新規 Bacillus thuringiensis に関する研究
齋藤 浩之
*1奥村 史朗
*1石川 智之
*1赤尾 哲之
*1水城 英一
*1大庭 道夫
*2Investigation of a Novel Bacillus thuringiensis Gene Encoding a Parasporal Protein, Parasporin-4, That Preferentially Kills Human Leukemic T Cells
Hiroyuki Saitoh, Shiro Okumura, Tomoyuki Ishikawa, Tetsuyuki Akao, Eiichi Mizuki and Michio Ohba
白血病細胞を破壊するタンパク質(パラスポリン-4と命名)の新規遺伝子が Bacillus thuringiensis A1470からク ローニングされた。遺伝子配列から推定されたパラスポリン-4のアミノ酸配列は既知 B. thuringiensis タンパク 質と30%以下の低い相同性しか示さなかった。細胞破壊活性に関してパラスポリン-4はヒト白血病細胞(MOLT-4)に は強く,正常T細胞には弱い活性を示したが,ヒト子宮ガン細胞(HeLa)には活性を示さなかった。
1 はじめに
Bacillus thuringiensis (BT)は農業害虫や衛生害虫 に対して殺虫活性を有するタンパク質を産生すること でよく知られている。しかし,近年,非殺虫性のBT株 が産生するタンパク質の中から,ヒトのガン細胞を特 異的に破壊するタンパク質(パラスポリン)が見出され ている。本研究ではBT A1470から今までに発見された ものとは異なる新規パラスポリンの遺伝子をクローニ ング,その解析を行ったので報告する。
2 研究内容
BT A1470からヒトのガン細胞を特異的に破壊するタ ンパク質の遺伝子のクローニングに成功した。その塩 基配列を決定し,データベースで比較したところ、既 知BT由来殺虫タンパク質やパラスポリンと30%以下の 相同性しかない新規性の高い遺伝子であることがわか り,そのタンパク質をパラスポリン-4と命名した。こ の遺伝子を大腸菌で発現させた組み換えタンパク質の ガン 細 胞破 壊 活性 を 測定 し た結 果,ヒ ト 白血 病 細胞 (MOLT-4)に対して強い活性(EC
50=0.472μg/ml)を示 し,正常T細胞(T cell)にはその4倍弱い活性を示した が,ヒト子宮ガン細胞(HeLa)には活性を示さなかった
(図1)。 また ,組み換 えタ ンパク質 は親 株であるBT A1470由来のものより細胞破壊活性が低かった(図1)。
このことからBT A1470がガン破壊活性を有するタンパ ク質を複数産生していることが推察された。
3 まとめ
BT A1470から新規性が高いパラスポリン遺伝子のク ローニングに成功した。その遺伝子を大腸菌で発現さ せることに成功し,その活性を確認した。
図1 各種ガン細胞に対する用量―反応曲線
●;組み換えタンパク質
□;BT A1470由来タンパク質
4 掲載論文
Biosci. Biotechnol. Biochem., Vol.70(No.12), pp.2935-2941(2006)
*1 生物食品研究所
*2 九州大学大学院農学研究科