付着面の異なる UFC 埋設型枠 RC 床版の疲労耐久性
日大生産工(院) ○新山 祐樹 日大生産工 阿部 忠・木田 哲量 太平洋セメント(株) 田中敏嗣
1. はじめに
近年、建設事業費の縮減により、鋼道路橋の構 造および施工の合理化、省力化が求められている。
既に、鋼桁橋梁は多数主桁構造から少数主桁構造 へと移行されており、これに対応するための長支 間・高耐久性を有する床版構造が求められている。
これらのことから各研究機関や企業では、床版の 長支間化に対応できる新床版の開発が行われてい る 。 一方、RC 1) 部材の施工における場所打ちコ ンクリート型枠の取外しの工程を省略し、施工の 合理化・省力化、さらには型枠合板の使用を低減 することにより森林資源の保護や産業廃棄物を減 少させるなどの環境保全効果にも期待できる超高 強度繊維補強コンクリート(UFC)で製作した埋設型 枠(以下、UFC 埋設型枠)工法が提案されている。
この工法を、道路橋 RC 床版に適用させるために、
UFC 埋設型枠を RC 床版の引張鉄筋かぶり内に合 成させた RC 床版(以下、UFC 埋設型枠 RC 床版)が 提案されている 。本研究では、通常型枠を用いて 2) 製作した RC 床版供試体と RC 床版の引張側鉄筋の かぶり内に UFC 埋設型枠を配置し合成させた RC 床版供試体の 3 タイプの RC 床版を用いて、輪荷 重走行による疲労実験を行い、疲労耐久性を評価 した。また、UFC 埋設型枠 RC 床版合成構造の実 用性を評価するために、2 タイプの付着面形状を提 案し、付着面形状の違いが疲労耐久性に及ぼす影 響についても検証した。
2. UFC埋設型枠の特徴および供試体の使用材料 2.1 UFC埋設型枠の特徴
UFC 埋設型枠は、20~30mm 程度の薄肉であるた め製作が容易である。また、高強度で極めて緻密 な硬化体構造であるために、腐食性因子による浸 透を遮断し、さらには耐衝撃性に優れ、凍結によ る表面の劣化が進行しないなどの特徴がある。RC 床版との界面の構造は、UFC 埋設型枠に凹凸を設 けることにより、RC 床版と一体性が図られ、合成 構造の有効断面として考慮することが可能である。
2.2 使用材料および配合 (1) RC床版
RC 床版のコンクリートには、普通ポルトランド
セメントと 5mm 以下の砕砂および 5~20mm の砕石 を使用した。また、鉄筋は SD295A、D10 を使用し た。ここで、コンクリートの配合を表-1、コンク リートと鉄筋の材料特性値を表-2に示す。
(2) UFC埋設型枠
UFC 埋設型枠の使用材料は、水(W)、ポリカル ボン酸系の高性能減水剤(SP)、プレミックス材料 (DP、密度 2.85g/cm
3)および鋼繊維(FM、密度 7.85 g/cm
3)とした。鋼繊維は、直径 0.2mm、長さ 15mm を体積比で 2.0%使用した。プレミックス材料は、
反応性微粉末、セメント、シリカフュームなどが 最密充填されるように配合されており、骨材は粗 骨材を用いず、最大粒径 2mm の硅砂が混合されて いる。混和剤使用量は、目標フロー値を 240mm と して決定した。UFC 埋設型枠の配合を表-3、材料 特性値を表-4に示す。
2.3 供試体の寸法
本供試体は、道路橋 RC 床版の施工の合理化を 目指すための実験供試体であるので、道路橋示方 書・同解説Ⅱ 3) (以下、道示)に基づいて、RC 床版
表-1 コンクリートの配合
表-2 コンクリートおよび鉄筋の材料特性値
表-3 UFC埋設型枠の配合
表-4 UFC埋設型枠の材料特性値
空気量
W/C S/a
(%) (%) (%) C W S G Ad
RC U.RC-P
U.RC-C 8.0±2.5 2.0±1.0 56.0 47.2 304 170 848 954 3.04 4.0
供試体 スランプ(cm)
単 位 量
(kg/m
3)
8.0±2.5 2.0±1.0 39.2 40.0 403 158 726 1094
降伏強度 引張強度 ヤング係数
(N/mm
2) (N/mm
2) (N/mm
2) (kN/mm
2)
RC 35 368 568 200
U.RC-P 35 385 520 200
U.RC-C 27 385 520 200
供試体
コンクリート 圧縮強度
鉄筋(SD295A、D10)
水 鋼繊維 減水剤 プレミックス
U.RC-P 180 158 29 2250
U.RC-C 180 157 24 2254
供試体 単 位 量
(kg/m
3)
圧縮強度 曲げ強度 ヤング係数
(N/mm
2) (N/mm
2) (kN/mm
2)
U.RC-P 219.4 34.9 55.0
U.RC-C 213.2 32.0 55.0
供試体
Fatigue durability for RC slab with different UFC interface permanent form By
Yuki NIIYAMA,Tadashi ABE,Tetsukazu KIDA and Satoshi TANAKA
−日本大学生産工学部第43回学術講演会(2010-12-4)−
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3-7
図-1 供試体寸法および鉄筋配置
の設計支間と大型車両の1日1方向あたりの計画 交通量が 2000 台以上を想定して床版厚および鉄筋 量等を決定し、その 1/2 モデルとした。
(1) RC床版供試体寸法および鉄筋配置
RC 床版供試体の寸法は、全長 1470mm、支間 1200m、厚さ 130mm の等方性版とした。鉄筋は複 鉄筋配置とし、主鉄筋および配力筋を 100mm 間隔 に配置し、圧縮側鉄筋は引張側鉄筋の 1/2 の量を配 置した。また、有効高さは、主鉄筋が 105mm、配 力筋は 95mm とした。ここで、供試体寸法および 鉄筋配置を図-1に示す。
(2) UFC埋設型枠RC床版供試体 1) UFC埋設型枠の付着面および寸法
UFC 埋設型枠と RC 床版の底面コンクリートと の合成効果を高めるためには UFC 埋設型枠の付着 面の形状が重要となる。本研究では、2 タイプの付 着面を使用した。既往研究によると、凸型付き型 枠材を用いて付着面に凹部を一様に設けたタイプ (以下、P タイプ)を採用している。P タイプの凹部 は直径 9mm、付着面厚 5mm であり、付着面にお けるコンクリートと UFC の面積比は4:6であ る。P タイプのコンクリートとの打継ぎ面のせん 断ひび割れ強度は、母材コンクリートと同程度の 値を示していることから十分な付着が得られるこ とが確認されている 4),5) 。本研究では、UFC 埋設型 枠と RC 床版の合成効果を高めるために、凹型付 き型枠材を用いて付着面に凸部を一様に設けたタ イプ(以下、C タイプ)も使用した。C タイプの付着 面におけるコンクリートと UFC の面積比は6:4 である。ここで、P タイプの付着面形状および断
12@100=1200 1470
135
135 D10
130 60 35 35
C D
引張側 圧縮側
12@100=1200 1470
135
135 D10
C D
130 60
20
(1) RC床版供試体
(2) UFC埋設型枠RC床版供試体
35 35
た わみ 測 定位 置 20
250
(1)Pタイプ (2)Cタイプ 図-2 UFC埋設型枠の形状
1)パネル設置 2)鉄筋配置 3)コンクリート打設
(1)Pタイプ
1)パネル設置 2)鉄筋配置 3)コンクリート打設
(2)Cタイプ
写真-1 UFCパネルRC床版供試体の施工手順
面形状を図-2(1)に、C タイプの付着面形状および 断面形状を図-2(2)に示す。
UFC 埋設型枠の寸法は、幅 1470mm、有効厚 150mm、付着面厚は 5mm、全厚 20mm とし、RC 床版のかぶり内に埋設する。製作は、2 タイプの UFC 埋設型枠用の型枠に RC を打設した。養生は、
前置き時間を 24 時間とし、脱型後の蒸気養生は最 高温度 90 ℃で 48 時間保持した。
2) UFC埋設型枠RC床版の施工法
UFC 埋設型枠 RC 床版供試体の施工手順を写真- 1に示す。
UFC 埋設型枠 RC 床版供試体の製作は、予め製 作した UFC 埋設型枠を設置した後に側面の型枠を 作製し(写真-1 1))、予め組んでおいた鉄筋を UFC 埋設型枠の上部に配置した(写真-1 2))。その後、
コンクリートを打設し(写真-1 3))、UFC 埋設型枠 と RC 床版を一体構造とした。コンクリート打設 後は通常の RC と同様に側面の型枠を脱型し、養 生を行った。
3) UFC埋設型枠RC床版寸法および鉄筋配置
UFC 埋設型枠 RC 床版供試体の寸法および鉄筋 配置は、RC 床版供試体と同様である。また、UFC 埋設型枠は RC 床版部の引張鉄筋かぶりとして考 慮していることから床版厚は 130mm であり、厚さ 20mm の UFC 埋設型枠を設置した後、直接鉄筋を 配置した。よって、有効高さは主鉄筋が 105mm、
配力筋が 95mm である。ここで、UFC 床版供試体 の寸法および鉄筋配置を図-1(2)に示す。
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3. 走行疲労実験方法
UFC 埋設型枠 RC 床版の実用性を評価するため には疲労耐久性の確保が重要である。よって、輪 荷重走行による疲労実験(以下、走行疲労実験)を行 い、道路橋床版としての実用性を評価する。
走行疲労実験における走行範囲は床版中央から 両支点方向に ±450mm(全長 900mm)とする。この 走行範囲は、輪荷重による応力が 45° で床版の底 面方向に分布するものと仮定し、設定した。走行 範囲を図-1に併記した。走行疲労実験の供試体記 号は RC 床版供試体を RC、付着面を P タイプとし た UFC 埋設型枠 RC 床版供試体を U.RC-P、C タイ プとした供試体を U.RC-C とする。次に、床版供 試体は活荷重 100kN で設計し、その 1/2 モデルと したことから、活荷重 100kN の 1/2 の 50kN に安 全率 1.2 を考慮して 60kN を基準荷重とする。よっ て、供試体 U.RC-P1、2 は荷重 60kN で 2 万回まで 走行し、その後荷重 80kN で 2 万回、100kN で 2 万回、100kN 以降は 2 万回ごとに 10kN ずつ増加さ せる。また、供試体 U.RC-C1、2 は荷重 80kN で 2 万回まで走行し、その後荷重 100kN で 2 万回、
100kN 以降は 2 万回ごとに 10kN ずつ増加させる。
4.実験結果
4.1 走行疲労実験における等価繰返し走行回数 本実験では、2 万回走行ごとに荷重を増加したこ とから等価走行回数を算出して疲労耐用性を評価 する。等価走行回数は、マイナー則に従うと仮定 すると式(1)として与えられる。なお、基準荷重を 60kN とした一定荷重として等価走行回数を算出す る。本研究は RC 床版の疲労寿命と UFC 埋設型枠 RC 床版の疲労寿命を比較し、実用性を検証するこ とから、RC 床版の S-N 曲線を基準とする。したが って、S-N 曲線の傾きの逆数 m には、RC 床版およ び UFC 埋設型枠 RC 床版ともに松井らが提案する S-N 曲線の傾きの逆数 12.7 を適用する 。 6)
n
N
ep=∑ (P i /P) ×n m
i(1)
i=1
ここで,N
ep:等価走行回数(回)、P i :載荷荷重 (kN)、 P:基準荷重(=60kN)、 n i :実験走行回数(回)、 m
:S-N 曲線の傾きの逆数(=12.7)
式(1)より算出した等価走行回数を表-5に示す。
同表より、 RC-1、 2 の平均等価走行回数は 7,938,687 回である。U.RC-P1、 2 の平均等価走行回数は 41,980,907 回であり、通常の RC 床版に比して 5.29 倍となった。また、U.RC-C1、2 の平均等価走行回 数は 419,165,644 回であり、RC 床版に比して 52.80 倍となった。したがって、UFC 埋設型枠と RC 床
表-5 等価走行回数
図-3 等価走行回数とたわみの関係
版を合成構造とすることで疲労耐久性が向上した。
また、付着面を C タイプとした UFC 埋設型枠 RC 床版は、付着面を P タイプとした供試体に比して 9.98 倍の等価走行回数の向上が見られ、付着面を C タイプとすることにより合成効果が向上した。こ れは、付着面におけるコンクリートと UFC の面積 比を6:4にすることにより付着力が向上したも のと考えられる。なお、破壊モードは全ての供試 体で押抜きせん断破壊となった。
4.2 等価走行回数とたわみの関係
本実験における等価走行回数とたわみの関係を 図-3に示す。同図より、RC1、2 では、ともに走行 回数の増加に伴ってたわみは増加し、走行回数 4.05×10
6回付近からたわみの増加が著しくなり、
終局時のたわみはそれぞれ 6.9mm、7.3mm であっ た。U.RC-P1、2 では、終局時頃まで走行回数の増 加に伴って緩やかにたわみは増加し、終局時のた わみはそれぞれ 6.5mm、 6.9mm であった。 U.RC-C1、
2 では、走行回数の増加に伴い緩やかにたわみは増 加し、走行回数 1.47×10
8回頃からたわみの増加は 著しくなり、終局時のたわみはそれぞれ 7.2mm、
9.7mm であった。各走行回数ともに UFC 埋設型枠 を引張鉄筋かぶり内に配置した供試体 U.RC-P およ び U.RC-C は、供試体 RC のたわみを下回った。し たがって、UFC 埋設型枠 RC 床版は曲げ剛性が向 上したためにたわみの増加が抑制された。さらに、
付着面を C タイプとすることにより合成効果が向 上したためにたわみがさらに抑制される結果とな った。
等価走行回数 平均等価走行回数 等価走行回数比
(回) (回) U.RC/RC
RC1 7,347,504
押抜きせん断破壊RC2 8,529,870
押抜きせん断破壊U.RC-P1 35,727,812
押抜きせん断破壊U.RC-P2 48,234,001
押抜きせん断破壊U.RC-C1 505,594,259
押抜きせん断破壊U.RC-C2 332,737,029 419,165,644 52.80
押抜きせん断破壊供試体 破壊モード
7,938,687 -
41,980,907 5.29
0 2 4 6 8 10 12
1.E+00 1.E+01 1.E+02 1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08 1.E+09 1.E+10
等価走行回数(回)
たわみ
(m m )
RC1RC2 U.RC-P1 U.RC-P2 U.RC-C1 U.RC-C2
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4.3 破壊形状
本実験における供試 体下面の破壊形状の一 例を図-4に示す。図-4 より、 RC1 は軸方向 および軸直角方向に 100~120mm 間隔でひ び割れが発生してい る。これは、軸方向お よび軸直角方向に配置 した鉄筋の間隔とほぼ
(1) RC1 (2) U.RC-P1 (3) U.RC-C1 図-4 破壊形状
同じ間隔である。また、輪荷重の載荷位置から約 45°
で押抜かれており、ダウエル効果の影響範囲では く離が確認でき、最終的には輪荷重が走行中に押 抜きせん断破壊に至った。U.RC-P1 は、UFC に配 合されている鋼繊維による架橋効果により応力が 分散され、全体的に無数の微細なひび割れが発生 し、輪荷重の走行範囲にはひび割れが密集してい る。最終的な破壊モードは、輪荷重が走行中に RC 床版が押抜きせん断破壊となると同時に UFC 埋設 型枠がはく離した。U.RC-C1 は、輪荷重の走行範 囲から約 45° 底面の内側は、架橋効果の影響によ り微細なひび割れが発生し、約 45° 底面の外側は、
放射線状にひび割れが発生している。最終的な破 壊モードは、輪荷重が走行中に UFC 埋設型枠の曲 げ破壊を伴う押抜きせん断破壊に至った。これは、
破壊時の UFC 埋設型枠のせん断強度が高くなって いるために曲げ破壊が先行したためである。
5.まとめ
①等価走行回数は、通常の RC 床版に比して付着 面を P タイプとした UFC 埋設型枠 RC 床版は 5.29 倍、付着面を C タイプとした供試体は 52.80 倍となり、UFC 埋設型枠と RC 床版を合成構造 とすることで疲労耐久性が向上した。また、付 着面を P タイプとした供試体に比して、C タイ プとした供試体は 9.98 倍の走行回数となり,合 成効果が高まっている。
②等価走行回数とたわみの関係より、各走行回数 における UFC 埋設型枠 RC 床版のたわみは、通 常の RC 床版のたわみを下回った。したがって、
UFC 埋設型枠 RC 床版は曲げ剛性が向上したた めにたわみの増加が抑制され、疲労耐久性が向 上した。また、 UFC 埋設型枠 RC 床版の付着面 を C タイプとすることにより、P タイプの供試 体と比してたわみが抑制される結果となった。
③破壊モードは、通常の RC 床版は輪荷重が走行
中に押抜きせん断破壊に至った。付着面を P タ イプとした UFC 埋設型枠 RC 床版は、輪荷重が 走行中に RC 床版が押抜きせん断破壊となると 同時に UFC 埋設型枠がはく離した。付着面が C タイプは、付着力が向上し、輪荷重が走行中に UFC 埋設型枠の曲げ破壊を伴う押抜きせん断破 壊に至った。
④ UFC 埋設型枠 RC 床版は、通常の RC 床版に比 して等価走行回数で上回り、たわみが抑制され ていることから UFC 埋設型枠 RC 床版の合成構 造は疲労耐久性に優れた構造であることが実証 された。さらに、付着面を C タイプとした UFC 埋設型枠 RC 床版は合成構造としてより有効で あることが実証された。
参考文献