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車両運動シミュレータの改良

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Academic year: 2021

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車両運動シミュレータの改良

1. はじめに

 東海旅客鉄道(株)(JR 東海)は,

2002 年 7 月愛知県小牧市に研究施設

(以下,技術開発部)を開設した.技 術開発部では,鉄道技術をブラッシュ アップするための研究・開発に取り組 んでおり,成果を検証するための試験 設備を多数導入している.本記事で紹 介する車両運動総合シミュレータ(以 下,シミュレータ)もその試験設備の 一つである.技術開発部ではシミュ レータを利用して新幹線車両の乗り心 地向上方策の開発・検証を行い,一定 の成果を上げてきた.

 今回,さらなる研究の深度化,成果 の充実を期して,シミュレータの改良 を行ったので,その概要と今後の取り 組みについて紹介する.

2. シミュレータ概要

 技術開発部が所有するシミュレータ は,鉄道車両の乗り心地を定置で再現 できる装置である.本シミュレータは,

三つの加振装置を持ち,それらを組み 合わせて鉄道特有の振動を再現でき る.以下に三つの加振装置について述 べる.

2.1 6 軸モーション装置

 実際の車両と同じ仕様の客室を持つ 模擬車体を,伸縮する油圧シリンダ 6 本で支えた「6 軸モーション装置」で,

6 自由度(3 軸方向の並進運動および 回転運動)の運動を再現する.

2.2 直線モーション装置

 油圧シリンダのベースごと左右方向 に直線的にリニア駆動で移動させる

「直線モーション装置」で,曲線を通 過する際に生じる加速度を再現するこ とが可能である(図 1).

2.3 高周波振動台

 模擬車体全体の加振に加え,床面の 一部に「高周波振動台」を用意して,

一部の座席を加振することで高周波分 を補っている.

 シミュレータを用いることにより,

乗り心地の影響要因の分離⇔対処⇔効 果の確認が効率的に可能となる.そし て,他の影響因子を排除して短時間で 各種条件の乗り心地を体感,比較でき るため,主観的になりがちな評価の精 度の向上,開発の効率化に寄与してい

る.

 技術開発部では,このシミュレータ を用いて N700 系の車体傾斜システム 開発をはじめ,300 系車両の乗心地改 良や腰掛の開発を行ってきた.

3. さらなる乗り心地向上を目指 して

 シミュレータを活用して新幹線車両 の乗り心地の改善に取り組んできた結 果,JR 東海の新幹線の乗り心地はお おむね“非常によい”を達成している.

しかし,全般的な乗り心地が向上した 結果,あまり目立たなかった単発的な 揺れやビビリ振動のような高周波領域 の振動が,乗り心地を損なう要因にな る可能性が見出されてきた.これら振 動は,レールの凹凸などの不整や,電 源周波数に起因する磁歪わい振動や回転機 器(モータなど)が要因となっており,

従来もさまざまな対策が講じられてき た.しかし,高周波振動に対する乗り 心地面を定量的に評価できるようにな れば,効率的な機器設計・保守基準を 策定することができると考えられる.

 そこで,高周波領域における乗り心 地を評価・検証するために,シミュ レータの加振性能を改良することにし た.

4. 改良の概要

 今回の改良では高周波振動の再現に 対応するため,模擬車体および制御装 置の 2 点を変更した.

4.1 模擬客室

 模擬客室は,定員(15 人)は維持 しつつ小型・軽量化を図りつつ,堅ろ うな構造とした(図 2,3).これに合 わせて,乗車時の臨場感として重要な 室内のアコモデーションも,最新の N700 系のものとした.

4.2 制御装置

 制御装置は,制御用データのサンプ リング周波数を 200Hz から 500Hz に するとともに,制御方式を一部変更し ている.

 この改良により,加振能力が 5Hz

(40Hz)( 注 1) で あ っ た も の が,

10Hz 程度(90Hz)(注 1)まで向上し,

高周波領域における乗り心地の検証に

十分耐えうる性能を具備することがで きた.

5. 今後の取り組み

 今後は,シミュレータを用いて高周 波領域における乗り心地の評価・検証 を進めるとともに,その結果に基づく 機器設計・開発・評価(振動絶縁対策)

や保守基準の策定(振動発生源対策)

を進めていく.

(1)機器開発・設計

・床,腰掛などが具備すべき振動 伝達特性の追及

・開発品の評価

(2)保守基準

・さらなる乗心地向上を行うため の高品質な軌道管理基準の策定

・回転機器類などの保守基準の策 定

(原稿受付 2008 年 10 月 16 日)

〔大塚智広 東海旅客鉄道(株)〕

(注 1)高周波振動台上の能力

図1 シミュレータ(直線モーション装置)

図 2 模擬車体(改良前)

図 3 模擬車体(改良後)

日本機械学会誌 2009. 8 Vol. 112 No.1089

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