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第 63 回神奈川腎炎研究会 Laboratory findings on admission㻌 1 Urinalysis Specific Gravity ph Occult blood Protein Glucose (2+) (3+) (1+) 各種検査 Protein C

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(1)

緒  言

・ SLEに伴う二次性APSによる腎病変は広く知 られている。一方,原発性APSにおいても

8-10%において腎病変を伴う。

  (Sinico et al; Clin J Am Soc Nephrol 5:1211-1217, 2010) ・ 原発性APSでの腎病変は血栓病変以外にも 多彩な病理組織像を呈する。 ・ 過去に抗GBM抗体を有するAPSの報告は希 であるため,今回報告する。

症  例

症 例:53歳 男性 主 訴:呼吸苦,全身浮腫 現病歴: 以前より高血圧症を指摘され,また血小板減 少症も認めていた。 (X-7年 Plt 10.8万/μl,s-Cr 0.9mg/dl) X-3年2月 胸部大動脈解離にて上行大動脈 置換術施行。 X-2年9月 健診にて初めて蛋白尿を指摘。 (s-Cr 1.26mg/dl) X-1年11月 腹部大動脈解離にて下行大動脈 置換術施行。 X年6月の時点でs-Cr 2.0mg/dl,尿TP 0.88g/ gCr,潜血 2+ またこの時の検査で抗GBM抗体 13EUと弱 陽性であった。 同年11月1 ヶ月前から続く全身浮腫および 呼吸苦にて救急搬送。 s-Cr 3.97mg/dlと腎機能増悪,心不全症状を 認め入院。 既往歴:高血圧症,脂質異常症,胸腹部大動 脈解離術後 家族歴:特記すべき事項なし 内服薬:フロセミド20mg,アムロジピン 10mg,オルメサルタン20mg,ランソプラゾー ル 30mg, カルシトリオール0.25μg,ピタバス タチン2mg,ジラゼプ塩酸塩 100mg 来院時現症:意識清明,身長 178cm,体重 61.1kg,BMI 19.3,血圧 155/75mmHg,心拍数 93bpm,呼吸数 26回/分,体温 37.4℃,SpO2 94%(O2 2L投与下) 頭頚部:眼瞼結膜貧血あり,眼球結膜黄疸な し,眼瞼腫脹・顔面浮腫あり,頸静脈怒張あり 胸 部:呼吸音:全肺野にwheeze聴取,右 呼吸音弱,心音:整,雑音聴取せず 腹 部:平坦,軟,腸蠕動音やや減弱,圧痛 なし,反跳痛なし  四 肢:下腿〜足背にかけて高度浮腫,皮疹 なし,関節熱感なし

抗リン脂質抗体症候群(APS)による血栓性微小血管障害(TMA)を

呈し抗GBM 抗体が陽性であったネフローゼ症候群の 1例

持 田 泰 寛

1

  田 村 友 美

1

  松 浦   亮

1

吉 田 輝 彦

1

  石 岡 邦 啓

1

  真栄里 恭 子

1

岡   真知子

1

  守 矢 英 和

1

  日 高 寿 美

1

大 竹 剛 靖

1

  小 林 修 三

1  病理コメンテータ  

 城   謙 輔

2

 山 口   裕

3 (1 湘南鎌倉総合病院 腎臓病総合医療センター 腎免疫血管 Key Word:抗リン脂質抗体症候群(APS),GBM,血栓性微

(2)

Specific Gravity pH Occult blood Protein Glucose 1.020 5.5 (2+) (3+) (1+) Protein Cre Na Cl K β2MG NAG Bence-Jones Protein 8.24 1020 77.9 88.1 34.7 2404 39.1 g/day mg/day mEq/day mEq/day mEq/day μg/day IU/day negative RBC WBC Epithelium cast Granular cast Hyaline cast 10-19 20-29 1-4 (1+) (2+) /HPF /HPF /HPF

Laboratory findings on admission㻌 1 Urinalysis

図 1

Laboratory findings on admission㻌 2㻌 /μl % % % % % /μl g/dl % /μl 㻌 8100 㻌 㻌 72.9 㻌 㻌 㻌13.7 㻌 㻌 㻌3.7 㻌 㻌 㻌9.6 㻌 㻌 㻌0.1 281×104 㻌 㻌 8.7 㻌 㻌 25.4 8.6×104 206 0.6 17 11 336 5.0 2.7 243 53 141 211 4.7 7.3 1377 IU/l mg/dl U/l U/l U/I g/dl g/dl mg/dl mg/dl mg/dl mg/dl % % pg/ml CPK T-Bil AST ALT LDH TP Alb TC HDL-C LDL-C TG HbA1c GA BNP 47.1 3.97 13.7 6.1 144 118 3.4 8.1 4.2 mg/dl mg/dl ml/min/1.73m2 U/l mEq/l mEq/l mEq/l mg/dl mg/dl BUN Cr eGFR UA Na Cl K Ca IP <Blood chemistry> <Peripheral blood> <Coagulation profile> PT% APTT FDP Fibrinogen D-D dimer TAT Complex PIC 75.1 58.1 31.5 220.8 15.5 9.2 2.1 % Sec μg/ml mg./dl µg/ml µg/l μg/ml WBC 㻌Neut 㻌Lym 㻌Mono 㻌Eo 㻌Baso RBC Hb Ht Plt pH sO2 PaO2 PaCO2 HCO3 AG Lac 7.41 90 58 25.9 16.1 9.2 0.98 % mmHg mmHg mEq/l mEq/l mg/dl

<arterial blood gas (O2 2L)>

図 2

Laboratory findings on admission㻌 3

CRP IgG IgA IgM Lupus 㻌 㻌 㻌anticoagulant ANA C3 C4 Anti-Cardiolipin(CL) IgM Ab Anti-CL IgG Ab Anti-CL β2GPIAb 0.01 629 210 152 45.8 40(speckled) 90 17 1 82 165 mg/dl mg/dl mg/dl mg/dl sec mg/dl mg/dl IU/ml IU/ml IU/ml <Serological examination> RF Anti-ssDNA Ab Anti-dsDNA Ab Anti-RNP Ab Anti-Sm Ab Anti-SS-A Ab Anti-SS-B Ab MPO-ANCA PR3-ANCA Anti-GBM Ab Cryogloblin 0.80 20 10> 7> 7> 10> 10> 10> 10> 24 negative IU/ml AU/ml IU/ml IU/ml IU/ml IU/ml IU/ml EU EU EU 図 3 図 4

各種検査

胸部レントゲン:CTR測定不能 両側胸水、うっ血あり 心電図 :HR 89bpm 㻌 㻌 洞調律 整㻌 㻌ST変化なし 心エコー 㻌EF 64%、 LVDd/Ds 59/39mm 腹部エコー 㻌 右腎 101×43mm 㻌 左腎 106×54mm 㻌両腎とも皮質の輝度上昇 図 5

本症例の特徴

ネフローゼ症候群 原発性APS 血小板減少症 抗カルジオリピン抗体 ループスアンチコアグラント陽性 抗GBM抗体腎炎疑い 急速進行性糸球体腎炎症候群 抗GBM抗体の上昇 13EU(2013/6)→24EU(2013/11) 図 6 8.93 10.96 2.48 4.02 8.7 4.13 6.27 0 5 10 15 20 2 3 4 5 6 7 11 月6 日 11 月8 日 11 月10 日 11 月12 日 11 月14 日 11 月16 日 11 月18 日 11 月20 日 11 月22 日 11 月24 日 11 月26 日 11 月28 日 11 月30 日 尿蛋白 Plt 10未満 82 97 58 44 68 20 60 100 140 180 Anti-CL IgG … Open Biopsy mPSL 1g 㻼㻿㻸㻌㻟㻜㼙㼓 PEx 165 187 57.2 47.2 Anti- CLB2GP1

臨床経過

GBM抗体 24 13 10未満 (EU) PLT Cr ーCr

(3)

図 7 図 8 一部半月体形成 図 9 図 10

腎病理組織像

糸球体は全部で90個 全節性硬化糸球体:皮膜下を中心に30個 細胞性半月体性糸球体:6個 皮膜下の梗塞、虚血像 glomerular cystが多発 尿細管の消失 図 11 PAS: 糸球体分葉化 メサンギウム細胞増殖 PAM: 係蹄壁二重化 係蹄のwrinkling 係蹄内に血栓閉塞 図 12 Masson trichrome: 血管極のフィブリン血栓 係蹄内に血栓閉塞

(4)

EVG: 内膜の線維性肥厚・過形成 内弾性板の断裂 図 13

IgA

fib

IgG

IgM

図 14

C3

C1q

λ

κ

図 15 図 16 電子顕微鏡所見(EM): 内皮下dense deposit Mesangial interposition 血管内腔は閉塞 図 17

臨床経過

Open Biopsy mPSL 1g 㻼㻿㻸㻌㻟㻜㼙㼓 㻞㻡㼙㼓 㻞㻜㼙㼓 82 97 58 44 68 30 25 33 20 60 100 140 180 Anti-CL IgG Ab 165 187 57.2 47.2 22.4 Anti- CLB2GP1 PEx 8.93 10.96 2.48 4.02 8.7 2.7 4.18 7.22 2.77 3.34 1.8 3.04 1.76 0 5 10 15 20 2 3 4 5 6 7 11 月6 日 11 月13 日 11 月20 日 11 月27 日 12 月4 日 12 月11 日 12 月18 日 12 月25 日 1 月1 日 1 月8 日 1 月15 日 尿蛋白 Plt 24 GBM抗体 ーCr PLT Cr 図 18 原発性APSでの㻌 腎病変を伴う16症例での報告 腎以外の臨床症状 人数(%) 動静脈血栓症 15(93%) 中枢神経症状 13(81%) 皮膚症状 9(56%) 妊娠合併症 3/6(50%) 心血管症状 5(31%) 肺症状 4(25%) 鼻中隔穿孔 1(6%) 副腎不全 1(6%) 血小板減少 9(56%) 腎症状 人数(%) 高血圧症 15(93%) 慢性腎不全 14(87%) 蛋白尿(0.2-7g/日) 12(75%) 血尿 9(56%) 溶血性貧血 1(6%) ネフローゼ症候群 1(6%) Cr㻌 平均値㻌 1.64mg/dl (D Nochy et al; J Am Soc Nephrol 1999,10:507-18)

(5)

疑  問

・ 本症例の腎病理所見をAPSによるものとし て一元的に説明することができるか? ・ 臨床経過及び腎病理所見に抗GBM抗体の関 与はあるのか? ・抗GBM抗体の意義は?

Primary APSの腎病理所見

病理所見 人数(%) 動脈硬化 12(75%) 線維性内膜過形成(①) 12(75%) 尿細管濾胞化(②) 12(75%) 動脈血栓閉塞 11(68%) 皮質巣状萎縮(②) =尿細管萎縮・間質繊維化、糸球体嚢胞化 10(62%) TMA(③) 5(31%) 器質化血栓 6(37%)

J Am Soc Nephrol 1999,10:507-18 図 19

Primary APSの腎病理所見

他の光顕病理像 糸球体病変はさまざまな形をとりうる ・膜性腎症 ・巣状糸球体硬化症 ・MPGN㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌

Clin J Am Soc Nephrol. 2010;5(7):1211㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌

㻌しかし特徴的な所見は動脈、静脈における内膜病変である 蛍光抗体法 ・血栓部にはfibrin、フィブリノイド壊死部にはC3、IgMなど 電子顕微鏡 ・内皮下腔の拡大 図 20

今回の臨床・病理所見㻌 まとめ

• ネフローゼ症候群 • 抗GBM抗体陽性 • 半月体形成㻌 しかし1割ほど • 皮膜下梗塞(glomerular cyst,尿細管濾胞化) • MPGN like、mesangial interposition • 血管極や係蹄内に血栓閉塞(TMA) • 線維性内膜の過形成 • IFで免疫グロブリン沈着(IgG,IgM、C3、κ、λ) • EMで内皮下沈着 APS 抗GBM抗体腎炎 合わない点 図 21 図 22

抗GBM抗体陽性の意義は?

– 抗体のみで無症状? • 半月体形成を示さなかったのはHIV患者で認められた • 健常者でもlow titerのものが認められている。IgGの サブクラスによる違いがある。 – 抗GBM抗体のIgG2,4㻌 ー健常者 – 抗GBM抗体のIgG1,3㻌 ー抗GBM抗体腎炎 Isr Med Assoc J. 2014 Nov;16(11):727-32. Review

– 偽陽性?

• 4型コラーゲン3(NC1)抗原に対する抗体を測定する ELISAを使用すればかなり感度が上昇。㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 感度95-100%、特異度91-100%になる

(6)

系のマーカーが上昇しておりました。アルブミ ンは2.7と減少しており,血清クレアチニンは 3.97と増加しており,血ガス上では代謝性アシ ドーシスを認めておりました。  抗核抗体やDNA抗体をはじめ,SLEなどの 膠原病を示すマーカーは陰性でしたが,lupus anticoagulantと,抗カルジオリピン,IgG,β 2GPIは陽性でありました。また,GBM抗体が 弱陽性となっておりました。  レントゲンですが,両側に胸水がありました。 心電図ではST変化などはありませんでした。  心エコーではEF64%と動きは問題ありませ んでした。エコーでは両側に軽度腎腫大を認め ましたが,基質の輝度の上昇が認められました。  本症例の特徴でありますが,血尿を伴うネフ ローゼ症候群。原発性のAPS,また急速に腎機 能が増加しており,急速進行性糸球体腎炎症候 群を呈しておりまして,抗GBM抗体が上昇し ておりましたので,抗GBM抗体腎炎疑いがあ りました。  臨床経過でありますが,血清クレアチニンは 4から6に増加しており,また蛋白尿も10gと 増加しておりましたので,抗GBM抗体腎炎が 疑われましたので,メチルプレドニゾロンパル ス療法,または血漿交換を施行しております。 血清クレアチニンは低下しており,また,抗カ ルジオリピン抗体も減少しております。GBM 抗体も減少しておりました。しかし,蛋白尿が 専横しておりましたので,浮腫を軽減させ,呼 吸状態を落ち着かせた状態で,open biopsyを 施行しています。  open biopsyの結果であります。弱拡ですが, 内皮下にはglomerular cystが認められており, 一部に硬化が散見されます。  また,こちらも同様にglomerular cystが認め られ全節性硬化が散見されます。  弱拡ですが,分葉状の糸球体が認められて, また動脈硬化病変が認められております。  一部の糸球体でありますが,細胞性半月体腎 炎が認められました。

討  論

持田 よろしくお願いします。  SLEに伴う二次性APSによる腎病変は広く知 られています。一方,原発性APSにおいても, 8から10%において腎病変を伴います。原発性 APSでの腎病変は血栓性病変以外にも多彩な病 理組織像を呈します。過去に抗GBM抗体を有 するAPSの多くはまれでありますので,今回 ご報告します。  症例は53歳男性です。主訴は呼吸困難,全 身浮腫です。  現病歴では,以前より高血圧症を指摘され, また血小板減少も認められていました。このと きでは,血清クレアチニンには0.9mg/dLであ りました。2009年2月には胸部大動脈解離にて 手術を施行されております。2010年9月には健 診にて,初めて蛋白尿を指摘され,この時点で は血清クレアチニンは1.26mg/dLでした。翌年 の11月には腹部大動脈乖離にて手術をされて います。2012年6月の時点で,血清クレアチニ ン2mg/dL,蛋白尿が0.8g,潜血が2(+),抗 GBM抗体が13と弱陽性でありました。同年11 月には,全身性の浮腫,呼吸苦にて救急搬送と なっております。腎機能増悪,心不全症状を認 め入院となっております。  既往歴ですが,高血圧症,脂質異常症,胸部, 腹部大動脈乖離術後ということです。内服薬は 以下のとおりとなっております。  入院時現症です。血圧は155の75。脈拍は26 回。体温は37.4℃,saturationは94%と低下して おりました。頸静脈は怒張があり,胸部では全 肺野にwheezeが認められています。四肢には 浮腫が認められ,皮疹などblue toeの所見はあ りませんでした。  尿所見でありますが,潜血2(+),蛋白3(+) で,赤血球尿は10から19となっております。 蛋白尿は1日8gとネフローゼ症候群を呈してい ました。ヘモグロビンは8.7,血小板は8.6と減 少しております。ご覧のように,線溶系,凝固

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認められると報告されており,膜性腎症や FGS,MPGNも認められるという報告はありま したが,特徴的な所見としては,やはり動脈, 静脈による内膜病変であります。  今回の臨床,病理所見のまとめです。以下の とおりとなっています。赤字で示しましたが, APSに合致するものとしては,ネフローゼ症候 群, 皮 膜 下 梗 塞,MPGN-like,mesangial inter-position,TMA,線維性内膜の過形成を認めます。 青字ですが,抗GBM抗体腎炎として,GBM抗 体が陽性。半月体形成を示しています。ただし, 1割ほどしかなかったということです。このど ちらにも反映しないものとしては,免疫globu-lin沈着が認められたということです。あと, また,内皮下にdepositがあったと。この所見 はAPSとGBM抗体では特徴的な所見ではない ということでした。  このGBM抗体陽性ということで,その意義 を僕なりに考えたのですが,調べたところ,半 月体形成を示さなかったのは,HIV患者さんで 認められたと。low titerなものでは健常者にも 認められたということですが,subclassが違う ということが書かれていました。健常者では IgGのsubclassの2と4が。 ま た 抗GBM抗 体 腎 炎の患者さんでは,subclassの1と3が認められ たという報告をされていました。  また,測定方法の問題でも,感度,特異度が 違うということでしたが,日本での発色性の酵 素抗体法に関しては,感度ともに90から100% ということでありました。今回の疑問としては, 半月体形成を認めていましたが,APSによるも のとして一元的に説明することができるかどう かということと,このGBM抗体が陽性だった ということの,この患者さんのGBMの関与が どのぐらいあるかということと,GBM抗体の 意義というものを皆さんでディスカッションし たいなと思いまして,報告しました。よろしく お願いします。 座長 はい。ありがとうございます。何か本症 例の臨床経過について,ご質問,コメントはご  糸球体は全部で90個です。全節性硬化糸球 体は皮膜下を中心に30個認められました。細 胞性半月体形成は,糸球体は6個ありました。  皮膜下の梗塞像と虚血像を呈し,glomerular cystが認められて,尿細管の消失が認められま した。  ほとんどの糸球体は,分葉化が認められ, mesangium細胞増殖が認められました。  PAM染色では基底膜の二重化,あとは係蹄 のwrinkling,また係蹄内に血栓の閉塞が認めら れておりました。  masson trichromeでありますが,血管極にfi-brin血栓が認められ,また係蹄内に血栓閉塞像 を認められています。  EVG染色でありますが,内膜の線維性肥厚, 過形成が認められております。また,内弾性板 の断裂が認められております。  蛍光ですが,IgG,IgMが陽性となっており ます。またC3,κ,λが陽性となっておりま した。mesangium領域と係蹄壁に顆粒状の沈着 を認めたと判断しました。  電子顕微鏡でありますが,dense depositを内 皮下に認められております。また,mesangial interpositionが認められ,血管内腔の閉塞を認 められました。  その後の臨床経過であります。後療法30mg として,プレドニンを漸減していきました。そ れとともに,蛋白尿も減少し,血清クレアチニ ンも減少しております。GBM抗体は陰性のま ま経過しております。  考察です。原発性APSでの腎病変を伴う病 変がまとめられていました。腎障害で起こすも のとしては,慢性腎不全,蛋白尿,血尿,溶血 性貧血,ネフローゼ症候群を呈すると書かれて おり,赤字はこの患者さんが認められた所見で あります。また,線維性の内膜過形成を認め, 皮膜下の萎縮,glomerular cystを認め,尿細管 の萎縮が認められます。またTMAとして血栓 閉塞が認められておりました。  この所見以外にも,さまざまな糸球体病変が

(8)

い。鎌田先生。

鎌田 私は1次性APSを,80例ぐらい集めまし たが,それはほぼ全てCKDでした。またほと んどが血清クレアチニンが高い症例でした。ま た低補体血症を伴っている症例が非常に多いで す。lupus anticoagulantとcardiolipin IgGと, 抗 CL-β2GP1の3つとも陽性なのは,ほとんどあ りませんでした。3種の抗体が全部そろってい たのは,SLEでcatastrophic APSになって,急 性腎不全を伴った症例でした。1次性APSでは, cardiolipin IgG, 抗CL-β2GP1,lupus anticoag-ulantのいずれか1つが陽性ないし2つまでが陽 性でした。APSは,二次性疾患の鑑別の最後に くる疾患です。  また,APSの診断がないままに腎生検をし、 後にAPSと診断された例が6例発見されまし た。これらの症例の蛍光抗体法所見は,特徴的 な所見を示さず,非特異的なわずかの沈着が見 られたのみでした。  一方,光顕では,糸球体血管係蹄壁で部分的 にdouble contourが見られました。全周性の二 重化は見られず,これがAPSの所見なのかな と,思っています。  本例は非常に特殊な症例と思います。APSが 優位な症例ですが,抗GBM抗体が24EU見ら れます。抗GBM抗体の測定がCLEIA法になっ てから,10単位以下の抗GBM抗体が測れるよ うになり抗GBM抗体が4とか5でも,典型的な GBM抗体腎炎になっている症例が発見される ようになりました。  これらの理由から優位なのはAPSでしょう けれども,抗GBM抗体は,病気に関与してい ると思います。組織が壊れてしまっているため に蛍光抗体法でGBMへのIgGの線状沈着がき れいに出ていないのではないかと思います。そ こで患者血清と他の患者の糸球体組織を用い て,間接蛍光抗体法を行なってはいかがでしょ うか。これで典型的なGBMへのIgGの線状沈 着が見られれば抗GBM抗体の関与が考えられ ます。 ざいますか。城先生どうぞ。 城 抗GBM腎炎の場合は,IgGがlinearに糸球 体の毛細血管末梢係蹄に染まってくるのですけ れども,先生の今のご発表では,IgGが陽性だ とおっしゃいました。基底膜にlinearなIgGが 沈着していますか,していませんか。 持田 全てではなしに一部にはあるようにも見 えますが,mesangium領域にも染まっていると。 城 典型的ではないですね。biopsyはずいぶん 後からやっており,最初に血漿交換をやってい ますね。そのときは,抗カルジオリピン抗体も 陽性だというふうにとらえておられますね。要 するに,APSの鑑別診断は,その時点ではあっ たわけですね。 持田 ありました。 城 にもかかわらず,抗GBM腎炎による急性 腎機能低下だと判断して,治療を踏み切ってい るわけですね。背景に抗リン脂質症候群があっ て,その可能性もあったけれども,抗GBM腎 炎と判断して,腎生検の前に治療に踏み切って いますけれども,そこらへんの事情をもう1回 説明していただけますか。 持田 急速に腎機能が悪化したということと, あとは呼吸状態が徐々に悪くなったということ で,臨床的にやはり何らかの治療をしないとい けないという判断をして,プレドニンパルス療 法と血漿交換をした次第です。 城 さっきのレントゲンで,これも抗GBM腎 炎によるgoodpasture型のものと判断されてい るのですか。 持田 これに関しては,ネフローゼ症候群を呈 していて,それによる溢水を考えています。実 際にこの患者さんは,血痰といった肺胞出血を 思わす所見はありませんでした。 座 長  よ ろ し い で す か。 治 療 は た ぶ んcata-strophic APSでも血漿交換を行いますので,一 挙両得というかたちで,たぶん自分でも同じよ うな治療を選ぶのではないかなと,聞いていて 思いました。  ほかに何かご質問はありますでしょうか。は

(9)

て,その結果,糸球体毛細血管係蹄が虚脱して いる。PAM染色切片が厚いので,もう少し薄 く切ると,この虚脱の様子が分かると思います。 【スライド06】  切片が厚いと,mesangium細胞増多になって, 糸球体腎炎になってしまうわけです。蛍光染色 と電顕を見て,これは本当の腎炎なのか,単な る虚脱なのか,標本が厚いと紛らわしくなりま す。 【スライド07】  しかし,これを見ると,これは十分に薄い切 片ですが,mesangiumの核が拡大した基質の中 に4個以上ありますので,定義からいうと, mesangium細胞増多がある糸球体というふうに 言っていいかと思います。しかし,これが糸球 体腎炎であるかどうかは分からない。 【スライド08】  それから,先ほど演者がcrescentとして糸球 体を出しておられましたが,癒着があって,こ の場所がボウマン腔上皮と従来のpodocyteの両 方が賦活してきますと,いかにもcrescentのよ うに見えます。しかしこれは癒着に伴う糸球体 上皮のtubulizationと僕らは呼んでおります。そ ういう変化とcrescentを間違えないようにしな ければいけない。crescentはあくまでも3層以 上の上皮の増生をさし,癒着の場合には2層止 まりです。 【スライド09】  同じような所見です。 【スライド10】  この切片はelastica-masson PAMで染められて おります。ここに,elastica internaがあります ので,この場所は中膜と内膜の間の細胞増多と いうことになるのでしょうか。 【スライド11】  PAM染色です。もうちょっと薄く切ると, 血栓と中膜筋の関係がもう少しはっきりするの ですが,大まかにいって,APSによる血栓に伴 う細動脈の病変と捉えられるのではないかと思 います。 座長 治療前の患者さんの血清を採ってあった ら,それを腎生検の標本にかけると,抗体が GBMに沿ってlinearに染まります。 持田 申し訳ありませんやっていません。 鎌田 それできれいに染まれば,抗GBM抗体 が何かの役割をしたのではないかと思います。 持田 ありがとうございます。 座長 ありがとうございました,貴重なコメン トを。  そのほか何かありますか。それでは病理の所 見をお願いいたします。城先生お願いします。 城 表題は「APSによるTMAを呈した抗GBM 抗体陽性のネフローゼ症候群」。これも大事な 項目が全部この中に入っていると思います。 【スライド01】  この症例の特徴はwedge biopsyをやって,被 膜下にglobal sclerosisを呈する糸球体が相対的 に多いということと,それ以外の糸球体には glomerular cystic lesionが見られるという形態的 な特徴があります。 【スライド02】  このvas afferensを見ますと,内腔はここに しかないです。非常に強い狭窄があって,恐ら く血栓が関与している病変ではないかと思いま す。そのために,糸球体の毛細血管係蹄は虚脱 傾向にあります。 【スライド03】  被膜下領域ですけれども,毛細血管係蹄は強 い虚脱を起こしてボウマン腔にcysticな拡張が あります。一方,毛細血管係蹄がprimaryに虚 脱を起こして,毛細血管係蹄が縮んで,その分, ボウマン腔が拡張していると思います。 【スライド04】  連続切片でみても,糸球体毛細血管の遺残と 言ってもいいような,毛細血管係蹄しかなくて, その分ボウマン腔のcysticな拡張があります。 【スライド05】  ここもそうです。Vas afferentのところに恐ら く血栓だと思いますが,その血栓でのrecanali-zationを起こした管腔がごくわずかに見られ

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いということで,背景に抗GBM抗体が陽性で すけれども,私が見る限りは,細胞性半月体は なかったと思います。それから,glomerular cystic legionが見られるのが,この症例の特徴 です。 【スライド18】  尿細管の萎縮と,間質の拡大が40%。リン パ球を主体とした炎症細胞浸潤が30%,それ から,間質の毛細血管内に髄外造血が見られま す。動脈系では,高度の内膜の線維性肥厚。恐 らく,中膜筋も関与していると思います。それ から,輸入細動脈では,内膜の硝子様肥厚と血 栓の形成により,一部の細動脈の内腔が閉塞し ている。この場所の血栓は,糸球体内の門部動 脈まで伸長しています。輸入細動脈は蔓状,す なわちplexiformのパターンを呈しているのが 特徴だと思います。 【スライド19】  IgGを見ますと,やはりこれはlinearパター ンと呼ぶには無理があると思います。むしろこ れはnegativeな所見ではないかと思います。こ こは端切れのところで,非特異的のような染ま り方に見えます。基本的には,ここには免疫複 合体性の陽性像ではないと思います。抗GBM 腎炎の場合は,linearパターンに糸球体末梢係 蹄に出てまいりますので,この症例は,抗 GBM抗体が陽性でありながら,糸球体には沈 着がないと見ていいと思います。 【スライド20】   こ こ で 見 ら れ るmesangiual interpositionは, 例えば,高血圧性の腎障害のときに,内皮障害 を介して起こりますので,必ずしも腎炎だけで interpositionが起こるとはかぎりません。この 症例も先ほどの細動脈の狭窄があれだけ強いで すから,虚血性内皮障害に伴うmesangium in-terpositionによって生じた,GBMの二重化と 言っていいと思います。 【スライド21】  このような病変は,immune depositの場合も ありますし,単にinsulation,すなわち内皮障 【スライド12】  もう1つの所見としては,細動脈が蛇行して いますね。plexiform,すなわち蔓状に蛇行して いるというふうな表現を使います。APSの細動 脈病変の1つの特徴と思います。 【スライド13】  これもそうです。1切片でこれだけたくさん 細動脈管腔の断面が見えるということは,立体 的に見ると,蔓状に血管が蛇行しているという ことだと思います。動脈が伸長している結果, 蔓状に変化している。縦に伸長しているために, こういうplexiformな細動脈の形態が出るのだ ろうと思います。 【スライド14】  この所見は,Nochy(JASN)の論文にもAPS の特徴として出ております。 【スライド15】  この症例は,赤芽球の増生を伴う髄外造血が あります。これは間質の髄外造血ですけれども, 慢性虚血性の変化が起こった場合,腎臓そのも のは,従来,中間中胚葉ですから,虚血がきた ときに,こういう髄外造血まで間質細胞脱分化 するのではないかと思います。 【スライド16】  まとめますと,糸球体は99個で,全節性硬 化は41%あります。mesangium細胞増多は,先 ほどのようにたしかにあると思います。43%で す。しかし,管内性あるいは管外性病変はあり ません。それから,分節性硬化が19%,癒着 が14%,虚脱が58個中の7個です。glomerular cystic regionが31%あります。糸球体基底膜は 虚脱をしていますが,肥厚し,二重化を呈して います。これは内皮障害による病変だと思いま す。糸球体基底膜にspike,bubblingはありませ ん。また,残存糸球体が代償性に腫大をしてお ります。 【スライド17】  糸球体においては,癒着が足細胞ないしは, ボウマン腔上皮の腫大を招きtubulizationを形 成しています。これは細胞半月体の所見ではな

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中には見られませんでした。  以上の所見から血栓形成は,輸入細動脈から 門部動脈にとどまり,糸球体毛細血管係蹄には, 虚血性病変以外の血栓性の変化はなかったと思 います。dense depositも浸出性病変によるもの と思われます。  以上の所見から抗リン脂質抗体症候群による 細動脈血栓,糸球体ではそれに伴う虚血性の毛 細血管傷害性病変と診断します。  抗GBM抗体が陽性ですが,免疫染色におい て抗GBM抗体の沈着はありませんので,抗 GBM抗体腎炎は病理的には否定できると思い ます。  抗GBM抗体が陽性で,IgGがGBMが線状に 沈着する症例においても,半月体を必らずしも 誘導しない症例があります。私たちも2011年 の東部会に抗GBM抗体が血清中に陽性で,し かも糸球体に線状パターンでIgGが沈着してい るにもかかわらず,全く半月体形成を起こして いなかった症例を発表しております。抗体であ るIgGのsubtypeによって,腎炎発症型と,そ うではないものが,分かれるという論文がある ようです。  以上,この症例は抗リン脂質抗体症候群によ る一元的なかたちで診断を付けてよいかと思い ます。  先ほど,鎌田先生のご発言ですけれども, cardiolipinとlupus anticoagulantが 重 要 で す が, 対応抗原としては,ほかにもあります。一番有 名なのは,β2GP1ですけれども,prothrombin, あるいはvon Willebrand抗原などいろいろな対 応抗原があります。小池隆夫先生の論文からの 引用ですが,内皮があって,それに接着する cardiolipinがあって,これに対して,β2GP1が 出てきます。  先ほどimmunoglobulinが陽性かどうかという 問題。これはこのシェーマから考えますと悩ま しいところです。このanticardiolipinに対する 抗体がありますので,IgGが出てきてよいよう に思いますが,APSの血栓は,基本的には免疫 害が起こって血漿成分が中に入って,それが凝 固しても,こういう病変は起こります。FSGS もそうです。だから,IgM,C3が部分的にme-sangiumに陽性となってもおかしくない所見だ と思います。免疫複合体性のものととれないと 思います。 【スライド22】  尿細管には空胞が見られます。microvilliが ありますので,近位系,おそらくP3 portion辺 りかなと思います。脂肪化がどういう機序でき たのか,私には説明できません。ネフローゼの 症例ですので,hyperlipemiaからくる変化かも 分かりません。 【スライド23】  免疫染色では,IgM,C3がfocal segmentalに 陽性です。さっきの糸球体における電顕での浸 出性病変に対応しているのではないかと思いま す。IgG,κ,λも軽度陽性ですが,血漿浸出 のひどい場合には,浸出性病変に巻き込まれて, IgM,C3のほかに,IgG,κ,λが巻き込まれ てくることもあり得ると思います。 【スライド24】  GBMが線状の陽性像ではないので,抗GBM 抗体が糸球体に作用しているとはいえません。  以上の所見から,抗リン脂質抗体症候群に伴 う虚血性の内皮障害がmesangium領域に浸出性 病変を誘導し,そこにIgM,C3が陽性となっ たことが疑われます。免疫複合体性腎炎は否定 的だと思います。  電顕的には,dense depositが傍mesangiumと mesangium領域に陽性ですが,恐らく浸出性病 変によるものと思われます。mesangium間入が 見られますが,虚血性内皮傷害に対する反応性 の病変と思われます。mesangium細胞増多が見 られますが,これはよく分かりません。標本が 厚いせいか,あるいは,mesangium matrixが拡 大してくると,糖尿病の場合もそうですけれど も,非腎炎的にmesangiumが増殖して見えます ので,そういう変化かもしれません。抗リン脂 質抗体病変特有の血栓は糸球体毛細血管係蹄の

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 これはAPSの慢性化病変ですが,こういう ふうにglomerular cystic legionを伴います。こ の症例でもこの病変は顕著に認められます。  この症例は,glomerular cystic legionがありま すが,ご覧のように糸球体の中に赤芽球のhe-matopoiesisがあります。髄外造血ですね。虚血 性の変化が長く続いたときの反応として,糸球 体の中に出てくることすらあります。  それから,arteriopathyですけれども,やはり acuteとchronicに分かれてきます。これがplexi-formの像です。ご覧のように,本症例でもあ りましたように,蛇行してきます。血栓の plateletからくるいろいろな増殖因子が平滑筋 に作用します。高血圧では,中膜平滑筋が肥大 してきて,動脈壁が厚くなりますが,縦に動脈 が 伸 び て き て も い い わ け で す。APSはlong-standingですので,増殖因子が平滑筋に作用し ますと,vas efferentの動脈が長くなって,蔓状 に変化してくるのではないかと思います。これ をplexiformと呼んでいます。  APSの細動脈病変ですが,血栓からくるre-canalizationは,むしろ内弾性板の内側の血栓と してあるはずなのですけれども,構造的に見ま すと,必ずしもそうではないみたいです。これ は血栓なのだろうと思うのですけれども,内皮 の外側で,中膜筋との間にある可能性がある。 単に血栓のrecanalizationだけだとは言えないと 思います。 【スライド28】  この病変はfluffy materialと呼んでいますけ れども,羽毛状の変化が,こういうふうに中膜 筋と内膜の間に出てまいります。同部位に増殖 性の変化は何もありません。こういうかたちの 血栓もAPSにはあるように思います。内皮障 害から浸出を起こしたという解釈もありますけ れども,APS血栓の副次病変として解離性に強 い変化が,内膜と中膜筋の間に出てくるようで す。 【スライド29】  chronicになると,区別がむずかしくなりま グロブリン陰性と思います。  しかし,lupus絡みのlupus anticoagulantでく るAPSでは,確かにIgGが強く出てきます。し かし,これはlupusのimmunoglobulinである可 能性もあります。  ということで,抗リン脂質抗体症候群のIgG の陽性については,私もちゃんとした結論は 持っておりません。一応,陰性だと私は考えて おりますが,では陽性に出たときに,いま申し 上げた可能性を否定できるかどうかは分かりま せん。 【スライド25】  APSの形態に入ります。大きくglomerulopa-thy と,arteriopa APSの形態に入ります。大きくglomerulopa-thy と,tubulointerstitial fibrosis の3つ に 分 か れ ま す。glomerulitisはacuteと chronicに分かれてきます。acuteでは,ご覧の ようにこれはSLEにAPSが合併した症例です けれども,管内増殖性病変がみられることすら あります。 【スライド26】  これはSjogrenを合併した症例で,こういう ふうに血栓性のものが出てまいりますが,血栓 がfibrinなのかplateletなのか,あるいはそれ以 外のものなのかということが問題になってまい ります。 【スライド27】  典型的なものは,blood lakeといわれるよう に,糸球体の中で血栓を起こして,メサニギウ ム融解を介してそこに出血し,血の海のように 毛細血管が拡張します。これは糸球体にAPS を起こした典型像だと思います。hilar arteryの ところに血栓を起こしてまいります。  この血栓が一体何かということは,後で電顕 が出てまいりますが,血小板なのか,fibrinな のか,よく分かりません。  chronicになると,segmental legionに進展し, むしろ非特異的な病変になってまいります。 chronic phaseでは,なかなかAPSの診断がつき ません。要するに,FSGS-like legionという病 変になってきます。

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あれば,primaryはTMAがあると考えられる。 私自身は糸球体の病変は糸球体腎炎が合併して いるのかと考えています。

【スライド02】

 glomerular cystは, ご 承 知 の よ う にatubular glomerulusの1つの末期像です。虚血で,尿細 管とのつながりがなくなりますと,糸球体の係 蹄は生きていますけれども,少しずつcysticに なる。悪性高血圧とか,いろいろなときに, glomerular cystが見られるわけで,基本的には atubularになる。面白いのは,このatubularになっ たボウマン嚢上皮がpodocyte化して,徐々に係 蹄 の 構 造 が 萎 縮 し て,podocyteが 脱 落 し て, cystの中に蛋白様のものと上皮が浮かんでいる という像を見ることはあると思います。  被膜下に虚血が起きたということは間違いな いと思います。生きている糸球体はmpgm-like になっております。 【スライド03】  尿細管がみんななくなってしまったのです。 aglomerular cystになるわけで,一部はつぶれて しまう。  lobulationがあって,scleroticになってきてお ります。 【スライド04】  動脈もagingで見るようなelastfibrosisではな くて,内膜の線維性肥厚を呈している。  crescentで,通常は,ボウマン腔基底膜が消 失したら,crescentもあるので,ボウマン嚢の 基底膜が消失している。広い意味でcrescentを 考えないと説明できないと思います。 【スライド05】  mesangiumの増殖があって,doughnut region ができてきております。pseudo tubulization様 のadenomatoidなcrescentも,係蹄とのつながり があって,crescentも否定できない。内腔に炎 症細胞が少しいる。double contourを呈してき ています。patchy tubular injury,regenerativeな 変化も見られている。 【スライド06】 す。 【スライド30】  強いglomerular cysticなlegionが出てくると いうのは,細動脈の,plexiformな病変により, 繰り返し血流が途絶えた場合に,その供給を受 ける糸球体毛細血管係蹄がだんだん退縮してき て,最後はこういうrudimentaryなかたちで残 るのではないかと思います。 【スライド31】  D’Agattiは,抗リン脂質抗体症候群をprimary とlupusの2つのカテゴリーに分けてしまうと, こういったlupus-likeのものが拾えなくなって くるということで,この第3のカテゴリーが重 要なのだいっています。  このlupusのカテゴリーを満足しないtypeの カテゴリーをやはり臨床的に置かないと,きち んとAPSを診断できないように思います。 【スライド32】  これは秋田大の症例で,抗リン脂質抗体症候 群の電顕像をはじめて見ました。アトラスを見 ても,私の知る限りは電顕像は見たことがあり ません。これを見ますと,fibrin血栓でもなく, 血小板血栓でもないようです。 【スライド33】  この症例は確かな抗リン脂質抗体症候群の症 例だったので,この電顕像がAPS血栓を示し ていることは確かです。しかしこれが特徴像で あるかどうかわかりません。  以上です。 座長 はい。どうもありがとうございました。  山口先生お願いします。 山口 城先生から,珍しい写真をずいぶん見せ てもらって勉強になりました。ただ,この症例 はprimaryのAPSだけで全部説明が,ネフロー ゼとか,MPGN-likeな糸球体の病変というのは 説明できるのかというのは,私もやはり疑問で す。内皮障害は,移植のときもいろいろなかた ちで見ていますが,Lenkeは,MPGNはprimary にTMAがあって,それで二次的に変化してく るという考え方がありますので,MPGN-likeで

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ですが,はっきりしないです。急性の尿細管障 害もある。 【スライド15】  recanalizationした内膜で,neo medeiaを思わ せる血管形成が見られています。JGAがhyper-plasticで虚血を示唆するような所見,硬化性の 病変もある。 【スライド16】  elasticaを見ますと,弾性板が断裂してしまっ ている。elastosisはなくて,内膜が厚くなって いる。 【スライド17】  弓状動脈に近いところです。中膜筋が薄く なって,内膜,中膜,弾性板の断裂から,内膜 まで線維性の肥厚が顕著で,内腔の狭小化が目 立っている。APSですと,硝子様物が一緒に混 ざって,厚くなるのですが,線維性のものに, 古くなると置き換わってしまった。 【スライド18】  elasticaを見ますと,弾性板の断裂がに見ら れる。線維性の肥厚が強い。 【スライド19】  IFでIgG,IgMがsegmentalに し か,C3が 目 立っています。 【スライド20】  電顕でmesangiumの領域,内皮下,parame-sangiumにdense depositはある。mesangiumの増 殖,内皮下にも沈着があって,interpositionを 起こしている。macrophages系の細胞も少し混 ざってきていますので,immune complex型の MPGNも考えないといけない。 【スライド21】  内皮下の浮腫は,あまり目立たない。ここは segmentalな病変で,FSGS様の病変ですから, 二次的な染み込み病変で,上皮が剥離してし まっています。crescent-likeに見えていますけ れども,二次的なFSGSに伴う上皮様の反応と 思います。 【スライド22】  MPGN様に見えた場所です。,内皮下に沈着  好中球も混ざって,recanalizationした。TMA の所見も混ざっている。全体にcollapseしてい るかというと,必ずしもそうではなくて,大き いです。Ischemiaだけだと説明が無理です。 【スライド07】  部分的に硬化,collapseしているところもあ る。 血 管 極 部 の と こ ろ にrecanalizationし た thrombticな変化を示唆する所見も加わっては いる。ボウマン嚢が二重化,あるいは断裂した ような像もある。 【スライド08】  この動脈の変化です。弾性板がはっきりしな く,断裂している。血栓性の病変だけではなく て,動脈が割れてくるのです。Mechanicalな障 害も恐らく,APSのときには起こってくる。 pseudo tubulization様の銀で係蹄とのつながり をもってできてきている。 【スライド09】  organized thrombusを示唆する血栓様のもの もあります。mesangiumが増殖して二重化して, MPGN像と思います。狭小化した小葉間動脈が 見られる。 【スライド10】  染み込み病変で,脂質様のものがたまってき ております。MPGNの像と。 【スライド11】  入り口のところで,内皮が少し増殖したよう な像も加わってはいる。doughnut regionもあっ て,炎症細胞はそんなには顕著ではない。 【スライド12】  炎症細胞も混ざって,endothelも増えている のかもしれない。癒着病変で,虚血でpodocyte の障害は起こる。 【スライド13】  動脈閉塞に伴う間質の線維化が顕著です。 segmentalなscleroticな病変もある。小葉間は弾 性板の断裂があって,内膜の線維性肥厚が顕著 です。 【スライド14】  APSですと,硝子様物がはっきりしてくるの

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臓以外の血栓様の症状は,全くないのでしょう か。もしあったとしたら,治療による反応はど うだったか教えていただきたい。 持田 CT,MRIを撮ったところ,陳旧性に脳 梗塞は認められている状況だったのですけれど も,四肢や,ほかの病変に関しては,血栓閉塞 を認める所見は認められませんでした。 高市 患者さんは53歳ですから,陳旧性脳梗 塞でも割と早いのではないかと思われますがい かがでしょうか。 持田 はい。早いと思いますが,放線冠のほう にあったのですけれども,症状的にはほとんど 出ていないような状況です。 高市 分かりました。ありがとうございます。 座長 はい。城先生。 城 小池先生の臨床免疫の文献を読みますと, APSの腎臓の合併は全体の20%ぐらいなのだ そうです。だから,腎臓が100%で,全身症状 がその何%かという捉え方ではなくて,全身症 状があって,腎臓のcomplicationが20%という 捉え方のほうが正しいと思います。 持田 あまり多くはないというふうには報告さ れていますけれども,難しいところですね。  あと,先ほどの質問で,大動脈とAPSの関 連ということを少し調べたのですが,『PubMed』 でも,3,4例ぐらいしかなくて,考察でもま れな症例としか書かれていなくて,結局のとこ ろ,どういう発症でなったのかというのは分か りませんでした。SLEにやはり合併しているも のというのが,8割,9割あったということで, primaryのAPSに関しては報告はほとんどない です。 座長 そのほか,何かコメントは。はい。乳原 先生,お願いします。 乳原 虎の門病院の乳原です。  まず,GBM抗体のことを言われていたので すが,GBM抗体が関係しているとしたならば, やはりIgGがlinearに染まらなければいけない。 半月体形成がすごく激しい特徴を有します。 ANCAよりも激しいといことです。臨床経過で があって,interpositionがあり,GBM下に沈着

が見られて,mesangial matrixにもdense deposit はある。doughnut regionの毛細血管腔があって, mesangiumの増殖も明らかで全部APSで,TMA で説明できるかクエスチョンだなと思います。 【スライド23】  これがinterpositionで,膜内にも沈着が少し ある。 【スライド24】

 MPGN,immune complex typeで,secondary, そこに抗GBM抗体が,病変をつくるかどうか は分かりません。chronicなthromboticなangiop-athy。太い動脈系とmicroangiopathy,primaryで, cortical scarがあって,intimal thickeningがある。 腎炎とprimaryのAPSとが合併してきた。 【スライド25】

 先ほど引かれた文献の一部であります。glo-merular cystがあって,硬化に,萎縮に伴う細 動脈のplexiform patternをとっているneo media ができてくるわけで,本来これは平滑筋細胞, 抗体で染めていると二重に出てくるわけです。 JGAのhyperplasiaも起こる。 【スライド26】  aortaの解離性動脈瘤がprimary APSに絡んで 起きてきたのかどうか。ぜひ確認していただけ れば,面白いと思います。 【スライド27】  このcardiolipin抗体とか,いろいろなものが, ターゲットになる。endothel,monocyto,plate-let, 凝 固 系 の 因 子 が タ ー ゲ ッ ト に な っ て, thromboticな変化,病態としては強い動脈の障 害がくると思います。  以上です。 座長 はい。どうもありがとうございました。 以上2人の病理の先生のご意見を踏まえて,何 か質問,コメントはございますでしょうか。は い。お願いします。 高市 虎の門病院の高市ですけれども,臨床の 先生に教えていただきたいのですが,山口先生 からご指摘ありましたが,この患者さんに,腎

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れがAPSの場合は,そんな1週間,2週間で一 気にならないことが多いので。 城 秋田の症例は,非常にフレッシュな症例で, 電顕で見てもfibrinは全くないです。 乳原 そうですか。PTAH染色でも出ないです か。 城 ええ。出ないです。 乳原 はい。出ない症例があると。いや。私た ちは出た症例があったので,それをちょっと評 価したわけですが。  もう1つは,APSの場合には,単独ではなか なか腎症がこないというのが一般的でして,従 来はループス腎炎があり,ds-DNAや補体の変 化のない症例で腎症が激しくなった場合に, cardiolipin抗体やlupus anticoagulantが陽性だと APSの関与があると考えます。 持田 この人はSLE-likeのところは全くないで す。全身所見も,小さい陳旧性の脳梗塞がある だけで,ほかに血栓が閉塞するようなものとか はなかった。あえて言うのは,乖離がどうなの かということになりますが,先ほども症例を調 べましたところ,ほとんど少ないということな ので,関連性はあまりないのではないのかと考 えます。 乳原 実はAPS腎症の場合,先ほどご指摘が あったように,IFでループス腎炎の関与が乏し い場合にIgGやC3が染まらないのが特徴です。 しかし沈着物に見えるような症例があるとそれ を沈着物にするかどうかということが問題にな ると。  以上です。 座長 はい。どうもありがとうございました。 山口先生,もう1つ,APSだけでは説明のつか ないMPGN,病理的に難しいかもしれないです が,原因としてどんなことを想定されますか? 山口 虚血性の変化とか,いろいろなものが二 次的に加わっていますので,IFの染まりが十分 ではないように思いますけれども,IgG型の MPGNで,腎炎はあると思っています。ネフ ローゼも呈していますしね。 1,2週間から1カ月以内に一気に末期腎不全に いってしまうということが,抗GBM抗体腎炎, またはgoodpastureの特徴ですので,そういう 面から見ると,やはりGBM抗体の関与は少な いのかなとも思います。  あとは,ANCA関連血管炎が主体でGBM抗 体が陽性症例では,IgGのlinearな沈着という のは,意外と出てこないのです。やはりそうい う場合に,GBM抗体の意味づけを考えてみる 必要があると思います。  それから,この人の場合には,APSだとしま すと,抗凝固療法が中心になります。ステロイ ドがかなり強調されたのですが,実際にはAPS の治療として,APS抗体が陽性の症例に対して, リウマチ膠原病の分野である時期にステロイド で戦ったのですが,実際にはほとんど効かな かった。むしろ抗凝固療法が主体のほうがいい ということになってきていますので,逆にこれ は抗凝固療法も同時にされたということなの で。 持田 もちろん。はい。今も。 乳原 むしろ,そっちがよく効いたということ が,私は中心だと思います。  あとは,もしこれが血栓がどのぐらい関与し ているかということです,APSの場合。その場 合はPTAH染色をして,もうちょっと細動脈の 中の情報がはっきりとしてくるのです。PTAH 染色をすると,APSの場合にfibrin血栓が陽性 になる症例を確認したことがあります。 持田 だいぶ古いので,あまり出ないのです。 城 いや。先生,APSはfibrin血栓ではないよ うです。PTHはfibrinを染める染色だからPTH をやっても,僕はAPSの診断にはならないと 思います。 乳原 それはacuteの要素は,fibrin血栓では出 てくる。chronicで進行しているtypeがあると, むしろこれはchronicで来ているので,徐々に 内膜の線維性肥厚が強くなってきていると考 え,その場合は,PTAH染色は出ないだろうと。 ただ,この場合は1年の経過ですけれども,こ

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 hyperfiltrationで,6割は落ちてしまっていま す。4割残っているわけです。そのうち,cres-centの数も意外と多いのです。  hyperfiltrationとcrescentで,MPGNだけでも, ネフローゼは呈しますので。何が原因かは分か りません。 座長 はい。ありがとうございました。何か聞 いておきたいことはありますか。 持田 あと,外来で間質性肺炎が少しあって, 蛋白尿が少しある症例で,GBMを測ってみる と,50,60とかと,明らかにアクティブな所 見がない人が散見されるような気がするので す。そういう人に,抗GBM抗体はsubclassま で測っていないのですけれども,どうなのかと いうことと,ほかの先生方に,そういう人にど ういうふうなフォローをされているのかを, ちょっと聞きたいなと。 座長 もしよかったら,血清を用いて間接法で, さきほど鎌田先生がおっしゃったように染めて みて,量的意義を見てみたらと思います。

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抗リン脂質抗体症候群(APS)による 血栓性微小血管障害(TMA)を呈した 抗GBM抗体陽性ネフローゼ症候群の1例 湘南鎌倉総合病院 腎免疫血管内科 持田泰寛 先生、田村友美 先生、吉田輝彦 先生、松浦 亮 先生、石岡邦啓 先生、 真栄里恭子 先生、岡真知子 先生、守矢英和 先生、日高寿美 先生、大竹剛靖 先生、 小林修三 先生 東北大学大学院・医科学専攻・病理病態学講座 城 謙輔 第63回 神奈川腎炎研究会2015年2月21日(土)15:30~19:45 横浜シンポジア 城先生 _01 城先生 _02 城先生 _03 城先生 _04 城先生 _05 城先生 _06

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城先生 _07 城先生 _08 城先生 _09 城先生 _10 城先生 _11 城先生 _12

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城先生 _13 城先生 _14 城先生 _15 城先生 _16 <光顕> 標本は楔状切除されています。 糸球体は、41/99個 (41%)に全節性硬化を認めます。 残存糸球体において、メサンギウム細胞増多を25/58個(43%)認めますが、 管内性細胞増多ならびに半月体形成はありません。 分節性硬化・硝子化を11/58個(19%)認め、癒着を8/58個(14%)、虚脱を7/58個、 glomerular cystic lesionを18/58個(31%)認めます。

糸球体基底膜は虚脱していますが、肥厚し、二重化を伴っています。 spikeならびにbubblingはありません。残存糸球体の腫大が目立ちます(250μm)。 また、上記の癒着糸球体において足細胞ないしボウマン嚢上皮が腫大し、 tubularizationを伴っています。細胞性半月体の所見ではありません。 被膜下領域に全節性糸球体硬化とglomerular cystic lesionが目立ちます。 尿細管・間質 尿細管の萎縮ならびに間質の線維性拡大を中等度に認め(40%)、 同域にリンパ球を主体とした炎症細胞浸潤を30%認めます。 尿細管では領域的に急性尿細管壊死が目立ちます。間質には髄外造血巣を認める。 血管系 小葉間動脈に高度の内膜の線維性肥厚を呈しています。 また、輸入細動脈には内膜の硝子様肥厚と血栓形成により、 一部の細動脈の内腔が閉鎖しています。その血栓は糸球体内門部動脈に伸張しています。 また、輸入細動脈は伸長し、蔓状形成(Plexiform)のパターンを呈しています。 城先生 _17 G M A C3 C1q κ λ 城先生 _18

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城先生 _19

城先生 _20

<免疫染色>

IgM・C3が focal segmental mesangialのおそらく浸出性病変に陽性です。 IgG・κ・λが軽度陽性ですが、おそらく浸出性病変によるものと思われます。 IgGが糸球体末梢係蹄に線状の陽性像はなく、抗GBM抗体が糸球体に 作用しているとは思えません。 以上の所見から、抗リン脂質抗体症候群に伴う虚血性の内皮障害が メサンギウム領域に浸出性病変を誘導し、そこにIgM・C3が陽性となっています。 免疫複合体性腎炎は否定的です。 <電顕診断> dense depositが傍メサンギウムならびにメサンギウム領域に陽性ですが、 おそらく浸出性病変と思われます。メサンギウム間入が顕著に見られますが、 虚血性内皮障害に伴う反応性病変と思われます。メサンギウム細胞増多が 見られますが、免疫複合体性腎炎によるものではありません。 抗リン脂質抗体特有の血栓は撮影された糸球体の中には見られません。 以上の所見から、血栓形成は輸入細動脈から門部動脈にとどまり、 糸球体毛細血管係蹄は、その虚血性病変に対応する所見と思われます。 dense depositも浸出性病変によるものと思われます。  城先生 _21 城先生 _22 以上の所見から、抗リン脂質抗体症候群による細動脈血栓、 糸球体はそれによる虚血性毛細血管障害と診断します。 抗GBM抗体が陽性ですが、免疫染色において抗GBM抗体 の糸球体毛細血管係蹄への沈着はなく、抗GBM抗体腎炎は否定的です。 抗GBM抗体陽性でIgGがGBMに線状沈着のある症例でも微小変化の症例 がある(サルコイドーシス症例(Kamata Y ey al, 2015, 2011年東部会 仙台社保症例) 城先生 _23 K12-59 53歳 男性  臨床診断 ネフローゼ症候群、抗リン脂質抗体症候群、抗GBM抗体:陽性 病因分類 抗リン脂質抗体症候群 病型分類 抗リン脂質抗体症候群による細動脈血栓、 糸球体はそれによる虚血性毛細血管障害、 抗GBM抗体腎炎は否定 IF診断 IgMとC3が浸出性病変に陽性、免疫複合体性腎炎否定 電顕診断 抗リン脂質抗体症候群に伴う細動脈血栓に続発した 虚血性糸球体毛細血管障害  皮質:髄質=10:0 糸球体数:99個、全節性硬化:41個、 メサンギウム細胞増殖:25個、管内性細胞増多:0個、 半月体形成:0個(細胞性半月体:0個、線維細胞性半月体:0個、線維性半月体:0個) 分節性硬化・硝子化:11個、癒着:8個、虚脱: 7個、glomerular cystic lesion:18個  城先生 _24 抗リン脂質抗体(antiphospholipid antibody=aPL) 1. 抗カルジオリピン抗体(anticardiolipin antibody=aCL) 固相酵素抗体法 2.ループス・アンチコアグラント (lupusanticoagulants=LA) 対応抗原 1.β2glycoprotein (β2 GP1) 2.プロトロンビン 3.von Willebrand 因子 4. アネキシンV

(22)

臨床免疫 34:470-474,2000

城先生 _25

病理形態的分類

1.Glomerulopathy with thrombotic microangiopathy (TMA) a. glomerular capillary

acute: Endocapillary lesion,

thrombi (not-fibrin) : HUS-like (mesangiolysis) chronic: FSGS-like

b. hilar artery: cyst-like thrombi

2. Arteriopathy associated with antiphospholipid syndrome a. afferent artery

acute: HUS vascular thrombi, mucoid thickning-like chronic (healing):

plexiform,

recanalizing thrombi b. interlobular artery

chronic: celluar (fibrous) intimal proliferation 3. Tubulointerstitial fibrosis (glomerular cystic-like)

城先生 _26

9 9--0101 38y male38y male APS APS+SLE+SLE: early: early Endocapilary lesion Endocapilary lesion Proteiuria 3.0g/day Proteiuria 3.0g/day CCr 54 ml/min CCr 54 ml/min 城先生 _27 城先生 _28 28-05 46 y female APS+Sjoegren : acue Endocaoillary+ With foam cells

城先生 _29 28-05 46 y female APS+Sjoegren : acue Endocaoillary+ With TIN 城先生 _30 9

9--0101 38y male38y male APS APS++SLE: earlySLE: early Thrombi Thrombi Blood cyst Blood cyst

(23)

9

9--0101 38y male38y male APS APS++SLE: earlySLE: early Hilar aetery thrombi Hilar aetery thrombi

城先生 _31

35-03 45 y female APS: Cronic: FSGS-like Brain infarct Ccr 48ml/min Prot. Uria 0.58g/day

城先生 _32 69 69--0000 APS:Chronic APS:Chronic Glomerular cystic Glomerular cystic 城先生 _33 城先生 _34 10-06 47 y female APS+Sjoegren : Chronic Glomerular cystic With periglomerular fibrosis

城先生 _35 10-06 47 y female APS+Sjoegren : Chronic Extramedullary hematopoiesis 城先生 _36 病理形態的分類

1.Glomerulopathy with hrombotic microangiopathy (TMA) a. glomerular capillary

acute: Endocapillary lesion,

thrombi(not-fibrin) : cystic (mesangiolysis) chronic: FSGS-like

b. hilar artery: cyst-like thrombi

2. Arteriopathy associated with antiphospholipid syndrome

a. afferent artery

acute: HUS vascular type, mucoid thickning-like chronic (healing):

plexiform, recanalizing thrombi b. interlobular artery

chronic: celluar (fibrous) intimal proliferation

(24)

69-00 35 y female APS+SLE Plexiform artery

城先生 _37

9

9--0101 38y male38y male APS APS++SLE: earlySLE: early Arteriole Arteriole Thrombus recanalizaion Thrombus recanalizaion 城先生 _38 69-00 35 y female APS+SLE Arteriole :acute Arteriole :acute Subendotherial fluffy material Subendotherial fluffy material

城先生 _39 城先生 _40 69-00 35 y female APS+SLE Interlobular artery chronic Intimal fibrosis 城先生 _41 病理形態的分類

1.Glomerulopathy with hrombotic microangiopathy (TMA) a. glomerular capillary

acute: Endocapillary lesion,

thrombi(not-fibrin) : cystic (mesangiolysis) chronic: FSGS-like

b. hilar artery: cyst-like thrombi

2. Arteriopathy associated with antiphospholipid syndrome a. afferent artery

acute: HUS vascular type, mucoid thickning-like chronic (healing):

plexiform, recanalizing thrombi b. interlobular artery

chronic: celluar (fibrous) intimal proliferation 3. Tubulointerstitial fibrosis (glomerular cystic-like)

城先生 _42 69-00 35 y female APS+SLE Chronic Chronic Glomerular cystic Glomerular cystic Artery: plexiform Artery: plexiform

(25)

抗リン脂質抗体症候群の臨床的分類

1.primary anticardiolipin

(antiphospholipid) syndrome 2. anticardiolipin syndrome

associated with lupus nephritis

3. anticardiolipin syndrome

associated with lupus-like syndromesyndrome

D’Agati V, et al J

D’Agati V, et al J㻌㻌 AmAm㻌㻌 Soc Nephrol 1:777Soc Nephrol 1:777--784, 1990784, 1990

城先生 _43 抗リン脂質抗体症候群 城先生 _44 抗リン脂質抗体症候群 城先生 _45 城先生 _46 抗リン脂質抗体症候群の臨床的事項 1.深部静脈血栓症 2 . 肺塞栓 (肺性高血圧) 3. 動脈閉塞 4.脳卒中 5.胎児死亡 6.進行性腎機能障害、腎梗塞、蛋白尿 7.腎性高血圧 山口先生 _01 I-3:APSによるTMAを呈した抗GBM抗体陽性ネフ ローゼ症候群の一例(湘南鎌倉病院) 症例:53歳、男。05年高血圧症、脂質異常症。 10年蛋白尿。11年腹部大動脈解離で大動脈瘤 で置換術施行。12年Cr 2.0mg/dl, U-TP 8g/gcr, 呼吸困難で入院。下腿浮腫、Cr 3.97mg/dl, U-TP 8g/day, 抗カルジオリピン抗体82IU/ml、抗 GBM抗体24EU/ml、ネフローゼ症候群。 臨床病理学的問題点: 1.APSで良いか? 2.抗GBM抗体陽性の意義は? 山口先生 _02

(26)

山口先生 _03 山口先生 _04 山口先生 _05 山口先生 _06 山口先生 _07 山口先生 _08

(27)

山口先生 _09 山口先生 _10 山口先生 _11 山口先生 _12 山口先生 _13 山口先生 _14

(28)

山口先生 _15 山口先生 _16 山口先生 _17 山口先生 _18 山口先生 _19 κ IgM IgG C3 山口先生 _20

(29)

山口先生 _21

山口先生 _22

山口先生 _23

山口先生 _24 病㻌 理㻌 診㻌 断㻌 (63-I-3)

1. Membranoproliferative glomerulonephritis, IC type, secondary 2. Chronic thrombotic angiopathy and microangiopathy, primary A. Cortical scars

B. Marked intimal thickening of interlobular and arcuate arteries

cortex/medulla = 9/1, global sclerosis/cyst/glomeruli= 45/20/120

㻌 光顕では、糸球体に分節状でメサンギウム域拡大、増殖が見られ、係蹄壁の二重化と内皮 下沈着或いは浮腫を認め、多核球浸潤を軽度伴っています。10ヶに半周以上に及ぶ線維性 半月体が見られ、5ヶにボウマン嚢と癒着を伴う分節状硬化巣を認め、5ヶにボウマン囊肥厚 を伴う虚脱があります。 㻌 尿細管系には近位上皮の硝子滴変性が目立ち、上皮の扁平化と内腔の拡張を所々で認め、 尿細管萎縮や硝子円柱を散見します。間質線維化をびまん性に認めます。 㻌 動脈系には小葉間動脈壁には一部で断裂する内弾性板内側に線維性肥厚が目立ち、細 動脈壁全層に及ぶ線維化或いは硝子化が見られます。

㻌 蛍光抗体法では、IgG(+), IgM(+), C3(+), κ(+), λ(±): peripheral > mesangial patternです。 㻌 電顕では、観察糸球体にはボウマン嚢との癒着を伴う分節状硝子化と細胞性半月体が見 られます。GBMに内皮下沈着物が散在性に見られ、傍メサンギウム域に及び、高度のメサン ギウム間入を認めます。内皮の腫大、増生と内皮下浮腫が目立ちます。傍メサンギウム域か ら基質内に半球状の沈着物を認め、メサンギウム細胞増生と癒合性の基質増加が見られま す。脚突起癒合が所々で見られます。 㻌 以上で、上記の診断と思われます。 山口先生 _25 山口先生 _26

(30)

図 7 図 8 一部半月体形成  図 9 図 10腎病理組織像 糸球体は全部で90個  全節性硬化糸球体:皮膜下を中心に30個 細胞性半月体性糸球体:6個 皮膜下の梗塞、虚血像  glomerular cystが多発 尿細管の消失 図 11PAS: 糸球体分葉化  メサンギウム細胞増殖 PAM: 係蹄壁二重化 係蹄のwrinkling 係蹄内に血栓閉塞 図 12Masson trichrome: 血管極のフィブリン血栓 係蹄内に血栓閉塞

参照

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