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剛体折りの可搬建築物への適用可能性の研究−木質パネルを用いた仮設シェルターの事例を通して− [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)剛体折りの可搬建築物への適用可能性の研究 −木質パネルを用いた仮設シェルターの事例を通して− 魚住 英司 1. はじめに. 証と施工性を確認する。これら得られた知見から可搬. 1.1 研究の背景と目的. 建築物への適用可能性を探る。. 近年、東日本大震災をはじめ自然災害が多発し、建. 2. 剛体折りの特徴. 築家らによって多くの応急仮設住宅が提案されてき. 2.1 剛体折りについて. た。それに伴い、建築のあり方としての " 仮設 "、" 可. 剛体折りは、折紙の展開・折り畳みにおけるすべて. 搬 " 建築物が注目を集めている。一方、日本の伝統文. の変形が、折り線上の回転によってのみ起きている折. 化として親しまれてきた折紙は、平面から立体、立体. りの幾何学的モデルである。折紙が柔軟に変形するメ. から平面へと状態が変化する特性、一枚の連続面で構. カニズムには、構成する素材自体の柔軟性を利用した. 成される性質、折りによって生まれる陰影など、工学. ものと、幾何学的な柔軟性を利用したものの 2 種類. デザインにおける新しい手段として着目されている。. に分けることができが、後者のみを利用した変形が剛. そこで、剛体折紙を利用した幾何学的に柔らかな形. 体折りの変形メカニズムである。. 態とすることで、平面から容易に展開可能なアーチ形. 2.2 剛体折りの建築への適用. 状の構造体、剛体折り木質パネル架構 ( 以下、本架構 ). 剛体折りの動的性質を利用して、変形能力を持たせ. を開発した ( 図 1.1,1.2)。なお本架構は、2012 年 11. た可搬建築物に適用する際に留意しなければならない. 月開催の九州大学学園祭へ、建築学科が出展する展示. 項目は以下の3点である。. フォリーとして考案されたものである。本架構の特徴. 1)構成する面. としては以下の点が挙げられる。. 材質が紙の折紙では、厚みのない平面の集合として. 1)剛体折りを用いた折板形状である。. 扱うことができる。しかし建築に適用する際は、構成. 2)展開・折り畳みが可能である。. 材料は剛性を持った面として扱うために、ある程度の. 3)分解し 2t ロングトラックで運搬可能である。. 厚みと体積が必要である。そのため厚みを持った剛体. 4)特殊な技術を要さず、人力のみで施工可能である。. 面でも変形が可能とするために、折り曲げられた面同. 5)仕上げ材として膜材を用いている。. 士が干渉することなく変形する必要がある。以下にモ. 本研究では、本架構の特徴を把握し、今後の発展可. デル化の例を示す ( 図 2.1)。. 能性を探ることを目的とする。. 幾何学的モデル. 剛体面の中心線と稜線の軸をそのまま同一としたモデル 剛体面の中心線に稜線の軸心を 合わせると剛体面同士が干渉し て変形ができなくなってしまう。 稜線部分で剛体面を欠いたモデル 稜線における可動範囲の分だけ 剛体面をけずることによって可 動させる。剛体面の制作におい て、加工する手間がかかる。 稜線の軸心をずらしたモデル. 図1.1 架構外観. 稜線の軸心をずらす方法。この 時、頂点は左右対称性と2方向 折りたたみ可能であるという限 定された折りの条件がある *¹。. 図 1. 2 架構内観. 1.2 研究の方法 まず 2 章では剛体折りの幾何学的特性と、建築への. 図 2.1 構成面のモデル化. 応用における留意点について考察する。3 章では構法、. 2)稜線. 架構システムの概要から本架構の特性を把握する。4. 幾何学的なモデルにおける稜線は、可動するヒンジ. 章では加力試験を行い、本架構の構造的特性を明らか. として再現しなければならない。建具などに用いられ. にする。5章では、試行建設により、架構の構法の検. てきたような蝶番、もしくは自由に変形できる布やゴ. 29−1.

(2) ムといった柔らかい素材等が考えられる。蝶番もしく. あることが確認された。本架構の概要を図 3.2、3.3. はそれに類する機構を用いた場合、可動部分に必ず隙. に示す。本架構では、2次元平面である剛体折りを 3. 間が生じるため、その隙間を塞ぎ、防水を行わなけれ. 次元立体に適用するため、パネル同士を蝶番で接合し. ばならない。一方、柔軟な素材を用いた場合、稜線の. た。パネルの厚みにより山折箇所、谷折箇所で蝶番軸. 部分において曲げや圧縮といった力を伝えることがで. 線がずれるため、架構展開時の平面を2層にすること. きず、平板を折ることによってある種のシェル形状を. で架構の変形を成立させた ( 図 3.4)。. 作り出す、折板構造として構造解析するのではなく、 3,408. 剛体折りは折り変形の過程全体に渡り、ひずみや応. 2,434. 3)形態拘束. 3,212. 違った構造的なアプローチが必要となる。. 力が発生しない。ゆえに、形態を拘束しなければ小さ な力で変形してしまう不安定な構造である。剛体変形. 3,784 4,796. 506. における自由度 ( 並進 3 +回転 3) に加えて、モデル. 506. 506. 1,892. 4,796. 1,892. 506. 図 3.2 立面図・平面図. 自体が持つ変形自由度を考慮する必要がある。 3. 実施架構概要. a2. c2. b2. 3.1 架構形状の決定 本研究では、剛体折りの基本パターンである吉村パ. c1. ターンを応用した架構を扱う。吉村パターンは薄肉の. e2. d2. b1. a1. f2. d1. f1. e1. 図 3.3 展開図. 円筒に上下方向から強い荷重をかけたとき、ダイヤモ ンド形の連続したシワ構造が生じる。この形は円筒の. 架構外部. 破壊の理論を研究した吉村慶丸(当時東京大学教授) に因んで、吉村パターンと呼ばれている。このダイヤ モンド構造の連続した円筒(擬似円筒)は、横方向か. 谷折箇所. 架構内部. 山折箇所. 図 3.4 蝶番接合詳細. らの破壊力に強く抵抗することが知られている。同一 のプロポーションの部材で構成され、左右対称性を有. 3.3 下部架構概要. すると同時に、二方向への折り畳みが可能である。よっ. 上部架構は足元を固定することで安定する架構であ. て、構造・構法の両観点から優位と考えられる。また、. る。下部架構の概要を図 3.5 に示す。足下部分の課題. 三角形のメッシュで構成されるため、3点でピン固定. として、運搬可能性保持のために分解可能であること、. することで形状が安定することが知られている * ( 図. 大引きの長さが一般に流通する 4,000mm を超えない. 3.1)。これらの特徴を踏まえ、蝶番を用いて稜線を再. こと、架構足下部分の平面が直交グリッド上にないこ. 現した上部架構に、下部架構を接合し、足元を拘束す. との3点が挙げられた。本架構では、105mm 角の大. ることで形態を安定させる架構とした。. 引きを、B1,B2 のように上下の2層に配置すること. 2. で、使用材を 4,000mm 以下とした。また、両端には 上部架構に合わせた大引き A1,A2 を角度をつけて敷 くことで、足下接合部の形状を架構平面に適合させた。 上部架構および、上下の大引間をボルトで接合するこ とで、可搬性を保持した。. 図 3.1 三角形メッシュの形態拘束. 3.2 上部架構概要. 105mm角材. の杉材、4mm 厚の耐水合板、70mm×102mm×1.5mm. 852 852 426 3408. 上部架構の使用部材は、一般に流通する 45mm 角 A1. A2. B2. t ロングトラックで運搬可能なように、対象箇所に軸. B1. M12ボルト. 芯の抜き差しが可能な平儀星蝶番を用いた。また水勾 配を取るため 1 ユニット 12 パネルとし、左右非対称 の立面とした。本架構は、2種類に折りたたみ可能で 29−2. 506. 1,892. 4,796. M12ボルト. 426 852. の 蝶 番、102mm×102mm×2mm の 蝶 番 と す る。 2. 足下パネル. 1,892. 506. 図 3.5 下部架構詳細図. A2. A1. コンクリートブロック.

(3) 3.4 膜材. 力後は鉛直変位が進まなかったことから、降伏は起き. パネル間を複数の蝶番で接合したため、上部架構展. ていないと考えられ、荷重 150kg 以上でも同様に荷. 開時に隙間が生じ、防水の問題が発生する。そこで防. 重と変位は線形関係を保持することが予想される。水. 水を確保し、軽量性・施工性を高めるため、膜を仕上. 平変位計を取り付けた位置は、加力線付近であったが、. 材として用いた。上部架構は展開すると1枚の平面と. 鉛直変位と同程度に変形が起きたことから本架構の剛. なる特徴があるため、1ユニットを1枚の膜で覆うこ. 性が左右非対称であると判断でき、変位方向から本架. とが可能である。膜材と架構の接合には溶着可能な面. 構パネル f 側の剛性が比較的低いと考察される。. ファスナーを用い、運搬時など取り外しが可能なもの. 4.4 梁方向水平加力試験結果・考察. とし、施工性を向上させた ( 図 3.6)。また、ユニット. 梁方向水平加力試験においては、最大で 201.2kg. 間の連結には止水ファスナーを用い、各ユニット建上. だけ水平に加力し、最大変位は鉛直方向で 3.4mm、. 完了後に止水ファスナーを閉じることで膜材が一体さ. 水平方向で 35.4mm であった。水平方向には、7mm. せることで防水を確保した ( 図 3.7)。. の変形が残った。鉛直加力時と同じく、グラフの傾き が直線的であることから、降伏は起きていないと考え られる。 4.5 桁方向水平加力試験結果・考察 桁方向水平加力試験においては、最大で 138.5kg だけ水平に加力し、最大変位は鉛直方向で 7.8mm、 水平方向で 52.6mm であった。加力解除後の変位の. 図 3.6 面ファスナー. 戻りは、基礎浮き上がりから接地する際のものである。. 図 3.7 止水ファスナー. 4. 加力試験. グラフから最大荷重を予想し、その値に 0.8 を乗じた. 4.1 試験概要. 120kg が降伏荷重と想定された。. 本架構において、以下の3通りの試験を行った。. 105mm角材 1000mm変位計. ①架構最上部の鉛直加力試験 ②梁方向の水平加力試験. 水平変位測定箇所 鉛直変位測定箇所. 桁方向加力試験. 水平変位測定箇所 1000mm変位計. 梁方向加力試験. ③桁方向の水平加力試験. 鉛直加力試験 1000mm変位計. 加力試験では、本架構における2連ユニットのうち、 1ユニットに対して行った。支持条件は、足元部分を. 足下変位B測定箇所 足下変位A測定箇所. 除いて本架構と同一である。試験結果をもとに、上部. 図 4.1 試験方法. 架構の強度と剛性を検討する。また、上記の①→②→. 4.5 小結. ③の順に試験を行った。. 鉛直荷重については、肉眼で変形を確認することが. 4.2 試験方法. できなかった。左右が非対称の形状であることからパ. 各試験の方法を図 4.1 に示す。鉛直加力試験は架. ネルf側の剛性が比較的低い。変形状況と結果を表し. 構上部の水平面に 105mm × 105mm の角材を渡し、. たグラフの傾きにより、本架構は、鉛直方向、梁方向、. その中央から加力を行った。反力は、RC 柱にシャコ. 桁方向の順に剛性が高いことが判断できた。. 万力で設置された H 型鋼から取った。変位計は巻き. 5. 試行建設. 取り式を用いた。梁方向水平加力試験では、パネル. 5.1 試行建設概要. b1,b2 に、アイボルトを各2本取り付け、水平荷重を. 本架構の構法の検討と施工性の検証をするため、実. 4点集中荷重とした。また桁方向水平加力試験では、. 大スケールで試行建設を行った。作業員は主に 6 〜 7. パネル d2 に、アイボルトを2本取り付け、桁方向水. 人で、建ち上げ時など必要に応じて最大 10 名動員し. 平荷重を2点集中荷重とした。水平変位計は、加力方. た。建設期間は平成 24 年 11 月 22 日〜 25 日 (4 日間 ). 向に取り付けた。. である。工場制作は九州大学箱崎キャンパス実験棟で. 4.3 鉛直加力試験結果・考察. 行い、現場建方は九州大学伊都キャンパスにて行っ. 鉛直加力試験において、最大で 151.1kg だけ鉛直. た。上部架構は建方と解体を2度ずつ行い、可搬建築. に加力し、最大変位は鉛直方向で -4.4mm、水平方向. 物として繰り返し利用されることを想定し、試行建設. で -3.6mm であった。直線的なグラフの傾きと、加. を行った。試行建設の手順を図 5.1 に示す。. 29−3.

(4) ⑫完成. ⑪膜材取り付け. ⑩下部架構接合. ⑨アーチユニット建ち上げ. ⑧拘束部材取り付け. ⑦アーチユニット接合. 工場制作. ⑥床材取り付け. ⑤大引組立. ④基礎施工. ③アーチユニット製作. ②パネル制作. ①材料カット. 下部架構. するために、上部架構の足元部分に持ち手を取り付け、 架構の接合完了後取り外した。膜材の設置はアーチユ ニット展開後に取り付け、建ち上げ完了後にユニット 間を止水ファスナーによって接合した。 SUSアングル 149° φ25mm SUSパイプ. 上部架構 ( 建方・解体を 2 度行った ). パイプ設置箇所. 現場建方. パネル設置箇所. 図 5.1 施工プロセス. 5.2 工場制作. M10 ボルト・ナット. 図 5.8 拘束部材詳細図. 工場での作業工程は、製材の加工とアーチユニット. 5.4 考察. の制作である。下部架構の設計寸法長に木材を切断し、. 試行建設は概ね支障なく完了することができた。工. 接合部のボルト穴を開ける。パネルのを構成する部材. 場での部材制作により、大部分をプレファブ化するこ. は精度を必要とするためプレカット加工したものを用. とで、現場での工期を短縮することができた。しかし. い、アーチユニットを制作する。. 上部架構展開後、拘束部材と補強として架構内部から. 5.3 現場建方. 蝶番を取り付けたため時間を要した。施工性の向上が. 建方の状況を以下に示す ( 図 5.2−5.7)。. 必要であると考えられる。今回は現場建方を全て人力 で行ったが、移動式クレーンで補助することで、より 簡単で安全に行うことができるであろう。下部架構は 部材を通しボルト 1 本で接合しているため、回転を 許容する。接合時に角度の固定ができれば速やかに建 方が進むであろう。また面ファスナーで膜材と架構を. 図 5.2 大引組立. 接合したため、架構の形状に沿うよう微調整が可能で. 図 5.3 床材組立. あった。ユニットの接合部は、ファスナーの持ち手が 架構外側であったため内側からは可動しにくかった。 解体完了後、蝶番を確認したところ、コースレッド の破損や、蝶番の歪みが見られた。これは繰り返し、 建方・解体を行う中で、蝶番で接合している部分に架 図 5.4 アーチユニット展開. 構のねじれなど、施工中に発生する応力が集中したこ. 図 5.5 膜材設置. とによるものだと考えられる。 6. まとめ 本架構は剛体折紙を応用し、平面から展開後、足元 を拘束することで安定する架構である。平面に折り畳 むことが可能で、仕上げに膜材を用いる点は、可搬建 図 5.6 上部架構建ち上げ. 築物の折り畳みの可能性や施工性の向上に寄与すると. 図 5.7 上部架構接合. 現場建方は、特殊な工具や重機を使用することなく. 考えられる。実建築の適用に際しては、繰り返しの施. すべて人力で行った。下部架構は下側の大引から順. 工にも耐えうる高強度のヒンジの開発、窓や出入り口. に、微調整を行いながら基礎と緊結した。上部架構は. のデザイン等の検討が必要である。. 架構の足元を固定しない状態では、蝶番が自由に変形 するため形状が安定しない。そこで、施工性を考慮し て a1-a2、c1-c2、e1-e2 パネル間、3 箇所に対して長 ネジとパイプで開きを矯正することで拘束した。a1、 a2 パネルには蝶番が接合できないことから、木材で 制作したパネルで開きを拘束した ( 図 5.8)。 また建ち上げ・上部、下部架構の接合を行いやすく. * 1 折紙の数理とその応用 p174 より * 2 折紙の数理とその応用 p156 より 【参考文献】 1) シリーズ応用数理第3巻 折紙の数理とその応用:野島武敏、萩原一 郎編(共立出版、2012) 2) 折紙の剛体折り条件について:渡邉尚彦 3) 仮設建築のデザイン:朝倉則幸(鹿島出版会、1993.5) 4) 木質構造設計基準・同解説(日本建築学会、2009) 5) 建築物荷重指針・同解説(日本建築学会、2004) 6) 建築物の構造関係技術基準解説書. 29−4.

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