1/3
論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨の公表
学位規則第 8 条に基づき、論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨を公表する。
○氏名 CUI Yuxiao(ちぇ ゆーしゃお)
○学位の種類 博士(工学)
○授与番号 甲 第 1277 号
○授与年月日 2018 年 9 月 25 日
○学位授与の要件 本学学位規程第 18 条第 1 項 学位規則第 4 条第 1 項
○学位論文の題名 Synthesis of chlorophyll derivatives, fabrication of all-solid-state solar cells using the synthetic chlorophyll sensitizers, and their performance
(クロロフィル誘導体の合成と合成クロロフィル増感剤を用い た全固体型太陽電池の構築、並びにそれらの機能)
○審査委員 (主査) 民秋 均 (立命館大学生命科学部教授) 前田 大光 (立命館大学生命科学部教授) 花﨑 知則 (立命館大学生命科学部教授)
<論文の内容の要旨>
本論文は、色素増感太陽電池に注目して、天然産のクロロフィルの様々な誘導体を合成 し、それらを色素増感剤として利用した全固体型太陽電池を創製し、その性能を検討した ものである。第 1章でこれまでの太陽電池について概説した後、第 2 章では本論文で用い た様々なクロロフィル誘導体型色素増感剤の合成についてまとめ、第 3 章においてそれら を利用した全固体型色素増感太陽電池を作り、その性能を検討した。
これまでの色素増感太陽電池では、毒性の高い揮発性電解質溶液が通常使用されており、
そのような溶液の環境への漏出を防ぐことの困難さから、その実用性において大きな問題 となっている。そこで近年、上記の問題点を解決するために、電子授受能の高い固体化合 物を正孔輸送材料として用いた全固体型色素増感太陽電池の開発が進められている。今回、
天然由来のクロロフィルaを出発原料として合成された可視光吸収型増感剤を、二酸化チタ ン半導体電極上に固定化し、2,2',7,7'-tetrakis[N,N-di(4-methoxyphenyl)amino]-9,9'-spirobifluorene を 正孔輸送材料として用いた新規の全固体型色素増感太陽電池を開発した。また、その光増 感剤として用いたクロロフィル誘導体の置換基による色素増感太陽電池での太陽光エネル ギー変換効率への影響について検討し、その置換基効果を明らかにした。
上記のようなクロロフィル色素分子の合成に際して、新たな経路を開発して、短時間で 多数の類縁体を合成することにも成功した。
2/3
<論文審査の結果の要旨>
本論文は、天然産のクロロフィル a を化学的に修飾することで色素増感剤を新たに合成 し、これらを利用した全固体型色素増感太陽電池を創製し、その太陽光エネルギー変換効 率を検討した点に特徴があり、以下の点に関して評価することができる。
(1) シアノバクテリアの一種であるスピルリナからクロロフィル a を抽出し、化学修飾に よって二酸化チタン半導体と結合可能な官能基を 3 位に導入することに成功した。こ の時、塩基性のピリジル基よりも、酸性のカルボキシ基がクロロフィル増感剤の連結 基として有効であることを明らかにした点は評価できる。
(2) 3位にアクリレート残基を有するクロロフィル増感剤を、新たな合成経路で調製するこ とに成功した。特に、アリルエステルによるカルボキシ基の保護が有効であることを 明らかにした点は評価できる。
(3) 3 位のビニル基末端にカルボキシ基を導入したクロロフィル誘導体を光増感剤として 用いた時に、最も高い太陽光エネルギー変換効率が得られた(2.25%)。一方で、3-ビニ
ル基に1,3-フェニレン基を介してカルボキシ基を導入した誘導体では、変換効率は25%
減少し(1.68%)、1,4-フェニレン基を介してカルボキシ基を導入した誘導体では変換効 率はさらに1/3まで減少した(0.75%)。これは、変換効率がクロロフィルπ骨格と半導 体表面の距離に依存することを明らかにしており、評価できる。
(4) 172位に様々なN-置換カルバモイル基を有し、3位にアクリレート残基を有するクロロ フィル誘導体型光増感剤では、N-ドデシルアミド体の変換効率が最も高く、N-置換基 が全固体型色素増感太陽電池での電子移動過程に影響を与えることを明らかにした点 は評価できる。
本論文の審査に関して2018年7月28日(土)9時30分から10時20分まで、リンクス クエア演習室2Eにおいて公聴会を開催し、申請者による論文要旨の説明の後、審査委員は 学位申請者CUI Yuxiaoに対する口頭試問を行った。各審査委員および公聴会参加者より、
クロロフィル色素分子の二酸化チタン半導体表面への吸着、色素分子による太陽エネルギ ー変換効率やそのデータの再現性と、使用したクロロフィル増感剤の合成や耐久性(光安定 性)などに関する質問がなされたが、いずれの質問に対しても申請者の回答は適切なもので あった。また、本論文提出後、主査および副査はそれぞれの立場から論文の内容について 評価を行った。
以上により、審査委員会は一致して、本論文は本研究科の博士学位論文審査基準を満た しており、博士学位を授与するに相応しいものと判断した。
<試験または学力確認の結果の要旨>
本論文の公聴会は、2018年7月28日(土)9時30分から10時20分まで、リンクスク エア演習室2Eで行われた。
本論文の主査は、本論文提出者が本学大学院生命科学研究科博士課程後期課程の在学期
3/3
間中に、研究指導を通じ、日常的に研究討論を行ってきた。
本論文提出者は本学学位規程第18条第1項該当者であり、論文内容および公聴会での質 疑応答を通して、本論文提出者が十分な学識を有し、博士学位に相応しい学力を有してい ることが確認された。
以上の諸点を総合し、本論文提出者に対し、「博士(工学 立命館大学)」の学位を授与 することが適当であると判断する。