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国際18世紀学会報告

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Academic year: 2021

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─ 117 ─. イギリス哲学研究 第 43 号(2020 年). 国際 18 世紀学会 International Society for Eighteenth-Century Studies(ISECS)は四年に一度、場所を. 変えて国際大会を開催している。本年はその年にあたり、連合王国エディンバラ大学で、. “Enlightenment Identities” をテーマに、7月 14 日から 19 日まで開催された。. ISECSは巨大な国際学会で、大会の規模も大きい。今回の参加者もプログラムに記載された事前. の登録者だけで 1500 人ほどにのぼり、招待講演やレセプション、会員総会などの公式行事のほかに、. 477 のセッションが連日並行して開催された。個別報告はほぼその三、四倍なので、1500 から 1900. 件程度となる。このような規模なので、その全貌を把握することは難しい。本会場での招待講演者. だけでも、以下のような大人数となっている。. Tatiana Artemyeva(Herzen State University of Russia/ St Petersburg Centre for History of Ideas). Sébastien Charles(Université du Québec à Trois-Rivières, Canada). Deirdre Coleman(The University of Melbourne, Australia). Penelope J. Corfield(Royal Holloway, University of London; University of Newcastle-UK). Sutapa Dutta(Gargi College, University of Delhi, India). Dena Goodman(University of Michigan). Toshio Kusamitsu(University of the Air, Japan). Antoine Lilti(École des Hautes Études en Sciences Sociales – EHESS, Paris). Thomas Munck(University of Glasgow). Anthony Pagden(University of California, Los Angeles). Kate Retford(Birkbeck College, London University). Silvia Sebastiani(École des Hautes Etudes en Sciences Sociales(EHESS), Paris). Maria-Susana Seguin(Université de Montpellier III; Institut d’Histoire des Représentations et des Idées dans. les Modernités, Universite de Lyon(IHRIM-ENS)et Institut Universitaire de France). 国際 18 世紀学会報告. 長 尾 伸 一. 国際学会報告. ─ 118 ─. 国際学会報告. Maria das Graças de Souza(University of São Paolo).. また 18 世紀スコットランド学会 Eighteenth-Century Scottish Studies Society(ECSSS)の会合やセッ. ションも、この大会のプログラムに含まれる形で同時に開催された。大会の詳細は本稿執筆時点では、. 大会プログラムの PDFを含めてイギリス 18 世紀学会の HPにまだ掲載されているので、リンクが切. れていなければそちらを参照されたい。. https://www.bsecs.org.uk/isecs/en/ (ISECSの HPについては、googleで検索するのが早い). なお次回の大会は四年後に、イタリアのローマで開催される予定となっている。. エントリーでは必ずしも大会のテーマに沿う必要はなく、応募する報告テーマは自由で、毎回啓. 蒙にかかわるそれぞれの分野から、様々な研究が発表される。本学会も審査制を採っているが、実. 際には内容の程度も多様で、高度なものから首をかしげるようなものまでいろいろである。もちろ. ん今回のテーマの “Enlightenment Identities” にかかわる形の報告題名も多い。例えば Identitiesに関連. させる形でジェンダーが題名にある報告は 40 から 50 件で、内容から見た同様の趣旨の報告はこれ. より多いと思われる。. イギリス哲学会に関連するテーマを拾うと、ヒュームを題名に入れた報告が 16 件程度、アダム・. スミスが 7件程度などとなっている(題名のみを拾った場合。また当日欠席もあるので、正確な数. はわからない)。なおヴォルテールは個別報告が 16 程度、カントが 4、ディドロが 27、ルソーが 35. となっている。これを多いと見るか、少ないと見るかは人それぞれだろうが、これが現在の国際学. 会における啓蒙のとらえ方を示しているともいえよう。. 本大会では、欧米以外からの参加者も多く見られた。日本からも、日本 18 世紀学会と韓国 18 世. 紀学会がかかわる二種類の共同セッション、会員個人が主催するさまざまなセッション、ECSSSの. セッションなどの形で、活発な参加が見られた。. 筆者が企画・参加したのは、日本 18 世紀学会が韓国 18 世紀学会と共同開催した 3つのセッショ. ン “Asian Identities in the Global Enlightenment 1 2 3“ である。このセッションは、1が韓国 18 世. 紀学会の会員による、18 世紀朝鮮王国および日本の文化、2が中国人民大学などの北京の専門研究. 者による清朝の文化・社会史、3が日本会員による東西比較思想・文化の報告となっている。. 日韓共同セッションは、20 年前に水田洋会員の提案から始まった日韓両学会の研究協力の具体化. で、今回まで数回開催されている。今回の特徴は、学会が休眠状態となっている中国からの参加だっ. た。中国 18 世紀学会は設立時の中心的な研究者が死去、退職したため、現在事実上消滅している。. そのため国際 18 世紀学会や日本 18 世紀学会はそれぞれ中国の研究者に働きかけて、再開を薦めて. きた。今回は再建には至っていないが、前述の北京グループによる共同セッションのほかにも、上. 海のグループが主に英文学に関するセッションを開催していて、事実上の中国からの大会参加が可. ─ 119 ─. イギリス哲学研究 第 43 号(2020 年). 能となった。上海グループのセッションでは中国の美学者によるシャフツベリの報告もあり、これ. は興味深いものだった。. またこの過程で東アジア 3か国の研究者間の協力が進んだことも、今後の展開にとって意義のあ. ることだった。筆者はこれらに関する司会や打ち合わせなどのために、イギリス関連のセッション. 等に顔を出せておらず、ECSSSについても、リチャード・シャーやゴードン・グレアムに会って元. 気なのを確認できた程度で、会合や関連セッションにも参加できていない。とはいえ他にも台湾の. ファーガスン研究者に会ってニコラス・フィリップスンの思い出話をしたりするなど、東アジアの. 研究者と英語で交流する中で、地域間での研究協力がますます容易になりつつあると感じることが. できた。. 経済学出身の筆者は最近イギリス哲学とはまったく別のテーマで、中国の研究者をインタビュー. することがある。彼らは大変立派な学者たちだが、通常英語はお得意ではないので、中国語の通訳. を通じて行っている。そういう意味では英語のコミュニケーション能力と学問は全く別なのだが、. これらの人々も英語を使う必要を感じておられ、話そうとされる。また中国本土も含め、研究者の. 英語力が高まっていることも確かである。18 世紀学会についてはフランス語ももう一つの重要な共. 通語だが、少なくとも本イギリス哲学会のテーマについては、欧米だけでなくアジア地域間協力も. この言葉で行うことができる。韓国、中国などではアメリカ式の業績主義が日本よりもはるかに進. 行していて、その点でもこれらの国では国際研究協力が重要となっている。韓国語、中国語を少し. でも学ぶ姿勢を持つことが大切だという前提の上で、英語を生かして、さらに日本とアジア諸国の. 協力が進むことを期待したい。. またもう一つ改めて感じたことに、韓国、中国などの欧米研究者が、つねに自国との比較を考え、. 自らの独自性を欧米の研究者に対してアピールしようとすることがある。それは若手ばかりでなく、. ソウル大学の英文学者のミンさんのような優れた研究者にも見られる傾向である。これに対して日. 本の研究は、研究史を精査し、対象そのものに専念して、ひたすらそれを深めていくといえる。こ. れは日本人の生真面目さの表れでもあって、日本の研究の長所である。そのため例えば “publish or. perish” が横行する合衆国の大家の欧米研究の難点が、日本の研究者によって、いとも簡単に暴露さ. れてしまう。その点で日本の欧米研究は、極めて高度な水準にある。しかし欧米の研究者から見て. 大陸のやり方に、新しい視点に気づかされる新鮮さがあることも確かだろう。. 今回の大会を見ても、通常の「思想史」にとどまらず、歴史、文化、芸術、社会史、ジェンダー等々、. 啓蒙がじつに様々な視点からとらえられていることがわかる。この多彩さ、多様さと、歴史に埋め. 込まれた文脈を掘り下げる方法の精密さが、現在の研究の到達点なのだろう。とはいえそこには課. 題も残されている。欧米の現代の啓蒙研究者たちは「ユーロセントリズム」という批判を真 に受. け止めているはずだが、今回の国際大会も含め、実際にはそれを超える視点が国際学会で打ち出せ. ているとは言い難い。招待講演を聞いた際にも、そう思わされることがあった。それは欧米の研究. 者たちには不可能なことなのかもしれない。おそらく東アジアでは蓄積と知識の点で最高水準にあ. ると思われる日本のイギリス研究を、そろそろ以上のような大陸のやり方も参照して、世界的に紹. ─ 120 ─. 国際学会報告. 介していくことも必要ではないだろうか。. (ながお しんいち・名古屋大学)

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