実物教材を使用した授業 -中学校社会科における授業開発研究-
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(2) 釧路論集 -北海道教育大学釧路校研究紀要-第47号(平成27年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.47(2015):57-66. 実物教材を使用した授業 -中学校社会科における授業開発研究- 池 田 泰 弘 藤 本 将 人* 廣 田 健** 釧路市立北中学校 *. 北海道教育大学釧路校社会科教育学研究室 **. 北海道教育大学釧路校授業開発研究室. Education of Using Materials Indicated As Social Issue. -A Study of making social studies curriculums in junior high school- IKEDA Yasuhiro, FUJIMOTO Masato*and HIROTA Takeshi** Kita Junior High School, Kushiro Department of Social-Studies Education, Kushiro Campus, Hokkaido University of Education ** Department of Education, Kushiro Campus, Hokkaido University of Education. *. 概 要 本研究は、中学校社会科において実物教材を用いた授業を開発することを目的としている。社会的事象に対する興味や 関心を高めるためには実物教材が有効であると考えるが、実際にどのように授業に組み込むかは明らかにされていない。 授業の開発過程を指導案として表現し、授業全体を把握するためにワークシートを提示する。領域として、公民的分野と 地理的分野を設定し、それぞれの授業で導入部に実物教材を使用する。用いた実物教材は、公民的分野は緑茶のペットボ トル、地理的分野では避難キットである。 研究の成果としては、授業の追試が可能となったこと、今後授業開発の有効性を検証する機会を得ることができたこと である。. Ⅰ はじめに. 常生活とのつながりを重視すべきとされている。しかし、 その関連付けの方法は、学習指導要領を見る限り学校現場. 今日の中学校社会科の授業においては、基礎的・基本的. に委ねられており、社会的事象をどう具体的に授業に取り. な知識、概念や技能の習得とともに、言語活動や社会参画. 入れるかは教師の裁量に任されている。. 1). の充実が求められている 。社会科の授業では、教科書の. 現在は携帯電話を中心としたメディアの発達により、中. 見開き2頁を1単位時間の授業として構成することが通例で. 学生でも家庭で静止画や動画を手軽に閲覧・視聴すること. あり、知識や概念を習得させるために相当の時間を要する. ができる。しかし、実際に実物を見たり、触れたりする経. ことが多い。そのため、生徒が社会的事象に対して興味. 験は乏しい傾向にある。その実物がどういうものである. や関心を持つことが減少しているという指摘がある2)。. か、どんな形をしているのか、価格はいくらなのか、とい. 現状を改善するためには、日常生活との関連を授業で意. うことを実際の目で確かめることは少ない。授業テーマに. 識することが必要である。身近で目に見えるもの、日常生. よっては、実物を確認するだけでも有効な授業として成立. 活で触れるもの、物の存在は知っているが買ったことがな. することがあるだろう4)。. いもの、などを通して生徒の視覚に訴え、興味や関心を高. このように、実物教材の有用性は極めて高いと考えられ. めることが必要である。学習指導要領においても、「生徒. るが5)、実際どのような視点をもとに授業に組み込んでい. が内容の基本的な意味を理解できるように配慮し、日常の. くのかについては、明らかにされていないことが多い。授. 社会生活と関連付けながら具体的事例を通して政治や経済. 業の開発過程を可視化することができれば、今後それを追. などについての見方や考え方の基礎が養えるようにするこ. 試することや検証する機会が得られる。そうすれば、授業. 3). と」 とあり、社会的事象をよりよくとらえるために、日. の有効性についてさらに考察を進めることができるはずで. - 57 -.
(3) 池 田 泰 弘 ・ 藤 本 将 人 ・ 廣 田 健 ある6)。. (3)単元の目標・評価規準. 本研究では、上記の問いを解くために、中学校社会科に. ①単元の目標. おいて実物教材を活用した授業を開発することを目的とす. 身近な消費生活を中心とした経済活動について、市場経. る。特に、授業の導入時に実物教材を使用する授業を開発. 済の基本的な考え方や現代の生産構造、金融のはたらきに. する。授業開発の実際については指導案として表現し、追. ついて理解し、個人と社会のかかわりについて考えること. 試可能な形にすることを目指した。また、ワークシートを. ができる。. 掲載することで、授業の全容を明らかにしていく。 ②評価規準. 領域としては、公民的分野及び地理的分野としたい。 公民的分野は、市場における競争と価格の単元を取り上. 関心・意欲・態度. 社会的な思考・判断・表現. げ、市販されているペットボトルのお茶を提示する。地理. 個人や企業の経済活動に対 経済活動における家計、企. 的分野について、災害と防災の単元を取り上げ、市販され. する関心を高め,意欲的に 業、国や地方自治体の役割. ている避難キットを提示する。各分野の授業は、(1)単元 名、(2)単元について、(3) 単元の目標・評価規準、(4) 指導. 追究し、考えようとする。 について、多面的・多角的 に考察し、公正に判断する. と評価の計画、 (5)本時の学習、 という項目で表現していく。. ことができる。. そして、本稿の実践から得られた成果と課題を示すこと としたい。. 資料活用・技能. 知識・理解. 個人と企業の経済活動に関 経済活動の意義,市場経済 する様々な資料を収集し、 の基本的な考え方、生産の. Ⅱ 開発した単元の実際 1.公民的分野における授業開発. 情報を適切に選択して自分 しくみや金融のはたらきに. (1)単元名 「市場における競争と価格」 . できる。. の考え方を説明することが ついて理解することができ. (2)単元について 本単元の主なねらいは、経済活動の意義を理解し、国民生 活と経済活動との関わりについて考えることが主なねらい である。具体的には消費生活と市場経済の基本的な考え 方、企業の生産や金融のはたらきを取り上げる。 現在の日本では、少子高齢化・人口減少などを背景とし た国内需要の減少が見込まれる中で実質成長率や生産性を 引き上げていくことが重要な課題となっている。また、企 業の在り方が最終的に国民の日常生活にまで深く及ぶ中 で、個人と社会との関わり方が問われている状況にある。 社会科の授業では、社会的事象に関する基礎的・基本的 知識、概念や技能を確実に習得させ、それらを活用する力 や課題を探究する力を育成することが重要である。基礎 的・基本的な知識の確実な習得の方法として、一時間の授 業の中で少しでも社会的事象に関して自分の意見を持つこ とができる時間を設定し、そうした活動を通して知識や技 能を獲得することが必要であろう。本授業では社会的事象 について説明する活動を重視することとした7)。 また、 実物教材であるペットボトルの緑茶には、 質や量、 パッケージの色やデザイン、手に取った感触や味わいの工 夫など市場に対する競争への仕掛けが多く含まれている。 ペットボトルに込められた企業の販売戦略を紹介しながら 生徒の興味や関心を高め、市場における競争の意味を考え ることとしたい。. - 58 -. る。.
(4) 実物教材を使用した授業 (4)指導と評価の計画 〔全10時間〕 (本時は5時間目) 時 間. ②家計、企業、政府の三主体の関係について考え. ①選択の意味を具体例を通して知る。. 中での的確な選択について考えること. ②消費支出の内訳や支払い手段の問題点について. 消費者をめぐるトラブルについて知 3. 4. り、解決方法や消費者の権利について. 5. 6. ①身近な事例から市場の意味を知る。. 曲線を通して身近な生活の中から具体. ②需要曲線、供給曲線の読み取りを通して均衡価. ①実物から市場の競争への関心を高める。. て、ペットボトル緑茶の例を通して考. ②緑茶のペットボトルの例から、市場における競. ○. ○. ○. ○. 争の影響を考える。. 資本主義経済を企業のはたらきや種. ①コンビニに関するクイズをする。. 類、流通のしくみを通して正しくとら. ②流通のしくみ、企業とは何か、企業の目的につ. 擬株式売買を通して考えることができ. ○. 格の決まり方を考える。. 市場における競争が与える影響につい. 株式会社のしくみと役割について、模. 8. にグループで取り組む。. 商品の価格の決まり方について、需給. えることができる。. 7. ①シミュレーションゲーム「悪質商法対策ゲーム」 ②消費者トラブルの実態と対策を知る。. えることができる。. ○. 考えることができる。. 考えることができる。. 的に考えることができる。. ○. る。. 消費活動の具体例を通して、実生活の ができる。. ○. いて考える。 ①株式の模擬売買を通して株式市場の実際を知 る。. ○. る。. ②株式会社のしくみや役割を考える。. 金融の役割や銀行の利益について知. ①日本銀行券に関するクイズをする。. り、日本銀行の役割について考えるこ. ②銀行の利益や日本銀行のしくみについて. とができる。. 考える。. ○. 「円高」と「円安」の意味について、 ①新聞報道から円高・円安の実際を知る。 9. 具体的な例を通して説明することがで きる。. 企業が与える資源や環境への影響につ 10. いて、シミュレーションゲームを通し て考えることができる。. 知識. ①経済感覚クイズをする。. ついて、経済の三主体を中心に. 技能. 毎日の暮らしと経済活動との関わりに 考えることができる。. 2. 主 な 学 習 活 動. 思考. 学 習 目 標. 関心. 1. 評 価. ②具体例を通して、円高・円安の意味とそれらが. ○. 与える影響について考える。 ①シミュレーションゲーム「エココンビニゲーム」 にグループで取り組む。 ②企業と環境問題の在り方について具体的に考え る。. - 59 -. ○. ○.
(5) 池 田 泰 弘 ・ 藤 本 将 人 ・ 廣 田 健 (5)本時の学習. て興味や関心を持つことができる。【関心・意欲・態度】. ①本時の目標. ・市場における競争が消費者に与える影響について考える ことができる。【思考・判断・表現】. ・緑茶のペットボトルを通して、市場における競争につい ②本時の指導過程 過程. 学 習 活 動. 教師の主な働きかけ. 2.お茶の種類を紹介する。. ・教卓や給食台に実物展示する。. 15. 3.競争の意味を確認する。. ・興味や関心を高める簡単な補足. 分. 導 入 . 1.売れているペットボトルの緑茶は何か その理由を考える。. 留 意 点. ・ワークシートを配布する。. ・手早く配布。. ・発言を求める。. ・発言がない場合は. 説明をする。. 指名する。 ・時間配分に注意す る。. 4.今日の課題を提示する。. 市場における競争は消費者にどんな影響があるのか? 展 開 分. 30. 5.各メーカーがペットボトルのお茶を1本で. ・ワークシートに自分の意見を. も多く売るために、どんな工夫や努力をしている. 記入させる。. のか。ワークシートに自分の考えを記入した後、. ・友達の意見と交流する。. 他の生徒と交流する。. ・競争による利益を指摘する。. 6.もし明日から競争がなくなって、日本中のペット. ・ワークシートに自分の意見を. などして考え のヒントを紹介す る。 ・売り手、買い手の. ボトルのお茶が1社だけ1種類、500円で販売さ. 記入させる。. 双方の立場から考. れたら、どうなるか?. ・友達の意見と交流する。. えさせる。. ※ワークシートに自分の考えを記入した後、. ・競争がない場合の不利益を指摘. 他の生徒と交流する。 終 末 分. 5. ・実物に触れさせる. 7.市場における競争の影響を整理する。. する。 ・今日の学習内容を整理し、. ・難しかった場合は 補足する。 ・意欲が持続するよ うに配慮する。. 資本主義社会における市場-消費者に対して. ワークシートに記入させる。. 適正な競争→選択が増える、利益がある. ・市場メカニズムの機能や公共料. 独占・寡占→選択がない、不利益あり. 金の効率性と公平性のバラン. ら簡潔に整理す. ※独占禁止法や公正取引委員会の監視. スにも触れる。. る。. ※競争の例外もある(公共料金) 資料1 授業で提示したペットボトルの実物. - 60 -. ・時間に留意しなが.
(6) 実物教材を使用した授業. - 61 -.
(7) 池 田 泰 弘 ・ 藤 本 将 人 ・ 廣 田 健 2.地理的分野における授業開発. を探究する力を育成することが求められている。そのため には、まず生徒の学ぶ意欲を喚起し、社会的事象に対する 関心を引き出し、興味を抱かせることが重要であると考え. (1)単元名 「災害と防災」. られる8)。今回は実物教材である避難セットを実際に提示 (2)単元について. する。このキットの中には避難時に必要な水や食料、携帯. 本単元は、自然環境から見た日本の地域的特色を学習す. トイレやアルミ製の毛布などが詰め込まれている。地震や. る。具体的には日本が環太平洋造山帯に属しており大地の. 津波などの災害時にはライフラインが復旧するまで、限ら. 動きが活発であること、温帯で降水量が多いこと、自然災. れた条件での生活になる。避難キットを通して、普段の生. 害が発生しやすく防災対策が大切であることを扱う。2011. 活とは違う状況になり得ることを具体的にイメージさせた. 年3月11日に発生した東日本大震災は、改めて日本は地震. い。本実践を通して、社会的事象について身近な生活と関. や津波などの自然災害が日常生活の中で起こりやすい国で. 連付けて考える力を高める機会としたい。. あること、私たちが住む釧路も例外なく防災に向けての意 識を高め、対策が必要であることを再認識させたと言え. (3)単元の目標・評価規準. る。社会科の授業では、日常の情報を授業用へ変換するプ. ①単元の目標. ロセスを通して授業で扱う教材として再構成しなければな. 世界的な視野から日本の地形や気候、自然災害と防災対. らない。そして、 社会的事象に関する基礎的・基本的知識、. 策といった自然環境の特色を理解する。. 概念や技能を確実に習得させ、それらを活用する力や課題 ②評価規準 関心・意欲・態度 世界的な視野から見た日本の自然環境の特色を意欲的に 追究しようとする。 資料活用・技能 世界全体や日本の大地形や気候帯の概要を様々な資料か ら読み取ることができる。. 社会的な思考・判断・表現 世界的な視野から見た日本の地域的特色を自然環境の観 点から世界と比較し関連づけて考察することができる。 知識・理解 世界的な視野から見た日本の地形、気候、土地利用、自 然災害の特色を理解することができる。. (4)指導と評価の計画 〔全6時間〕 (本時は5時間目). ①地図帳から世界の地形の様子を読み取る。 ②日本で地震が多発する理由を造山帯やプレート 分布から考える。. 2. 日本の地形の特色を山地・山脈や河 川・平野、海岸の形成から理解する。. ①川の働きによる地形形成を考える。 ②日本の海岸の種類について理解する。. ○. 3. 世界の気候は熱帯・温帯・冷帯・ 寒帯・乾燥帯といった5つの気候 帯に分けられることを理解する。. ①なぜ地域によって気候が変わるのかを地球儀を もとにして考える。 ②ヨーロッパが冬でも高緯度のわりに温暖な理由 を理解する。. ○. 4. 日本の気候は地域による違いが大き く、四季の変化がありながらも複合的 な日本の気候の特色について理解す る。. ①日本は温帯を中心としつつ冷帯や亜熱帯を含む 複合的な気候であることを理解する。 ②雨温図のグラフを作成する。. 5. 日本の自然災害の発生とその被害を通 して、災害への備えの大切さを考える ことができる。. ①避難キットを提示して、災害時の対応について 興味や関心を高める。 ②地震が多い釧路における防災対策や災害時の対 応について考える。. ○. 6. ラムサール条約やナショナルトラスト 運動などを通して、自然環境を守る運 動があることとその意義を理解する。. ①釧路の自然環境についてラムサール条約や登録 地を理解する。 ②釧路湿原についてのDVDを視聴して湿原に対 する関心を高める。. ○. - 62 -. ○. 知. 世界には2つの造山帯と安定した大陸 があり、日本は地震が発生しやすい場 所であることを理解する。. 思. 1. 関. 主 な 学 習 活 動. 技. 時 間. 評 価. 学 習 目 標. ○ ○. ○. ○. ○. ○.
(8) 実物教材を使用した授業 関心を高めることができる。【関心・意欲・態度】. (5)本時の学習. ・地震が多い釧路における防災対策や災害時の対応につい. ①本時の目標. て考えることができる。【思考・判断・表現】. ・実物教材を踏まえ、日本の自然災害、特に地震について ②本時の指導過程 過程. 導 入 分 20. 学 習 活 動. 教師の主な働きかけ. 1.避難セットを紹介する。. ・実物を提示する。. 2.写真を見てあてはまる言葉を考える。. ・ワークシートを配布する。. 3.地震の被害写真であることを確認する。. ・発生した地震について説明す る。 ・知っている自然災害を挙げさせ る。. 4.日本で起こる自然災害を発表する。. 留 意 点 ・いつ使うものなの かを考えさせる。 ・何に使うものなの かを紹介して、関 心や意欲を高め る。 ・簡単な補足に留め る。. 5.今日の課題を提示する。. 地震に対してどのような対策をとればよいのだろうか? 展 開 分. 25. 終 末 分 5. 6.戦後の2つの大震災について比較して説明す る。 7.地震の対策を考える。 ・ヒントをもとに考える。 ・ワークシートに自分の考えを記入した後、他の 生徒と交流する。 8.釧路市のHPに示された地震対策を紹介する。 9.学習内容を整理する。 ①日本は自然災害が多い国である。 ②地震や津波の逃げ方、準備を確認しておく。 ③正しい情報を選び、自分でよく考えて判断す る。 ④災害によって人生が変わることがある。. ・ワークシートに沿って簡潔に説 明する。. ・実際の体験談も話 す。. ・ワークシートに自分の意見 を記入させる。 ・友達の意見と交流させる。 ・発表させる。 ・プリントを配布する。. ・考える時間を確保 する。 ・教室内を自由に移 動して交流させ る。 ・時間に留意する。. ・今日の学習内容を振り返り、4 つの内容をワークシートに記入 させる。 ・震災によって生き方まで変わる 可能性があることに触れる。. ・簡潔に整理する。. 資料3 授業で提示した避難キットの実物. - 63 -.
(9) 池 田 泰 弘 ・ 藤 本 将 人 ・ 廣 田 健. - 64 -.
(10) 実物教材を使用した授業 Ⅲ おわりに. 也・中村拓人・林祐史・細川遼太・池田泰弘・森田耕平・ 今野碧・細野歩「北海道東部地域における教師教育の課. 最後に本研究の成果と課題について述べる。. 題とその克服(2)―授業開発の実際―」『北海道教育大学. 成果としては、 次の二点を挙げることができる。 第一に、. 紀要(教育科学編)』第64巻第1号,2013年,pp.149 ~ 161.. 実物教材を使用した授業を開発したことである。授業の導. 7) 授業に取り組んだ生徒については、前向きに取り組む. 入時において、実物教材を提示することは生徒の興味や関. 姿勢が見られる。発問に対して積極的に応えようとする. 心を高めることにつながる。実物教材も社会認識の一つで. 生徒もおり、活発な雰囲気になることもある。興味深い. あると考えれば、その役割は否定できないものがある。公. 話題や知らない事実を提示されると、真剣に話を聞こう. 民的分野のペットボトルは手に入れやすく、生徒の日常生. とする態度も見られる。社会的事象に関する直接経験は. 活で目に触れることが多い。そこから、企業の販売戦略や. 少ないが、生活経験の多様さや日常生活で様々な情報に. 商品の差別化、環境問題への対応などを考えることができ. 接していることから、知識として身につけていることも. る。地理的分野の避難キットはホームセンターなどで市販. 多い。ただし、社会的事象に関して自分の言葉で説明. されているが、なかなか各家庭で常備されていないのが現. する技能やある課題について複数の視点で考える力は決. 状である。東日本大震災の経験はもとより、太平洋に面し. して高くない。基本的な知識が定着していない生徒も多. ている釧路地方は地震が多いため、避難キットの内容を通. く、 既習事項と関連づけた理解が十分ではないと言える。 8) 授業に取り組んだ生徒については、全体的に意欲的に. して地震や災害について考えることができる。 第二に、実物教材を活用した指導案やワークシートをす. 取り組む姿勢が見られる。発問に対して積極的に応えよ. べて公開することによって、追試が可能となったことであ. うとする生徒や発言する生徒が多い。タイムリーな話題. る。指導案は活用する教師の視点や意図によって、様々に. や知らない事実を提示されると真剣に話を聞こうとする. 作り替えることができる。ワークシートの設問や内容の配. 態度が見られる。生徒の生活経験の多様さや日常生活に. 置も生徒の実態によって変えることができる。そうした改. おいて社会的事象に関する様々な情報に接していると予. 善によって、 追試の質や量は増えていくだろう。 その結果、. 測されるが、それが授業への意欲に結びついているかと. 授業のバリエーションは広がり、層の厚い授業展開が期待. 問われた時には疑問がないとは言えない。. される。自分の実践を対象化し、省察することには限界が ある。そこに他者からの批判や吟味を加えることによっ. 【参考文献】. て、開発した授業の意義がより一層高まると考えられる。. ・河原和之著『100万人が受けたい「中学公民」ウソ・ホン ト?授業』明治図書,2012年.. 課題としては、 以下の点を挙げることができる。 それは、 歴史的分野における実物教材の授業開発ができなかったこ. ・二谷貞夫・和井田清司著『中等社会科の理論と実際』学. とである。地理的分野や公民的分野の授業では、比較的 市販されているものを扱うことができる。それに対して、 歴史的分野の授業では、過去の遺産や歴史的価値のある書 物、資料を実物として提示することは物理的に無理が生じ る。その場合、写真資料や模造品などを実物の代替品とし て提示する方法が考えられる。 【註】 1) 文部科学省『中学校学習指導要領解説社会編』日本文 教出版社,2008年,pp.4 ~ 6. 2)小林一博・村瀬清史・池田泰弘・藤本将人「市民性の育 成を保障する社会科授業の開発―『社会化』を踏まえた 『対抗社会化による社会化』 ―」 『北海道教育大学紀要 (教育科学編)』第61巻第2号,2011年,pp.207 ~ 218. 3)前掲1),p121. 4)モノを有効に使う授業について、河原和之『中学校社会 科授業成功の極意』明治図書,2014年,pp.85 ~ 88,を参照。 5)実物教材を用いた有名な実践としては、大津和子『社会 科=1本のバナナから』国土社,1987年.がある。 6)研究の視点は異なるが、具体的な授業作りを可視化した 研究として次の論文を参照されたい。藤本将人・樋口達. - 65 -. 文社,2007年..
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