【資料XlV】改善実習「注文の多い料理店」の単元言十画
【資料XlV】改善実習「注文の多い料理店」の単元計画
報告書第5章において,第6学年「海のいのち」単元の実践を概要や考察を示した。実は,
この実践と並行して,第5学年「注文の多い料理店」単元の実践も同様の構想で取り組ん
でいた。しかしながら,時間の都合により実践の分析及び考察が間に合わず,報告書には 掲載できなかった。そこで,巻末資料において,「注文の多い料理店」実践の単元計画,教材分析,使用したワークシート,児童の成果物等を紹介したい。
まずは,単元計画を示す。
I 単元名 ブックレポートを書こう
皿 使用教材 「注文の多い料理店」(宮沢賢治・作 東京書籍「新しい国語 5年下」
皿 単元の目標
○ 文章構成や文章表現の工夫に気づき,物語の面白さについて叙述との関係を明らか
にしながら読み取っている。(読むこと)【内容目標】○ 物語の内容や表現に対する自分の考えを,根拠を示しながら述べている。(言語に
ついての知識・理解・技能)【技能目標】w 基盤 省略
V 単元の観点別目標
○ 物語に興味を持って,おもしろさの工夫を探しながら説もうとしている。(国語へ
の関心・意欲・態度)○ 文章構成や文章表現の工夫に気付き,物語のおもしろさを読み取っている。(読む
こと)○ 物語のおもしろさについて話し合い,自分の考えを広げたり深めたりしている。(読 むこと)
○ 叙述をもとに登場人物の性格や心情の変化を読み取っている。(読むこと)
○ 物語の内容や表現について考えたことを,根拠を明らかにして,文章構成や文章表
現に気をつけてまとめている。(書くこと)○ 物語の内容や表現に対する自分の考えを,根拠を示しながら述べている。(言語に
ついての知識・理解・技能)○ 色彩語や擬声語などの表現の工夫に気づいている。(言語についての知識・理解・
技能)
【資料XlV】改善実習「注文の多い料理店」の単元計画
VI 「焦点化」を意識した教材分析(1)…叙述内容(筋)について
文脈の形成を決定づける読みの「焦点」
匿亙工1「二人の若い紳士の人物像」…書き出しの叙述の二義性から,二人の紳士が西洋かぶ れのえせ紳士で,犬の命を粗末にしたことを捉えさせたい。
医互ヨ「山ねこの子分の人物像」…山ねこの意図がばれてからの子分たちの言動には二人の 紳士をからかう意図がある。それを捉えさせることで,二人の紳士が「生き物を無慈悲に殺 す立場から殺される立場になった」という逆転現象を理解させたい。
医亙ヨ「なぜ紳士の顔は元に戻らなかったか」…山場場面における紳士を異化させた上で考 えさせたい。何者かによる罰だとすれば,誰がそうさせたのか,なぜそうさせたのかを考え ることを通して作品のテーマを捉えさせたい。
文脈の形成を支えるのに重要な読みのポイント
・の言葉と紳士の反応…紳士側の解釈,山ねこ側の意図を理解することで理解を広げていく。
ところどころで,紳士に同化して捉えさせる必要がある。
文脈の形成に必要な予備知識
紳士…お金や教養・分別のある人,イギリスの兵隊…儀典兵(近衛兵)を示したい,痛快…
たまらなく愉快なこと,瀬戸の煉瓦…愛知県瀬戸市の煉瓦は優良品,十円…今なら約五万円
㎜ r焦点化」を意識した教材分析(2)…文学的な表現のよさ1こついて 叙述そのものの持つ表現のよさの分析
近の二義 …設定場面における二人の若い紳士について,「叙述に即して,その奥にあるもの を読み取らせる」視点で読解する。
一の言葉の非人間 …「決してご遠慮はありません」など,どことなく違和感のある言葉遣い から,これを書いている人物は人間ではなく物の怪であることをにじませている作者の表現の 工夫に気づかせたい。
■の言葉の二義 …例えば,「ことに太ったお方や若いお方は」では,紳士は自分たちは歓迎さ れると喜び,山ねこはおいしくいただけると考えている。このユーモアは,二人の紳士は知ら ないが読み手は知っているから生まれると言うことにも気づかせたい。
.士の反応と常識とのズレ…紳士の扉の言葉に対する解釈がことごとく常識とのズレを生み出 している。そのズレが,読み手にユーモアを感じさせている。
景描写の演出効果…r風がどうと吹いてきて……木はごとんごとんと…」という情景描写文 が,全く同じ記述で2カ所登場していることを捉えさせたい。いずれも,現実,非現実世界との 場面変換を印象づけている。
作品の構造から見た表現のよさの分析
ファンタジーの通 …非現実世界との通路となる叙述を見つけ出し,「通常ではあり得ないこと が起こる」という非現実世界の設定を理解するとともに,その典型を破っているところに作者 の強い意図が表れていることから作品のテーマを捉えさせたい。
【資料XW】改善実習「注文の多い料理店」の単元計画
㎜ 単元計画
次持
主な学習活動 評価基準 評価方法【第一次】物語を読んで初発の感想を書き,単元の見通しを持つ。
1 全文を読み,初発の感・物語に興味を持ち,物語の内容をとらえて初発のワークシートにおけ 想を書く。 感想をまとめようとしている。(関) る記述,観察
◆物語に興味を持って,初めの感想文を書こう。
1.授業のねらいを確認し,「注文の多い料理店」全文の範読を聞く。
2.初読の段階での「注文の多い料理店」の感想と,みんなで考えてみたいことを書く。
3.授業のふりかえりを行う。
単元の活動の見通しを ・活動の見通しを持ち,目的意識をもって単元の活 持つ 動に取り組もうとしている。
◆学習計画を立て,学習に必要な力を理解しよう。
1.授業のねらいを確認する。
2.見本となる言語活動例を示し,書くためにどのような力が必要か考える。
3.「読むためのワザ」をまとめる。
4.教師の説明を聞き,授業の振り返りを行う。
【第二次】物語の内容を読み取りながら,表現の工夫を味わう。
4
設定場面における物語・二人のしんしの性格が分かる文を見つけている。
の人物設定や表現の工 (読)
夫について交流する。 ・作者の仕掛けについて考えたことを交流する。
(読)
◆二人のしんしの性格が分かる文を見つけよう。
1.授業のねらいを確認する。
2.設定場面を読み,二人の紳士の性格を読み取る。
3.どのような文が人物像の把握につながるか確認し,r読むためのワザ」
ワークシートにおけ る記述,観察
設定場面における物語・作者による文章表現の工夫に気付きながら,二人ワークシートにおけ の人物設定や表現の工 のしんしの性格について読み取っている。(読) る記述.麟 夫について深く読み取
る。
◆作者の工夫を見つけ,二人のしんしの性格を読み取ろう。
1.授業のねらいを確認する。
2.読み取りやすい「いのちを粗末にする」という設定を確認し,叙述を深く読まないと 気付かない「西洋かぶれ」的な設定を,焦点となる叙述をもとに読み解き,二人のし んしの性格をまとめる。
3.二人のしんしの性格について,ミニブックレポート①にまとめる。
4.授業の振り返りを行う。
【宿題】レポートメモ② 扉①〜③における二人 の紳士の心情や表現の
・扉の言葉の文章表現の工夫(二犠牲)に気付き,
山ねこ側,紳士側の解釈を対比しながら表現の面
ワークシートにおけ る記述,観察
【資料XW】改善実習「注文の多い料理店」の単元言十画
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里1三?l1三型埴一..旦竺埜三1且.輿.............. 上
◆とびらのことばの面白さを見つけよう。
1.授業のねらいを確認する。
2.レポートメモをグノレープで発表し合い,質問や感想を交流する。
3.扉①の「決してごえんりょはありません」の意味について深く考え,表現の面白さと 山ねこ側,紳士側の両面から解釈している面白さを味わう。
4.次時にさらに深く考えることを確認し,授業の振り返りを行う。
扉①〜③における二人・扉の言葉の文章表現の工夫(二犠牲)に気付き,
の紳士の心情や表現の 山ねこ側,紳士側の解釈を対比しながら表現の面 工夫について深く読み 白さを味わっている。(読)
取る。
◆とびらのことばの面白さを見つけよう。
1.授業のねらいを確認する。
2.扉②③について,前時を参考に面白さについて意見を交流する。
3.文章表現の面白さについて,ミニブックレポート②にまとめる。
4.授業の振り返りを行う。
【宿題】レポートメモ③
ワークシートにおけ る記述,麟
扉④〜⑥における二人・扉の言葉の文章表現の工夫(二犠牲)に気付き,
の紳士の心情の変化や 山ねこ側,紳士側の解釈を対比しながら表現の面 表現の工夫について交 白さを味わっている。(読)
流する。
◆とびらのことばの面白さを見つけよう。
1.授業のねらいを確認する。
2.レポートメモ③をグループで発表し合い,質問や感想を交流する。
3.扉ごとの叙述表現の二犠牲をおさえる。
4.次時にさらに深く考えることを確認し,授業の振り返りを行う。
ワークシートにおけ る記述,観察
扉④〜⑥における二人・扉の言葉の文章表現の工夫(二犠牲)に気付き,ワークシートに洲 の紳士の心情の変化や 山ねこ側,紳士側の解釈を対比しながら表現の雨る記述、観察 表現の工夫について深 白さを味わっている。(読)
く読み取る。
◆とびらのことばの面白さを見つけよう。
1.授業のねらいを確認する。
2、「すぐたべられます」に着目し,省略されている語句を補充して二犠牲をとらえ,な ぜ山ねこがこのような表現を使ったかを考える。
3、文章表現の面白さについて,ミニブックレポート③にまとめる。
4.授業の振り返りを行う。
【宿題】レポートメモ④ 扉⑦における山ねこの 子分と二人の紳士の心
・扉の言葉の文章表現の工夫(二犠牲)に気付き,
山ねこ側,紳士側の解釈を対比しながら表現の面
ワークシートにおけ る記述,観察
【資料X1V】改善実習r注文の多い料理店」の単元計画
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情日?ビニ王室璽文包.」 白さを味わっている。(読)
◆とびらのことばの面白さを見づけよう。
1、授業のねらいを確認する。
2.レポートメモ④をグループで発表し合い,質問や感想を交流する。
3.山ねごと二人の紳士の心情をおさえる。
4.次時にさらに深く考えることを確認し,授業の振り返りを行う。
...」...........
扉⑦における山ねこの・扉の言葉の文章表現の工夫(二犠牲)に気付き,
子分と二人の紳士の心 山ねこ側,紳士側の解釈を対比しながら表現の面 情について深く読み取 白さを味わっている。(読)
る。
◆とびらの二とはの面白さを見つけよう。
1.授業のねらいを確認する。
2.二人の紳士の置かれている立場について,冒頭場面と対比して考える。
3.文章表現の面白さについて,ミニブックレポート④にまとめる。
4.授業の振り返りを行う。
ワークシ』トにおけ る記述,観察
文章構成の工夫につい・現実・非現実世界を往還するという構成をとらえワークシートにおけ て交流する。 ている。(読) る記述,観察
◆物語の構成(どこからが不思議な世界で,どこまでが不思議な世界か)をとらえよう。
1.授業のねらいを確認する。
2.非現実世界の入り口と出口を考える。
3.授業の振り返りを行う。
文章構成について自分・物語の結末にの妥当性について自分の考えを持っワークシー1におけ の考えをまとめる。 ている。(読) る記述,駿
◆物語の結末に賛成か反対か自分の意見を持とう。
1.授業のねらいを確認する。
2.二人の紳士をこんな目にあわせた作者の意図を交流する。
3.最後の文があるのと無いのとでは,先に考えた作者の意図がどうなるか考える。
41授業の振り返りを行う。
【第三次】作品を読んで捉えた文章の工夫についての自分の考えをブックレポートに書く。
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物語の構成を捉え,ブ・物語の構成をとらえ,ブックレポートにまとめて ツクレポートにまとめ いる。(書)
ている。
◆物語の構成についての説明をブックレポートにまとめよう。
1.授業のねらいを確認する。
2.今までのミニブックレポートを元に,ブックレポートを書く。
ワークシートにおけ る記述,熊
ブックレポートを交流・友だちのブックレポートを読み,自分の考えを探 する。 める。
◆友だちのブックレポートを読んで感じたことを交流しよう。
1.ブックレポートを相互交流し,感想を伝え合う。
ワークシートにおけ る記述,麟
臓料X V】改善実習r注文の多い料理店」の教材分析
【資料XV】改善実習「注文の多い料理店」の教材分析
一内容・表現両側面の授業における思考の焦点化のために_
※記号の意味 ◆…内容面 ▼…表現面,以下回じ 1.題名「注文の多い料理店」
メニューが多い,繁盛している,といった額面どおりの意味と,二人の紳士への注文が多いとい う意味を持っている。普通はお客からお店へ注文をするものなのに,この物語では店の方から注文 がなされるという逆転現象を掛詞にように表した題名と言える。つまり,形式上では「客→店」と
「店→客」という注文の方向性の逆転が,意味上では「食べる」と「食べられる」という二人の 紳士の立場の逆転が起こっていることが含まれている。
2.冒頭部における人物設定
「二人の若い紳士」…「若い」は,経験の浅さから山ねこの策略に引っかかりやすい伏線になって いることに加え,「食べられる立場」でのおいしさにもっながっている。また,男,とか男性,な
どでなく「紳士」とあるが,紳士とは分別があり財産や社会的地位を持っている存在である。「若 い」とは一見矛盾しており,二の二つの言葉がっながっていることから,」種の作者による椰楡と いう意味が含まれていることがうかがえる。
「イギリスの」…当時のイギリスは大英帝国と呼ばれ,世界じゅうに植民地を持ち「太陽が一目中 しずまない」いわば強さの象徴と言える。一転して,この軽薄な二人の紳士がそのイギリスの外見 を模していることは,西洋かぶれをしているという意味を含むこととなる。
「兵隊のかたちをして」…イギリスの兵隊と言えば近衛兵を思い浮かべる。近衛兵とは儀典兵であ り,本物の兵士ではない。「かたち」と加え,見栄えさえよければいいという二人の紳士の人物像 が読み取れる。
rぴかぴかする鉄砲」…ぴかぴかという叙述から,使ったことがない新品のような鉄砲であること がうかがえる。やはり,実用性より見栄えにこだわっている二人の若い紳士の低俗さがうかがえる。
r白熊のような犬」…通常,猟犬と言えばあまり大きくない敏捷性の高い犬(ビーグル,レトリー バーなど)のはずだが,やはり見栄えにこだわっていることがうかがえる。
一I】物語の冒頭部における区亙團を読み取るための読書行為の流れ
<焦点化すべき叙述> 〈叙述の意味形成〉 <イメージ形成>
若い紳士 経験の浅さ,おいしさ 軽薄で浅はか,見栄えだけにこ
イキりスの兵隊のかたち 強さへのあこがれ,儀典兵 だわるかっこつけ,西洋かぶれ
ぴかぴかする鉄砲 新品同様で未使用 のえせ紳士,冷酷,命を粗末に
白熊のような犬 猟には不向き,見かけ倒し している,お金持ちでお金に執 まぷたをちょっと返して 猟犬の死を悼んでいない 着心がある,等
〜二千四百円の損害だ 命を金銭価値だけに置換
<物語内容・表現方法への反応批評〉
【表現方法】一つの言葉に,ことば以上の意味を含ませていて,それが人物像を言い表しているという「仕 掛け」が施されている。
【資料XV】改善実習r注文の多い料理店」の教材分析
31ファンタジーの入り口と出口
この物語は,二人の若い紳士に現実ではあり得ない不思議なことが起こる ことから「ファンタジー作品」と言える。特に,死んだはずの犬が生き返っ て紳士を助ける場面は,子どもにとってファンタジーの技法が分かっていな いと理解のしようがないところである。
ファンタジー作品の一般的な骨子は図14のようになっている。この「通路」
は,作品によって明確になっているものもあれば,不明確なものもある。ま た,「通路」は,物理的な道である場合もあるし,象徴的なアイテムである場 合,rふいに」といったキーワードである場合など多様である。例えば,安房 直子作『初雪の降る日』では,「ろうせきの輪の中に、ぴょんと飛びこんでみ ました」という中心人物の行動が「通路」になっている。
それでは,本作品における「通路」を考えてみる。
現実 ↓ く通路>
↓ 非現実 ↓ く通路>
↓ 現実
図14ファンタジー作品の骨格
それはだいぶの山奥でした。案内してきた専門の鉄砲打ちも,ちょっとまごついて,どこかへ行ってし まったくらいの山奥でした。
それに,あんまり山がものすごいので,その白熊のような犬が,二匹いっしょ1こめまいを起こして,し ばらくうなって、それからあわをはいて死んでしまいました。 (下線は引用者による)
ここでは,連れてきた「白熊のような犬」が,「山がものすごいので」という不可思議な原因に よってあわをはいて死ぬという出来事が描かれている。この非現実的なストーリーに加え,物語後 半で,二人の若い紳士を助けるためにこの犬が登場していることから,この時点で二人の若い紳士 は山ねこの幻術にかかっていることがうかがえる。つまり,「その白熊のような犬が」以下の一文 が,ファンタジーの入り口となる通路を表している。
そのときうしろからいきなり「わん,わん,
をつきやぶって室の中へ飛びこんできました。
ぐわあ」という声がして,あの白熊のような犬が二匹,扉 (下線は引用者による)
一方,ここでは,山ねこに食べられる寸前となった二人の若い紳士ががた がた震えているところに,死んだはずの犬が突然として飛びこんでくるとい う出来事が描かれている。ここで白熊のような犬たちは,主人を助けるため に山ねこの幻術を打ち破り,物語を現実世界の場面へと移動させる触媒とし ての役割を果たしている。つまり,「そのときうしろからいきなり」の一文が,
ファンタジーの出口となる通路を表していると言える(図15)。
なお,この「紳士が見捨てた犬に命を助けられる」という出来事は,物語 冒頭部における「紳士は犬を金銭的価値としか見なさずに見捨てた」描写と の鮮やかなコントラストを描き,そのまま物語の主題の一端を読み手に垣間 見させている。
現実 ↓
く通路》「犬の死」
↓ 非現実 ↓
く通路>「犬の登場」
↓ 現実
図15r注文の多い料理店」の骨格
また,本作品の大きな特徴として,非現実世界の出来事で引き起こされた二人の若い紳士の「紙 くずのような顔」は,現実世界に戻ったにもかかわらず元どおりにならなかった。これは,ファン タジー作品としての「型」を破っており.作者の意図が感じられる。叙述の意味だけでなく,こう
した「表現・構造のもつ意味」を考えさせる指導もぜひ考えたい。
【資料XV】改善実習r注文の多い料理店」の教材分析
4.展開場面〜山場場面における叙述の仕掛けや多義性の解明と読書行為との関連
◆「その時ふとうしろを見ますと、りっぱな一軒の西洋造りの家がありました。」
「ふとうしろを見ますと」から,今まで無かったなずの建物が突然出現していることがうかがえ る。非現実世界に入っている証拠である。直後の会話でr君,ちょうどいい。ここはこれでなかな か開けてるんだ。はいろうじゃないか。」「おや,こんなところにおかしいね。しかしとにかく何か 食事ができるんだろう。」と,片方の紳士はそのおかしさに気付いているものの,結局「何か食べ たくて倒れそうなんだ」と言って怪しみもせずに店に入るところに,紳士の軽薄な人物像がうかが
える。
また,建物の外観を「立派な西洋造りの家」にしたのは,西洋かぶれで見栄えの派手さを好む二 人の若い紳士を確実におびき入れるべく,二人の性格を見抜いた山ねこの策略であることがうかが える。同様の仕掛けは,「玄関は白い瀬戸の煉瓦で組んで」や「金文字で」にも表されている。見 かけの立派さに騙されて都合のよい解釈をしてしまう紳士の心情と,山ねこが仕掛けた罠について はここでしっかりとおさえ,これ以降の展開の中では児童に自力でこうした仕掛けを読み解く楽し さを味わわせたい。
◆扉①表『どなたもどうかおはいりください。決してごえんりょはありません」(ガラス戸・金文
字)
受け取りようによっては二重の意味が含まれる。通常であれば「遠慮はいりません」という表記 となり,「あなた様は」遠慮しないでくださいね,気軽にお店に入って下さいね,という意味とし て受けとめられる。しかし,「遠慮はありません」と助詞が「は」に変わると,「わたしは」遠慮し
ませんよ,遠慮雌よ,という解釈になってしまう。
では,山ねこはどちらの意味でこの文を書いたのだろうか。前者の場合,二人の若い紳士を店に 引き込むことにつながる。一方,後者の場合,紳士が気付いたら店に入ってくれなくなってしまう 恐れがある。ここは一番最初の扉であり,山ねこ側としては慎重に紳士を誘い込もうとしているわ けなので,後者とは考えにくい。つまり,意図的に「ご遠慮はありません」と書いたのではなくて,
紳士を誘い込もうと慎重になっているので「ご遠慮はいりません」という意図で書こうとしたのだ けれど,このようなおかしげな表記になってしまったと解釈するのがもっとも自然ではないかと考
える。
そこまで理解した上で,この扉を書いたのは人間ではなく物の怪であるということを間接的に示 そうとした作者の意図を捉えさせたい。しかも,たった一文字変えただけでこのような演出効果を 出すことができる面白さも味わわせたい。
また,紳士がこの言葉をどう受けとめたかについては,「世の中上手くできているねえ」「ただで ごちそうするんだぜ」「どうもそうらしい」といった叙述から「遠慮はいりません」と受けとめた ことがうかがえる。ただ,料理が無料というかなり逸脱した解釈をしているところから,かなり自 分たちに都合のよいことしか考えない性格,何でもお金と結び付けてしまう低俗さ,あるいは,無 邪気,子どもっぽい,わがままといった内容の反応批評を形成することができよう。
一資料Xv1改善実習「注文の多い料理店」の教材分析
【I1】塵亘國における読書行為の流れ
<焦点化すべき叙述〉
決してご遠慮はありません
ひどくよろこんで うまくできてるねえ
<叙述の意味形成〉
気軽にお店に入って下さい
<遠慮なしに食べてあげますよ〉
ただでごちそうを食べさせても らえると考えている。
<イメージ形成〉
自分たちはひどい目にあった けど,いいことにも巡り会え たようだ。嬉しいなあ。
〈物語内容・表現方法への反応批評〉
【物語内容】紳士は,自分たちに都合のよいことしか考えない性格,あるいは,何でもお金と 結び付けてしまう低俗さ,無邪気,子どもっぽい,わがまま
【表現方法】「いりません」を「ありません」と1文字変えることによって,書き手が日本語が 不自由である,ひいては,人間ではないという演出効果を出している。
◆扉①裏rことに太ったお方や若いお方は.大歓迎いたします」(ガラス月一金文字)
ここでは2つの仕掛けが見られる。一つは,太った人や若い人を歓迎する理由は食べるときにお いしいと言う意図が山ねこにあるのに,紳士はそれに気付かないと言うことであり,もう一つは,
このレストランは二人の紳士専用で,二人の特徴を見破られていることから,二人はずっと見られ ていることがうかがえると言うことである。
【皿】塵匝璽における読書行為の流れ
<焦点化すべき叙述〉
ことに太ったお方や若いお方 もうおおよろこびです。
ぼくらは両方兼ねてるから ずんずん廊下を進んで
<叙述の意味形成〉
太った人と若い人は歓迎される
<二人は山ねこから見張られて いる>紳士はその表示を無邪気 によろこんでいる。意気揚々と 歩いている。
<イメージ形成〉
これはありがたい。早く食べ
たいなあ。
<物語内容・表現方法への反応批評〉
【表現方法】山ねこが二人の紳士を見張っていることをさり気なく表現している。また,二人 をおいしく食べちゃうと言う意図があるのに,それに気付かずによろこんでいる二人の紳士の 無邪気さや軽薄さが映し出されている。
なお,山ねこが紳士の特徴を見抜いた仕掛けの最初は,ここではなく「RESTAURANT西洋料理店 WILDCAT HOUSE 山猫軒」のところ,つまり,紳士を自負している,西洋かぶれの二人がより入 りたいと思うような看板を掲げているところである。ただし,この時点で児童が山ねこの意図を見 抜くのはまだちょっとしんどいと思われる。そこで,この扉①の仕掛けを読み取った後で,「実は
この前にも山ねこの仕掛けがあったんだけど,気付いた?」のように問い掛け,テキストとの対話 から見出させたい。
一資料X V】改善実習r注文の多い料理店」の教材分析
◆扉②表「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知下さい」(水色の扉・黄色)
直前の二人の紳士の会話から,「知ったかぶり」を繰り広げ,若干芽生えた料理店への疑問を深 めようとしていないことがうかがえる。この扉②表は,題名とそのものが書かれており,やはり形 式上では「客→店」と「店→客」という注文の方向性の逆転が,意味上では「食べる」と「食べら れる」という二人の紳士の立場の逆転が起こっていることが含まれている。
◆扉②裏r注文はずいぶん多いでしょうがどうかいちいちこらえてください」
ここの二重の意味は,紳士側の繁盛しているから注文が多くて待たせるかも知れないことへの寛 容を求めている意味と,山ねこ側のこれから繰り出していく(二人の紳士を食べるための)注文の 多さへの寛容を求めている意味である。
◆扉③表「お客さまがた,ここで髪をきちんとして、それからはきものの泥を落として下さい」(文
字赤)
ここの二重の意味は,紳士側のよほど偉い人たちが来るような店なので身だしなみを整えさせるた めという意味と,山ねこ側のおいしく食べたいから泥を落とさせたいためという意味が含まれている。
直前の「どうもうるさいこと」の主体は当然「二人の紳士」である。「語りは焦点化された登場 人物の心情に沿って語られる」ということを指導するには適した叙述である。
◆ブラシを板の上に置くやいなや,そいつがぼうっとかすんでなくなって、風がどうっと室の中に はいってきました。二人はびっくりして…途方もないことになってしまう…
紳士の目の前で非現実の出来事が起こり,紳士が驚いている。ここを含め,紳士は決して何も感 じていないのではなく,怪しいことに気付きながらも知ったかぶりをしながらお互いに自分に言い 聞かせながらも進んでいくということと,なぜ怪しいと思いつつ進んで
いこうとしたのかという二人の紳士の心情も考えさせていきたい。決してステレオタイプに紳士を 悪く見るだけでなく.人間は不安なときは無理にでも納得できる理由を探して常にバランスのとれ た心でいたい、 という見方も重要である。(納得の仕方に二人の特性)
【IV】
<焦点化すべき叙述〉
当軒は注文の多い料理店です 注文はずい、sミん多い
はきものの泥を落として ぼうっとかすんで 風がどうっと 途方もないことに
②表〜扉③表における読書行為の流れ
<叙述の意味形成〉
店が繁盛していて注文が遅れたり,
偉い人も来るから身だしなみを整 える/二人の紳士へ注文が多い,
おいしく食べたいから余計な物
を落とせ。
あり得ないことが起きて不安がか きたてられている。
〈イメージ形成〉
変なことや不思議なことが起き て,だんだん不安になってくる から早くおいしいものを食べた い。安心したい。
く物語内容・表現方法への反応批評〉
【物語内容】紳士たちが不安がっているのに先に進もうとするのはよほどお腹がすいているのだろう,そ れだけ欲深いのだろう,不安なときは自分をどうにか納得させたい気持ちが働くのだろう,早く食欲を満 たしてほっとしたいのだろう,等。
【表現方法】扉に書かれたことばから,紳士側の解釈と山ねこ側の意図の二重の意味がとらえられ,その2 つの解釈のギャップが読み手にユーモアをもたらしている。
峻料X V】改善実習唯文の多い料理店」の教材分析
◆扉③裏r鉄砲と弾丸をここへ置いて下さい」
ここの二重の意味は,偉い人の前で武器を携行するのは失礼に当たるから置いていこうという紳 士側の解釈の意味と,いざ食べようとしたときに反撃をされたらかなわないから武器を置いていか せようという山ねこ側の解釈の意味が考えられる。この紳士側の解釈は常識と照らし合わせても無 理のないものであり,ここでの描写も紳士はそれほど心理的な抵抗を示していない。
◆扉④表「どうか帽子と外套と靴をおとりください」(黒い扉)
ここの二重の意味は,偉い人の前で帽子や外套を着用するのは失礼に当たるから置いていこうと いう紳士側の解釈の意味と,おいしく食べるために不要な物を取り除いておきたい山ねこ側の解釈 の意味が考えられる。紳士が「しかたない」と抵抗を示しているのが前とちがう。ここでも「おか しい」と感じつつ前に進んでいることがうかがえる。なお,rしかたない」と感じたのはおそらく 裸足になることだというのが考えられる。その後のオノマトペ「べたべた」がユーモラスな雰囲気
を作っている。
◆扉④裏「ネクタイピン,カフスボタン.眼鏡,財布,その他金物類,ことにとがったものは.み んなここに置いて下さい」(黒塗りの立派な金庫)
ここは山ねこ側の解釈(とがった物は喉に突き刺さってしまうから取り除いておきたい)が読み 手は素直に感じ取れ,紳士側の解釈(料理に電気を使うから危険)はかなり無理があるように感じ られる。常識的にこれらのものを置いていかせることは普通の飲食店では考えられないが,ここで 二人の紳士はほぼ疑念を抱かずに素直にしたがっており,常識との「ズレ」がハッキリしている。
そのrズレ」がユーモアを生み出している表現技巧を感じ取らせたい。
◆扉⑤表「壼の中のクリームを顔や手足にすっかり塗って下さい」(ガラスの壷)
扉④裏と同様,紳士側の解釈には無理があり,常識との大きなズレを生み出している。「貴族と 近づきに」やr塗る、;・りをしながら食べ」という描写から二人の貴族の俗物的な浅ましさがここで クローズアップされている。
【V】 ③裏〜扉⑤表における読書行為の流れ
〈焦点化すべき叙述〉
鉄砲と弾丸をここへ 帽子と外套と靴をおとり…
「しかたない…」,べたべた みんなこ二に置いて…
クリームを顔や手足に…
塗るふりをしながら食べ…
<叙述の意味形成〉
偉い人も来ているから扉に書か れているとおりにしている/お いしく食べるために注文をつけ ている。扉の言葉にあまり疑問 を抱かずに自分たちで納得でき る理由を見つけている。
<イメージ形成〉
どうも偉い人と近づきになれ そうだ。おれたちも偉くなれ
るかも知れない。とにかく失 礼がないように扉の指示どお
りにしよう。
<物語内容・表現方法への反応批評〉
一物語内容】偉い人と知り合いになれるのを心待ちにするあまり,扉の言葉の怪しさに気付か ないでいるから,見栄っ張り,自業自得,低俗な人,等。
【表現方法】紳士側の解釈が常識と大きなズレがあり,そのズレが読み手にユーモアをもたら している。また,二人の紳士にとってはアイロニーを生み出している。
【資料X V】改善実習「注文の多い料理店」の教材分析
◆扉⑤裏rクリームをよく塗りましたか,耳にもよく塗りましたか」
直後の「そうそう,ぼくは耳に塗らなかった」という紳士の会話文から,扉⑤表で紳士がしっか りクリームを塗らなかったことをどこからか山猫たちが見ている,と言うことがうかがえる。
◆「…どうもこうどこまでも廊下じゃしかたないね」
この紳士の会話文を同化して考えたとき,そろそろ料理にありつけないことに飽きてきた心情が 読み取れる。山猫たちは紳士たちを監視していることから,山猫たちが紳士が開き始めていること を把握したという理解を持たないと,次の扉の仕掛けが読み取りにくくなる。
◆扉⑥表 するとすぐその前に次の戸がありました。「料理はもうすぐできます。十五分どお待た せはしません。すぐ食べられます。早くあなたの頭にびんの中の香水をよく振りかけて下さい。」
ここでは仕掛けがいくつか読み取れるので,整理してみる。
(1)「すぐ」の反復…紳士たちを監視していた山猫たちは,紳士が飽きて引き返すことを恐れ,
扉をすぐ出現させたことに加え,文章にも「すぐ」を連発している。山猫たちの焦りが見えて,お もしろさが感じられる。
(2)「食べられる」…「紳士たちが山ねこに」食べられるという受け身の意味と,「山ねこが紳士 たちを」食べられる(食べることができる)という可能の意味を掛詞のように使っている。これを 把握させるためには,省略されている主語や目的語,補語を補充するような文法的なアプローチが 有効ではないかと考える。
(3)「もうすぐできます」…紳士側はやっと料理にありつくことができると受けとめ,
山ねこ側は最後の仕上げが終われば食べることができるというつもりで言っている。
◆r…へんに酢くさい。…まちがえて入れたんだ」
香水と酢はいくら何でも間違えないだろう,という常識とのズレがやはりユーモアを生み出して いる。また,山ねこの窮余の策略が上手く機能したという解釈もできる。
川】 ⑤裏〜扉⑥表における読書行為の流れ
<焦点化すべき叙述〉
よく塗りましたか どこまでも廊下しや
するとすぐその前に次の戸が 料理はもうすぐできます。
すぐ食べられます。
まちがえて入れたんだ
〈叙述の意味形成〉
山ねこは紳士たちを監視してい る。紳士たちはだんだん飽きて きた。山ねこは何とか紳士たち を引き入れようと安心させるよ うな言い方をしている。紳士た ちはまだ気付かずに酢をかけて おいしく食べられようとしてい
る。
<イメージ形成〉
〈紳士〉この廊下はいつまで続 くんだろう。もうお腹がべこ べこ打よ。<山ねこ〉紳士たち がそろそろ待ちきれなくなっ ている。あせるなあ。よし,
安心させてやれ。
〈物語内容・表現方法への反応批評〉
【物語内容】ここまできておかしいと言わないのは,間違いさえ認めたくないのか。
【表現方法】言葉の二義性が連続して登場している。
【資料XV】改善実習「注文の多い料理店」の教材分析
◆扉⑥裏「いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。お気の毒でした。もうこれだけです。ど うかからだじゅうに,壷の中の塩をたくさんよくもみ込んで下さい。」…こんどというこんどは 二人ともぎょっとして…
二人は何に対して「ぎょっ」としたのか。今までは,「注文」のもつ二義性から理不尽な要求に も自分たちで納得できる理由を見つけて自分たちに言い聞かせながら来ることができたが,「もう これだけです」からは,「これ」:「塩をもみ込むこと」としか解釈できず,ようやく「注文」と は店側から自分たちへの注文であることが明らかになった。そして,何のために注文されているの かに気付くこととなっていく。ここでは,この扉の言葉が今までとどうちがったために紳士が気付 いたのか,叙述にこだわって考えさせたい。
◆なるほどりっぱな青い瀬戸の塩壷は置いてありましたが,こんどというこんどは…
扉⑤裏の地の文と対比することで「は」と「が」の違いによるアプローチができる。
小さなクリームの壷がここにも置いてありました。
→格助詞「が」。まだ知らない未知の情報を提示している。
なるほどりっぱな青い瀬戸の塩壼は置いてありましたが…
→副助詞rは」。すでに知っている既知の情報の提示を示している。
※「格助詞」体言または体言に準ずるものに付いて、それが文中で他の話とどんな関係にあるかを示す助詞。
※「副助詞」種々の語に付き、それらの語にある意味を添えて、副詞のように下の用言や活用連語を修飾・
限定する類の助詞。
ここでは視点人物(二人の紳士)の視点に沿った語りの文であることの理解が前提であるので,
それがまだであれば先に説明しておく。
「が」の方は,単に物語で初めて登場する事実を説明しているだけの文である。よって,特に視 点人物の心情が表れることはない。読み手に事実を知ってもらう以上の意味はない。しかし,「は」
の方は「視点人物である紳士にとってすでに分かっている事実」であることが強調されている。紳 士にしてみれば,「そんなことは分かっている」のであり,それ(既知の事実)よりももっと重要 な何かを読み手に知らせたいという意味を持っている。つまり,「ここに壼があるな」ではなく,「こ こに壷があるけど,なんかおかしいぞ」という印象を読み手に抱かせる仕掛けとなっているのであ る。なお,「瀬戸の」壷とあり,今までなら外見に目がくらんでいたが,今度という今度は外見に 騙されなかった。
【V皿】塵亙憂における読書行為の流れ
<焦点化すべき叙述〉 〈叙述の意味形成〉 〈イメージ形成〉
こんどというこんどはこ人とも扉の言葉から決定的に「注文」お気の妻とか,いろいろな注 ぎょっとして… が自分たちが思っていたのとは文とか,全部は僕たちを食べ なるほどりっぱな青い瀬戸の塩逆の意味であることを理解しるためだったのか。怖いよう。
壷は置いてありましたが… た。
〈物語内容・表現方法への反応批評〉
【表現方法】普通に「が」を使わずに「は」を使うことによって,紳士が今までのように外見 に騙されないでいろんな違和感に気付き,すごく不安になっていることを表現している。
【資料XV】改善実習「注文の多い料理店」の教材分析
◆扉⑦表「いや.わざわざご苦労です。たいへん結構にできました。さあさあおなかにおはいりく
たさい。」
「おなか」が掛詞(二つの異なる意味を掛け持ちしている語句)になっている。
①「お腹」。つまり,山ねこに食べられなさい,私のお腹に入りなさい,という意味。
②「お腹」。つまり,レストランとしてテーブルがある方へ入って下さい,という意味。
なお,②があることから(後の叙述からも分かるが)まだ山ねこの子分は二人の紳士を奥に引き 入れようとしている。また,「たいへん結構にできました」は,今までの二人の紳士の様子を見て いることがうかがえる叙述になっている。
◆「山ねこの子分」の人物像の把握
「親分の」…この会話文の主が山ねこを「親分」と呼んでいる事から,子分と言える。
「間抜けたことを書いたもんだ」「骨も分けてくれやしない」…主従関係にあるとは言え,親分に 不満を持っており,陰口をたたいている。また,近くに親分はいないようである。
「ぼくらの責任だぜ」…とは言え,二人の紳士を引き込むことに失敗したら親分から責められる事 がうかがえる。ここから,子分は親分に対して二人の紳士を中へ引き入れようとしていることをア
ピールする必要性があることを読み取らせたい。
「おい,お客さんがた…」…一見すると,わざと丁寧なことばを使い,二人の紳士を中に呼び込も うと努力しているように読める。しかし,そうであるとすると,「あなたがたと,菜っ葉を…」な ど,二人を料理することを連想するような言い回しをしているところが矛盾する。
「顔がまるでくしゃくしゃの紙くずの…中ではふっふっふとわらって…」…さらにここから,明ら かに子分たちは二人が恐怖に陥っていること,そしてそれをあざ笑っていることが読み取れる。つ まり,子分たちは二人の紳士をからかっていると読める。この構図は、冒頭部で鳥や獣を殺すこと を面白がっている紳士に照応している。
【w】二人の紳士が震えている場面における読書行為の流れ
<焦点化すべき叙述〉
おなかにおはいりください ぼくらの責任だぜ
中では、s、っふっふとわらって
<叙述の意味形成〉
自分たちが食べられるかも知れない ことを悟って紳士たちは恐怖に震え ている。子分たちは親分に仕事のア ピールをしつつ,二人の紳士をから かっている。
〈イメージ形成〉
〈紳士〉もうだめだ,食べられてし まう。怖いよ。
<子分〉親分には仕事をしているよ うに見せかけよう。こいつらはも っと怖がらせてやろう。
く物語内容・表現方法への反応批評〉
【表現方法】
山 ね の 子 分
納 土 を 殺 す
琴畢
ぐ■◆宅
婁
人 の 紳 士
冒頭場面において,紳士は狩りをするために森に入 って,r痛快だろうねえ」などと動物の命を何とも 思っていない様子がうかがえる。ここでは,面白が って殺す方からからかわれながら殺される方へとそ の立場が逆転している。置かれている立場を比べて 考えさせることで対立構造を捕らさせ、作者がそう
した意図を考えさせたい。
1資料X V】改善実習「注文の多い料理店」の教材分析
◆そのというしろからいきなり〜ちらぱったりしています。
「死んだ」はずの白熊のような犬がいきなり登場し,二人の紳士を山ねこから救うというこの部 分は,非現実世界から現実世界に場面転換したところと言えよう。叙述から,非現実世界で起こっ たことが元どおりになったことに気付かせたい。そのために,「室はけむりのように消え」「草の中 に立っていました」「あっちの枝にぶら下がったり,こっちの根元にちらばったり」といった叙述 に着目させ,レストランそのものが幻であり,幻を創り出したのは山猫であったこと,それを犬が 打ち破ったことを理解させたい。ここでも構成のアイロニー者えさせたい。すなわち,冒頭部にお ける「犬を見捨てた紳士」と,この場面におけるrそんな紳士を助けた犬」の対立構造である。
◆風がどうと吹いてきて,草はざわざわ.木の葉はかさかさ,木はごとんごとんと…
冒頭部にも全く同じ叙述が見られる。かんたんな情景描写表現である。どちらも非現実世界に入 った直後,出た直後に書かれていることをふまえ,作品世界の演出上とのような効果があると感じ るか,児童に考えさせたい。非現実世界に入ったこと,非現実世界から出たことをより印象づける ような効果が感じ取れればよいと考える。
◆途中で十円だけ山鳥を買って東京に帰りました。
何のためか?すぐ食べていないので,お腹が減っているわけではない。狩りに出て獲物を捕った ことに見せたいという見栄が感じられる。冒頭場面にも出ている。
◆しかし.さっき一ぺん紙くずのようになった二人の顔だけは,東京に帰っても、お湯に入っても,
もうもとのとおりにはなりませんでした。
ファンタジー作品では,非現実の世界での出来事は現実の世界に戻ると消えるのが普通であるが,
紳士の顔は元どおりにならなかった。ここに物語の典型を打ち破ることで強いメッセージを出そう としている作者の意図がうかがえる。この最後の2行の有無で,物語のテーマの捉え方が変わって くる。この2行があった方がいいのか無い方がいいのか,という形式の熟考・評価をすることで,
より考えが深まると考えられる。
【IX】山場場面〜結末場面における読書行為の流れ
<焦点化すべき叙述〉 く叙述の意味形成〉 <イメージ形成>
そのというしろからいきなり 見捨てた犬に助けられ,二人の紳〈紳士〉やっと助かった。手ぶら さっき一ぺん紙くずのよう1;なっ士は現実世界に戻った。顔が戻らで帰るのは格好悪いから,山鳥 た二人の顔だけは…もうもとのとないのは,自然をいたぶったしっでも買って帰ろう。
おりには… べ返し。
く物語内容・表現方法への反応批評〉
□費11⇔氾
健気.正義.従順.等 自分勝手.令酷等
犬,紳士を異化するとそれぞれ犬はr従順,正義」
紳士は「自分勝手」といった批評ができる。その上 で,顔が戻らなかった理由を考えさせたい。もしし っべ返し・天罰といった解釈が出たら,誰がそうさ せたのか,何のためにそうさせたのかを考えること
を通して,作品のテーマを捉えさせたい。
紙くずのようになった二人の顔だけは、もう毛との とおり1こはなりませんでした。
【資料XVI】改善実習r注文の多い料理店」で使用した主なワークシート
【資料XVI】改善実習「注文の多い料理店」で使用した主なワークシート
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図17場面の学習の最後にまとめるミニブックレポート
【資料XW】改善実習r注文の多い料理店」で使用した主なワークシート
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図18叙述の仕掛けを捉えさせるために使用したワークシート
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図19現実・非現実の往還という文章構成の仕掛けを捉えさせるためのワークシート
一資料xW1改善実習「注文の多い料理店」で使用した主なワークシート
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図21結末の妥当性を評価するためのワークシート
資料XW】改善実習r注文の多い料理店」で使用した主なワークシート
r注文の多い料理店」単元の振り返りワークシート
月 日 5年 番 名前(
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一
〈この単元の学習課題〉
物語のおもしろさや作者の工夫についてのフックレポートを脅こ㍉
『注文の多い料理店』を学習して身に付けたカを、振り返りましょう。
読 しょうことなる文をもとに、 二人しんしの性格や心情を読み取ることができた。
む
とぴらのことぱについて. 山ねこの作戦としんしの受け止め力と別々に読み取り,
そのちがいを説明することができた。
この物語がどんな構成をしているかが分かり, 説明することができた。
二二人の紳士をこのような目に這わせた作者の意図をそうぞうし,自分なりのテーマ を説明することができた。
とぴらのことばや構成以外に. 作者が1二大していると感じた文やことぱに気づき,
説明することができた.
■ はじめrなか一おわりの三段構成でブックレポートを書くことができた。
〈
物語をrあらすじ」として短くまとめることができた。
フックレポートを書くとき、内容のまとまりで段落をかえていた。
話 自分が大切だと思った文や表現の工夫を、 Q&Aやミニレポートにまとめて、 グル
す 一プの友だちに報告することがで葦.牟。
聞 友だちの報告を聞いて、質問したり、感想を言ったりするなど、聞いて考えたこと
< を伝えることができた。
言葉でも振り返りましょう。
●
それはどんな時ですか?一つだけえらんで鋭明しましょ㍉
図22 単元の言語活動等を通して身に付けたカを振り返るためのワークシート