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 一社会認識形成のための地誌学習一

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(1)

中等地理教育内容開発研究

 一社会認識形成のための地誌学習一

2011

兵庫教育大学大学院 連合学校教育学研究科

教科教育実践学専攻

 (兵庫教育大学)

中本 和彦

(2)

目   次

序章  本研究の意義と方法  第」節 研究主題

 第二節 本研究の意義と特質  第三節 研究方法と論文の構成

1

1

4 6

第一部 社会認識形成のための中等地理教育改革

 第一章 社会認識形成からみた中等地理教育の現状と課題   第一節 地理学教授を前提とした中等地理教育内容開発    一 地理学教授を前提とした中等地理教育

   二 閉ざされた中等地理教育内容開発   第二節 閉ざされた中等地理授業

   一 社会認識形成を視点とした地理授業の類型化    二 社会認識形成を視点とした中等地理授業の分析

   三 社会認識形成からみた中等地理授業の現状と閉ざされた地誌学習  第二章 社会認識形成のための地誌学習改革

  第一節 今日の中等地理授業における地誌学習論    一 地域の個別事象を捉えさせる地誌学習論    二 地域の個別事象の関連を捉えさせる地誌学習論    三 地域を説明する理論を捉えさせる地誌学習論   第二節 社会認識形成をめざす地誌学習改革の方向性    一 今日の地誌授業実践が示唆するもの

   二 近年の地誌学研究の動向が示唆するもの    三 理論を中核にした地誌学習論

11 12 12

!2

13 14 14 20 34 40 40 41 45 50 54 54 58 68

第二部 社会認識形成のための地理教育内容開発  第三章 理論を中核にした地誌学習の内容設計論   第一節 総合的理論による地域的特色の捉え方

74 75 75

(3)

  一 総合的理論と地域的特色   二 総合的理論と地域との関係   三 理論の批判・吟味による学習過程   四 総合的理論と対象地域の設定

 第二節 理論を中核にした地誌学習の類型   」 総合的理論の二つの類型

  二 社会認識形成と総合的理論

第四章 社会的事象の構造化による総合的理論を中核にした地誌学習の    教育内容開発の実際

 第一節 社会的事象の構造化による総合的理論

     主題の設定一今日のオーストラリア社会とオーストラリア研究一      対象地域設定の理由

     社会的事象の構造化一オーストラリア社会を説明する理論一  第二節 単元「オーストラリア」の教授計画書

    単元     単元の目的     到達目標

  四 単元構成と発間の組織化   五 授業展開

  六 活用された資料と教材  第三節 授業実践の成果と課題     授業記録

    知識の獲得と社会認識形成     成果と課題

第五章 中範囲の理論に基づく総合的理論を中核にした地誌学習の    教育内容開発の実際(1)

 第一節 中範囲の理論に基づく総合的理論

  一  主題の設定一今日のイスラーム社会とイスラーム研究一   ニ  イスラーム社会を説明する理論

  三  対象地域設定の理由

89 89 90 91 94 94 94 94 94 97 100 107 107 118 120 122

!22

122 123 125

(4)

 第二節 単元rイスラーム社会」の教授計画書   一 単元

  二 単元の目的   三 到達目標

  四 指導計画と単元構成   五 授業展開

 第三節 教授計画書作成の成果と課題

第六章 中範囲の理論に基づく総合的理論を中核にした地誌学習の    教育内容開発の実際(2)

 第一節 中範囲の理論に基づく総合的理論

  一  主題の設定一今日のヨーロッパ社会とヨーロッパ研究一   ニ  ヨーロッパ社会を説明する理論

  三  対象地域設定の理由

 第二節 単元rヨーロッパ」の教授言十画書   一 単元

  二 単元の目的   三 到達目標

  四 指導計画と単元構成   五 授業展開

 第三節 教授計画書作成の成果と課題

第七章 類型的理論に基づく総合的理論を中核にした地誌学習の    教育内容開発の実際

 第一節 類型的理論に基づく総合的理論

  一  主題の設定一合目のインド社会とインド研究一   ニ  インド社会を説明する理論

  三  対象地域設定の理由

 第二節 単元rインド」の教授計画書   一 単元

  二 単元の目的   三 到達目標

127 127 127 127 127 128 137 139

139 139 140 143 144 144 144 144 146 147 151 153

153 153 154 156 157 157 157 157

(5)

  四 指導言十画と単元構成   五 授業展開

 第三節 授業実践の成果と課題

  一 「学習材」を活用した教授計画書の追試   二 知識の獲得と社会認識形成

  三 成果と課題

第八章 普遍的理論に基づく総合的理論を中核にした地誌学習の    教育内容開発の実際

 第一節 普遍的理論に基づく総合的理論

  一  主題の設定一合目のラテンアメリカ社会とラテンアメリカ研究一   ニ  ラテンアメリカ社会を説明する理論

  三  対象地域設定の理由

 第二節 単元「ラテンアメリカ」の教授計画書   一 単元

  二 単元の目的   三 到達目標

  四 指導計画と単元構成   五 授業展開

 第三節 授業実践の成果と課題   一 教授言十画書の追試

  二 知識の獲得と社会認識形成   三 成果と課題

終章 理論を中核にした地誌学習の教育内容開発の意義

参考文献

謝辞

157 161 172 172 215 220 223

223 223 224 226 227 227 227 227 228 229 236 236 241 242

244

248

269

(6)

図1 図2 図3

図4

図5 図6 図7 図8 図9

図10 図11 図12 図13 図14 図15 図16 図17 図18

社会認識の構造

社会的事象に関する科学的知識の構造 中等地理授業改革の方向性

地域の個別事象を捉えさせる地誌学習論 地域の個別事象の関連を捉えさせる地誌学習論 地域を説明する理論をとらえさせる地誌学習論 総合的理論と地域との関係

帰納的解釈に基づく総合的理論 演繹的解釈に基づく総合的理論 総合的理論の類型と探求・形成過程 単元「オーストラリア」の知識の構造図 単元「オーストラリア」の問いの構造図

単元rオーストラリア」における習得した知識とその獲得方法 イスラーム社会一イスラーム復興一

単元rヨーロッパ」の知識の構造図

!ンドにおける消費社会の相互関連図

教育実践研究における「学習材」の位置づけと二つの機能 総合的理論における消費理論と教育内容開発

16 16 35 42 46 51 76 80 80 87 93 96 119 123 145 155 214 245

表1 表2

表3 表4 表5

表6

表7 表8 表9

表10 表11 表12

科学的杜会認識形成のための地理教育の内容編成類型化 杜会認識形成を視点とした中等地理授業の類型

地理学を視点とした中等地理授業の類型

地理学教授を前提とした中等地理授業の杜会認識形成における位置付け 地誌学習と地誌学の関係

単元「生活大国北欧諸国(スウェーデン)」の到達目標 単元「東南アジア」の到達目標

教科教育実践研究の諸類型

r学習材」を活用した授業計画・授業実践の類型 間題Aにっいてのプレテスト・ポストテストの回答例 間題Bにっいてのプレテスト・ポストテストの回答例 間題Cにっいてのプレテスト・ポストテストの回答例

17 19 20 34 69 81 84 174 198 217 217 219

(7)

序章 本研究の意義と方法

第一節 研究主題

 本研究は,中等段階の地理教育を,社会認識形成の面から再構成し,開かれた科学的な 社会認識形成のための地誌学習の教育内容開発を行い,その有効性を実証的に検証するこ

とを目的とする。

 今日,我が国の中等段階で一般的に見られる地理教育は,次の二つであろう。一つは教 科書の記述を教育内容の中心として教授する地理教育である。これは,教科書記述の行間 を埋める最新の情報や詳しい情報を盛り込むことはするけれども1〕,基本的には教科書の 記述を中心に教育内容を構成し,事実として教授するものである。もう一つは,地図や統 計,資料などの読み取り,調査活動などの学習活動によって得られる方法知を教育内容の 中心とし,生徒に作業,活動させる地理教育である。

 これらのうち,前者はr地名物産の地理」,r網羅的な地理学習」,後者はr形式主義・

活動主義」などと批判されてきた2〕。そして様々な改善案や指導上の工夫が繰り返し提案 されてきた。しかし,今なお上記のような地理教育が一般的に行われていることは,これ までの提案が対処療法的な改善案や指導上の工夫に留まり,本質的な改善とはなっていな いことを示している。教科書の記述や教師によって権威づけられた教育内容が,その選択 の根拠を示されることなく事実として教授されている。あるいは内容と方法が切り離され た形式主義,活動主義の授業が行われている。その結果,「今日,この時間に,なぜこの 内容をこういう方法で学習しなければならないのか」:ヨ〕,生徒にとって地理を学ぶ意義 のわかりにくいものとなっている。いわば,生徒にとって閉ざされた地理教育になってい ると言える。

 また,地理を教える教師にとっても,自らの責任で地理を教える意義を説明しにくいも のとなっている。昨今,法令遵守,説明責任が間われる中で,学習指導要領と教科書の改 訂に傾注し,その具現化に腐心する姿が目立ってきている。それは,平成20年中学校学習 指導要領改言下,平成21年高等学校学習指導要領改訂に伴う地誌学習のあり方についての各

(8)

学会,教育雑誌のシンポジウム,特集などを見てもよくわかるだろう一〕。もちろん,学習 指導要領には法的拘束力があり,教科書は主たる教材として無視はできない。加えて,実 際の学校現場では学校体制や保護者の要望なども考慮しなければならない。しかし,制度 や体制への現実的な対応に真筆に向き合えば向き合うほど,自分自身の地理による育てた い子ども像とその実現からは遠ざかり,教授学的な改善5〕や指導上の工夫に終始すること になってしまっている。その結果として,自らの育てたい子ども像から引き下がった閉じ た教育内容開発を余儀なくされる。いわば、教師にとっても閉られた地理教育になってい ると言える。

 一方,このような学ぶ,教える意義の見いだしにくい地理教育に対して,近年,各方面 から地理の有用性を主張する動きが見られる。例えば,地理が本来持つとする教育力を主 張するものや新たな社会的な動きに地理が寄与することができるというものなどである 引。しかしこれらは,いずれも地理の目標,内容,方法は他の教科目とはできるだけ重な らないよう独自性を維持し,社会的な課題を扱う際には地理の固有性を損なわない程度に 留めるものとなっている。他の学問の成果の導入には消極的であり,社会の本質的な解明 には限界性を残す地理教育と言えるハ。たしかに地理は,自然や空間との関係において社 会を解明し,説明する有用な学問である。例えば自然条件と農作物の分布の関係のように 自然や空間という概念を用いて,われわれに農業の実態や傾向性を解明し,説明してくれ る。しかし,その農業でさえ今や政治的・経済的な影響を抜きには語ることができなくな っている。このことは,今日の穀物の価格の上昇などに見られるような世界的な食糧問題 をみても理解することができるだろう。社会的な事象や課題について自然や空間との関係 に限定して説明することは,生徒を現実社会で起こっている出来事や問題から目をそらさ せ,生徒の社会認識の範囲を狭めてしまうのではないだろうか。国際化,情報化が進み,

より社会が複雑化し,様々な課題が生じている今日と将来を生きる生徒にとって,より学 ぶ,そして教師にとってより教える意義のある地理教育とは,社会の本質的な解明に寄与 する,社会認識形成のための地理教育ではないだろうか。

 本研究は,こうした問題意識を基に.次の二つの基本仮説に基づいて地理の教育内容を 具体的に開発し,検証する。

 第一の仮説は,地域の社会構造を説明する理論を教育内容の中核に位置づけ,科学的探 求の過程に沿って理論を批判・吟味させながら習得させ,その理論を活用して生徒自身に 地域の社会を解釈させる地誌の教育内容を開発すれば,開かれた科学的な社会認識形成の

(9)

ための地理教育となる,というものである。この学習論を,理論を中核にした地誌学習と 名付ける。地誌の教育内容開発とするのは,地誌学習が,「○O(=地域)は,いったい

どんなところ?」と地域を総合的に解釈し,説明することをめざす学習だからである。生 徒に社会についてより総合的に解釈をさせようとするのならば,地誌学習がその訓練の場 を提供することになると言えるからである。生徒が実生活において,社会問題やそれにか かわる事象に直面したとき,まず行う必要があるのは,直面した事実についての総合的で より間違いの少ない解釈である目〕。もちろん,解釈のためには,解釈のための分析的な理 論が必要となる。これまでも系統地理学習では,立地論や都市の内部構造を分析し,説明 する理論などを習得させ,科学的な社会認識形成を行ってきた。しかしより本質的な社会 の解明をめざすのならば,様々な角度からの多字間的なアプローチが,すなわち社会諸科 学の成果(理論)の習得と活用が必要となろう。その訓練の場を提供するのが,地誌学習 なのである。地誌学習の場で,地域を手段として社会諸科学の成果を消費して社会を探求 させ,解釈させる。それによって科学的で総合的な開かれた社会認識形成を図ることが可 能となると考えるからである。

 第二の仮説は,自らの依拠する授業理論を明示して教授計画書を作成しH〕,授業を通し てその適否を吟味・検討してゆけば,開かれた教育内容開発を保証することになる,とい

うものである。これについては,すでに先行研究の蓄積がなされているln〕。本研究もそれ を継承する。しかしそれに加えて,検証の場を教授計画書の作成者による実践だけではな く他者による実践,吟味・検討を指向する。なぜなら,他者による吟味・検討へと授業理 論の検証の場を進めることで,授業理論の一般性をより高めるだけでなく,授業理論の選 択権が現場の教師に委ねられるものとなるからである。それは,教師の育てたい子ども像 と現場の実態も踏まえたきわめて現実的で実践的な選択を保証することとなる。その結果,

より現実的で,実践的な,厳しい批判に授業理論をさらすことになり,より開かれた教育 内容開発となる。

 本研究は,これらの基本仮説に基づいて,具体的に地誌学習の教育内容を開発する。そ してその教授計画書やその有効性を実証的に検証した教授計画書,及びその検証の結果の いくつかを提示する。これらを通して,基本仮説の有効性を論証することとなろう。

(10)

第二節 本研究の意義と特質

 本研究の意義と特質は,次の五点に集約できる。

 本研究の第一の意義と特質は,中等段階の地理教育の授業を,社会認識形成の視点から 類型化し,再構成した点である。今日の我が国の中等段階の地理教育は,一般に地理教育 内容編成が地理学の学問的な枠組みに基づいて制度的に行われているため,授業では地理 学の学問的な成果を教えることを意識,無意識を間わず前提としている川。地理学の成果 を教えることを前提とした中では,地理学の枠内で,あるいは方法に従ってつくり,教え ることそのものが,教育的に意味あることと考えられている。しかし,地理を学ぶ意味や 意義が求められる今こそ,多様な地理の授業の事実を客観的に分析し,授業が持つ教育的 な意味や意義,あるいは問題について説明する授業のメタ理論が必要なのではないだろう か11〕。これまで社会科教育学は,授業を直接の研究対象とし,社会認識形成の視点から授 業を分析してきた一={〕。地理の授業の類型化,説明においても,そのような社会認識形成の 視点から行う必要があろう。本研究では,社会科教育学の先行研究に示唆を得ながらI川,

地理の授業の分析枠組みを設け,授業をつくる上で前提とする枠組みから,授業の事実を 分析する枠組みに転換した。そして社会認識形成の視点から我が国の具体的な地理授業を 類型化し,それぞれの地理の授業が相互にどういう関係にあり,どのような教育的な意味,

意義をもち,序列化できるかを示した。まずはこの点が,本研究の意義と特質と言える。

 本研究の第二の意義と特質は,「理論を中核とした地誌学習」という新しい地理学習の 考え方を提起したことである。従来の地誌学習論は,地域の個別事象を捉えさせる地誌学 習論が,地域の個別事象の関連を捉えさせる地誌学習論であり,いずれも地域に見られる 様々な事象は地域それ自体が内的に持つ論理で意味を持って存在しているとアプリオリに 考える地誌学習論と言える。そのため,地誌学習として地域の特色が分かるとは,特色と される個別の事象が事実としてその地域に存在していることを,あるいは事象間の関連が 事実としてその地域に存在していることを,できるだけ多く知ることとされる。取り上げ られた個別の事象の事実全体で,あるいは事象間の関連の事実全体を通して,特色とされ る意味を分かることが,地域の特色を分かることとされる。結果として,学習者は特色と される事象やその関連について,なぜその事象やその関連が授業で取り上げられるのか,

(11)

その根拠を明らかにされることなく,それらを特色として,無批判に事実として教授され ることとなる。いわば,閉ざされた地誌学習であると言える。一方で,学習者の主体性や 方法知の習得を重視した地域調査などによる地誌学習も見られる。しかし,そこで得られ る教育内容は,学習者の主体的な追究で解決できる程度の常識的な知識に留まり,大きく は先の二つの地誌学習論における活動主義,形式主義の地誌学習となる。いわば,常識的 な地誌学習であると言える。理論を中核とした地誌学習では,地域や地域に見られる事象 はそれ自体が意味を持ってわれわれに迫ってきているのではなく,われわれが何らかの理 論で意味づけをして解釈している,という認識論に立つ。したがって,われわれが意味づ けている理論を,教育内容の中核に仮説として位置づける。その際,取り上げる理論は,

社会諸科学の成果による地域の社会構造を説明する理論とする。そしてその理論を,具体 的な事象を取り上げて間主観的に批判・吟味する過程を通して習得させ,地域を解釈させ るという学習過程をとる。すなわち,開かれた科学的な社会認識を形成する地誌学習とす るのである。このような地誌学習を提起したことが,本研究の第二の意義と特質と言える。

 本研究の第三の意義と特質は,中等段階での地理の教育内容を具体的に単元レベルで提 示したことである。第二の意義と特質で述べた,理論を中核とした地誌学習の単元レベル の授業モデルを,単元「オーストラリア」,単元「イスラーム社会」,単元「ヨーロッパ」,

単元「インド」,単元「ラテンアメリカ」として,教授計画書の形によって提示した。具 体的には,単元「オーストラリア」では多文化社会の構造を地域を説明する総合的な理論 とし,単元「イスラーム社会」ではイスラーム復興の構図とレンティア国家論を,単元「ヨ ーロッパ」では相対的剥奪論と三空間並存モデルを,単元「インド」では経済の自由化と 消費社会論を,単元「ラテンアメリカ」では近代化論,従属論,ポピュリズム,ペルソナ リズム,カトリシズムを消費して地域を説明する総合的な理論として開発した。それらの 教授計画書は,実際の授業実践によって吟味・検討された実践可能性の高いものである。

またほとんどの単元設定が形式的な地域によってなされており,学習指導要領の内容の枠 内で実施できるように作成された,実際の教育現場での地理の授業を変革しうるものにな っている。

 本研究の第四の意義と特質は,教授言十画書に沿った「学習材」の開発・活用によって,

教授計画書を作成者のみならず,他者による実践,検証を可能とし,授業理論の一般性を 高め,教育実践研究を漸進させたことである。これまで社会科教育学では,教育内容開発 研究として数多くの教授言十画書が提案されてきたが,それらの多くは,開発者による吟味

(12)

・検討はなされるが,他者による吟味・検討がなされることがなく,優れた教授計画書が 活用されないまま授業現場では依然として変わらない授業が続けられているI引。それは,

いわば,研究と実践の乖離とも言えよう。また,検証にかけられないというこの問題は,

「授業理論のモデル化」を超えて「授業モデルの試行・検証」へと研究をさらに拡張・深 化させ,フィードバック過程を機能させていくという学問的な課題を孕んでいる用〕。この ような教授計画書の持つ実践的な課題と学問的な課題の解決をめざして,本研究では教授 計画書と授業計画・授業実践をつなぐ「学習材」の開発を行った。その結果,複数の授業 者による授業計画・授業実践を可能とし,より広く授業計画・実践の事実や学習成果,実 際の実践者の声を得ることができた。それは同時に,その結果からより一般性の高い教授 計画書の有効性や修正課題を得ることができる,というフィードバック過程を示すことも 可能とした。

 本研究の第五の意義と特質は,理論を中核とした地誌学習をさらに類型化,序列化する ことによって,社会認識形成からみた教育的意義の程度を段階的に示すことができたこと である。またそれと同時に,それぞれに必要とされる教材研究との関連によってそれらの 実践可能性・実現可能性の段階を示すことができたことである。教師の自主的・自立的な 教育内容開発は,近年の多1仁な教育現場の中でかなりの精神的,物理的負担が伴う。その ため,そのような授業を開発しようとしても現実的ではない,という声がしばしば聞かれ る。しかし,教師は,教育内容の選択と組織に関しては,自ら生徒に対し責任を負わなけ ればならない1η。どのような教材研究に基づいて教育内容開発を行えば,どのような理論

を中核にした地誌学習となり,どのような教育的な意義を持つことができるというのか,

ということを示すことによって,自主的・自立的な教育内容開発への教師の不断の努力が 大きな教育的な意義をもたらすということを,そしてその山歩を勇気を持って踏み出すた めの授業改善へのステップを示すことができたことが,本研究の第五の意義と特質である。

第三節 研究方法と論文の構成

 本研究は,中等地理教育改革のための実験実証的な教育内容開発研究をめざしている。

そこで,基本的に,改革のための新しい学習論を仮説として提示し,その仮説に基づいて 中等段階の地理の教育内容を開発し,実験授業を通して教育内容及び学習論の是非を検証

(13)

してゆくという研究方法をとる。

 具体的には,まず今日一般的に行われている地理授業では,生徒にどのような社会認識 を形成しようとしているのか現状を分析するとともに,そこに内在する問題を解決するこ とができる新しい学習論,すなわち理論を中核にした地誌学習を仮説として提案する。次 に,世界の諸地域の中から,社会諸科学の理論によって社会が構造的に説明されている地 域を選ぶ。そして,その社会を説明する理論を教育的に加工して教育内容としての理論を 確定し,それを生徒に批判的に探求させるために問いと資料(事例)を組織し,教授=学 習活動を想定して教授計画書試案を作成する。その開発した教授計画書試案に基づいて実 験授業や公開授業を実施し,生徒の反応と到達度を踏まえて,授業者と授業観察者によっ てその結果を批判的に検討し,より妥当性のある計画書へと修正していく。また,学会や 研究会において教授計画書と実験授業の結果を報告して諸氏の助言・批判を得たり,他者 による追試の実験授業の結果を得たりして,理論と教授計画書をより確かなものにしてゆ く。このようにして,教授計画書試案を吟味・検討し,その過程で理論を中核にした地誌 学習の原理についても入念に検討する。本研究は,以上のような方法によって開かれた科 学的な社会認識を形成する新しい地誌学習の教育内容を開発する。

 本論文では,まず第一章で社会認識形成からみた中等段階の地理授業の現状と課題につ いて明らかにする。そして,地誌学習の改革の必要性について明らかにする。続く第二章 では,その地誌学習の改革の方向性をさぐるため,今日の中等段階での地誌学習論や近年 の地誌学研究の動向を検討し,理論を中核にした地誌学習を提起する。そのような中等地 理教育改革の方向性を受けて,第三章では,理論を中核にした地誌学習の内容設計論を述 べ,総合的理論による地域的特色の捉え方や理論を中核にした地誌学習の類型を述べ.第 四章以下の各章において,理論を中核にした地誌学習の教育内容開発とその実際を提示し,

それぞれの理論を中核にした地誌学習の実践可能性や社会認識形成における教育的意味や 意義を明らかにする。

(14)

[註コ

1)例えば,教師自身が旅行へ行って見聞したことやテレビのドキニしメンタリー番組などから得た最新 情報,著書や学会誌などから得た地理的な事象の原因や実態などである。

2)「地名物産の地理」,「網羅的な地理学習」については,澁澤文隆『新学力観に立っ中学校社会科地理 の授業改善』明治図書,1995年,p.9などを参照。

  「形式主義・活動主義」については,森分孝治「社会科における思考力育成の基本原則一形式主義  ・活動主義的偏向の克服のために一」『社会科研究』第47号,1997年,pp.1−10などを参照

3)森分孝治『社会科授業構成の理論と方法』明治図書,1978年,p.1.

4)例えば,日本地理教育学会では,2010年2月に「動態地誌学習をどう実践するか」をテーマに地方 例会が開催された。そこでは.前教科調査官によって動態地誌学習導入の背景・理由などが述べられ,

 中学校,高等学校教員から動態地誌学習の実践報告・提案がなされ,活発な討論が行われた(竹内裕  一「学会記事 日本地理教育学会2009年度地方例会(共催・千葉地理学会)報告」日本地理教育学会  『新地理』第58巻第2号,2010年,pp.81−83)。また,それに先だって全国地理教育学会では,2008年  11月に,シンポジウム「地誌学習の復権と展望」が開催された。小・中・高・大学からのパネリスト  によって,中学校・高等学校における地誌学習の在り方を中心に活発な討論が行われた(r学会記事  第2回大会シンポジウム報告」全国地理教育学会『地理教育研究』第3号,2009年pp.93−96)。教育雑誌  においても,『教育科学社会科教育』2009年11月号で,特集「新 地誌 学習でつくる年間計画プラン  36」が組まれ,r新地誌学習」をキーワードに数多くの研究者,中学校教員からの論文が掲載されてい

 る。

5)草原和博r近年の社会科教育研究が示唆するもの一研究方法論と教科論の関連に注目して一」『社会  科教育論叢』第43集,1996年,pp.101−110を参照。

6)例えば,雑誌『地理』では地理教育提言グループによる「地理だからこそできる授業」という連載  が行われている。そのr第3回地誌学習」では,地域の多様性を尊重することは個性の壊重と寛容さ  の育成に通じ、共感的理解による他の地域の理解は人間理解に通じると地誌学習の重要性を説いでい  る(荒井正剛(地理教育への提言グループ)「連載 地理だからこそできる授業 第3回地誌学習一也  の地域の人々の営みから,自分と自分の地域を振り返ろうト」,『地理』第51巻10月号,古今書院,

 2006.10,pp188−93)。また,カリキュラムレベルでは,山口幸男氏らが「中高一貫カリキュラム」を  提案し,現代の諸課題を取り込んだ地誌の拡充が図られている(山口幸男ほか編『地理教育カリキュ  ラムの創造一小・中・高一貫カリキュラムー』古今書院,2008)。さらに,新しい取り組みとしては環  境教育を中心にさまざまな地理関係者による「持続可能な開発のための教育(ESD)」への積極的な関  与がみられる(中山修一・和田文雄・湯浅清治編『持続可能な社会と地理教育実践』古今書院,2011

 年)。

7)このことについては,草原和博が教科構造,カリキュラム,授業のレベルでそれぞれ述べている。

 教科構造のレベルについては,草原和博「地理教育改革のオルタナティブー教科構造の原理的考察を  踏まえて一」『社会系教科教育学研究』第20号,2008年,pp.21−30,カリキュラムレベルについては,

 草原和博r地理教育の公民教育化一地域を単位にした総合的な社会研究一」『社会科研究』,第66号,

 2007年,pp.11−20,授業レベルについては,草原和博「地理教育の社会化一わが国の地理教育変革論  の体系と課題一」『社会系教科教育学研究』,第18号,2006年,pp.1−1Oを参照。

8)児玉康弘『中等歴史教育内容開発研究一開かれた解釈学習一』風間書房,2005年,pp17−8を参照。

9)r教授言十画書」と同様のものとして森分孝治がいうr教授書」があるが,本研究では,教育内容開発  研究として先駆的な役割を果たし,成果を残した原田智仁の「教授計画書」の表現をとることとする。

 「教授計画書」については,原田智仁『世界史教育内容開発研究一理論批判学習一』風間書房,2000  年,pp.50−53の以下の引用を参照。

   r教授計画書とは,それにしたがって授業すれば,どんな教師でも質的に高いレベルの授業を実   残することができ,またそれにしたがって学習すれば,どんな生徒でも科学的な社会(歴史)認識

(15)

  を形成することのできる教育内容と教授=学習モデルをさしている。」(p.51)

   「…教授言十画書は授業を通してその妥当性を吟味・修正することを前提に作成されるものであり,

  試案的・発展的性格を備えているのが特質である。」(p.53)

 r教授書」については,森分孝治『社会科授業構成の理論と方法』明治図書,1978年,p.143,原田智  仁『教授書・授業書」,森分孝治・片上宗二編『社会科重要用語300の基礎知識』明治図書,2000年,p.

 I74を参照。

1O)中等教育段階の世界史の主な教育内容開発研究には,次のものなどがある。

 ・原田智仁『世界史教育内容開発研究一理論批判学習一』風間書房,2000年  ・児玉康弘『中等歴史教育内容開発研究一開かれた解釈学習一』風間書房,2005年  ・梅津正美『中等歴史教育内容改革研究一社会史教授の論理と展開一』風聞書房,2006年   初等段階の社会科の主な教育内容開発研究には,次のものがある。

 ・岡崎誠司『変動する社会の認識形成をめざす小学校社会科授業開発研究一仮説吟味学習による社会   科教育内容の改革一』風間書房,2009年

  教授計画書が示されている中等段階の日本史の主な教育内容開発研究には,次のものなどがある。

 ・井上明洋「現代史学習の授業改革一『開発独裁国家』の教授春一」『社会科研究』第53号.2000年,

  pp.23−32

  教授計画書が示されている中等段階の地理の主な教育内容開発研究には,次のものなどがある。

 ・森分孝治r社会科学的概念学習の授業構成(1V)一r東南アジア」の教授書試案一」,『広島大学教   育学部学部附属共同研究体制研究紀要』,第12号,1984年,pp.31−47

 ・草原和博・森分孝治・棚橋健治r社会科学教育としての地理授業一『都市と権力』の教授書開発一」

  『広島大学教育学部紀要』第二部,第45号,1996年,pp.53−64

 ・拙稿r地歴科地理・単元『ヨーロッパ』の教育内容開発一理論を中核にした地誌学習一」『社会科研   究』第53号、2000年,pp.11−22

 ・吉田剛「地理的見方・考え方を育成する社会科地理授業の改善」『社会科研究』第54号,2001年,pp.

  31−40

 ・吉水裕也r問題発見力を育成する中学校社会科地理授業の設計」『社会科研究』第57号,2002年、pp.

  61−70

 ・拙稿r地歴科地理・単元『ラテンアメリカ』の教育内容開発一理論を中核にした州・大陸規模の地   誌学習一」『社会系教科教育学研究』第14号,2002年,pp.33−42

 ・加藤有悟r流域を素材とする『地域の規模に応じた調査』の試み」『社会系教科教育学研究』第14号,

  2002年,PP.43−50

 ・小田大介「広域中心地論を習得する地理授業の開発」『中国四国教育学会教育学研究紀要』第49号,

  2003年,PP.567−572

 ・草原和博「地理教育のカリキュラム編成の理論と構想」,溝上奏編著『新しい時代に生きる教師のだ   めの基礎基本社会科教育実践学の構築』,明治図書,2004年,pp.146−155

 ・大庭玄一郎「『環境問題学習』としての地理教育内容開発」『中国四国教育学会教育学研究紀要』第   50巻,2004年,PP.386−391

 ・永田成文「高等学校『地理』における探究学習の新しい試み」『社会科研究』第60号,2004年,pp.

  41−50

 ・小谷恵津子「概念探究型社会科における納得をともなう概念の獲得と経験」『社会科研究』第62号,

  2005年,PP,11−20

 ・草原和博r社会科学科地理としての社会科授業」社会認識教育学会編『社会認識教育の構造改革』

  明治図書,2006年,pp170−80

 ・草原和博r地理教育の社会化一わが国の地理教育変革論の体系と課題一」,『社会系教科教育学研究』

  第18号,2006年,pp.1−1O

(16)

11)例えば,中学校学習指導要領の目標には,「地理的な見方や考え方の基礎を培い」とあり,「地理的」

 とあるように,地理の独自性.固有性が強調され,地理学の学問的な研究方法に沿って,その成果を  教えることが前提としてめざされている。r地理的な見方や考え方」の詳細については,文部科学省『学  習指導要領解説社会編』日本文教出版,2008年,p.20に整理され,述べられている。

12)森分孝治『現代社会科授業理論』明治図書,1984年,pp.1−3,pp.40−42を参照。

13)森分孝治編著『社会科教育学研究一方法論的アプローチ入門一』明治図書,1999年,全国社会科教  育学会『社会科教育学研究ハンドブック』明治図書,2001年を参照。

14)社会認識形成の視点から地理の授業の類型化、説明に示唆を与える,または実際に類型化,説明し  ているものとして,以下の三つがあげられる。

 ・森分孝治『現代社会科授業理論』明治図書,1984年  ・草原和博『地理教育内容編成論研究』風間書房,2004年

 ・草原和博r地理教育の社会化一わが国の地理教育変革論の体系と課題一」,『社会系教科教育学研究』

 第18号,2006年,pp.1−10

15)拙稿r『学習材』を活用した地理授業モデルの実践・検証一中等社会科教師による単元『インド』の  実践比較を通して一」『社会系教科教育学研究』第22号,2010年,p.31を参照。

16)草原和博「教科教育実践学の構築に向けて一社会科教育実践研究の方法論とその展開一」兵庫教育  大学大学院連合学校教育学研究科編『教育実践学の構築一モデル理論の分析と理念型の提示を通して  一』東京書籍,2006年,pp.55−58を参照。

17)原田智仁『世界史教育内容開発研究一理論批判学習一』風間書房,2000年,p,1。

(17)

第一部 社会認識形成のための中等地理教育改革

(18)

第一章 社会認識形成からみた中等地理教育の現状と課題

第一節 地理学教授を前提とした中等地理教育内容開発

一 地理学教授を前提とした中等地理教育

 我が国の中等地理教育の内容は,一般に,学習指導要領とそれに準拠した教科書に基づ いて教授されている。学習指導要領の内容は,基本的に地理学の成果や研究方法に基づい て編成されている。そのため,それに準拠した教科書,それに基づいた授業も地理学の成 果や研究方法を教授することを前提としている。いわば,地理学教授を前提とした中等地 理教育と言える。

 具体的には,地理学は系統地理学と地誌学の二つから構成され,さらに細かく,系統地 理学には自然地理学と人文地理学が,地誌学には静態地誌,動態地誌,比較地誌などの研 究方法があるとされる一j。これらに基づいて学習指導要領は内容編成が行われているし,

これまでも行われてきた2〕。例えば,平成20年版の中学校学習指導要領地理的分野の内容 は,「(1)世界の様々な地域」,「(2)日本の様々な地域」の二つの大項目で構成され,改訂 にあたっては,「世界に関する地理的認識の重視」,「動態地誌的な学習による国土認識の 充実」,「地理的技能の育成の一層の重視」などが図られている= 工。そして,「地理的な見 方や考え方の基礎を培い,我が国の国土及び世界の諸地域に関する地理的認識を養う」こ とを目標としている一〕。平成21年版の高等学校学習指導要領地理Aの内容は,「(1)現代世 界の特色と諸課題の地理的考察」,「(2)生活圏の諸課題の地理的考察」の二つの大項目で 構成され,地理Bの内容は,「(1)様々な地図と地理的技能」,「(2)現代世界の系統地理的 考察」,「(3)現代世界の地誌的考察」の三つで構成され,両科目ともその内容の取り扱い では,「学習過程で政治,経済,生物,地学的な事象なども必要に応じて扱うことができ るが,それらは空間的な傾向性や諸地域の特色を理解するのに必要な程度とすること」と 地理学としての独自性・固有性を保持するために,制限がかけられている引。そして,「現 代世界の地理的認識を養うとともに,地理的な見方や考え方を培」うことを目標としてい

(19)

る。このように,中学校地理的分野の内容では,日本と世界の様々な地域を,地誌的な方 法,特に動態的な地誌的な方法を重視して,「地理的な見方や考え方の基礎」や「地理的 技能」を習得させようとしていることがわかる。高等学校では,地理Aでは系統地理学,

地誌学を応用させた応用地理学的な方法がとらパ〕,地理Bでは,大項目の名称にもみら れるように,系統地理学,地誌学の枠組みに基づいて内容が編成されている。特に「(3)

現代世界の地誌的考察」では,考察方法として三つの方法が具体的に述べられている。そ れらは,静態地誌的方法,動態地誌的方法,比較地誌的方法と言える。以上のように,今 日の中等地理教育は,制度的に,地理学の学問的な成果や方法に基づいた内容編成となっ ており,地理学を教授することを前提とした地理教育と言える。

二 閉ざされた中等地理教育内容開発

 地理学教授を前提とした地理教育では,まず,授業者の関心は,いかに地理学の成果や 研究方法に忠実な地理の授業をつくるか,という正しい地理の授業づくりに注がれる。し かし,そのためには正しさの拠り所として,地理学の研究方法に従った地理学習の間違い のない,明確な定義とその違いが必要になる。系統地理的な学習とはどのようなもので,

地誌的な学習とはどのようなものか,さらには静態地誌的な学習は動態地誌的な学習とど こがどう違うのか,といったそれぞれの地理学習の正しい定義や相違点が求められる。そ こで,地理学の学問的な枠組みに沿った,正しい地理授業をつくるための地理学習の類型 化や説明が,授業を前にした授業者の頭の中で,あるいは各種研究会や行政機関,または 研究者等によってなされることになる7〕。

 しかし,これは,次のような限界を孕んでいる。そもそも系統地理学と地誌学の違いそ のものは,ベリーの地理行列が示すように相対的なものである呂〕。相対的である上に,様 々な地誌学の方法による細分化が行われたり,地理学の動向に左右されたりする。そのた め,それらに基づいた地理学習の類型化や説明は,境界線の曖昧な分かりにくいものにな る。事実,それは用語の使用や定義に混乱を生じさせ,さらにその再定義を必要とするこ とにもなっている9〕。このような類型化や説明では,今ある授業の事実を類型化し,説明 し,他者と共有するためには客観性を欠いたものと言わざるを得ないのではないか。さら にそれは,地理学の枠組みに忠実になろうとすればするほど,地理の固有性,独自性が曖 昧なもの,認められないものを排除し,結果的に説明できる地理の授業を限定してしまう

(20)

のではないか一.1〕。

 以上のように,地理学教授を前提とした地理教育の教育内容開発は,地理学的であるか どうか,という前提の「違い」と,どういう地理学の研究方法に属しているか,という研 究方法への属性の「違い」によって,つくる授業,つくられた授業を正当化しようとする。

しかしそれは,先に述べたように相対的かっ曖昧な「遠い」によるため,恣意的で主観的,

かつ排他的なものとなる危険性を孕む。「違い」による類型化や説明は,地理学が持っと する教育的意味や意義をアプリオリに認め,地理学によって個々の授業そのものの教育的 意味や意義を説明し,正当化することはできても,現実に提示された多様な地理の授業の 事実を前に,排除することなくそれぞれの授業が持つ教育的な意味や意義,あるいは問題 について,客観的に,統一的に他との序列や段階を示して説明することはできないのであ る。限定された説明と正当化の中にある地理学教授を前提とした教育内容開発は,いわば,

閉ざされた教育内容開発と言えるのである。

第二節 閉ざされた中等地理授業

一 社会認識形成を視点とした地理授業の類型化

 実際に開発される地理授業は多様である。地理を学ぶ意味や意義が求められる今こそ,

現実に提示される地理の授業の事実に基づいて,それぞれの授業が持っ教育的な意味や意 義,あるいは問題を明らかにする授業のメタ理論が必要であろう一■〕。これまで,社会科教 育学は,カリキュラムや授業を直接の研究対象とし,社会認識形成の視点からそれらの事 実を分析し,その成果を蓄積させてきた。まずはそれらから示唆を得る必要があろう。そ のような社会科教育学の成果の中で,社会認識形成の視点から,特に地理の授業の類型化,

説明に示唆を与えるもの,あるいは実際に類型化,説明しているものとして,以下の三つ があげられる。

a 森分孝治『現代社会科授業理論』明治図書,1984年 b 草原和博『地理教育内容編成論研究』風間書房,2004年

C 草原和博「地理教育の社会化一わが国の地理教育変革論の体系と課題一」,『社会

(21)

  系教科教育学研究』第18号,2006年,pp.1−10

 森分は,「授業構成および授業の事実にもとづいて社会科の類型化を行うとき,その指 標となるのは授業において提示される知識の質ないしレベルと,知識の提示の仕方,習得 のさせ方である。」一1〕と述べている。知識の質については,社会科の授業を事実的知識に 関する知識の成長過程と捉え一={〕,「社会認識の構造」(図1)に基づいて「社会的事象に関 する科学的知識の構造」(図2)を示し,知識の質を階層的に提示している川。地理の授 業に関しては,「地理的事象に関する科学的知識の構造」として事例をあげて述べているI呂〕。

ここでは,図2中の右側の部分にそれらを示した。

 一方,「知識の提示の仕方,習得のさせ方」については二つに大別されるとして,それ らを次のように述べている㈹。

「@ 同一の社会的事象・出来事について複数個存在している『まちがいの少ない』『正しい』知   識の中の一つを教師が選択して,それを子どもに間違いのない,正しい知識として習得させ   ていくものと,

 ⑤ 複数個存在していることを前提とし,子ども自身に,まちがいのより少ない,正しい知識   を求めさせ習得させていくもの,

とである。前者が授業外,教室外の何らかのカによって,『まちがっていない』あるいは『正しい』

として権威づけられた知識を確実に習得させていこうとして,子どもの認識を方向付け,閉ざし ていくのに対し,後者はまちがっていないかどうか,正しいかどうかを子どもに主体的に吟味さ せ,選び取らせていくことによって,子どもの認識を開いたものにしておこうとする。」

 そして,認識を閉ざすか開くかの基準は,「習得する知識を子どもが批判し吟味するこ とを,また,あるいは,子どもが主体的に別の選択肢をとることを,授業が保障するもの になっているか否かにある。」一7)と述べている。

 以上のように,森分は,社会認識形成の視点から,地理も含めた社会科の授業を分析す るための枠組み(メタ理論)を示している。

(22)

一般的規 的半1 (知識〕

一般的言一価的判 (知識)

般的説明的判断{知 概念的知識.法具1」・理言]

個別的記述的判断(知識)

  (事実的知識)

個別的説明的半1」断(知識)

個別的版的判断(知識〕

個別的評価勺判断(知識)

箏実認識__一≒■←一_一価値認識一一一_〉1        図1 社会認識の構造

(森分孝治『現代社会科授業理論』明治図書,1984年,p,78,森分孝治r市民的資質育成における社会 科教育一合理的意思決定一」『社会系教科教育学研究』第13号,2001年,p.45による。)

一般的 説明的 知識

個別的 説明的 知識

個別的 記述的 知識

    普遍的理論     .  =     (規貝1」性にもとづく一般イビ) 1

分析的      。  =  理論 類型的理論        =     (類似性にもと く一般化) ≡

      I         I

総合的理論        .    1     (傾向性に基 く」般化) =

I一 一一一i繭雁1三一一ど祈腐手討一一一一一

P

       1    1

事実的        1   1

 知識(繧括 ;一I屈花をろ六.葛万「テ1

政治

 1      政治・経済・社会

  、      の諸法具■」,人間行   1      動に関する法則等    .      中心地構造モデル

  ■.    一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一…

  1     広域中心地論    、     広域中心都市とし    、     ての広島

O一一………一一二足あ11噴序モ葡莚      .    した純粋な地誌

    1,

一…… 一一一A一一.一一一.一一 ■;一見一I汗混在ゼー

経済    社会   教育       宗教

地理

      図2 社会的事象に関する科学的知識の構造

(森分孝治『現代社会科授業理論』明治図書,1984年,pp.110−121,森分孝治「開かれた科学的認識 形成の授業構成(二)一子どもと社会科学一」『教育科学社会科教育』No.238.1983年1月号,明治 図書,1984年,pp.106−108より筆者作成。)

(23)

 草原和博は,bにおいて,そもそもどうして教育課程に地理が存在するのか,それはど ういう理由で正当化されるのか,という地理教育の成立にかかわる原理的問題を解明する ため,地理教育の内容編成を,地理教育の目的(目標論)と手段(形成論)の二つの視点 から類型化している。具体的には,「地理教育発展史にもとづく地理教育論の類型」とし て,「常識的地域認識形成のための地理教育」,「科学的地域認識形成のための地理教育」,

「常識的社会認識形成のための地理教育」,「科学的社会認識形成のための地理教育」の 四つの地理教育論を提示している1出〕。目標論からみると,前二つが地理目的型,あと二つ が地理手段型となる。そして最も教育的意味,意義の高い地理教育を「科学的社会認識形 成のための地理教育」としている。そしてさらに,「科学的社会認識形成のための地理教 育」を,その「認識の視点」と「認識の結果」を軸として,四つの内容編成に類型化して いる■帥。「認識の視点」は,ある特定の社会科学の視点を重視するものと,複数の社会諸 科学の視点を重視するものに,「認識の結果」は,広く世界各地の事象を説明し適用しう る分析的な理論と,ある限られた地域の総合的な理論に大別し,「比較社会科学研究」,「地 域社会科学研究」,「分析的社会科学研究」,「総合的社会科学研究」に類型化している(表 1)。そして前二つを「個別社会科学研究」,後二つを「総合社会科学研究」とし,前者 は,「特定の学問分野に過度に依存し,学習過程は分析的理論か総合的理論の習得いずれ かに偏りやすく,結果的に子どもの認識の広がりと深まりをさまたげるおそれがあった。」

州として,「科学的社会認識形成のための地理教育」の中で,後者の『総合社会科学研究」

が,諸学問の成果に依拠し,分析,総合の過程を組み合わせることで分析的理論と総合的 理論の両方を相補的に習得させる最も教育的意味,意義のあるものと支持している。

表1 科学的社会認識形成のための地理教育の内容編成類型化 認識の結果

社会の分析的理論

認識の視点 社会の総合的理論

個別の社会科学

i個別社会科学研究) 比較社会科学研究 地域社会科学研究 複数の社会諸科学

i総合社会科学研究) 分析的社会科学研究 総合的社会科学研究

(草原和博『地理教育内容編成論研究』風間書房,2004年,p1306による。)

このように,草原は,それぞれの地理教育論の意義と課題を,提案されている実際の力

(24)

リキュラム編成,授業構成の分析,類型化を通して,完成度の低い最も通俗的な理論から,

原理的に最も完成された理論まで序列化し,課題と段階,そして到達点を,さらには地理 教育論が原理的に変革・成長してゆく筋道を示している。

 Cでは,草原は,地理教育の有用性を説く近年の地理教育変革の動きを地理教育の「社 会化」として,「認識対象」と「対象を捉える視点」の二つの視点から地理教育変革論に ついて類型化している。具体的には,「地理教育の『社会化』論の類型化」として,「地 理科」,r地理科社会」,r社会地理科」,r社会科地理」の四つの地理教育変革論に類型化

している1■〕。「認識対象」と「対象を捉える視点」において地理学に留まるか,それとも 地理学を超えて社会諸科学へと多学問的に「社会化」を推し進めるかによって,すなわち,

「認識対象」と「対象を捉える視点」において地理をどれだけ手段化できているかによっ て,四つの類型の変革の程度,すなわち地理教育の教育的な意義の大きさを,授業の事実 を踏まえて示している。

 以上をまとめると,森分が述べる授業分析の理論(メタ理論)は,次の二つの視点から であった。一つは授業内容の知識の質であり,もう一つは学習過程の開放性である。具体 的には,前者については「社会的事象の科学的知識の構造」であり,後者については批判

・吟味の過程を通して探求させることであった。そして草原は,実際に提示されている地 理教育の内容編成や改革論の事実を分析,類型化することによって,地理の手段化による 社会諸科学の成果を探求させるr科学的社会認識形成のための地理教育」が最も教育的意 味,意義のあるものであり,具体的には,地域を手段化し,社会諸科学の成果を習得する

r総合社会科学研究」が最も教育的意味,意義のある地理教育であるとした。

 これらを踏まえると,縦軸に科学的知識の類型を,横軸に学習過程の探求の有無を取り,

さらに学習の認識対象と対象を捉える視点が地理学か,社会科学科が,さらにその社会科 学も単数か,複数がといった地理の手段化の度合で地誌授業を分けることができよう。そ れらをもとに類型化すると,社会認識形成を視点とした中等地理授業の類型は,表2のよ

うになる。

 尚,「地理学普遍的理論注入型」,「地理学普遍的理論探求型」は,論理的には存在しう るが,先の森分が述べた「地理的事象に関する科学的知識の構造」にもみられるように,

地理学における分析的理論は,現実的には他の社会諸科学の成果を活用した類型的理論と なるため,類型からは肖一」除してある。事実的知識に関する探求型も論理的には存在しうる が,現実的には存在しないため,同様に削除した。

(25)

表2社会認識形成を視点とした中等地理授業の類型

幽習過程 注 入 探 求

段 ヒ

地理学 社会科学 地理学 社会科学

科学的知識 単数 複数 単数 複数

社会科学 社会諸科学 社会科学 (社会諸科学

普遍的 普遍的理論 普遍的理論 普遍的理論 普遍的理論

理論 注入型 注入型 探求型 探求型)

分析的

I  一         ■   I  .   一  一     ■  一 I  I  I  I  一   一       .  .   一   I I  I   l   一      一  .   一  一   一  I   I

理論

類型的 地理学 社会科学 社会諸科学 地理学 社会科学 (社会諸科学 理論 類型的理論 類型的理論 類型的理論 類型的理論 類型的理論 類型的理論

注入型 注入型 注入型 探求型 探求型 探求型)

地理学 杜会科学 社会諸科学 地理学 杜会科学 杜会諸科学 総合的理論 総合的理論 総合的理論 総合的理論 総合的理論 総合的理諭 総合的理論

注入型 注入型 注入型 探求型 探求型 探求型

地理学 杜会科学 祉会諸科学 事実的知識 事実的知識 事実的知識 事実的知識

注入型 注入型 注入型

(筆者作成)

 このように,杜会認識形成の視点から中等地理授業の類型化をすると,表の左下に位置 付く「地理学事実的知識注入型」からはじまり,より上方に,そしてより右側に位置付く

にしたがって,より開かれた科学的な社会認識形成を図る教育的意味,意義のある地理授 業といえる。そうすると,最も教育的意味,意義のある地理授業は,論理的に一旦は,「杜 会諸科学普遍的理論探求型」ということとなる。しかし,杜会諸科学の理論を探求すると

きは,まず,それぞれを単数の「杜会科学普遍的理論探求型」として行うこととなろう。

また,その下の「杜会諸科学類型的理論探求型」においても同様のことが言えよう。加え て,複数の杜会諸科学の成果を必要とするのは,実際には事実や問題を前に,総合的理論 を探求する時においてである。そのような探求でなければ,草原が先のbで述べているよ

うに,分析的理論と総合的理論の相補性が失われ,過度に特定の学間の視点・方法に偏り,

杜会の本質的説明からは遠ざかる杜会認識形成が図られることとなろう。ゆえに,求めら れる授業としては,「杜会諸科学総合的理論探求型」を直接的な授業とし,間接的に「杜 会諸科学普遍的理論探求型」,「杜会諸科学類型的理論探求型」を達成する授業となろう。

いわぱ,草原が述べる「総合杜会科学研究」としての地理授業となろう。

 以上のように,杜会科教育学の成果に基づきながら,授業の事実を踏まえて分析し,説 明,類型化することによって,今日の中等段階の地理授業の本質的な課題が明らかになっ

(26)

ていこう。

二 社会認識形成を視点とした中等地理授業の分析

 ここでは,先に述べた中等段階の地理学教授を前提としている地理授業を具体的に取り 上げ,「社会認識形成を視点とした地理授業の類型」を分析の枠組みとしてそれぞれの授 業を分析することとする。

 取り上げる授業は,以下の①〜⑥の授業である。」部,構想段階レベルのものもあるが,

それは筆者が授業展開を再構成して提示し,分析することとする。

①山本憲令実践:単元rわたしたちの県(熊本)を調べよう」11〕

②教科書出版社教授資料:単元r集落の形態と都市」州

③広島県教育委員会指導資料:単元「工業の立地と工業地域の形成」州

④高等学校学習指導要領解説例示:単元「西アジアジ引

⑤高等学校学習指導要領解説例示:単元「中華人民共和国」州

⑥高等学校学習指導要領解説例示:単元「カナダとオーストラリア」州

 ①〜⑥を取り上げる理由は二つある。一つは,地理学教授を前提としている授業であり,

現在行われている,あるいは今後行われるであろう授業であるということ。もう一つは,

優れた地理授業として書籍や行政的な資料等で公表され,一定の評価を受けている地理の 授業であるということからである。①〜⑥の授業を,従来の地理学の研究方法論に位置付 けると,表3のようになる。現実的には,中学校で系統地理学習と言えるものも存在して いるであろうが,学習指導要領上は内容とされていないため削除してある。

表3 地理学を視点とした中等地理授業の類型

系統地理学習 地誌学習

中学校 ①地域の規模に応じた調査の地誌学習

(都道府県規模:熊本)

④静態地誌学習(西アジア)

高等学校 ②都市・村落の系統地理学習 ⑤動態地誌学習(中華人民共和国)

③工業立地論の系統地理学習 ⑥比較地誌学習(カナダ,オーストラ

リア)

(①〜⑥が、取り上げた授業の番号を示している。) (筆者作成)

(27)

 1 山本憲令実践:単元「わたしたちの県(熊本)を調べよう」とその特質

 単元「わたしたちの県(熊本)を調べよう」の単元の目標,単元の指導計画,単元の展開 計画は次のようになっている州。

 (1)単元の目標

  ア 社会的事象への関心・意欲・態度

   ○「なぜ」問題を自ら発見し,その答えを白ら追究する。

  イ 社会的な思考・判断

   ○因果の法則的仮説を設定できる。

  ウ 資料活用の技術・表現

   ○工業がさかんである,さかんでないなどの相対的抽象的な変数を観察・測定でき     る変数に変換し取り出すことができる。

   ○比較をするために,条件を同じにする加工処理ができる。

  工 社会的事象についての知識・理解    ○「熊本県の特色」を理解する。

     (略…「単元の展開計画」の◎部分に該当)

 (2)単元の指導計画(4時間計画)

  第1小単元 熊本県の人々の所得が少ないのはなぜだろうか。(1時間)

  第2小単元 なぜ,熊本県は工業がさかんでないのだろうか。(1時間)

  第3小単元 熊本県の農家の人々は,収入を増やすにはどうすれぱよいだろうか。(2        時間)

 (3)単元の展開計画

時      学習課題       認識内容 1 1 熊本県の人々の所得が少ない

  のはなぜだろうか。

◎工業がさかんでないならば,所得が少ない。卸売業がさか  んでないならば,所得が少ない。日本においては,農業が  さかんであるならば,所得が少ない。熊本県は,工業がさ  かんでなく,卸売業もさかんでない。しかし,農業がさか  んである。このため,熊本県の人々の所得が少ない。

①熊本県の人々は日本の中で所得  が多い方だろうか,少ない方だ  ろうか。

②日本ではどんな産業のさかんな  都道府県で,所得が多いのだろ  うか。

③日本では,工業がさかんである  と所得が多いのに,なぜ農業が

○熊本県の一人当たりの県民所得は.日本の中で47都道府県  中36位で,日本の中で所得の低い方である。

○日本では,工業のさかんな都道府県(県民一人当たりの工業  生産額),卸売業(県民一人当たりの卸売り販売額)のさか  んな都道府県で県民一人当たりの所得が多い。

○日本では,工業においては,能率のよい機械の導入により,

 工業従事者一人当たりの生産額が増加したので,所得が増

参照

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