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博 士 ( 環 境 科 学 ) 岡 部 雅 史

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Academic year: 2021

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博 士 ( 環 境 科 学 ) 岡 部 雅 史

学 位 論 文 題 名

 Histochemical Localization of NADPH Diaphorase Activity in the Rat Brain by in Situ Blotting Method

(in Situ Blotting Method ( 組 織 蛋白 転 写法 ) によ る NADPH ジアファラーゼ活性のラット脳内における組織化学的分布)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  本論 文において申請者はNADPH diaphoraseの酵素活性がラッ ト脳の海馬の錐体細胞と小 脳 の プ ル キ ン 工 細 胞 に 存 在 す る こ と を 組織 蛋白 転写 法に よ り初 めて 明ら かに し た。

  本論文の構成は以下の通りである。

  序論では,本酵素の性質,過去の研究の経緯,組織化学的な本酵素活性の検出法とそれに伴う 方法論的な問題点にっいて述べた。

  研究方法では,申請者らによって考案された組織蛋自転写法の原理と利点にっいて説明した。

  結果では,ラット脳内の本酵素活性の分布状態を検索し,今まで報告されていなかった海馬の 錐体細 胞,及び小脳のプルキンエ 細胞にもNADPH diaphorase活 性が存在することを明らか にした。

  考察 では,海馬の錐体細胞と小 脳のプルキン工細胞にNADPH diaphorase活性が存在する ことの意義をのべた。

  NADPH diaphoraseはNADPH依 存 性 脱 水 素 酵 素 , 又 はNADPH依 存 性 色 素 酸 化 還 元 酵 素として知られており,最初のフラビン酵素として報告された。本酵素は電子伝達作用を有し,

生体内 においてNADPHを酸化し,シ トクロム。,酸素を還元することより物質の酸化還元に 基 本 的 か つ 重 要 な 役 割 を 果 た す こ と が 生 化 学 的 な 研 究 よ り 推 測 さ れ て い る 。   一方 ,組織化学の分野では,MADPH diaphorase活性は,ニト ロブルーテトラゾリウムな どの色 素にNADPHからの電子を伝達 し発色させる作用として定義されている。この発色反応 が組織切片中での本酵素活性の検出に利用されており,多くの研究者によって本酵素活性の生体 内分布の検索がおこなわれた。現在までの研究に共通して報告されている知見は,1.本酵素活

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性は神経系において他の臓器よりも特によく検出されること。2.脳内においては本酵素活性の 検出が極めて限局された部位かっ特徴的な分布パターンとして示されること。3.中枢神経系に おける海 馬の錐体細胞や小脳のプルキン工細胞にはNADPH diaphorase活性が検出されナょい こと。以上の3点であった。

  本酵素活性の脳内分布に関する研究はその多くが化学固定された脳組織を用いて行われてき た。しかし近年,この酵素活性の組織化学的検出状態が組織固定の条件により大きく変化するこ とが報告されており,本酵素活性は化学固定によって活性の低下を被ることが推測されている。

  通常の組織化学的研究方法では組織,及び細胞の形態を保ち細胞内蛋白の外液への漏洩を防ぐ ために試料組織にピクリン酸等の極めて強い酸化作用をもつ酸,もしくはグルタルアルデヒドな どの強カな蛋白質架橋作用のある化学物質を作用させてその組織中の蛋白質を変性,凝固させ不 溶化させた後,組織内の酵素活性の検出を行うのが常法である。しかし試料切片に対するこのよ うな化学処理は組織内酵素の活性の低下もしくは失活を招く可能性が高いことが多く研究者によ り指摘されてきた。さらに,未固定組織切片を試料として用い,組織中の酵素活性の検出を行う 場合においても,標的酵素の切片断面から酵素反応溶液中への漏洩,もしくは酵素基質,または 活性検出分子の細胞内への浸透性の困難さなどの重大な方法論的問題点が存在することも指摘さ れている。

  上記の 手法がもっこれらの問題点 より,従来の組織化学的方法 で検出されたNADPH di・ aphorase活性が真の生体内分布を反映しているのかどうかは不明であった。以上の理由より本 研究にお いて,組織蛋白転写法を用 いてNADPH diaphorase活性の 検出をニト口セル口一ス 転写膜上 で行い,特に,海馬の錐体 細胞と小脳のプルキン工細胞 にNADPH diaphorase活性 が存在するかどうかを検討することを目的とした。

  本研究で用いられた組織蛋白転写法(in Situ Blotting Method)は最近申請者らによって考 案された方法であり,組織切片中の蛋白を直接ニト口セルロ―ス膜,ポリビニリデンジフルオリ ド膜又は陽帯電性ナイロン膜等の多孔質蛋白結合シ―トに転写し,吸着させた後,酵素活性の検 出を行う方法である。この方法の利点は以下の3っが考えられた。1.組織中の蛋白がその分布 局在を保ったまま吸着膜に転写されること。2.蛋白の変性なしに酵素活性が検出できること。

3.酵素蛋白分子は直接転写シートに吸着させるため,酵素活性測定条件が任意に設定できるこ と。これ らの利点より化学固定によ り活性の低下をまねきやすいNADPH diaphorase活性の 検出はもっとも適した方法であると考えられた。

  上記の組織蛋自転写法を用いて,ニト口セル口―ス膜上で転写された本酵素活性の検索を行つ

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た 結 果 , 本 研 究 に よ っ て初 め て海 馬の ア ンモ ン角 の 錐体 細胞 層 のCA|か らCAヨ に及 ぷ 部位 , お よ び 小 脳 の プ ル キ ン 工 細 胞 , さ ら に 両 細 胞 群 に 付 属 す る 樹 状 突 起に もNADPH diaphorase 活 性 が 検 出 さ れ た 。 他 方 , 本 研 究 に よ っ て 従 来 か らNADPH diaphorase活 性が 検出 さ れて い た 部 位, 例え ば きゅ う脳 ,大脳 皮質,視床下部, 線状体,上丘表層 灰白質及び小脳の分 子層にも in Situ Blotting法に よってNADPH diaphorase活性が検出 された。

  海 馬の 錐体 細 胞と 小脳 のプル キン工細胞は脳内 で極めて重要な役 割,例えば錐体細胞 は記憶,

学 習などの高次機能, プルキンエ細胞は 運動における身体の運動制御′よどの学習,記憶に関与し,

両 細 胞種 は活 発 に神 経電 位を発 火していることが 知られている。さ らに,中枢神経系に おいて海 馬 の 錐体 細胞 と 小脳 のプ ル キン 工細 胞 は虚 血な ど によ る酸 素 欠乏 に極 めて弱い細胞種 であるこ と , 及び ,グ ル コー スの 消費両 が大きいことが報 告されており,重 要な神経機能を有し ,活発な 神 経 電位 の発 火 を行 って いる両 細胞種の酸素消費 量が大きいことが 推測されている。し かし,い ま ま で 両 細 胞 種 に 酸 化 還 元 酵 素 の ひ と っ で あ るNADPFI diaphorase活性 が 見い ださ れ てお ら ず , こ れ が 疑 問 点 と し て残 さ れて いた 。 しか しな が ら, 本研 究 にお いて , 前述 の両 細 胞群 に NADPH diaphorase活 性 が 検 出 さ れ た 事 実 よ り , こ れ ら の 細 胞 に お いて 本 酵素 活性 に よる 物 質 の酸化還元反応が行 われている可能性 が示唆された。

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    小 島    豐 副 査    教 授    齋 藤 和 雄 副査    教授    保原喜志夫 副 査    教 授    道 幸 哲 也 副 査    教 授    黒 柳 俊 雄

  本 論 文 に お い て 申 請 者 はNADPH diaphorase活 性 を ラ ッ ト 脳 の 海馬 の錐 体 細胞 と小 脳 のプ ル キ ン 工 細 胞 内 で 組 織 蛋 白 転 写 法 に よ り 初 め て 検 出 し た 。NADPH diaphoraseは 最初 の フラ ビ ン酵 素と し て報 告さ れ た。 本酵 素 は電 子伝 達 作用 を有 し ,生 体内 に おい てNADPHを 酸化し,

シ トク 口ムc,酵 素 を還 元す る こと より 物 質の酸化還元に基 本的かつ重要な役 割を果たすことが 生 化学 的な 研 究よ り推 測 され てい た 。

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    こ のNADPH diaphoraseは 二卜 口ブ ル― テ卜ラゾリウムなどの 色素をNADPII存在下で 発色させる作用を有している。この発色反応が組織切片中での本酵素活性の検出に利用されてお り,ラット脳内での詳細な活性分布状態が検索され報告されていた。しかし現在までの報告では 海馬の 錐体細胞と小脳のプルキン 工細胞にはNADPH diaphorase活性が検出されないことが 共通した知見として報告されている。

  海馬の錐体細胞と小脳のプルキン工細胞は脳内で極めて重要な役割,例えば錐体細胞は記憶,

学習などの高次機能,プルキンエ細胞は運動における身体の運動制御などの学習,記憶に関与し ていることが知られている。一方,中枢神経系において海馬の錐体細胞と小脳のプルキン工細胞 はグルコース欠乏及び酸素欠乏に極めて弱い細胞種であることが多数報告されており,これらの 重要な神経機能を有する両細胞種の酸素消費量が大きいことが推測されているにもかかわらず,

前述の ようにいままで両細胞種にNADPH diaphorase活性が検出 されておらず,これが疑問 点として残されていた。

  組織化学的研究方法では組織,及び細胞の形態を保っために試料組織にピクリン酸等の極めて 強い酸化作用をもつ酸,もしくはグルタルアルデヒドなどの強カな蛋白質架橋作用のある化学物 質を作用させてその組織中の蛋白質を変性,凝固させ不溶化させた後,酵素活性の検出を行うの が常法である。しかし試料切片に対するこのような化学処理は組織内酵素の活性の低下もしくは 失活を招く可能性が高いことが多くの研究者により指摘されてきた。これらの問題点より,従来 の組織 化学的方法で検出されたNADPH diaphorase活性が真の生 体内分布を反映しているの かどうかは不明であった。

  以上 の理由より本研究において ,組織蛋白転写法を用いてNADPH diaphorase活性の検出 をニトロセル口―ス転写膜上で行い活性存在部位を再検索し,海馬の錐体細胞,及び小脳のプル キン工細胞のNADPH diaphorase活性を調べることを目的とした。

  組織蛋白転写法(in Situ Blotting Method)は最近申請者らによって考案された方法であり,

組織切片中の蛋白を直接ニト口セル口ース膜に転写し,吸着させた後,酵素活性の検出を行う方 法である。この方法の利点は以下の3っが考えられた。1.組織中の蛋白がその分布局在を保つ たまま吸着膜に転写されること。2.蛋白の変性なしに酵素活性が検出できること。3.酵素活 性測定 条件が任意に設定できるこ と。これらの利点よりNADPH diaphorase活性の検出には もっとも適した方法であると考えられた。

  ラット脳の前額断切片,水平断切片及び矢状断切片をそれぞれ作成し,二トロセル口ース膜上 に組織切片中の蛋白をブロッティングした。ニト口セル口―ス膜上に転写された本酵素活性の検

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索を行った結果,本研究によって海馬のアンモン角の錐体細胞層のCA,からCAヨに及ぷ部位,

および小脳 のプルキン工細胞,さらに 両細胞群に付属する樹状突起にNADPFI diaphorase活 性が検出された。これらの細胞は脳内の他の部位より樹状突起を経て伝達された情報を加工し他 の神経細胞へ伝達する重要な役割を有することが知られている。一方,従来から本酵素活性が検 出されていた部位,例えば嗅脳,大脳皮質,視床下部,線状体,上丘表層灰白質及び小脳の分子 層 に も in Situ Blotting法 に よ っ てNADPH diaphorase活 性 が 検 出 さ れ た 。   本研究に おいて錐体細胞とプルキン 工細胞にNADPH diaphorase活性が検出された事はこ れらの細胞において本酵素活性が関与した物質の酸化還元反応が行われていることを示唆するも のであり, また,両細胞群にはNADPH diaphorase活性は検出されなかったという従来の組 織化学的知見に変更を加えるものである。

  本論文は ,NADPH diaphorase活性が 海馬の錐体細胞と小脳のプルキン工細胞に検出され ることを初めて明らかにしたものであり,脳内における本酵素の役割を解明する上で,多大な貢 献をなすものと考えられる。

  審査員一同は,これらの成果を高く評価し,また研究者として誠実かっ熱心であり,大学院課 程における研鑽や取得単位なども併せ申請者が博士(環境科学)の学位を受けるのに充分な資格 を有するものと判定した。

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