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卒後教育

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Academic year: 2021

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杏林医会誌 52巻1号 39 〜 44 2021年3月. 特 集. はじめに. この稿のテーマは卒後研修で,具体的には初期臨床研修 および後期専門研修に相当し,両者ともに本学特有の研修 というよりも,公的な各制度に基づいた研修という要素が 強い領域なので,各制度そのものと関連事項を中心に述べ る。. Ⅰ.医師の初期臨床研修について 1-3). 2004年(平成16年)から現在の「新医師臨床研修制度」 が開始された。元々,医師卒後研修はいわゆるインターン 制度と呼ばれた「実地修練制度」が1948(昭和23)年に 医師法により創設されている1)。しかしこの制度は卒後, 国家試験受験資格を得るための義務としての「卒業後1年 以上の診療及び公衆に関する実地修練」で,医師免許を持 たず,無給での研修であった。確定したカリキュラムもな く,労働力として利用されるばかりで,医療過誤事件が契 機となり,医学部の学生らにより,インターン制度の撤廃. 卒後教育. を運動する医師国家試験ボイコット事件が起こった。この インターン制度の撤廃運動は,機動隊が介入する大事件と なり,当時の新聞やTVで大きく報道される社会問題と なった。その結果,1968(昭和43)年にこの制度は廃止 され,医学部を卒業後,医師免許を取得した後に2年以上 の臨床研修を行う制度となった。しかしながら現在のよう な必修ではなく,努力義務という扱いであった。またスー パーローテーション方式の研修病院も中には存在はしてい たが,当時は大学医学部の医局に入局する形で単一診療科 によるストレート方式の研修が主流であった。研修内容も 専門診療科に関連して偏りが強く,医学部付属病院以外の 地域医療との接点も希薄であった。また処遇は不十分で夜 勤等のアルバイトをして生活を維持するのが当たり前の時 代で,各研修プログラムは明確でない点が多く,研修成果 の評価も不十分な研修制度に対して,見直しをすべきとい う意見が高まっていった。その結果,臨床研修制度を必修 化して幅広い視野で疾患のみならず人を診る全人的な医療 を研修できる制度にすべきであるという視野から,2000(平. 冨 田 泰 彦 杏林大学医学部医学教育学教室. 要 旨. 2002年医師法第16条の2第1項に規定する厚生労働省発令で,2004年必修の医師新臨床研修制度が 開始された。医師としての人格育成,プライマリー・ケアの基本的な診療能力の修得,アルバイトせ ずに研修に専念できる環境を整備することが基本方針となっている。その後2010年と2020年に見直 しされた。この制度に伴い,医師臨床研修マッチング協議会が設立され,全国で公平な応募と選考が なされるマッチング制度が出来た。この制度で母校以外の研修施設を選択することが体制的かつ心理 的に容易になり,大学病院以外の臨床研修病院での研修希望者が増加しつつ都市部に集中する傾向が あり,2010年から都道府県ごとの定員の調整がなされた。この初期臨床研修の効果として,研修医 の幅広い臨床能力修得という目的は達成され,研修医の満足度は高い。また2007年よりNPO法人卒 後臨床研修評価機構(JCEP)よる各施設の初期臨床研修自体の第3者評価制度が開始された。後期 専門研修では,各診療科領域での質の担保という観点から2018年より日本専門医機構による新専門 医制度が19基本領域とサブスペシャリティー領域23領域で開始された。これに伴い付加的な地域偏 在や診療科間の医師偏在に対して,領域別に採用数の上限設定をするシーリング制度が設けられた。 まだ4年目の制度であり,様々な意見や提言が存在し,今後の動向を注視すべき段階にある。. キーワード:初期臨床研修,後期専門研修,卒後医学教育,マッチング,シーリング. � 杏林医会誌 52巻1号40 冨 田 泰 彦. 成12)年に参議院で付帯決議が採決され,医師法および 医療法の改定に至った。その結果,2002(平成14)年に 医師法第16条の2第1項に規定する厚生労働省発令とな り,2004(平成16)年必修化の新医師臨床研修制度が開 始された。医師としての人格育成,プライマリー・ケアの 基本的な診療能力の修得,アルバイトせずに研修に専念で きる環境を整備することを基本的な考え方としている。必 修科として内科,外科および救急部門(麻酔科を含む), 小児科,産婦人科,精神科および地域保健・医療を少なく とも1ヵ月以上研修することになった。. Ⅱ.医師臨床研修マッチング制度について. 上述の新医師臨床研修制度に伴い,医師臨床研修マッチ ング協議会4)が設立され,全国で公平な応募と選考がなさ れる仕組みができた。この協議会のホームページによると, 運営委員会での決定に基づき,スケジュール管理,研修プ ログラムに関する情報提供,データ集計,情報管理,参加 者のサポート等を行っている。マッチングは毎年約1万名 前後の研修希望者と研修プログラム(研修病院)とを効率 的かつ透明性を確保して,組み合わせるためのシステムで ある。 研修医マッチング(組み合わせ決定)とは,医師免許を 得て臨床研修を受けようとする者(研修希望者)と,臨床 研修を行う病院(研修病院)の研修プログラムとを研修希 望者及び研修病院の希望を踏まえて,一定の規則(アルゴ リズム)に従って,コンピュータにより組み合わせを決定 するシステムある。このマッチング制度により,母校以外. の研修施設を選択することが制度的にも心理的にも容易に なった。 2001(平成13)年当時,従来の臨床研修制度ではその 7割が大学病院で,3割が臨床研修病院で研修を実施して いた。このマッチング制度により,図1の如く2009(平 成21)年以降は大学病院よりも市中の臨床研修病院の人 気が高まっている。 医師臨床研修マッチング協議会4)は2020(令和2)年 10月22日,同年度の医師臨床研修マッチングの結果を公 表した。マッチングに参加した医学生は9,876名で,うち 希望順位を登録した参加者は9,626名だった。参加者が希 望順位表に登録した研修プログラムの平均数は3.44プログ ラムで,参加病院は1,017病院(研修プログラム1,354,募 集定員1万1,007名)であった。 大学病院希望者数と臨床研修病院(市中病院)希望者数 の割合をみると,臨床研修病院にマッチした医学生は 61.9%であった(図1)。大学病院と臨床研修病院の内定 者数の差は2009(平成21)年から年々拡大しており,臨 床研修病院の内定者数が6割を超えて,今日に至る。マッ チ者数を都道府県ごとに見ると,1)東京都1,238名,2) 大阪634名,3)神奈川630名,4)愛知528名,5)千 葉県434名の順に多く都市部に集中する傾向はあるもの の,これらの地区の募集定員の削減により経年比較では減 少傾向にある。本学付属病院では2020年まで例年約60名 程の研修医を採用している。. 図1 大学病院と臨床研修病院のマッチ者数の比率(%)の推移4). 2021年3月 41卒後教育. Ⅲ.臨床研修制度プログラムの変遷(表1)5)と課題. 2004(平成16)年の必修化以降,さらに2010(平成 22)年度には見直しがされた。研修プログラムの弾力化と して,必修診療科は内科6ヵ月以上,救急3ヵ月以上,地 域医療1ヵ月以上となり,従来の他の必修診療科は選択必 修となった。また年間入院患者数3,000名以上など基幹型 臨床研修病院の指定基準の強化,地域偏在の是正から都道 府県ごとの研修医募集定員の見直しがなされた。 2015(平成27)年度は研修希望者に対する研修病院の 募集定員の倍率の見直しや都道府県ごとに各自治体が上限 の範囲内で各研修病院の定員を調整できる枠の追加がなさ れた。 2020(令和2)年度は再度,研修プログラムの見直しが なされ,卒前の医学教育モデル・コア・カリキュラムとの 整合性をもった共通の到達目標,方略,評価が作成された。 研修内容としては以前の7科目必修化の復活や一般内科 外来研修と在宅医療での経験が必修となった。この見直し により,医師としての基本的価値観(プロフェッショナリ ズム)を重視した目標に改訂されて,卒前医学教育から生 涯にわたる目標に一貫性が図られたので,生涯を通じて研 鑽し続ける体制の一層の整備が望まれている6)。 2004(平成16)年度に開始された新医師臨床研修制度 の効果については,2007(平成19)年の福井らの報告7). がある。研修終了時の研修医の臨床能力にどのような影響 をもたらしたのかを問うアンケート調査であり,旧制度下 の研修医(平成15年3月の2年次研修医)に比べて新制 度下の研修医(平成18年3月の2年次研修医)は,調査 対象となった幅広い臨床能力の修得状況(自己評価)が全 般的に著しく向上し,以前認められていたような大学病院 の研修医と臨床研修病院の研修医との差がほとんど認めら れなくなった。また,調査対象となった82の症状・病態・. 疾患と4種類の医療記録全てについても旧制度下の研修医 に比べて新制度下の研修医の経験症例数・記載件数が有意 に多かった。従って,新医師臨床研修制度による研修医の 幅広い臨床能力修得という目的は達成される方向にあるこ とが示唆されている。また2011(平成23)年度研修修了 者を対象としたアンケート調査8)【経験した臨床研修の満 足度に関する5段階の評定尺度:1点(低)⇔5点(高)】 では年次比較でも大学病院,臨床研修病院共に満足度は高 くなっている(大学病院3.9,臨床研修病院4.2,全体4.0)。 一方で,2017(平成29)年の武冨らの報告9)では,臨 床研修の問題点として「研修理念と研修目標や現場の動機 づけの乖離」,「研修目標に対する関係者の認識不足」,「評 価の難しさ」などがあり,制度の見直しにおいては「研修 内容の多様性」,「評価の工夫」,「制度変更による混乱や負 担増」などに配慮することが求められている。 なお2020(令和2)年度は新型コロナウイルス感染症 流行の影響を鑑みて,厚生労働省医政局医事課・各地方厚 生局から,①新型コロナウイルス感染症の影響による臨床 研修病院で行う研修プログラム等の取扱い(4月14日), ②新型コロナウイルス感染症の影響による臨床研修病院で 行う必修診療科等の取扱い(5月13日)に関する通知が あった。その内容としては,新型コロナウイルス感染症の 影響により,予定されたプログラムの実施が困難になるこ とが想定されることから,研修プログラムの変更等につい て,引き続き柔軟な運用を行うよう,貴局管内の臨床研修 病院に対し周知徹底を図られたいとあった。特に2年目の 研修医において,必修分野の地域医療研修の実施が困難な 場合は,新型コロナウイルス感染症対応への従事等,所属 する基幹型研修病院の指示に従い適切に研修を行い,地域 医療研修の実施時期については調整を行うこととあり,実 際に当施設でも地域医療研修が困難な場合は当施設内の研 修に変更となった。. 表1 研修プログラムの変遷 引用文献5)より改変. � 杏林医会誌 52巻1号42 冨 田 泰 彦. Ⅳ.指導医の要件,NPO法人卒後臨床研修評価機構 (JCEP)10)よる初期臨床研修制度の評価. 初期臨床研修の指導医は,常勤の医師であって,研修医 に対する指導を行うために必要な経験及び能力を有してい るものでなければならない。原則として,7年以上の臨床 経験を有する者で,プライマリ・ケアを中心とした指導を 行うことのできる経験及び能力を有しているものをいう。 また2009(平成21)年度から,指導医はプライマリ・ケ アの指導方法等に関する講習会の受講が従来の努力目標か ら義務化となった。本学付属病院においても,2004(平成 16)年から年1~2回,1泊2日の形式で指導医ワーク ショップ(指導医養成講習会)を開催し,2019度末で総 計735名が受講して指導医資格を得ている。 NPO法人卒後臨床研修評価機構JCEP10)は,2007(平 成19)年,国民に対する医療の質の改善と向上をめざし, 臨床研修病院における研修プログラムの評価や人材育成等 を行い,公益の増進に寄与することを目的として設立され た。各病院の体制や実践内容を第三者機関が評価しフィー ドバックすることで,研修の質が更に高められる。評価は, 書面による調査と訪問による調査(実地訪問)により行な われる。書面調査では,臨床研修病院の施設の概要や研修 設備の状況,臨床研修プログラムと活動に関するデータ, さらに予め第三者評価基準と同じ項目を自己評価として提 出する。訪問調査は,提出された書面調査の結果を受けて, 訪問調査者(サーベイヤー)が数名で訪問し,評価判定・ 調査を行う。2019(平成31)年3月で認定病院が250病院 に達しているが,現状ではこの受審は努力目標として推奨 されている。. Ⅴ.シームレスな医師養成に向けた 後期専門研修の現状と課題. 卒後の研修制度は充実した研修体制と医療の質の向上を 目指すものであるが,その副次作用的に医師の地域偏在を 助長させているという指摘がある11)。2015(平成27)年 以降は都道府県の募集人数に上限を課すことで大都市への 研修医の集中を抑えられる傾向にある。一方で,後期専門 医研修は,各学会が独自に運営し,認定する民間の資格で ある為,診療科の領域間で研修内容に統一性がなくばらつ きがあった。これらを背景として,厚生労働省は2011(平 成23)年から「専門医の在り方に関する検討会」を開催 して,医師の質の一層の向上及び医師の偏在是正を図るこ とを目的に,専門医制度が見直されるようになった。その 結果,第三者機関の「日本専門医機構」12)が主体となり, 2018(平成30)年4月から始まった新専門医制度では, 専門医研修プログラムに登録して研修中の従来の後期研修 医を「専攻医」と呼称している。19の基本領域で構成さ. れる「基本領域専門医」と,基本領域専門医の取得後に選 択できる「サブスペシャルティ領域専門医」の二段階制と なり,「専攻医」はまず19の基本領域から専門医資格の取 得を目指すことになった。更に基本領域の19診療科は, より専門性の高いサブスペシャルティ領域(23領域:内 科系15領域,外科系6領域,放射線科系2領域)の専門 医を取得するための基盤となる資格といえる。この為,特 定のサブスペシャルティ領域の専門医を目指すには,その 分野と関係のある基本領域を選択する必要がある。2021(令 和3)年から基本領域とサブスペシャルティ領域の研修を 連動させる「連動研修」も行われる予定にある。連動研修 は早い段階から将来像を定めておかなければならない。連 動研修を受けるか否かに関わらず,将来的に悔いのない選 択をするためには,初期臨床研修の早い段階から将来の キャリア・デザインを意識する必要がある。. Ⅵ.日本専門医機構 12)とシーリング制度. 2018(平成30)年度から日本専門医機構による統一的 な専門医研修制度が開始されたが,新しい制度は医師の地 域偏在を助長させると,関係各種団体が強い懸念を示して いる11)。元来は専門医の質の担保という目的と考えられて いたが,地域偏在と診療科間の医師偏在の課題が付加的に 生じた。専門研修機関の要件が厳しくなった為,対応でき る基幹施設の数が減り,一部の地域や診療科に人気が集中 してしまう結果が生じた。このように臨床に従事する医師 の地域偏在・診療科偏在が存在し,その是正については近 年の医療をめぐる重要な課題とされている11-13)。 この為,国は医師偏在を拡大させないための施策「シー リング制度」を講じることになった。新専門医制度の採用 数の上限設定を設けることになり,この4年間の動向は以 下の如くである。. 1.2018(平成30)年度専攻医(1年目) 日本専門医機構により,五大都市(東京都,神奈川県, 愛知県,大阪府,福岡県)について,各診療科(外科, 産婦人科,病理,臨床検査および総合診療科以外)の シーリング数として過去5年間の採用数の平均が設定 された。. 2.2019(令和1)年度専攻医(2年目) 引き続き五都府県に2018年度と同様のシーリングを 実施。ただし,2018年度専攻医が東京都に集中した ことを受け,東京都のシーリング数を5%削減した。. 3.2020(令和2)年度専攻医(3年目) 2020年度専攻医募集に向けては,厚生労働省が2018 年度に発表した都道府県別診療科必要医師数帯及び養 成数を基に,各都道府県別診療科の必要医師数に達し ている診療科に対して,一定のシーリングをかけるこ. 2021年3月 43卒後教育. とを日本専門医機構が決定し,10月15日より専攻医 の募集が開始された。. 4.2021(令和3)年度専攻医(4年目) 日本専門医機構がシーリングを検討するための協議体 を設置しており,各学会や都道府県からのヒヤリング 等を踏まえ,検討がなされる予定。. 2020(令和2)年11月現在,シーリングの対象となる 診療科としては,19基本領域の中で,外科,産婦人科, 病理,臨床検査,救急,総合診療科を除いた,以下のよう な診療科が対象とされている。また,診療科以外では,地 域枠や自治医大卒の医師は対象外となっている。. 〈シーリング制度対象の診療科:内科,小児科,泌尿器科, 脳神経外科,整形外科,形成外科,耳鼻咽喉科,放射線科, 皮膚科,精神科,麻酔科,眼科,リハビリテーション科〉 更に,臨床的な研修とともに医学研究を学ぶ「臨床研究 医コース」が2021(令和3)年度から新設された。その 研修期間は7年間で,最初の2年は専攻医として19の基 本領域のうちいずれかの臨床的な研修を行い,専攻医を修 了した後の5年は50%以上の比重で医学研究に従事しな がら勤務する医師の養成が開始される。 例年,専攻医1次募集は9月下旬から10月中旬でした が,2020年は新型コロナウイルス流行の影響と推測され るが,やや遅れて11月4日より開始され,12月1日より 2次募集,2021(令和3)年1月6日より最終調整期間と なった。本学付属病院でもこのような体制に基づいて,基 本領域19診療科で後期専門研修を実施しており,この4 年間で年平均66.5名(64 ~ 69名)が後期の専攻医として 採用されている。うち約2/3は当院の初期臨床研修医で, 残り約1/3は外部施設での初期臨床研修医である。 このように日本専門医機構による専門医制度は4年目と なるが,医師の都市部集中などを懸念した厳しい声が顕著 に目立つ13,14)。リクルートドクターズキャリアの現役医師 へのアンケート調査(n=357,専門医保有者82.3%)14)に よると専門医制度の全体評価は,「良くない」「どちらかと いえば良くない」を合わせて73.3%で,「どちらかという と良い」は23.8%,「良い」と回答した割合は2.9%であった。 この調査結果によると,基幹施設の要件が厳しい為,大学 病院や大病院へ医師が集中する傾向や,遠隔地を含む関連 施設を転々とすることで医師が生活設計を立てにくい点が 指摘されている。また診療科によっては専門医取得に6年 間もかかること,資格更新の要件が厳しくなり費用もかさ むこと,手続きが煩雑になった等,日本専門医機構のあり 方を疑問視する声がある。一方,医師の自己研鑽が進むこ とや,かなり多いとされる専門医が整理されることを期待 する声もある。 このような最中,2019(令和1)年に全国医学部長病院. 長会議AJMCは日本専門医機構に向けて,①制度の在り 方,②執行部の人的配置,③資金や財政についての提言を している15)。更に同年,国立大学医学部長会議16)は文部 科学省,厚生労働省,日本専門医機構に対して7つの提言 をしており,その4つ目に「地域医療に配慮した臨床研修 制度と専門医プログラム制度の確立すること」を提言して いる。従って,今後の動向を慎重に観察する必要がある。. 結語. 以上,卒後教育として,初期臨床研修と専門医制度を中 心に述べたが,現状の課題としては地域偏在性や各制度の 更なる見直し等が推測される。特に開始4年目になる後期 専門研修では,未だ今後の動向に注視が必要な段階と思わ れる。 最後に,分野は違っても医師の生涯教育についても,端的 に表現していると解釈できる名言を紹介して,このテーマ の結びとしたい。 I am still learning. (Michelangelo Buonarroti),「私は 今でも学びつづけている」 本来はイタリア語で【Ancora Imparo.】とされ,多才 な芸術家ミケランジェロ が87歳で他界の前に描いた自画 像とされるデッサンの片隅にこの言葉が書き添えられてい たそうです17)。本邦での引用として,脳神経外科医の生涯 教育と科学的研究による脳神経外科学の進歩を通して,国 民の健康と福祉に貢献することを目的とした学会である. 「脳神経外科コングレス」18)の紋章に【Ancora Imparo.】 が引用されている。毎年,初期臨床研修医らにこのエピソー ドを紹介している。2019(令和1)年の秋冬に突如出現し たコロナ禍の最中だからこそ,より良き未来に向けて,国 民の中心的な主治医となる若手医師らの実り多き研鑽と活 躍を心から祈念致しております。. 参考文献. 1) 厚生労働省ホームページ:医師臨床研修制度の変遷 https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/rinsyo/. hensen/ 2) 清水貴子:17.臨床研修制度,医学教育白書 2014年版日本. 医学教育学会監修,日本医学教育学会 広報・情報基盤開発 委員会編集,2014.p77-84.. 3) 高橋弘明,小西靖彦,青松棟吉,石原慎,清水貴子,高橋誠, 中川晋,望月篤,安井浩樹,日本医学教育学会 卒後・専門 教育委員会:総説 シリーズ:初期臨床研修と医学教育(第 1回)臨床研修制度のふりかえり.医学教育 48:297-303, 2017.. 4) 医師臨床研修マッチング協議会 https://www.jrmp.jp/ 5) 福井次矢:臨床研修の到達目標・評価はどう変わるのか. 【interview】臨床研修の到達目標・評価はどう変わるのか, 福井 次矢氏(聖路加国際病院院長/聖路加国際大学学長) に聞く,医学書院, 医学界新聞,2018.06.11.. https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2018/ PA03276_01. � 杏林医会誌 52巻1号44 冨 田 泰 彦. 6) 清水貴子,石原慎,青松棟吉,小西靖彦,高橋誠,中川晋, 望月篤,安井浩樹,高橋弘明,日本医学教育学会 卒後・専 門教育委員会:総説 シリーズ:初期臨床研修と医学教育(第 4回)卒後臨床研修制度の見直しにみる医師の生涯学習.医 学教育49:135-142,2018.. 7) 福井次矢,高橋理,徳田安春,大出幸子,野村恭子,矢野栄二, 青木誠,木村琢磨,川南勝彦,遠藤弘由,水嶋春朔,篠崎英 夫:特集 医学教育の現状と展開 トピック Ⅱ.新臨床研修制 度の影響,1.臨床研修の現状:大学病院・研修病院アンケー ト調査結果.日内会誌 96:2681-2694,2007.. 8) 厚生労働省 医師臨床研修制度の評価に関するワーキンググ ループ(第8回)平成24年10月18日提出資料別添4(研修 医アンケート). https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002m9in- att/2r9852000002m9wv.pdf. 9) 武冨貴久子,大滝純司,川畑秀伸,福井次矢:医師臨床研修 の現状と課題:制度見直しに向けた研修・指導経験者に対す るフォーカスグループインタビューから,医学教育48:289- 296,2017.. 10) NPO 法人卒後臨床研修評価機構(略称JCEP)https:// www.jcep.jp/. 11)遠藤久夫:医師の卒後研修の現状と課題-医師の地域偏在問 題を中心に-,社会保障研究3:476-491,2019.. 12)日本専門医機構 https://jmsb.or.jp/ 13)ドクタービジョン(メディカルリソース):医療動向. 2020.11.25「シーリング制度」とは?希望するキャリア形成 のために知っておきたい制度のポイント,2020.12.17新専門 医制度は期待できる?制度の課題や問題点と今後の展望 https://www.doctor-vision.com/. 14)リクルートドクターズキャリア:どう思う?「新専門医制度 の現状と未来」,. https://www.recruit-dc.co.jp/contents_feature/no2002b/ 15)一般社団法人全国医学部長病院長会議AJMC:日本専門医機. 構への提言2019(令和元)年6月11日 https://www.ajmc. jp/pdf/20190611_01.pdf. 16)国立大学医学部長会議:令和元年5月 国立大学医学部長会 議─医師不足- 現状分析と改善への提言,http://www. chnmsj.jp/ishibusoku_teigen_2019.pdf. 17)伊藤昌徳:扉 脳神経外科における生涯教育,No Shinkei Geka 40:3-4,2012.. 18) 日 本 脳 神 経 外 科 コ ン グ レ ス https://jcns-online.jp/index. html#aboutJCNS/

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