悪性と鑑別が難しい良性乳腺疾患
臨床病理学的特徴と細胞像
川崎医科大学 病理学2・現代医学教育博物館 森谷 卓也!"#$%&'()*+",-./
・乳頭状病変、上皮過形成 ・上皮・間質混合腫瘍 ・硬化性病変 ・炎症性疾患 ・粘液性背景 ・アポクリン化生性病変 ・石灰化病変 0123456789:./;<=>乳腺疾患の病理コンサルテーション
(282例:2001年∼2004年、報告書作成分) 192?68@A 11?47@A 31?11@A 16?6@A 14?5@A BCD3&$EF +!"%&$EF癌と鑑別を要する良性疾患の特徴
1.乳管内病変
病変の特徴 良性疾患の種類 鑑別対象となる癌 乳管の内部に 上皮細胞が 増殖 乳管内乳頭腫 乳管過形成 乳頭部腺腫 乳管腺腫 等 非浸潤性乳管癌 乳頭腺管癌 等乳頭状病変
• 乳管内(内腔が拡張した場合嚢胞内)に増殖し た上皮が毛細血管を有する結合織性の茎(線維 血管性間質)を伴って乳頭状に突出する病変 • 良性病変 *乳管内乳頭腫 (嚢胞状:嚢胞内乳頭腫) *乳管内乳頭腫症 (=多発性乳管内乳頭腫) *乳頭部腺腫 • 悪性病変 *非浸潤性乳管癌 嚢胞状:嚢胞内乳頭状癌 GH IJKL6M,N$OPQR ?STUVWXYZ X[\]^Z2006AJ_`a!"#$!"%&'(
)*+,-./,01/23-43563+/789:;/<=> 乳頭腫 乳頭状癌 二種類の細胞 一種類の細胞 核クロマチン正 核クロマチン増量 アポクリン化生あり アポクリン化生なし 複雑な腺管構造 篩状構造 明瞭な間質結合織が介在 間質結合織は微量か欠如 乳管周囲の線維化と、上皮取 り込み像 上皮の間質内浸潤 周囲乳管に乳管過形成 周囲乳管に非浸潤性乳管癌 ときに硬化性腺症が付随 通常硬化性腺症を伴わない乳管内乳頭腫
bcd -cd ef" ghij "kl ?mA 平滑筋アクチン乳頭状癌
nopq?bcd$rsA 乳管乳頭腫症 Duct papillomatosis = 上皮増殖症 Epitheliosis, = 乳管過形成 Ductal hyperplasia 茎を持たない 偽乳頭腫 いわゆる 乳腺症の一型 顕微鏡レベル 末梢乳腺に多発 乳頭腫との中間 的病変もある 非浸潤性乳管癌 (DCIS):篩型/低乳頭型 非浸潤性乳管癌:αーSMA 陽性筋上皮の介在(線状) 乳管内乳頭腫:充実性 の上皮巣には筋上皮なし良性:多彩な細胞群 悪性:均質な細胞群 良性∼悪性乳管内病変の細胞構成(概念的模式図) 乳管過形成 低異型度 DCIS 高異型度 DCIS 多彩な構成細胞 均質な構成細胞 均質な構成細胞 腺上皮と筋上皮 の二相性あり 基底細胞介在 多くは腺上皮由来 (ER/PgR陽性) 筋上皮ー/+ 多くは腺上皮由来? 筋上皮ー/+ 34!E12 (CK1,5,10,14) 乳頭腫・乳管過形成におけるサイトケラチン染色パターン Cytokeratin 5/6 例外;アポクリン化生病巣、平坦型病巣→良性でも(-) !"#$%&'()*+,-./012 豊富な筋上皮 筋上皮減少 ?@ABC 結合性低下 構成細胞多彩性 細胞構成均質
乳管内増殖性病変の細胞診断
(東北公済病院、1999.1-9 ) 不適 陰性 疑陽性 陽性 乳管過形成 (中等度以上) 29例 (1) 17 (60.1%) 11 0 異型乳管過形成 7例 0 1 (87.5%)6 0 非浸潤性乳管癌 40例 (2) 7 8 (62.5%)25非浸潤性乳管癌の細胞像
一般的特徴
・細胞像の特徴 1)採取細胞量が少ない(サンプリング) 2)核異型が弱い(非コメド型) 3)筋上皮介在(二相性)を伴うことあり • 浸潤の有無については判定できない (極めて難しい)癌と鑑別を要する良性疾患の特徴
2.硬化性病変
病変の特徴 良性疾患の種類 鑑別対象となる癌 間質線維 成分の 増生が強い 硬化性腺症 放射状瘢痕 乳頭部腺腫 乳管腺腫 脂肪壊死 等 浸潤癌 (硬癌、小葉癌) 等乳腺症の病理
顕微鏡で見られる、7つの主な変化
1.乳管過形成(乳管乳頭腫症)
2.嚢 胞
3.閉塞性腺症
4.硬化性腺症
5.アポクリン化生
6.小葉増生症
7.線維腺腫症
硬化性腺症
二相性の保持 (筋上皮細胞介在)Radial Scar(放射状瘢痕)
• 線維性結合織の芯から、乳管が放射状に配列 • 画像上癌と鑑別を要す • 大きな病巣→Complex sclerosing lesion • しばしば乳管過形成を伴う • 病理学的に診断に苦慮する場合あり (癌との鑑別点は乳管過形成や 硬化性腺症に準ずる) ・まれに癌を合併 (>50歳、大きさ>6mmでrisk増大) 放射状瘢痕∼CSL病巣
偽浸潤
Pseudoinvasion
<良性疾患であるのに浸潤癌のように見える状態> *硬化性腺症 *乳頭腫(硬化性乳管内乳頭腫=管状腺腫) *乳頭部腺腫 *放射状瘢痕 そのほかの良性疾患 (同じ現象が癌にも認められる:非浸潤癌成分) 鑑別のポイント 1.腺管の配列(膠原線維の走向に沿う) 2.筋上皮の介在(二相性の存在)乳頭腫の辺縁に 見られる偽浸潤像 膠原線維の 走向に沿う 筋上皮介在 クサビ状パターン 良性:硬化性腺症 乳頭状病変の偽浸潤部腺管 悪性:硬癌の管状腺管部 62歳女性 乳腺腫瘤 MMGーMLO カテゴリー3 (粗大石灰化+陰影?) 62歳女性 乳腺腫瘤D 【US】カテゴリー4(1.2cmの腫瘤)
乳管腺腫 Ductal adenoma
•良性上皮性腫瘍の一型 •同義語:硬化性(乳管内)乳頭腫 sclerotic (intraductal) papilloma sclerosing papilloma (WHO, 2003) •乳管内病変:上皮細胞の増殖 •瘢痕状線維化(中心部) •偽浸潤像(辺縁部) •アポクリン化生(しばしば核異型を伴う) 規 間質の線維化を伴う充実性腫瘤・管腔構造を伴う間質の硬化と索状の上皮増殖、偽浸潤像(右図)を伴う 上皮細胞にアポクリン化生見られ、核腫大を伴う アポクリン上皮は局所的・腺管配列の規則性と二相性(筋上皮)の保持 αー平滑筋アクチン 乳管腺腫の特徴 病理組織像 偽浸潤像 アポクリン化生 乳管腺腫(10例) 90% 50% 乳管内乳頭腫(84例) 24% 30% (坂元:悪性と間違えやすい乳腺の良性疾患の病理 より) 偽陽性判定率 触診 MMG US 乳管腺腫(10例) 20% 10% 60% 乳管内乳頭腫(84例) 19% 23% 46% アポクリン化生上皮混在:異型を伴うように見えるので注意! 乳管腺腫の細胞像:過剰判定に注意 乳管腺腫:過剰判定を防ぐコツは何か? 1.二相性の保持に注目 2.異型アポクリン化生細胞が、 良性乳管上皮集塊に併存 3.硝子様間質成分の介在 4.本疾患の存在を認識すること 5.細胞像と画像を対比して整合性が 得られない場合には特に注意 文献・堀井理絵:乳癌の臨床19:249-253、2004 ・久木田妙子:乳癌の臨床19:391-395、2004 ・山上千秋:日臨細胞会誌41:274-277,2002
アポクリン化生を伴う乳腺病変
良性 ・いわゆる乳腺症 (アポクリン嚢胞を含む) ・乳管内乳頭腫 または乳管腺腫 ・硬化性腺症の一部 悪性 ・アポクリン癌 ・アポクリン化生主体 の非浸潤性乳管癌 ・小葉癌の一部 良性アポクリン化生細胞 アポクリン癌N#%&tuOM+"./$vw
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EF&GH ICJK &LM '(NO$ PQ% !RST$ UVCWX& YZ&[\] $^_`a UVb# (STcd`a) ef#g hijC!R% kCef#g l 【症例】46歳、女性 【触診】表面平滑な腫瘤(FA推定) 【MMG】腫瘤(良性?)+カテゴリー3の石灰化 【US】 2.2cmの腫瘤(カテゴリー3) 【細胞診】良悪性鑑別困難 多量の細胞採取、上皮の核腫大傾向? 管内型線維腺腫に相当する部(左)と細胞密在部(右)が同一腫瘍内に混在硬化性腺症(左)や乳管過形成(右)に相当する部が混在 線維腺腫・乳腺症型 ・線維腺腫の内部に アポクリン化生、閉塞性腺症、乳管過形成、 嚢胞、硬化性腺症、小葉増生症など ・臨床的にも癌と鑑別を要すことあり ・乳管過形成(乳管乳頭腫症)成分を非浸潤性乳管癌と 過剰診断しないよう注意 →非浸潤癌を合併した線維腺腫:極めて稀 →乳癌発生のリスク増加なし →間質成分の介在に注目! (参考)線維腺腫の亜型:管内型、管周囲型、類臓器型、 乳腺症型 規 ~•€•+'‚ƒ„…†‡ˆ€•$‰Š‹Œ•Ž••‘D 123’4‹“”Ž•#$•–—˜u™ 左右とも線維腺腫(乳腺症型)、良性:組織診断のポイントは間質成分
粘液腫様間質がめだつ線維腺腫
葉状腫瘍(良性∼境界悪性) 細胞像 線維腺腫に比し: 上皮集塊が大型 間質成分優勢 裸核;紡錘形、不整形 間質細胞の核分裂像悪性と鑑別を要する 良性乳腺疾患の病理所見
その他注意すべき疾患
最近注目されている疾患
š›„œ•žŸ Ÿ ¡¢£¢ 腺筋上皮腫 Adenomyoepithelioma 腺上皮細胞と筋上皮細胞の両者が、ともに 増殖する腫瘍(特に、筋上皮の増殖が主体) 基本的には良性の腫瘍 まれに所属リンパ節転移・遠隔転移 腫瘍の一部が悪性化 周囲に癌を付随している症例 亜型:分葉型、管状型、紡錘細胞型 規 暗調の腺上皮と明調の筋上皮が明瞭に区別される(分葉型) -bcd|XXX¤„jq¥XXXXXXXX¦„§¨€•¥ 二相性の確認 EMA アルファー平滑筋アクチン p63 腺筋上皮腫の細胞像:過剰診断に注意 広い胞体を有する筋上皮を認める ライト緑好性の基質(基底膜物質A筋上皮細胞に 核内偽封入体様構造を 伴うことがある (桝川睦子ほか:日臨細胞会 誌 46:216-221,2007) 規
乳腺線維症 Fibrous disease
• 線維化あるいは硝子化した間質内に萎縮した小 葉、 乳管が散在性に存在する良性病変である。 間質増生に比較して極端に小葉、乳管密度が低 い点が特徴とされ、小葉内および小葉、乳管周囲 に成熟リンパ球の浸潤を伴うことが多い。 良性病変であるが、臨床的には浸潤癌の所見を 呈することがある。 •注:本型の中にdiabetic mastopathyが含まれ る。 生検標本:脂肪を巻き込む 境界不鮮明な腫瘤 間質が豊富、実質は萎縮性(リンパ球集簇) 末梢乳管∼小葉の萎縮 ケロイド様の成分を含む厚い膠原線維 ・乳腺線維症:閉経前発症が多い ・境界不明瞭な腫瘤形成→臨床的に癌と鑑別を要す *細胞診・針生検:診断不適となる危険! 40歳、女性 乳腺の不規則な硬結 穿刺吸引細胞診2回:診断不適 CNB©ª粘液瘤様腫瘍
(Mucocele-like tumor:MLT)
・粘液を含む拡張乳管(嚢胞状)集族 ・一部が破綻し、粘液が乳腺間質内に露出 ・当初は良性疾患として報告 ・異型上皮や癌の合併例がみられる ・画像診断の発達により遭遇頻度が増加? →細胞診/針生検で診断確定可能か? →悪性度評価をどのように行うべきか?MLTの組織像 DDDDDDD拡張した乳管内に粘液が貯留し、間質内への露出も見られる 良性MLT:上皮は平坦で異型を認めず、二相性も存在 AB-PAS重染色 MLT背景を伴うDCISの組織像 mDm 石灰化 MLT病巣内、または周囲実質に、明らかな低乳頭状または篩状の異型病変 MLTの細胞像 背景:希薄な粘液の中に 泡沫状組織球が見られる 定型的には、上皮成分は乏しい 良性MLT: シート状の小型集塊 MLT+上皮異型またはDCIS: 核重積、乳頭状構造 核腫大傾向 森谷卓也ほか:日臨細胞会誌 46: 287-291, 2007 年 2003 2004 2005 2006 (1-9月)2007 計 穿刺吸引細胞診 検体適正例数 1762 2367 2428 2557 1975 11089 臨床診断 MLT疑い (検体適正例中) 13 37 49 77 58 234 細胞診 MLT疑い 8 16 15 41 32 112 (適正例中の割合) 0.5% 0.7% 0.6% 1.6% 1.6% 1.0% 乳腺穿刺吸引細胞診施行例中のMLT症例の頻度 (年次推移) (東北公済病院 長嶋真紀ほか:第47回秋期総会、仙台 にて発表)
肉芽腫性乳腺炎
Granulomatous mastitis
nopqrs)tuv?@wx>yz{C ////?@ij|GH$}QIC~z{CJK •€•‚pƒ„…ƒ†‡ ˆ‰Š‹pŒ•Ž:…ƒ•••&€{‘t’ DDDDD“”•Œ–•— ////DDDD˜™š›œ•žŸ{& ¡ DDDDD¢£¤¥¦CJK US: 地図状低エコー(一部前方境界線を越えて皮膚側に及ぶ)小葉構造破壊と、 好中球や組織球の反応 小葉中心性の炎症反応 肉芽腫性乳腺炎 臨床像と細胞所見