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大学共創プロジェクト 2012 報 告 書

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大学共創プロジェクト 2012 報 告 書

金 沢 大 学

富 山 大 学

福 井 大 学

北陸先端科学技術大学院大学

大学教育開発 ・ 支援センター 大 学 教 育 支 援 セ ン タ ー 高 等 教 育 推 進 セ ン タ ー 大 学 院 教 育 イ ニ シ ア テ ィ ブ セ ン タ ー

林     透   編

(2)

Ⅰ はじめに ··· 5 大学共創プロジェクト 2012 メンバー一覧 ··· 6

Ⅱ 活動報告

北陸地区国立大学連携プロジェクト(大学共創プロジェクト)

「大学組織力向上のための共創プログラム開発研究」の事業計画について ··· 9 北陸地区国立大学における共創の取組 ··· 10

■資料

「金沢大学 大学教育改革地域フォーラム 2012」

「富山大学 第 1 回 UD トーク 2012」

「福井大学 福大 LOVERS」

「北陸先端科学技術大学院大学 平成 24 年度第 1 回全学 FD・SD セミナー」

Ⅲ 大学共創フォーラム 2012「みんなで大学教育について語ろう!」

開会の挨拶・趣旨説明 ··· 23 第一部 話題提供

「対話形式で織りなす大学教育ものがたり」 ··· 23 梅村 修(追手門学院大学教育研究所長・教授)

山下 貴弘(追手門学院大学心理学部 4 年(学生 FD スタッフ))

第二部 グループワーク(第 1 クール)及び発表

(教員・職員・学生・市民ごとのグループ構成にて議論) ··· 36 第三部 グループワーク(第 2 クール)及び発表

(教員・職員・学生・市民混合によるグループ構成にて議論) ··· 40 クロージング・閉会の挨拶 ··· 53

■資料

「学生 FD とは?」(梅村 修)

「大学共創フォーラム 2012 概要資料」(林 透・河島広幸)

「大学共創フォーラム 2012 グループワーク用参照資料」(河島広幸)

「自己紹介シート」「○○できるシート」(河島広幸)

「グループワーク(第 2 クール)まとめ資料」(参加者一同)

■アンケート調査結果

Ⅳ おわりに

大学共創プロジェクトメンバーからのメッセージ ··· 83 大学共創宣言 ··· 89 編集後記 ··· 90

(3)

はじめに

(4)

はじめに

西山 宣昭(金沢大学大学教育開発・支援センター長,大学共創プロジェクトリーダー)

金沢大学と北陸先端科学技術大学院大学との教育研究活動支援事業での実績を踏まえながら,

北陸地区国立 4 大学のネットワークを活かして,大学組織力向上を目的としたプログラム開発 を共同研究するものである。多様化した時代を生き抜く人材を養成する大学としての使命と財 政困難に耐えられる効率的な大学経営を果たすには、大学の教育研究資源を提供する立場にあ る教員と職員が各々の力量を高めるだけではなく,教員・職員・学生が共に創り上げる組織力 が重要なファクターである。北陸という地域性に根差した組織風土に係る共通理解に立てば,

北陸地区国立 4 大学が共同で大学組織力向上のための共創プログラムを研究開発することは,

一大学だけでなく,北陸地域全体の大学運営や組織風土の底上げに確実に結びつくものと考え られる。また,本取組は,北陸地区の国立大学間の人と人とのつながりを密にし,大学間ネッ トワークそのものの体力を強化する効果が期待される。

2011 年度から開始した本研究グループを“大学共創プロジェクト”と称し,共創の定義を「① 教員と職員が協働するという形式(教職協働)を超えて,教員と職員が共に何かを創り上げる ということを目指すこと」,「②北陸地区国立 4 大学が一緒になって,各大学で抱えている共通 的課題について考え,課題解決や新たな方向性を見出していくこと」とした。このような定義 付けの基に,大学共創プロジェクトが扱うテーマとして,大学が関わる幅広い事象のうち,教 員と職員が共に営むことが多く,本プロジェクトメンバーとの関係性の高い「教育企画,教務・

学生支援」に焦点を当て,アクションリサーチの方法を適用して調査研究に取り組んだ。

2012 年度では,前年度に開催した研究会及び合同セミナーを通して培われた研究グループメ ンバー間の横のつながりを基礎に,各大学の教育現場におけるアクションリサーチの更なる応 用や新たなプログラム開発に取り組んだ。具体的には,定期的に研究会を開催し,大学組織力 向上に関する先進事例等を学びながら,北陸地区国立 4 大学の教職員に加え,学生を交えたフ ラットな議論の場の創出を実現した。

大学は自らの個性を尊重しつつ,地域との関係において一定の役割と機能を果たさなければ ならない。地域に息づく大学の構成員が,お互いの知見を持ち寄り,新たな気づきや発見に遭 遇し,知識を創造していくことは非常に大切なことである。各大学の個性を尊重しながら,教 育研究活動や学生生活における日常的な場面を題材として,我々大学人が大学をより良くする ために,どのような貢献ができるのかというテーマこそ,我々,大学共創プロジェクトの力の 源である。

(5)

平成 24 年度北陸地区国立大学学術研究連携支援事業

研究グループ名:「大学組織力向上のための共創プログラム開発研究」

●金沢大学

大学教育開発・支援センター長(教授) 西山 宣昭

大学教育開発・支援センター教授 青野 透

(研究協力者)学生部学務課教務係長 出村 文一

(学生委員)人間社会学域人文学類 1 年 大津 諒

●富山大学

大学教育支援センター副センター長(人文学部教授) 佐藤 裕

大学教育支援センター教授 橋本 勝

(研究協力者)学務部学務グループ学務企画チーム主幹 波間 雄司

(研究協力者)学務部学務グループ学務企画チーム主査 新井 浩

(学生委員)人間発達科学部 2 年 東海 麻由

(学生委員)人文学部 1 年 藤田 昂平

●福井大学

高等教育推進センター長(理事・副学長) 寺岡 英男

高等教育推進センター(工学部教授) 田村 信介

(研究協力者)学務部教務課教務企画係長 川端 敏隆

(学生委員)工学研究科電気・電子工学専攻博士前期課程2年 斎藤 毅

(学生委員)工学研究科物理工学専攻博士前期課程1年 佐藤 吏

●北陸先端科学技術大学院大学

大学院教育イニシアティブセンター長(情報科学研究科教授) 浅野 哲夫 大学院教育イニシアティブセンター副センター長・特任准教授 林 透

(研究協力者)教育支援課総括・企画係長 戸田 克己

(学生委員)知識科学研究科知識科学専攻博士前期課程 1 年 河島 広幸

(6)

活動報告

(7)

【平成 24 年度事業計画】

●大学共創プロジェクトの目標の再確認

「大学共創」(University Co-creation)の定義付け・・・

①大学の組織運営や教育活動の改善・開発プロセスに,構成員である教職員・学生を巻 き込み,よりよい組織運営や教育活動を創り出そうとする試み。

②北陸地区国立 4 大学が一緒になって,各大学で抱えている共通的課題について考え,

課題解決や新たな方向性を見出していくこと。

●平成 23 年度

教職協働を通したアクションリサーチによる課題抽出や提案の試みを実施。

「教職協働によるカリキュラム・マップに基づく質保証スキームの構築・実施」

(⇒テーマ:カリキュラム・ポリシー,カリキュラム・デザイン)

金沢大学大学教育開発・支援センター長 西山 宣昭

「大学をとりまく情報の認識統一の不徹底について」

(⇒テーマ:キャリア教育)

富山大学学務部学務グループ学務企画チーム主査 新井 浩

「学生支援の充実に向けて」(⇒テーマ:学生支援,学生相談)

福井大学学務部教務課教務企画係長 廣田 龍彰

「学修指導を通した『共創』を探る」(⇒テーマ:学修指導,履修指導)

北陸先端科学技術大学院大学大学院教育イニシアティブセンター長 浅野 哲夫

●平成 24 年度

本プロジェクトに新たに学生委員を参画させ,教員・職員・学生によるイベント企画を 実現する。

①第 1 回研究会(9 月 6 日)において,学生委員の選出依頼。

②第 2 回研究会(10 月 14 日)においてフォーラムテーマ及び内容の検討。

③第 3 回研究会(11 月 1 日)において実施要項決定。

④富山大学・第 1 回 UD トーク(学生企画イベント)に参加。

⑤12 月 22 日に大学共創フォーラム 2012 を開催。

⑥第 4 回研究会(2 月 21 日)において,事業報告書を確認。

※参考1 学生 FD サミット 2012 夏概要と追手門学院大の取組紹介

※参考2 富山大での取組紹介

※参考3 北陸先端大では,本年 7 月 30 日,全学 FD・SD セミナー『JAIST 大学院教育 について皆で語ろう! -大学共創によるチャレンジ-』において,教職員・

学生によるグループワーク実施(総勢 86 名参加)

北陸地区国立大学連携プロジェクト(大学共創プロジェクト)

「大学組織力向上のための共創プログラム開発研究」の事業計画について

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■資 料(「金沢大学 大学教育改革地域フォーラム 2012」

北陸地区国立大学における共創の取組

(9)

■資 料(「富山大学 第 1 回 UD トーク 2012」)

(10)

■資 料(「福井大学 福大 LOVERS」

(11)
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(14)

■資 料(「北陸先端科学技術大学院大学 平成 24 年度第 1 回全学 FD・SD セミナー」

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大学共創フォーラム 2012

「みんなで大学教育

について語ろう!」

日 時:2012 年 12 月 22 日(土)13:00~17:00 場 所:金沢学生のまち市民交流館 交流ホール

(18)
(19)
(20)

皆さん,こんにちは。今日はクリスマス休みの第一日目ということで,まちなかは今からに ぎやかになると思うのですが,われわれはここで活発な議論ができればと思っています。この ようにたくさん集まっていただきまして,本当にありがとうございます。このフォーラムは,

大学教職員,学生,そして市民の方々が一緒に,大学がどういう能力を持った学生を育成する ことができるか,そのためにはどういう教育をなすべきか,現状でよいかということについて 議論する場です。

正直なところ,今現在の私の個人的な見解としては,大学教育は,やはり大学教員がデザイ ンすべきという持論を持っています。しかし,林先生が斬新なというか,新しい視点でこのよ うな議論の場を設定されました。私が知る限り,ヨーロッパの,特に北欧の大学では,カリキュ ラムをはじめとする教育の意思決定機関に,制度的に学生が入っています。あるいは,大学の 外部評価についても,外部評価委員として数名の学生を入れることが法律で決まっています。

世界的に見ると学生あるいは市民の方を巻き込んで大学教育を良くするという極めて先進的な 取り組みがあるのですが,日本については極めて後れているというか,そういう状況は見られ ないのが実情です。その意味で,ささやかではありますが,この場の議論が大学教育が新しい 方向へ向かう一歩になればと思っています。

加えて,私の個人的な意見では,大学で養うべき能力は,批判的思考力であると思います。

今日は大学教職員の方や経験を積まれた市民の方にご参加いただいているので,教育について いろいろな主張が出ると思います。学生の皆さんはその主張の根拠を客観的に分析し,その主 張あるいはその根拠の関連性に問題がないかをよく考え,職員であろうが教員であろうが,先 輩であれ市民であれ,遠慮なく思いきり反論なり異論なりを唱えていただきたいと思います。

学生の皆さんに議論を通して私の持論をつぶしていただくことで,活発な議論につながること を期待しています(拍手)。

林特任准教授 それでは早速,話題提供の方に入っていきたいと思います。演題が「対話形式 で織りなす大学教育ものがたり」ということで,これから 40 分ほど対話形式で話題提供してい ただきます。今日は,講師に追手門学院大学の教育研究所長である梅村修先生をお呼びしまし た。それともう一人,追手門学院大学心理学部 4 年の山下貴弘君から話題を提供させていただ きます。「エフモンクエスト」という資料の最後に,お二人の自己紹介のような PR 文がありま す。それを読んでいただけると二人のパーソナリティーがご理解いただけるのではないかと思 いますので,私の方からは詳細なご紹介は控えさせていただきます。ただ 1 点だけ,今回,追 手門学院大の方々をお呼びしたのは,実は昨年,大学コンソーシアム石川で SD フォーラムとい

開会挨拶・趣旨説明

西山 宣昭(金沢大学大学教育開発・支援センター長)

第一部 話題提供

「対話形式で織りなす大学教育ものがたり」

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うものを開かせていただいたときに山下君に来ていただいたことから,少し交流が芽生えたか らです。今,全国で学生 FD という活動が,かなり積極的に行われています。その具体的な内容 を学び取って,後半のグループワークに生かしていきたいと思っています。

それでは,まず梅村先生の方から,簡単に取り組みの概要などをパワーポイントでご紹介し ていただきます。

イントロダクション 学生 FD とは?

梅村 修(追手門学院大学教育研究所 所長)

1.大学に求められる授業

ご紹介にあずかりました梅村です。5 分間ほどお付き合いください。私が学生 FD 活動とは何 かというお話をした後,本学の山下君と対話をしたいと思います。

私も何回か講演会やフォーラム,シンポジウムをしていますが,このように和風の建物で聴 衆が正座をしたりあぐらをかいたりしている所で話をしたことはありません。最初から非常に 面食らっています。正座が苦手な方はどうぞ足を崩していただいて,リラックスして聞いてい ただきたいと思います。

今日,名簿を見ますと,19 名の大学生の皆さんがいらっしゃいます。ちょっと手を挙げてい ただけますか。少し老けて見える方もいますが,大学院生でしょうか。ありがとうございます。

中には,どうして自分がここにいるのか分からず,FD とは何かも分からないという人もいらっ しゃると思います。ですから,私は今から,そういう学生さんに向けて話します。先生や職員 の方には当たり前の話かもしれませんが,ちょっと堪えていただきたいと思います。

それでは,学生さんにお聞きします。大学の先生になるためには,どうしたらいいでしょう。

大学の教師になるためにはどんな資格が必要でしょうか。どんな免許が必要でしょうか。どん な検定に合格しなければならないでしょうか。どう思われますか。

実は,これは一切要らないのです。大学の先生になるには,資格も免許も要りません。検定 すらありません。つまり,私ども大学教員というのは無免許運転をして教壇に立っているよう なもので,教育に関しては素人が多いのです。これは昔からそうなのですが,昔はとらえ方が 少し違いました。私が学生のころも,大学の先生はそんなに授業が上手ではありませんでした。

10 分間ほどは遅れてくるのが当たり前で,教卓でたばこを吹かす人すらいました。私には,寺 尾先生という今でも忘れられない経済学部の先生がいます。彼は日経新聞を小脇に抱えてやっ て来て,おもむろにページを開いて目に付いた記事から経済学を説きました。ところが,教室 は水を打ったように静かなのです。誰一人私語をしない。鈴なりの人だかりで,後ろには立っ ている学生すらいる,そういう授業が実際にあり得た時代もありました。

しかし,今はそうではありません。今は,そういう大学の授業は珍しいです。今は,大学の 先生が一生懸命良い授業をしなければならない,そういう時代になってきました。それは,一 つには少子化という時代背景があります。18 歳人口が非常に少なくなって全入時代,選り好み しなければ誰でも大学に入れるような時代になりました。また,学生の多様化ということもあ ります。学力が低下したとか,中途退学者が増加した,卒業時の質保証を求められるようにな ったなど,さまざまな理由がありますが,大学教員は教えるスキルを磨いて良い授業をしなけ ればならないという時代的要請の下にあります。

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2.FD とは

FD とは,大学教育を改革する大学の組織的な取り組みの総称で,今は全大学に義務化されて います。1998 年に努力義務というものが大学設置基準にうたわれ,そして 2008 年には義務化 されて,大学の教員は必ず FD に取り組まなければならないということになりました。その結果,

さまざまな取り組みが行われるようになりました。皆さんもご存じの授業のアンケート,FD の 講演会などです。「まんが おしえて! FD マン FD ハンドブック」という本すら現れていま す。これは京都の大学の先生方がお作りになったもので,大学の先生も漫画を読んで FD を学ん でいるという時代です。

それから,昨日,私の大学で「教員活動状況報告書」というものが発刊されました。これは 全学自己評価委員会というところが作ったものです。大学の教員が,教育面,研究面,社会貢 献,学内活動の四つの方面から自分の活動を点検して自己評価したものです。こういった冊子 もつくられる時代です。

さて,このようにさまざまな FD 活動が盛んに行われています。ところが, FD 活動は非常に 盛んにはなっていますが,大学の授業がそれで変革されたか,少しでも良くなったかと言われ ると,なかなかそうは言えない現実があります。そこで,われわれが学生 FD 活動というものを 始めたわけです。学生 FD 活動とは,学生とともに進める活動,学生の参画を得て行う FD 活動 という意味です。とかく教員の自己満足に陥りがちな FD 活動に,授業のもう一方の主体たる学 生の意見を取り入れて,学生とともに FD 活動を進めていこうという取り組みが学生 FD 活動で す。

3.学生 FD 活動とは

学生 FD 活動は,大学を良くしていこうとする自主的な取り組みです。学生が主体ですが,学 生だけでやっているのではありません。支援する教職員と三位一体で進めていくことが大原則 になっています。今,学生 FD 活動は盛んになってきていますが,その参画のタイプは,大きく 三つに分けられます。ある大学ではカリスマ教員型で,非常に権威のある先生が率先して学生 FD 活動を進めています。例えば,立命館大学には木野茂先生という方がいらっしゃいます。ま た,今日もいらっしゃっていますが,以前,岡山大学におられて,今は富山大学におられる橋 本勝先生も,泣く子も黙るカリスマ教員です。

2 番目は熱血職員型で,こちらは教員よりもむしろ職員が主導権を握って学生を引っ張って います。例えば,京都文教大学には村山孝道さんというすごい職員の方がいますし,京都産業 大学には山内尚子さんという女性のファカルティーデベロッパーがいらっしゃいます。

もう一つの典型が,前のめり学生型です。これは私が勝手に名付けたのですが,学生が一生 懸命やって,後から教職員が追い掛けています。その代表が本学です。今日はその代表格を一 人連れてまいりました。後で対談します。愛知教育大学もそういう大学だと思います。

学生 FD は,組織の名称や形態,取り組み自体は,各大学に最も適した形で行われています。

大学も,国公立もあれば私学もあります。また,単科系大学もあれば総合大学もあります。い ろいろなタイプの大学が,それぞれ実情に応じた形態や取り組みをしています。

4.学生 FD サミット

その中で,他大学での取り組みから学び合うことが大事だということが次第に分かってきて,

学生 FD サミットという全国大会が開かれるようになりました。第 1 回は 2009 年の 8 月 29・30 日に,立命館大学で行われました。他大学を知って自大学を知る,大学を良くしたい教職員と つながる,全国の大学とつながることで学生 FD を発展させようという目的で行われてきていま す。

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過去 6 回行われましたが,毎回参加者数を更新しています。残念ながら 2011 年度はちょうど 東北の大震災の日に当たってついえてしまったのですが,今年の夏,8 月に立命館で行われた ときには 59 大学 427 名の参加を得て,そのうち学生が 304 名というところまで規模を拡大して います。

地図の上で全国の大学の配置を見ますと,西高東低の傾向が見受けられます。それから,今 日われわれは北陸に来ていますが,残念ながら北陸地区は富山大学だけで,金沢大学も福井大 学もまだ一度も来ていただいておりません。次回は岡山大学で第 7 回目のサミットがあります ので,皆さん,ぜひともいらしてください。

このサミットでわれわれがしていることを簡単にご紹介します。まず,各大学の活動の紹介,

「しゃべり場」という少人数での自由な意見交換,課題ごとに解決策をグループで考える「グ ループワーク」,グループの成果を共有し合う「発表」を行います。中には分科会を行ったサミ ットもありました。課題ごとにパネラーと参加者が一緒に考えます。こういった活動を毎年 2 回,全国のどこかで行っています。これが学生 FD サミットです。

先ほども申しましたが,第 7 回目は岡山大学で行われます。皆さんのお手元にもチラシを配 っていますので,ぜひとも体験なさっていただきたいと思います。

サミットとともに,地域との交流も広がっています。岡山大学では昔ながらの i*See という 企画が行われていますし,山形大学,立命館大学,追手門学院大学,札幌大学,そして関東圏 の大学,山陰の方では下関市立大学が中心になって,ミニサミットとも言えるような試みが毎 年行われています。

以上,非常にかいつまんだ話ではありましたが,学生 FD 活動の概要についてお話ししました。

もっと詳しくお知りになりたい方は,『大学を変える,学生が変える 学生 FD ガイドブック』

という本が,今年の 2 月にナカニシヤ出版から出ています。皆さまのお手元にもチラシをお配 りしていますので,ぜひともお読みになってください。この中に大阪大学,立命館大学,岡山 大学,追手門学院大学,京都文教大学,愛知教育大学,法政大学の実践紹介がまとめてありま す。

対 談

梅村 修(追手門学院大学教育研究所長・教授)

山下 貴弘(追手門学院大学心理学部 4 年)

1.学生 FD 活動を始めたきっかけ

梅村教育研究所長・教授 さて,ここから本学の山下貴弘君を呼んで,私と対談を行いたいと 思います。皆さん,拍手でお迎えください。山下貴弘君です(拍手)

山下 失礼します。

梅村教育研究所長・教授 のっけから非常に驚きましたが,どうしてそんな羽織はかま姿なの ですか。

山下 僕は大学に入った当時は普通の洋服を着ていたのですが,気付いたらこんな格好をして いました。それにはいろいろな話があるのですが,この後の懇親会で聞いていただければと思

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います。

梅村教育研究所長・教授 なるほど。学生 FD 会の広告塔です。この男を知らない学生 FD はも ぐりです。さて,それにしても山下君は,私が 2009 年に初めて会ったときには,こんな羽織は かま姿ではなく,きちんとした青少年でしたよね。どうしてこの世界に深入りしてしまったの ですか。

山下 僕は自分で言うのも何ですが,当初は超まじめな学生の部類でして,高校を卒業後はみ んなと同じように大学進学を考えていたものの,大学での学びに意義を見いだせず進学はしま せんでした。その後,もう一度勉強してやろう,研究してやろうという思いで大学に来たので す。最初は教室の前の方に座って研究室にこもるような学生だったのですが,途中でちょっと おかしいなと思うことがありました。大学の大人数授業を,こういうのが大学だと思っていた のですが,それは先ほど先生がおっしゃっておられた新聞を読んで授業をするというものでは なかったのです。そんな授業ならすごいなと多くの方が感動されると思うのですが,僕が見た 授業はそうではなくて,教科書を小脇に抱えてやって来られて,「どこだったかな。ここは何て 書いているのかな」と先生がずっと語られるという形で,多分,初めて教科書をお持ちになっ たのではないかなという先生だったのです。

それでも,僕ら学生の聞く意識の問題ではないですか。でも,後ろを見ると,携帯をしてい る,お弁当を食べている,トランプをしている。これは一体どこなんだというのが,僕の最初 の疑問だったのです。大学に入ってもっと勉強できる,みんなと議論できると思った僕の夢を,

きれいに打ち砕いてくださった方がいらっしゃったというのがスタートです。

梅村教育研究所長・教授 ということは,最初は教師のせいにしたということですね。

山下 最初はそうですね。ある学会で,

FD を始めたきっかけについてある先生 がおっしゃられた「最初は学生退治で始 めました」という言葉を借りて,私は「教 員退治」という言葉で活動を始めました。

梅村教育研究所長・教授 なるほどね。

その活動が,やがてどんなミッションに 変わっていったのですか。

山下 最初は教員退治という強い言葉を 掲げていたのですが,あるとき教員の方

もな困っているのだなということに気付いて,それをある機会にお話しさせてもらったのです。

梅村教育研究所長・教授 困っている? どんなことに。

山下 「授業のやり方なんか教えられたわけではないし,連れてこられた」,もしくは「専門で はないところを『教えろ』と言われてやらされている。おれもどうしていいか分からない。だ から教えてくれ」「ああ,そうだったのですね」というところが,まず教員の方と打ち解けるき っかけになりました。

(25)

梅村教育研究所長・教授 なるほど。対学生はどうですか。

山下 学生も「まあここは第一志望ではないし」とか「別に居るだけいいのだろう」というよ うな感じなのですが,でも,こういう授業なら受けてみたいとか,こうだったらもっと学校に 来たいかなという,何かもやもやした気持ちは持っているなと,そこが自分の中で変わったき っかけです。

梅村教育研究所長・教授 それで山下君が言い始めたのが,いわゆる「橋渡し」という言葉な のですね。橋渡しをもう少し詳しく言うと,どうなりますか。

山下 はい。橋渡しということを追手門学院の学生 FD のビジョンとして掲げているのですが,

大学生,教員,職員の皆さんは「大学がもっとこうだったらいいのにな」「こうしたいのに」と いう思いは持っているのです。しかし,皆さんがそれを言い合っていなかったり,そういう形 になっていないのではないか。これをつないだら,もっと楽しいことができるのではないだろ うかというのが,僕たちが掲げた「橋渡し」という言葉です。

梅村教育研究所長・教授 相変わらず,すごく弁舌巧みですね。どこで磨いた弁舌ですか。

山下 いやいや。梅村先生に磨いていただいたと思うのですが。今日は一応,前日までに「こ ういう話をしようか」みたいなことはぼんやりと考えてきたのですが,この活動を始めるまで は,僕はこんな人前に立つような人間ではなくて,物陰でそっと見ているのが好きだったので す。でも,学会へ行ったら「はい,君」と振られるわけです。そうするとしゃべらないといけ ない。それが何よりここまで磨かれた理由かなと思っています。

梅村教育研究所長・教授 そうですね。そういえば,いろいろなところでこういう対話をしま したね。

山下 そうですね。

2.活動例 1~学生 FD の輪

梅村教育研究所長・教授 追手門学院大学には,さまざまな学生 FD 活動があります。今日はま だ学生 FD 活動をしたことのない学生さんや教職員の方がおられますから,ちょっと紹介させて いただきましょうか。最初に何が出てくるでしょうか。

山下 これは「学生 FD の WA」と言います。僕たちが活動を始めて以降,さまざまな大学が取 り組まれるようになって,今では 100 校近くの大学が活動されているのですが,活動を通して,

多くの課題が見つかるわけです。そういった課題を皆で持ち寄って,この課題についてのさま ざまな大学の方々の知見を集めて,教員・職員・学生,他大学の垣根を超えて学び合いましょ うというのが,この場になっています。

梅村教育研究所長・教授 つい先日,12 月 1 日・2 日に行われたときは,どんなテーマでした か。

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山下 ファシリテーション研修というのが 1 日目で,2 日目にゲーミフィケーションというの がありました。1 日目のファシリテーションというのは,まさにこういう場所をどのように回 していくのかということ,または,皆さん意見は持っていると思うのですが,その意見がなか なか引き出せなかったり,声の大きい人の言葉で片付いてしまったりしますが,そうではなく て,皆さんの意見や考え方を聞きましょうというのが 1 日目です。2 日目は,会議というと結 構つまらない,しんどいイメージがあると思うのですが,そのつまらないしんどい会議を皆さ んで楽しくしましょう,楽しいところから新しいアイデアが生まれたらいいなというのが,2 日目の研修になります。

梅村教育研究所長・教授 学生 FD 活動をしていると,どうやって仲間を集めるかとか,この退 屈な会議をどう改善したらいいかといった,さまざまな現実的な問題に直面します。これを解 決するために,こういった活動をしています。このときには全国から 150 人ぐらいの人が集ま ってくれました。

3.活動例 2~研究室訪問と教員図鑑

梅村教育研究所長・教授 次にいきましょう。これは何ですか。

山下 これは研究室訪問で,次は教員図鑑というものになっています。「学生の皆さんで,これ まで研究室にゼミ以外で遊びに行ったことがあるという人はいますか?」なるほど,こんなも のですかね。なかなか行きにくかったりしませんか?

教員の方と関わりたいのだけれども,忙しいそうだといって行けない。先生のことをあまり 知らないので,行っていいのかさえ分からないという学生が周りに多くいるという話を聞いて,

それなら,皆さんに先生を紹介する機会が必要なのではないか。授業の外での趣味や目標,研 究テーマを分かりやすく伝えてあげることで,そのハードルを越えられるのではないかと思っ たのです。

梅村教育研究所長・教授 なるほど。追手門にも『研究室総覧』のような分厚い本があります。

ところが,誰も手に取りません。実際,その教員の素顔なるものは分からないまま 4 年間過ご してしまう。学生がインタビューしてそれを 1 冊の本にまとめる。いわゆる教員 Who's Who の ようなものを作ったわけです。

4.活動例 3~学生発案型授業

梅村教育研究所長・教授 次にいきましょう。少し仲間にも振ってみましょうか。では,播本 さん,これは何ですか。

播本 これは学生発案型授業です。この名のとおり,これは学生が企画し,先生にお願いしに 行き,運営をしました。正式名称は学生発案型特別講義という名前で,授業ではなく,単位は 出ないのですが,先生にお願いして「こんなテーマで話してください」と言って広報したとこ ろ,学生がなんと 50 人ぐらい講義を聴きに来てくれたのです。

こういう企画をしようと思ったもともとのきっかけは,先ほど言われたように,先生はどう も悩んでいる。よくよく聞くと,先生は実はこういうことを教えたいのではなくて,こういう ことをもっとやっているというのを私たちは知っている。学生の方も,あの先生にこういう話 をもっと聞いてみたいとどこかで思っていたりする。そこで,今回お願いしたのが金政先生で す。金政先生は,実は NHK の「爆問学問」というテレビ番組で,恋愛学の話をされたのです。

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学生はほとんどそれを知りませんでした。しかし,それを見た学生が「これを学内でやってく れないかな。面白い。恋愛学とか聞きたい」と思った。それで学生に声を掛けてみると,恋愛 に悩んでいる学生が結構いる。「ちょっと楽しそう。聞いてみたい」ということで実現したのが,

第 1 回目の講義でした。

梅村教育研究所長・教授 ありがとうございます。大学というところは教師が学生に一方的に 知識を注入するところではなくて,学生の側から問い掛けがあってしかるべきです。学生と教 員がつながった講義というのは,大学の本来あるべき姿を実現していると私は思っています。

5.活動例 4~ベスト・ティーチャー・アワード

梅村教育研究所長・教授 次,これは何でしょう。

山下 ベスト・ティーチャー・アワードです。説明は森田君にお願いします。

梅村教育研究所長・教授 また誰かに振りますか。今度は 1 年生ですね。追手門学院のニュー フェイスの森田君です。よろしくお願いします。

森田 よろしくお願いします。こちらは,ベスト・ティーチャー・アワードというアンケート です。全学授業アンケートというのはどの大学にも結構あると思うのですが,授業の批判だっ たり,先生のここが嫌とか,授業のここが面白くないとか,批判的でネガティブなアンケート だったりします。そうではなくて,先生はいいところもあるし,いい先生はもっと評価される べきで,ポジティブなアンケートを作ろうという思いから,ベスト・ティーチャー・アワード という学生版の授業アンケートを始めました。

アンケート用紙には先生の名前と,なぜその先生がピカ一なのか,という理由を書いてもら って,その先生のどんな授業ならもっと受けてみたいか,聴いてみたいか,どんなテーマだっ たらいいかというのも一緒に書いてもらい,今現在集計中です。これを集計して,どんな授業 を受けてみたいかとか,どんなテーマだったら聴きたいかを集めて,ピカ一だった先生に,「学 生が求めている授業はこんなものです」とお願いして,その授業をやってもらおうと。そして,

先ほど播本さんからも説明のあった学生発案型特別講義にまたつなげていけたらなと考えてい ます。

梅村教育研究所長・教授 どうもありがとう。非常にいい説明でした。

6.活動例 5~教育研究所セミナー

梅村教育研究所長・教授 次に,「教育研究所秋のセミナー 学生中心の大学とは」とあります。

山下君,これは何ですか。

山下 では,これは清水さんにお願いしていいですか。

梅村教育研究所長・教授 はい。2 回生の清水菜未さん,お願いします。

清水 心理学部心理学科 2 回生の清水菜未です。よろしくお願いします。私たち学生 FD は,教 育研究所の下にある学生組織です。年 2 回,春と秋にある教育研究所セミナーの企画と運営を 任せていただいています。最近では,11 月に秋のセミナーを開催しました。今回の秋のセミナ

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ーでは,大きな目玉として新学長と理事長をゲストとしてお呼びしました。新学長と理事長の,

学生と直接交流を持ちたい,学生の生の声を聞きたいという思いから,今回のセミナーの開催 に至りました。

テーマは「学生主体の大学とは」というもので,これについてしゃべり場を行いました。し ゃべり場を行った結果,距離が遠いと思っていた学長や理事長との直接の対話を実現させるこ とができ,いつも抱いていた学校側への疑問・質問を直接聞いて,その答えが直接返ってくる という環境を実現できたと思っています。次回の春のセミナーで何をするかはまだ決まってい ないのですが,今回の秋のセミナーと同じように教員・職員・学生の想いをつなぐ橋渡しをし ていけたらいいなと思っています。以上です。

梅村教育研究所長・教授 そのときの秋のセミナーは非常に評判になって,大学新聞の取材を 受けました。皆さまのお手元にも配っていますので,後でゆっくりご覧になってください。全 国でも,理事長・学長を学生が呼んで話を聞くという試みは画期的だと思います。

7.活動例 6~エフモンクエスト

梅村教育研究所長・教授 では,次にいきましょうか。これはエフモンクエストですね。

山下 そうです。これは田崎さんにお願いします。

梅村教育研究所長・教授 それでは,心理学部 2 回生の田崎さん,お願いします。

田崎 私たちは,学内外に向けて「エフモンクエスト」という冊子を発行しています。今回ゼ ロ号になっているのですが,これにはサミットを開催したスタッフの感想と,協力してくださ った教員と職員さんたちの感想が載っています。私はこのサミットが開催されたときにまだ FD には入っていなかったのですが,読んでみたら「なぜ入っていなかったのだろう」と悔しい思 いをするぐらい,すごく面白そうに書いてあるので,ぜひ読んでみてください。

もう一つ,学内の認知度が足りないということで,FD 新聞というものも出してみようかと,

今動き出しています。こちらは学生目線でフランクな感じで,学生が読んでいて楽しいとか面 白いとかと感じてもらえるようなものを目指しています。まだ今動き出したばかりなので現物 がないのですが,新聞を見て少しでも FD に興味を持ってもらえたらという目標を持って,今み んなで作っています。以上です。

梅村教育研究所長・教授 ありがとうございます。今年の 2 月 25 日・26 日に追手門学院大学 で全国学生 FD サミットが行われました。感動的なサミットで,たいへん話題になりました。そ のときの記事がたくさん載っています。

さて,それ以外にもわれわれは他大学交流,そしていろいろな大学で行われるこういったフ ォーラムに参加して,学生 FD 活動の伝道に努めています。例えば,今度は 2 月 23・24 日に第 18 回の FD フォーラムが,コンソーシアム京都の主催で開かれます。そちらでもシンポジウム,

しゃべり場が行われます。ぜひともこちらの方もご参加ください。

8.FD 活動は大学をどう変えたか

梅村教育研究所長・教授 今までずっと追手門学院の学生 FD 活動について話してきましたが,

問題は,こうした活動は,実際,追手門学院をどう変えたのかということです。

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山下 そうなのです。ここで紹介し切れなかった活動がほかにもたくさんあるのですが,「そう いった活動を通して学校は良くなったのですか」「どうなったのですか」という質問はよく聞き ます。先生にその課題や成果を聞かせてもらえればと思います。

梅村教育研究所長・教授 課題はたくさんあります。まず,われわれは必死になってやってい ますが,教員・職員はほとんど黙殺です。知らんぷりを決め込む教員が 9 割です。そして時々,

1 割ぐらいの教員が出る杭を打とうとします。「スタンドプレーが過ぎるのではないか」「どう して FD に学生が関わるのか」「FD は教員の専権事項ではないのか」「おこがましいではないか」

ということを言う人がいます。さらには,残念ながらいちゃもんをつける人,陰湿な嫌がらせ をする人がいます。例えば昨年,2012 年度の予算で,われわれは予算ゼロという査定を受けま した。なぜ学長や理事長や副学長はわれわれの成果を認めてくれないのかと,歯噛みして悔し がりました。それから,組織の再編もありました。われわれを教育研究所から切り離して別の 組織に移して,そのまま組織そのものを消滅させようという動きを受けたこともあります。今 われわれは小さな部屋をいただいていますが,そういったスペースを奪い取ろうという力が働 きかけたこともあります。

ほかに,学生同士のさまざまな感情的な桎梏(しっこく)や対立は日常茶飯事でした。決し て仲良く順調に進んできたわけではありませんよね。

山下 そうですね。学生の皆さんだったら分かるかと思うのですが,私たちはいろいろなこと に興味があるではないですか。自分がやりたいと思っていたことと違ったり,自分がこうした いという思いをぶつけ合うことによってお互いが傷付け合って何も進まないとか,そういった ことはよくあったのかなと思います。

梅村教育研究所長・教授 そうですね。それから,学生 FD 活動のいわゆるサステナビリティー ということも問題になりましたね。

山下 そうですね。僕らは合意形成というものがなかなか得意ではなくて,自分はこうしたい という思いが皆それぞれあって,それぞれの方向を向いてしまって,「いやいや,おれはこちら で忙しいから」「いや,私はこれをやっているから」と言って,組織としての行動が成り立たな かったということもありました。

梅村教育研究所長・教授 このような課題をわれわれは今でも抱えていますが,成果が全くな かったかというと,そうではないのです。もちろん,ドラスティックな,劇的な変化というも のはありません。例えば,教員がみんな学生発案型講義に臨むようになったとか,公開授業を すれば教員がわんさと詰めかけるようになったとか,授業のアンケートはほとんど A であると か,そんなことは実はありません。ただ,いろいろな変化が現れてきています。例えば,最近,

大学の執行部や理事会が,学生参画型FD活動の支援に,前向きな姿勢を見せるようになりま した。その一例が,「学習支援・教育開発センター」という組織から「教育開発センター」が分 離・独立したことです。新たな「教育開発センター規定」の中には「学生 FD 活動の支援」とい う文言がきちんと明記されています。われわれの活動は 4 年目にして,やっと大学側に正式に 認知されたのです。また,大学の職員の方も,学生のさまざまな活動に刺激を受けて,学生と 一緒に大学を盛り上げていこうと,「キャンドルナイト」というキャンペーンをしたり,また,

職員としての仕事ぶりをあらためて考え直してみようということで,自己改革シートなどをつ くって研さんに努めたりしていらっしゃる姿も見掛けるようになりました。

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また,大学全体で学生を支援しよう,または良い活動をしている学生を表彰しよう,また,

学生に大学の運営やさまざまな企画を任せてやらせてみようといったことが,続々と生まれて きています。いちいち説明する時間がなくて残念です。

「ウツトーク」とは何ですか。山下君。

山下 こういった活動をさせてもらっている中で教職員の方たちと懇意にさせていただくよう になって,そこから大阪市の受託事業でこういうコンペがあると職員さんから教えていただき まして,その職員さんや教員の方を巻き込んで,一緒に大阪市の方で人権事業をさせてもらっ た,それが大阪市営地下鉄の駅構内に張られたという写真です。

梅村教育研究所長・教授 こういった学生参画型のイベントが,次から次に学内に生まれるよ うになってまいりました。これは,学生 FD 活動を契機として変わったことです。

さらに最近,学内の合意形成の手続き,いわゆる会議体の在り方が変わってまいりました。

以前は,議長と称する偉い人が会議を仕切って,連絡や報告を聞いていたという無味乾燥な会 議が行われていましたが,最近はこのようにグループディスカッションの形式を取って,ある テーマについて話し合ったりします。理事や学生,高校生,教員,職員,5 人のメンバーが一 つのテーブルを囲んである議論をしたり,この間はアグネス・チャンというタレントさんを呼 んで高校生とグループディスカッションをしたり,また夏休みの夏期執行部研修会という事務 員の研修会でも,学生 FD 活動のしゃべり場をまねたグループディスカッションが行われるよう になってまいりました。会議体の変化も非常に大きな変化だったと思います。

そのほか,山下君,ゼミナールが活性化したという声も聞きますね。

山下 そうですね。ゼミの活性化の話をよく聞くのですが,こういった場で教職員の方々と話 している学生さんたちが,自分のゼミに帰ってゼミをもっと活性化させたい,または演習の授 業でもっと周りの学生の声を聞きたいと言って,自らが周りの学生さんたちに問い掛けをする とか,先生に近寄っていって「先生,こういうところについてもっと聞きたいです」と言った りと,先生または職員さんとの壁が少しなくなってきたのではないかなという感じはします。

梅村教育研究所長・教授 そうですか。このように,学生 FD 活動が少しずつ学内に成果をもた らしつつあるのも事実だと思っています。

9.個人の FD 活動と卒業後の進路

梅村教育研究所長・教授 さて,あと残り 3 分ぐらいしかないのですが,率直な質問をしてい いですか。学生 FD 活動は,山下君個人をどう変えたでしょう。

山下 僕自身変わったなと思ったのが,昔は超まじめなと言えるぐらい,一人でぽつんと前に 座って先生と一対一の感覚を味わって授業を受けている学生だったのです。それも悪くはない と思っていたのですが,そういう考え方以外の,もう少し多面的な考え方ができるようになっ たのではないかと思います。昔は,それこそ先生がやっていることがすべてで,教科書を読め ばいいのだ,点数が高ければいいのだという考え方を持っていたのですが,そうではないのだ と。授業にもいろいろなやり方がある,いろいろな考え方がある,もしくは周りの人もいっぱ いいろいろなことを考えている,そういう考えに触れることこそ,僕の中での学びになるので はないかと思うようになったということがまず一つです。もう一つ,周りにいる人はみんな敵 ではないのだと思うようになったことが,僕の中では今一番残っています。皆さんそれぞれに

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「こうしたい」「ああしたい」という思いはある。まだ手を組めていないだけなのだろう。同じ 心がある人と一緒に何か活動すると,もっと大きなことができるのではないか,大学をより良 くできるのではないかと思ったことが,一番心に残っています。

梅村教育研究所長・教授 追手門学院という学校は,決して偏差値が高い学校ではありません。

ですから,不本意入学やいわゆる偶然入学で入ってしまった,全く追手門に帰属意識を持たな いような学生も多いのです。しかし,山下君のような逸材以外にも,学生 FD 活動を通して積極 的に学びたいと思う,前のめりになって知りたいと思う,自立したいと思う,成長したいと思 う学生が増えてきたように私は思います。

ところで山下君,あなたは今,何回生ですか。

山下 今,大学 4 年です。

梅村教育研究所長・教授 そろそろ卒業ですね。

山下 そうなのです。もう卒業の時期が近づいています。

梅村教育研究所長・教授 ですね。やはり卒業しますか。

山下 何とか卒業させてもらいます。

梅村教育研究所長・教授 来年はどうするのですか。

山下 来年は,こういう活動を通して築いた,周りの人とつながるということを通して,学生 FD は大学がより良くなるという活動だと思うのですが,社会でも同じような問題・課題がある だろう,会社に入っても同じような問題・課題があるだろう。それを批判するだけではなくて,

自分たちが協力し合うことで解決していく。少子高齢化,教育,経済という問題,さまざまな 社会問題があると思うのですが,こういったものを例えば産官学であったり同じ企業のメンバ ーと一緒に解決できるように,一生教育改善というものに携わっていければと思っています。

梅村教育研究所長・教授 それは具体的にどんな仕事ですか。

山下 具体的には,今回「ウツトーク」という事業を提案させてもらったのですが,僕自身が 心の問題というものを解決したいなと考えています。ただ,心の問題というのは,自分たちが

「頑張りなさい」と言って心の問題を抱えている方に押し付けても良くならないので,例えば 家庭,社会,会社で,皆さん理解していきましょう,そういった方と手を取り合って皆が生き やすいようにしていきましょう。心の問題を抱えた人だけではなくて,心の問題を抱えそうな 方々,もしくはその子供たちに対して自分たちは何をしていくのか。そういうことを事業とし て起こしていけたらと考えています。

梅村教育研究所長・教授 なるほど。なかなか一筋縄ではいかない社会人になりそうですね。

山下 そうですね。今回は,対談形式でこれまでの経験を振り返って皆さんにお話しさせてい ただきました。学生 FD の役割として,先ほどお話しさせてもらった橋渡しということはずっと

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変わっていないのですが,なぜ学生 FD が要るのかというと,それは大学のある意味での死角と 呼ばれるもの,目に見えない問題を,学生目線からあぶりだすためではないかと思うのです。

そして,学生だけでは決して解決できない,教員の方もずっと悩んでおられたり,職員の方の こうしたいという思いを,この学生 FD が摘むことができるのではないかなと。学生だけでは駄 目です。また,教員の方だけ,職員の方だけという問題ではなく,皆さんの力をお借りして,

多面的に教育改善に取り組もうということを目指した活動なのです。ただ,僕はこの 4 年でも う卒業してしまうので,最後に後輩にどうしていきたいのかを聞いて,この会を閉めたいと思 います。

では,振ります。

10.今後の FD 活動

田崎 先輩たちが橋渡しをしてくれたので,私たち追大学生 FD は,すごく活動しやすくなりま した。しかし,まだ追大学内の学生に対してすごく認知度が低くて,「FD って何?」と結構聞 かれるのです。私は追大の学生 FD スタッフですから,やはり追大の学生には知ってもらいたい という思いがすごくあります。それで,追大の学生 FD に入っていなくても何らかの形で参加し てほしいということで,先ほど森田君が BTA と言っていたアンケートを考えました。FD を知ら ないと「面倒くさいし,答えなくてもいいかな」と思っても,FD を知ってもらえれば,「FD が やっているのか。ではちょっと答えてみようかな」となると思うのです。そうしてどんな形で もいいから学生 FD に関わってもらえるようになれば,きらきらした学生,自分の意思で何かや りたいとか,やろうと思える学生が増えていくのではないかと思っています。それを目標にみ んなでこれから活動していきたいと思って,今,頑張っています。

山下 皆さん,目標は同じだと思うのです。大学の壁を超えて一緒に協働できればと考えてい ます。これからも追手門学院大学をどうぞよろしくお願いします。

梅村教育研究所長・教授 よろしくお願いします。今日はご清聴ありがとうございました。

山下 ありがとうございました(拍手)。

林特任准教授 ありがとうございました。本当に非常に多様な活動をしているということが分 かりましたし,学生さんも非常に生き生きとされています。この後のグループワークに入るの に,非常にいい言葉がいろいろあったかなと思います。多様な方がいて,その価値観の違いを 超えて橋渡しをしていく。それから,大学教育にも死角がある。だから多様な方々でそこを盛 り上げていく。まさに今回は多様な層が集まって議論しますので,その死角を攻めていくとい うふうに,この後のグループワークにつながるのではないかと思います。本当にありがとうご ざいました。

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