︿研究ノート﹀
生活困窮外国人の実態と救済措置
高橋保尾崎毅(東京経済大学大学院博士後期課程)
目次
一︑
二︑
三︑
四︑ 研究の対象
生活困窮外国人の実態
生活困窮外国人の救済措置
今後の課題
85
86
︑研究の対象
経済の国際化にともない︑わが国では︑在日外国人が急激に増加している︒ところが︑わが国における外国人に対
する差別意識や法制上の不備などもあり︑生活に困窮する外国人の救済をめぐって大きな社会問題が惹起している・
そこで︑われわれは︑生活に困窮する外国人の実態を明らかにし︑実際に︑彼らはいかなる程度において行政上救
済されているかについて調査してみた︒
本調査にあたって︑法務︑外務︑労働︑厚生の各所轄庁の担当官にご協力いただき︑心から謝意を述べておきたい︒
二︑生活困窮外国人の実態
現在︑わが国には︑﹁永住者﹂としての在留資格をもって居住している者から観光ビザでの滞在者および不法残留
者まで︑さまざまな外国人が居住あるいは滞在している︒平成六年末現在の外国人藁者総数は・過去最高の三二
五四︑○=人である(表一︑二参照)︒これは︑わが国の総人口一二五︑〇三四︑○○○人の一・〇八%に当たる︒
このうち﹁永住者﹂は︑六三一︑五五四人で︑そのなかの﹁特別永住者﹂は︑五七八︑六八七人である(表三参照)︒
その国籍(出身地)別内訳は︑韓国.朝鮮五七三︑四八五人︑中国四︑七九八人︑その他四〇四人である(表四参照)︒
また︑コ般永住者﹂は︑五二︑八六七人で︑その国籍(出身地)別内訳は︑中国二二︑五八三人︑韓国・朝鮮一四︑
九五四人︑その他一五︑三三〇人である︒このほか︑﹁永住者﹂以外の在留資格で入国した者の総数は︑平成六年現
在で三︑〇九一︑五八一人となっている︒その内訳は︑表五のとおりである︒さらに︑いまもっとも問題になってい
78二表
1400
1200 1100 1000 900 800 700 600 500
生 活 困窮 外 国 人 の実 態 と救 済 措 置
外 国人 登録 者総 数 の推 移
外国人登録者数
表 一 外 国人登 録 者総 数 の推 移 (各年末)
一 人
4。 ヰ.凋 一一r‑4‑‑
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1■
年 総 数
対 前 回 増 減 率
C%)
我 が 国 の 総 人 口 に 占め る割 合(%)
昭和六三年 941,005 6.4 0.77 平成 元年 984,455 4.6 0.80 平成二年 1,075,317 9.2 0.87 平成三年 1,218,891 13.4 0.98 平成 四年 1,281,644 5.1 1.03 平成 五年 1,320,748 3.1 1.06
⊥.L一 上 一]‑
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上 一L」 一⊥ 一ニー
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平成六年 1,354,011 2.5 1.08
備 考:本 表 は 法 務 省 入 国管 理 局 「平 成6年 末 現 在 に お け る外 国人 登録 者 統 計 」 を も
ンド作 虚1ナ 〜亡ので ゑ 濫
外6年末る5年ナ4年お3年こ2年在平成元年現
63年末62年61年60年59年58年57年56年55年54年53年52年51年50年
49年 年6成平﹁局﹂理計管統国者入録省登務人法国
典出
と に作 成 した も ので あ る。
表三 永住者数の推移 (各年 末)
年 在留資格
1 平 成5年
(1993)
増 減比 (%)
平 成6年 (1994)
増 減 比 C%)
対前年度 増減率
(%) 平 成2年
(199a>
増 減 比 (%)
平 成4年 (1992)
増 減 比 (%)
1
「
永 住 者 645,438 ・11 635,422 49.6 631,812 ・ 631,554 46.6 一 〇 .04
301,761 28.1 45,229 3.5 48,019 3.S 52,867 3.9 10.1 特
別 永住 者
590,193 46.1 583,793 44.2 578,687 42.7 1'
協 定 永 住 323,197 3a.o
1法126‑2‑6 18,328 1.7
国籍 離 脱 者 の子 2,152 0.2
非 永 住 者 429,879 40.0 646,222 50.4 ・::・ ・ 52.2 722,457 53.4 4.9 外 国人 登録 者 総 数 1,075,317 100.0 1,281,644 loo.a 1,320,748 100.0 1,354,011 ioo.a 2.5 出典:法 務 省 入 国管 理 局 「平 成6年 末 現 在 に お け る外 国 人 登 録 者 統 計 」
表 四 永 住者 の 国i籍(出 身地)別 内訳
(各年末)
年 国籍(出 身地)
平成 五年 増減 比(%) 平 成 六年 増減比(%) 対前年末 増減率(%)
永 住 者 63i,8i2 goo.a 631,554 laa.o 一 〇.04
韓 国 ・ 朝 鮮 592,471 93.8 5$$,439 93.2 一 〇.7
1特 別 永 住 者 578,741 91.6 573,485 ・1 1・
1卜 般 永 住 者 13,730 2.2 14,954 2.4 8.9
il中 国 26,065 4.1 27,381 4.3 5.0
1蒔 別 永 住 者 4,769 0.75 4,798 0.76 a.s
l
i一 般 永 住 者 21,296 3.4 22,583 3.6 6.0
ト
1そ の 他
}
13,276 2.ユ 15,734 2.5 18.5
1;特 別 永 住 者 283 0.04 404 !1・ 42.8
臼 一 般 永 住 者 12,993 2.1 15,330 2.4 18.0 備 考:本 表 は,法 務 省 入 国管 理 局 「平 成 六 年 末 現在 に お け る外 国 人 登
録 者統 計」 を も と に作 成 した も ので あ る。
る不法残留者の総数は︑平成六年=月一日現在で二八八︑
〇九二人であり︑その国籍(出身地)別内訳は︑表六のよ
うになっている︒表を見るといわゆる三ユーカ脆﹂の
数が非常に多いことがわかる︒
表五 在 留資格(入 国 目的)別 外 国人新 規 入国者数
(平成六年)
外 交
公 用
20,156
教 授
1,187
芸 術
86
宗 教
1,627
報 道
246
投 資
経 営
1,042
法 律
会計 業務 5
医 療
3
研 究
862
教 育
2,506
技 術
3,194
人 文 知 識 国 際 業 務
5,198 企 業 内 転 勤
3,076
興 業
90,562
技 能
2,071
文 化 活 動 3,907
短 期
観 光
1,657,527
商 用
939,865
滞 在
留 学
10,337
就 学
11,947 文 化 ・学 術 活 動
11:
親 族 訪 問 132,227
そ の 他 41,493
小 計
2,854,120
研 修
36,612
家 族 滞 在 14,309
特 定 活 動
日 本 人 の 配 偶 者 等 8,156 ワーキ ングホ リデイ
3,464
そ の 他 665
小 計
41,291
永 住者 の 配偶 者等 254
定 住 者 5,989
総 計
3,091,581
備 考:本 表 は、 法 務 省 入 国管 理 局 登 録 課 作 成 の 「国籍(出 身 地)別 在 留 資 格(入 国 目的)別 外 国人 新 規 入 国 者 数(平 成6年)」 を基 に筆 者 が 作 成 した も の で あ る。
生 活 困 窮外 国人 の 実態 と救 済措 置 89
表六 国籍(出 身地)別 性 別 不 法残 留 者 数
(平成六年)
タ イ
46,964
韓 国
44,916
中 国
39,552
フ ィ リ ピ ン 38,325
イ ラ ン 18,009
マ レ ー シ ア 17,240
男
1
21,059 20,501 26,598 15,997 17,469 10,975
女 25,905 24,415 12,954 22,328 540 6,265
ペ ル ー 14,312
台 湾
7,906
バ ング ラデ ィシ ュ 7,295
パ キ ス タ ン 6,517
ミ ャ ン マ ー 6,335
そ の 他 40,721
男 9,474 4,017 7,129 6,325 4,590 28,382
女 4,838 3,889 166 192 1,745 12,339
総 計288,092
備 考:本 表 は 、 法 務 省 入 国 管 理 局 登 録 課 作 成 の 「国籍(出 身地)別 性 別 不 法 残 留 者 数 の推 移 」 を も と に作 成 した もの で あ る。
さて︑不法就労者の就労実態を次頁の三つの円グラフで見ることに
豪・
まず︑不法就労者全体をみると︑建設作業員が︑一五︑八六九人
(二六.七%)でもっとも多く︑つぎが生産工程作業者(以下︑工員
という︒)で︑二二︑七九三人(二三・二%)︑つづいてホステス・ホ
ストが︑七︑八五八人(=二・二%)となっている︒工員を細分化す
ると︑﹁金属加工﹂が︑三︑三九六人(工員全体の二四・六%)でもっ
とも多く︑つぎが﹁飲食料品製造﹂で︑二︑二六〇人(工員全体の一
六.四%)︑つづいて﹁ゴム・プラスチック加工﹂が︑一︑六三二人
(工員全体の=・八%)となって帳都・
つぎに男性についてみると︑ここでも建設作業員が一五︑六九一人
(男性の三九.二%)でもっとも多い︒つぎが工員で︑一〇︑六五四
人(男性の二六.六%)︑つづいて建設作業︑電気作業︑運搬労務を
除いた労務作業者が︑三六五六人(男性の九・一%)などの順となっ
ている︒
最後に女性についてみると︑スナックなどで働くホステスが︑七︑
四=二人(女性の三八・四%)でもっとも多い︒つぎが工員で︑三︑
=二九人(女性の一六・二%)︑つづいてウェイトレスが︑二︑二四
二人(女性の一一・六%)︑売春婦が︑一︑一七六人(女性の六・︼
90
《不法就 労外 国人の就労実態》
① 就労 内容別構成 ・全体
圏 繋 騰 .7%
② 就 労 内容 別 構成 ・男性
③ 就 労 内容 別構 成 ・女 性
%毒 ,793:晶.2%
7,858:13.2%ス
...者
國 謡':レ 識 一テン
1≡ 繋 翫編 .2%
」/10 ,654:26.6%
講 黎 鱗 騰 者 圏 ノ1蕊脳 .7%
Np」
1,787:4.5%
圏 幅 論4%
囮 モ ,139、A16.2%
園 ち漉1論%
㎜ 冊,5鶏:7.9%
懸 蓉,1喬,6,1%
2,9多:4.9%
國 哩,4罷:4.1%
國 釜 鯉 蒲 業
口6 ,、鐡:鮨.4%
合 計59,352人
皿 冊,4鶴.5%
園 雪懲 麟 業
■ 運養銘稗 .2%
3,438:
合 計
他 8.6%
40,029人
騨 そ鵯 学弩騰 者
圏 そ687:3 .6%業
醗 調625:3 .2%
口1 ,71.0:"fV8.8%
合 計19,323人 備 考:こ れ らの グラ フ の不 法就 労 者 数 は 、 法 務 省 入 国管 理 局 が実 際 に不 法就 労 者 を確 認 した 者
の数 で あ る。 そ の た め 、 労働 省 発 表 の 不 法 就 労 者 数 と は異 なる。 な お 、 グ ラ フ は、 法 務 省 入 国管 理 局 「平成6年 にお け る入 管 法 違 反 事 件 にっ い て 」 か らの 引 用 で あ る。
生活 困窮 外 国人 の実 態 と救 済 措 置 91
%)の順になっている︒
これらの人々のなかには︑本国の家族へ収入のほとんどを送金してしまうため︑極度に切り詰めた生活をしており︑
非常時に備えて貯えをする余裕などもともとない者も多く蒙・すなわち・経済的予備力がない者が多いということ
である︒
たとえば︑フィリピン国籍の二七歳(当時)の女性の例がある︒
彼女は︑日本上陸後何ヵ所かで働いたあとある日本人男性に引き取られた︒そして︑彼の当時高校生であった娘と
同居させられ同女の世話をさせられながら︑夜はバーのホステスとして働かされた︒バーの給料は︑月額一六八︑○
○○円であった︒そのなかから家賃五〇︑○○○円︑食費三〇︑○○○円︑その他の費用五〇︑○○○円の計=二〇︑
○○○円を生活費(このほとんどは︑日本人男性の娘を養うための費用であった・)として費やして匙・彼女は・
残ったわずか三〇︑○○○円程度の金をすべて本国へ送金していたのでみ都︒
不法就労者のなかには︑このように日本人に搾取されたうえ︑さらに︑残った金を本国の家族のために送金してし
まうため経済的予備力がない者が多い︒
しかしながら︑不法就労者でもいい生活をしている者がいることも事実である︒
たとえば︑バングラデシュ国籍の二七歳(当時)の男性の例がある︒
彼は︑観光ビザで入国し二年二ヵ月滞在した︒来日費用の六〇〇︑○○○円(チケット代二三〇︑○○○円︑見せ
金三七〇︑○○○円)のうち五五〇︑○○○円を借金していた︒
来日後︑彼は︑東京の革製品加工会社で一〇ヵ月︑群馬の自動車部品製造会社で五ヵ月働いた︒東京の会社では︑
日給六︑○○○円であった︒群馬の会社では︑時給六八八円であった︒生活費は︑アパート代一ヵ月一五︑○○○円︑
およびその他の費用を入れて一ヵ月約五〇︑○○○〜六〇︑○○○円であった︒
92
本国への送金は︑毎年四〇〇︑○○○円(一ヵ月当約三三︑○○○円)ずつ行なった︒さらに︑帰国時には︑三〇
(10)○︑○○○円をもち帰った︒単純計算しても︑税金が差し引かれる前の総収入から時間外手当などの諸手当を除いた
額から生活費および本国への送金額を差し引いた後に一ヵ月平均四〇︑○○○円程度が彼の手元に残ったことになる︒
このような余裕のある生活をしている不法就労者も存在するのである︒
けれども︑わが国には︑さきのフィリピン国籍の女性のような経済的予備力をもたない不法就労者が非常に多く存
在するという事実も決して忘れてはならない︒
彼らは︑不法就労が発覚することを恐れ︑健康保険の強制適用事業所で雇用されていても加入手続きをしないので
ある︒また︑雇用主も﹁出入国管理及び難民認定法﹂(昭和二六年一〇月四日政令第三一九号)(以下︑﹁入管法﹂
という︒)第七三条の二に規定されている■不法就労活動﹂をさせていることが発覚し罰せられることを恐れ︑加入
手続きをさせないのである︒さらに︑国民健康保険についても︑不法残留となっている者は︑保険加入の前提条件で
ある外国人登録を行なうと不法残留が発覚し強制退去処分になる恐れがあるため︑外国人登録を行なわず保険加入で
(11)きないのである︒そのため︑彼らには︑健康保険および国民健康保険の適用がない︒そのうえ不法残留者には︑﹁社
(12)会福祉事業法﹂(昭和二六年三月二九日法律第四五号)にもとつく﹁無料低額診療制度﹂の適用も原則的にはない
のである︒
たとえば︑あるマレーシア国籍の男性不法就労者の例がある︒
彼は︑日本で病気に罹った際︑治療は受けることができたものの︑高額の医療費を支払えないことが分かっていた
ため︑何度も自ら点滴を外すなどし︑安心して治療を受けられなかった︒
彼は︑﹁日本の法に背いて滞在していたのだから確かに悪い︒でも︑マレーシアでは︑たとえ不法就労の外国人で
も︑一マレーシアドル(彼が日本に滞在していた当時のレートで三〇〜四〇円)を支払えば公立病院が救済してくれ