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科目間の連携を考慮したカリキュラムの可視化システム

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Academic year: 2021

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科目間の連携を考慮したカリキュラムの可視化システム

A Visualization System of University Curriculum Emphasizing Relationship between Subjects

情報工学専攻 益子 英俊

Hidetoshi Mashiko

概要

大学で提供されるシラバスでは,カリキュラムにお ける科目間の関連性を読み取ることは困難である.ま た,科目流れ図ではカリキュラムが一括表示されてい るため,個々の科目間の関係が読み取りにくく,また詳 細情報を同時に得ることはできない.本論文では,個々 の科目のカリキュラムにおける位置づけ,さらに,科 目間の関係とその詳細情報を同時に表示するシステム を提案した.

1 序論

現在,多くの大学でシラバスが導入されている.学 生は,シラバスから講義内容,講義計画,評価方法な どの情報を取得し,事前に履修計画を立てる.しかし,

一般にシラバスでは各科目自身に関しての詳細情報を 把握できるが,全体として特定の科目間に存在する相 互関係の把握は難しいことが多い.参考として,2 元の科目流れ図もあるが,科目情報とは別の場所

(ペー

ジ)に記載されていることが多く,読み取りにくい.

本論文では,大学のカリキュラムにおける各科目の 関連性を明示することによって,学生が効率的に学習 するための履修計画の支援を目的とする.そこで,専門 分野の学習の見通しを立てやすくするために,科目間 の連携を示しつつ,それがカリキュラムの履修の流れ の中でどの位置にあるのかを

3

次元空間中に可視化し,

さらにその詳細情報を表示するシステムを提案する.

提案手法では,シラバスから作成した

CSV

データを 元に全ての科目に色と形状を与え,円錐面上に配置す る.このときに,関連のある科目同士を近い位置に再 配置し,その科目同士を直線で繋ぐことで関連性を表 現する.また,履修時期別に表示領域を指定すること によって,関連のある科目の履修の流れをより容易に 把握できる.そして,ユーザの対話操作に基づき,視 点の変更や特定の科目の詳細情報を表示する.

2 既存手法

これまでに,カリキュラムを扱った可視化の研究は 幾つか発表されている.まず,シラバスの記述内容か ら専門用語を抽出し,分析することによって,カリキュ ラムの特徴把握を促進するシステムの研究

[1]

がある.

これは,カリキュラム設計やカリキュラムの特徴を評 価する際に有用である.また,カリキュラムの科目選 択支援の研究として,オンラインシラバスから重要な 言葉を抽出して,科目間の関係や各科目の属性を可視 化する研究

[2]

や,類似の要素を用いてカリキュラムの 特徴を構造化し,その構造を可視化した東京大学にお

ける工学教育プロジェクト

[3]

などがある.このうち,

工学教育プロジェクトでは,科目の文章データを解析 することによって,構造化,体系化を行い,構造に基 づく可視化を行っている.また,東京電機大学情報環 境学部では,ダイナミックシラバス

[4]

という時間割 の作成を支援するシステムを開発した.しかし,研究

[2][3]

では,科目間の関係を知ることはできるが,同時

に,その科目がカリキュラム全体の履修の流れの中で どの位置にあるのかを把握することはできない.また,

[4]

では,履修したい科目を選択することで,時間割の 重複などを確認できるが,科目間の関係を知ることは できない.

3 提案手法

3.1

実現すべき機能

カリキュラムを見る理由として,全科目の接続関係 またはユーザが指定する科目との接続関係の確認が主 であると想定する.このため,全体表示と局所表示の 容易な切り替え,ならびに,視点移動,特定部分の拡 大縮小機能を必要とする.また,科目の種類や開講期 などの基本情報と科目同士の接続関係は一目で理解で きる必要がある.さらに,必要に応じて指定科目の詳 細を閲覧できなければならない.

これらを実現するために,科目を

3

次元空間内に配 置し,連携する科目を直線で繋ぐ.そして,それぞれ の科目の場所に科目名を表示することにより,科目の 名称を把握できる.さらに,ユーザ入力で全体表示と 局所表示を切り替えて,視点を選ぶことができる.ま た,特定の科目を選択することにより,その科目に連 携している科目のみを表示できる.

3.2

科目情報

以下の科目情報がシラバスから読み取り可能だと想 定する.

科目

ID

単位種別

履修年次

(1〜4

年次)

単位数

履修期

(1:合同前期,2:合同後期,3:単独前期,4:

単独後期,5:通年)

前期後期関連科目

ID

科目名

前提項目

(複数)

修得項目

(複数)

(2)

なお,同じ科目で履修が前後期に分かれている科目が ある場合,それぞれ合同前期科目,合同後期科目とす る.また,対応する合同科目同士に共通の前期後期関 連科目

ID

を与える.

3.3

表示方法

ここで描画空間内において,xz平面を水平面,y 方向を鉛直方向とする.このとき,上方視点と中心軸 視点という

2

つの初期視点を用意し,視野角を

に設

定する

(図 1).上方視点は y

座標が正の場所から水平

面に視線を向けて表示する視点,中心軸視点は

y

軸上 に視点を置き,視線を水平面に平行に回転させて周り を表示させる視点とする.また,それぞれの視点のと きに科目同士が重って見えることがないように,科目 を放物面上に配置する.早期に履修する科目ほど半径 の小さい円上に,そして低く配置されるように,基準 となる放物面を頂点が下になるように配置する.この 結果,上方視点の場合には,全体の様子を一覧表示し

(図 2),中心軸視点の場合には,特定の科目と関係が深

い科目群を重ねずに表示する

(図 3).

各科目の特徴を識別するため,入力情報を元に色,形 を決定する.1年次履修科目を青色,2年次履修科目を 緑色,3年次履修科目をピンク色,4年次履修科目をオ レンジ色とする.4単位の必修科目を三角錐体,4単位 の選択科目を五角錐体,2単位の必修科目を球体,2 位の選択科目を立方体とする.また,履修期が半期の 科目と通年の科目の識別は,色の明暗によって表現し,

通年科目は半期科目よりも明るく表示する.また,履修 年次が異なる連携科目を繋ぐ直線を黄色,履修年次が 同一の連携科目を繋ぐ直線を灰色で表示する.さらに,

前提項目,修得項目から,履修順序が逆の場合,当該 科目同士を繋ぐ直線を点滅表示し,注意喚起する.加 えて,上方視点のときに,各年次の科目名を前期と後 期で時間差を与えて表示することで,科目名が重なる ことを回避する.

1

視野角と逆円錐

2

上方視点 

3

中心軸視点

4

連携科目探索

3.4

配置手順

CSV

ファイルから科目データを取得し,手順に従っ て科目を配置する.

履修年次を

grade,履修期を term

とする.取得した 科目数を

n

とし,それぞれの科目を

S i

とする

(1

i

n).S k

の修得項目と

S l

の前提項目が一致する場合,2 つの科目を連携科目とし,その一致項目数を

I (k,l)

とす る.S

i

の修得項目と一致する前提項目を持つ科目を

S l

S l

の修得項目と一致する前提項目を持つ科目を

S m

いうように,連携科目を図

4

のように辿っていったと き,S

i

の連携科目の総数を総連携科目数

s i

とする.s

i

には,図

4

S k

のような

S i

から見た下位層も含まれ る.科目

S i

の配置場所の

xz

平面への正射影の座標が

x

軸とのなす角を配置角

θ i

とする.

Step1:

履修年次,履修期により円錐の中心軸からの

距離

R (grade,term)

,放物面の頂点を含む水平面か

らの高さ

H (grade,term)

を決定する.図

2,図 3

ように配置するために,

R (1,1)

R (1,2)

R (2,1)

R (2,2)

R (3,1)

R (3,2)

R (4,1)

R (4,2) (1) H (1,1)

H (1,2)

H (2,1)

H (2,2)

H (3,1)

H (3,2)

H (4,1)

H (4,2) (2)

とする.ただし,同じ履修年次において,合同前 期,単独前期,通年科目の3つと合同後期,単独後 期の2つがそれぞれ同心円上に配置されるように,

R (grade,1) = R (grade,3) = R (grade,5) (3)

R (grade,2) = R (grade,4) (4)

H (grade,1) = H (grade,3) = H (grade,5) (5)

H (grade,2) = H (grade,4) (6)

とする.

まず,上方視点の視野角

を用いて,描画領域内

1

年次前期科目から

4

年次後期科目までが入る ように,R

(4,2)

を視野内に表示されるように設定 する

(図 1).次に,R (4,2)

を用いて,

R (1,2) = R (4,2) × 1

4 (7)

R (2,2) = R (4,2) × 2

4 (8)

R (3,2) = R (4,2) × 3

4 (9)

R (1,1) = R (1,2) R (1,2) × 1

3 (10)

R (2,1) = R (2,2) R (1,2) × 1

3 (11)

R (3,1) = R (3,2) R (1,2) × 1

3 (12)

R (4,1) = R (4,2) R (1,2) × 1

3 (13)

とそれぞれ設定する.次に,中心軸視点の視野角

を用いて,描画領域内に

1

年次前期科目から

4

年次 後期科目までが入るように高さを設定する

(図 1).

その他の履修期の科目に関しては,放物面上に配 置されるように,R

(grade,term)

から式

(14)

を用い て高さを決定する

の値は

H (1,term)

,H

(4,term)

(3)

により決定).

H (grade,term) = 1

α × R 2 (grade,term) (14)

Step2

全ての科目について,I

(k,l)

を計算する

(1

k

n,1

l

n).

Step3:

総連携科目数の多い科目同士は共通の連携科 目を持つ可能性が高いと想定して,まず

1

年次の 科目で

term

2

である科目を,総連携科目数の 多い順に等角度で円周上に配置する.term

= 1

科目は,対応する合同後期科目と同じ角度を取る.

例えば,対象科目が

8

科目のときは,k番目の科 目の配置角は

(k 1) 8

とする

(図 5).

Step4 : 2

年次履修科目に関して,連携する

1

年次履修 科目の配置角の平均値を取得し,自身の配置角とす る.例えば,

S i

S a

S b

S c

と連携しているとき,

それぞれの配置角から

S i

の配置角を

θ i = θ

a

3

b

c

とする

(図 6).後期科目は,同年次の前期履修科

目も対象にする.

同様に

3

年次,4年次履修科目に関して,前年履 修科目の配置角の平均値を取得し,自身の配置角 とする.

5 1

年次科目配置

6 2

年次以降配置角決定

Step5 : 2

年次,3年次履修科目に関して,連携科目全 ての配置角の平均値を取得し,自身の配置角とす る.これにより,全ての連携科目を考慮したとき に,より連携しやすい位置に配置される.

Step6: 2

年次,3年次,4年次履修科目に関して,履 修年次,履修期ごとに科目同士が一定の角度を保 つように配置角を修正する.すなわち科目名が重 ならないように,2年次,3年次,4年次履修科目 の間隔角度をそれぞれ

6 × 360

,7

× 360

,8

× 360

とする.これにより,配置角が接近し,科目と科 目名が重なって見えることを回避できる.

Step7:

単位種別,履修年次,単位数により科目に形 と色を設定し,空間内に描画する.

Step8

連携科目同士を直線で繋ぐ

(3.3

参照).S

k

S l

を繋ぐ直線の太さを

I (k,l) × 1 2

とすることによ り,連携項目数の多い科目同士ほど直線が太くな り,強い関係を表す.

3.5

操作機能

7

のようなボタン操作画面を作成し,描画領域内 の視点移動と合わせてユーザが自由に操作できる.視 点切替はキー操作により行い,その後の視点移動,拡 大/縮小はマウス操作で行う.また,選択した科目はわ かりやすいように点滅表示する.選択した科目の連携 科目以外は色を暗くして注目部をわかりやすくする.

7

ボタン操作画面

3.6

特徴

放物面上に配置し,履修年次,履修期ごとに配置半 径,頂点からの高さを変えることで,各科目の履修時 期がわかり,履修の流れを理解しやすい.これにより,

特定の科目を履修するとどのような分野へ繋がるのか,

特定の科目を履修し十分に理解をするためにはどのよ うな科目を履修することが望ましいのか,など履修計 画を補助できる.また,選択した科目の詳細情報を表 示することで,どのような分野の学習をするのかを知 ることができる.さらに,選択した科目を点滅させる ことにより画面上で自分がどの科目を選択中か確認で きる.選択科目の連携科目以外の色を暗くすることで,

連携科目群が明確になる.

4 シミュレーション

中央大学理工学部情報工学科の

2007

年度履修要項 を元に

CSV

データを作成し実装した.可視化には

OpenGL

を利用し,動作環境を表

1

に,処理時間を表

2

に示す.

1

動作環境

OS WindowsXP

CPU Intel Core2Duo 2.00GHz

Memory 2GB

GPU NVIDIA GeForce Go 7600

解像度

1680 × 1050

2

処理時間 初期配置時間

[ms] 1796

科目選択処理時間

[ms] 8

既存手法

[3]

とは異なり,ユーザ入力では科目の配置 場所を変更できないが,連携科目と履修年次,履修期 の同時表現により,履修の流れの中での科目の位置づ けをより明確に理解することができた.

実際にシラバスを読み,履修計画を立てたことのあ る大学生

23

人から評価を得た.アンケート項目と結果 を表

3

に示す.ここでアンケート評価の最高点は「5」

である.良好な評価として,「選択した科目からの繋が りが瞬時にわかるのが良い」,「詳細表示と合わせると 科目の特徴がわかりやすい」などのコメントがあった.

ただし,「上方視点で全体表示のときに科目名が密集し ていて少し見にくかった」という指摘もあった.全体 表示の場合にも科目名を重ねずに表示するために,文 字の密集する角度

π 2

2

付近の科目名表示に工夫が必 要である.

(4)

3

アンケート評価

アンケート項目 評価点

5 4 3 2 1

総合的な見やすさ

8 14 1 0 0

前期・後期を把握しやすいか

19 4 0 0 0

学年を把握しやすいか

19 4 0 0 0

科目名の表示は見やすいか

7 14 2 0 0

連携科目群がわかりやすいか

19 4 0 0 0

科目情報はわかりやすいか

17 6 0 0 0

操作のしやすさ

11 11 1 0 0

処理時間

23 0 0 0 0

5 結論

本論文では,大学の教育課程における科目同士の連 携に重点を置き,その関係をわかりやすく表示する手 法を提案した.指定した科目の詳細情報を表示し,その 科目からの連携科目をリアルタイムに表示できる.そ れにより,ユーザがどのように履修決定をすれば,専 門知識のより効率的な修得が望めるかをユーザが理解 する一助となる.

今後,評価の中で指摘のあった,全体表示のときの 科目名の重なりをさらに緩和するための改良が必要で ある.また,画面上で科目の配置場所をユーザが移動 できるようにし,ユーザの見やすい配置への再配置を 可能にすることが必要である.

参考文献

[1]

野沢,井田,芳鐘,宮崎,喜多, シラバスの文書 クラスタリングに基づくカリキュラム分析システ ムの構築 ,情報処理学会論文誌,Vol.46,No.1,

pp.289-300,2005.

[2]

森,由谷,喜多, 大学教養教育における科目選択支 援 ,第

6

AI

若手の集い

(MYCOM2006), pp.86- 89, 2006.

[3]

大場,「工学知の構造化と可視化」の試み−工学教 育に向けて− ,東京大学大学院工学系研究科,大 学評価・学位研究第

1

号,pp.99-109,2005.

[4]

土肥,中村,島田,川勝, ダイナミックシラバス の開発−情報環境学部におけるダイナミックシラバ スの開発− ,東京電機大学情報環境学部情報環境 工学科,日本工学教育協会工学工業教育研究講演会 講演論文集,pp.21-24,2001.

関連発表

益子英俊,牧野光則, 科目間の連携を考慮したカリ キュラムの可視化 ,電子情報通信学会 第

19

回データ 工学ワークショップ,第

6

回日本データベース学会年次 大会,2008

3

10

日予定.

8

詳細情報表示

9

上方視点全体表示

10

上方視点全体表示 ズーム

11

上方視点選択表示

12

上方視点選択表示 ズーム

13

中心軸視点全体表示 図

14

中心軸視点全体表示

15

中心軸視点選択表示 図

16

中心軸視点選択表示

表 3 アンケート評価 アンケート項目 評価点 5 4 3 2 1 総合的な見やすさ 8 14 1 0 0 前期・後期を把握しやすいか 19 4 0 0 0 学年を把握しやすいか 19 4 0 0 0 科目名の表示は見やすいか 7 14 2 0 0 連携科目群がわかりやすいか 19 4 0 0 0 科目情報はわかりやすいか 17 6 0 0 0 操作のしやすさ 11 11 1 0 0 処理時間 23 0 0 0 0 5 結論 本論文では,大学の教育課程における科目同士の連 携に重点を置き,その関係をわかりや

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