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宗教学科目のルーブリック策定と教科間連携

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2020年度「教育プログラム推進助成」採択プログラム:

宗教学科目のルーブリック策定と教科間連携

~建学の精神に基づく教育成果の可視化と質保証~

海老原 晴 香

はじめに

 大学教育改革が提起され、建学の精神に基づく大学教育が重視されるよ うになって久しい。谷口(2017)が指摘するように、日本における今日の 大学教育改革は、1991年の大学設置基準大綱化を契機として「『個性化』、 

『機能別分化』、そして『質保証』を巡って進展」している直中にあり、高 等教育の中でもとりわけ大学教育において、大綱化が示す教育の「自由化」

並びに「個性化」を「質保証」と共に実現することが社会的要請となって いる1。私立大学は社会において、独自の建学の精神に基づく個性豊かな 教育研究を行う機関として位置づけられている以上、大学の建学の精神を その「個性化」及び「質保証」の根幹として、カリキュラム全体の検討と 再構築といった教育改革推進に着手しているのでなければならない。それ は間違っても、村上(1996)が当時の教育界動向を批判的に評したような

「『一般教育』に関する規制が緩んだということは、なし崩しに取り崩して しまっても構わない、というメッセージを文部省が出した、という解釈に 基づいて、ことが進んでいる」2 状況――すなわち、専門教育においてだ けでなく一般教育や教養課程にも各大学の理念を反映し、協働して教育活 動を実践すべきであるという見識において行われる改革ではなく、「大学 の中核をなす教養の批判的な力そのものの解体」3 をひたすらに実行する

(2)

ような状況4 ――を、20年以上が経過した現代日本においてなお具現化し ていくことであってはならない。

 一方で、本学には「カトリシズムの世界観による人格形成」という建学 の精神があるが、日本における他のカトリック大学同様、本学の大多数の 学生や教職員はカトリック信徒ではない。そのため、これまで「カトリシ ズム」に触れたことのなかった学生が、宗教学科目・教養科目・専門科目 の履修を通じて本学の建学の精神に基づく学びの重要性をより容易に理解 し、しかも主体的に学べるよう支援する教材、反転授業やアウトカム基盤 型 教 育(outcome-based education: OBE)、 問 題( 課 題 ) 解 決 型 学 習

(problem-based learning: PBL)などのいわゆるアクティブ・ラーニング による指導計画、学びの成果を確認する評価指標(ルーブリック)の策定 等は、急務である。

 こうした現状をふまえ、本プログラムは2020年度「教育プログラム推進 助成」に申請されることとなった。本稿では、「本プログラム申請の背景 と目的」、「本プログラムの概要(実施計画、組織体制)」、「本プログラム のこれまで(初年度、2020年9月現在)」、そして本プログラムの「展望」

について、以降、順に論じていくこととする。

1.本プログラム申請の背景と目的

 人類史を振り返ると、一般市民の生活をも含む社会構造を劇的に変化さ せた産業革命が複数回記録されているが、現代は、まさに新しい産業革命 による劇的変化が起きている直中にあるといえる。情報社会を超えた新し い時代は、一方で、今までに通じていた論理が通じなくなるという不安を も内包している。こうした観点から次の時代を“VUCA world”(volatility: 

変動性、uncertainty: 不確実性、complexity: 複雑性、ambiguity: 曖昧性)

とし、経済・産業・教育等、多様な場面で各々の在り方を再考する動きが

(3)

見られている5

 本プログラムの実施責任者である海老原(カトリック教育センター)と、

実施担当者の一人である大貫(人間総合学部初等教育学科)は、2019年5 月にフィリピンにて開催された第15回国際SPC(Soeurs de Saint Paul de  Chartres / Sisters of Saint Paul of Chartres:本学の設立母体であるシャ ルトル聖パウロ修道女会、以下、SPC)教育者大会(15th International  SPC Educators’ Congress)への参加機会をいただいた。現地では、建学 の精神が学習者や保護者、教職員、さらには広く社会に向けても共有可能 なものとなるようにするためのさまざまな取組にふれることができた6。 そこから、近年議論が進んでいる予測不能な“VUCA world”において求 められる教育と、本学の建学の精神、すなわちSPCの創立精神との整合性 を確認し、これからの時代において求められる教育、現状を踏まえた本学 における教養教育の在り方の検討をするため基礎的研究を行った7。  そこであぶり出された本学が抱える課題とは、本学のミッションを直接 扱うカトリック教育センターでの宗教学科目や基礎教育センターでの教養 科目においてだけでなく、全ての専門科目の授業においても、またさらに は、大学で実施されるあらゆる活動――教育活動を通じた学びだけでなく、

学園行事、学生会活動やクラブ・サークル活動に至るまで――においても、

建学の精神すなわちSPC創立の精神が通底している点について教職員が一 層理解を深め、学生及び保護者、そして社会にも伝わるようますます工夫 していかなければならない、ということであった。そのために、専門・学 部学科・部署を横断しての授業開発や新たな協働の試みが要請されてい る、との認識を得た。

 本学の建学の精神(「カトリシズムの世界観による人格形成」)に関し、「カ トリシズム」に親和性を持つ学生と持たない学生が混在している本学の現 状において、どうすれば多くの学生に理解しやすいものとなるか、メッセー

(4)

ジの普遍性が学生に伝わるものとなるか、といった議論が、広く学内で活 発に行われ、深められていくことが求められている。とりわけ宗教学科目 においては、さまざまな学生が混在する現状にあって、履修することの意 味・必要性と本学ならではの学びに関する多様な問いや要望、戸惑いが寄 せられることもあり、これらに応える試みは学生に対する大学としての責 務の一つである。また、宗教学科目は非常勤教員を含む複数の教員が担当 しており、共有可能な履修系統図や共通の評価指標(ルーブリック)の検 討と策定が喫緊の課題である。学生に学科科目と宗教学科目の関連をわか りやすく示す相関図の策定や、学部学科の枠組みを超えての検討も期待さ れている。こうした実情から、基礎教育科目や学科専門科目との有機的関 連を学生自身が実感しながら、建学の精神に基づく学びを得られる宗教学 科目コンテンツ開発と共有可能なルーブリックの策定・実施・検証、とい う本プログラムの着想に至った。4年間の学びを見据えた科目の体系化が 本学教務委員会や教務部においても進められている今、既存の宗教学科目 の並び替えにとどまらず、学生が所属する学科における学びとの往還を想 定した題材選定等を行うことは、時宜に適う試みである。(表1)

 以上のような背景から、本プログラムは、以下の3点を目的として申請 され、採択の運びとなった8

 ① 建学の精神に基づき設定されている各学科のDP(ディプロマ・ポリ シー)やCP(カリキュラム・ポリシー)に呼応する宗教学科目の体 系化、及び、学びの評価指標(ルーブリック)の策定

 ②学生や新しく就職する教職員とも建学の精神の理念を共有できる教 材・コンテンツ・指導案の開発

 ③教科間連携の推進による、建学の精神に関する新しい学習の提案

(5)

2.本プログラムの概要(実施計画、組織体制)

 本プログラムは、以下の5点からなる。なお、(1)に即して立案する(2)

~(5)を、以後「教育計画」と称する。

 (1) 建学の精神に基づく宗教学科目の履修系統図に呼応するルーブリッ ク(教員・学生が共有可能なものを想定)の策定

 (2)宗教学科目で実施するアクティブ・ラーニング用の事前学習教材(数 十秒~数分のweb視聴可能な動画教材等を想定)の作成

【現行】

〔学科カリキュラム〕 〔宗教学科目カリキュラム〕

卒業

4年次 宗教学A、宗教学B、宗教学C、宗教学D、etc…

専門科目、語学、実習、演習 3年次 宗教学A、宗教学B、宗教学C、宗教学D、etc…

学部共通科目、専門科目 2年次 キリスト教学II

学部1年次 キリスト教学I

本学入学 専門科目、実習、演習

卒業論文、卒業制作

基礎科目/語学/体験実習 学部共通科目

【本プログラムが目指す宗教学科目履修イメージ】

〔学科カリキュラム〕 〔宗教学科目カリキュラム〕

卒業

4年次 宗教学ε、宗教学ζ、宗教学η、宗教学θ、etc…

基礎教育科目、

学科専門科目など

3年次 宗教学α、宗教学β、宗教学γ、宗教学δ、etc…

基礎教育科目、

学科専門科目など

2年次 キリスト教学II

学部1年次 キリスト教学I

本学入学

専門科目、実習、演習 卒業論文、卒業制作

基礎教育科目、

学科専門科目など

表1

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 (3)宗教学科目の授業案(履修学生の所属学科のDPやCPに呼応して選 定される題材の例示、エッセンシャル・クエスチョン、授業形態等 を含むものを想定)の作成

 (4)ルーブリックに沿った事後学習教材(自らの学びを確認するeラー ニング型教材を想定)の作成

 (5)建学の精神に関する授業横断型学習(学科の専門授業等で使用可能 な題材・配付資料の作成や授業外活動の提案を想定)の提案

 本プログラム採択時における4年間の実施計画は、以下の通りである。

********************************************************************************************

【2020年度】

 建学の精神の理解深化とその教育に関する理論構築を行い、本学におけ る宗教学科目の履修系統図に即した教育計画の立案に着手する。

○建学の精神の理解深化と、その教育に関する理論構築:本学の建学の精 神、即ちSPCの創立精神の理念整理を行うため、SPC日本管区本部の調 査訪問を行う。他のカトリック女子大学において建学の精神がどのよう に理解され、またそれに基づく教育実践がどのように実施されているか 調査するため、仙台白百合女子大学など国内カトリック系女子大学(計 4校)、及びSPC大学@Philippinesを訪問する。教育動向を正確に把握 したうえで教育計画の立案に着手するため、日本カトリック教育学会な ど教育関係学会(計2件)に参加し、情報収集を行う。調査及び情報収 集は、正確性を担保するため、必ず2名体制とする。宗教学科目への理 念の落とし込みを実施し、系統図との整合性を確認する。また、学科そ れぞれの具体的な学びとの往還を検討する。

意識調査:学生及び卒業生へのアンケート及び聞き取り調査を実施し、

宗教学科目に関する意識とニーズを確認する。調査の具体的な内容とし

(7)

ては、「宗教学科目の履修によって得られた学び」、「宗教学科目の課題」

等のヒアリングを想定している。

○教育計画立案、ルーブリック、教材、指導案作成:以上の調査と情報収 集で得られた知見から作成に着手する。

○本年度の成果・進捗状況の確認と計画の見直しを行う。

【2021年度】

○教育計画の試行・検証・修正:これま でに示した本プログラムの目的遂行に 向け、教育計画の試行・検証・修正に 着手する。方法としてキリスト教学の 授業展開例を、案①及び案②として示 す(表2)。

 案①… 受講学生は、事前に各自視聴し たweb動画教材をもとに、授業 中は協議や発表を行う。受講者 数や必要に応じて、グループに 分かれて行う。事後はeラーニ ング形式で課題を提出する。

 案②… 受講学生は、事前に課されたe ラーニング課題に回答の上で授 業に参加し、集計された事前回 答資料やweb動画、聖書等を用 いて協議・発表を行う。事後は

eラーニング形式で課題を提出する。これらの案を試行の後、成 果の検証、及び検証に基づく教育計画の修正を行う。

事前学習:

web動画 事後学習:

eラーニング

協議・発表授業中:

案①

事前学習:

eラーニング課題 事後学習:

eラーニング

資料分析(web動画、授業中:

聖書等)+協議・発表

案② 表2

例)キリスト教学授業イメージ

(8)

○学生アンケート及び聞き取り調査:教育計画の試行を受講した学生から の反応を調査する(複数年度調査の開始、~ 2023年度)。調査結果を教 育計画の修正に活用する。

○成果発表:日本カトリック教育学会など教育関係学会(計2件)に参加 し、成果発表を行う。

○本年度の成果・進捗状況の確認と計画の見直しを行う。

【2022年度】

○教育計画の本実施、検証:修正した教育計画の実施、検証とともに、複 数年度調査を実施する(2023年度まで継続)。

成果発表:日本カトリック教育学会など教育関係の国内学会(計2件)

に参加し、成果発表を行う。

○本年度の成果・進捗状況の確認と計画の見直しを行う。

【2023年度】

○教育計画の実施、検証(2022年度から継続)

○卒業年次学生を対象とした調査:複数年度調査を実施する(2021年度か ら継続)。4年間の履修を通じて、学生がどのような学びを得られたと 実感しているかを調査する。

成果発表:日本カトリック教育学会など教育関係学会(計2件)に参加 し、成果発表を行う。

********************************************************************************************

 本プログラムでは、組織体制として、A ~ Dの4班に分かれて活動する。

  A班)研究統括・連携推進   B班)建学の精神理念整理

  C班) 教材・コンテンツ・指導案・評価指標(ルーブリック)立案・

(9)

実践

  D班 ) 検 証・ 評 価、

教育の質保証

 A班はB ~ D班全ての 活動に参与し、プログラ ムを統括する役割を果た す。(表3)

 B ~ D班では、主事・

センター長や学科長の任 にあって本学並びに学外 での研究・実践に従事し

てきた教員が、各班のヘッドとして基盤構築の支援を行うことで、プログ ラム全体の妥当性・統一性を担保できるようにする。その支援の下、本学 に着任して10年未満の教員が主軸となって、教育計画の立案に従事してい く。それにより、学生や新任教員にも分かり易い具体的な教材や指導案の 作成が容易となることが期待される。B ~ D班には複数の重複担当者を置 き、各班の連携が円滑に実施されるよう配慮している。

 また、宗教学科目に関する組織的体系構築を行うため、プログラム実施 責任者(海老原)を含め、カトリック教育センター専任教職員全員が実施 分担者となり、教育学を専門とする人間総合学部初等教育学科教員(大貫)

を責任者補佐として加え、検討する体制としている9。さらに、多様な専 門領域を横断して相互に連携し合うチームを構成し、建学の精神を本教育 プログラムに正確に反映できるよう、SPCの教育に造詣の深い教員を中心 として、SPC本部やSPC教育機関への訪問調査等を実施した上で、教材作 成を行っていく計画である。プログラムと学科のDP、CPとの整合性の検 討、ルーブリックの作成等に際しては、カトリック教育センターに所属す

表3 プログラム組織体制のイメージ

B)建学の精神 理念整理

C)教材・コンテンツ・指導案・

評価指標立案・実践

A)研究統括・

連携推進

D)検証・評価 教育の質保証

(10)

る教員と文学部及び人間総合学部に所属する教員が加わっていく。その中 には、本学で教務委員会委員やFD推進委員会委員を経験している教員が おり、必要に応じて各委員会との連携も叶うよう考慮している。なお、教 育計画の立案と実施に際しては、教務部及び図書館事務部にも連携・協力 体制を仰いでおり、教材の保管と運用に本学リポジトリや、eラーニング 用に設定されているmanaba folio、教学支援システムCampusSquareを活 用できる体制にある。

3.本プログラムのこれまで(初年度、2020年9月現在)

 2020年4月より始動となった本プログラムでは、2020年9月現在、4回 のワークショップ形式での内部会合を実施した。各回の概要については以 下の通りである。

◦ブレインストーミング:学部・学科を問わず、すべての白百合女子大学 生に育成したい資質・能力(2020年6月18日~6月30日)

  プログラム始動にあたり、上記テーマに関する参加メンバー各人の考 えを自由に出し合い、チームとして整理・共有するためのブレインス トーミングを、メール及びウェブ会合にて行った。文科省提言等で用い られる、いわゆる「コンピテンシー」や「資質・能力」等といった事柄 との整合性に関する議論は行わず、この時点での各教職員が意識してい ることの整理、という位置づけでのざっくばらんな意見交換となった。

◦学長講話:建学の精神と白百合の心(2020年7月3日)

  ウェブ会合にて、本プログラムの実施に対し、髙山貞美学長より講話 をいただいた。建学の精神は、誰もが本学の大学運営の要であると心得 ている。問題は単に「建学の精神とは何か」を説明できるか、というこ

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とにあるのではなく、本学の教育活動に携わる全ての教職員が、「建学 の精神」を自らの血とし肉とすることが果たしてできているだろうか、

ということにある。白百合の心をあらためて学び、本学の「建学の精神」

を各々の血とし肉とする、という一つの目標に向かって、教職員が共に 歩んでいくことが肝要であるとの認識を共有した。

◦「コンピテンス」に関するレクチャー企画(2020年8月7日)

  ウェブ会合にて、人間総合学部初等教育学科の大貫麻美先生に、「コ ンピテンス」に関するレクチャーを実施いただいた。レクチャーをふま え、「ブレインストーミング:学部・学科を問わず、すべての白百合女 子大学生に育成したい資質・能力」の際に挙げられた教職員(本プログ ラムメンバー)が学生に対して修得を願う資質・能力と、OECD等が提 唱する国際動向における「コンピテンシー」との整合性を検討した。「社 会に貢献できる」力、とは、無批判に社会に順応していくスキルではな く、社会の現状を見据えてよりよい社会の創出のために自ら考え、主体 的に行動していく力であることを確認した。

◦「白百合女子大学の教育で大切にしてきたこと、していきたいこと」レ クチャー企画(2020年9月4日)

  ウェブ会合にて、基礎教育センターの佐々木裕子先生にレクチャーを 実施いただいた。テーマに関し、白百合女子大学が大切にしてきたこと には、「建学の精神」「教育目標」に加えて、必ずしも文書資料として十 分に残されていない「伝承」もあることが共有され、「カトリシズムの 世界観」が歴史的な変遷をたどって、変化しながら現在に至ることが示 された。レクチャーの後、各学科及び各授業での教育内容とのつながり をめぐって参加者どうしの意見・情報交換が行われ、今後、B班での建

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学の精神理念整理活動と、C班での教材・コンテンツ・指導案・ルーブ リック立案・実践活動とをスムーズに連携させていくための足掛かりと なった。

 4回の全体会合を経て、本学の建学の精神が大切にしてきたこと・して いきたいことと、教職員が大学教育・生活を通じて学生に培って欲しいと 考える能力、学生自身が身に付けたいと考える能力、卒業生が自身の大学 教育・生活を通じて身についたと実感する能力、社会が要請する能力、こ れらの関係性を意識しながら、各班での活動に落とし込んでいくことの重 要性を共通理解とすることができた。今後、建学の精神のさらなる理解深 化と、その理解内容に呼応する教材・指導案・ルーブリックの立案につい てはB班並びにC班の、また、建学の精神理解といわゆる「コンピテンシー」

の概念で理解される社会が要請する能力との関連・整合性の議論について はB班並びにD班の、そして、立案・試行される教材・指導案・ルーブリッ クの検証・評価・改善についてはC班並びにD班の活動と相互の情報共有 を通じて深められていく見通しである。

展望

 今後、本プログラムにおいては、各班での活動を軸に、班相互の情報共 有の機会の確保に配慮しながら、教材・指導案・ルーブリックの立案と試 行、検証、改善、本実施(再試行)を実施していく。共同利用が可能な動 画教材等作成により、学生及び教職員間での建学の精神の共有を目指す。

また4年間のプログラム運用を通じ、宗教学科目の体系化とルーブリック の策定、複数の教員で使用・共有が可能な教材・指導案の提案、教科間連 携の推進などによる教育の質保証を目指す。これは、中央教育審議会が高 等教育機関の果たすべき責務として示した「『建学の精神』や『ミッション』、

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教育研究についての説明責任を果たしていくこと、さらには『強み』と『特 色』を社会に分かりやすく発信していくこと」10 の実現につながる全学的 実践となることも期待され、学内外に向けての本学における教育成果の可 視化につながると期待できる。

 本プログラムの運用により、建学の精神に基づく宗教学科目の体系が可 視化されることによって、新任教員や非常勤講師を含む多様な実践者が建 学の精神の理解を共有し、それを念頭に置いた教育を体系的に実施してい くことが可能となる。また本プログラムには、カトリック教育センター所 属ではない教員が複数参加している。教員自身が建学の精神やカトリック 教育の理念についての理解を深めることができるようになるため、それら の知見を自らの担当講義等での指導に包摂していくことが可能になると見 通される。こうした状況をふまえ、4年間の助成期間終了の後には、以下 4点の展開を想定することができる。

 〇カトリック教育センターが主幹となり、本研究で作成した宗教学科目 共通のルーブリック、教材、指導案を宗教学科目で継続運用する  〇学生が自らの学びの指標としてルーブリックを活用する

 〇個々の教員が、それぞれの専門性に即して担当授業・教科間連携・授 業外指導に発展させる

 〇姉妹校とルーブリック、教材、指導案を共有する(高大接続)

 「カトリック教育センターが主幹となり、本研究で作成した宗教学科目 共通のルーブリック、教材、指導案を宗教学科目で継続運用する」及び「学 生が自らの学びの指標としてルーブリックを活用する」については、本プ ログラム推進助成期間中に開発した教材等の継続使用を実施することを想 定している。教材の保管と運用には、本学リポジトリや、eラーニング用 に設定されているmanaba folio(2021年度以降は全学的に導入予定の

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manaba course)、教学支援システムCampusSquareといった既存のサービ スを用いるため、別途予算計上の必要はない。

 また、「個々の教員が、それぞれの専門性に即して担当授業・教科間連 携・授業外指導に発展させる」並びに「姉妹校とルーブリック、教材、指 導案を共有する(高大接続)」については、プログラムメンバーである個々 の教職員が、助成期間以後の計画に応じて予算を得ていく運びとなる。各々 が別途、科研費等への申請を行い、実現を目指していく。

注記:本稿は、白百合女子大学教育プログラム推進助成採択番号2020Cの 助成を受けた取り組みを報告するものである。

1  谷口照三(2017)「大学教育改革と「建学の精神」に基礎づけられた個性化――桃山 学院大学の課題と可能性――」『桃山学院大学総合研究所紀要』Vol. 42、No. 2、p. 

61-82。

 2  村上陽一郎(1996)「一般教育の意味」『一般教育学会誌』第18巻第2号、p. 33-36。

 3  岩崎稔・大内裕和・西山雄二(2009)「討論 大学の未来のために」『現代思想(特集  大学の未来)』第37巻第14号、青土社、西山の発言から。

 4  谷口(2017)は、こうした状況が日本において進行した背景に、1991年の大学設置 基準の大綱化が提示した 「一般教育と専門教育の区分の廃止」、「一般教育の科目区 分の廃止」、「カリキュラムの自由化」、「各大学が、自らの責任において教育研究の 不断の改善を図ること」 との要請が、当時までの日本の社会経済構造を受けての改 革路線の敢行によって、「個々の大学にとって『建学の精神の具現化による個性化』

の最初の好機」と受けとめられえなかった点を指摘している。前掲書、p. 62-65。

 5  “VUCA world”の特徴と世界が直面する課題、またそうした世界において高等教育 に要請される視点や姿勢、高等教育が生徒学生に育成すべき資質や能力について論 じるものとして、Robert E. Waller, Pamela A. Lemoine, Evan G. Mense, Christopher J. 

Garretson & Michael D. Richardson(2019)Global Higher Education in a VUCA World: Concerns and Projections, Journal of Education and Development; Vol. 3,  No. 2, p. 73-83.

 6  SPCフィリピン管区では、各大学における展示施設の設置と共に、全教育施設のた めに常設のヘリテージ・センターを備えてジオラマやホログラムを用いた展示を実 施し、学習見学ツアーを常時行うことによって、建学の精神と大学での学びのつな がりを学習者が実感できる工夫がなされていた。本学においても建学の精神に関す

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るパネル展示を図書館等にて複数回実施してきたが、いずれも常設に至っておらず、

学生にとってわかりやすいかたちでの理念共有の取組は急務である。

 7  海老原晴香・大貫麻美(2019)「これからの時代を見据えた白百合女子大学における 教育への展望~ Society5.0を生きるポーリニアンの育成を目指して~」『白百合女子 大学研究紀要』第55号、p. 1-18。

 8  2020年2月3日付、一部申請予算に対して条件付きでの採択。

 9  実施責任者及び補佐が所属するそれぞれの研究室職員に、協議会室手配・配布資料 保管等の事務的補助を依頼した。

10  中央教育審議会(2018)2040  年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)、

https://www.mext.go.jp/content/20200312-mxt_koutou01-100006282_1.pdf

参照

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