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と持続可能な  開発目標に関する予備的考察

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日本自動車メーカーの

CSR

と持続可能な  開発目標に関する予備的考察

根 岸 可 奈 子

Japanese Automobile Manufacturer’s Corporate Responsibility and Sustainable Development Goals

Kanako NEGISHI

In recent years, ethical scandals, environmental disasters, and poor working conditions have demonstrated that the business-as-usual models of multinational enterprises (MNEs) are no longer acceptable for societies in the world. MNEs need to expand the range of their corporate social responsibility (CSR) not only their home country, but also host countries as part of the complex global supply chain, considering their economic and social influence.

Their CSR relate to the global agenda such as the United Nations’ sustainable development goals (SDGs) directly and/or indirectly.

However, the relationship between CSR and SDGs is not clear. This paper examines this linkage through content analysis, focusing on Japanese automobile companies and their sus- tainability reports.

The results show that the companies tend to focus on the environment agenda, especially

“safe,” “education,” “energy,” “infrastructure,” and “recycle,” when it comes to the sustainable development goals. Moreover, the word “environment” often co-occurs with “load,” “manage- ment,” and “society,” but there is no such strong co-occurrence with the words “suppliers”

and “developing countries.” These results indicate both the active environment-related ef- forts and the somewhat-biased global agenda of the automobile companies. The results also serve as reference for sustainable management by MNEs.

Key…Words:…Japanese…automobile…manufacturer,…Corporate…Social…Responsibility,…

      Sustainable…Development…Goals,…sustainability…report

Ⅰ は じ め に

世界的に経済的なインフラが整備され,ますます多くの取引が行われようとしている。

例えば,経済連携協定を結ぶ件数が増加し,20185月現在,287件の地域貿易協定(Re- gional…trade…agreement)が施行され,加盟国からWTO(World…Trade…Organization:「世 界貿易機関」)へ459件の協定が通達されている1)。日本も例外ではなく,2017年5月現 在,20カ国との間で16の協定が署名され発行されている2)。現在RCEP(Regional…Com-

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prehensive…Economic…Partnership:「東アジア地域包括的経済連携」)が交渉中であるが,

この東アジア地域においては多くの日本企業が既に緊密なサプライチェーンを展開してお り,RCEPの発行は貿易や投資等を活発化させることを期待したものである3)

このような貿易促進策と同時に,輸送・通信技術も発達し,世界最適調達,生産を目指 し多国籍企業は地球規模の複雑なネットワークを構築してきた。その過程では,単に自社 工場を世界中で展開するというだけではなく,オフショア・アウトソーシングも進んでき た4)。よって,現在多国籍企業による企業内国際分業にとどまらず,企業間の国際分業が 活発化している。

製造業に代表されるような企業の国際的なサプライチェーンの複雑化は,単に生産活動 の複雑化をもたらすだけではなく,CSR(Corporate…Social…Responsibility:「企業の社会的 責任」)の複雑化をも同時にもたらしてきた。特に,進出先やアウトソーシング先が途上 国である場合,単に操業している国の法令に従うだけでは社会的に十分でないことも多い。

Nike社のアウトソーシング先における労働問題の事例は,多国籍企業によるCSRの範 囲を問う1つの重要なきっかけとなった5)。母国内に限定されるCSRと進出先,あるいは 世界中に展開されているネットワークをその範囲に含めたCSRの実施については,特に 後者の方に課題が多い。

多国籍企業がCSRとして取り組んでいる課題の中には,直接的に企業行動に関連する ものと,そうではないものがある。しかし,多国籍企業を取り巻くステイクホルダーの一 種である国際的な機関や団体は,直接的に関連しているものもそうではないものも含め,

企業にその責任と解決のための積極的な対応を求めるようになってきた6)

むろん,国際的なCSRの効率的な実施は容易ではない。例えば,一般消費財を中心に,

主な多国籍企業の母国である先進国のステイクホルダーの目は厳しく,場合によってはボ イコットにまで発展することもある。しかし,多国籍企業が抱えるアウトソーシング先の 1) WTO(World…Trade…Organization) ホ ー ム ペ ー ジhttps://www.wto.org/english/tratop_e/re-

gion_e/region_e.htm(201895日閲覧)。

2) 経済産業省(2017)『通商白書2017』勝美出版,281ページ。

3) 同上書,284-285ページ。

4) 夏目啓二(2016)「グローバリゼーションと世界の大企業体制の変貌」『經營學論集』Vol.86,

100-101ページ。

5) Tulder,…R.V…and…Zwart,…A.V.…(2006)…International…Business-Society…Management:…Linking…cor- porate…responsibility…and…globalization,…Routledge.…朴根好(2007)「企業のグローバル化と企業倫 理―グローバル経営戦略の落とし穴」田島慶吾編『静岡大学人文学部研究叢書15 現代の企業 倫理』大学教育出版,193-207ページ。

6) 加賀田和弘(2006)「企業の社会的責任…(CSR):… その歴史的展開と今日的課題」『KGPS…re-

view:…Kwansei…Gakuin…policy…studies…review』issue7,…58ページ。

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数は膨大であり,その11つが自社の労働や環境等に関する基準をクリアしているかど うかをチェックするのは発注元の企業自身にとっても不可能に近いだけではなく,もし チェックできたとしてもそこにかかった費用を消費者にそのまま転嫁できないといった課 題を抱えている7)

しかし,経済的側面と社会的側面のトレードオフではなく,例えば社会的な問題を解決 することにより,収益を上げるというCSV(Creating…Shared…Value:「共通価値の創造」)

という考えが生まれたり8),これに関連しBOP(Base…of…Pyramid)…9)やソーシャルビジネ ス(Social…Business)10)といった修正されたビジネスモデルが登場し,国際的な環境や消 費者に適応しつつある。

では,どれだけ,どのようにCSRは国際的に取り上げられる社会的な課題に結び付い ているのだろうか。企業や国際機関,NGO等が取り組むべき代表的な課題として,2015 年国連で採択されたSDGs(Sustainable…Development…Goals:「持続可能な開発目標」)が ある11)。実際,採択後から自社のCSRSDGsに関連付ける企業が増えてきている12)

本稿においては,日本の自動車メーカー6社を対象にCSR報告書を材料としながら,

多国籍企業の経営の中でSDGsがどのように実現されてきたのかという点について,分析 を試みる。

Ⅱ 既存研究の整理

CSRについては古くから議論されてきたが,多国籍企業に要請される行動基準やガイ ドラインが確立されるなど,国際的に制度化されてきたのは1990年代後半から2000年代 初頭にかけての時期である(Vogel,…2005:梅田,2006:谷本,2016)。企業のなかにはこ うした基準やガイドラインを経営へ適用したり,ガイドライン作成に参加したりするもの

7) Vogel,…D…(2005)…The…Market…for…Virtue:…The…Potential…and…Limits…of…Corporate…Social…Responsi- bility,…pp.91-100.

8) Porter,…M.E…and…Kramer,…M.R…(2011)…“Creating…Shared…Value”,…Harvard…Business…Review,……

January-February,

9) Prahalad,…C.K.…(2005)…The…Fortune…at…the…Bottom…of…the…Pyramid,…Wharton…School…Publishing…

(C.K.プラハラッド著,スカイライトコンサルティング訳(2005)『ネクスト・マーケット』英 治出版).

10) Yunus,…M.…(2007)…Creating…a…World…Without…Poverty,…Public…Affairs…(M.ユヌス著,猪熊弘子訳

『貧困のない世界を創る ソーシャル・ビジネスと新しい資本主義』早川書房).

11) 国際連合ホームページhttps://www.un.org/sustainabledevelopment/(201895日閲覧)。

12) KPMG「KPMGによるCSR報告調査2017」45-48ページ。KPMG ホームページよりダウン

ロード可https://home.kpmg.com/jp/ja/home/media/press-releases/2017/10/csr-report-survey…

2017.html(2018828日閲覧)。

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も多くなり,国際的なCSRを実施するという側面においては,従来重要視されてこなかっ た国際機関やNGOといった組織との協働がみられるようになってきた(星野,2013:根 岸,2018)。

CSRに直接的あるいは間接的に関わっているのは,国際的な機関やNGOだけではな い。例えば,いくつかの民間組織は企業のCSRについて評価を行っている。これは,企 業がCSRを実施するモチベーションの1つとなったり,実施への圧力にもなってきた。

具体的には,SRI(Social…Responsibility…Investment:「社会的責任投資」)のようにCSRの 実施状況を投資の判断材料にするものや13),国内外でCSRのランキング付けが行われて いる。

例えば,東洋経済新報社は2007年からランキングを公表している。『CSR企業総覧 2018』をベースにしたものでは,1NTTドコモ,2位KDDI,3位ブリヂストンという 結果を示している14)。レピュテーション・インスティテュート(Reputation…Institute)

は,2015年から世界的な規模でランキングを発表している。2017年度のCSRランキング では,1位LEGO…Group,2位…Microsoft,3位…Googleと米国企業が上位を占めている。

しかし,日本企業もまた,16位ソニー,…23位キヤノン,…24位トヨタ,47位ブリヂストン,…

48位任天堂というような結果を残している15)。Fortune…Global…500では2014年から

「world’s…most…admired…companies」を公開している16)

各ランキングの判断基準はそれぞれに異なっているが,いずれも2010年前後から実施 していることがわかる。実際,Fortune誌は,Global…500およびFortunate…5001996年 から公開しているのに対し,「world’s…most…admired…companies」は2014年からである。

企業の評価基準が制度的に変化しつつあることを部分的にではあるが示しているといえ る。

むろん,企業が2000年代に入るまでCSRに無関心だったわけでは全くない。特に環境 について,日欧米共に企業は「環境の破壊者」として社会から大きな批判を浴びたことを 契機とし,イノベーションを通じて環境問題に導く「環境の救世主」としての役割を果た

13) 谷本寛治(2007)『SRIと新しい企業・金融』東洋経済新報社。

14) 東洋経済新報社(2017)『CSR企業総覧2018年版』東洋経済新報社及び,東洋経済オンライ

https://toyokeizai.net/articles/-/223678(2018919日閲覧)。

15) Reputation…Institute…(2017),…2017…Global…CSR…RepTrak.…以下のReputation…Instituteのホーム ページよりダウンロード可https://www.reputationinstitute.com/research/2017-global-csr-rep-

trak(2018919日閲覧)。

16) Fortuneのホームページよりダウンロード可http://fortune.com/worlds-most-admired-compa- nies/(2018919日閲覧)。

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すことが求められ,様々な形で環境問題に取り組んできた(所,2017)。

多国籍企業が取り組んできたのは,環境分野だけではない。また,国際的に企業に解決 が求められている課題も同様である。代表的なものとして,SDGsが挙げられる(表1)。

続いて,国連グローバル・コンパクト(United…Nations…Global…Compact),及びGRIガイ ド ラ イ ン(Global…Reporting…Initiative),ISO26000(International…Organization…for…Stan- dardization)の項目を表2に示す。

SDGs2000年に発足し2015年を達成期限としていたミレニアム開発目標(Millenni- um…Development…Goals:…MDGs)の後継枠組みとして2010年に検討が始まり,2015年の 国連サミットで採択された17)。表1は,SDGsにおける17目標である。MDGsが8目標

17)  国 際 連 合 広 報 セ ン タ ーhttp://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/17471/

(2018年911日閲覧)。

1 SDGsにおける17目標 目  標 1 あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる

2 飢餓を終わらせ,食料安全保障及び栄養改善を実現し,持続可能な農業を促進する 3 あらゆる年齢の全ての人々の健康的な生活を確保し,福祉を促進する

4 全ての人に包括的かつ公正な質の高い教育を確保し,生涯学習の機会を促進する 5 ジェンダー平等を達成し,全ての女性及び女児の能力強化を行う

6 全ての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する

7 全ての人々の,安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する 8 包摂的かつ持続可能な経済成長及び全ての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間

らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する

9 強靭(リジリエント)なインフラ構築,包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーショ ンの推進を図る

10 各国内及び各国間の不平等を是正する

11 包摂的で安全かつ強靭(リジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する 12 持続可能な生産消費形態を確保する

13 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる

14 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し,持続可能な形で利用する

15 陸域生態系の保護,回復,持続可能な利用の推進,持続可能な森林の経営,砂漠化への対処,

並びに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する

16 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し,全ての人々に司法へのアクセスを提供 し,あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する

17 持続可能な開発のための実施手段を強化し,グローバル・パートナーシップを活性化する  出所)…  総 務 省 ホ ー ム ペ ー ジ 内 指 標 仮 訳 を 参 照 し た。http://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/

kokusai/02toukatsu01_04000212.html(2018 年 9 月 5 日閲覧)。

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21ターゲットだったのに対し,SDGsは17目標169ターゲットと大幅に増加している。

これは,国際社会が抱えている課題が複雑化していること,MDGsが開発途上国,特に 最貧国を対象としていたのに対し,SDGsが先進国も含むすべての国々を対象としている ためである18)。表2は,SDGs以外の代表的な企業経営に関わるサステナビリティの国際 的な原則やガイドラインである。

1と表2の項目や分野は重複しているところが多い。実際,作成主体間が提携しそれ ぞれの項目についてリンクさせ互換性をもたせている。ISO26000は,OECD多国籍企業 ガイドラインとSDGsにリンクしている19)。SDGsはもちろん,GCとリンクしており,

GRIGC,SDGsもまた互いに連携している20)。このような連携は各基準やガイドライ

2 国連グローバル・コンパクト,GRIガイドライン,ISO26000の対象分野 基準,または

ガイドライン名 作成主体 分  野

国連グローバル・

コンパクト 国際連合 労働,環境,人権,腐敗防止

GRIガイドライン GRI

経済(経済パフォーマンス,地域経済での存在感,間接的な 経済的インパクト,調達慣行,腐敗防止,反競争的行為),環 境(原材料,エネルギー,水,生物多様性,大気への排出,

排水及び廃棄物,環境コンプライアンス,サプライヤーの環 境面のアセスメント),社会(雇用,労使関係,労働安全衛 生,研修と教育,ダイバーシティと機会均等,被差別,結社 の自由と団体交渉,児童労働,強制労働,保安慣行,先住民 の権利,人権アセスメント,地域コミュニティ,サプライヤー の社会面のアセスメント,公共政策,顧客の安全衛生,マー ケティングとラベリング,顧客プライバシー,社会経済面の コンプライアンス)

ISO26000 ISO

組織統治,人権,労働慣行,環境,公正な事業慣行,消費者 課題,コミュニティへの参画及びコミュニティの発展 (7つ の中核主題)

  注) 経済,環境,社会の中にはそれぞれ細目がある。また,GRIスタンダードとしては,これら 3 分野に加 え,「共通スタンダード」がある。GRIホームページhttps://www.globalreporting.org/standards/gri-stan-

dards-translations/gri-standards-japanese-translations-download-center/(2018 年 9 月 5 日閲覧)。

 出所) GC:GCホームページhttps://www.unglobalcompact.org/(2018 年 9 月 27 日閲覧),GRI:GRIホーム ページhttps://www.globalreporting.org/Pages/default.aspx(2018 年 9 月 27 日閲覧),ISO26000:ISOホー ムページhttps://www.iso.org/iso-26000-social-responsibility.html(2018 年 9 月 27 日閲覧)。

18) 前掲ホームページ(2018911日閲覧)。

19) ISO(International…Organization…for…Standardization)ホームページhttps://www.iso.org/iso- 26000-social-responsibility.html(201895日閲覧)。

20) GRIホ ー ム ペ ー ジhttps://www.globalreporting.org/resourcelibrary/SDG_GRI_LInkage.pdf

(2018年95日閲覧)。

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ンの統合をうながし,多国籍企業の活動の一部を取り囲みつつある。

上記したグローバルな規模の課題と経営の関係については,様々な角度から研究されて きた。Kolk(2017)は,SDGsの多国籍企業に対する影響は未だ明確ではないとし,6,000 以上の国際経営研究に関する論文の中で,以下のSDGsから抽出した各キーワードがどの ように論じられ,明らかにされたのかをまとめている。

「不平等(inequality)」「貧困(poverty,…poor)」「BOP(base…of…the…pyramid,…bottom…of…

the…pyramid)」「エネルギー(energy)」「気候変動(climate…change)」「地球温暖化(glob- al…warming)」「平和(peace)」「戦争(war)」「政治的紛争(political…conflict)」21)

SDGsの枠組みは「人々(people)」,「平和(peace)」,「繁栄(prosperity)」に焦点が あてられており,それらはパートナーシップを通じて実現されるものであるとしている

(Kolk,…2017)。つまり,貧困等様々な課題があるが,SDGsの目標17だけは課題の分野で はなく「パートナーシップ」という手段を示したものである。

もっとも,それぞれの語は広範な意味を有している。具体的には,SDGsの17目標は それぞれ複数の具体的なターゲットを有しているが,上記キーワードにおいても各キー ワード内で複数のカテゴリーに分けることができるほど,企業の取り組みは多様である。

では,多国籍企業はこのような社会的変化の中で,その経営を通じどのように応えてき たのであろうか。本稿では,特にSDGsに示されている社会的な課題との結び付きについ て分析する。既存研究においては,同様の課題に対し,個別企業の事例分析はもちろん CSR報告書の分析を通じ,両者の関係を分析してきた。

CSRに関する取り組みについて,企業は様々な方法を用いステイクホルダーに伝えて いる。なかでも代表的なツールが,CSR報告書である。CSR報告書という場合や,サス テナビリティ報告書という場合もあり,少なくとも国内においてはその名称の統一はされ ていない。企業によっては独自の名称をつけているものもある。国際的には,1980年代 における数々の環境問題への対応として,企業は環境報告書を発行するようになった。同 様に,1990年代の倫理的問題に対し,CSR報告書を発行し始めた(Brockett…and…Rezaee,…

2012;…Christofi…et…al.,…2012)。

CSR報告書発行の目的としては,ステイクホルダー・マネジメントの一環であったり,

消費者の購買意欲を高めるため消費者の評価を上げたり,企業・ブランドイメージを強化 すること,そして正当性やアカウンタビリティの獲得などが挙げられる(Crane…and…

21) Kolk,…Ans,…Kourula,…Arno,…Pisani,…Niccolò…(2017)…Multinational…Enterprises…and…the…Sustainable…

Development…Goals:…What…do…we…know…and…how…to…proceed?,…Transnational…Corporations,…Vol.24,…

No.3,…pp.…9-32.

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Glozer,…2016)。CSR報告書は単なるステイクホルダーに自社の活動を伝えるツールとい うだけではなく,より広範な役割を担うようになってきた。

報告書の発行は世界的に拡大している。KPMGの調査によれば,N100のうち75%,

G250のうち93%がCSR報告書を発行している22)。日本の場合,そのうち99%が報告書 を発行しており,非常に発行率は高い割合となっている23)。産業別にみると,発行割合の 上から石油・ガス,化学,鉱業,自動車関連,テクノロジー・メディア・通信サービスと なっている。下位は下から小売,資本財・工業・金属,建設・資材,パーソナル用品・家 庭用品,輸送・レジャーとなっている24)

さらに,前記のように自社のCSR活動をSDGsに関連付ける企業も増えてきた。N100 企業とG250企業が発行するCSRレポートのうち,約4割のレポートにおいてCSR活動 とSDGsを関連付けている。ただし,「CSRレポートにおいてSDGsを参照している企業 が国内の売上上位100社の半数を超えている国は3カ国にとどまっている。」というよう に現在のところ全世界的な動向というわけではない。なお,SDGsとの関連付けをしてい る企業数をみてみると,上位10カ国はいずれもヨーロッパ及びラテン・アメリカの国で あり,日本は入っていない25)

しかし,産業別にみると,以下の通り自動車産業は割合が高い方に位置している。すな わち,G250企業中最多は公共事業で58%,自動車関連産業が同じく58%,小売が

57%,テクノロジー・メディア・通信サービスが56%,ヘルスケア47%,金融サービス

37%,工業30%,そして,製造業,金属,28%と続いている26)

例えば,日産社は「日産のSDGsへの貢献」としてSDGsの目標,ターゲットごとに報 告している27)。ホンダ社は2017年のサステナビリティ報告書において「カーボンフリー 社会の実現」や「交通事故ゼロ社会の実現」などを重要な課題とし可視化した成果を

SDGs目標3,目標7,目標13と関連付けている28)

22) 前掲KPMGの報告書によれば,N100とは,「49カ国の各国における売上げ上位100社,つま

り合計4,900社」を示している。…G250とは「2016年のフォーチュン500における上位250社を 調査対象としている」(4ページ)というように,大企業が対象とした調査である。

23) KPMGホ ー ム ペ ー ジhttps://home.kpmg.com/xx/en/home/campaigns/2017/10/survey-of- corporate-responsibility-reporting-2017.html(2018829日閲覧)。

24) 前掲KPMG報告書,12ページ。

25) 同上書,45-48ページ。ただし,G250のなかでは4番目にCSRSDGsを関連付けている企

業が多い。

26) 同上書,47ページ。

27) 日産自動車株式会社ホームページhttps://www.nissan-global.com/JP/SUSTAINABILITY/RE- PORT/SDGS/(2018829日閲覧)。

(9)

このようにCSR報告書はCSRに関する情報源の1つとなりうる。よって,CSR活動を 分析するうえでは,個別の事例分析はもちろん,報告書をベースとしたテキスト分析も用 いられてきた。

Campopiano…and…De…Massis(2015)…は,同族企業と非同族企業でCSRに関する取り組 みについてどのような違いが生じるかについてCSR報告書をもとにテキスト分析を行っ ている。その結果,同族経営の方がそうではない企業よりも広範な情報を含んだ報告書を 発行していることを明らかにした。また,Landrum…and…Ohsowski(2018)…は,CSR5 段階に分けキーワードを設定しテキスト分析を行い,GRIガイドラインの適用企業とそう ではない企業の報告書を比較し,どのような違いが生じるかという点について明らかにし ている。しかし,いずれの研究もその対象企業はイタリア企業やアメリカ企業であり,日 本企業については対象外とされている。したがって,本稿においては,SDGsに関係する 課題について,日本の多国籍企業がどのように活動してきたのかを自動車産業を例にしな がら分析する。

Ⅲ 方   法

本稿においては,CSR報告書(2017年度版)のテキスト分析を行う29)。対象産業は,

日本の自動車産業企業に限定する。対象を絞る理由は,産業によって取り組む目標,より 実務に近い目標は異なるためである。例えば,自動車産業においては,目標3「あらゆる 年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し,福祉を促進する」のうちターゲット3.6

「2020年までに,世界の道路交通事故による死傷者を半減させる」という点は,同3.5「薬 物乱用やアルコールの有害な摂取を含む,物質乱用の防止・治療を強化する」よりも現実 的に本業のなかで取り組みやすい項目であり,医薬品産業のそれと比較するわけにはいか ない。

自動車産業に焦点をあてる理由は,第Ⅰ章に挙げたような複雑なサプライチェーンの ネットワークを地球規模で有していることと,KPMGの調査にもあったように同産業は SDGsの取り組みが比較的に盛んな傾向があるためである。

したがって,対象企業は以下の通りである。

・トヨタ自動車株式会社(以下,トヨタ社と略称する)

・ホンダ技研工業株式会社(以下,ホンダ社と略称する)

28) ホンダ社『サステナビリティレポート2017年度版』11ページ。

29) 分析にあたり,KHコーダーを用いた。KHコーダーについては以下を参照されたい。樋口耕

一(2014)『社会調査のための計量テキスト分析』ナカニシヤ出版。

(10)

・スズキ株式会社(以下,スズキ社と略称する)

・日産自動車株式会社(以下,日産社と略称する)

・株式会社SUBARU(以下,スバル社と略称する)

・マツダ株式会社(以下,マツダ社と略称する)

SDGsの目標,ターゲットの日本語訳については,総務省の「SDG指標仮訳」を利用 している30)。そのなかから,以下の29キーワードを抽出した。

…貧困,飢餓,健康,福祉,安全,教育,生涯学習,ジェンダー平等,水,衛生,エネル ギー,経済成長,ディーセント・ワーク,産業化,インフラ,イノベーション,技術革 新,不平等,持続可能な都市,人間居住,持続可能な消費,有害廃棄物,再利用,リサ イクル,気候変動,海,陸,平和,パートナーシップ

これらが各社の報告書内で用いられているか,用いられているとすればどのような語と の関連で用いられているのか分析した。

Ⅳ 結果および考察 1.頻出回数上位 150 語にみる取り組み状況

まず,各社報告書においてどのような語が頻繁に使用されているのかを整理した。表3 はそのうち上位5語についてまとめたものである31)。むろん,頻出回数が多いことが,活 発に活動している,効果が上がっているということに直結しているわけではない。しかし,

企業側がどのようなことに関心があるのか,自社の何をステイクホルダーに伝えたいと 思っているのかという点について,この結果から一定の傾向が示されるものと考えられる。

3からは「環境」という語が共通して上位に入っていることがわかる。表12ある いは既存研究にみたように,企業が取り組みを求められている分野は多岐にわたるが,対 象6社については共通して「環境」に力点が置かれていることがわかる。これは,これま で同産業が古くから取り組んできたことも影響しているものと考えられる。

次に課題を抱える分野を示す語として共通して上位にあるのは,「社会」である。表中 ではホンダ社とスズキ社について「社会」はみられないものの,それぞれ6位,33位に 入っている。しかし,報告書内で「社会」がどのような文脈で用いられているのかは,表

3からだけでは判然としない。「環境」も同様である。

したがって,「環境」との共起について示したのが表4である。トヨタ社を除く5社に

30) 指標仮訳,以下の総務省ホームページよりダウンロード可http://www.soumu.go.jp/toukei_

toukatsu/index/kokusai/02toukatsu01_04000212.html(201893日閲覧)。

31) 「年」「月」という時期を示す語についてははずした。

(11)

ついて共通するのは「負荷」と共起している点である。トヨタ社の場合,この語は50位 に入っている。環境分野における取り組みも多様であるが,途上国における森林破壊の問 題に関わる等ではなく,自社の環境負荷について,もっといえば環境負荷を減らすことが 共通して強調されているといえる。

「環境」は「社会」と関連付けられることも多い。「負荷」同様トヨタ社を除く(14 位),上位に挙がっている。

また,以下の語も上位に共通して表れている。

・「マネジメント」(トヨタ社11位,ホンダ社22位,スズキ社16位,日産社22位,ス バル社7位,マツダ社7位)

・「保全」(トヨタ社24位,ホンダ社14位,スズキ社4位,日産社45位,スバル社10 位,マツダ社6位)

・「教育」(トヨタ社25位,ホンダ社60位,スズキ社28位,日産社74位,スバル社 61位,マツダ社10位)

3 2017年度自動車メーカーのCSR報告書における頻出回数上位5

トヨタ社 ホンダ社 スズキ社 日産社 スバル社 マツダ社

抽出語 頻出回数 抽出語 頻出回数 抽出語 頻出回数 抽出語 頻出回数 抽出語 頻出回数 抽出語 頻出回数

1 環境 684 報告 408 環境 812 環境 326 環境 418 マツダ 1022

2 トヨタ 654 環境 388 スズキ 589 活動 313 当社 211 環境 556

3 取り組み 542 活動 357 工場 445 従業 287 活動 195 社会 432

4 活動 528 安全 272 活動 290 社会 205 安全 191 技術 400

5 社会 486 品質 252 使用 257 取り組み 177 社会 178 安全 388

 出所) 筆者作成。

4 2017年度自動車メーカーのCSR報告書のうち「環境」と共起する上位10

トヨタ社 ホンダ社 スズキ社 日産社 スバル社 マツダ社

抽出語 頻出回数 抽出語 頻出回数 抽出語 頻出回数 抽出語 頻出回数 抽出語 頻出回数 抽出語 頻出回数 1 取り組み 145(0.234) 安全 59(0.159)レポート170(0.219) 活動 32(0.114) 負荷 39(0.106) マツダ 45(0.084)

2 トヨタ 92(0.148)パフォーマンス54(0.146) CSR 168(0.217)取り組み29(0.104) 社会 32(0.087) 社会 40(0.075)

3 チャレンジ 67(0.108) 品質 44(0.119) スズキ 66(0.085) 社会 28(0.100) 活動 31(0.084) 負荷 38(0.071)

4 活動 57(0.092) 人材 44(0.119) 保全 55(0.071) 負荷 26(0.093) 当社 25(0.068) 活動 35(0.065)

5 Sustainability 53(0.085) Honda 33(0.089) 活動 49(0.063) 課題 22(0.079)SUBARU 24(0.065) 安全 33(0.062)

6 Book 53(0.085) 社会 32(0.086) 負荷 48(0.062) 改善 19(0.068) 事業 22(0.060) 保全 30(0.056)

7 Data 53(0.085) 活動 22(0.059)取り組み 40(0.052) 17(0.061)マネジメント 22(0.060)マネジメント27(0.050)

8 44(0.071) 負荷 22(0.059) 物質 37(0.048) 影響 15(0.054) 管理 18(0.049) 性能 27(0.050)

9 推進 41(0.066) 地球 20(0.054) 社会 31(0.040) クルマ 14(0.050)取り組み 18(0.049) 低減 22(0.041)

10 地域 38(0.061) 取り組み 17(0.046) 推進 27(0.035) 企業 14(0.050) 保全 18(0.049) 教育 22(0.041)

  注) 日産社については 8 位「動」,9 位「針」を除いた結果である。

 出所) 筆者作成。

(12)

「サプライヤー」は日産社とマツダ社に,「世界」はトヨタ社とホンダ社,日産社に,

「グローバル」はトヨタ社と日産社に出てきたものの,「途上国」あるいは特定の国名や地 域名は該当しなかった。

次に,「社会」はどのような語と共に用いられているのだろうか。それを示したのが,

5である。

まず,「社会」という語と多く共起しているのが「貢献」である。ホンダ社の場合は37 位に入っている。社会のなかでも,具体的に何と特定しているわけではなく,CSRを「社 会貢献」という文脈でとらえている可能性が高い。

次に多いのが,「地域」である。トヨタ社の場合は13位,ホンダ社の場合は,17位に 入っている。「経済」も多い。同様に多いのが「持続」である(トヨタ社13位,日産社

12位,ホンダ社14位,マツダ社19位)。

他方,個別にみてみると,ホンダ社とスズキ社は「社会」との関連で「ガバナンス」を 挙げているところが特徴的である。「サプライ」あるいは「サプライチェーン」はホンダ 社とマツダ社にのみ,「世界」は日産社のみ,「グローバル」はトヨタ社と日産社のみ共起 した。特定の国名や地域名,「途上国」は共起していなかった。したがって,「社会」に関 連付けられた「地域」とは決して具体的な場所を示しているわけではないことがわかる。

2.SDGs との関連性

本節においては,前節の結果を踏まえつつ,各社のCSR報告書内に示されている情報 とSDGsの関係性を分析する。頻出150語のうち,SDGsの目標17から抜粋したキーワー ドがどれだけ報告書内の「語」と関連しているのかを分析した。その結果をまとめたもの が,表6である。

5 2017年度自動車メーカーのCSR報告書のうち「社会」と共起する上位10

トヨタ社 ホンダ社 スズキ社 日産社 スバル社 マツダ社

抽出語 頻出回数 抽出語 頻出回数 抽出語 頻出回数 抽出語 頻出回数 抽出語 頻出回数 抽出語 頻出回数 1 取り組み 150(0.329) 活動 121(0.492) 環境 31(0.270) 貢献 49(0.251) 貢献 41(0.238) 貢献 219(0.508)

2 貢献 89(0.195)サプライチェーン47(0.191) 地域 25(0.217) 環境 30(0.154) 責任 36(0.209) 活動 43(0.100)

3 Book 65(0.143) 環境 47(0.191) 貢献 19(0.165) 地域 30(0.154) 環境 32(0.186)マツダ 43(0.100)

4 Sustainability 65(0.143) Honda 32(0.130) 活動 16(0.139) 活動 26(0.133) 推進 19(0.110) 環境 42(0.097)

5 Data 65(0.143) 実現 23(0.093) スズキ 14(0.122) 企業 18(0.092) 活動 19(0.110) 影響 28(0.065)

6 活動 59(0.129) 地域 21(0.085) 発展 12(0.104)取り組み17(0.087) 企業 16(0.093) 地域 24(0.056)

7 豊か 41(0.090) 経済 15(0.061) 組織 11(0.096) 可能 16(0.082) 持続 15(0.087) 課題 23(0.053)

8 実現 39(0.086) 組織 15(0.061) 経済 11(0.096) 実現 15(0.077) 可能 14(0.081) 地球 23(0.053)

9 トヨタ 36(0.079) 影響 15(0.061) 影響 10(0.087) 指す 14(0.072) 地域 14(0.081)クルマ 21(0.049)

10 地域 33(0.072) ガバナンス 14(0.057)ガバナンス 10(0.087) 課題 14(0.072) 経済 12(0.070) 経済 20(0.046)

 出所) 筆者作成。

(13)

頻出150語の範囲内において,SDGsの29キーワードはほとんど触れられていないこ とがわかる。ただし,「安全」や「教育」「エネルギー」そして「リサイクル」等特定の語 に集中して共通し言及されていることがわかる。共起している語もしていない語も6社は 共通した傾向を示している。

3.報告書全体にみる SDGs

前節までは,頻出回数上位150語のなかでどのような語が表れているのか,SDGsの キーワードとどれだけ共起しているのかをみてきた。本節においては,より範囲を広げ上 位150語に限らず報告書全体でSDGsのキーワードとどれだけリンクしているのかをみて みる。その結果が表7である。

共通して多いのは,「健康」「安全」「教育」「エネルギー」「リサイクル」である。

6 頻出150語にみるSDGsキーワード:6社の合計 SDGsキーワード 150全体

1 貧困 0

2 飢餓 0

3 健康 2

4 福祉 0

5 安全 6

6 教育 6

7 生涯学習 0

8 ジェンダー平等 0

94

10 衛生 1

11 エネルギー 5

12 経済成長 0

13 ディーセント・ワーク 0

14 産業化 0

15 インフラ 0

16 イノベーション 0

17 技術革新 0

18 不平等 0

19 持続可能な都市 0

20 人間居住 0

21 持続可能な消費 0

22 有害廃棄物 0

23 再利用 0

24 リサイクル 5

25 気候変動 0

260

270

28 平和 0

29 パートナーシップ 0

 出所) 筆者作成。

(14)

なかでも最も多かった「安全」については,製品の安全性や生産工程における安全性な どに関連しているのはもちろん,SDGsターゲット3.6「2020年までに,世界の道路交通 事故による死傷者を半減させる」という自動車産業に直接的に関連しているものがあるた めであると考えられる。また,「エネルギー」及び「リサイクル」については,前節に示 したように「環境」についての記述が多いことに関連していると考えられる。例えば,

「エネルギー」が具体的にどのような言葉と関連付けられているのかみてみると,「温暖化 対策」,「持続可能性」,「代替(エネルギー)」,「再生可能(エネルギー)」,「消費量」,「使 用量」といった語が各社共通して「エネルギー」と関連付けられている。

このなかで「教育」については,やや異質な印象を受ける。そこで,「教育」が何と共 起して出てきているのかについてもみてみることにする。そもそも「教育」の場合,

7 2017年度CSR報告書におけるSDGs29語の頻出回数

SDGsキーワード トヨタ社 ホンダ社 スズキ社 日産社 スバル社 マツダ社

1 貧困 0 3 0 4 1 3

2 飢餓 0 1 0 1 0 3

3 健康 51 29 13 29 45 61

4 福祉 13 1 5 1 5 29

5 安全 193 272 168 146 191 388

6 教育 55 56 68 47 45 124

7 生涯学習 0 0 0 0 0 0

8 ジェンダー平等 0 0 0 1 0 2

9151 85 64 1 44 33

10 衛生 12 20 23 0 55 36

11 エネルギー 89 115 33 86 32 122

12 経済成長 0 0 0 0 0 0

13 ディーセント・ワーク 0 1 0 0 1 3

14 産業化 0 0 0 0 0 0

15 インフラ 10 4 3 16 2 13

16 イノベーション 2 8 2 7 2 14

17 技術革新 0 0 0 0 0 0

18 不平等 0 0 0 0 0 1

19 持続可能な都市 18 11 7 23 0 2

20 人間居住 0 0 1 0 0 3

21 持続可能な消費 0 0 0 0 0 0

22 有害廃棄物 0 0 0 0 0 0

23 再利用 0 0 0 0 0 0

24 リサイクル 81 58 161 29 36 95

25 気候変動 0 0 0 0 0 0

262 8 2 1 1 2

270 0 6 0 0 1

28 平和 0 1 0 4 0 4

29 パートナーシップ 10 1 2 7 1 0

  注) 19 については「都市」で検索し,KWICで文脈上該当していればカウントしている。20「居住」も同様。

 出所) 筆者作成。

(15)

SDGsが対象としているのは,子供(ターゲット4.1,4.2,4.a),すべての人々―高等教 育へのアクセス(4.3),若者・成人(4.4,4.6),障害者,先住民,子供(4.5,4.a),学習 者(4.7),開発途上国,特に後発開発途上国および小島開発途上国,並びにアフリカ諸国 を対象とした(4.b,4.c)というようなステイクホルダーである。

まず,「教育」との関連語検索において頻出回数上位150語のなかに,全社共通して

「先住民」,「障害者」,「子供」,「若者」,「成人」,「学習者」,「途上国」という語はなかっ た。次に,対象をすべての報告書内の語とし「教育」と共起する語を探すと,トヨタ社,

スズキ社,マツダ社は,上位に「社員」「従業員」と関連付けられていることがわかる。

例えば,スズキのサステナビリティ報告書においては,1.新入(Jaccard 0.0795)2.社員

(同0.0614。なお,共起ネットワーク図より「新入社員」を示しているものと思われる),

6.社内(同0.0476)となっている。マツダ社,トヨタ社においても「教育」は「学校」

との関連付けられているところもあり,スズキ社においても29位に「生徒」が出てくる が,少なくとも各報告書上はいずれも国内における活動であり,SDGsが示しているよう な途上国における活動とは強く関連付けられてはいない。

日産社においては,スズキ社同様SDGs内にあるような「子供」「若者」「成人」「障害 者」「先住民」「学習者」あるいは「途上国」という語は出てこないものの,従業員関連は 挙がっていないという点でスズキ社とは異なる結果となった。すなわち,1位「学校」

(Jaccard… 0.1020),4位「理科」(同0.0698。さらにこれらには子供,中学校,学校とい う語が共起している),5位「助成」(同0.698。「子供」,「教育実践」「学校」,「教材費」

といった語が「教育,助成」に共起している)。10位「中学」(同0.0465)について,タ イや中国の中学校支援がかかるのも特徴の1つである。この点はホンダ社も同様であり,

9位に「トルコ(0.0526)」,26位「タイ(0.0227)」等特定の国において教育支援を行っ ていることがわかる。

このように「教育」といってもその対象は企業によって異なる。前述したようにSDGs が用いる「教育」の主な対象は「従業員」ではないが32),国内や進出先国における「教育」

32) 従業員に対する教育が該当するとすれば,以下の項目であるが,当該企業が対象としている ものとは異なる印象を受ける。4.3 「2030年までに,全ての人々が男女の区別なく,手の届く 質の高い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにす る」,4.4「2030年までに,技術的・職業的スキルなど,雇用,働きがいのある人間らしい仕事 及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる」,4.7「2030年までに,

持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル,人権,男女の平等,平和及び非 暴力的文化の推進,グローバル・シチズンシップ,文化多様性と文化の持続可能な開発への貢 献の理解の教育を通して,全ての持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得 できるようにする。」

(16)

が共通して実施されており,1つのキーワードとなっていることがわかる。

Ⅴ 結びにかえて

現在,企業を取り巻く世界的な経営環境においては,技術的な側面だけではなく社会的 な側面における変化も著しい。多国籍企業はSDGsに代表されるような国際社会が抱えて いる様々な課題について,直接的に起因しているものについてはもちろん,関与していな いものについても,その影響力や有する資源の豊富さから解決を求められている。本稿に おいては,現在日本の自動車産業がこうした課題についてどのように取り組んでいるのか について,CSR報告書を用いてテキスト分析を試みることにより,SDGsに取り上げられ ている課題とCSR活動の関連性について概観してきた。結果,6社共通して「環境」に 焦点をあてていることが定量的に確認されたと同時に,ややそれに偏重していることも明 らかになった。

しかし,企業のすべての活動がCSR報告書に反映されるわけではなく,決して記載が 多くないものの特徴的な取り組みも見受けられたが本稿で取り上げることはできなかっ た。特に,6社共通した部分については触れられたものの,数社のみが関連している取り 組みについても扱うことができていない。

例えば,表7より「飢餓」と「平和」については,ホンダ社,日産社,マツダ社が,

「ディーセント・ワーク」については,ホンダ社,スバル社,マツダ社が取り上げてい る。「ジェンダー平等」は日産社とマツダ社,「人間居住」はスバル社とマツダ社,「不平 等」についてはマツダ社のみが取り上げている。つまり,マツダ社の場合非常に広範で他 社が取り上げていないテーマにも言及していることがわかる。このような取り組み方が自 社のガバナンスに由来するものであるのか,海外進出状況に合わせた結果であるのかと いった部分について明らかにすることは,今後の課題となる。加えて,本稿においては 2017年のサステナビリティ報告書についてのみ対象としているが,過年度分について同 様に分析することにより,どのように取り組みが変化してきたのかをみることができると 考えられる。

参 考 文 献

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所伸之編著(2017)『環境経営とイノベーションー経済と環境の調和を求めて』文眞堂。

根岸可奈子(2018)「日本企業のCSRにおける行動規範に関する一考察 国連グローバル・コンパク トを中心に」アジア経営学会編『アジア経営学会誌』第24号,137-147ページ。

星野裕志(2013)「企業と非営利組織の連携(Cross…Sector…Collaboration)―開発途上国への参入―」

(17)

国際ビジネス研究学会編『国際ビジネス研究』第5巻,第2号,1-14ページ。

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参照

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United Nations Development Programme ( 2001 ) Human Development Report 2001, London: Oxford University Press. United Nations Framework Convention on Climate Change (

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