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持続可能性指標における集約的な経済指標での環境評価の比較分析

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(1)持続可能性指標における集約的な 経済指標での環境評価の比較分析 氏 川 恵 次. な概念でいえば広義の Sustainability Indicator. 1.はじめに . (持続可能性指標)に該当するといえる.同指. 環境省による第三次環境基本計画(2006 年 4. 標については,各国・地域で多種多様な種類が. 月閣議決定)では,同計画の効果的な実施のた. 併存し,枚挙にいとまがない.ここでは,近年. め に,①各重点分野(10 分野)に 掲 げ た 個々. とりまとめられた 2 つの代表的なサーヴェイを. の指標を全体として用いた指標群,②環境の各. とりあげることにしよう.. 分野を代表的に表す指標の組み合わせによる指. その一つ目は,2009 年にとりまとめられた. 標群,③環境の状況等を端的に表した指標,と. 国立環境研究所による研究報告(以下,「NIES. いう 3 種類からなる総合的環境指標を設定して. 報告書」と称する.NIES とは同研究所の英称. おり,毎年,中央環境審議会で点検を行うこと. National Institute for Environmental Studies. を定めている1).. の略)では,「持続可能な発展指標」について. このうち,①と②は比較的多数および少数の. 26 カ国 1,528 指標に渡る包括的なレビューが行. 指標群からなっており,個別指標の損失が少な. われている.とくに,各国・地域・国際機関が. く,多様な評価が可能であるとされている.他. 策定した指標に重点を置いた特徴の把握がなさ. 方で③の環境の状況等を端的に表した指標(表. れており,多数の指標群を社会・環境・経済・. 1)は,集約的な単一指標を指しており理解が. 制度の各分野へと独自に区分して整理するに. 容易であるが,多面的な評価が困難になる等の. 至っている2).. 特徴がある.同表でみると,順にデカップリン. また二つ目としては,フランスの Sarkozy. グ指標,資源生産性指標,エコロジカル・フッ. 大統領 に よって,Stiglitz, Sen, Fitoussi が 中心. トプリント指標と呼ばれるものが代表的なもの. となり組織した委員会が同年に出した報告書. としてあげられている.. (以下,「CMEPSP 報告書」と称する.注 3 参照). 以上 3 つの指標は,前 2 者は単一の貨幣単位. があげられる.現在の健康・福祉(Well-being). と物量単位の組み合わせ,後者は物量単位によ. は所得などの経済的な資源や人々の生活の非. る単一指標であるが,さらにもう一つ環境コス. 経済的 な 側面 に よ る も の で あ り,持続可能性. ト指標と呼ばれる単一指標が存在する.これに. (Sustainability)とは将来の世代に渡る自然や. は,周知のグリーン GDP や限界削減費用によ. 人間・社会などの資本ストックに依存するもの. る環境負荷の推定等,貨幣単位での集約化を行. として,各々の評価を峻別し,さらに複数の提. い,一国の環境負荷を測る指標が含まれる.. 言を行っている3).. 環境省が呼称する総合的環境指標は,一般的. CMEPSP 報告書 は 3 章構成 と なって お り 相.

(2) 14. (324). 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 3 号(2011 年 9 月). 表 1 環境の状況等を端的に表した指標 指 標. 内 容. 環境効率性を示す指標. ・当面,「二酸化炭素排出量÷ GDP」を使用 ・環境負荷と経済成長の分離の度合いを測るデカップリング指標の一つ ・二酸化炭素の排出量は,他の多くの分野の状況も,そこに何らかの形で反映されているとみるこ とができ,総合性の高い指標と言える ・関連するデータは幅広く入手可能であり,国際比較も可能 ・必ずしも総量削減を意味しないこと,各国の条件に差があることなどから,国際的には,このよ うな指標として,生産量ベースでの比較など様々な手法が提案されていること等の留意点がある. 資源生産性を示す指標. ・当面,「GDP ÷天然資源等投入量」を使用 ・天然資源等投入量は,資源の有限性の観点に対応しているだけでなく,採取に伴い環境負荷が生 じること,また,それらが最終的には廃棄物等となることから,複数の分野に対応しうる総合性 の高い指標である ・物質フローを表す指標であると同時に,環境効率性を表す指標でもある ・循環基本計画において既に数値目標が設定され,毎年度算定されている ・イギリス,ドイツなど EU 諸国においても数値を算出しており,また,OECD では加盟国が共通 で利用できる資源生産性を含む物質フロー指標の開発が進められているなど,国際比較可能性を 有している ・少量だが有害な物質が埋没する等の留意点がある. 環境容量の占有量を示すエ ・地球上の有限な土地の面積に着目して持続可能な水準の超過を訴える概念が直感的分かりやすさ コロジカル・フットプリン に優れ,「環境容量の占有量」として数値を解釈できる トの考え方による指標 ・WWF の定期的なレポートなどによって国際比較を行った結果が発表されており,今後の国際的 比較可能性も期待できる ・環境基本計画の点検等において活用するためには,早期に算定の細目・体制を確立していく必要 がある 出所 環境省(2006)より抜粋.. 互に関連性はあるものの,とくに第 3 章の持続. 小論 で は 総合的環境指標 の 中 で,幾 つ か の. 可能性にかんする議論では,持続可能性を測る. 代表的な環境コスト指標を対象にして,その環. に実践的な(pragmatic)アプローチを用いる. 境費用の貨幣単位での評価のあり方について,. べきこと,具体的には複数の基礎的なストック. 若干の比較検討を試みる.構成としては,2 節. 指標の組み合わせを必要として,とくに持続可. で NNW/ISEW/GPI,3 節 で SEEA,4 節 で. 能性の環境面については,例えば気候変動や漁. GS/ANS という諸指標について検証し,5 節で. 業資源の枯渇という環境被害の危険度を明らか. まとめと若干の展望についてふれておきたい.. にするような,一連の物量(physical)指標に 基づくべきとされている4).. 2.NNW/ISEW/GPI . 指標の評価をめぐっては,上記の 2 つの報告. NNW(Net National Welfare,国民純福祉)は,. 書のうち,とくに NIES 報告書では多数の個別. 1973 年時の経済企画庁経済審議会 NNW 開発委. 指標群に重点を置き,独自の指標を試行的に構. 員会によって,当時の公害の激化や交通事故の. 築している.他方 CMEPSP 報告書では,従来. 増大,他方,市場で購入可能な財・サービスの. の GDP の検証に基づき,高度に集約化された. みで満たされない欲求の増大,という背景の下,. 指標に重点を置いた検討を行っている.さらに. 国民所得概念に基づきつつもこれを修正し,同. はグリーン GDP に代表される環境コスト指標. 概念によって評価されていない要素を貨幣額で. の意義・限界と,これに代替されうるべき指標. 計測し,これを加除することで新たな福祉の指. としての物量指標の可能性を指摘している.. 標を構築することを目的として,推計された..

(3) 持続可能性指標における集約的な経済指標での環境評価の比較分析(氏川). (325). 15. 同指標の性質としては,第一に,従来国民所. と NNW が参照されている.実際,表 2 をみる. 得で評価されていなかった項目を擬制的に消費. と各項目が NNW を基に設定されており,個別. とみなして算定し,他方一部は除外した上で,. 項目上の変化として,所得分配の不平等の追加,. 年間の消費をフロー量として計測するものであ. 余暇時間の削除,騒音公害の費用をはじめ,複. る.また NNW は経済福祉の指標であるが,こ. 数の環境汚染という負の擬制的評価項目の追加. のように扱う指標の項目を擬制的に貨幣評価可. が主たるものとなっている7).. 能なものに限定し,主観的な要素は可能な限り. その後 1995 年には,Cobb,Halstad,Rowe. 排除することを意図している.さらに有効需要. らを編者として,アメリカの学術的 NGO であ. 指標としての国民純生産に完全に代替しうるも. る Redifining Progress か ら,GPI( Genuine. のでなく, あくまで補完的な福祉の指標である.. Progress Indicator,真 の 進歩指標)の 推計 が. そして社会指標をはじめとする非貨幣的指標に. 出された8).構成上は,ほぼ ISEW を踏襲して. 配慮し,同指標群との並列的な活用が想定され. おり,方法論上もとくに大きな変化はない.し. ていた5).. かしながら表 2 で個別項目の主要な変化をみる. NNW の 構成 と NDP(国内純生産)の 関係. と,ボランティア活動の価値を新たに算定して. については,表 2 の第 1~2 列を参照されたい.. いる他に,政府消費の項目において犯罪の費用,. NNW の構成上の特徴として,①擬制的評価を. 家庭崩壊の費用,余暇時間の喪失,不完全雇用. 伴 わ な い NNW 個人消費 お よ び NNW 政府消. の費用など,NNW 推計では枠組みとして想定. 費,②擬制的評価項目としての政府資本財サー. されながらも実質上は算定されなかった,マイ. ビス,個人耐久消費財サービス,余暇時間,市. ナスの擬制的な評価項目が具体化されている.. 場外活動,③同じく擬制的評価項目のうち常に. さらにより具体的な構成について,比較的手. マイナス項目となる,都市化に伴う損失,環境. 法が整備されている NNW を対象に各項目に. 維持経費,環境汚染,の 3 種類に大きく分けら. 即してみていくことにしよう.. れる.. ① NNW 個人消費:同項目 は,NDP に お け る. ここで NNW の考え方で特徴的なのは,付加. 個人消費 か ら,a.耐久消費財購入費,b.通. 価値の増大でなく,あくまで福祉あるいは便益. 勤費,c.個人的事業経費 を 控除 し て い る.a. の増大を測定する指標であるため,フロー量の. については投資支出とみなして控除し,b およ. うち福祉に直結しない資本減耗引当分などの投. び c については,各種個人消費の中でいかに対. 資は控除される点にある.投資のフロー量は期. 象を設定するか諸説がみられるが,NNW では. 間におけるストック量となるが,ここから得ら. Tobin-Nordhaus の先行例で採用している交通. れる各種の便益が計上される,という仕組みに. 費,個人的事業経費のみを控除している9).. なっている6).. ②市場外活動(家事労働):市場外活動 か ら の. NNW の 推計 が 出 さ れ た 後,1989 年,エ コ. 主要 な 便益 の 一項目 と し て,Nordhaus-Tobin. ロジカル経済学の泰斗である Herman E. Daly,. や Shamseddine 等の先行例に倣い,具体的に. John B. Cobb, Jr. らの手により,その著作「For. は各種の家事労働に市場単価を乗じ,技術進歩. the Common Goods」で の 具体的 な 指標 の 提言. を考慮した個人消費支出デフレーターで実質化. と し て ISEW( Index of Sustainable Economic. するというものである10). . Welfare,持続可能な経済福祉指標)の方法論と. ③個人耐久消費財 サービ ス:NDP で は,購入. 推計が打ち出された.Daly らが同書で明記して. 時 で の 消費支出 に の み 一括計上 し て い る が,. いるように,ISEW の方法論の開発と推計に際. NNW では家計資産ストックとしての個人耐久. し て は 主 と し て Nordhaus and Tobin,Zolotas. 消費財サービスの利用時における便益につい.

(4) 16. (326). 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 3 号(2011 年 9 月). 表 2 NDP/NNW/ISEW/GPI の各構成 NDP 個人消費. NNW NNW 個人消費. ISEW. GPI. 個人消費. 個人消費(+). 所得分配の不平等. 所得分配(消費調整). 加重個人消費(B/C). 加重個人消費(B/C). 市場外活動(家事労働). 家事労働サービス(+). 家事労働と子育ての価値(+). 個人耐久財消費サービス. 耐久消費財サービス(+). 耐久消費財サービス(+). 政府資本財サービス ?. 高速道路・街路サービス(+). 政 府 資 本(高 速 道 路・ 街 路) サービス(+). ボランティア活動の価値(+). 政府消費. NNW 政府消費. 健康 と 教育 へ の 公共支出改善 (+) 犯罪の費用(-) 家庭崩壊の費用(-). 余暇時間. 余暇時間の喪失(-) 不完全雇用の費用(-) 耐久消費財への支出(-). 耐久消費財の費用(-). 防御的個人支出 - 健康 と 教育 (-) 都市化 に 伴 う 損失(通勤事情 通勤の費用(-) の悪化) (-) 環境維持経費(-). 通勤の費用(-). 個人の環境汚染管理費用(-) 家計の環境汚染除去費用(-). 都市化 に 伴 う 損失(交通事故 交通事故の費用(-) 被害の増大)(-). 交通事故の費用(-). 環境汚染(水質汚濁)(-). 水質汚染の費用(-). 水質汚染の費用(-). 環境汚染(大気汚染)(-). 大気汚染の費用(-). 大気汚染の費用(-). 騒音公害の費用(-). 騒音公害の費用(-). 湿地の損失(-). 湿地の損失(-). 農地の損失(-). 農地の損失(-). 再生不能資源の減少(-). 再生不能資源の減少(-). 長期の環境被害(-). その他の長期の環境被害(-). オゾン層破壊の費用(-). オゾン層破壊の費用(-). 環境汚染(廃棄物)(-). 原生林の損失(-) 国内総資本形成(純投資のみ) NNW 純投資. 純資本成長(+). 純資本投資(+/-). 輸出. 国際的地位の純変化(+). 純対外借入・貸付(+/-). 出所 経 済 審 議 会 NNW 開 発 委 員 会 編( 1973), pp. 6─7, 140─160, Daly H., Cobb J.( 1994)pp. 462─463, Cobb C., Halstead T., Rowe J.(1995),pp. 9─10.. て,純ストック額をインベントリー法で測定し. 財ストックから得られる便益について,③と同. た上で機会費用により推計している.. 様な評価手法によって,擬制的な消費として計. ④政府資本財 サービ ス:従来 NDP で は,政府. 上している11).. 資本財(社会資本)へのフロー量としての投資. ⑤ NNW 政府消費:NDP に お け る 政府消費 か. 額のみを計上しているが,NNW では政府資本. ら,司法・警察費,一般行政費用等 を 控除 し,.

(5) 持続可能性指標における集約的な経済指標での環境評価の比較分析(氏川). (327). 17. 教育費,保健医療費,社会福祉費,研究開発費. している13).. 等を計上している.上記費用が控除されたのは. ⑨環境汚染:他方 で,悪化 し た 環境 を 正常水. 当時の日本の状況において,福祉阻害要因と対. 準 に 戻 す た め に 必要 な 費用 を 帰属減価費用. 策費的支出がバランスしているとみなされたた. (imputed cost of deterioration)と し て 貨幣単. めであり,地域・時期別の状況に応じて別途マ. 位での評価を試みている.ここで正常水準とし. イナス項目の計上が必要となる.. て の 環境基準 と し て,行政目標値 で あ る 現在. ⑥余暇時間:所得および余暇の増加について一. の環境基準でなく過去の実際の環境状態を採. 国の消費者が選択を行い,両者の労働時間あた. 用し,費用の計算が行われている.すなわち. りの限界効用が等しくなるとみなして,年間余. ま ず 代表的 な 環境汚染因子 と し て,水質汚濁. 暇時間数を平均賃金で評価している.このよう. (BOD) ,大気汚染(固定発生源:SOX,すす・ふ. に②の家事労働,⑥の余暇時間については,効. んじん,移動発生源:NOX,CO,HC),廃棄物. 用・便益の性質や評価手法をめぐって,性質が. (産業廃棄物,一般廃棄物)を 想定 す る.ま た. 異なるものとして除外する見地も存在する.. 推計方法としては,基準年次の汚染因子排出量. ⑦都市化に伴う損失:想定されうる複数の損失. を自然浄化能力とし,各年次の各汚染因子の全. のうち,通勤事情の悪化による損失と交通事故. 国排出量がこの基準年次の排出用を超過してい. について計上が試みられている.前者について. る分を除去するために必要な所用投資額を年費. は,通勤時間中の片道 30 分を上回る時間を平. 用形式にしたものに所用運営費を加算する手続. 均賃金でマイナス評価し,後者については,交. きをとっている14). . 通事故による人身事故について,損害賠償額で 評価している. さて小論では以下の⑧~⑨の環境にかんする. 3.System of Integrated Environment and Economic Accounting(SEEA) . 項目について,より詳細に検討していこう.上. SNA 体系 に お け る 拡張型 サ テ ラ イ ト 勘定. 記の政府・消費者による防御的支出,都市化に. の 代表例 と し て は,1993 年 の SNA 改訂 の 際. 伴う損失とともに,環境悪化の費用は,マイナ. に 導入 さ れ た,SEEA(System of Integrated. スの擬制的評価で推計される.NNW では直接. Environment and Economic Accounting,環境・. 推計を方法としているが,環境汚染が人間の健. 経済統合勘定)が,周知のものとしてあげられ. 康・生命に与える被害,動植物に与える被害,. る15). . 財産被害等を直接推計することが困難なため,. SEEA で は,従来 の 経済活動 を 対象 と す る. 「環境汚染物質を必要な限度まで適切に処理す. SNA 体系を拡張したサテライト体系内で,伝. るものと仮定した場合に必要となる年々の経費. 統的な SNA 概念の部分と,概念の拡張と修正. の推計」が主として行われている12).. の部分とを有している.前者については A 部. ⑧環境維持経費:以上のうち実際に支出された. 分(伝統的国民勘定のうち環境関連の非集計部. 公害防止費用(actual cost of pollution control). 分),B 部分(環境と経済の相互作用にかんす. は,第 1 に公害対策費として,国および地方公. る物量データ),後者については C 部分(環境. 共団体各々の一般会計中の公害対策費総額から. の経済的利用の追加的評価),D 部分(SNA の. 資本形成分を控除したものを計上している.第. 生産境界の拡張)から成っている.. 2 に公害防止ストックからの帰属サービスの額. ま た SEEA で の 各 ヴァージョン の 関係性 を. として,下水道,し尿処理,ごみ処理にかかる. みることにしよう.ヴァージョンⅠは SNA 体. 公共投資額および大気汚染,水質汚濁,廃棄物. 系の国民所得勘定,供給・使用表,非金融資産. 処理その他にかかる民間公害防除投資額を推計. 勘定等を再構成した基礎的な SEEA 行列であ.

(6) 18. (328). 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 3 号(2011 年 9 月). り,ヴァージョンⅡは A 部分に該当し SNA 体. のように自然資源,土地・地表水,生態系とい. 系から環境関連の諸費用や保護的支出の部分を. う 3 つの資産分類に大別され,さらに細分化さ. 抽出し集計しない扱いとし,ヴァージョンⅢで. れた項目別に SNA の境界内外が設定されてお. は以上の貨幣勘定に B 部分の物量データを加. り,立法メートル,トン,ヘクタール等の物量. えた物量・貨幣勘定となっている.. 単位で測定されうる.. 次 に,ヴァージョン Ⅳ で は C 部分 を 加 え,. すなわち,期首・期末貸借対照表にかかわる. 具体的には帰属環境費用を推計する維持費用評. 諸変動要因の資産勘定が設けられ,取引による. 価(Ⅳ. 2)および市場評価(Ⅳ. 3)の 2 種に分. 変動,ストック水準への追加,ストック水準か. 岐し,ヴァージョンⅤでは D 部分を加え,各々. らの控除,ストック水準のその他変動,の各行. 維持費用評価(Ⅴ. 2)および市場・コンティン. にたいし,鉱物・エネルギー資源,土地資源,. ジェント評価(Ⅴ. 3)へ分岐している.ここで. 水資源,生物資源,土地・地表水,生態系の各. Ⅴでは従来の SNA 体系の外部にある家計や各. 列が設けられ,各々のストック水準が物量ある. 種環境サービスを考慮して,フロー勘定に加え. いは価格で測定されうるか検討されたものと. ストック勘定としての資産勘定を枠組みとして. なっている. . 有することが特徴である16). . さらにこれらの資産勘定をハイブリッド勘定. その後 2003 年には,改訂版である SEEA2003. に組み込んだ例が,付表 1 で示したものである.. が公刊されたが,SEEA1993 での A~D 部分に. 同表 は,国民勘定行列(1-8 行× 1-8 列)に. たいし,1)物量・ハイブリッドフロー勘定,2). 国民資産勘定(6a:生産資産と土地,9a:自然. 既存の SNA における環境関連取引をより詳細. 資源,9b:生態系,11:海外 の 環境)を 統合. に 描写 す る 勘定,3)物量・貨幣単位 で の 資産. したものであり,資産勘定の変動と国民勘定の. 勘定,4)減耗,防御的支出,環境劣化 を 説明. 因果関係を計算上の枠組みで捉えることが可能. する SNA 集計値の拡張勘定,という 4 つの勘. となっている. . 17). 定カテゴリーが設けられた .. さて,4 つ目の減耗,防御的支出,環境劣化. こ の う ち,1 つ 目 の 物量・ハ イ ブ リッド フ. を説明する SNA 集計値の拡張勘定について検. ロー勘 定 は SEEA1993 に お け る ヴァ ージョ. 討しよう.同勘定は SEEA1993 での C 部分を. ン Ⅲ(SNA 体系+ SEEA1993B)に 対応 し て. 考慮したヴァージョンⅣに対応し,減耗,防御. い る と い え る.ま た,2 つ 目 の 環境関連取引. 的支出,環境劣化各々をめぐって,従来の経済. の 詳 細 な 勘 定 は SEEA1993 の ヴァージョン. 集計値を拡張するために調整を付した推計が行. Ⅱ(SNA 体系+ SEEA1993A)に 対応 し て い. われる. . るといえよう.環境関連取引の詳細な勘定は,. 第 1 に減耗については,純営業余剰の計上に. EUROSTAT に よ る 環境保護活動・支出分類. かかわる固定資本減耗のうち,従来の生産資産. (CEPA2000)を 参考 に し て,供給・使用表 お. のみならず,自然資産による価値の減少も控除. よび環境保護への国民支出からなる,環境保護. するという考え方である.つまり生産資産によ. 支出勘定(EPEA)の作成がなされる部分であ. る経済レントに加えて,自然資産による資源レ. る18). . ントが想起され,同費目は資産の便益フローの. さ ら に 3 つ 目 の 物量・貨幣単位 で の 資産勘. 割引価値を市場価格で推計するものとされてい. 定については,仔細をみていくことにしよう.. る19). . 既述 の SEEA1993 で は,D 部分 を も 加味 し た. 第 2 の防御的支出については,環境保護の投. ヴァージョンⅤでストック勘定である資産勘定. 資,政府や産業による環境保護支出,家計によ. の枠組みが設けられている.SEEA2003 でも表 3. る環境保護支出という多様な側面を持ちうる.

(7) Possible. Possible. Probable. Possible. 価値の変動. 資産の分類と構造の変動. 土地に含まれる. 土地に含まれる. Possible. 土壌侵食. 出所 United Nations et al. 2003 pp. 266-267.. Unlikely. 再評価(例,proven → probable). 採取. 再評価(例,probable → proven). 発見. 壊滅的な損失および 補償されない没収. ストック水準のその他の変動. 機能の変化による再分類. 質の変化による再分類. [自然資源の採取および 非生産資産の環境劣化]. 控除. ストック水準からの控除. 機能の変化による再分類. 質の変化による再分類. [発見および自然な成長/生長]. 新たな追加. ストック水準への追加. Possible. Probably not relevant. Possible. 流出量,蒸発散量,取水. 自然流量,降水,取水の循環. Possible. Probable. Possible. 生産への転換有り. 非生産からの転換有り. Unlikely(土地に含まれる部分以外) Not applicable. 採取・収穫に包含されうる. 非生産資産の取得マイナス処分 Theoretically possible. 固定資本減耗. 非生産. Possible. Probable. Possible. 自然死. 採取・収穫. 生産からの転換有り. 成長/生長. Theoretically possible. Usually possible. Usually possible. 生物資源. 採取・収穫(negative) 自然死(negative). 生産. 成長/生長(positive). Doubtful(部分的に土地に含まれる) Possible. Possible(少なくとも部分的に). 水資源. 総資本形成. 土地に含まれる. 土地に含まれる. Possible. 土壌資源. [総固定資本形成 および在庫品変動]. 取引による変動. Possible. (価値). 鉱物・エネルギー資源. (物量). ストック水準. 表 3 環境資産別の会計項目. Possible. Probable. Possible. 土地カテゴリー変化. 土地カテゴリー変化. Occurs regularly. 土地改良の減価. 土地改良. Possible. Possible. 土地・地表水. not relevant. Possible. Possible. Possible. Possible. Possible. Usually possible(複合的資産の部分としてのみ). Some quantity measure may be possible(例,面積). 生態系. 持続可能性指標における集約的な経済指標での環境評価の比較分析(氏川) (329) 19.

(8) 20. (330). 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 3 号(2011 年 9 月). 表 4 費用ベース評価法の分類. 必要とされており,とくに概念上の集計の問題. 回避費用(Avoidance costs) 構造的調整費用(Structural adjustment costs) 活動の削減あるいは完全な停止 生産および消費パターンの変化 削減費用(Abatement costs) 同様の産出を達成するための投入の代替および技術変化 処理費用(エンドオブパイプ,安全処分等) 復元費用(Restoration costs). との関係では,ミクロ・メゾ・マクロの各経済. 出所 United Nations et al.(2003)p. 396.. 勘定レベルでの削減費用の勘定の差異性が述べ られている. さらに実際的な側面あるいは方法の限界とし て,直接・間接費用を含む各種技術的手段の総 費用の推計に際し,技術的削減手段・汚染物質 各々の関係性,削減手段の不適合性,技術統合 の手段の不確実性等が 1 次的なデータではほと. が,その推計方法は実際の支出額を経済集計値. んど考慮されていないことがあげられている.. から控除するものとなっている20). . 加えて環境保全とその他費用の峻別の困難性,. 第 3 に環境劣化にかんしては,環境劣化を貨. ここでの費用推計が追加的な環境劣化による被. 幣単位で評価し経済集計値から控除するとい. 害を表すものでないことが指摘されている21).. う 考 え 方 で あ る.SEEA2003 で は,費用 ベー. 他 方 で 被 害・便 益 ベース 評 価 法 の う ち,. ス 評価法 と 被害・便益 ベース 評価法 と を 設 け. SEEA1993 の ヴァージョン Ⅳ. 3 で は い わ ゆ. ており,これらは SEEA1993 の引き起こされ. る CVM が 主 た る 手 法 の 1 つ で あ っ た が,. た費用(cost caused)と負担された費用(cost. SEEA2003 でも表 5 のように,環境評価手法に. born)に対応していると考えられる.とくに. おける顕示選好法や表明選好法に言及がなされ. 費用 ベース 評価法 の う ち,と く に SEEA1993. ている.. で の ヴァージョン Ⅳ. 2 の 維持費用評価法 は. まず被害評価については,量(dose)として. SEEA2003 でも主たる手法の 1 つとされてお. の大気中濃度と反応(response)としての物的. り,回避費用(構造的調整費用,削減費用) ,. 被害,または原因としての汚染と特定の結果. 復元費用からなっている(表 4) .. の関係をはかる量─反応関数(Dose-response. まず回避費用のうち構造的調整費用は,D 部. functions)があげられている.数理的には一. 分においてモデリングでの推計がなされる.ま. 定の汚染量が生産,資本,生態系,人間の健康. たここでの復元費用とは,SNA での資産との. 等にどれだけ影響を及ぼすかかが定式化され. 関連性が存在しておらず勘定されていない費用. る.. を指している.方法論上の仮定としては現在の. 量─反応関数の推計は,とくに大気汚染にか. 環境劣化費用の 1 つであり,国民勘定体系の外. んする汚染濃度からの環境被害の定量化に寄与. 部においてある基準に環境を復元する費用とい. してきたが,量─反応関数を導出する上で水. う意味で重要であるとされている.. 質・土壌汚染にかんする交絡因子がより重要で. さて削減費用については比較的詳細である.. あり,また既存の量─反応関数の不確実性が存. まず概念上の留意点としては,CO2 やその他の. 在するとされている22).. 環境汚染物質により異なる削減費用曲線での費. 次 に 便益・被害評価 に つ い て で あ る が,. 用計算の複雑性,技術進歩や規模の経済による. SEEA2003 でとりあげられている顕示選好法. 削減費用の時間的な変化があげられている.ま. や表明選好法での個別の手法は既に一般的なも. たデータについては,各種の経済活動および各. のがほとんどである.ここでは SEEA2003 で. 種技術の特性に応じた生産過程を基礎とする排. の勘定に際する評価を整理しておきたい. . 出のデータ,利用可能な削減技術・手段のパラ. 第 1 に,直接的な顕示選好法である市場価格. メーターおよび各手段の費用データ,の 3 種が. 評価では,現状では市場で扱われていない財・.

(9) 持続可能性指標における集約的な経済指標での環境評価の比較分析(氏川). サービスのみならず,通常の市場での取り扱い が難しいものも存在するため,実際の評価の際 には困難が伴う. 第 2 に,間接的な顕示選好法のトラベルコス ト法および価格法分析については,対象としう る環境サービスや資産,さらには経済的損失の 範囲が限られており,したがって国民経済の視. (331). 21. 表 5 便益/費用評価手法の分類 顕示選好法 直接的:市場価格評価 間接的:ヘドニック価格分析,トラベルコスト法 表明選好法 直接的:コンティンジェント評価 間接的:コンジョイント分析 出所 United Nations et al.(2003)p. 400.. 点での集計に際しても限られたものとされてい る.. の 整理 は 有用 な も の で あ る25).表 6 は 通常 の. 第 3 に,表明選好評価の手法全般にかんして. SAM を拡張した,資源および環境勘定を含む. は,環境サービスの全ての価値が推計され国民. 行列となっている.まず同表の貯蓄勘定から ⑴. 経済のレベルで環境調整済み国民所得の集計を. の式が与えられ,さらに GS/ANS を左辺にと. 行う必要があるが,同手法は地域での小規模な. り ⑵ を得る.. 環境問題に関連したものである.とくにコン ティン ジェン ト 評価法(Contingent Valuation. I+( X-M )+n.g+σ.d ≡ Sg+δK+n.R+σ. e.. Method:CVM)については,有用なデータを. . 収集し有意義な結果を提供するために適切な設. S g ≡[ I+( X-M )+n.g+σ.d ]-[δK+n.R+. 計,試行,実施がなされる必要があり,CVM. σ.e].. ⑴ ⑵ . での質問は明確に定義され,回答者に理解され ている特定の環境サービスや状況に限定される. こ こ で I +(X-M)は,従来 の 国民総貯蓄. 必要性が指摘されている.. の概念に他ならない.また以上の式にたいして,. さらに時間と国境間のフローという重要な留. 人的資本の形成の観点から,教育支出(E とす. 意点についての指摘がなされている.すなわち. る)を追加的に GS/ANS に加える26).その結果,. 前者については,以上の各手法における,環境. GS/ANS と GNP との関係については,上記の. 劣化と被害が同一時期内で関係性を持つという. 式を整理して,以下の式で示すことができる.. 仮定が常に有効ではないことである.後者につ. . いては,国境と生態学的な区分が必ずしも一致. Sg=GNP-C-D-n(R-g)-σ(e-d)+E.. しない問題であり,回避費用の推計に際して,. . ⑶ . 23). 大気や水質汚染の事例が想定されている . 4.Genuine Saving(Adjusted Net Saving). ⑶ において,GNP-C は国民総貯蓄を指し, 民間・政府消費 お よ び 外国貯蓄 か ら 成って お. Genuine Saving(GS,真 の 貯蓄)の 概念 は. り,また D は生産資本の減価すなわち固定資. Hamilton により導入され,従来の純貯蓄が生. 本減耗を指すので,GNP-C-D は純貯蓄を意. 産資本の減価のみを含むのにたいして,後述す. 味している.さらに残りの 3 項はそれぞれ自然. る よ う に,自然資源 の 減少 や 汚染物質 の 蓄積. 資源の減少,汚染物質の純蓄積,人的資本への. 24). をも含む概念である .同様に Adjusted Net. 教育支出を指す.. Saving(ANS,調整純貯蓄)と し て も 呼称 さ. こ の よ う に GS/ANS に つ い て Atkinson ら. れることがある(以下,GS/ANS と記す) .. の定義では,当然ながら上述の SNA 体系上で. 国民経済計算の体系において GS/ANS の概. の GPI,SEEA といった指標と完全に無関係の. 念を捉える上で,Atkinson らによる SAM で. ものではなく,従来の純貯蓄で把握しきれない.

(10) 22. 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 3 号(2011 年 9 月). (332). 表 6 資源および環境を含む社会会計行列 生産. 要素. 生産 要素. 家計. 貯蓄. 外国. C. I. X. 環境. 財・サービスの純処分量 NNP. 貯蓄. δK. 外国. M. Sg. NRP. NEP. 福祉の処分量. n.R. σ.e. 貯蓄の総処分量. (X-M). 資源 環境 ①. 合計 財・サービスの総処分量. NNP. 家計. 合計. 資源. ②. 外国の総処分量. n.g. 総資源生産. pbB. σ.d. 総環境生産. ③. ④. ⑤. ⑥. ⑦. 注 C:消費支出 I:投資 X:輸出 M:輸入 δK:資本ストック変化 Sg:真の貯蓄 NNP:国民純生産 NRP:純資源 生産 NEP:純環境生産 n:資源レント R:資源採取 g:資源の自然純増 σ:汚染物質排出の社会的限界費用 d: 環境劣化(汚染物質)の消失 e:汚染物質の排出量 pb:家計の限界支払意思額 B:家計への便益 ①:人工の財・サービスの総供給 ②:人工の財・サービスの純供給 ③:福祉の供給(MEW) ④:貯蓄の総供給 ⑤: 外国への総供給 ⑥:資源の総供給 ⑦:環境便益の総供給 出所 Atkinson et al.(1997),p. 53 を修正.. 資源の枯渇,環境汚染の蓄積,人的資本の形成. 範囲に含むデータから国際的・国別な社会的限. を内包することを目的として,国民経済計算体. 界費用が推計される27).. 系の貯蓄の観点から把握することを試みている. なお World Bank によっても,ほぼ同様に非. 応用的な指標の一つである.. 再生可能資源,森林喪失,炭素酸化物による損. さて次に,従来の貯蓄概念を超える各項につ. 失が推計されているが,上記の Atkinson らに. いて,いかに測定していくかが課題となる.上. よる推計もふまえると各種の鉱物資源と化石資. 記のうち自然資本として把握される自然資源の. 源を含む非再生可能資源は市場価格からの控除. 減少,汚染物質 の 純蓄積 に つ い て,Atkinson. によるいわゆる市場評価法であり,また森林喪. ら に よ れ ば,非再生可能資源(亜鉛,鉄鉱石,. 失についても,実質上は商業用木材の立木価と. リン鉱石,ボーキサイト,銅,錫,鉛,ニッケ. いう市場評価によって擬制的な評価を行ってい. ル,原油)の資源レントの評価,熱帯林の減少. る.炭素酸化物については,前提としての社会. の評価,CO2 排出の社会的限界費用の評価が具. 的限界費用の推計が必要とされている28). . 体的にあげられている. 第 1 に 資源 レ ン ト の 推計 は,世界銀行等 の. 5.若干の展望にかえて. データに基づいて国際価格から採掘・選鉱・製. 環境を含めた総合的な指標としては,一般に. 錬・輸送の各費用と「標準」株主資本利益を控. 既 述 の NNW,ISEW,GPI,SEEA の 貨 幣 勘. 除することで行われる.第 2 に熱帯林の減少の. 定および物量・ハイブリッド勘定をはじめとす. 推計について,森林喪失の価値を正しく測るこ. る集約的単一指標と,環境・経済・社会・制度. とは土地の価値を測ることであると指摘がなさ. の各側面について複数のサブテーマを複数の指. れているが,FAO 森林評価等のデータの制約. 標ではかる,いわゆる持続可能性指標等の指標. 上商業用木材の立木価に基づいており,生態系. 群とに大別される.日本では環境省によって,. の価値や炭素隔離およびその他の損失について. こうした単一指標,指標群および折衷的な指標. は把握されていない.第 3 に CO2 排出の社会. が総合的環境指標として枠組みが設けられてい. 的限界費用は,化石燃料燃焼とセメント産業を. る..

(11) 持続可能性指標における集約的な経済指標での環境評価の比較分析(氏川). このうち単一指標については総じて,各指 標とも SNA 体系の応用的指標(サテライト) , 実 際 に は,NNW/ISEW/GPI,GS/ANS は 環 境 に か ん す る 費用 の 推計 で,SNA あ る い は SEEA の国民勘定形式,貯蓄勘定形式から観点 をかえたとみることもできよう. 日本の NNW の方法論および推計の提示は, 環境指標を国際的に問う上で大きな意義を有し ていたといえる.また例えば環境費用の推計に あたって,NNW では直接推計の方針にあった とはいえ,実際は市場評価法(既存の実際上の データ・統計による評価)にとどまり,健康被 害やストック公害などへの配慮が将来的な課題 として慎重に保留されていた. この点については,環境と経済との関係にお ける議論のうち,Kapp が提起し,日本では宮 本,寺西らが展開した,広義の社会的費用,社 会的損失,絶対的損失等をいかに評価するか, という重要な論点にもかかわるものとして,さ らに考察されるべき必要があると思われる29). その後,例えば SEEA では 2003 年版の改訂 に伴い,費用ベース評価法および顕示選好・表 明選好法 な ど を 含 む 被害 ベース 評価法等,環 境の貨幣単位での評価への偏向が,改めて疑 問視されることとなってきた.実際のところ, SEEA のみならず NNW およびその後継指標, GS/ANS と い う 各指標 と も に,市場評価法 に よる事例が比較的多く,方法論と実証の側面で 乖離が生じている場合が少なくない. 他方でこれに代替しうるものとして物量指 標,およびより多様な個別指標を含む指標群が あげられるが, こうした指標の包括性,網羅性, 等質性,総合性等が依然問われる必要がある. さらにこれらの非貨幣的指標の統合による指数 化をいかに行うかが,重要な課題として速やか に検討されるべきであろう.. (333). 23. 参考文献 (日本語文献・資料) 有吉範敏(1996) 「環境・経済統合勘定体系(SEEA) の展開─ SEEA 完全体系の基本構造」 『日本 経済政策学会年報』44 号,pp. 217─224. 有吉範敏(2005) 「環境・経済統合勘定 の 展開─ 日本版 SEEA とハイブリッド勘定─」 『産業 連関』13 巻 2 号,pp. 32─41. 大森明(2008) 「マ ク ロ 環境会計 の 展開方向─ SEEA1993 か ら SEEA2003 へ ─」 『横浜経営 研究』第 29 巻,第 1・2 号,pp. 109─141. 桂 木 健 次(1993) 「 「 SEEA 」考(1) :自 然 環 境 の価値評価と経済との統合勘定」 『富大経済 論集』39 巻 2 号,pp. 191─247. 桂 木 健 次(1994) 「 「 SEEA 」考(2) :家 計 生 産 及び環境サービスの評価と投入・産出表」 『富 大経済論集』40 巻 2 号,pp. 255─303. 環境省(2006)第三次環境基本計画,環境省. 経済審議会 NNW 開発委員会編(1973)新しい福 祉指標 NNW,大蔵省印刷局. 国立環境研究所(2009)中長期を対象とした持続 可能な社会シナリオの構築に関する研究 . 国 立環境研究所特別研究報告 SR─92─2009. 作間逸雄(1997) 「わが国における環境・経済統 合勘定の開発とその課題」 『専修経済学論集』 31 巻 3 号,pp. 233─305. 寺西俊一(1984)「社会的損失問題 と 社会的費用 論」『一橋論叢』91(5),pp. 22─41. 牧野松代(2003) 「 『持続可能な発展』の概念と指 標開発の国際的動向」 『商大論集』54 巻 5 号, pp. 153─198. 牧 野 松 代(2008)「『真 の 進 歩 指 標』(Genuine Progress Indicator)の 計 測 : 1970〜2003 年 データ に 基 づ く 改訂版」 『研究資料』223, pp. 1─50. 森田恒幸・川島康子(1993) 「持続可能な発展論」 の 現状 と 課題 . 三田学会雑誌 , Vol. 85, No. 4, pp. 532─561 宮本憲一(1967) 『社会資本論』有斐閣. 除本理史(2007) 『環境被害 の 責任 と 費用負担』 有斐閣. (英語文献・資料) Atkinson G., et al.(1997)Mearsuring Sustainable Development, Edward Elgar Publishing Limited. Cobb C., Halstead T., Rowe J.(1995)The Genuine Progress Indicator─Summary of Data and Methodology, Redefining Progress. Daly H., Cobb J.(1994)For the Common Good: Redirecting the Economy toward Community, the.

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(13) 持続可能性指標における集約的な経済指標での環境評価の比較分析(氏川). 7)Daly, Cobb(1994)pp. 444─507. 8)Cobb, Halstead, Rowe(1995).な お NNW, ISEW,GPI に か ん す る 先行研究 と し て,例 え ば Neumayer E.(2001),Philip A. Lawn (2003),Ohashi T.(2007),牧野(2008)を参照. 9)Nordhaus-Tobin(1972),お よ び 経済審議会 NNW 開発委員会編(1973)pp. 59─64 を参照. 10)Nordhaus-Tobin(1972),Shamseddine (1968),経済審議会 NNW 開発委員会編(1973) pp. 77─80 を参照. 11)以上の③,④については,経済審議会 NNW 開発委員会編(1973)pp. 64─65 を 参照.な お 家計資産のうち住宅については,NDP での帰 属家賃として擬制的に評価されているため,同 項目では耐久消費財ストックのみを対象として いる. 12)op. cit. pp. 80─88. 13)op. cit. pp. 80─88, 137─140. 14)op. cit. pp. 80─88, 140─153. た だ し 大気汚染 の内,すす・ふんじん,廃棄物については,各 年次の排出量を環境汚染の量としている. 15)United Nations(1993) .なお,SEEA1993 と 環境費用をめぐる先行研究としては,代表的な もののうち,桂木(1993),桂木(1994),有吉 (1996),作間(1997),有吉(2005)を参照. 16)以上については,op. cit. pp. 20─33 を参照. 17)United Nations et al.(2003)pp. 2─8, 26─27.. (335). 25. なお SEEA2003 の枠組みにかんする先行研究 として,大森(2008)を参照. 18)United Nations et al.(2003)pp. 9, 47─48, 188─ 200. 19)op. cit. pp. 56─57, 419─424. 20)op. cit. pp. 438─441. 21)以上は,op cite., pp. 396─399 による. 22)op. cit. pp. 400─403. 23)op. cit. pp. 404─411. 24)Hamilton(1994) . 25)Atkinson ら(1997)で は,同書 で 必 ず し も 真の貯蓄概念のみに集約した持続可能性の測定 を意図しているわけではなく,寧ろ SNA 体系 における他の応用的な指標を総合的に吟味し た,貨幣・物量勘定の示唆を与えている点で注 意が必要である. 26)op. cit. pp. 83─84. 27)op. cit. pp. 71─75. 28)The World Bank(1997) ,The World Bank (2002)を参照. 29)社会的費用にかんする主要な先行研究につい ては,Kapp(1950) ,宮本(1967) ,寺西(1984) , 近年では除本(2007)等を参照. [う じ か わ け い じ 横浜国立大学大学院国際社 会科学研究科准教授].

(14) 国民経済. 1. 2a. 2b. 2c. 2d. 3. 4. 5. 6a. 6b. 7. 9a. 8. 生産物の使用. 第 1 次所得の発生. 資産の使用. 自然資源の使用. 第 1 次所得の分配勘定. 所得の第 2 次分配勘定. 所得の使用勘定. 生産資産と土地. 資本勘定. 金融勘定. 自然資源. 海外の経済. 所得の 使用勘定 資本勘定. 金融勘定. 海外の経済. 輸入. 産出. 総付加価値. 中間消費. 減耗調整済 (dp)付加価値. 自然資源減耗. 固定資本減耗. 2b. 2c. 2d. 金融資産の 取得と処分. 7. 輸出. 8. 海外への第 1 次所得フロー. 海外への経常 移転. dp 可処分所得. 海外への純貸 海外への資本 出/海外からの 移転 純借入. 自然資本減耗 (-ve). 純貸出/借入. 資本移転. 海外からの 資本移転. 海外からの 経常移転. 部門別の 純資本形成. 6b. dp 第 1 次所得 バランス. dp 貯蓄. 最終消費. 5. 海外からの第 1 次所得 フロー 経常移転. 4. 財産所得. 3. 固定資本減耗 (-ve). 資産による 資本形成. 期首ストック. 6a. 自然資源減耗 (-ve). 期首ストック. 9a. 自然資源. 非居住者に よる廃物. 資本形成から の廃物. 生産からの 廃物. 生産からの 廃物. 資本形成から の廃物. 消費からの 廃物. 11. 海外の環境. 消費からの 廃物. 期首ストック. 9b. 生態系. (336). 財・サービス(生産物). 所得の第 2 次 分配勘定. 2a. 第 1 次所得 の分配勘定. 1. 自然資源 の使用. 生産資産と 土地. 資産の 使用. 生産物の使用. 財・サービス (生産物). 第 1 次所得の 発生. 国民資産勘定. 国民経済. 付表 1 資産勘定,自然資源減耗調整を含む国民会計行列 26. 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 3 号(2011 年 9 月).

(15) 9b. 10. 11. 12. 生態系. 廃物. 海外の環境. その他の資産変動. 生産への環境 投入. 生産に再吸収 される廃物. 生産への 生態系投入. 出所 United Nations et al. 2003, pp. 58─59, 304.. 9a. 自然資源. 消費への環境 投入. 消費への 生態系投入 埋め立てられ る廃物. 海外経済への 環境投入. 環境から経済 への再分類 その他の資産 変動. 環境から経済 への再分類 その他の資産 変動. 新たな出現, 消滅,質の 変動. その他の資産 変動. 越境廃物流入. 経済への 生態系投入 越境廃物流出. 持続可能性指標における集約的な経済指標での環境評価の比較分析(氏川) (337) 27.

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