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てんかん重積の診断・治療 Up to date

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てんかん重積の診断・治療 up to date

47(3)(2020) 221

以上続く場合,またはてんかん活動が回復なく反復し 5 分以上続く場合」と定義した3).しかし,その後,2015 年に ILAE では,「てんかん重積状態とは,発作が自然 停止せず,持続的な発作活動に移行すると見なされる時 点(t1)で判断し,治療開始されなければならない」と した.加えて,その発作持続が長期的な影響を起こす可 能性のある時間(t2)を設定し,より積極的な治療介入 を検討すべきとした7).(表 1)SE は痙攣性てんかん重 積状態(convulsive status epilepticus:CSE)と NCSE に大別される.NCSE はさらに昏睡を伴う NCSE with coma と昏睡を伴わない NCSE without coma に分けら れる.NCSE with coma は CSE 後に起こる微細な運動 症状を伴う subtle SE と CSE が先行しないものとがあ る.NCSE without coma では,全般性と焦点性がある.

(図 1)

2.

SE

の診断

CSE は,臨床症状として,明らかな痙攣を認めた場 合,診断は容易であるが急性症候性発作を起こしうる他 の原因や二次的に痙攣を生じうる代謝異常,電解質異常 などの鑑別が必要である8).(表 2)

NCSE は CSE と異なり,痙攣がないため見た目から 判断することは困難である.しかし,診断に遅れが生じ ると,二次的脳損傷を引き起こし死亡率の上昇や神経学 的予後不良につながる9).そのため,NCSE を疑い,臨 はじめに

てんかん重積状態(status epilepticus:SE)は,迅速 に適切な処置を行わなければ,致死的あるいは重篤な神 経学的後遺症を残しうる神-経救急疾患の一つである.

近年,様々な研究の結果,SE の新たな定義や分類が提 唱されている.また,非痙攣性てんかん重積状態(non- convulsive status epilepticus:NCSE)に関する関心も 急速に高まっているが,その理解は,脳神経系専門医で あっても不十分であり,日常臨床において,NCSE が鑑 別診断に加えられることは未だ少ない.その NCSE の 診断基準として,ザルツブルグ診断基準1)が用いられる ようになった.一方,これまでに SE の治療ガイドライ ンが複数報告されている2〜5).しかし,治療に関するエ ビデンスは未だ乏しい.本稿では,成人 SE の定義・分 類,治療についての最新の知見について概説する.

1.

SE

の定義

1981 年,国際抗てんかん連盟(ILAE)はてんかん発 作を「脳における過剰または同期した異常ニューロン活 動による一過性症候発現」とし,てんかんを「てんかん 発作を生じる持続的病態とこの病態による神経生物学 的,認知的,心理的,社会的結果を特徴とする脳障害」

とした6) 一方,Neurocritical Care Society は,SE を

「臨床的あるいは電気的てんかん活動が少なくとも 5 分 Dokkyo Journal of Medical Sciences

47(3):221 〜 225,2020

特 集

─脳研究の最前線─

てんかん重積の診断・治療 Up to date

獨協医科大学 内科学(神経)/同 大学病院 救命救急センター

星山 栄成

Key Words:epilepsy, acute symptomatic seizure, status epilepticus, nonconvusive status epilepticus

表1 SE の種類

t1(発作が遷延し,持続的 な発作活動に移行すると みなされる時点)

t2〔発作が長期的な影響(神経細胞障害や神 経細胞死,神経ネットワークの変化,機能障 害を含む)を引き起こす可能性のある時点〕

けいれん性 SE 5 分 30 分

意識障害を伴う焦点性 SE 10 分 >60 分

欠神発作重積状態 10〜15 分 不明

(2)

床症状を見極めることが重要である.NCSE を想起すべ き症状として,変動する意識の変容や自動症,一点凝 視,顔面や口周囲のミオクローヌス,異常行動,不安・

せ ん 妄, 錐 体 外 路 症 状 な ど, 多 岐 に わ た る.(表 3)

NCSE を疑った場合,診断には脳波モニタリングが必須 である.Claassen らの報告では,持続脳波施行して 1 時間以内では,15%程度の異常しか検出できないが,

24 時間以内では 88%も発作が検出されていることから,

NCSE を疑った場合は,最低でも 24 時間程度の脳波モ ニタリングが望ましいと考えられる(図 2).

どのような脳波所見を NCSE とするかの明確な基準 はないが,近年は米国臨床神経生理学会が提唱する分類 を参考に判断する9).(図 3)まず,異常な脳波の分布を 確認する(Main term 1).次に異常波形の分類を行い

(Main term 2),最後に修飾因子として,出現頻度や周 波数,刺激への反応などを確認する.これらの波形をも とに,ザルツブルグ基準を用いて診断する1).(表 4)こ の基準では,脳波と臨床所見の両方を満たすことで

表3 変動する意識の変容 一点凝視や自動症 発語障害

行動異常 ミオクローヌス 錐体外路症状

不安・不穏などの精神症状

その他:明らかな誘引のないバイタルサインの変動 表2

脳血管障害 脳血管障害から 7 日以内に起こる発作

中枢神経系感染症 中枢神経系感染症の活動期に起こる発作

頭部外傷 頭部外傷から 7 日以内に起こる発作

代謝性 電解質異常,低血糖,非ケトン性高血糖,尿毒症,低酸素性脳症,子癇など,全身性疾患

に関連して起こる発作

中毒 麻薬(コカインなど),処方薬(アミノフィリン,イミプラミンなど),薬剤過剰摂取,環

境からの曝露(一酸化炭素,鉛,樟脳,有機リンなど),アルコール(急性アルコール中毒 など)に曝露している間に起こる発作

離脱 アルコールや薬剤(バルビツレート,ベンゾジアゼピンなど)の離脱に関して起こる発作

頭蓋内手術後 頭蓋内脳外科手術の直後に起こる発作

脱髄性 急性散在性脳脊髄炎の急性期に起こる発作

多因性 同時に起きたいくつかの状況と関連した発作

図1

(3)

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NCSE を診断する.抗てんかん薬を投与して 10 分後の 臨床所見を評価し,脳波の改善は認めるものの臨床所見 の改善がない場合は,“possible NCSE”とされる.こ のザルツブルグ基準は,感度 97.7%,特異度 89.6%で あり,評価者間一致率はk=0.87 と精度が高いことが知 られている.しかし,実際の現場では,possible NCSE のように診断基準に当てはまらないこともあるため,専 門医らと協議しながら治療方針を決定すべきである.

3.

SE

の治療

SE の治療目標は,二次的脳損傷を防ぎ,死亡を回避 するために,早急に臨床上および脳波上の発作活動を停

止させることである.動物実験においては,発作持続時 間が長くなるほどベンゾジアゼピンに対する反応性が低 下することが明らかとなっている10).また,SE の約半 数は急性症候性発作であるため,原因検索と治療も同時 に開始する必要がある.本邦の臨床現場における成人 CSE の治療は,日本神経学会が監修している「てんか ん診療ガイドライン」4) や米国てんかん学会が提唱して いるガイドラインを参考に行う(図 4).CSE の第 1 段 階治療は,気道・呼吸・循環の安定化を図りつつ,血液 ガス分析や血糖測定などを早急に行う.静脈路を速やか に確保し,ベンゾジアゼピン系薬剤を投与する.静注薬 はジアゼパムあるいはロラゼパムを用いる.ロラゼパム 図2

図3

(4)

は 2018 年 9 月に承認され,ジアゼパムに比べ脂溶性が 低く,末梢組織への移行が少ないと考えられている.米 国では 2001 年にプレホスピタルにおける発作停止につ いて,ロラゼパム群,ジアゼパム群,プラセボ群を比較 検討している.ロラゼパム群とジアゼパム群はいずれも プラセボ群に比べ有意に発作を停止させたが,ロラゼパ ム群とジアゼパム群の比較では有意差はなかった11). また,2012 年の RAMPART 試験では,救急外来到着 時の発作停止率において,ミダゾラム筋注群で 73%,

ロラゼパム静注群で 63%であり,静脈路が確保でき ない場合には,ミダゾラム禁注が有効であることが示さ れた12).第 1 段階治療のみで発作が頓挫しない場合は,

第 2 段階治療を検討する.

本邦における第 2 段階治療では,ホスフェニトイン,

レベチラセタム,フェノバルビタールが推奨されてい る.ただし,レベチラセタムは SE に対し保険適応外で あることに留意すべきである.2019 年の多施設無作為 試験では,ベンゾジアゼピン抵抗性の SE 患者に対し,

ホスフェニトイン(20 mg/kg,最大投与量 1,500 mg),

バルプロ酸(40 mg/kg,最大投与量 4,000 mg),レベチ ラセタム(60 mg/kg,最大投与量 4,500 mg)のいずれ かを 10 分間かけて投与し,60 分後の発作停止率をプラ イマリーアウトカムとして評価している.発作停止率 図4

表4

脳波変化は,10 秒以上継続して存在する必要がある A:既知のてんかん性脳症と診断されていない症例

1) epileptic discharges:EDs>2.5 Hz

2) 以下の脳波に加えて,時間的空間的な evolution(+)

  2a) EDs≦2.5 Hz,あるいは 2b) RDA>0.5 Hz 3) 以下の脳波に加えて微細なてんかん発作徴候陽性   3a) Eds≦2.5 Hz,あるいは 3b) RDA>0.5 Hz 4) 上記 1〜3 には該当しないが,以下の脳波変化に加え

て,AED テストを行い臨床的に改善するもの    4a) Eds≦2.5 Hz かつ fluctuation(+),4b) RDA>

0.5 Hz かつ fluctuation(−),4C) RDA>0.5 Hz かつ fluctuation(+)

B:既知のてんかん性脳症と診断されている症例

ベースラインに比べ脳波変化が頻度や強度の点で増大し ている

AED テストで臨床的,脳波的な改善を認める 臨床所見と合わせて NCSE は診断される 容態変化が数分〜数時間で起こる 数分〜数時間で状態改善が起きない 脳波所見を説明し得る画像所見がない

脳波所見を説明し得る代謝性異常や中毒が存在しない

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は,レベチラセタムが 47%(68/145)であった.ホス フェニトインでは 45% (53/118),バルプロ酸は 46%

(56/121)であり,いずれも差はなかった.現在の日本 では,ホスフェニトインが最も信頼性の高い第 2 段階治 療となっているが,今後はレベチラセタムがホスフェニ トインと同等の位置付けになることが予想される.第 3 段階治療薬であるミダゾラム,プロポフォール,チオペ ンタールなどの静脈麻酔薬の持続静注については,予後 を改善するかは明らかではなく13),使用する薬剤の種 類や使用方法も確立されていない.

一方,NCSE に関しては,治療ガイドラインやコンセ ンサスは得られていないが,NCSE with coma はすで に脳の構造上の損傷を来していると考えられているた め,可能な限り早期に発見し,背景疾患も含めた治療が 必要である.

おわりに

SE の定義・分類と診断,治療について最新の知見に 基づいて概説した.SE は日常診療で遭遇する神経救急 疾患である.CSE では治療に関するエビデンスの不足,

NCSE では診断・治療に関するコンセンサスの不足など の問題点はあるが,いずれであっても早期に診断,治療 介入を行わなければ確実に重篤な脳損傷による神経学的 機能予後は不良となるため,臨床現場においては,合併 症や病態などを考慮し,治療を迅速に行うことが重要で ある.今後,さらなる研究の進展が期待される.

文  献

1) Leitinger M, Trinka E, Gardella E, et al:Diagnostic accuracy of the Salzburg EEG criteria for non-con- vulsive status epilepticus:a retrospective study.

Lancet Neurol 15:1054-1062, 2016.

2) Meierkord H, Boon P, Engelsen B, et al:EFNS guideline on the management of status epilepticus in adults. Eur J Neurol 17:348-355, 2010.

3) Brophy GM, Bell R, Claassen J, et al:Guidelines for the evaluation and management of status epilepticus.

Neurocrit Care 17:3-23, 2012.

4) Glauser T, Shinnar S, Gloss D, et al:Evidence-Based

Guideline:Treatment of Convulsive Status Epilepti- cus in Children and Adults:Report of the Guideline Committee of the American Epilepsy Society. Epilep- sy Curr 16:48-61, 2016.

5) てんかん重積状態(「てんかん診療ガイドライン」作成 委員会 編),てんかん診療ガイドライン 2018.医学書 院,東京,p76-90, 2018.

6) Proposal for revised clinical and electroencephalo- graphic classification of epileptic seizures.From the Commission on Classification and Terminology of the International League Against Epilepsy. Epilepsia 22:

489-501, 1981.

7) Trinka E, Cock H, Hesdorffer D, et al:A definition and classification of status epilepticus - Report of the ILAE Task Force on Classification of Status Epilepti- cus. Epilepsia 56:1515-1523, 2015.

8) 日本神経学会:てんかん治療ガイドライン 2010.医学 書院,東京,2010.

9) Shneker BF, Fountain NB:Assessment of acute morbidity and mortality in nonconvulsive status epi- lepticus. Neurology 61:1066-1073, 2003.

10) Kapur J, Macdonald RL:Rapid seizure-induced reduction of benzodiazepine and Zn2+ sensitivity of hippocampal dentate granule cell GABAA receptors.

J Neurosci 17:7532-7540, 1997.

11) Alldredge BK, Gelb AM, Isaacs SM, et al:A compar- ison of lorazepam, di- azepam, and placebo for the treatment of out-of- hospital status epilepticus. N Engl J Med 345:631-637, 2001.

12) Silbergleit R, Durkalski V, Lowenstein D, et al:

Intramuscular versus intrave- nous therapy for pre- hospital status epilepticus. N Engl J Med 366:591- 600, 2012.

13) Yasiry Z, Shorvon SD:The relative effectiveness of five antiepileptic drugs in treatment of benzodiaze- pine- resistant convulsive status epilepticus:a meta- analysis of published studies. Seizure 23:167-174, 2014.

表 1 SE の種類 t1(発作が遷延し,持続的な発作活動に移行すると みなされる時点) t2〔発作が長期的な影響(神経細胞障害や神経細胞死,神経ネットワークの変化,機能障害を含む)を引き起こす可能性のある時点〕 けいれん性 SE 5 分 30 分 意識障害を伴う焦点性 SE 10 分 >60 分 欠神発作重積状態 10〜15 分 不明

参照

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